説明

車両用灯具

【課題】半導体発光素子(LED)の発光効率が低下しないように放熱を効果的に行うとともに、内部の温度分布が均一となるようにし、投影レンズの温度が上昇するようにした着雪し易くなるのを防止し、さらに、半導体発光素子の発光光の利用効率が高くなるようにし、安定した高い照度の車両用灯具を提供する。
【解決手段】半導体発光素子の発光光を光源とし、該発光光を投影レンズに導いて車両外部を照射する車両用灯具であり、前記投影レンズからの照射方向に対して発光光が後方に向けて出射するように半導体発光素子を配置し、該半導体発光素子の前方に単数または複数の投影レンズを配置するとともに、後方に前記半導体素子の発光光を反射し前記投影レンズに入射させる楕円リフレクタを配置してなり、金属材料により一体成型されたレンズホルダに、前記半導体発光素子および投影レンズを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源に半導体発光素子(LED)を採用した車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の光源には、高輝度放電ランプ(HID/約3200lm)やハロゲン電球(1000〜1500lm)が採用されてきたが、消費電力の低減および大幅な小型化のために半導体発光素子を採用した所謂プロジェクタ型の車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような車両用灯具の光源として採用した半導体発光素子がLEDである場合は、1光源あたりの明るさが約400lmと少なく、ヘッドランプとするためには、複数のランプユニットを組み合わせ、必要な明るさを確保して配光性能を向上する必要がある。しかしながら、半導体発光素子の発光光を楕円リフレクタで反射して集光し、投影レンズに入射してヘッドランプの配光を形成する場合、容積の限られたヘッドランプでは複数のランプユニットを組み合わせると投影レンズの大きさに限界が生じ、光の利用率が低下して暗くなるという問題がある。
【0004】
また、配光の中心光度を高めるために、光源を傾け、投影レンズの中心軸上のリフレクタ位置と光源からの発光光の出射方向の位置を合わせる設定を行ったとしても、十分な明るさが得られない。そこで、ヘッドランプとしての明るさが得られるようにするため、半導体発光素子に大電流を流して光量を増加することも考えられるが、発熱が大きくなると、半導体発光素子の性質により明るさが低下したり点灯しなくなる不具合が生じ、寿命が短くなるという問題がある。そこで、半導体発光素子を冷却するために、この半導体発光素子に放熱部材(ヒートシンク)を配設する試みがなされている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−317513号公報
【特許文献2】特開2006−269271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1、2のようなプロジェクタ型の車両用灯具の場合は、投影レンズの後方にリフレクタを配置し、このリフレクタの内部に半導体発光素子を配設する構成となっている。ところが、このような構成の車両用灯具であると、その背面がエンジンによる熱の影響を受け、半導体発光素子の発熱を十分に放熱して冷却できないという問題がある。また、内部の温度分布が不均一となり、アウターレンズの内面に曇り現象が起き易いなどの問題がある。さらに、半導体発光素子がLEDの場合、発光光には赤外線成分が少ないことから、投影レンズの表面温度が上昇せず、降雪時にアウターレンズに着雪が生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたもので、半導体発光素子の発光効率が低下しないように放熱を効果的に行うとともに、内部の温度分布が均一となるようにし、アウターレンズの温度が上昇するようにして着雪し易くなるのを防止し、さらに、半導体発光素子の発光光の利用率が高くなるようにし、安定した高い照度の車両用灯具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、半導体発光素子の発光光を光源とし、該発光光を投影レンズに導いて車両外部を照射する車両用灯具であり、前記投影レンズからの照射方向に対して発光光が後方に向けて出射するように半導体発光素子を配置し、該半導体発光素子の前方に単数または複数の投影レンズを配置するとともに、後方に前記半導体素子の発光光を反射し前記投射レンズに入射させる楕円リフレクタを配置してなり、金属材料により一体成形されたレンズホルダに前記半導体発光素子および前記投影レンズを配設して車両用灯具となるようにする。
【0008】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の車両用灯具において、レンズホルダの外周の一部に放熱フィンが形成されているようにする。
【0009】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の車両用灯具において、楕円リフレクタの反射領域外の半導体発光素子からの発光光を反射する放物面リフレクタを、前記半導体発光素子の後方に配設する。
【0010】
請求項4記載の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用灯具において、投影レンズの焦点の近傍で配光パターンのカットオフを形成する遮光シャッタをレンズホルダに備えるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により構成された車両用灯具によれば、半導体発光素子からの発熱を効果的に放熱することができので、発光効率を低下することなく安定した高い照度を維持することができ、寿命を長くすることができる。また、内部の温度分布を均一化することができるので、アウターレンズの内面の曇り現象の発生を防ぐことができ、さらに、アウターレンズの温度を上昇させることができることから、降雪時における着雪の問題も同時に解決することができる。そして、本発明によれば、楕円リフレクタの反射領域外の半導体発光素子からの発光光を放物面リフレクタにより反射するようにしたので、発光光の利用効率が向上し、より明るい車両用灯具とすることができる。なお、本発明によれば、レンズホルダにヒートシンク(放熱フィン)を備えるようにしたので、このヒートシンクによりデザイン的効果を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明においては、半導体発光素子にLEDを採用したものを前提として説明する。
【0013】
(第1実施例)
本発明の第1実施例は複灯式の車両用灯具1となるようにしたもので、図1は平面図、図2は正面図、図3は概略断面図を示し、図4に分解斜視図を示す。同各図において、車両用灯具1の主体部となるレンズホルダ11は、例えば、アルミなど軽合金などの金属材料による鋳造や鍛造などにより上部レンズホルダ11Aと下部レンズホルダ11Bが一体成形されている。
【0014】
前記上部レンズホルダ11Aと下部レンズホルダ11Bの前面には投影窓11aが形成され、外周の側部にはヒートシンク11bが形成されている。上部レンズホルダ11Aおよび下部レンズホルダ11Bは、後部が開放して内部が中空状態となっており、すれ違いビームなどの配光パターンが要求される場合には、遮光シャッタ11cを設ける。
【0015】
前記レンズホルダ11に装着するレンズユニット21には投影レンズとして凸レンズを採用し、ガラスまたはアクリルなどの樹脂材料で上部凸レンズ21Aと下部凸レンズ21Bが一体化されたもので、この上部凸レンズ21Aおよび下部凸レンズ21Bの背面を前記上部レンズホルダ11Aと下部レンズホルダ11Bの投影窓11aに一致させて配置し、接着などの適宜手段により固定する。なお、本実施例においては上部凸レンズ21Aと下部凸レンズ21bを一体化して構成してあるが、各々の凸レンズを個々別体のものを採用するようにしてもよい。
【0016】
つぎに、光源ユニット31は、熱伝導性に優れた基板31a上にLED31bを固定してなるもので、このLED31bは複数のLED素子を横長のアレイ状に一体化したものである。そして、基板31aをレンズホルダ11にネジ止めしたとき、LED31bの中心が上部凸レンズ21Aと下部凸レンズ21Bの光軸間の中央に位置するようにする。このように光源ユニット31がレンズホルダ11に配設されると、LED31bからの発光光は上部凸レンズ21Aと下部凸レンズ21Bからの照射方向とは逆の後方へ出射されることになる。
【0017】
前記のようにしてLED31bから出射された発光光は、LED31bの後方に配設された楕円リフレクタ41により反射されることになる。この楕円リフレクタ41は、その支脚41aが前記レンズホルダ11にネジ止めされて固定されるようにしたものであり、LED31bの発光光を反射して上部レンズホルダ11Aへ導く第1楕円反射面41bと下部レンズホルダ11Bへ導く第2楕円反射面41cが形成されている。
【0018】
このように前記楕円リフレクタ41を配設する場合において、第1楕円反射面41bと第2楕円反射面41cの第1焦点F1をLED31bの発光面の近傍となるようにし、第1楕円反射面41bの第2焦点F2を上部凸レンズ21Aの焦点位置近傍に、第2楕円反射面41cの第2焦点F2を下部凸レンズ21Bの焦点位置近傍となるようにする。楕円リフレクタ41は、このようにしてLED31bを覆う傘のように配置されることから、面発光される発光光の有効な範囲である鉛直から角度140°の範囲が反射領域となり、高い効率による発光光の反射が可能となる。なお、配光パターンの形成は、上部凸レンズ21A、下部凸レンズ21Bを通して広がり角が得られるよう、第2焦点F2の位置を前後左右に変えることにより行うことができる。
【0019】
以上のようにして第1実施例の車両用灯具1を構成した場合、LED31bの発光光は横方向への広がりがあることから、すべての発光光を楕円リフレクタ41により反射することができない。そこで、第1実施例の車両用灯具1では楕円リフレクタ41の両側部に放物面リフレクタ41dを付設することにした。
【0020】
この放物面リフレクタ41dは、LED31bの発光面の近傍が焦点となるようにし、その反射面は回転放物面あるいは左右への広がりが得られるような自由曲面形状とする。これにより、図5に示すように楕円リフレクタ14により反射された主照射光B1は上部凸レンズ21Aおよび下部凸レンズ21Bから出射され、放物面リフレクタ41dにより反射された副照射光B2は直接外部へ出射されることになり、照射効率を向上することができる。
【0021】
第1実施例の車両用灯具1は以上のように構成されているので、LED31bの発熱は基板31aからレンズホルダ11に伝わり、このレンズホルダ11およびヒートシンク11bから外部に放散され、これにより、LED31bの冷却効果を向上し発光効率の低下を防止することができる。また、レンズホルダ11の温度が上昇することから、アウターレンズの曇り現象を防止することができるとともに、着雪を防止する効果が得られる。
【0022】
(第2実施例)
本発明の第2実施例は単灯式の車両用灯具5となるようにしたもので、図6は平面図、図7は正面図、図8は概略断面図を示し、図9に分解斜視図を示す。同各図において、車両用灯具5の主体部となるレンズホルダ51は、第1実施例と同様にアルミなど軽合金などの金属材料による鋳造や鍛造などにより一体成形されている。
【0023】
前記レンズホルダ51の前面には投影窓51aが形成され、外周の側部にヒートシンク51bが形成されている。このレンズホルダ51は、後部が開放して内部が中空状態となっており、すれ違いビームなどの配光パターンが要求される場合には、遮光シャッタ51cを設ける。前記レンズホルダ51に装着する投影レンズとしての凸レンズ61は、ガラスまたはアクリルなどの樹脂材料で形成されたもので、前記レンズホルダ51の投影窓51aに一致させて配置し、接着などの適宜手段により固定する。
【0024】
つぎに、光源ユニット71は、熱伝導性に優れた基板71a上にLED71bを固定してなるもので、このLED71bは複数のLED素子を横長のアレイ状に一体化したものである。そして、基板71aをレンズホルダ51にネジ止めしたとき、LED71bの中心が前記凸レンズ61の下側になるようにする。このように光源ユニット71がレンズホルダ51に配設されると、LED71bからの発光光は凸レンズ61からの照射方向とは逆の後方へ出射されることになる。
【0025】
前記のようにしてLED71bから出射された発光光は、LED71bの後方に配設された楕円リフレクタ81に反射されることになる。この楕円リフレクタ81は、その支脚81aが前記レンズホルダ51にネジ止めされて固定されるようにしたものであり、LED71bの発光光を反射してレンズホルダ51へ導く第1楕円反射面81bと第2楕円反射面81cが形成されている。
【0026】
このように前記楕円リフレクタ81を配設する場合において、LED71bの発光面の近傍を第1焦点F1と定め、凸レンズ61の焦点位置を第1楕円反射面81bの第2焦点F2−1とする。そして、第2楕円反射面81cの第2焦点F2−2が凸レンズ61の前方位置となるようにする。
【0027】
楕円リフレクタ81は、このようにしてLED71bを覆う傘のように配置されることから、光使用率が高くなる。なお、配光パターンの形成は、凸レンズ61を通して広がり角が得られるよう、第2焦点F2−1、F2−2の位置を前後左右に変えることにより行うことができる。
【0028】
以上のようにして第2実施例の車両用灯具5を構成した場合、LED71bの発光光の特に下方へ向かう発光光を楕円リフレクタ81で反射させることができなくなる。そこで、第2実施例の車両用灯具5では楕円リフレクタ81の下側部に放物面リフレクタ81dを付設することにした。
【0029】
この放物面リフレクタ81dは、LED71bの発光面の近傍が焦点となるようにし、その反射面は回転放物面あるいは左右への広がりが得られるような自由曲面形状とする。これにより、図8に示すように楕円リフレクタ81により反射された主照射光B1は凸レンズ61から出射され、放物面リフレクタ81dにより反射された副照射光B2は直接外部へ出射されることになり、面発光される発光光の有効な範囲である鉛直から140°の範囲が反射領域となり、高い効率による発光光の反射が可能となる。
【0030】
第2実施例の車両用灯具5は以上のように構成されているので、LED71bの発熱は基板71aからレンズホルダ51に伝わり、このレンズホルダ51およびヒートシンク51bから外部に放散され、これにより、LED71bの冷却効果が向上し発光効率の低下を防止することができる。また、レンズホルダ51の温度が上昇することから、アウターレンズの曇り現象を防止することができるとともに、着雪を防止する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両用灯具の平面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る車両用灯具の正面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る車両用灯具の作用を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る車両用灯具の平面図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る車両用灯具の正面図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・・・・車両用灯具(第1実施例)
11・・・・・レンズホルダ
11A・・・・上部レンズホルダ
11B・・・・下部レンズホルダ
11a・・・・投影窓
11b・・・・ヒートシンク(放熱フィン)
11c・・・・遮光シャッタ
21・・・・・レンズユニット
21A・・・・上部凸レンズ
21B・・・・下部凸レンズ
31・・・・・光源ユニット
31a・・・・基板
31b・・・・LED
41・・・・・楕円リフレクタ
41a・・・・支脚
41b・・・・第1楕円反射面
41c・・・・第2楕円反射面
41d・・・・放物面リフレクタ
5・・・・・・車両用灯具(第2実施例)
51・・・・・レンズホルダ
51a・・・・投影窓
51b・・・・ヒートシンク(放熱フィン)
51c・・・・遮光シャッタ
61・・・・・凸レンズ
71・・・・・光源ユニット
71a・・・・基板
71b・・・・LED
81・・・・・楕円リフレクタ
81a・・・・支脚
81b・・・・第1楕円反射面
81c・・・・第2楕円反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子の発光光を光源とし、該発光光を投影レンズに導いて車両外部を照射する車両用灯具であり、
前記投影レンズからの照射方向に対して発光光が後方に向けて出射するように半導体発光素子を配置し、該半導体発光素子の前方に単数または複数の投影レンズを配置するとともに、後方に前記半導体素子の発光光を反射し前記投影レンズに入射させる楕円リフレクタを配置してなり、
金属材料により一体成形されたレンズホルダに前記半導体発光素子および前記投影レンズを配設したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記レンズホルダの外周の一部に放熱フィンが形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記楕円リフレクタの反射領域外の半導体発光素子からの発光光を反射する放物面リフレクタを、前記半導体発光素子の後方に配設したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズの焦点の近傍で配光パターンのカットオフを形成する遮光シャッタを前記レンズホルダに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−3451(P2010−3451A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159308(P2008−159308)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】