説明

車両用燃料関係部品の配置構造

【課題】車両用燃料関係部品の配置構造において、車両前部に前方から外力が作用した場合に、燃料関係部品がダッシュパネルに接触することを防止し、燃料関係部品を保護することにある。
【解決手段】バッテリ(8)とダッシュパネル(5)との間にフューズボックス(23)を配置し、フューズボックス(23)のバッテリ(8)に対する車両前後方向(X)の隙間(L1)をストラットハウジング(7)のバッテリ(8)に対する車両前後方向(X)の最小隙間(L2)と同等とし、バッテリ(8)を載せるバッテリトレイ(9)の車両幅方向内側端部(26)にブラケット(27)を介して燃料関係部品(14)を取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用燃料関係部品の配置構造に係り、特に車両のエンジンルーム内でバッテリ周辺の空間に燃料関係部品を配置する車両用燃料関係部品の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内においては、ストラットハウジングの近傍で、燃料レギュレータ、燃料フィルタ、キャニスタ等の燃料関係部品や、バッテリやフューズボックス等の補機類が配置されている。そして、バッテリ及びリザーブタンクは、その中心がストラットハウジングに対して車両幅方向の内側ヘオフセットした状態で配置されている。
即ち、図5に示すように、車両101においては、エンジンルーム104の後壁を構成するダッシュパネル105の車両幅方向側部にダッシュパネル105の前面部106よりも車両前方に突出する懸架装置のストラットハウジング107を配置し、このストラットハウジング107の車両前方で車両幅方向一側110がストラットハウジング107に対向するとともに車両幅方向他側111がストラットハウジング107よりもエンジンルーム104内へ突出する状態でバッテリ108を配置し、このバッテリ108の車両前方且つ車両幅方向Yでストラットハウジング107よりもエンジンルーム104の内側寄りにリザーブタンク112を配置し、バッテリ108の近傍に燃料関係部品114として、例えば、燃料レギュレータ115、燃料フィルタ116等を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−145524号公報
【0004】
特許文献1に係る車両のフューエルフィルタ取付構造は、ダッシュパネルに対してブレーキ倍力装置及びクラッチマスタシリンダを隣り合って取り付け、また、ブレーキ倍力装置とクラッチマスタシリンダとの間にフューエルフィルタを配置し、しかも、ブレーキ倍力装置及びクラッチマスタシリンダをフューエルフィルタよりも車両前方に突出して配置し、車両前部に前方から外力が作用した際に、フューエルフィルタとバッテリとの干渉を防止するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、図5の車両用燃料関係部品の配置構造では、車両前部に前方から外力(図5の矢印Fで示す)が作用すると、バッテリ108がリザーブタンク112に押されて車両後方へ移動するとともに、バッテリ108の車両幅方向一側110の後端部125がストラットハウジング107に接触点Pで接触し、そして、バッテリ108の車両幅方向他側111がその接触点Pを中心に車両後方へ回転してしまい(図5の一点鎖線のRで示す)、バッテリ108とその周辺に配置される燃料フィルタ116とがダッシュパネル105に接触するおそれがあった。
また、上記の特許文献1では、プロテクタは不要であるが、ブレーキ倍力装置やクラッチマスタシリンダが運転席側に配置されているため、燃料フィルタの保護に利用することが困難であった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、エンジンルーム内でバッテリ周辺の空間に燃料関係部品を配置する車両において、車両前部に前方から外力が作用した場合に、燃料関係部品がダッシュパネルに接触することを防止し、燃料関係部品を保護する車両用燃料関係部品の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エンジンルームの後壁を構成するダッシュパネルの車両幅方向側部にこのダッシュパネルの前面部よりも車両前方に突出するストラットハウジングを配置し、このストラットハウジングの車両前方で車両幅方向一側が前記ストラットハウジングに対向するとともに車両幅方向他側が前記ストラットハウジングよりも前記エンジンルーム内へ突出する状態でバッテリを配置し、このバッテリの車両前方且つ車両幅方向で前記ストラットハウジングよりも前記エンジンルームの内側寄りにリザーブタンクを配置し、前記バッテリの近傍に燃料関係部品を配置した車両用燃料関係部品の配置構造において、前記バッテリと前記ダッシュパネルとの間にフューズボックスを配置し、このフューズボックスの前記バッテリに対する車両前後方向の隙間を前記ストラットハウジングの前記バッテリに対する車両前後方向の最小隙間と同等とし、前記バッテリを載せるバッテリトレイの車両幅方向内側端部にブラケットを介して前記燃料関係部品を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用燃料関係部品の配置構造は、車両前部に前方から外力が作用した場合に、燃料関係部品がダッシュパネルに接触することを防止し、燃料関係部品を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両前部の左側の平面図である。(実施例)
【図2】図2は車両前部の左側の斜視図である。(実施例)
【図3】図2は車両前部の左側の側面図である。(実施例)
【図4】図4は車両前部に作用した外力によってバッテリが移動した状態を示す車両前部の平面図である。(実施例)
【図5】図5は従来の車両前部の平面図である。(従来例)来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、車両前部に前方から外力が作用した場合に、燃料関係部品がダッシュパネルに接触することを防止し、燃料関係部品を保護する目的を、バッテリとダッシュパネルとの間にフューズボックスを配置し、フューズボックスのバッテリに対する車両前後方向の隙間をストラットハウジングのバッテリに対する車両前後方向の最小隙間と同等とし、バッテリを載せるバッテリトレイの車両幅方向内側端部にブラケットを介して燃料関係部品を取り付けて実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両、2は車体フレームの一部である左サイドメンバ、3はアッパメンバ、4はエンジンルーム、5はこのエンジンルーム4の後壁を構成するダッシュパネル、Xは車両前後方向、Yは車両幅方向である。
ダッシュパネル5の車両幅方向側部、つまり、車両幅方向Yの左側部には、ダッシュパネル5の前面部6よりも車両前方に突出する懸架装置のストラットハウジング7が配置されている。
また、エンジンルーム4内には、平面視で長手方向が車両幅方向Yで且つ短手方向が車両前後方向Xの直方体からなるバッテリ8が配置される。このバッテリ8は、バッテリトレイ9に載せられて、ストラットハウジング7の車両前方で車両幅方向一側10がストラットハウジング7に対向するとともに車両幅方向他側11がストラットハウジング7よりもエンジンルーム4内へ突出する状態で配置される。
このバッテリ8の車両前方且つ車両幅方向Yでストラットハウジング7よりもエンジンルーム4の内側寄りには、リザーブタンク12がバッテリ8の前面部13に固定して配置される。このリザーブタンク12は、平面視で長手方向が車両幅方向Yで且つ短手方向が車両前後方向Xの直方体からなる。
【0012】
また、バッテリ8の近傍には、燃料関係部品14が配置される。この燃料関係部品14は、この実施例において、例えば、燃料レギュレータ15、燃料フィルタ16、キャニスタ17とからなる。
燃料レギュレータ15は、バッテリ8の車両幅方向一側10の左側方に配置されている。
燃料フィルタ16は、バッテリ8車両幅方向他側11の後部側方に配置されている。この燃料フィルタ16には、下方に延びて燃料レギュレータ15に連結するレギュレータ側燃料配管18が接続するとともに、エンジンに連結するエンジン側燃料配管19が接続している。
キャニスタ17は、図4に示すように、燃料フィルタ16よりも車両前方で、バッテリ8の車両幅方向他側11の前部側方に配置されている。
図3に示すように、バッテリ8及びバッテリトレイ9は、前側ブラケット20を連結したエンジンマウント21と、前側ブラケット20よりも後方の後側ブラケット22とによって左サイドメンバ2に支持されている。
【0013】
図1〜図3に示すように、バッテリ8とダッシュパネル5との間には、平面視で長手方向が車両前後方向Xで且つ短手方向が車両幅方向Yの直方体からなるフューズボックス23が配置される。また、このフューズボックス23は、ストラットハウジング7よりも車両幅方向内側に配置されている。
そして、フューズボックス23のバッテリ8に対する車両前後方向Xの隙間L1は、ストラットハウジング7のバッテリ8に対する車両前後方向Xの最小隙間L2と同等に設定される。上記の隙間L1は、バッテリ8の後端部25とフューズボックス23の前端部28との間の空間である。上記の最小隙間L2は、バッテリ8の車両幅方向一側10の後端部25と従来における接触点P(図1、図4参照)との間の空間である。
図2、図3に示すように、バッテリ8を載せるバッテリトレイ9の車両幅方向内側端部26には、ブラケットとしてのフィルタ用ブラケット27を介して燃料関係部品14の燃料フィルタ16が取り付けられる。
これにより、図4に示すように、車両1の前部に前方から外力(図1、図4の矢印Fで示す)が作用した場合に、バッテリ8がリザーブタンク12に押されて車両後方へ移動するため、バッテリトレイ9の車両幅方向内側端部26にフィルタ用ブラケット27を介して取り付けた燃料フィルタ16をバッテリ8と共に車両後方へ移動させ、燃料フィルタ16が車両前部に配置される部品と衝突することを回避し、燃料フィルタ16を保護できる。
また、バッテリ8が車両後方へ移動してバッテリ8の車両幅方向一側10がストラットハウジング7に接触した場合に、バッテリ8の車両幅方向他側11にはフューズボックス23の前端部28が接触してバッテリ8のその回転が阻止される。そのため、バッテリトレイ9の車両幅方向内側端部26にフィルタ用ブラケット27を介して取り付けた燃料フィルタ16がフューズボックス23やダッシュパネル5と接触することを防止でき、燃料フィルタ16を保護できる。
【0014】
また、図1に示すように、フューズボックス23は、右側後端部がダッシュパネル5にパネル側取付部29により固定されるとともに、左側端部ストラットハウジング7にハウジング側取付部30によって固定される。
これにより、フューズボックス23に車両前方からの外力Fが作用した場合に、フューズボックス23が車両上下方向へ傾くことを抑制し、バッテリ8の回転を確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明に係る車両用燃料関係部品の配置構造を、ガソリンエンジンやCNGエンジン等を搭載した各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 左サイドメンバ
4 エンジンルーム
5 ダッシュパネル
7 ストラットハウジング
8 バッテリ
9 バッテリトレイ
10 バッテリの車両幅方向一側
11 バッテリの車両幅方向他側
12 リザーブタンク
14 燃料関係部品
15 燃料レギュレータ
16 燃料フィルタ
17 キャニスタ
23 フューズボックス
25 バッテリの後端部
27 フィルタ用ブラケット(ブラケット)
28 フューズボックスの前端部
29 パネル側取付部
30 ハウジング側取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの後壁を構成するダッシュパネルの車両幅方向側部にこのダッシュパネルの前面部よりも車両前方に突出するストラットハウジングを配置し、このストラットハウジングの車両前方で車両幅方向一側が前記ストラットハウジングに対向するとともに車両幅方向他側が前記ストラットハウジングよりも前記エンジンルーム内へ突出する状態でバッテリを配置し、このバッテリの車両前方且つ車両幅方向で前記ストラットハウジングよりも前記エンジンルームの内側寄りにリザーブタンクを配置し、前記バッテリの近傍に燃料関係部品を配置した車両用燃料関係部品の配置構造において、前記バッテリと前記ダッシュパネルとの間にフューズボックスを配置し、このフューズボックスの前記バッテリに対する車両前後方向の隙間を前記ストラットハウジングの前記バッテリに対する車両前後方向の最小隙間と同等とし、前記バッテリを載せるバッテリトレイの車両幅方向内側端部にブラケットを介して前記燃料関係部品を取り付けたことを特徴とする車両用の燃料関係部品の配置構造。
【請求項2】
前記フューズボックスを前記ダッシュパネルと前記ストラットハウジングとに固定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料関係部品の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194898(P2011−194898A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60275(P2010−60275)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】