説明

車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造

【課題】 サイドステート熱交換器との間の隙間が大きい場合でも、3次元的に導風効果と吹き返し防止効果を両立させることができると共に、エアーガイドの剛性を確保し、かつ、材料的に安価で軽量化が可能な熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造の提供。
【解決手段】 エアーガイド6、6が、横断面が略直角三角形状に形成された中実の発泡体で一体に構成されていて、その直角に交わる一方の面6aがサイドステー13、13と空調用コンデンサ2およびラジエータ3との間の隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面6bがグリルからの空気を空調用コンデンサ2およびラジエータ3方向へ導く導風部の役目をなすようにラジエータコアサポート2に対し取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用熱交換器(コンデンサ、ラジエータ等)を通過した空気は、熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドの車両後方側開口部を経由してエンジンルーム内に流れ込み、その後、アンダーカバー等の穴から排気される。ところが、アイドリング中や、極低速走行中には、熱交換器を通過して熱交換された熱気が、車体パネル(ラジエータコアサポート等)と熱交換器との隙間等から流出し、再び熱交換器に導かれる、いわゆる吹き返しと呼ばれる現象が発生することがあり、この吹き返しが多く発生した場合、熱交換器は吹き返し熱気で熱交換することとなるため、冷却性能が低下し、熱交換器の性能を十分に利用できなくなる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そこで、従来では、グリルからの導風機能とエンジンルーム内からの熱風吹き返し防止機能を目的とし、樹脂材(PP、LDPE)を用いた平板状のエアーガイドを左右両サイドステーからバンパレインフォースおよびバンパフェイシアまで延ばすことによって隙間を塞ぐようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−104235号公報 (明細書 頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラジエータコアサポートを共用する車種のうち、車両幅方向において、ラジエータコアサポートの骨格部(左右両サイドステー相互の間隔)に対して熱交換器のコア幅(車幅方向幅)が短い場合、1部品構成で導風効果と吹き返し防止効果を両立させることは困難であるという問題がある。
【0006】
また、平板状のエアーガイドの組み合わせでは、吹き返し防止のための3次元的な隙間を閉塞することは困難である。
また、平板状のエアーガイドでは、塞ぐ隙間が広いと剛性確保が困難であり、また、材料費が高く付くと共に、重量も重くなる。
【0007】
さらに、平板状のエアーガイドの組み付けには、クリップやボルトが用いられていたため、部品点数の増加によりコストアップを招くと共に、作業能率を悪化させるという問題もある。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、サイドステーと熱交換器との間の隙間が大きい場合でも、3次元的に導風効果と吹き返し防止効果を両立させることができると共に、エアーガイドの剛性を確保し、かつ、材料的に安価で軽量化が可能な熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造を提供することにあり、部品点数の減少によるコストの低減化と、作業能率の向上を可能にすることを追加の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造は、熱交換器が組み付けられるラジエータコアサポートにおける左右両サイドステーと熱交換器側縁部との間をエアーガイドで閉塞する熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造であって、前記エアーガイドが、横断面が略直角三角形状に形成された中実の発泡体で一体に構成されていて、その直角に交わる一方の面が前記サイドステーと前記熱交換器との間の前記隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面がグリルからの空気を熱交換器方向へ導く導風部の役目をなすように前記ラジエータコアサポートに対し取り付けられていることを特徴とする手段とした。
【0010】
請求項2記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造は、請求項1に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造において、前記サイドステーは合成樹脂によりその車両前面側が開口する横断面が略コ字状に形成されると共に該開口部には複数の横向きリブが形成され、前記エアーガイドはその車両の後方面側に突出形成された係合部を前記サイドステーの開口部内に差し込み装着されると共に、バンパレインフォースが前記エアーガイドの車両前面側に当接した状態で前記ラジエータコアサポートに対し組み付けられることによって前記エアーガイドが前記ラジエータコアサポートに対し取り付け固定されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造では、上述のように、前記エアーガイドが、横断面が略直角三角形状に形成された中実の発泡体で一体に構成されていて、その直角に交わる一方の面がサイドステーと前記熱交換器との間の隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面がグリルからの空気を熱交換器方向へ導く導風部の役目をなすようにラジエータコアサポートに対し取り付けられている構成としたことにより、左右両サイドステー相互の間隔に対して熱交換器のコア幅(車幅方向幅)が短くてサイドステーと熱交換器との間の隙間が大きい場合でも、3次元的隙間を1部品構成で閉塞し、これにより、導風効果と吹き返し防止効果を両立させることができるようになるという効果が得られる。
【0012】
また、エアーガイドが中実の発泡体で一体に構成されることにより、その剛性を確保することができると共に、材料的に安価であり、かつ軽量化が可能となる。
【0013】
請求項2記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造では、前記サイドステーは合成樹脂によりその車両前面側が開口する横断面が略コ字状に形成されると共に該開口部には複数の横向きリブが形成され、エアーガイドはその車両の後方面側に突出形成された係合部をサイドステーの開口部内に差し込み装着されると共に、バンパレインフォースがエアーガイドの車両前面側に当接した状態でラジエータコアサポートに対し組み付けられることによってエアーガイドがラジエータコアサポートに対し取り付け固定されている構成としたことで、エアーガイドの取り付けにクリップやボルト等の別部品の使用を省略することができ、これにより、部品点数の削減によるコストの低減化と、作業能率の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
この実施例の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造は、請求項1、2に記載の発明に対応する。
まず、この実施例の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はこの実施例の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造が適用された熱交換器部分を示す車両後方からの斜視図、図2は図1のII−II線における横断面図、図3は図1のIII−III 線における横断面図、図4はラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図、図5はラジエータコアサポートにエアーガイドを取り付ける状態を示す車両前方からの分解斜視図、図6はラジエータコアサポートにエアーガイドを取り付けた状態を示す車両前方からの斜視図である。
【0017】
この車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造が適用された熱交換器部分は、ラジエータコアサポート1と、空調用コンデンサ(熱交換器)2と、ラジエータ(熱交換器)3と、電動ファン4と、モータファンシュラウド5と、エアーガイド6、6と、バンパレインフォース8と、を主な構成として備えている。
【0018】
さらに詳述すると、前記ラジエータコアサポート1は、図4に示すように、ラジエータコアサポートアッパ11と、ラジエータコアサポートロア12と、左右両サイドステー13、13と、サイドメンバ取付けプレート14、14と、センタステー15と、バンパステー16、16と、を主な構成として備えている。
【0019】
前記ラジエータコアサポートアッパ11は、金属製薄肉閉断面の角パイプで構成されるアッパセンタ11aと金属製のアッパサイド11b、11bとで構成され、前記ラジエータコアサポートロア12は断面略コ字状の金属板で一体に構成されている。
【0020】
また、前記ラジエータコアサポートアッパ11の他には、サイドメンバ取付けプレート14、14と、バンパステー16、16が金属で構成され、センタステー15およびサイドステー13、13は樹脂で構成されている。
【0021】
そして、前記センタステー15と、サイドステー13、13の上端部と下端部は、前記ラジエータコアサポートアッパ11におけるアッパセンタ11aとラジエータコアサポートロア12に対し、射出成形によりその外周面を包み込む状態で樹脂をオーバーモールドすることにより結合一体化されている。
【0022】
前記両サイドメンバ取付けプレート14、14は、サイドステー13、13の後面側と、該サイドステー13、13より外側に突出するラジエータコアサポートロア12の両端部後面に対しボルトで締結固定されている。
【0023】
前記バンパステー16、16は、バンパレインフォース8をサイドメンバ取付けプレート14、14に対して固定することにより、クラッシュボックスとしての役目をなすもので、サイドメンバ取付けプレート14、14の車両前面側にボルトにより固定されている。
【0024】
前記空調用コンデンサ2およびラジエータ3は、左右両端部にそれぞれタンク部21、21,31、31を備えていて、それぞれ前記ラジエータコアサポートアッパ11とラジエータコアサポートロア12に対し図示を省略したインシュレータを介して取り付けられるようになっている。
【0025】
なお、この実施例では、空調用コンデンサ2およびラジエータ3の車幅方向の長さが両サイドステー13、13相互間の間隔に比べて短かく、このため、空調用コンデンサ2およびラジエータ3を車両左側のサイドステー13方向に寄せた状態で取り付けられることにより、車両右側のサイドステー13との間に大きな隙間が形成されるようになっている。
【0026】
そこで、この隙間を閉塞するものとして前記発泡ポリプロピレン等の中実の発泡体で構成される断面略直角三角形状のエアーガイド6がそれぞれ組み付けられている。即ち、車両右側のエアーガイド6を図3に示すように、直角に交わる一方の面6aが車両右側のサイドステー13と空調用コンデンサ2およびラジエータ3との間の前記隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面6bがグリルからの空気を空調用コンデンサ2方向へ導く導風部の役目をなすようになっている。
【0027】
前記サイドステー13、13は、図3〜5に示すように、合成樹脂によりその車両前面側が開口する横断面が略コ字状に形成されると共に、該開口部13aには複数の横向きリブ13bが形成されている。
【0028】
そして、前記エアーガイド6は、図3、6に示すように、その車両の後方面側に突出形成された係合部6aをサイドステー13、13の開口部13a内に差し込み装着すると共に、バンパレインフォース8をエアーガイド6の車両前面側に形成された係合凹部6c内に係合当接させた状態でバンパステー16に対しボルトで締結固定されることによって、エアーガイド6がラジエータコアサポート2に対し取り付け固定されるようになっている。
【0029】
また、前記アッパセンタ11aは、図2に示すように、その下面側に沿って樹脂がモールドされ、該樹脂モールド部7から車両後方へ向けて延長するフランジ7aが一体に形成されている。
【0030】
また、前記モータファンシュラウド5は、前記電動ファン4をラジエータ3の後方に取り付けると共に、ラジエータ3の外周と電動ファン4の外周との間の隙間を塞ぐ役目をなすもので、ラジエータ3の後面外周縁部に対し取り付けられている。
このモータファンシュラウド5は、ラジエータ3側の開口上縁部がラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長するフランジ5aが一体に形成されている。
【0031】
そして、前記アッパセンタ11a側のフランジ7aに対しフランジ5aの方が上になるように両フランジ7a、5aの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されている構成とすることにより、ラジエータ3の上方からの熱風の吹き返しを抑制するようになっている。
【0032】
また、前記モータファンシュラウド5は、ラジエータ3側の開口下縁部を一端車両後方へ延長させた後、ラジエータコアサポートロア12の後面に対し非接触状態で重なる垂下部を有するフランジ5bが一体に形成されている構成とすることにより、別体のフランジを準備することなしに、ラジエータ3の下方からの熱風の吹き返しを抑制することができるようになっている。
【0033】
次に、この実施例の作用・効果を説明する。
この実施例では、上述のように、前記エアーガイド6、6が、横断面が略直角三角形状に形成された中実の発泡体で一体に構成されていて、その直角に交わる一方の面6aがサイドステー13、13と空調用コンデンサ2およびラジエータ3との間の隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面6bがグリルからの空気を空調用コンデンサ2およびラジエータ3方向へ導く導風部の役目をなすようにラジエータコアサポート2に対し取り付けられている構成としたことにより、左右両サイドステー13、13相互の間隔に対して空調用コンデンサ2およびラジエータ3のコア幅(車幅方向幅)が短くてサイドステーと空調用コンデンサ2およびラジエータ3との間の隙間が大きい場合でも、3次元的隙間を1部品構成で閉塞し、これにより、導風効果と吹き返し防止効果を両立させることができるようになるという効果が得られる。
【0034】
また、エアーガイド6、6が中実の発泡体で一体に構成されることにより、その剛性を確保することができると共に、材料的に安価であり、かつ軽量化が可能となる。
【0035】
前記サイドステー13、13が合成樹脂によりその車両前面側が開口する横断面が略コ字状に形成されると共に該開口部13aには複数の横向きリブ13bが形成され、エアーガイド6はその車両の後方面側に突出形成された係合部6aをサイドステー13、13の開口部13a内に差し込み装着すると共に、バンパレインフォース8がエアーガイド6の車両前面側に当接した状態でラジエータコアサポート2に対し組み付けられることによってエアーガイド6がラジエータコアサポート2に対し取り付け固定されている構成としたことで、エアーガイド6の取り付けにクリップやボルト等の別部品の使用を省略することができ、これにより、部品点数の削減によるコストの低減化と、作業能率の向上が可能となる。
【0036】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、エアーガイド6の取り付けにクリップやボルト等を用いない例を示したが、クリップやボルト等の取り付け具で取り付けるようにしてもよい。
【0037】
また、実施例では、アッパセンタ11a側のフランジを樹脂モールド部7と一体に形成したフランジ7aで構成したが、別体に形成したフランジをアッパセンタ11a側に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
また、実施例では、ラジエータ3側のフランジをモータファンシュラウド5におけるラジエータ3側の開口上縁部をラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長させたフランジ5aで構成させたが、別体に形成したフランジをラジエータ3側に取り付けるようにしてもよい。
また、ラジエータコアサポートアッパ11である金属製角パイプの一部外周に樹脂がモールドされた構成をしめしたが、全部の外周に樹脂をモールドしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造が適用された熱交換器部分を示す車両後方からの斜視図である。
【図2】図1のII−II線における拡大縦断面図である。
【図3】図1の III−III 線における横断面図である。
【図4】ラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図である。
【図5】ラジエータコアサポートにエアーガイドを取り付ける状態を示す車両前方からの分解斜視図である。
【図6】ラジエータコアサポートにエアーガイドを取り付けた状態を示す車両前方からの斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ラジエータコアサポート
11 ラジエータコアサポートアッパ
11a アッパセンタ
11b アッパサイド
12 ラジエータコアサポートロア
13 サイドステー
13a 開口部
13b 横向きリブ
14 サイドメンバ取付けプレート
15 センタステー
16 バンパステー
2 空調用コンデンサ(熱交換器)
3 ラジエータ(熱交換器)
4 電動ファン
5 モータファンシュラウド
5a フランジ
6 エアーガイド
6a 直角に交わる一方の面
6b 傾斜面
6c 係合凹部
7 樹脂モールド部
7a フランジ
8 バンパレインフォース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器が組み付けられるラジエータコアサポートにおける左右両サイドステーと熱交換器側縁部との間をエアーガイドで閉塞する熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造であって、
前記エアーガイドが、横断面が略直角三角形状に形成された中実の発泡体で一体に構成されていて、その直角に交わる一方の面が前記サイドステーと前記熱交換器との間の前記隙間を閉塞する閉塞部の役目をなすと共に、直角に交わる両面をつなぐ傾斜面がグリルからの空気を熱交換器方向へ導く導風部の役目をなすように前記ラジエータコアサポートに対し取り付けられていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造において、前記サイドステーは合成樹脂によりその車両前面側が開口する横断面が略コ字状に形成されると共に該開口部には複数の横向きリブが形成され、
前記エアーガイドはその車両の後方面側に突出形成された係合部を前記サイドステーの開口部内に差し込み装着されると共に、バンパレインフォースが前記エアーガイドの車両前面側に当接した状態で前記ラジエータコアサポートに対し組み付けられることによって前記エアーガイドが前記ラジエータコアサポートに対し取り付け固定されていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止用隙間閉塞構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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