説明

車両用空気取入口開閉装置

【課題】車両前部に形成された空気取入口を閉鎖した際の空力性能を向上することができる車両用空気取入口開閉装置を提供する。
【解決手段】車両ボディの前部に形成された空気取入口に設けられるカバー15と、車両ボディに支持されてカバー15に連結され、アクチュエータ27により駆動されて空気取入口を閉塞する展開位置及び空気取入口を開放する格納位置の間でカバー15を移動させる移動機構20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気取入口開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などの車両には、そのエンジンルーム前面に配置されたラジエターの熱を逃がすため、該ラジエターの前側となる車両前部に走行風等の空気を取り入れる空気取入口が形成されている。そして、この空気取入口から取り入れられる空気の流量を調整等するために、該空気取入口を開閉する機構を備えたものも提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されたグリル開閉装置は、空気取入口の周縁に取り付けられる基枠に支持された複数のグリル長板を、駆動源により回動することで、空気取入口を開閉する。なお、グリル長板に対する駆動源の駆動力の伝達は、例えば駆動源により回動駆動されるリンクの先端部に形成された長穴状の係止穴と、グリル長板側に突設されたピンとの係合によって実現されている。
【0004】
また、例えば特許文献2に記載された装置は、車両前部領域に設けられた空気取入口を通る空気通過量を調整するもので、採取ダクト装置を通過する空気流を調整するために調節手段が設けられている。なお、上側の採取ダクト装置はグリル装置の後側の取付位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−139519号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2004 026 419 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1は、複数のグリル長板が互いに平行な状態のまま同一方向に回動して空気取入口を開閉する構成であり、例えば該空気取入口の閉塞状態であってもこれらグリル長板によって複数の車両前後方向の凹凸が形成されている。このため、車両の受ける空気抵抗が増大され、空力性能の悪化を余儀なくされる。
【0007】
また、特許文献2は、グリル装置の後側に採取ダクト装置が取り付けられる構成のため、例えば採取ダクト装置を通過する空気流を遮断したとしても、グリル装置と採取ダクト装置との間に形成される空間に空気が取り入れられることになる。このため、車両の受ける空気抵抗が増大され、空力性能の悪化を余儀なくされる。
【0008】
本発明の目的は、車両前部に形成された空気取入口を閉鎖した際の空力性能を向上することができる車両用空気取入口開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボディの前部に形成された空気取入口に設けられるカバーと、前記車両ボディに支持されて前記カバーに連結され、駆動源により駆動されて前記空気取入口を閉塞する展開位置及び前記空気取入口を開放する格納位置の間で前記カバーを移動させる移動機構とを備えたことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記移動機構により前記カバーが前記格納位置へと移動させられることで、前記空気取入口から取り入れられる空気と前記カバーとの干渉を僅少又は皆無にすることができ、前記空気取入口から効率的に空気を取り入れることができる。一方、前記移動機構により前記カバーが前記展開位置へと移動させられることで、例えば前記カバーを前記空気取入口に密接させて該空気取入口を閉塞することができる。これにより、前記カバーにおいて車両の受ける空気抵抗を低減することができ、空力性能を向上することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空気取入口開閉装置において、前記空気取入口とラジエターとの間に位置するよう前記車両ボディに設置されたラジエターグリルを備えたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記ラジエターグリルにより、内部の前記ラジエター等を保護することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用空気取入口開閉装置において、前記カバーは、前記展開位置において前記空気取入口と嵌合することを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記カバーは、前記展開位置において前記空気取入口と嵌合することで、該空気取入口をより緊密に閉塞することができる。これにより、前記カバーにおいて車両の受ける空気抵抗を低減することができ、空力性能を更に向上することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空気取入口開閉装置において、前記格納位置は、前記空気取入口の上側に設定されていることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記格納位置は、比較的配置スペースの確保に制約の少ない前記空気取入口の上側に設定されることで、前記カバーの前記格納位置において前記空気取入口の全範囲をより確実に開放することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用空気取入口開閉装置において、前記移動機構は、前記車両ボディに固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに摺動自在に装着され、前記駆動源により駆動されて前記ガイドレールに沿って移動する摺動部材と、前記摺動部材に支持されて前記カバーに固定された取付部材とを備えたことを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記移動機構を、前記ガイドレール、前記摺動部材及び前記取付部材を備えた極めて簡易な構成にすることができる。また、前記カバーの移動軌跡、即ち前記展開位置及び前記格納位置は、主に前記ガイドレールの形状変更によって変更できるため、例えば異なる車両種別に対応するための設計変更を比較的容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用空気取入口開閉装置において、前記摺動部材は、移動方向における一側及び他側に配設された第1摺動部材及び第2摺動部材からなり、前記取付部材は、前記第1摺動部材に回動自在に連結されており、前記駆動源は、前記第2摺動部材に連結されており、前記第2摺動部材に一側の端部が回動自在に連結され、前記取付部材に他側の端部が回動自在に連結されたリンクと、前記第1摺動部材の前記展開位置に対応する位置で、前記格納位置に対応する位置から離隔する方向への前記第1摺動部材の移動を係止するストッパと、前記第1摺動部材の前記格納位置に対応する位置及び前記展開位置に対応する位置の間で前記リンクの回動を規制するとともに、前記第1摺動部材の前記展開位置に対応する位置で前記リンクの回動を許容するチェック手段とを備えたことを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、前記第1摺動部材の前記格納位置に対応する位置及び前記展開位置に対応する位置の間では、前記チェック手段により前記リンクの回動が規制される。このとき、前記第1摺動部材及び前記取付部材は、前記リンクを介して前記第2摺動部材に実質的に一体化される。従って、前記駆動源により前記第2摺動部材が駆動されると、前記第1摺動部材、前記第2摺動部材、前記取付部材及び前記リンクは、前記カバーと共に前記ガイドレールに沿って移動する。一方、前記第1摺動部材の前記展開位置に対応する位置では、前記ストッパにより前記第1摺動部材の前記移動が係止されるとともに、前記チェック手段により前記リンクの回動が許容される。このとき、前記ガイドレール、前記取付部材、前記第2摺動部材及び前記リンクによってリンク装置(いわゆる滑り子クランク機構)が構成される。従って、この状態で、前記駆動源により駆動される前記第2摺動部材のみが当該方向に更に移動すると、前記リンクが回動して前記取付部材が前記カバーと共に前記第1摺動部材との連結部を支点に回動する。このように、前記カバーの移動軌跡の自由度を増大することで、前記展開位置において前記空気取入口をより確実に閉塞することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、車両前部に形成された空気取入口を閉鎖した際の空力性能を向上することができる車両用空気取入口開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態が適用される車両ボディの前部を示す斜視図。
【図2】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す斜視図。
【図3】同実施形態を示す縦断面図。
【図4】移動機構及びその動作を示す側面図。
【図5】移動機構を示す横断面図。
【図6】移動機構及びその動作を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して本発明の一実施形態について説明する。同図1に示すように、自動車などの車両ボディ1の前部において、車両幅方向にフロントバンパー11が延在するとともに、該フロントバンパー11の上側に形成された略台形状の切り欠き11aに略台形枠状のフロントフレーム12が装着されている。これらフロントバンパー11及びフロントフレーム12は、車両後方に広がるボンネット13と共に略面一で突き合わされて、車両意匠面1aを形成する。
【0023】
フロントフレーム12には、その外郭線に略沿って中央部に空気取入口14が形成されている。そして、空気取入口14には、これを開閉可能なカバー15が設けられている。このカバー15は、空気取入口14に合わせてその外形が成形されている。カバー15は、空気取入口14に嵌合する展開位置と、図2(a)(b)及び図3に示すように、展開位置にあるカバー15を概ね車両後方に変位させたチェック位置と、当該チェック位置での姿勢を保持したまま車両意匠面1aに略沿って上側に変位させた格納位置との間を順次移動可能である。
【0024】
従って、カバー15は、展開位置にあるときに空気取入口14を閉塞するとともに、格納位置にあるときに空気取入口14を開放する。なお、カバー15は、展開位置にあるときにフロントフレーム12(車両意匠面1a)と略面一で突き合わされている。また、フロントフレーム12の下面に沿う空気取入口14の上側に格納スペースが確保されており、カバー15は、チェック位置での姿勢を保持したまま該チェック位置及び格納位置間を変位することで、車両意匠面1a(フロントフレーム12等)と干渉することなくその移動が許容されている。
【0025】
なお、図3に示すように、空気取入口14の車両後方には、ボンネット13によって閉塞されるエンジンルームS内において車両ボディ1に設置された格子状のラジエターグリル16が配置されるとともに、該ラジエターグリル16の車両後方には、同じくエンジンルームS内において車両ボディ1に設置されたラジエター17が配置されている。つまり、ラジエターグリル16は、空気取入口14とラジエター17との間に位置している。そして、カバー15が格納位置に配置されると、空気取入口14を通じてラジエターグリル16が外部に露出するようになっている。ラジエターグリル16の単一格子の開口面積が、空気取入口14の開口面積に比べて十分に小さいことはいうまでもない。
【0026】
ここで、カバー15が展開位置に配置されるとき、空気取入口14に密接するカバー15によって空気取入口14が閉塞されて車両の受ける空気抵抗が低減される。一方、カバー15が格納位置に配置されるとき、空気取入口14が開放されて該空気取入口14から取り入れられる空気とカバー15との干渉が僅少又は皆無とされ、空気取入口14からエンジンルームS内に効率的に空気が取り入れられる。
【0027】
次に、カバー15を展開位置、チェック位置及び格納位置に順次移動させる移動機構について説明する。図4に示すように、エンジンルームS内の車両幅方向各側において車両ボディ1に固定されるガイドレール21は、概ね車両前後方向に延在する。ガイドレール21は、上向きに凸となる略一定の曲率で湾曲されており、前端に向かうに従い下側に変位する。図5に示すように、ガイドレール21は、略一定の断面形状を有しており、上向きに開口する断面略U字状のレール部21aを有するとともに、該レール部21aの車両幅方向両側の開口端に接続された互いの開口側が車両幅方向に対向する断面略コ字状の対のガイド部21b,21cを有する。また、ガイドレール21は、車両幅方向外側に配置された一方のガイド部21cの車両幅方向外側に隣接して断面略十字状のベルトガイド部21dを有する。
【0028】
ガイドレール21には、摺動部材を構成する第2摺動部材としてのリヤシュー22が摺動自在に装着されている。すなわち、このリヤシュー22は、両ガイド部21b,21c間に挟まれてレール部21aに摺動自在に装着されるブロック状のシュー部23を有するとともに、該シュー部23から車両幅方向両側に突設されて両ガイド部21b,21cにそれぞれ摺動自在に嵌合される対のガイド突部24,25を有する。なお、リヤシュー22は、シュー部23の上端から車両幅方向外側に突設されたフランジ状の連結片22aを有する。
【0029】
ガイドレール21のベルトガイド部21dには、帯状のプッシュプルベルト26が摺動自在に装着されている。そして、リヤシュー22は、ベルトガイド部21d内に遊挿される連結片22aをプッシュプルベルト26に貫通させる態様でこれと一体移動するように連結されている。また、プッシュプルベルト26は、図4に示すように、例えば電動モータを主体に構成された駆動源としてのアクチュエータ27に駆動連結されている。このアクチュエータ27は、例えばマイコンを主体に構成されたコントローラ40に電気的に接続されており、該コントローラ40により駆動制御される。そして、プッシュプルベルト26は、アクチュエータ27により押し引きされることで、ベルトガイド部21dに沿って移動する。従って、アクチュエータ27により駆動されるプッシュプルベルト26がベルトガイド部21dに沿って移動すると、これに連動してリヤシュー22がガイド突部24,25をガイド部21b,21cに摺動させつつレール部21aに沿って移動する。
【0030】
なお、ガイドレール21には、リヤシュー22の前側で摺動部材を構成する第1摺動部材としてのフロントシュー28が摺動自在に装着されている。このフロントシュー28は、リヤシュー22と同様のシュー部23及びガイド突部24,25を有する。
【0031】
リヤシュー22には、車両幅方向におけるレール部21aの位置でアーム状のリンク29の一側の端部が回動自在に連結されるとともに、該リンク29の他側の端部には、取付部材30の後端部が回動自在に連結されている。すなわち、取付部材30は、車両幅方向におけるレール部21aの位置で車両前後方向に延在する長尺状の支持部30aを有するとともに、該支持部30aの上部に固着された略Z字状の取付部30bを有する。そして、リンク29の他側の端部は、車両幅方向(図4において紙面に直交する方向)に軸線の延びる軸31により支持部30aの後端部に回動自在に連結されている。なお、支持部30aの前端部は、フロントシュー28に回動自在に連結されている。また、取付部30bの上面には、前記カバー15が固着されている。ガイドレール21において車両前側及び後側(移動方向における一側及び他側)に配設されたフロントシュー28及びリヤシュー22は、リンク29及び取付部材30とともに移動機構20を構成する。
【0032】
図6に示すように、取付部材30の支持部30aには、車両幅方向外側(図6において紙面に直交する手前側)に係合ピン32が突設されている。この係合ピン32は、基本的にガイドレール21の一方のガイド部21cに摺動自在に嵌入することで、ガイドレール21における支持部30aの姿勢を規制する。すなわち、支持部30aは、その前端部に連結されるフロントシュー28及び係合ピン32によって、ガイドレール21の長手方向に略沿うようにその姿勢が規制されている。このとき、フロントシュー28及び支持部30a(取付部材30)は、リンク29を介してリヤシュー22に実質的に一体化されている。従って、前述の態様でリヤシュー22がレール部21aに沿って車両前後方向に移動すると、これに連動して取付部材30等が車両前後方向に移動する。
【0033】
ガイドレール21の前端には、支持部30aの前方の移動軌跡を遮るストッパ33が設けられている。一方、ガイド部21cの上壁には、ストッパ33より前方への移動が係止された支持部30aの係合ピン32の位置でフランジ状の係止片34が切り起こされている。この係止片34は、係合ピン32の後側で上向きに突出しており、その切り起こしに伴って前側に係合孔35を形成する。この係合孔35は、フロントシュー28との連結部を支点に支持部30aが図示時計回りに回動する際の係合ピン32の回動軌跡を開放するように設定されている。ガイド部21c、係合ピン32、係止片34及び係合孔35は、チェック手段を構成する。
【0034】
従って、ストッパ33により支持部30aの前方への移動が係止された状態で、リヤシュー22がレール部21aに沿って車両前方に移動すると、該リヤシュー22に押圧されるリンク29が支持部30aの後端部を押し上げるように図示反時計回りに回動する。これにより、係合ピン32を係合孔35に通しつつ、支持部30aがフロントシュー28との連結部を支点に図示時計回りに回動する。なお、ストッパ33より支持部30aの前方への移動が係止されてリンク29による支持部30aの後端部の押し上げが可能になるときのカバー15の位置が前述のチェック位置に相当し、リンク29による支持部30aの後端部の押し上げが完了したときのカバー15の位置が前述の展開位置に相当する。つまり、支持部30a(及びフロントシュー28)は、カバー15の展開位置に対応する位置で、ストッパ33により車両前方(カバー15の格納位置に対応する位置から離隔する方向)への移動が規制されている。このとき、ガイドレール21、支持部30a(取付部材30)、リヤシュー22及びリンク29によってリンク装置(いわゆる滑り子クランク機構)が構成される。
【0035】
一方、リンク29による支持部30aの後端部の押し上げが完了した状態で、リヤシュー22がレール部21aに沿って車両後方に移動すると、これに連動してリンク29等が車両後方に移動しようとする。このとき、リヤシュー22に引っ張られるリンク29は、支持部30aの後端部を引き下げるように図示時計回りに回動する。同時に、支持部30aは、係止片34に案内される係合ピン32を係合孔35に通してガイド部21c内に進入させつつ、フロントシュー28との連結部を支点に図示反時計回りに回動する。リンク29による支持部30aの後端部の引き下げが完了したときのカバー15の位置が前述のチェック位置に相当することはいうまでもない。
【0036】
その後、リヤシュー22がレール部21aに沿って車両後方に更に移動すると、リンク29を介してリヤシュー22に実質的に一体化された支持部30a(取付部材30)等が車両後方に移動する。これにより、カバー15が前述の格納位置へと移動する。
【0037】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、カバー15が格納位置にあるものとして説明する。この状態で、アクチュエータ27に駆動されるプッシュプルベルト26が車両前方に押し出されると、支持部30aの移動がストッパ33に係止されるまで、リヤシュー22、フロントシュー28、リンク29及び取付部材30が一体でガイドレール21に沿って車両前方に移動し、カバー15が格納位置からチェック位置へと移動する。
【0038】
引き続き、アクチュエータ27に駆動されるプッシュプルベルト26が車両前方に更に押し出されると、リヤシュー22がガイドレール21に沿って車両前方に更に移動し、リヤシュー22に押圧されるリンク29が支持部30aの後端部を押し上げるように回動するとともに、支持部30aがフロントシュー28との連結部を支点に回動する。そして、カバー15がチェック位置から展開位置へと移動する。
【0039】
一方、カバー15が展開位置にある状態で、アクチュエータ27に駆動されるプッシュプルベルト26が車両後方に引っ張られると、リヤシュー22がガイドレール21に沿って車両後方に移動する。そして、リヤシュー22に引っ張られるリンク29が支持部30aの後端部を引き下げるように回動するとともに、支持部30aがフロントシュー28との連結部を支点に回動する。これにより、取付部材30と共にカバー15がエンジンルームS側となる車両後側に引き込まれて、カバー15が展開位置からチェック位置へと移動する。このとき、カバー15の上側にその格納スペースが開口して、該カバー15の移動軌跡が開放される。
【0040】
引き続き、アクチュエータ27に駆動されるプッシュプルベルト26が車両後方に更に引っ張られると、リヤシュー22、フロントシュー28、リンク29及び取付部材30が一体でガイドレール21に沿って車両後方に移動する。これにより、取付部材30と共にカバー15が格納スペース内に進入していき、カバー15がチェック位置から格納位置へと移動する。そして、空気取入口14を通じてラジエターグリル16が外部に露出する。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、移動機構20によりカバー15が格納位置へと移動させられることで、空気取入口14から取り入れられる空気とカバー15との干渉を僅少又は皆無にすることができ、空気取入口14から効率的に空気を取り入れることができる。一方、移動機構20によりカバー15が展開位置へと移動させられることで、例えばカバー15を空気取入口14に密接させて該空気取入口14を閉塞することができる。これにより、カバー15において車両の受ける空気抵抗を低減することができ、空力性能を向上することができる。
【0042】
(2)本実施形態では、カバー15が格納位置に配置されたときに空気取入口14を通じてラジエターグリル16が外部に露出するため、カバー15の展開位置又は格納位置への移動によって車両ボディ1の前部の外観を切り替えることができる。また、ラジエターグリル16により、エンジンルームS内のラジエター17等を保護することができる。
【0043】
(3)本実施形態では、カバー15は、展開位置において空気取入口14と嵌合することで、該空気取入口14をより緊密に閉塞することができる。これにより、カバー15において車両の受ける空気抵抗を低減することができ、空力性能を更に向上することができる。
【0044】
(4)本実施形態では、カバー15の格納位置は、比較的配置スペースの確保に制約の少ない空気取入口14の上側に設定されることで、カバー15の格納位置において空気取入口14の全範囲をより確実に開放することができる。
【0045】
(5)本実施形態では、移動機構20を、ガイドレール21、リヤシュー22、フロントシュー28及び取付部材30等を備えた極めて簡易な構成にすることができる。また、カバー15の移動軌跡、即ち展開位置及び格納位置は、主にガイドレール21の形状変更によって変更できるため、例えば異なる車両種別に対応するための設計変更を比較的容易に行うことができる。
【0046】
(6)本実施形態では、フロントシュー28の格納位置に対応する位置及び展開位置に対応する位置の間では、係合ピン32等によりリンク29の回動が規制される。このとき、フロントシュー28及び取付部材30は、リンク29を介してリヤシュー22に実質的に一体化される。従って、アクチュエータ27によりリヤシュー22が駆動されると、フロントシュー28、リヤシュー22、取付部材30及びリンク29は、カバー15と共にガイドレール21に沿って移動する。一方、フロントシュー28の展開位置に対応する位置では、ストッパ33により取付部材30(及びフロントシュー28)の車両前方への移動が係止されるとともに、係合ピン32等によりリンク29の回動が許容される。従って、この状態で、アクチュエータ27により駆動されるリヤシュー22のみが当該方向に更に移動すると、リンク29が回動して取付部材30がカバー15と共にフロントシュー28との連結部を支点に回動する。このように、カバー15の移動軌跡の自由度を増大することで、展開位置において空気取入口14をより確実に閉塞することができる。
【0047】
(7)本実施形態では、展開位置にあるカバー15は、曲面で構成されたフロントフレーム12(車両意匠面1a)と略面一で突き合わされることで、空力性能及び意匠性を向上することができる。
【0048】
(8)本実施形態では、例えばエンジン冷却液の温度が低いとき、カバー15を展開位置に配置することで、エンジンルームS内に進入する空気を遮断することができ、エンジンの暖機性を向上することができる。一方、エンジン冷却液の温度が高いとき、カバー15を格納位置に配置することで、空気取入口14から効率的に空気を取り入れることができ、冷却性能を向上することができる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、プッシュプルベルト26に代えて、プッシュプルケーブルやギヤ状の凹凸を有するタイミングベルトを採用してもよい。
【0050】
・前記実施形態において、リンク29を割愛してリヤシュー22で直に支持部30a(取付部材30)を支持するようにしてもよい。この場合、リヤシュー22及びフロントシュー28を摺動部材として一体化してもよい。
【0051】
・前記実施形態において、例えば空気取入口14の下側にカバー15の格納スペースが確保されるのであれば、空気取入口14の下側に格納位置を設定してもよい。
・前記実施形態において、展開位置でカバー15が空気取入口14に密接に配置されるのであれば、カバー15を空気取入口14に嵌合させなくてもよい。また、展開位置にあるカバー15を、必ずしもフロントフレーム12(車両意匠面1a)と略面一で突き合わせる必要はない。
【0052】
・前記実施形態において、空気取入口14(及びカバー15)は、必ずしも外部に露出させる必要はない。
・前記実施形態において、ラジエターグリル16は、複数の縦枠及び複数の横枠で区画される網目状であってもよいし、複数の縦枠又は複数の横枠のみで区画されるスリット状であってもよい。また、ラジエターグリル16を割愛してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…車両ボディ、14…空気取入口、15…カバー、16…ラジエターグリル、17…ラジエター、20…移動機構、21…ガイドレール、21c…ガイド部(チェック手段)、22…リヤシュー(第2摺動部材、摺動部材)、27…アクチュエータ(駆動源)、28…フロントシュー(第1摺動部材、摺動部材)、29…リンク、30…取付部材、32…係合ピン(チェック手段)、33…ストッパ、34…係止片(チェック手段)、35…係合孔(チェック手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディの前部に形成された空気取入口に設けられるカバーと、
前記車両ボディに支持されて前記カバーに連結され、駆動源により駆動されて前記空気取入口を閉塞する展開位置及び前記空気取入口を開放する格納位置の間で前記カバーを移動させる移動機構とを備えたことを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空気取入口開閉装置において、
前記空気取入口とラジエターとの間に位置するよう前記車両ボディに設置されたラジエターグリルを備えたことを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用空気取入口開閉装置において、
前記カバーは、前記展開位置において前記空気取入口と嵌合することを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空気取入口開閉装置において、
前記格納位置は、前記空気取入口の上側に設定されていることを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用空気取入口開閉装置において、
前記移動機構は、
前記車両ボディに固定されるガイドレールと、
前記ガイドレールに摺動自在に装着され、前記駆動源により駆動されて前記ガイドレールに沿って移動する摺動部材と、
前記摺動部材に支持されて前記カバーに固定された取付部材とを備えたことを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空気取入口開閉装置において、
前記摺動部材は、移動方向における一側及び他側に配設された第1摺動部材及び第2摺動部材からなり、
前記取付部材は、前記第1摺動部材に回動自在に連結されており、
前記駆動源は、前記第2摺動部材に連結されており、
前記第2摺動部材に一側の端部が回動自在に連結され、前記取付部材に他側の端部が回動自在に連結されたリンクと、
前記第1摺動部材の前記展開位置に対応する位置で、前記格納位置に対応する位置から離隔する方向への前記第1摺動部材の移動を係止するストッパと、
前記第1摺動部材の前記格納位置に対応する位置及び前記展開位置に対応する位置の間で前記リンクの回動を規制するとともに、前記第1摺動部材の前記展開位置に対応する位置で前記リンクの回動を許容するチェック手段とを備えたことを特徴とする車両用空気取入口開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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