車両用空気調和システム及び熱交換器
【課題】複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、システムとしても信頼性の高い車両用空気調和システムを提供する。
【解決手段】顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部5を有する主空調装置Aと、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、エバポレータ部5より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部12と顕熱冷媒の冷熱を放熱するリア側放熱用熱交換器13とを有する補助空調装置Bとを備えた。エバポレータ部と受熱用熱交換部12は一体の熱交換器20として構成された。
【解決手段】顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部5を有する主空調装置Aと、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、エバポレータ部5より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部12と顕熱冷媒の冷熱を放熱するリア側放熱用熱交換器13とを有する補助空調装置Bとを備えた。エバポレータ部と受熱用熱交換部12は一体の熱交換器20として構成された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主空調装置と補助空調装置を備えた車両用空気調和システム、及び、このシステムに適用される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空気調和システムとしては、特許文献1に開示されたものがある。この車両用空気調和システムは、冷凍サイクルを有する。冷凍サイクルは、顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機に圧縮された高温高圧の冷媒を冷却する凝縮器と、凝縮器で冷却された冷媒を減圧する第1減圧手段と、第1減圧手段で減圧された冷媒との間で熱交換するフロント用エバポレータと、凝縮器で冷却された冷媒を減圧する第2減圧手段と、第2減圧手段で減圧された冷媒との間で熱交換するリア用エバポレータと、冷媒を第1減圧手段及びフロント用エバポレータ側にのみ流したり、第1減圧手段及びフロント用エバポレータ側と第2減圧手段及びリア用エバポレータ側の双方にも流したりできる冷媒切替弁とを備えている。
【0003】
フロント用エバポレータは、内部を通過する冷媒と車室の前席側に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却する。リア用エバポレータは、内部を通過する冷媒と車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却する。
【0004】
上記構成において、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合には、フロント用エバポレータとリア用エバポレータに冷媒を流すことによって前席側と後席側に冷風を吹き出させることができる。又、前席にのみ乗員が乗っている場合には、フロント用エバポレータにのみ冷媒を流すことによって前席側にのみ冷風を吹き出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−193337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来例の車両用空気調和システムでは、フロント用エバポレータとリア用エバポレータの2台の冷却源を有することから、単一のエバポレータを有するシステムと比較して快適な車室内空間を形成することができる。しかし、フロント用エバポレータとリア用エバポレータの冷熱によって冷風のみならず凝縮水が生成され、その凝縮水(冷熱)が廃棄されている。そのため、効率の良い冷房運転とはいえないという問題がある。
【0007】
また、リア用エバポレータに冷媒を循環させない運転を行う場合には、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生するため、単一のエバポレータを有するシステムと比較して信頼性の面で劣るという問題がある。
【0008】
又、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒をフロント用エバポレータのみならずリア用エバポレータにも循環させる必要があるため、補助的な冷却源であるリア用エバポレータ及びこれへの配管を高耐圧用のものとする必要がある。この点からも信頼性の高いシステムを構築することができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、システムとしても信頼性の高い車両用空気調和システム、及び、これに用いる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1の発明は、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部を有する主空調装置と、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、前記エバポレータ部より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部と顕熱冷媒の冷熱を放熱する放熱用熱交換器とを有する補助空調装置とを備えたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用空気調和システムであって、前記エバポレータ部と前記受熱用熱交換部は、単一の熱交換器として構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進部が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、前記エバポレータ部と前記受熱用熱交換部の双方の構成要素を有する多数の一体成型部材を組み付けることによって構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、前記エバポレータ部への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0017】
請求項8の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器と、前記エバポレータ部への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0018】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の車両用空気調和システムであって、前記フロント側放熱用熱交換器は、内外気切替口の下流で、且つ、前記エバポレータ部の上流に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0019】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、顕熱冷媒は、前記受熱用熱交換部、前記リア側放熱用熱交換器及び前記フロント側熱交換器の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部及び前記リア側放熱用熱交換器の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部及び前記フロント側放熱用熱交換器の間を循環させる経路の少なくとも2以上の経路に選択的に切り替えできるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0020】
請求項11の発明は、請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、前記エバポレータ部は放熱器としても機能できるよう構成され、顕熱冷媒は、前記リア側放熱用熱交換器と前記フロント側放熱用熱交換器の間を少なくとも循環するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0021】
請求項12の発明は、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、前記受熱用熱交換部が前記エバポレータ部の下方に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0022】
請求項13の発明は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、顕熱冷媒の冷媒通路が前記エバポレータ部を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、前記冷媒通路の往路が復路に対し、前記エバポレータ部を通過する送風の下流側に設定されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0023】
請求項14の発明は、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知し、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、前記放熱用熱交換器を通過する冷媒の冷熱を利用するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0024】
請求項15の発明は、冷媒が循環する冷凍サイクルの構成部品として構成され、冷媒と車室に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部と、顕熱冷媒が循環する補助冷却サイクルの構成部品として構成され、顕熱冷媒と前記エバポレータ部で生成される凝縮水との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部とを備えたことを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、主空調装置のエバポレータ部と補助空調装置の放熱用熱交換部を有し、補助空調装置の受熱用熱交換部がエバポレータ部から生成された凝縮水の冷熱で顕熱冷媒を冷却し、この冷却された顕熱冷媒によって放熱用熱交換器が冷却源とされるため、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができる。又、主空調装置では顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を循環させるが、補助空調装置では顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒を循環させるため、補助空調装置を稼動させない場合に、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生することがなく、補助空調装置の配管と放熱用熱交換器を高耐圧用のものとする必要がないため、信頼性の高いシステムを構築することができる。以上より、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0026】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、エバポレータ部と受熱用熱交換部をコンパクトに構成できる。
【0027】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、凝縮水の冷熱をより有効に利用できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、請求項2又は請求項3の発明の効果に加え、熱交換器の組み付け作業が容易である。
【0029】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4の発明の効果に加え、主空調装置によって車室内を冷却できると共に補助空調装置によっても車室内を補助的に冷却できるため、乗員にとって極力快適な車室内空間を形成できる。
【0030】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、エバポレータ部を通過した送風を車室の前席側に吹き出させるようにすれば、いわゆるデュアルエアコンシステムとすることができ、前席側のエリアと後席側のエリアを極力温度ムラなく冷却できる。
【0031】
請求項7の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、エバポレータ部に吸い込む送風を余冷できるため、主空調装置の冷房性能が向上する。
【0032】
請求項8の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱をエバポレータ部を通過する送風の余冷と、補助空調装置の冷却源とに利用できる。
【0033】
請求項9の発明によれば、請求項7又は請求項8の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0034】
請求項10の発明によれば、請求項7又は請求項8の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱の利用先を選択できるため、運転状況に応じた有効な利用が可能である。
【0035】
請求項11の発明の効果に加え、請求項8又は請求項9の発明の効果に加え、外気導入で車室内を暖房する場合には、車室内の排気熱をリア側放熱用熱交換器で回収し、この回収した排気熱をフロント側放熱用熱交換器で放熱して吸い込み空気の余熱に利用できるため、暖房性能が向上する。
【0036】
請求項12の発明によれば、請求項1〜請求項11の発明の効果に加え、エバポレータ部で生成され、重力によって落下した凝縮水が受熱用熱交換部で熱交換されるため、エバポレータ部から受熱用熱交換部に何ら凝縮水送り手段を用いることなく凝縮水を供給できる。
【0037】
請求項13の発明によれば、請求項1〜請求項12の発明の効果に加え、受熱用熱交換部は凝縮水からの受熱によって主に冷却され、主空調装置のエバポレータ部の冷媒からの受熱を極力少なくできるため、凝縮水の冷熱を極力利用でき、冷房効率を高めることができる。
【0038】
請求項14の発明によれば、請求項1〜請求項13の発明の効果に加え、補助空調装置の冷媒が車室内温度より高い場合には、放熱用熱交換器が冷却源として有効ではないため、有効でない冷却源を利用するような事態を防止できる。つまり、放熱用熱交換器を例えば車室内の補助冷房として利用するときには温風を吹き出し逆に不快な空調空間を形成することになるが、このような不快な空調空間の形成を防止することができる。
【0039】
請求項15の発明によれば、主空調装置のエバポレータ部と補助空調装置の放熱用熱交換器を有し、補助空調装置の放熱用熱交換器はエバポレータ部から生成された凝縮水の冷熱を利用して冷却源とされるため、複数の冷却源を有し、且つ、効率の良い冷房運転ができるシステムを構築する際に、有効な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、デュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示し、シングルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示し、デュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示し、排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図12】第1変形例の熱交換器の断面図である。
【図13】第2変形例の熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示し、図1は車両用空気調和システムの要部構成図、図2は熱交換器の斜視図、図3は熱交換器の分解斜視図、図4は熱交換器の断面図である。
【0043】
図1に示すように、車両用空気調和システムは、主空調装置Aと補助空調装置Bとを備えている。
【0044】
主空調装置Aは、蒸気圧縮式冷凍サイクル1を有する。蒸気圧縮式冷凍サイクル1は、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒(例えば炭酸ガス)を圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒を放熱する凝縮器3と、この凝縮器3で放熱された冷媒を減圧する膨張弁4と、この膨張弁4で減圧された冷媒を放熱するエバポレータ部5と、これらを接続する複数の配管6とを備え、サイクル内を冷媒が循環する。
【0045】
エバポレータ部5は、フロント側空調ケース7内に配置されている。フロント側空調ケース7内には送風機8等が配置されている。送風機8でフロント側空調ケース7内に吸引された送風は、エバポレータ部5内を通過する冷媒との間で熱交換することによって冷風とされ、この冷風が車室の前席側に吹き出されるよう構成されている。
【0046】
補助空調装置Bは、補助冷却サイクル10を有する。補助冷却サイクル10は、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒(例えば冷却水)を圧送するポンプ11と、受熱用熱交換部12と、放熱用熱交換器であるリア側放熱用熱交換器13と、これらを接続する複数の配管14とを備え、サイクル内を顕熱冷媒が循環する。
【0047】
受熱用熱交換部12は、エバポレータ部5より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換させて顕熱冷媒を冷却する。受熱用熱交換部12は主空調装置Aのエバポレータ部5と一体に組み付けされ、単一の熱交換器20として構成されている。熱交換器20の詳しい構成は、下記に詳述する。
【0048】
リア側放熱用熱交換器13は、この第1実施形態では車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用され、リア側空調ケース16内に配置されている。リア側空調ケース16内には送風機15等が配置されている。送風機15でリア側空調ケース16内に吸引された送風は、リア側放熱用熱交換器13内を通過する顕熱冷媒との間で熱交換することによって冷風とされ、この冷風が車室の後席側に吹き出されるよう構成されている。
【0049】
また、車室内の温度を検知する車室内温度検知センサS1と、リア側放熱用熱交換器13の出口側の顕熱冷媒の温度を検知する冷媒温度検知センサS2が設けられている。車室内温度検知センサS1と冷媒温度検知センサS2は、図示しない制御部に出力されている。制御部は、主空調装置Aと補助空調装置Bを統括制御すると共に、車室内温度検知センサS1と冷媒温度検知センサS2の検知レベルに基づいて送風機15のオン・オフを制御する。このオン・オフ制御の詳細については、下記する。
【0050】
次に、熱交換器20の詳しい構成を説明する。熱交換器20は、図2〜図4に示すように、上記したようにエバポレータ部5と受熱用熱交換部12とを有し、エバポレータ部5の下方で、且つ、送風方向の下流側にシフトした位置に受熱用熱交換部12が設けられている。
【0051】
エバポレータ部5は、間隔を置いて並設された複数のチューブ21と、これら複数のチューブ21の上方に配置された上方タンク22と、複数のチューブ21の下方に配置された下方タンク23と、隣り合うチューブ21間に配置された複数のフィン24と、上方タンク22の両端に配置された2個の閉塞部材25,26とから構成されている。チューブ21内には、中央の仕切壁21aによって往路用冷媒通路21bと復路用冷媒通路21cが形成されている。上方タンク22内には、仕切壁22aによって入口側タンク室22bと出口側タンク室22cが形成されている。下方タンク23内には、単一の折り返しタンク室23aが形成されている。一方の閉塞部材25には、冷媒入口25aと冷媒出口25bが形成されている。冷媒入口25aから流入する冷媒は、入口側タンク室22b、往路用冷媒通路21b、折り返しタンク室23a、復路用冷媒通路21c、出口側タンク室22cの順に流れて冷媒出口25bより流出する。
【0052】
受熱用熱交換部12は、エバポレータ部5の幅方向に沿って延び、顕熱冷媒が流れる通路部12aと、この通路部12aの上面に立設された伝熱促進部である複数の伝熱促進フィン12bと、通路部12aの両端に配置された2個の閉塞部材27,28とから構成されている。通路部12a内には、仕切壁12cによって冷媒通路である往路12dと復路12eが形成されている。往路12dと復路12eは、エバポレータ部5を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路として構成されている。往路12dは、エバポレータ部5より遠い側に、復路12eはエバポレータ部5に近い側に設定されている。一方の閉塞部材27には、顕熱冷媒入口27aと顕熱冷媒出口27bが形成されている。顕熱冷媒入口27aから流入する顕熱冷媒は、往路12d、復路12eの順に流れて顕熱冷媒出口27bより流出する。
【0053】
このような構成の熱交換器20は、図3に示すように、2枚の一体成型部材30を互いに向かい合わせて重ねることにより単一構造体31とし、これら単一構造体31同士をフィン24を介在しつつ重ね合わせることによって基本的に組み付けされる。
【0054】
一体成型部材30は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニューム製であり、上方タンク片30a、チューブ片30b及び下方タンク片30cを有するエバポレータ部片30Aと、通路部片30dと伝熱促進フィン片30eを有する受熱用熱交換部片30Bとから一体に構成されている。つまり、一体成型部材30は、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12の双方の構成要素を有する部材である。
【0055】
多数の一体成型部材30を組み付けることにより、多数の上方タンク片30aによって上方タンク22が、多数の下方タンク片30cによって下方タンク23が、多数のチューブ片30bによって複数のチューブ21がそれぞれ構成される。又、多数の通路部片30dによって通路部12aが、多数の伝熱促進フィン片30eによって複数の伝熱促進フィン12bがそれぞれ構成される。組み付けされた一体成型部材30間、及びフィン24との間等は、ロー付けによって固定される。
【0056】
上記構成において、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動させると共に、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動させる。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、図1に示すように、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、図1に示すように、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0057】
また、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動させると共に、フロント側空調ケース7の送風機8のみ駆動させる。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却されるが、送風機15によってリア側放熱用熱交換器13に送風が送られないため、冷風が車室の後席側に吹き出されることはない。このような冷房運転を行うことにより、前席にのみ乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0058】
尚、前席側のメイン冷房ゾーンのみを形成する場合に、リア側空調ケース16の送風機15のみならずポンプ11も停止しておいて良いが、ポンプ11を予め駆動しておけば、後席に乗員が乗った場合に、リア側空調ケース16の送風機15を駆動すれば直ちに冷風が車室の後席側に吹き出させることができ、サブ冷房ゾーンを迅速に形成できるという利点がある。
【0059】
以上、前記車両用空気調和システムは、主空調装置Aのエバポレータ部5と補助空調装置Bのリア側放熱用熱交換器13を有し、補助空調装置Bの受熱用熱交換部12がエバポレータ部5から生成された凝縮水の冷熱で顕熱冷媒を冷却し、この冷却された顕熱冷媒によってリア側放熱用熱交換器13が冷却源とされるため、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができる。又、主空調装置Aでは顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を循環させるが、補助空調装置Bでは顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒を循環させるため、補助空調装置Bを稼動させない場合に、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生することがなく、補助空調装置Bの配管14とリア側放熱用熱交換器13を高耐圧用のものとする必要がないため、信頼性の高いシステムを構築することができる。以上より、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0060】
エバポレータ部5と受熱用熱交換部12は、単一の熱交換器20として構成されている。従って、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12をコンパクトに構成できる。尚、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12を別体に構成し、双方を隣接配置しても良い。
【0061】
熱交換器20には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進フィン12bが設けられているので、熱交換が促進されることから、凝縮水の冷熱をより有効に利用できる。この実施形態では、伝熱促進フィン12bもエバポレータ部5と共に一体に成型されているため、組み付け性の向上が図られている。そして、伝熱促進フィン12bは、一体成型部材30のチューブ片30bの外面方向に延設されているため、一体成型し易いという利点がある。
【0062】
熱交換器20は、一体成型部材30を組み付けることによって構成されているので、熱交換器20の組み付け作業が容易である。
【0063】
リア側放熱用熱交換器13は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されているので、主空調装置Aによって車室内を冷却できると共に補助空調装置Bによっても車室内を補助的に冷却できるため、上記したように乗員にとって快適な車室空間を形成できる。具体的には、リア側放熱用熱交換器13は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するよう構成されている。従って、エバポレータ部5を通過した送風を車室の前席に吹き出させるようにすれば、いわゆるデュアルエアコンシステムとすることができ、前席側のエリアと後席側のエリアを極力温度ムラなく冷却できる。
【0064】
又、アイドルストップ時に圧縮機2を停止する場合には、エバポレータ部5を通過する冷風温度が徐々に上昇するため、主空調装置Aの冷房性能が低下するが、顕熱冷媒に蓄熱された冷熱によって補助空調装置Bの冷房性能は維持されるため、快適な車室空間を極力維持することができる。
【0065】
熱交換器20は、受熱用熱交換部12がエバポレータ部5の下方に配置されている。従って、エバポレータ部5で生成された凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面を流下し、凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換されるため、エバポレータ部5から受熱用熱交換部12に凝縮水を送るような凝縮水送り手段を付加することなく凝縮水を送ることができる。
【0066】
熱交換器20は、顕熱冷媒の冷媒通路(往路12dと復路12e)がエバポレータ部5を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、冷媒通路の往路12dが復路12eに対し、エバポレータ部5を通過する送風の下流側に設定されている。従って、受熱用熱交換部12は凝縮水からの受熱によって主に冷却され、主空調装置Aのエバポレータ部5の冷媒からの受熱を極力受けないようにできるため、凝縮水の冷熱を極力利用でき、冷房の効率性を高めることができる。又、エバポレータ部5から送風力によって飛散する凝縮水も受熱用熱交換部12に落下する可能性が高いため、凝縮水の冷熱の有効利用を図ることができる。
【0067】
前記第1実施形態では、顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知している。制御部は、顕熱冷媒の温度が車室内温度より高い場合に、送風機15をオフし、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、送風機15をオンしてリア側放熱用熱交換器13の顕熱冷媒の冷熱を利用するよう構成しても良い。このようにすれば、補助空調装置Bの冷媒が車室内温度より高い場合には、リア側放熱用熱交換器13が冷却源として有効ではないため、有効でない冷却源を利用するような事態を防止できる。つまり、この第1実施形態のように、リア側放熱用熱交換器13を車室内の補助冷房として利用するときには温風を吹き出し逆に不快な空調空間を形成することになるが、このような不快な空調空間の形成を防止することができる。
【0068】
(第2実施形態)
図5〜図7は本発明の第2実施形態を示し、図5はデュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図6はシングルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図7は排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0069】
図5〜図7において、この第2実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0070】
つまり、主空調装置Aは、冷媒循環経路の切替等により、エバポレータ部5が蒸発器としてのみならず放熱器としても機能できるよう構成されている。
【0071】
補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13の他にフロント側放熱用熱交換器17を有すると共に顕熱冷媒の循環経路を切り替える第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19とを備え、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0072】
フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されている。これにより、フロント側空調ケース7内に吸引される内気と外気のいずれもがフロント側放熱用熱交換器17を通過するようになっている。
【0073】
第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19は、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12と2台のリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17との間を循環する経路(図5、図6の経路)と、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13の間のみを循環する経路と、リア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環する経路(図7の経路)とに選択的に切替できるよう構成されている。
【0074】
他の構成は、前記第1実施形態と同様にであるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
上記構成において、図5に示すデュアルエアコン吸気余冷モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を蒸発器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12と2台のリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17との間を循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替え、ポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。又、フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0076】
また、図6に示すシングルエアコン吸気余冷モードを説明する。上記と同様に、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動すると共に、フロント側空調ケース7の送風機8のみを駆動し、リア側空調ケース16の送風機15を停止状態とする。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却されるが、送風機15によってリア側放熱用熱交換器13に送風が送られないため、冷風が車室の後席側に吹き出されることはない。このような冷房運転を行うことにより、前席にのみ乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0077】
更に、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13との間でのみ循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切り替えると、前記第1実施形態と同様の冷房運転が可能である。
【0078】
以上より、この第2実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0079】
この第2実施形態では、放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器13と、エバポレータ部5への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器17であるので、受熱用熱交換部12の冷熱をエバポレータ部5を通過する送風の余冷と、補助空調装置Bの冷却源とに利用できる。
【0080】
この第2実施形態では、フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されたので、受熱用熱交換部12の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0081】
この第2実施形態では、顕熱冷媒は、受熱用熱交換部12、リア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17の間で循環させる経路と、受熱用熱交換部12及びリア側放熱用熱交換器13の間を循環させる経路と、受熱用熱交換部12及びフロント側放熱用熱交換器17の間を循環させる経路とに選択的に切り替えできるよう構成された。従って、受熱用熱交換部12の冷熱の利用先を選択できるため、運転状況に応じた有効な利用が可能である。
【0082】
次に、暖房運転時にあって、図7に示す排熱回収/吸気余熱モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を凝縮器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替え、ポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。更に、フロント側空調ケース7は外気を導入するように、リア側空調ケース16は吸引した内気を車室外に排気するよう所定の各ドアを切り替える。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が加熱され、温風が車室の前席側に吹き出される。補助空調装置B側では、リア側放熱用熱交換器13が排気される内気より吸熱し、この加熱された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、排気される内気より吸熱するため、排熱回収する。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を加熱するため、余熱された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。
【0083】
図7に示す排熱回収/吸気余熱モードにあって、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替えた。しかし、受熱用熱交換部12では、熱の授受が基本的に行われないため、受熱用熱交換部12、リア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17の間で循環させる経路に切り替えても良い。
【0084】
この第2実施形態では、エバポレータ部5は放熱器としても機能できるよう構成され、顕熱冷媒は、リア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17の間を少なくとも循環できるよう構成されている。従って、外気導入で車室内を暖房する場合には、車室内の排気熱をリア側放熱用熱交換器13で回収し、この回収した排気熱をフロント側放熱用熱交換器17で放熱して吸い込み空気の余熱に利用したため、暖房性能が向上する。
【0085】
(第2実施形態の変形例)
図8は本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。図8において、この第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムは、前記第2実施形態のものと比較するに、補助空調装置Bの構成が一部相違する。
【0086】
つまり、補助空調装置Bの補助冷却サイクル10には、リア側ポンプ11Aとフロント側ポンプ11Bの2台が設置されている。これにより、顕熱冷媒を受熱用熱交換部12とフロント側放熱用熱交換器17の間のみでも循環できるよう構成されている。
【0087】
他の構成は、前記第2実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
上記構成において、図8に示すシングルエアコン吸気余冷モード時では、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13に循環させる必要がないため、配管14やリア側放熱用熱交換器13での放熱を必要最小限に抑えることができ、エバポレータ部5の凝縮水の冷熱をほとんど空調風の余冷に利用できる。
【0089】
(第3実施形態)
図9及び図10は本発明の第3実施形態を示し、図9はデュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図10は排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0090】
図9及び図10において、この第3実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0091】
つまり、主空調装置Aは、冷媒循環経路の切替等により、そのエバポレータ部5が蒸発器としてのみならず放熱器としても機能できるよう構成されている。
【0092】
補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13の他にフロント側放熱用熱交換器17を有すると共に、受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17が配管14によって直列に接続され、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0093】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0094】
上記構成において、図9に示すデュアルエアコン吸気余冷モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を蒸発器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、単にポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。又、フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に送風されることになる。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0095】
また、上記と同様の作動状態にあって、送風機15を駆動しないようにすれば、第2実施形態で説明したようなシングルエアコン吸気余冷モード(図6参照)を実行できる。
【0096】
以上より、この第3実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0097】
暖房運転時にあって、図10に示す排熱回収/吸気余熱モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を凝縮器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、単にポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。更に、フロント側空調ケース7は外気を導入するように、リア側空調ケース16は吸引した内気を車室外に排気するよう所定の各ドアを切り替える。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が加熱され、温風が車室の前席側に吹き出される。補助空調装置B側では、リア側放熱用熱交換器13が排気される内気より吸熱し、この加熱された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、排気される内気より吸熱するため、排熱回収される。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を加熱するため、余熱された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。以上より、車室内から外部に排気する排熱を回収し、その回収した排熱を空調風の余熱に利用できるため、暖房性能が向上する。
【0098】
図10に示す排熱回収/吸気余熱モードにあって、顕熱冷媒は受熱用熱交換部12を循環するが、受熱用熱交換部12では基本的に熱の授受が行われないため、ほぼ第2実施形態と同等に暖房性能を向上させることができる。
【0099】
この第3実施形態では、補助空調装置Bに第2実施形態のような第1流路切替弁及び第2流路切替弁が必要ないため、構成が簡単で、安価であるという利点がある。
【0100】
(第4実施形態)
図11は本発明の第4実施形態に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0101】
図11において、この第4実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0102】
つまり、補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13ではなくフロント側放熱用熱交換器17を有し、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0103】
フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されている。これにより、フロント側空調ケース7内に吸引される内気と外気のいずれもがフロント側放熱用熱交換器17を通過するようになっている。
【0104】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0105】
上記構成において、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動すると共に、フロント側空調ケース7の送風機8を駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。
【0106】
以上より、この第4実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0107】
この第4実施形態では、放熱用熱交換器は、エバポレータ部5への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器17であるので、エバポレータ部5に吸い込む送風を余冷できるため、冷房性能が向上する。
【0108】
この第4実施形態では、フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されたので、受熱用熱交換部12の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0109】
(熱交換器の変形例)
図12は第1変形例の熱交換器20Aの断面図である。この第1変形例の熱交換器20Aでは、図12に示すように、受熱用熱交換部12が、前記実施形態と同様に、エバポレータ部5に対し送風方向の下流側にシフトされているが、エバポレータ部5に完全にオーバーラップしない位置までシフトされている。図12において、前記実施形態と同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0110】
このような構成にすれば、受熱用熱交換部12によるエバポレータ部5の冷媒からの受熱を極力少なくでき、凝縮水からの受熱の割合をその分高くできるため、冷房効率を高めることができる。
【0111】
図13は第2変形例の熱交換器20Bの断面図である。この第2変形例の熱交換器20Bでは、図13に示すように、受熱用熱交換部12が、第1変形例と同様にエバポレータ部5に完全にオーバーラップしない位置までシフトされており、その上、伝熱促進フィン12bはエバポレータ部5との間にクリアランスdを有し、且つ、通路部12aの側面にまで延設されている。図13において、前記実施形態と同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0112】
このような構成にすれば、受熱用熱交換部12によるエバポレータ部5の冷媒からの受熱をさらに少なくでき、凝縮水からの受熱の割合をその分高くできるため、冷房効率を更に高めることができる。
【0113】
また、第1及び第2変形例共に、エバポレータ部5から送風力によって飛散する凝縮水が受熱用熱交換部12に落下する可能性が高いため、凝縮水の冷熱の有効利用を図ることができる。
【0114】
(その他)
前記各実施形態では、補助空調装置Bのリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17は、車室内の補助冷房に利用されているが、座席シートの冷却、車室の天井の冷却、クーラボックスの冷却等に利用しても良い。
【0115】
前記各実施形態では、受熱用熱交換部12の冷媒通路を往路12dと復路12eからなるUターン経路とするために二分割されているが、伝達効率を高めるために更に細分化しても良い。
【0116】
前記各実施形態では、エバポレータ部5の下方に受熱用熱交換部12を設け、エバポレータ部5で生成された凝縮水が自重によって受熱用熱交換部12の外面を流下しつつ流れるように構成されているが、エバポレータ部5で生成される凝縮水を一旦溜める凝縮水貯留手段(例えばドレンパン)を設け、その中に受熱用熱交換部を浸けるようにしても良い。
【0117】
前記各実施形態では、補助空調装置Bの放熱用熱交換器13は、1つ若しくは2つであるが、補助冷却サイクル10内に並列若しくは直列に3つ以上設置しても良い。また、ポンプ11,11A,11Bの設置位置も種々考えられる。
【符号の説明】
【0118】
A 主空調装置
B 補助空調装置
1 蒸気圧縮式冷凍サイクル(冷凍サイクル)
5 エバポレータ部
10 補助冷却サイクル
12 受熱用熱交換部
12b 伝熱促進フィン(伝熱促進部)
12d 往路(冷媒通路)
12e 復路(冷媒通路)
13 リア側放熱用熱交換器(放熱用熱交換器)
17 フロント側放熱用熱交換器(放熱用熱交換器)
20,20A,20B 熱交換器
30 一体成型部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、主空調装置と補助空調装置を備えた車両用空気調和システム、及び、このシステムに適用される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空気調和システムとしては、特許文献1に開示されたものがある。この車両用空気調和システムは、冷凍サイクルを有する。冷凍サイクルは、顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機に圧縮された高温高圧の冷媒を冷却する凝縮器と、凝縮器で冷却された冷媒を減圧する第1減圧手段と、第1減圧手段で減圧された冷媒との間で熱交換するフロント用エバポレータと、凝縮器で冷却された冷媒を減圧する第2減圧手段と、第2減圧手段で減圧された冷媒との間で熱交換するリア用エバポレータと、冷媒を第1減圧手段及びフロント用エバポレータ側にのみ流したり、第1減圧手段及びフロント用エバポレータ側と第2減圧手段及びリア用エバポレータ側の双方にも流したりできる冷媒切替弁とを備えている。
【0003】
フロント用エバポレータは、内部を通過する冷媒と車室の前席側に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却する。リア用エバポレータは、内部を通過する冷媒と車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却する。
【0004】
上記構成において、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合には、フロント用エバポレータとリア用エバポレータに冷媒を流すことによって前席側と後席側に冷風を吹き出させることができる。又、前席にのみ乗員が乗っている場合には、フロント用エバポレータにのみ冷媒を流すことによって前席側にのみ冷風を吹き出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−193337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来例の車両用空気調和システムでは、フロント用エバポレータとリア用エバポレータの2台の冷却源を有することから、単一のエバポレータを有するシステムと比較して快適な車室内空間を形成することができる。しかし、フロント用エバポレータとリア用エバポレータの冷熱によって冷風のみならず凝縮水が生成され、その凝縮水(冷熱)が廃棄されている。そのため、効率の良い冷房運転とはいえないという問題がある。
【0007】
また、リア用エバポレータに冷媒を循環させない運転を行う場合には、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生するため、単一のエバポレータを有するシステムと比較して信頼性の面で劣るという問題がある。
【0008】
又、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒をフロント用エバポレータのみならずリア用エバポレータにも循環させる必要があるため、補助的な冷却源であるリア用エバポレータ及びこれへの配管を高耐圧用のものとする必要がある。この点からも信頼性の高いシステムを構築することができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、システムとしても信頼性の高い車両用空気調和システム、及び、これに用いる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1の発明は、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部を有する主空調装置と、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、前記エバポレータ部より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部と顕熱冷媒の冷熱を放熱する放熱用熱交換器とを有する補助空調装置とを備えたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用空気調和システムであって、前記エバポレータ部と前記受熱用熱交換部は、単一の熱交換器として構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進部が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、前記エバポレータ部と前記受熱用熱交換部の双方の構成要素を有する多数の一体成型部材を組み付けることによって構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、前記エバポレータ部への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0017】
請求項8の発明は、請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、前記放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器と、前記エバポレータ部への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器であることを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0018】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の車両用空気調和システムであって、前記フロント側放熱用熱交換器は、内外気切替口の下流で、且つ、前記エバポレータ部の上流に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0019】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、顕熱冷媒は、前記受熱用熱交換部、前記リア側放熱用熱交換器及び前記フロント側熱交換器の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部及び前記リア側放熱用熱交換器の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部及び前記フロント側放熱用熱交換器の間を循環させる経路の少なくとも2以上の経路に選択的に切り替えできるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0020】
請求項11の発明は、請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、前記エバポレータ部は放熱器としても機能できるよう構成され、顕熱冷媒は、前記リア側放熱用熱交換器と前記フロント側放熱用熱交換器の間を少なくとも循環するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0021】
請求項12の発明は、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、前記受熱用熱交換部が前記エバポレータ部の下方に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0022】
請求項13の発明は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記熱交換器は、顕熱冷媒の冷媒通路が前記エバポレータ部を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、前記冷媒通路の往路が復路に対し、前記エバポレータ部を通過する送風の下流側に設定されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0023】
請求項14の発明は、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知し、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、前記放熱用熱交換器を通過する冷媒の冷熱を利用するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システムである。
【0024】
請求項15の発明は、冷媒が循環する冷凍サイクルの構成部品として構成され、冷媒と車室に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部と、顕熱冷媒が循環する補助冷却サイクルの構成部品として構成され、顕熱冷媒と前記エバポレータ部で生成される凝縮水との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部とを備えたことを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、主空調装置のエバポレータ部と補助空調装置の放熱用熱交換部を有し、補助空調装置の受熱用熱交換部がエバポレータ部から生成された凝縮水の冷熱で顕熱冷媒を冷却し、この冷却された顕熱冷媒によって放熱用熱交換器が冷却源とされるため、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができる。又、主空調装置では顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を循環させるが、補助空調装置では顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒を循環させるため、補助空調装置を稼動させない場合に、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生することがなく、補助空調装置の配管と放熱用熱交換器を高耐圧用のものとする必要がないため、信頼性の高いシステムを構築することができる。以上より、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0026】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、エバポレータ部と受熱用熱交換部をコンパクトに構成できる。
【0027】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、凝縮水の冷熱をより有効に利用できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、請求項2又は請求項3の発明の効果に加え、熱交換器の組み付け作業が容易である。
【0029】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4の発明の効果に加え、主空調装置によって車室内を冷却できると共に補助空調装置によっても車室内を補助的に冷却できるため、乗員にとって極力快適な車室内空間を形成できる。
【0030】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、エバポレータ部を通過した送風を車室の前席側に吹き出させるようにすれば、いわゆるデュアルエアコンシステムとすることができ、前席側のエリアと後席側のエリアを極力温度ムラなく冷却できる。
【0031】
請求項7の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、エバポレータ部に吸い込む送風を余冷できるため、主空調装置の冷房性能が向上する。
【0032】
請求項8の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱をエバポレータ部を通過する送風の余冷と、補助空調装置の冷却源とに利用できる。
【0033】
請求項9の発明によれば、請求項7又は請求項8の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0034】
請求項10の発明によれば、請求項7又は請求項8の発明の効果に加え、受熱用熱交換部の冷熱の利用先を選択できるため、運転状況に応じた有効な利用が可能である。
【0035】
請求項11の発明の効果に加え、請求項8又は請求項9の発明の効果に加え、外気導入で車室内を暖房する場合には、車室内の排気熱をリア側放熱用熱交換器で回収し、この回収した排気熱をフロント側放熱用熱交換器で放熱して吸い込み空気の余熱に利用できるため、暖房性能が向上する。
【0036】
請求項12の発明によれば、請求項1〜請求項11の発明の効果に加え、エバポレータ部で生成され、重力によって落下した凝縮水が受熱用熱交換部で熱交換されるため、エバポレータ部から受熱用熱交換部に何ら凝縮水送り手段を用いることなく凝縮水を供給できる。
【0037】
請求項13の発明によれば、請求項1〜請求項12の発明の効果に加え、受熱用熱交換部は凝縮水からの受熱によって主に冷却され、主空調装置のエバポレータ部の冷媒からの受熱を極力少なくできるため、凝縮水の冷熱を極力利用でき、冷房効率を高めることができる。
【0038】
請求項14の発明によれば、請求項1〜請求項13の発明の効果に加え、補助空調装置の冷媒が車室内温度より高い場合には、放熱用熱交換器が冷却源として有効ではないため、有効でない冷却源を利用するような事態を防止できる。つまり、放熱用熱交換器を例えば車室内の補助冷房として利用するときには温風を吹き出し逆に不快な空調空間を形成することになるが、このような不快な空調空間の形成を防止することができる。
【0039】
請求項15の発明によれば、主空調装置のエバポレータ部と補助空調装置の放熱用熱交換器を有し、補助空調装置の放熱用熱交換器はエバポレータ部から生成された凝縮水の冷熱を利用して冷却源とされるため、複数の冷却源を有し、且つ、効率の良い冷房運転ができるシステムを構築する際に、有効な熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、熱交換器の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、デュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示し、シングルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示し、デュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示し、排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【図12】第1変形例の熱交換器の断面図である。
【図13】第2変形例の熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示し、図1は車両用空気調和システムの要部構成図、図2は熱交換器の斜視図、図3は熱交換器の分解斜視図、図4は熱交換器の断面図である。
【0043】
図1に示すように、車両用空気調和システムは、主空調装置Aと補助空調装置Bとを備えている。
【0044】
主空調装置Aは、蒸気圧縮式冷凍サイクル1を有する。蒸気圧縮式冷凍サイクル1は、顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒(例えば炭酸ガス)を圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒を放熱する凝縮器3と、この凝縮器3で放熱された冷媒を減圧する膨張弁4と、この膨張弁4で減圧された冷媒を放熱するエバポレータ部5と、これらを接続する複数の配管6とを備え、サイクル内を冷媒が循環する。
【0045】
エバポレータ部5は、フロント側空調ケース7内に配置されている。フロント側空調ケース7内には送風機8等が配置されている。送風機8でフロント側空調ケース7内に吸引された送風は、エバポレータ部5内を通過する冷媒との間で熱交換することによって冷風とされ、この冷風が車室の前席側に吹き出されるよう構成されている。
【0046】
補助空調装置Bは、補助冷却サイクル10を有する。補助冷却サイクル10は、顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒(例えば冷却水)を圧送するポンプ11と、受熱用熱交換部12と、放熱用熱交換器であるリア側放熱用熱交換器13と、これらを接続する複数の配管14とを備え、サイクル内を顕熱冷媒が循環する。
【0047】
受熱用熱交換部12は、エバポレータ部5より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換させて顕熱冷媒を冷却する。受熱用熱交換部12は主空調装置Aのエバポレータ部5と一体に組み付けされ、単一の熱交換器20として構成されている。熱交換器20の詳しい構成は、下記に詳述する。
【0048】
リア側放熱用熱交換器13は、この第1実施形態では車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用され、リア側空調ケース16内に配置されている。リア側空調ケース16内には送風機15等が配置されている。送風機15でリア側空調ケース16内に吸引された送風は、リア側放熱用熱交換器13内を通過する顕熱冷媒との間で熱交換することによって冷風とされ、この冷風が車室の後席側に吹き出されるよう構成されている。
【0049】
また、車室内の温度を検知する車室内温度検知センサS1と、リア側放熱用熱交換器13の出口側の顕熱冷媒の温度を検知する冷媒温度検知センサS2が設けられている。車室内温度検知センサS1と冷媒温度検知センサS2は、図示しない制御部に出力されている。制御部は、主空調装置Aと補助空調装置Bを統括制御すると共に、車室内温度検知センサS1と冷媒温度検知センサS2の検知レベルに基づいて送風機15のオン・オフを制御する。このオン・オフ制御の詳細については、下記する。
【0050】
次に、熱交換器20の詳しい構成を説明する。熱交換器20は、図2〜図4に示すように、上記したようにエバポレータ部5と受熱用熱交換部12とを有し、エバポレータ部5の下方で、且つ、送風方向の下流側にシフトした位置に受熱用熱交換部12が設けられている。
【0051】
エバポレータ部5は、間隔を置いて並設された複数のチューブ21と、これら複数のチューブ21の上方に配置された上方タンク22と、複数のチューブ21の下方に配置された下方タンク23と、隣り合うチューブ21間に配置された複数のフィン24と、上方タンク22の両端に配置された2個の閉塞部材25,26とから構成されている。チューブ21内には、中央の仕切壁21aによって往路用冷媒通路21bと復路用冷媒通路21cが形成されている。上方タンク22内には、仕切壁22aによって入口側タンク室22bと出口側タンク室22cが形成されている。下方タンク23内には、単一の折り返しタンク室23aが形成されている。一方の閉塞部材25には、冷媒入口25aと冷媒出口25bが形成されている。冷媒入口25aから流入する冷媒は、入口側タンク室22b、往路用冷媒通路21b、折り返しタンク室23a、復路用冷媒通路21c、出口側タンク室22cの順に流れて冷媒出口25bより流出する。
【0052】
受熱用熱交換部12は、エバポレータ部5の幅方向に沿って延び、顕熱冷媒が流れる通路部12aと、この通路部12aの上面に立設された伝熱促進部である複数の伝熱促進フィン12bと、通路部12aの両端に配置された2個の閉塞部材27,28とから構成されている。通路部12a内には、仕切壁12cによって冷媒通路である往路12dと復路12eが形成されている。往路12dと復路12eは、エバポレータ部5を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路として構成されている。往路12dは、エバポレータ部5より遠い側に、復路12eはエバポレータ部5に近い側に設定されている。一方の閉塞部材27には、顕熱冷媒入口27aと顕熱冷媒出口27bが形成されている。顕熱冷媒入口27aから流入する顕熱冷媒は、往路12d、復路12eの順に流れて顕熱冷媒出口27bより流出する。
【0053】
このような構成の熱交換器20は、図3に示すように、2枚の一体成型部材30を互いに向かい合わせて重ねることにより単一構造体31とし、これら単一構造体31同士をフィン24を介在しつつ重ね合わせることによって基本的に組み付けされる。
【0054】
一体成型部材30は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニューム製であり、上方タンク片30a、チューブ片30b及び下方タンク片30cを有するエバポレータ部片30Aと、通路部片30dと伝熱促進フィン片30eを有する受熱用熱交換部片30Bとから一体に構成されている。つまり、一体成型部材30は、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12の双方の構成要素を有する部材である。
【0055】
多数の一体成型部材30を組み付けることにより、多数の上方タンク片30aによって上方タンク22が、多数の下方タンク片30cによって下方タンク23が、多数のチューブ片30bによって複数のチューブ21がそれぞれ構成される。又、多数の通路部片30dによって通路部12aが、多数の伝熱促進フィン片30eによって複数の伝熱促進フィン12bがそれぞれ構成される。組み付けされた一体成型部材30間、及びフィン24との間等は、ロー付けによって固定される。
【0056】
上記構成において、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動させると共に、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動させる。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、図1に示すように、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、図1に示すように、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0057】
また、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動させると共に、フロント側空調ケース7の送風機8のみ駆動させる。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却されるが、送風機15によってリア側放熱用熱交換器13に送風が送られないため、冷風が車室の後席側に吹き出されることはない。このような冷房運転を行うことにより、前席にのみ乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0058】
尚、前席側のメイン冷房ゾーンのみを形成する場合に、リア側空調ケース16の送風機15のみならずポンプ11も停止しておいて良いが、ポンプ11を予め駆動しておけば、後席に乗員が乗った場合に、リア側空調ケース16の送風機15を駆動すれば直ちに冷風が車室の後席側に吹き出させることができ、サブ冷房ゾーンを迅速に形成できるという利点がある。
【0059】
以上、前記車両用空気調和システムは、主空調装置Aのエバポレータ部5と補助空調装置Bのリア側放熱用熱交換器13を有し、補助空調装置Bの受熱用熱交換部12がエバポレータ部5から生成された凝縮水の冷熱で顕熱冷媒を冷却し、この冷却された顕熱冷媒によってリア側放熱用熱交換器13が冷却源とされるため、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができる。又、主空調装置Aでは顕熱と潜熱での熱交換を行う冷媒を循環させるが、補助空調装置Bでは顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒を循環させるため、補助空調装置Bを稼動させない場合に、冷媒の寝込みやオイルの寝込みが発生することがなく、補助空調装置Bの配管14とリア側放熱用熱交換器13を高耐圧用のものとする必要がないため、信頼性の高いシステムを構築することができる。以上より、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0060】
エバポレータ部5と受熱用熱交換部12は、単一の熱交換器20として構成されている。従って、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12をコンパクトに構成できる。尚、エバポレータ部5と受熱用熱交換部12を別体に構成し、双方を隣接配置しても良い。
【0061】
熱交換器20には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進フィン12bが設けられているので、熱交換が促進されることから、凝縮水の冷熱をより有効に利用できる。この実施形態では、伝熱促進フィン12bもエバポレータ部5と共に一体に成型されているため、組み付け性の向上が図られている。そして、伝熱促進フィン12bは、一体成型部材30のチューブ片30bの外面方向に延設されているため、一体成型し易いという利点がある。
【0062】
熱交換器20は、一体成型部材30を組み付けることによって構成されているので、熱交換器20の組み付け作業が容易である。
【0063】
リア側放熱用熱交換器13は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されているので、主空調装置Aによって車室内を冷却できると共に補助空調装置Bによっても車室内を補助的に冷却できるため、上記したように乗員にとって快適な車室空間を形成できる。具体的には、リア側放熱用熱交換器13は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するよう構成されている。従って、エバポレータ部5を通過した送風を車室の前席に吹き出させるようにすれば、いわゆるデュアルエアコンシステムとすることができ、前席側のエリアと後席側のエリアを極力温度ムラなく冷却できる。
【0064】
又、アイドルストップ時に圧縮機2を停止する場合には、エバポレータ部5を通過する冷風温度が徐々に上昇するため、主空調装置Aの冷房性能が低下するが、顕熱冷媒に蓄熱された冷熱によって補助空調装置Bの冷房性能は維持されるため、快適な車室空間を極力維持することができる。
【0065】
熱交換器20は、受熱用熱交換部12がエバポレータ部5の下方に配置されている。従って、エバポレータ部5で生成された凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面を流下し、凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換されるため、エバポレータ部5から受熱用熱交換部12に凝縮水を送るような凝縮水送り手段を付加することなく凝縮水を送ることができる。
【0066】
熱交換器20は、顕熱冷媒の冷媒通路(往路12dと復路12e)がエバポレータ部5を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、冷媒通路の往路12dが復路12eに対し、エバポレータ部5を通過する送風の下流側に設定されている。従って、受熱用熱交換部12は凝縮水からの受熱によって主に冷却され、主空調装置Aのエバポレータ部5の冷媒からの受熱を極力受けないようにできるため、凝縮水の冷熱を極力利用でき、冷房の効率性を高めることができる。又、エバポレータ部5から送風力によって飛散する凝縮水も受熱用熱交換部12に落下する可能性が高いため、凝縮水の冷熱の有効利用を図ることができる。
【0067】
前記第1実施形態では、顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知している。制御部は、顕熱冷媒の温度が車室内温度より高い場合に、送風機15をオフし、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、送風機15をオンしてリア側放熱用熱交換器13の顕熱冷媒の冷熱を利用するよう構成しても良い。このようにすれば、補助空調装置Bの冷媒が車室内温度より高い場合には、リア側放熱用熱交換器13が冷却源として有効ではないため、有効でない冷却源を利用するような事態を防止できる。つまり、この第1実施形態のように、リア側放熱用熱交換器13を車室内の補助冷房として利用するときには温風を吹き出し逆に不快な空調空間を形成することになるが、このような不快な空調空間の形成を防止することができる。
【0068】
(第2実施形態)
図5〜図7は本発明の第2実施形態を示し、図5はデュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図6はシングルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図7は排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0069】
図5〜図7において、この第2実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0070】
つまり、主空調装置Aは、冷媒循環経路の切替等により、エバポレータ部5が蒸発器としてのみならず放熱器としても機能できるよう構成されている。
【0071】
補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13の他にフロント側放熱用熱交換器17を有すると共に顕熱冷媒の循環経路を切り替える第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19とを備え、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0072】
フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されている。これにより、フロント側空調ケース7内に吸引される内気と外気のいずれもがフロント側放熱用熱交換器17を通過するようになっている。
【0073】
第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19は、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12と2台のリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17との間を循環する経路(図5、図6の経路)と、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13の間のみを循環する経路と、リア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環する経路(図7の経路)とに選択的に切替できるよう構成されている。
【0074】
他の構成は、前記第1実施形態と同様にであるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
上記構成において、図5に示すデュアルエアコン吸気余冷モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を蒸発器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12と2台のリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17との間を循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替え、ポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。又、フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0076】
また、図6に示すシングルエアコン吸気余冷モードを説明する。上記と同様に、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動すると共に、フロント側空調ケース7の送風機8のみを駆動し、リア側空調ケース16の送風機15を停止状態とする。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却されるが、送風機15によってリア側放熱用熱交換器13に送風が送られないため、冷風が車室の後席側に吹き出されることはない。このような冷房運転を行うことにより、前席にのみ乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0077】
更に、顕熱冷媒が受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13との間でのみ循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切り替えると、前記第1実施形態と同様の冷房運転が可能である。
【0078】
以上より、この第2実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0079】
この第2実施形態では、放熱用熱交換器は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器13と、エバポレータ部5への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器17であるので、受熱用熱交換部12の冷熱をエバポレータ部5を通過する送風の余冷と、補助空調装置Bの冷却源とに利用できる。
【0080】
この第2実施形態では、フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されたので、受熱用熱交換部12の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0081】
この第2実施形態では、顕熱冷媒は、受熱用熱交換部12、リア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17の間で循環させる経路と、受熱用熱交換部12及びリア側放熱用熱交換器13の間を循環させる経路と、受熱用熱交換部12及びフロント側放熱用熱交換器17の間を循環させる経路とに選択的に切り替えできるよう構成された。従って、受熱用熱交換部12の冷熱の利用先を選択できるため、運転状況に応じた有効な利用が可能である。
【0082】
次に、暖房運転時にあって、図7に示す排熱回収/吸気余熱モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を凝縮器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替え、ポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。更に、フロント側空調ケース7は外気を導入するように、リア側空調ケース16は吸引した内気を車室外に排気するよう所定の各ドアを切り替える。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が加熱され、温風が車室の前席側に吹き出される。補助空調装置B側では、リア側放熱用熱交換器13が排気される内気より吸熱し、この加熱された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、排気される内気より吸熱するため、排熱回収する。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を加熱するため、余熱された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。
【0083】
図7に示す排熱回収/吸気余熱モードにあって、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17との間のみを循環するよう第1流路切替弁18及び第2流路切替弁19を切替えた。しかし、受熱用熱交換部12では、熱の授受が基本的に行われないため、受熱用熱交換部12、リア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17の間で循環させる経路に切り替えても良い。
【0084】
この第2実施形態では、エバポレータ部5は放熱器としても機能できるよう構成され、顕熱冷媒は、リア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17の間を少なくとも循環できるよう構成されている。従って、外気導入で車室内を暖房する場合には、車室内の排気熱をリア側放熱用熱交換器13で回収し、この回収した排気熱をフロント側放熱用熱交換器17で放熱して吸い込み空気の余熱に利用したため、暖房性能が向上する。
【0085】
(第2実施形態の変形例)
図8は本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。図8において、この第2実施形態の変形例に係る車両用空気調和システムは、前記第2実施形態のものと比較するに、補助空調装置Bの構成が一部相違する。
【0086】
つまり、補助空調装置Bの補助冷却サイクル10には、リア側ポンプ11Aとフロント側ポンプ11Bの2台が設置されている。これにより、顕熱冷媒を受熱用熱交換部12とフロント側放熱用熱交換器17の間のみでも循環できるよう構成されている。
【0087】
他の構成は、前記第2実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
上記構成において、図8に示すシングルエアコン吸気余冷モード時では、顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13に循環させる必要がないため、配管14やリア側放熱用熱交換器13での放熱を必要最小限に抑えることができ、エバポレータ部5の凝縮水の冷熱をほとんど空調風の余冷に利用できる。
【0089】
(第3実施形態)
図9及び図10は本発明の第3実施形態を示し、図9はデュアルエアコン吸気余冷モード時における車両用空気調和システムの要部構成図、図10は排熱回収/吸気余熱モード時における車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0090】
図9及び図10において、この第3実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0091】
つまり、主空調装置Aは、冷媒循環経路の切替等により、そのエバポレータ部5が蒸発器としてのみならず放熱器としても機能できるよう構成されている。
【0092】
補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13の他にフロント側放熱用熱交換器17を有すると共に、受熱用熱交換部12とリア側放熱用熱交換器13とフロント側放熱用熱交換器17が配管14によって直列に接続され、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0093】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0094】
上記構成において、図9に示すデュアルエアコン吸気余冷モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を蒸発器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、単にポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。これにより、前席側にメイン冷房ゾーンが形成される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、冷却された顕熱冷媒によって送風を冷却し、冷風が車室の後席側に吹き出される。これにより、後席側にサブ冷房ゾーンが形成される。又、フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に送風されることになる。このような冷房運転を行うことにより、前席と後席の双方に乗員が乗っている場合に、全乗員にとって快適な車室空間を形成できる。
【0095】
また、上記と同様の作動状態にあって、送風機15を駆動しないようにすれば、第2実施形態で説明したようなシングルエアコン吸気余冷モード(図6参照)を実行できる。
【0096】
以上より、この第3実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0097】
暖房運転時にあって、図10に示す排熱回収/吸気余熱モードを説明する。主空調装置Aは、そのエバポレータ部5を凝縮器として機能させる冷媒経路に切替え、圧縮機(図示せず)を駆動する。補助空調装置Bは、単にポンプ11を駆動する。又、フロント側空調ケース7とリア側空調ケース16の送風機8,15を共に駆動する。更に、フロント側空調ケース7は外気を導入するように、リア側空調ケース16は吸引した内気を車室外に排気するよう所定の各ドアを切り替える。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が加熱され、温風が車室の前席側に吹き出される。補助空調装置B側では、リア側放熱用熱交換器13が排気される内気より吸熱し、この加熱された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。リア側放熱用熱交換器13では、排気される内気より吸熱するため、排熱回収される。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を加熱するため、余熱された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。以上より、車室内から外部に排気する排熱を回収し、その回収した排熱を空調風の余熱に利用できるため、暖房性能が向上する。
【0098】
図10に示す排熱回収/吸気余熱モードにあって、顕熱冷媒は受熱用熱交換部12を循環するが、受熱用熱交換部12では基本的に熱の授受が行われないため、ほぼ第2実施形態と同等に暖房性能を向上させることができる。
【0099】
この第3実施形態では、補助空調装置Bに第2実施形態のような第1流路切替弁及び第2流路切替弁が必要ないため、構成が簡単で、安価であるという利点がある。
【0100】
(第4実施形態)
図11は本発明の第4実施形態に係る車両用空気調和システムの要部構成図である。
【0101】
図11において、この第4実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の構成が相違する。
【0102】
つまり、補助空調装置Bは、放熱用熱交換器としてリア側放熱用熱交換器13ではなくフロント側放熱用熱交換器17を有し、サイクル内を顕熱冷媒が循環するよう構成されている。
【0103】
フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されている。これにより、フロント側空調ケース7内に吸引される内気と外気のいずれもがフロント側放熱用熱交換器17を通過するようになっている。
【0104】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0105】
上記構成において、主空調装置Aの圧縮機2と補助空調装置Bのポンプ11を共に駆動すると共に、フロント側空調ケース7の送風機8を駆動する。すると、主空調装置A側では、熱交換器20のエバポレータ部5を通過した送風が冷却され、冷風が車室の前席側に吹き出される。エバポレータ部5では送風を冷却する際に凝縮水が生成され、この凝縮水が重力によって受熱用熱交換部12の外面等を流れる。そして、補助空調装置B側では、受熱用熱交換部12内の顕熱冷媒と凝縮水が熱交換して顕熱冷媒が冷却される。この冷却された顕熱冷媒がフロント側放熱用熱交換器17を循環する。フロント側放熱用熱交換器17では、フロント側空調ケース7に吸引される送風を、冷却された顕熱冷媒によって冷却するため、余冷された送風がエバポレータ部5に導かれることになる。
【0106】
以上より、この第4実施形態の車両用空気調和システムでも、前記第1実施形態と同様に、複数の冷却源を有するシステムにあって効率の良い冷房運転ができ、しかも、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0107】
この第4実施形態では、放熱用熱交換器は、エバポレータ部5への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器17であるので、エバポレータ部5に吸い込む送風を余冷できるため、冷房性能が向上する。
【0108】
この第4実施形態では、フロント側放熱用熱交換器17は、内外気切替口の下流で、且つ、エバポレータ部5の上流に配置されたので、受熱用熱交換部12の冷熱を内気と外気の双方の余冷に利用できる。
【0109】
(熱交換器の変形例)
図12は第1変形例の熱交換器20Aの断面図である。この第1変形例の熱交換器20Aでは、図12に示すように、受熱用熱交換部12が、前記実施形態と同様に、エバポレータ部5に対し送風方向の下流側にシフトされているが、エバポレータ部5に完全にオーバーラップしない位置までシフトされている。図12において、前記実施形態と同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0110】
このような構成にすれば、受熱用熱交換部12によるエバポレータ部5の冷媒からの受熱を極力少なくでき、凝縮水からの受熱の割合をその分高くできるため、冷房効率を高めることができる。
【0111】
図13は第2変形例の熱交換器20Bの断面図である。この第2変形例の熱交換器20Bでは、図13に示すように、受熱用熱交換部12が、第1変形例と同様にエバポレータ部5に完全にオーバーラップしない位置までシフトされており、その上、伝熱促進フィン12bはエバポレータ部5との間にクリアランスdを有し、且つ、通路部12aの側面にまで延設されている。図13において、前記実施形態と同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0112】
このような構成にすれば、受熱用熱交換部12によるエバポレータ部5の冷媒からの受熱をさらに少なくでき、凝縮水からの受熱の割合をその分高くできるため、冷房効率を更に高めることができる。
【0113】
また、第1及び第2変形例共に、エバポレータ部5から送風力によって飛散する凝縮水が受熱用熱交換部12に落下する可能性が高いため、凝縮水の冷熱の有効利用を図ることができる。
【0114】
(その他)
前記各実施形態では、補助空調装置Bのリア側放熱用熱交換器13及びフロント側放熱用熱交換器17は、車室内の補助冷房に利用されているが、座席シートの冷却、車室の天井の冷却、クーラボックスの冷却等に利用しても良い。
【0115】
前記各実施形態では、受熱用熱交換部12の冷媒通路を往路12dと復路12eからなるUターン経路とするために二分割されているが、伝達効率を高めるために更に細分化しても良い。
【0116】
前記各実施形態では、エバポレータ部5の下方に受熱用熱交換部12を設け、エバポレータ部5で生成された凝縮水が自重によって受熱用熱交換部12の外面を流下しつつ流れるように構成されているが、エバポレータ部5で生成される凝縮水を一旦溜める凝縮水貯留手段(例えばドレンパン)を設け、その中に受熱用熱交換部を浸けるようにしても良い。
【0117】
前記各実施形態では、補助空調装置Bの放熱用熱交換器13は、1つ若しくは2つであるが、補助冷却サイクル10内に並列若しくは直列に3つ以上設置しても良い。また、ポンプ11,11A,11Bの設置位置も種々考えられる。
【符号の説明】
【0118】
A 主空調装置
B 補助空調装置
1 蒸気圧縮式冷凍サイクル(冷凍サイクル)
5 エバポレータ部
10 補助冷却サイクル
12 受熱用熱交換部
12b 伝熱促進フィン(伝熱促進部)
12d 往路(冷媒通路)
12e 復路(冷媒通路)
13 リア側放熱用熱交換器(放熱用熱交換器)
17 フロント側放熱用熱交換器(放熱用熱交換器)
20,20A,20B 熱交換器
30 一体成型部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部(5)を有する主空調装置(A)と、
顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、前記エバポレータ部(5)より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部(12)と顕熱冷媒の冷熱を放熱する放熱用熱交換器(13),(17)とを有する補助空調装置(B)とを備えたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和システムであって、
前記エバポレータ部(5)と前記受熱用熱交換部(12)は、単一の熱交換器(20),(20A),(20B)として構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進部(12b)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、前記エバポレータ部(5)と前記受熱用熱交換部(12)の双方の構成要素を有する多数の一体成型部材(30)を組み付けることによって構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13),(17)は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13)は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器(13)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(17)は、前記エバポレータ部(5)への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器(17)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13),(17)は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器(13)と、前記エバポレータ部(5)への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器(17)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の車両用空気調和システムであって、
前記フロント側放熱用熱交換器(17)は、内外気切替口の下流で、且つ、前記エバポレータ部(5)の上流に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、
顕熱冷媒は、前記受熱用熱交換部(12)、前記リア側放熱用熱交換器(13)及び前記フロント側熱交換器(17)の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部(12)及び前記リア側放熱用熱交換器(13)の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部(12)及び前記フロント側放熱用熱交換器(17)の間を循環させる経路の少なくとも2以上の経路に選択的に切り替えできるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、
前記エバポレータ部(5)は放熱器としても機能できるよう構成され、
顕熱冷媒は、前記リア側放熱用熱交換器(13)と前記フロント側放熱用熱交換器(17)の間を少なくとも循環するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、前記受熱用熱交換部(12)が前記エバポレータ部(5)の下方に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、顕熱冷媒の冷媒通路(12d),(12e)が前記エバポレータ部(5)を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、前記冷媒通路の往路(12d)が復路(12e)に対し、前記エバポレータ部(5)を通過する送風の下流側に設定されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知し、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、前記放熱用熱交換器(13),(17)を通過する冷媒の冷熱を利用するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項15】
冷媒が循環する冷凍サイクル(1)の構成部品として構成され、冷媒と車室に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部(5)と、顕熱冷媒が循環する補助冷却サイクル(10)の構成部品として構成され、顕熱冷媒と前記エバポレータ部(5)で生成される凝縮水との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部(12)とを備えたことを特徴とする熱交換器(20),(20A),(20B)。
【請求項1】
顕熱及び潜熱での熱交換を行う冷媒が循環し、冷媒と車室内に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部(5)を有する主空調装置(A)と、
顕熱での熱交換を行う顕熱冷媒が循環し、前記エバポレータ部(5)より生成された凝縮水と顕熱冷媒との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部(12)と顕熱冷媒の冷熱を放熱する放熱用熱交換器(13),(17)とを有する補助空調装置(B)とを備えたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和システムであって、
前記エバポレータ部(5)と前記受熱用熱交換部(12)は、単一の熱交換器(20),(20A),(20B)として構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)には、凝縮水と顕熱冷媒の熱交換を促進する伝熱促進部(12b)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、前記エバポレータ部(5)と前記受熱用熱交換部(12)の双方の構成要素を有する多数の一体成型部材(30)を組み付けることによって構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13),(17)は、車室内を補助的に冷却する補助冷房として利用されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13)は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器(13)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(17)は、前記エバポレータ部(5)への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器(17)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用空気調和システムであって、
前記放熱用熱交換器(13),(17)は、車室の後席側に供給する送風との間で熱交換して送風に放熱するリア側放熱用熱交換器(13)と、前記エバポレータ部(5)への吸い込み送風との間で熱交換して送風に放熱するフロント側放熱用熱交換器(17)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の車両用空気調和システムであって、
前記フロント側放熱用熱交換器(17)は、内外気切替口の下流で、且つ、前記エバポレータ部(5)の上流に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、
顕熱冷媒は、前記受熱用熱交換部(12)、前記リア側放熱用熱交換器(13)及び前記フロント側熱交換器(17)の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部(12)及び前記リア側放熱用熱交換器(13)の間を循環させる経路と、前記受熱用熱交換部(12)及び前記フロント側放熱用熱交換器(17)の間を循環させる経路の少なくとも2以上の経路に選択的に切り替えできるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和システムであって、
前記エバポレータ部(5)は放熱器としても機能できるよう構成され、
顕熱冷媒は、前記リア側放熱用熱交換器(13)と前記フロント側放熱用熱交換器(17)の間を少なくとも循環するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、前記受熱用熱交換部(12)が前記エバポレータ部(5)の下方に配置されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記熱交換器(20),(20A),(20B)は、顕熱冷媒の冷媒通路(12d),(12e)が前記エバポレータ部(5)を通過する送風方向に直交する向きに延び、且つ、Uターン経路であり、前記冷媒通路の往路(12d)が復路(12e)に対し、前記エバポレータ部(5)を通過する送風の下流側に設定されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
顕熱冷媒の温度と車室内の温度を検知し、顕熱冷媒の温度が車室内温度より低くなった場合に、前記放熱用熱交換器(13),(17)を通過する冷媒の冷熱を利用するよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項15】
冷媒が循環する冷凍サイクル(1)の構成部品として構成され、冷媒と車室に供給する送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ部(5)と、顕熱冷媒が循環する補助冷却サイクル(10)の構成部品として構成され、顕熱冷媒と前記エバポレータ部(5)で生成される凝縮水との間で熱交換して顕熱冷媒を冷却する受熱用熱交換部(12)とを備えたことを特徴とする熱交換器(20),(20A),(20B)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−116135(P2010−116135A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14204(P2009−14204)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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