説明

車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置

【課題】たとえ交通量の多い道路等にあっても自車両の視界を好適に確保することのできる車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置を提供する。
【解決手段】車両用灯火管理装置として、車両に固有の車両ID信号を送信しつつ自車両の車両ID信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御を行う制御部15を備えるようにした。また、この制御部15により、画像認識MPUを通じて取り込まれた他車両の画像の輝度が予め定められた閾値を超える車両を調光不良となっている他車両として特定し、この特定した他車両から送信される車両ID信号を同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるヘッドライトやテールライト等の灯火管理を行う車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に車両を運転するとき、対向車両のヘッドライト等の照射光が眩しいような場合には、慣習としてパッシング等により対向車両にその旨を伝達することで、例えばハイビームからロービームへの灯火態様の変更を通じたヘッドライトの減光を促すようにしている。しかしながら、このようなヘッドライトの減光にかかる処理の実行は、対向車両のドライバーの善意に委ねられているのが実情である。このため、対向車両のドライバーのマナーが悪い場合には、ヘッドライトの減光を促したにもかかわらず適切な減光処理が行われず、対向車両のヘッドライトの照射光に幻惑されるなどして自車両の視界が妨げられるおそれがある。
【0003】
一方、後続車両との関係においては、従来、例えば特許文献1に記載の車両用灯火管理装置が提案されている。この管理装置を備えた車両間では、自車両(前方車両)において後続車両のヘッドライト等の光量の検出が行われるとともに、後続車両においては前方車両との間の車間距離の検出が行われる。そして、自車両の管理装置は、上記後続車両のヘッドライト等の光量が一定量を超えた場合、その旨を示す制御信号を後続車両の管理装置に対して送信する。一方、後続車両の管理装置では、上記車間距離が一定の値よりも短くなり、且つ上記制御信号を受信したとき、ヘッドライト等の減光や照射角度を変更する制御を行う。このため、こうした管理装置を搭載した車両間では、何ら特別な操作をすることなく、自車両の視界が好適に確保されるようになる。
【0004】
また一方、従来の車両用灯火管理装置としてはこの他にも、例えば特許文献2に記載の装置が知られている。この車両用灯火管理装置では、前方車両のテールライトや対向車両のヘッドライトを検出すると、自車両のハイビームを自動的にロービームへと切り替える配光制御を行うようにしている。
【特許文献1】特開2001−26236号公報
【特許文献2】米国特許第6861809号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、交通量が多い道路にあっては前方車両や対向車両の数も多くなるため、上記特許文献1や上記特許文献2に記載の車両用灯火管理装置では、以下に示す理由から、自車両の視界が十分に確保されないおそれがある。
【0006】
まず、上記特許文献1に記載の車両用灯火管理装置は、複数の車両のうちの例えば1台が光量過多の状態にある場合であっても、それら全ての車両の管理装置に対して一律に上記制御信号が送信されるため、光量過多の状態にある車両に対してのみ減光を要求することはできない。また、特許文献2に記載の車両用灯火管理装置は、前方車両もしくは対向車両を検出して自車両の管理装置が自車両の配光を制御(減光)するものでしかなく、冒頭に述べたように、他車両側で減光等の調光処理が行われない限り、自車両側での視界は十分に確保されないという問題が残る。このように、上記いずれの車両用灯火管理装置によっても、周囲車両の光量過多や配光不良等の調光不良に起因する自車両の視界不良を十分に改善することはできなかった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、たとえ交通量の多い道路等にあっても自車両の視界を好適に確保することのできる車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両用灯火管理システムとして、車両に固有の識別信号を送信しつつ自車両に固有の識別信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御を行う調光制御手段と、調光不良となっている他車両を特定してこの特定した他車両の調光制御手段から送信される固有の識別信号を同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信する調光要求手段とを車両毎に備え、車両間でのこれら調光要求手段および調光制御手段を通じた識別信号の授受に基づいてそれら各車両の灯火態様を相互管理するようにした。また、請求項6に記載の発明では、車両用灯火管理装置として、車両に固有の識別信号を送信しつつ自車両に固有の識別信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御を行う調光制御手段と、調光不良となっている他車両を特定してこの特定した他車両の調光制御手段から送信される固有の識別信号を同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信する調光要求手段とを備えるようにした。
【0009】
このような車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置によれば、調光不良となっている他車両、すなわちドライバーが眩しいと感じる光量過多や配光不良等の状態にある他車両が存在する場合、自車両では、その調光不良となっている他車両が特定され、この特定された他車両の調光制御手段から送信される上記識別信号が同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信される。調光不良にある上記他車両では、こうして上記自車両から送信される識別信号が受信されると、この識別信号に基づいて灯火態様についての調光制御が行われる。すなわち、他車両と自車両との車両間では、自車両に固有の上記識別信号の授受に基づいて各車両の灯火態様が相互管理されることとなる。このため、調光不良にある他車両においてのみ調光制御が行われるようになり、たとえ交通量の多い道路等にあっても、自車両の視界が好適に確保されるようになる。
【0010】
ところで、他車両が調光不良となってそのヘッドライト等が眩しい状況とは、同他車両の輝度が調光不良となる以前よりも高い状況でもある。そこで、請求項2に記載の発明および請求項7に記載の発明では、上記調光要求手段が、撮像装置により他車両の画像を取り込みつつその輝度を検出する画像処理手段を備え、この検出される輝度が予め定められた閾値を超える車両を上記調光不良となっている他車両として特定するようにした。このような構成によれば、画像処理手段により撮像装置を通じて他車両の画像が取り込まれつつその輝度が検出される。この検出される輝度が予め定められた閾値を超える車両が、上記調光不良となっている他車両として調光要求手段によって特定される。このため、調光不良と判断される他車両の輝度を上記閾値として予め定めておくことにより、調光不良となっている他車両を確実に検出することができるようになる。
【0011】
また、請求項3および請求項8に記載の発明では、上記調光要求手段が、上記特定した上記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を検出する方位検出手段と、この検出される方位を指向するように指向性アンテナを操作しつつ、同他車両の調光制御手段から送信される識別信号を受信するとともにこの受信した識別信号を返信する通信手段とを備える構成とした。このような構成によれば、上記特定した上記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位が方位検出手段を通じて検出されるとともに、この検出される方位を指向するように指向性アンテナが通信手段によって操作される。これにより、通信手段では、他車両の調光制御手段から送信される識別信号のうち、上記指向性アンテナの指向する方位に位置する他車両の識別信号、すなわち調光不良となっている他車両の識別信号を確実に受信することができるようになる。このため、調光不良となっている他車両の識別信号を同他車両も含めて自車両以外の車両に確実に返信することができ、自車両の視界がより好適に確保されるようになる。
【0012】
こうした車両用灯火管理システムにおいて、請求項4および請求項9に記載の発明では、上記方位検出手段が、上記画像処理手段に取り込まれる画像の画素群のうちの輝度が上記閾値を超える画素群の座標と上記撮像装置の撮像倍率とに基づいて上記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を算出するようにすれば、同方位を検出するためのセンサ等を別途設ける必要がなくなり、当該車両用灯火管理システムおよび車両灯火管理装置の構成を簡素なものとすることができる。
【0013】
また、請求項5および請求項10に記載の発明によるように、上記調光要求手段を、上記特定した上記調光不良となっている他車両についての自車両からの距離を検出する距離検出手段を備え、この検出される距離が自車両の視界を妨げる可能性のある距離として定められる距離閾値を超えて短くなるタイミングにて上記特定した他車両の固有の識別信号を返信する構成とすることも有効である。実際には、調光不良となっている他車両の全てが自車両の視界を妨げるわけではない。調光不良となっている車両の全てに対して識別信号を返信することは、調光要求手段の処理負荷を増大させる要因ともなる。この点、上記構成によれば、上記特定した調光不良となっている他車両についての自車両からの距離が距離検出手段により検出されるとともに、調光要求手段では、この検出される距離が自車両の視界を妨げる可能性のある距離として定められる距離閾値を超えて短くなるタイミングにて上記特定した他車両の固有の識別信号が返信される。すなわち、自車両の視界を妨げる可能性のある車両の上記識別信号のみが返信され、調光不良の状態にあっても自車両の視界を妨げる可能性のない他車両の上記識別信号は返信されない。このため、調光要求手段の処理負荷の軽減を通じて、車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置のリソースの有効活用を図ることができるようにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置を具体化した一実施の形態について、図1〜図7を参照しつつ説明する。
図1に示すように、この車両用灯火管理装置は、受信部10、画像認識MPU(超小型処理装置)11、送信回路12、ヘッドライト制御回路13、およびメモリ14がそれぞれ制御部15に接続された構成となっている。本実施の形態では、こうした車両用灯火管理装置を備えた複数の車両により車両用灯火管理システムが構築されている。まず、車両用灯火管理システムを構築する上記車両用灯火管理装置について説明する。
【0015】
同図1に示すように、車両用灯火管理装置において、上記受信部10は、指向性アンテナ10aと、該指向性アンテナ10aに駆動連結されたパルスモータおよびその駆動回路からなるアンテナ駆動部10bと、同指向性アンテナ10aに電気的に接続された受信回路10cとを備えて構成されている。上記指向性アンテナ10aは、その指向する方位が車両の進行方向に対して可変となるように同車両に配設されている。また、上記アンテナ駆動部10bは、制御部15からパルス信号が入力されると、そのパルス信号にて示されるパルス数だけパルスモータを駆動させて上記指向性アンテナ10aの指向する方位を変更する。
【0016】
この車両用灯火管理装置において、上記画像認識MPU11には、画像センサSENが接続されている。本実施の形態において画像センサSENは、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)を備えた撮像ユニットとして構成されるとともに、車両前方を撮像可能に同車両の前方中央に設けられている。画像認識MPU11は、上記画像センサSENを通じて取り込まれた画像データを制御部15に送信する。
【0017】
また、車両用灯火管理装置において、ヘッドライト制御回路13には、ヘッドライトの光軸調整機構に駆動連結されたモータMと、同ヘッドライトのバルブBとがそれぞれ接続されている。ヘッドライト制御回路13は、ヘッドライトの灯火態様を変更する旨の制御信号が制御部15から入力されると、バルブBへの電圧や電流の制御を通じてヘッドライトの減光を行う。また、ヘッドライト制御回路13は、この制御信号が入力されたときにヘッドライトがハイビームの状態にある場合にはさらに、上記モータMの駆動を通じてヘッドライトをロービームへと切り替える。
【0018】
さらに、この車両用灯火管理装置において、メモリ14には、車両に固有の車両IDコード(例えば車両の製造シリアルナンバー)と、輝度閾値BTHおよび距離閾値DTHとが予め記憶されている。このうち輝度閾値BTHとしては、車両に搭乗したドライバーが他車両のヘッドライトを眩しいと感じるとき、すなわち他車両が光量過多や配光不良等の調光不良となっているときの、画像センサSENおよび画像認識MPU11を通じて取り込まれた他車両の画像の輝度が設定されている。一方、距離閾値DTHとしては、自車両の視界を妨げる可能性のある自車両からの距離が設定されている。
【0019】
こうした構成を有する車両用灯火管理装置において、制御部15は、メモリ14に記憶された上記車両IDコードを含む車両ID信号(識別信号)を送信しつつ、以下に示す高輝度対象物認識処理および調光制御のそれぞれを一定の時間毎に実行する。
【0020】
まず、上記高輝度対象物認識処理の処理手順を図2にフローチャートとして示し、このフローチャートを参照しつつ同高輝度対象物認識処理について説明する。
図2に示すように、制御部15では、ステップS11において、画像センサSENおよび画像認識MPU11を通じて他車両の画像が取り込まれる。そして、続くステップS12において、制御部15では、取り込んだ他車両の画像の輝度を示す輝度値が輝度閾値BTHよりも大きいか否かが判断される。このステップS12において上記他車両の画像の輝度値が上記輝度閾値BTHよりも大きいと判断された場合、制御部15では、続くステップS13において、上記他車両の画像中の高輝度画素の座標(xi,yi)が抽出される。すなわち、このステップS13において、制御部15では、調光不良となっている他車両が特定される。そして、ステップS14において、制御部15では、調光不良となっている他車両についての自車両からの車間距離D、およびこの調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位φがそれぞれ算出される。さらに、続くステップS15において、これら算出された車間距離Dおよび方位φに基づいて調光要求のための処理が実行される。なお、上記ステップS12において上記他車両の画像の輝度値が輝度閾値BTH以下であると判断された場合には、制御部15はここでの処理を一旦終了する。
【0021】
ここで、こうした高輝度対象物認識処理における上記車間距離Dおよび上記方位φの具体的な算出手順について、図3を参照しつつ詳細に説明する。図3は、画像センサSENおよび画像認識MPU11を通じて取り込まれた他車両の画像の一例を模式的に示したものである。なお、ここでは、図3に示す撮像画像において、手前の対向車両300のヘッドライトが光量過多の状態にあって、その輝度値が輝度閾値BTHよりも大きいものと仮定する。
【0022】
この場合、高輝度画素群の座標(xi,yi)は、対向車両300のヘッドライト周辺の座標となる。車間距離Dおよび方位φの算出にあたってはまず、図3に示すように、これら画素群の座標(xi,yi)から各ヘッドライトの中心座標(x1,y1)および(x2,y2)がそれぞれ求められる。さらに、中心座標(x1,y1)および(x2,y2)から、ヘッドライト間の距離W、および撮像画像を左右に二分する軸(Y軸)からの距離Vがそれぞれ求められる。そして、これら距離W,Vに基づいて上記車間距離Dおよび上記方位φが算出される。具体的には、車間距離Dは、上記距離Wに反比例することから、

車間距離D=α/W

なる関係式から算出される。一方、方位φについては、その正接(tanφ)が上記離間距離Vに比例することから、

tanφ=β×V

なる関係式から算出される。ここで、α,βは比例係数であり、画像センサSENおよび画像認識MPU11により取り込まれる他車両の撮像倍率によって定まる値である。なお、これら比例係数α,βは、画像センサSENおよび画像認識MPU11により取り込まれた他車両の画像における上記距離W,Vと、他車両についての自車両からの実際の距離および他車両についての自車両から見た実際の方位との対比のもとに予め求められる。
【0023】
次に、上記高輝度対象物認識処理のステップS15において実行される調光要求の処理内容について、図4に示すフローチャートを参照しつつその処理手順を説明する。
図4に示すように、制御部15では、まずステップS21において、上記車間距離Dが距離閾値DTHよりも小さいか否かが判断される。このステップS21において車間距離Dが距離閾値DTHよりも小さいと判断された場合、すなわち車間距離Dが、自車両の視界が妨げられる可能性のある距離を超えて短くなった場合、制御部15では、ステップS22において、上記ステップS14(図2)にて求められた方位φの方向を指向するように指向性アンテナ10aが操作される。具体的には、制御部15では、指向性アンテナ10aが上記方位φを指向するために必要とされるパルスモータへのパルス数を算出して同パルス数に応じたパルス信号を生成するとともに、同パルス信号をアンテナ駆動部10bに出力する。これにより、指向性アンテナ10aは、アンテナ駆動部10bによるパルスモータの駆動を通じてその指向する方位が変更され、上記ステップS14にて求められた方位φを指向するようになる。
【0024】
その後、続くステップS23において、制御部15では、指向性アンテナ10aを介して受信した車両ID信号から調光不良となっている他車両を同定する。そして、ステップS24において、制御部15では、上記ステップS23において受信した車両IDコードを返信する。すなわち、制御部15では、当該調光要求を通じて、上記車間距離Dが上記距離閾値DTHを超えて短くなるタイミングにて上記特定した他車両の車両ID信号が返信される。一方、上記ステップS21において車間距離Dが距離閾値DTH以上であると判断された場合、制御部15はここでの処理を一旦終了する。
【0025】
次に、制御部15によって実行される調光制御の処理手順を図5にフローチャートとして示し、このフローチャートを参照しつつ同調光制御について説明する。
図5に示すように、制御部15では、まずステップS31において自車両の車両ID信号が送信される。そして、続くステップS32において、自車両の車両ID信号が受信されたか否かが判断される。このステップS32において自車両の車両ID信号が受信されたと判断された場合、制御部15では、ステップS33において、ヘッドライトの灯火態様の変更を要求する旨の制御信号がヘッドライト制御回路13に出力される。これにより、ヘッドライトの減光が行われるとともに、同ヘッドライトがハイビームの場合にはロービームへと切り替えられる。一方、上記ステップS32において自車両の車両ID信号が受信されていないと判断された場合、制御部15はここでの処理を一旦終了する。このように、制御部15では、当該調光制御の実行を通じて、車両に固有の車両ID信号が送信されるとともに、自車両の車両ID信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御が行われる。
【0026】
さて、こうした構成を有する車両用灯火管理装置を備えた車両間では、上記車両ID信号の授受に基づいてそれら各車両の灯火態様が相互管理されることから、自車両の視界が好適に確保されるようになる。ここで、図6に示すように、上記車両用灯火管理装置を備えた3台の対向車両200,300,400と同じく上記車両用灯火管理装置を備えた自車両100との道路での擦れ違いを例にとり、各車両の灯火態様が相互管理される様子について説明する。なおここでは、対向車両300のヘッドライトが光量過多の状態にあり、且つ対向車両300についての自車両100からの車間距離Dが距離閾値DTHにて示される距離よりも短い場合を想定する。また、自車両100からは第1の車両ID信号が一定の時間毎に送信されており、対向車両200,300,400からはそれぞれ、第2の車両ID信号、第3の車両ID信号、第4の車両ID信号が一定の時間毎に送信されているものとする。図7は、自車両100と、対向車両200,300,400との間における処理の流れをシーケンスチャートとして示したものである。
【0027】
図7に示されるように、自車両100ではまず、ステップJ1において高輝度対象物の検出が行われるとともに(図2:ステップS11およびステップS12)、対向車両300のヘッドライト周辺の座標が高輝度画素群の座標として取得される(図2:ステップS13)。そして、自車両100では、続くステップJ2において、対向車両300についての自車両100からの車間距離Dおよび対向車両300についての自車両100から見た方位φがそれぞれ算出される(図2:ステップS14)。この算出された車間距離Dが距離閾値DTHで示される距離よりも短い場合、自車両100では、続くステップJ3において、上記方位φを指向するように指向性アンテナ10aが操作される(図4:ステップS21およびステップS22)。
【0028】
こうして指向性アンテナ10aが方位φを指向することにより、自車両100では、ステップJ4において、指向性アンテナ10aの指向する方位φに位置する対向車両300から送信される第3の車両ID信号が受信される。これにより、自車両100では、続くステップJ5において、調光不良となっている他車両として対向車両300が同定される(図4:ステップS23)。そして、ステップJ6において、自車両100では、上記ステップJ4にて受信した第3の車両ID信号が返信される(図4:ステップS24)。
【0029】
一方、対向車両200,300,400では、それぞれステップJ11,J21,J31において、自車両100から返信された第3の車両ID信号が受信される。このうち、対向車両300では、自車両の車両ID信号が受信されることから、ステップJ12においてヘッドライトの減光が行われる(図4:ステップS32,S33に相当)。これにより、自車両100のドライバーは、自車両の視界を好適に確保することができるようになる。
【0030】
なお本実施の形態では、上記制御部15が「調光要求手段」、「調光制御手段」、「方位検出手段」、および「距離検出手段」のそれぞれに相当する構成となっている。また、本実施の形態では、画像センサSENが「撮像装置」に、画像認識MPU11が「画像処理手段」に、アンテナ駆動部10b、受信回路10c、および送信回路12が「通信手段」にそれぞれ相当する構成となっている。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両用灯火管理装置によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
(1)画像センサSENおよび画像認識MPU11を通じて取り込まれた他車両の画像の輝度を示す輝度値が輝度閾値BTHよりも大きい場合、この輝度値が輝度閾値BTHを超える車両を調光不良となっている他車両として特定するようにした。また、輝度閾値BTHよりも輝度値が高い画素群の座標に基づいて、調光不良となっている他車両についての自車両からの車間距離Dおよび同他車両についての自車両から見た方位φをそれぞれ算出するようにした。この算出した車間距離Dが、自車両の視界を妨げる可能性のある距離として設定された距離閾値DTHよりも短い場合にはさらに、アンテナ駆動部10bによるパルスモータの駆動を通じて指向性アンテナ10aの指向する方位を上記方位φに変更するとともに、上記調光不良となっている他車両の車両ID信号を返信するようにした。これにより、ドライバーが眩しいと感じる光量過多や配光不良等の調光不良となっている他車両が、自車両の視界が妨げられる可能性の高い距離を越えて自車両に近づくと、自車両からは、その調光不良となっている他車両の車両ID信号が返信される。他車両では、自車両の車両ID信号が受信されると、自車両の灯火態様についての調光制御、例えばヘッドライトの減光が行われる。このため、たとえ交通量の多い道路等にあっても、自車両の視界が好適に確保されるようになる。
【0032】
(2)上記方位φの算出にあたっては、画像センサSENおよび画像認識MPU11により取り込まれる画像の画素群のうちの輝度を示す輝度値が上記輝度閾値BTHを超える画素群の座標から上記調光不良となっている他車両のヘッドライト間の距離W、および同画像を左右に二分する軸(Y軸)からの距離Vをそれぞれ求めるようにした。そして、これら距離W,Vと、画像センサSENおよび画像認識MPU11により取り込まれる他車両の撮像倍率によって定まる比例係数α,βとを用いて上記車間距離Dおよび上記方位φを算出するようにした。このため、上記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位φを、同方位φを検出するためのセンサ等を別途設ける必要がなくなり、車両灯火管理装置の構成を簡素なものとすることができる。
【0033】
(3)制御部15では、上記車間距離Dが上記距離閾値DTHを超えて短くなるタイミングにて、調光不良となっている他車両の車両ID信号を返信するようにした。これにより、自車両の視界を妨げる可能性のある他車両の車両ID信号のみが返信され、調光不良の状態にあっても自車両の視界を妨げる可能性のない他車両の車両ID信号は返信されないようになる。このため、制御部15の処理負荷を軽減することができる。
【0034】
なお、この発明にかかる車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、これら実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0035】
・画像センサSENとしては、上記実施の形態におけるCCDの他にも、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)を採用することができる。要するに、他車両の画像を取り込める構造の素子であればよく、任意の撮像素子を画像センサSENとして採用することができる。
【0036】
・上記実施の形態では、受信回路10cのアンテナ(指向性アンテナ10a)と送信回路12のアンテナとを別途設けるようにした。しかし、上記指向性アンテナ10aを受信回路10cと送信回路12とで共用するようにしてもよい。
【0037】
・本発明にかかる車両用灯火管理システムおよび車両用灯火管理装置は、調光不良となっている後続車両に対しても有効である。この場合、画像センサSENを、車両後方の撮像が可能となるように同車両の後方に設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる車両用灯火管理装置の一実施の形態についてその構成を模式的に示すブロック図。
【図2】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置において、制御部により実行される高輝度対象物認識処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置において、画像センサおよび画像認識MPUを通じて取り込まれる画像の一例を模式的に示す図。
【図4】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置において、制御部により実行される調光要求の処理手順を示すフローチャート。
【図5】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置において、制御部により実行される調光制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置を備えた他車両および自車両のすれ違い態様を模式的に示す平面図。
【図7】同実施の形態にかかる車両用灯火管理装置を備えた他車両および自車両の間で行われる処理の流れを示すシーケンスチャート。
【符号の説明】
【0039】
10…受信部、10a…指向性アンテナ、10b…アンテナ駆動部、10c…受信回路、11…画像認識MPU、12…送信回路、13…ヘッドライト制御回路、14…メモリ、15…制御部、SEN…画像センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固有の識別信号を送信しつつ自車両に固有の識別信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御を行う調光制御手段と、調光不良となっている他車両を特定してこの特定した他車両の調光制御手段から送信される固有の識別信号を同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信する調光要求手段とを車両毎に備え、車両間でのこれら調光要求手段および調光制御手段を通じた識別信号の授受に基づいてそれら各車両の灯火態様を相互管理する
ことを特徴とする車両用灯火管理システム。
【請求項2】
前記調光要求手段は、撮像装置により他車両の画像を取り込みつつその輝度を検出する画像処理手段を備え、この検出される輝度が予め定められた閾値を超える車両を前記調光不良となっている他車両として特定する
請求項1に記載の車両用灯火管理システム。
【請求項3】
前記調光要求手段は、前記特定した前記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を検出する方位検出手段と、この検出される方位を指向するように指向性アンテナを操作しつつ、同他車両の調光制御手段から送信される識別信号を受信するとともにこの受信した識別信号を返信する通信手段とを備える
請求項2に記載の車両用灯火管理システム。
【請求項4】
前記方位検出手段は、前記画像処理手段に取り込まれる画像の画素群のうちの輝度が前記閾値を超える画素群の座標と前記撮像装置の撮像倍率とに基づいて前記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を算出する
請求項3に記載の車両用灯火管理システム。
【請求項5】
前記調光要求手段は、前記特定した前記調光不良となっている他車両についての自車両からの距離を検出する距離検出手段を備え、この検出される距離が自車両の視界を妨げる可能性のある距離として定められる距離閾値を超えて短くなるタイミングにて前記特定した他車両の固有の識別信号を返信する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用灯火管理システム。
【請求項6】
車両に固有の識別信号を送信しつつ自車両に固有の識別信号が受信されることに基づいて自車両の灯火態様についての調光制御を行う調光制御手段と、調光不良となっている他車両を特定してこの特定した他車両の調光制御手段から送信される固有の識別信号を同特定した他車両も含めて自車両以外の車両に返信する調光要求手段とを備える車両用灯火管理装置。
【請求項7】
前記調光要求手段は、撮像装置により他車両の画像を取り込みつつその輝度を検出する画像処理手段を備え、この検出される輝度が予め定められた閾値を超える車両を前記調光不良となっている他車両として特定する
請求項6に記載の車両用灯火管理装置。
【請求項8】
前記調光要求手段は、前記特定した前記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を検出する方位検出手段と、この検出される方位を指向するように指向性アンテナを操作しつつ、同他車両の調光制御手段から送信される識別信号を受信するとともにこの受信した識別信号を返信する通信手段とを備える
請求項7に記載の車両用灯火管理装置。
【請求項9】
前記方位検出手段は、前記画像処理手段に取り込まれる画像の画素群のうちの輝度が前記閾値を超える画素群の座標と前記撮像装置の撮像倍率とに基づいて前記調光不良となっている他車両についての自車両から見た方位を算出する
請求項8に記載の車両用灯火管理装置。
【請求項10】
前記調光要求手段は、前記特定した前記調光不良となっている他車両についての自車両からの距離を検出する距離検出手段を備え、この検出される距離が自車両の視界を妨げる可能性のある距離として定められる距離閾値を超えて短くなるタイミングにて前記特定した他車両の固有の識別信号を返信する
請求項6〜9のいずれか一項に記載の車両用灯火管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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