説明

車両用照明装置

【課題】運転者が配光の制御状態を確認することができるようにすることを目的とする。
【解決手段】前照灯12の配光領域を幅方向に複数に分割してそれぞれの分割領域22に対して光の照射や非照射を可能とすると共に、予め定めた点灯領域(対向車のグレア光の影響が少ない位置(路面))24へ光の照射状態や非照射状態を変更可能とする。そして、対向車を検出し、検出した対向車に対応する分割領域22を非照射状態にし、これに連動して、点灯領域24を非照射状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置にかかり、特に、前照灯等の配光を制御する車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前照灯等の配光を制御する車両用照明装置としては、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、複数のLED光源で構成され、各LED光源の点灯を制御することで、複数に分割した分割領域のそれぞれの分割領域毎に配光を変更可能な前照灯と、車両前方を撮影するカメラと、前照灯の配光を制御する配光制御ECUと、を備えて、配光制御ECUがカメラの撮影結果に基づいて対向車を検出し、対向車を検出した場合に、対向車に対応する分割領域を特定して、特定した分割領域及び該分割領域の車両外側方向に隣接する分割領域へ照射される光が非照射となるように配光制御することにより、対向車に対するグレア光を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、故障などで対向車に対応する分割領域が消灯されない場合に、運転者が前照灯をハイビームからロービームに切換える必要があるが、特許文献1に記載の技術では、対向車の前照灯によるグレア光の影響により、分割領域の照射状態が分り難く、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、運転者が配光の制御状態を確認し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、複数に分割した配光領域のそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされ、且つ乗員が視認可能な予め定めた位置に前記分割領域の各々に対応して設けられた点灯領域への光の照射状態が変更可能な車両用照明手段と、前記分割領域の配光の変更に連動して、前記点灯領域の前記照射状態を前記分割領域の配光を変更させる前の状態と異なる状態となるように変更させる連動手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車両用照明手段では、複数に分割した配光領域のそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされていると共に、乗員が視認可能な予め定めた位置に分割領域の各々に対応して設けられた点灯領域への光の照射状態が変更可能とされている。
【0009】
そして、連動手段によって、分割領域の配光の変更に連動して点灯領域の照射状態が分割領域の配光を変更する前と異なる状態となるように変更される。すなわち、分割領域の配光が変更されると、点灯領域の照射状態が連動して変更されるので、点灯領域の照射状態を確認することにより、配光の制御状態を確認することができる。
【0010】
また、点灯領域が乗員が視認可能な予め定めた位置に設けられているため、点灯領域への光の照射状態を乗員が視認することができるので、分割領域の配光制御の状態を乗員が確実に確認し易くすることができる。
【0011】
例えば、請求項2に記載の発明のように、車両用照明手段が、複数の分割領域に対応して設けられ、かつ点灯、及び消灯または減光によって配光を変更する複数の光源を有し、連動手段が、複数の光源に設けられ、光源からの光を点灯領域へ導光する導光手段からなるようにしてもよい。すなわち、複数の光源の点灯、消灯、減光等が変更されることによって各分割領域の配光を変更することができ、導光手段によって各光源の光が点灯領域へ導光されるので、分割領域の配光の変更に連動して点灯領域の照射状態を変更することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明のように、車両用照明手段が、光を照射する光源と、複数の分割領域及び点灯領域に対応して設けられ、光源から分割領域へ照射される光の状態を変更するための複数の変更手段を有する光変調素子と、を有し、連動手段が、光変調素子の変更手段を制御する素子制御手段を有するようにしてもよい。すなわち、光源から分割領域及び点灯領域へ照射される光の状態が変更手段によって変更されることによって各分割領域の配光を変更することができると共、点灯領域の照射状態を変更することができ、素子制御手段が光変調素子を制御することによって、分割領域の配光の変更に連動して点灯領域の照射状態を変更することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、車両用照明手段が、複数の分割領域に対応して設けられた複数の第1光源と、点灯領域に対応して設けられた複数の第2光源と、を有し、連動手段が、第1光源及び第2光源の点灯状態を制御する光源制御手段を有するようにしてもよい。すなわち、第1光源の点灯状態を変更することで複数の分割領域の配光を変更することができ、光源制御手段が、第1光源の点灯状態の変更に連動して第2光源の点灯状態を変更することによって、分割領域の配光の変更に連動して点灯領域の照射状態を変更することができる。
【0014】
なお、請求項1又は請求項2に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、車両用照明手段の配光を変更する必要がある照明対象を検出する検出手段と、検出手段によって照明対象が検出された場合に、照明対象に対応する分割領域を特定する特定手段と、特定手段によって特定された分割領域の配光を変更するように、車両用照明手段を制御する制御手段と、を更に備えようにしてもよい。この場合には、請求項6に記載の発明のように、検出手段が、前方車両を前記照明対象として検出し、制御手段が、特定手段によって特定された分割領域へ照射される光が非照射状態または減光されるように、車両用照明手段を制御するようにしてもよい。
【0015】
また、請求項3又は請求項4に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、車両用照明手段の配光を変更する必要がある照明対象を検出する検出手段と、検出手段によって照明対象が検出された場合に、照明対象に対応する分割領域を特定する特定手段と、特定手段によって特定された分割領域の配光を変更すると共に、特定された分割領域に対応する点灯領域の照射状態を変更するように、連動手段を制御する制御手段と、を更に備えるようにしてもよい。この場合には、請求項8に記載の発明のように、検出手段が、車両を前記照明対象として検出し、制御手段が、特定手段によって特定された分割領域へ照射される光が非照射状態または減光されると共に、特定された分割領域に対応する点灯領域へ照射される光が非照射状態となるように、連動手段を制御するようにしてもよい。
【0016】
なお、請求項9に記載の発明のように、複数に分割した配光領域のそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされ、且つ乗員が視認可能な予め定めた位置に各前記分割領域に対応して設けられた点灯領域への光の照射状態が変更可能な車両用照明手段と、前記配光を変更すると共に、前記分割領域の配光の変更に連動して、前記点灯領域の前記照射状態を分割領域の配光を変更する前と異なる状態に変更するように前記車両用照明手段を制御する制御手段と、を備えるようにしてもよい。すなわち、制御手段によって配光を変更すると共に、分割領域の配光の変更に連動して、点灯領域の照射状態を分割領域の配光を変更する前と異なる状態に変更するように車両用照明手段を制御するようにしても請求項1と同様に、分割領域の配光が変更されると、点灯領域の照射状態が連動して変更されるので、点灯領域の照射状態を確認することにより、配光の制御状態を確認することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、分割領域の配光の変更に連動して点灯領域への光の照射状態が変更されるので、点灯領域を確認することにより、運転者が配光の制御状態を確認し易くすることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の前照灯の配光範囲の分割領域及び点灯領域を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置に適用される前照灯の一例を示す図であり、(A)は概略構成を示し、(B)、(C)は点灯領域へ光を照射する構成の一例を示す。
【図4】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の前照灯の分割領域を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の配光制御ECUで行われる配光制御ルーチンの流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置で行われる配光制御を説明するあめの図である。
【図7】(A)はハイビームの分割領域とロービームの分割領域に分けてロービームの分割領域を点灯領域として使用する例を示す図であり、(B)は対向車に対応するハイビーム領域の分割領域を非照射状態としてこれに対応するロービーム領域の分割領域を照射状態とする例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置に適用可能な前照灯の他の例を示す図であり、(A)は概略構成を示し、(B)はDMDの概略を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置に適用可能な前照灯の他の例における配光制御の例を説明するための図であり、(A)は対向車に対応する分割領域及び当該分割領域に対応する点灯領域を非照射状態とする例を示し、(B)は対向車に対応する分割領域を非照射状態として当該分割領域へ照射する光を点灯領域へ照射する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10は、車両に設けられた前照灯12が、配光制御ECU14に接続されており、配光制御ECU14によって前照灯12の点灯や消灯が制御される。
【0021】
本実施の形態では、配光制御ECU14は、前照灯12の配光領域のうち対向車等の他前方車両に対応する領域へ照射される光が減光または非照射となるように配光制御を行う。
【0022】
配光制御ECU14は、CPU14A、RAM14B、ROM14C、及びI/O14Dを含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0023】
配光制御ECU14のROM14Cには、前照灯12の配光制御を行うためのテーブルや後述する配光制御ルーチンを実行するためのプログラム等が記憶され、RAM14Bは、CPU14Aによって行われる各種演算等を行うメモリ等として使用される。
【0024】
I/O14Dには、スイッチ16、カメラ18、及び前照灯ドライバ20が接続されており、スイッチ16の操作状態や、カメラ18による車両前方の撮影結果が配光制御ECU14に入力される。
【0025】
スイッチ16は、前照灯12のオンオフの指示が可能とされると共に、ロービームとハイビームの指示が可能とされて、指示結果を配光制御ECU14へ出力する。また、カメラ18は、車両前方を撮影して撮影結果を配光制御ECU14に出力する。
【0026】
そして、配光制御ECU14は、スイッチ16の状態に応じて前照灯ドライバ20を制御して、前照灯12の点灯を行うと共に、カメラ18の撮影結果に基づいて、対向車等の前方車両を検出して、対向車等の前方車両に対応する領域へ前照灯12から照射される光を減光または非照射状態となるように、前照灯12の配光を制御する。これによって、対向車等の前方車両へのグレア光を抑制する。
【0027】
前照灯12は、車両の前端部に2つ設けられており、図2に示すように、前照灯12の配光領域を幅方向に複数に分割してそれぞれの分割領域22に対して光の照射や非照射が可能とされ、各分割領域22毎に配光が変更可能とされている。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、各分割領域22への光の照射や非照射(減光でもよい)が制御される。
【0028】
また、本実施の形態では、前照灯12は、予め定めた点灯領域(対向車のグレア光の影響が少ない位置(路面))24へ光の照射や非照射(減光でもよい)が可能とされており、分割領域22の配光制御に連動して、点灯領域24への光の照射や非照射が行われる。点灯領域24は、例えば、対向車のグレアの影響が少ない位置への光の照射や非照射を行うことによって、各分割領域22への配光制御状態を乗員へ報知することができる。
【0029】
図3(A)は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10に適用される前照灯12の一例を示す図である。
【0030】
本実施の形態の前照灯12は、図3(A)に示すように、複数のLED光源26を備えたものが適用される。前照灯ドライバ20が複数のLED光源26の点灯や消灯を制御することによって、図2に示す各分割領域22への光の照射や非照射を行うことができる。図3(A)では、複数のLED光源26を備えたLEDランプ28を2灯備えた前照灯の一例を示し、一方のLEDランプ28をロービーム用、他方のLEDランプ28をハイビーム用として使い分けるようにしてもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、各LED光源26は、図3(B)に示すように、LED30から出力される光を反射するリフレクタ32及びレンズ34を備えていると共に、リフレクタ32とレンズ34間に開口36Aを設けた遮光板36が設けられている。すなわち、LED30から出力された光がリフレクタ32によって反射されて遮光板36の開口36Aを通過することにより、開口36Aを通過した光により上述の点灯領域24へ光が照射されるようになっている。
【0032】
なお、遮光板36の代わりに、図3(C)に示すように、リフレクタ32とレンズ34間に反射板38を設けて点灯領域24へ光を照射するようにしてもよい。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10の前照灯12の分割領域を説明するための図である。
【0034】
本実施の形態の前照灯12の分割領域の分割パターンは、一例として、図4(A)に示すように、車幅方向の略中央部分の分割領域の分割幅が車幅方向端部よりも車幅方向に短く設定され、車幅方向外側に向かって除除に車幅方向に長い分割領域となるように設定されている。なお、分割パターンは、これに限るものではなく、例えば、全ての分割領域22が略均等の幅とされていてもよい。
【0035】
また、前照灯12は、各分割領域22に対応するLED光源26が予め設定されており、複数のLED光源26を選択的に点灯することによって、各分割領域22毎の点灯や消灯を行う。また、各分割領域毎の点灯や消灯に連動して点灯領域24の点灯や消灯も行われる。
【0036】
例えば、本実施の形態では、図4(B)に示すように、分割領域No.1に対応するLED光源26は、LED光源No.1〜6に対応させ、分割領域No.2に対応するLED光源26は、LED光源No.7〜9に対応させ、分割領域No.10〜12に対応するLED光源26は、LED光源No.13、14に対応させ、分割領域No.15、16に対応するLED光源26は、LED光源No.17〜19に対応させ、分割領域No.20〜22に対応するLED光源26は、LED光源No.23〜27に対応させる。そして、各分割領域22に対応させたLED光源26の点灯や消灯を制御することで、各分割領域毎の光の照射や非照射が可能となるので、図4(B)に示す対応を光源分割領域対応関係テーブル40としてROM14C等に記憶しておき、配光制御ECU14が当該光源分割領域対応関係テーブル40を用いて点灯制御することで、各分割領域毎に前照灯12の点灯や消灯が可能となると共に、各分割領域に対応した点灯領域24の点灯や消灯が可能となる。
【0037】
なお、各分割領域の大きさは、分割領域に対応するLED光源26の数で設定するようにしてもよいし、レンズや光源の大きさ、或いは特性等で分割領域の大きさを決定するようにしてもよい。
【0038】
続いて、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10で行われる配光制御について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10の配光制御ECU14で行われる配光制御ルーチンの流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5に示す配光制御ルーチンは、乗員のスイッチ16の操作によって、前照灯12の点灯が指示された場合等に開始する。また、スイッチ16に自動点灯モードを備える場合には、乗員によって自動点灯が指示されて、前照灯12を点灯する所定の条件が満たされた場合に開始するようにしてもよい。
【0039】
乗員のスイッチ16の操作によって前照灯12の点灯が指示されると、ステップ100では、前照灯12が点灯される。すなわち、CPU14AがI/O14Dを介して前照灯ドライバ20を制御することによって前照灯12を点灯させる。これによって、各LED光源26の光が各分割領域22へ照射されると共に、各LED光源26の遮光板36の開口36Aによって分割領域22に対応する点灯領域24へ光が照射される。
【0040】
ステップ102では、カメラ18によって車両前方を撮影した撮影結果がI/O14Dを介して配光制御ECU14に取得されてステップ104へ移行する。
【0041】
ステップ104では、カメラ18の撮影結果に基づいて対向車がCPU14Aによって検出されてステップ106へ移行する。なお、対向車の検出は、種々の既知の技術を用いて検出可能であり、例えば、画像処理を持ち家光輝点を検出する等の処理を行うことによって対向車を検出することができる。
【0042】
続いて、ステップ106では、対向車が存在するか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合にはステップ112へ移行する。
【0043】
ステップ108では、対向車が存在する領域に対応する分割領域がCPU14Aによって特定されてステップ110へ移行する。
【0044】
ステップ110では、特定した分割領域が消灯され、他の分割領域が点灯されてステップ114へ移行する。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、特定した分割領域に対応するLED光源26を消灯し、他のLED光源26を点灯する。これによって、対向車に対応する分割領域22への光が非照射となるので、ハイビームで走行しても対向車へのグレア光を抑制することができる。また、各LED光源26は、LED30から出力された光が分割領域22の他に、遮光板36の開口36Aによって対向車のグレアの少ない位置とされた点灯領域24へも照射される。すなわち、光が照射される分割領域22に対応する点灯領域24へ光が照射されると共に、光が照射されない分割領域22に対応する点灯領域24へは光が照射されないので、乗員が点灯領域24を確認することによって配光制御された状態を確認することができる。
【0045】
一方、ステップ112では、配光がリセット、すなわち、配光制御が行われている分割領域22が消灯されている場合があるので、配光制御をリセットすることにより、全ての分割領域22を点灯してステップ114へ移行する。
【0046】
そして、ステップ114では、スイッチ16がオフされたか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が否定された場合にはステップ102に戻って上述の処理が繰り返され、ステップ114の判定が肯定されたところでステップ116へ移行して、前照灯12を消灯して一連の処理を終了する。
【0047】
このように、本実施の形態に係わる車両用照明装置10は、前照灯12が点灯されると、各分割領域22へ光が照射されると共に、各分割領域22に対応する点灯領域24へ光が照射される。そして、カメラ18の撮影画像から対向車が検出されると、図6に示すように、対向車に対応する分割領域(図6では、分割領域No.6)へ照射される光が非照射状態とされ、これによってハイビームで走行していても対向車へのグレア光を抑制することができる。
【0048】
また、非照射状態とされた分割領域22に対応する点灯領域(分割領域No.6に対応する分割領域)24へ照射される光も連動して非照射状態とされるので、点灯領域24の点灯状態を確認することによって前照灯12の配光制御の状態を確認し易くすることができる。この時、点灯領域24を対向車のグレア光の影響が少ない位置(路面)に照射するので、分割領域22の点灯状態よりも点灯領域の点灯状態を確認し易く、配光制御の状態を容易に確認することができる。また、故障等によって、対向車に対応する分割領域へ照射される光が非照射状態にならない場合には、点灯領域24も非照射状態とならないので、点灯領域24を確認することによって、対向車へのグレア光を抑制するために。運転者がハイビームからロービームに切換えることもできる。
【0049】
ところで、上記の実施の形態では、LED光源26に開口36Aを設けた遮光板36や反射板38を用いて点灯領域24へ光を照射する例を説明したが、点灯領域24への光の照射はこれに限るものではなく、点灯領域24へ光を照射するための別の光源を設け、分割領域22に対応するLED光源26の点灯や消灯に連動して、別に設けた光源の点灯や消灯を制御するようにしてもよい。
【0050】
例えば、上記実施の形態と同様に、複数のLED光源26を備えた前照灯12を適用して、各分割領域へ照射するLED光源26と、各分割領域に対応する点灯領域24へ照射するLED光源26とを予め割り当ててROM14C等に記憶しておき、対向車を検出した際に、対向車に対応する分割領域22へ照射するLED光源26を消灯すると共に、当該分割領域22に対応する点灯領域24へ照射するLED光源26を消灯する。このように分割領域22へ照射する光源と、点灯領域24へ照射する光源を別光源としても上記実施形態と同様に、対向車へのグレア光を抑制することができると共に、点灯領域24の点灯状態によって前照灯の配光制御の状態を確認し易くすることができる。また、複数のLED光源26を分割領域22及び点灯領域24に割り当てる際に、図7(A)に示すように、ハイビームの分割領域と、ロービームの分割領域に分け、ロービームの分割領域22を点灯領域24として使用するようにしてもよい。
【0051】
また、分割領域22と点灯領域24とで異なる光源を用いる場合には、対向車に対応する分割領域22を非照射としてこれに連動して、点灯領域24を非照射状態ではなく非照射状態から照射状態にするようにしてもよい。例えば、図7(B)に示すように、ハイビーム領域とロービーム領域に分けた場合に、ハイビーム領域のみ点灯して、対向車を検出した場合に対向車に対応するハイビーム領域の分割領域22を非照射状態とすると共に、これに対応するロービーム領域の分割領域22を点灯領域24として照射状態とするようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記の実施の形態では、前照灯12として複数のLED光源26を備えたものを一例として説明したが、前照灯12はこれに限るものではなく、例えば、図8(A)に示すように、1つの光源42からの光をDMD(Digital Micromirror Device)44によって反射して、レンズ46を介して車両前方を照射する前照灯を適用するようにしてもよい。DMD44は、図8(B)に示すように、複数のマイクロミラー48を備えており、各マイクロミラー48の回転が制御可能なデバイスである。すなわち、図8(A)に示すように、前照灯ドライバ20として光源42を点灯する光源ドライバ50と、DMD44の各マイクロミラー48の回転を駆動するDMDドライバ52と、を設けて、光源ドライバ50によって光源42を点灯して、DMDドライバ52によってDMD44の各マイクロミラー48の回転を制御することによって、分割領域22及び当該分割領域22に対応する点灯領域24への光の照射や非照射を制御することができる。例えば、図9(A)に示すように、対向車に対応する分割領域22及び対応する点灯領域24を非照射状態にする場合には、非照射状態にする分割領域22及び点灯領域24に対応するマイクロミラー48を回転して他の部分へ反射することによって分割領域22及び点灯領域24を非照射状態にすることができる。なお、DMD44を用いた場合には、分割領域22の非照射状態に連動して点灯領域24を非照射状態にするのではなく、分割領域22の非照射状態に連動して点灯領域24を照射状態とするようにしてもよい。例えば、非照射状態にする分割領域22に対応するマイクロミラー48を回転駆動して、図9(B)に示すように、点灯領域24へ光を照射するようにしてもよい。
【0053】
また、適用可能な前照灯12の他の例としては、例えば、光を遮断する複数のシャッタ等を設けて、各シャッタの大きさや複数のシャッタ等を分割領域に対応させて、図2に示す各分割領域22の点灯や消灯を可能としてもよいし、DMD44の代りにDMD44以外の液晶素子等の光変調素子等を用いるようにしてもよい。
【0054】
また、上記の実施の形態では、照明対象として対向車を検出して、対向車に対応する分割領域22を非照射状態または減光するようにしたが、照明対象としては、歩行者や自転車等を適用するようにしてもよい。また、照明対象として歩行者や自転車を検出する場合に、運転者の運転視認性を良くするために、照明対象に対応する分割領域22へ光を照射する配光制御としてもよい。この場合には、照明対象に対応する分割領域22への配光の変更に連動して、対応する点灯領域24の配光を変更すればよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用照明装置
12 前照灯
14 配光制御ECU
18 カメラ
20 前照灯ドライバ
22 分割領域
24 点灯領域
26 LED光源
30 LED
32 リフレクタ
34 レンズ
36 遮光板
38 反射板
42 光源
44 DMD
48 マイクロミラー
52 DMDドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割した配光領域のそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされ、且つ乗員が視認可能な予め定めた位置に前記分割領域の各々に対応して設けられた点灯領域への光の照射状態が変更可能な車両用照明手段と、
前記分割領域の配光の変更に連動して、前記点灯領域の前記照射状態を前記分割領域の配光を変更させる前の状態と異なる状態となるように変更させる連動手段と、
を備えた車両用照明装置。
【請求項2】
前記車両用照明手段は、前記複数の分割領域に対応して設けられ、かつ点灯、及び消灯または減光によって配光を変更する複数の光源を有し、
前記連動手段は、前記複数の光源に設けられ、前記光源からの光を前記点灯領域へ導光する導光手段からなる請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記車両用照明手段は、光を照射する光源と、前記複数の分割領域及び前記点灯領域に対応して設けられ、前記光源から前記分割領域へ照射される光の状態を変更するための複数の変更手段を有する光変調素子と、を有し、
前記連動手段は、前記光変調素子の前記複数の変更手段を制御する素子制御手段を有する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記車両用照明手段は、複数の前記分割領域に対応して設けられた複数の第1光源と、前記点灯領域に対応して設けられた複数の第2光源と、を有し、
前記連動手段は、前記第1光源及び前記第2光源の点灯状態を制御する光源制御手段を有する請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項5】
前記車両用照明手段の配光を変更する必要がある照明対象を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記照明対象が検出された場合に、前記照明対象に対応する前記分割領域を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記分割領域の配光を変更するように、前記車両用照明手段を制御する制御手段と、
を更に備えた請求項2に記載の車両用照明装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前方車両を前記照明対象として検出し、前記制御手段は、前記特定手段によって特定された前記分割領域へ照射される光が非照射状態または減光されるように、前記車両用照明手段を制御する請求項5に記載の車両用照明装置。
【請求項7】
前記車両用照明手段の配光を変更する必要がある照明対象を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記照明対象が検出された場合に、前記照明対象に対応する前記分割領域を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記分割領域の配光を変更すると共に、特定された前記分割領域に対応する前記点灯領域の前記照射状態を変更するように、前記連動手段を制御する制御手段と、
を更に備えた請求項3又は請求項4に記載の車両用照明装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前方車両を前記照明対象として検出し、前記制御手段は、前記特定手段によって特定された前記分割領域へ照射される光が非照射状態または減光されると共に、特定された前記分割領域に対応する前記点灯領域へ照射される光が非照射状態となるように、前記連動手段を制御する請求項7に記載の車両用照明装置。
【請求項9】
複数に分割した配光領域のそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされ、且つ乗員が視認可能な予め定めた位置に各前記分割領域に対応して設けられた点灯領域への光の照射状態が変更可能な車両用照明手段と、
前記配光を変更すると共に、前記分割領域の配光の変更に連動して、前記点灯領域の前記照射状態を分割領域の配光を変更する前と異なる状態に変更するように前記車両用照明手段を制御する制御手段と、
を備えた車両用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−280302(P2010−280302A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135490(P2009−135490)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】