説明

車両用灯具

【課題】ハイマウントストップランプのガタ付きを抑制する。
【解決手段】ハイマウントストップランプには、フレーム16の表面16Aに当接するとともに、第1の係合部18とによってフレーム16を挟み込むリブ30が備えられている。このリブ30は、係合部18の両側面に一体成形されている。ハイマウントストップランプは、係合部18と固定部とによってフレーム16に取り付けられるが、ハイマウントストップランプの熱収縮により、係合部18とフレーム16の開口部22との間でガタが生じる。ガタの発生を抑制するためのリブ30は、ハイマウントストップランプのフレーム16への固定時に、フレーム16の表面16Aに当接し、係合部18とによってフレーム16を挟み込む。これにより、ハイマウントストップランプに熱収縮が生じても、前記ガタを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に係り、特にハイマウントストップランプ等の車両用灯具を車体の被固定部にガタ無く取り付けるための有効な手段を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、車体に対するハイマウントストップランプの取付構造の一例が開示されている。特許文献1の取付構造は、ハイマウントストップランプのハウジングに形成されたボス部を車体側のボス嵌合穴に嵌合させるとともに、ねじによってハウジングを車体側に固定する構造である。また、特許文献2の取付構造は、ハイマウントストップランプの本体に形成された舌片を車体側の挿通穴に挿通させるとともに、ねじによって本体を車体側に固定する構造である。
【0003】
一方、特許文献3には、ライトを構成するケーシングの周部にリブを設け、このリブを車体側の切欠に形成された当付け面に接触させることによりライトを車体に位置決めするライトの位置決め装置が開示されている。この位置決め装置は、ライトをX、Y、Zの各方向において位置決めできるように第1、第2、第3の位置決め装置を備えている。
【0004】
また、この特許文献3には、前記ケーシングの周部に突起が設けられるとともに、この突起の反対側には係止ばねがケーシングに設けられている。すなわち、特許文献3には、車両用灯具の一端部に鍵形状の車体取付部(突起)を設け、他端部にばね構造を備えたフック部(係止ばね)を設け、車体取付部を切欠に係合させるとともに、フック部の弾性により車両用灯具を切欠に押し付けて車両用灯具を取り付ける取付構造が開示されている。なお、特許文献3の車両用灯具は、車体取付部とフック部とからなる取付構造だけでは車体の振動等に耐えることができないため、車体への固定時には特許文献1、2の如く、ねじによる固定が更に行われる。
【特許文献1】特開平9−156417号公報
【特許文献2】特開平9−175270号公報
【特許文献3】特開平10−35355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の車両用灯具は、車両用灯具の一部が車体側にねじ固定されているため、周囲温度変化により車両用灯具自身が収縮した際に、車体取付部と車体側の切欠との間に隙間が生じ、ガタが生じるという問題が発生していた。すなわち、車両用灯具のフック部は弾性変形して切欠に押圧されているため、車両用灯具が収縮しても、その収縮を弾性により吸収することができるが、車体取付部は基本的に弾性を有しておらず、切欠に係合されるものなので収縮を吸収できず、それがガタとなって発現してしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車体に対する車両用灯具のガタ付きを抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、灯具本体と、該灯具本体の上面の一方側に設けられた係合部と、該灯具本体の上面の他方側に設けられた固定部とを備え、板状の被固定部に形成された開口部に、該被固定部の表面側から前記係合部が挿入されて係合されるとともに、前記被固定部に前記固定部が固定される車両用灯具において、前記係合部は、前記開口部の開口断面に当接する第1の面と、該第1の面に隣接するとともに被固定部の裏面に当接する第2の面とを有し、前記灯具本体には、前記係合部の第2の面との間で被固定部を、被固定部の厚み方向で挟み込む挟持部材が設けられていることを特徴とする車両用灯具を提供する。
【0008】
請求項1に記載の車両用灯具の取付手順について説明する。まず、被固定部に形成された開口部に、被固定部の表面側から係合部を斜め方向から挿入し、係合部の第1の面を開口部の開口断面に当接させる。次に、この当接部分を支点として灯具本体を回動させ、灯具本体の上面を被固定部の表面に当接させる。この状態で係合部は、係合部の第1の面が開口部の開口断面と当接し、係合部の第2の面が被固定部の裏面に当接することにより、開口部に係合される。次に、固定部を被固定部に固定する。これによって、車両用灯具が被固定部に固定される。
【0009】
この固定状態において、常温では係合部及び固定部の双方は固定端としての機能を有しているが、灯具本体に熱収縮が発生すると、確実に固定されている固定部を起点として灯具本体に熱収縮が起こる。つまり、係合部が固定部に向けて熱収縮していき、よって、係合部の第1の面が開口部の開口断面から離間していく。これにより、係合部の開口部に対する係合が解除されるため、係合部が自由端となり、係合部と開口部との間でガタが生じる。
【0010】
本願発明は、このような熱収縮によるガタの発生を防止するため、灯具本体にリブを設け、このリブと係合部の第2の面との間で被固定部を、被固定部の厚み方向で挟み込む。これにより、灯具本体に熱収縮が生じても、その熱収縮は被固定部の面方向に大きく作用するため、被固定部をその厚み方向で挟み込むリブには、その熱収縮がほとんど作用しない。したがって、灯具本体に熱収縮が生じても、係合部の第2の面とリブとで被固定部を挟み込んだ状態は保持されているので、車体に対する車両用灯具のガタ付きを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記挟持部材は、前記係合部に設けられるとともに該係合部を補強するリブであることが好ましい。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、係合部を補強するリブを挟持部材として兼用したので、部品点数を削減することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記係合部には、前記第1の面に隣接するとともに前記第2の面に対向したテーパ状の第3の面を備えたことが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、係合部の第3の面をテーパ状に形成することにより、係合部の開口部に対する斜め方向の挿入が容易になる。よって、係合部の第3の面がテーパ条であることが、車両用灯具の取付作業性の観点から好ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記固定部は、前記被固定部の別の開口部に弾性変形して係合される仮止め用係合部と、前記被固定部に対し少なくとも1点において固定される固定部材と、を備えたことが好ましい。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、固定部を仮止め用係合部と固定部材とで構成することが好ましい。つまり、車両用灯具の被固定部への取付手順において、前述したように係合部を、まず開口部に斜め方向に係合し、この後、開口部の開口断面に当接している係合部の第1の面を支点として車両用灯具を水平方向に回動させていく。この際に、仮止め用係合部が別の開口部の縁部に押圧されて弾性変形されながら押し込まれ、仮止め用係合部の頂部が別の開口部の縁部を乗り越えたところで、仮止め用係合部の凹部が別の開口部の縁部に弾性をもって係合される。これにより、車両用灯具が被固定部に対して仮止めされ、この後、固定部材を用いて車両用灯具が被固定部に本固定される。このように、仮止め用係合部を備えることにより、車両用灯具の被固定部に対する固定作業が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用灯具によれば、係合部の第2の面との間で被固定部を、被固定部の厚み方向で挟み込む挟持部材を設けたので、係合部と開口部との間に生じるガタを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付図面に従って、本発明に係る車両用灯具の好ましい実施の形態について詳説する。
【0019】
図1は、実施の形態のハイマウントストップランプ(車両用灯具)10を示した外観斜視図である。
【0020】
ハイマウントストップランプ10は、車両後方からの視認性を高めるために、車両の特に高い位置、例えばリヤガラスの上部に設けられ、車両の尾灯と同様に制動装置と連動するランプである。その構成は、ケース(灯具本体:例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)製)12とカバー14とによって矩形の箱体に構成される。ケース12には光源(不図示:LED又はバルブ)が設けられており、このケース12の前面開口部にカバー14が取り付けられている。このカバー14は法令に則り赤色に着色された半透明の樹脂成形品であり、よって、前記光源からの照明光は、カバー14を透過することにより赤色光となってカバーから投光される。
【0021】
図2は、ハイマウントストップランプ10を車両のフレーム(被固定部)16に取り付ける取付作業状態を示した正面図であり、図3は、フレーム16に固定されたハイマウントストップランプ10の斜視図が示されている。
【0022】
図1〜図3に示すように、ケース12の上面でその左側には、鍵形状の係合部18が一体に突設され、また、ケース12の上面でその右側には、ばね材からなる仮止め用係合部20が設けられている。係合部18は、板状のフレーム16に形成された開口部22に係合され、仮止め用係合部20は、フレーム16に形成された開口部(別の開口部)24に弾性をもって係合される。これにより、ハイマウントストップランプ10がフレーム16に仮止めされる。また、ケース12の上面で仮止め用係合部20の近傍には、ねじ孔28が形成され、このねじ孔28に図3に示すねじ26がフレーム16を介して締結されることにより、ハイマウントストップランプ10がフレーム16に本固定される。なお、仮止め用係合部20と、ねじ孔28及びねじ26からなる固定部材とで、請求項1に記載した固定部が構成されている。
【0023】
第1の係合部18は図4に示すように、側面が台形形状の基部19Aと側面が略矩形状の頭部19Bとから構成されている。基部19Aと頭部19Bとの境界部である凹部には、開口部22の開口断面22Aに当接する第1の面18Aが形成されている。また、第1の面18Aに連続する、頭部19Bの下面には、フレーム16の裏面16Bに当接する第2の面18Bが形成されている。更に、第1の面18Aに隣接する、基部19Aの上面には下方に傾斜したテーパ状の第3の面18Cが形成されている。
【0024】
一方、仮止め用係合部20は、側面が台形形状の基部21Aとばね材で構成されたフック部21Bとから構成されている。フック部21Bは、図4の二点鎖線で示すように弾性変形可能であり、その下方に延びた端部には、頂部20Aと凹部20Bと抜止部20Cとが連続して形成されている。
【0025】
次に、フレーム16に対するハイマウントストップランプ10の取付手順について説明する。
【0026】
まず、図2、図4に示すように、フレーム16に形成された開口部22に、フレーム16の表面16A側からハイマウントストップランプ10の係合部18の頭部19Bを斜め方向から挿入し、係合部18の第1の面18Aを開口部22の開口断面22Aに当接させる。このとき、係合部18の第3の面18Cはテーパ状に形成されているため、前述した頭部19Bの斜め方向からの挿入を容易にしている。
【0027】
次に、第1の面18Aと開口断面22Aとの当接部分を支点としてハイマウントストップランプ10を、図2において反時計周り方向に回動させていくと、仮止め用係合部20のフック部21Bが開口部24の縁部24Aに当接する。次に、ハイマウントストップランプ10に更に力を加えて同方向に押し込むと、その力によりフック部21Bが縁部24Aに押圧されて弾性変形されながら押し込まれていく。そして、フック部21Bの頂部20Aが縁部24Aを乗り越えたところで、フック部21Bの凹部20Bが図4の如く縁部24Aに弾性をもって係合される。これにより、ハイマウントストップランプ10がフレーム16に対して仮止めされ、この後、ねじ26を用いてハイマウントストップランプ10が図3の如くフレーム16に本固定される。以上により、ハイマウントストップランプ10のフレーム16に対する取付作業が終了する。
【0028】
ところで、ハイマウントストップランプ10をフレーム16に固定した状態において、常温では係合部18及び固定部(仮止め用係合部20及びねじ26)の双方は固定端としての機能を有しているが、ハイマウントストップランプ10に熱収縮が発生すると、確実にフレーム16に固定されているねじ孔28を起点としてハイマウントストップランプ10に熱収縮が起こる。つまり、係合部18がねじ孔28に向けて熱収縮していき、図4の破線で示すように、係合部18の第1の面18Aが開口部22の開口断面22Aから離間していく。これにより、係合部18の開口部22に対する係合が解除されるため、係合部18が自由端となり、係合部18と開口部22との間で上下方向のガタが生じる。
【0029】
そこで、実施の形態のハイマウントストップランプ10では、このような熱収縮によるガタの発生を防止するため、図4、図5の如く係合部18の基部19Aの両側面に板状のリブ30(挟持部材)を設け、このリブ30の上面30Aと係合部18の第2の面18Bとの間でフレーム16を、フレーム16の厚み方向で挟み込むようにしている。
【0030】
このリブ30は、図4に示すように、リブ30の上面30Aと係合部18の第2の面18Bとの高さ方向の隙間aは、フレーム16の厚みtよりも若干短くなるように設定されている。よって、リブ30の上面30Aと係合部18の第2の面18Bとによってフレーム16が挟持されるようになっている。
【0031】
したがって、このようなリブ30を備えたハイマウントストップランプ10によれば、ハイマウントストップランプ10に熱収縮が生じても、その熱収縮はフレーム16の面方向に大きく作用するため、フレーム16をその厚み方向で挟み込むリブ30には、その熱収縮がほとんど作用しない。したがって、ハイマウントストップランプ10に熱収縮が生じても、係合部18の第2の面18Bとリブ30の上面30Aとでフレーム16を挟み込んだ状態は保持されているので、車体に対するハイマウントストップランプ10の上下方向のガタ付きを抑制することができる。
【0032】
なお、実施の形態では、挟持部材として係合部を補強するリブ30を例示したが、これに限定されるものではなく、係合部18の第2の面18Bとの間でフレーム16を挟み込むことができる部材であればよく、その取付位置もケース12の上面であれば任意に設定できる。
【0033】
また、実施の形態のハイマウントストップランプ10では、1本のねじ26によってフレーム16に固定するようにしたが、ねじ26の本数は1本に限定されるものではなく、複数本であってもよい。また、固定部材は、ねじ26に限定されるものではなく、他の固定手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態のハイマウントストップランプを示した外観斜視図
【図2】図1に示したハイマウントストップランプの取付作業状態を示した正面図
【図3】フレームに固定されたハイマウントストップランプの斜視図
【図4】ハイマウントストップランプのフレームに対する係合形態を示した要部拡大図
【図5】ハイマウントストップランプの第1の係合部の拡大斜視図
【符号の説明】
【0035】
10…ハイマウントストップランプ、12…ケース(灯具本体)、14…カバー、16…フレーム(被固定部)、18…第1の係合部、18A…第1の面、18B…第2の面、18C…第3の面、20…第2の係合部、22…第1の開口部、22A…開口断面、24…第2の開口部、26…ねじ、28…ねじ孔、30…リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具本体と、該灯具本体の上面の一方側に設けられた係合部と、該灯具本体の上面の他方側に設けられた固定部とを備え、板状の被固定部に形成された開口部に、該被固定部の表面側から前記係合部が挿入されて係合されるとともに、前記被固定部に前記固定部が固定される車両用灯具において、
前記係合部は、前記開口部の開口断面に当接する第1の面と、該第1の面に隣接するとともに被固定部の裏面に当接する第2の面とを有し、
前記灯具本体には、前記係合部の第2の面との間で被固定部を、被固定部の厚み方向で挟み込む挟持部材が設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記挟持部材は、前記係合部に設けられるとともに該係合部を補強するリブである請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記係合部には、前記第1の面に隣接するとともに前記第2の面に対向したテーパ状の第3の面を備えたことを特徴とする請求項1、又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記固定部は、前記被固定部の別の開口部に弾性変形して係合される仮止め用係合部と、前記被固定部に対し少なくとも1点において固定される固定部材と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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