説明

車両用空気調和装置の洗浄装置及び洗浄方法

【課題】コンデンサ部に付着したゴミ・異物の除去能力の高い車両用空気調和装置の洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】クーリングユニット部(4)とコンデンシングユニット部(3)とを備えた車両用空気調和装置(1)の洗浄装置が、クーリングユニット部(4)のエバポレータ(16)で発生した凝縮水を集めて貯水する貯水手段(22)と、貯水手段(22)に貯水された凝縮水をコンデンシングユニット部(3)に収容されたコンデンサ(10)の表面にかける散水手段(24)とを具備し、散水手段(24)から散水される凝縮水によってコンデンサ(10)の表面に付着したごみ又は異物を洗浄除去することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス等の車両の屋根上に取り付けられる車両用空気調和装置の洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バス等の空気調和装置は、一般的に、コンデンサ及びコンデンサ冷却ファンを含むコンデンシングユニット部と、エバポレータ及びブロワを含むクーリングユニット部を車両の屋根上に搭載し、走行風をコンデンシングユニット部に取り入れる構造としている。このような構造とすることによりコンデンサの冷却性能が向上する反面、コンデンサへのゴミの付着あるいは滞留が促進され、従って冷却性能を維持するためには定期的にゴミを除去・洗浄する等の人力による保守作業を増やすことも同時に必要であった。
【0003】
前述の問題を軽減するために、コンデンシングユニットのコンデンサ冷却ファンを一定時間逆回転させることによりコンデンサに溜まったゴミを吹き飛ばす車両用空気調和装置が特許文献1に記載されている。この車両用空気調和装置は、特別な装置を付加することなく、コンデンサ部に溜まったゴミ・異物を自動的に除去できることで有効なものであったが、コンデンサに残るゴミ・異物も多くあり、ゴミ・異物の除去能力を高めることが望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−320841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、コンデンサ部に付着したゴミ・異物の除去能力の高い車両用空気調和装置の洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載された発明では、クーリングユニット部(4)とコンデンシングユニット部(3)とを備えた車両用空気調和装置(1)の洗浄装置が、クーリングユニット部(4)のエバポレータ(16)で発生した凝縮水を集めて貯水する貯水手段(22)と、貯水手段(22)に貯水された凝縮水をコンデンシングユニット部(3)に収容されたコンデンサ(10)の表面にかける散水手段(24)とを具備し、散水手段(24)から散水される凝縮水によってコンデンサ(10)の表面に付着したごみ又は異物を洗浄除去することを特徴としている。
【0008】
これによれば、コンデンサ(10)の洗浄が、自動的に貯水手段(22)に貯水されたエバポレータ(16)からの凝縮水を利用して、人力によることなく実施可能となる。また、洗浄液として凝縮水を用いるので洗浄液の補充を必要としないという利点もある。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、貯水手段(22)が、エバポレータ(16)から滴下する凝縮水を受けるドレインパン(20)と、該ドレインパン(20)で受けた凝縮水を貯水する貯水タンク(18)とを具備し、散水手段(24)が、凝縮水を噴射するノズル(23)と、貯水タンク(18)に貯水された凝縮水をノズル(23)に送出するポンプ(19)とを具備することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、散水手段(24)が、複数のノズル(23)を具備することを特徴としている。
【0011】
このように複数のノズル(23)を設けることにより、コンデンサ(10)のより広い面積に対して水を噴射することが可能になる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、クーリングユニット部(4)とコンデンシングユニット部(3)とを備えた車両用空気調和装置(1)の洗浄方法が、クーリングユニット部(4)のエバポレータ(16)で発生した凝縮水を貯水する段階と、コンデンシングユニット部(3)内に収容されたコンデンサ(10)の表面に付着したごみ又は異物を洗浄除去するために、段階で貯水された凝縮水をコンデンサ(10)の表面にかける段階と、を含むことを特徴としている。
【0013】
これによれば、コンデンサ(10)の洗浄が、自動的に貯水されたエバポレータ(16)からの凝縮水を利用して、人力によることなく実施可能となる。また、洗浄液として凝縮水を用いるので洗浄液の補充を必要としないという利点もある。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、コンデンサ(10)に付着又は滞留したごみ又は異物を除去するためにコンデンサ冷却ファン(12)を逆回転さる段階を含むことを特徴としている。
【0015】
このように、コンデンサ冷却ファン(12)を逆回転さる段階も含めることにより、コンデンサ(10)に付着又は滞留したゴミ・異物の除去能力が更に高められる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に添付の各図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。図1は、本発明の実施例による車両用空気調和装置1がバス2の屋根上に搭載された状態を示しており、また図2は、車両用空気調和装置1だけを示している。車両用空気調和装置1は、コンデンシングユニット部3とクーリングユニット部4とから構成されており、コンデンシングユニット部3内にはコンデンサやコンデンサ冷却ファン等が収容されており、クーリングユニット部4内にはエバポレータやブロワ等が収容されている。これら両ユニット部は、車両の前後方向に隣接して配置されており、コンデンシングユニット部3が前側に配置されている。
【0018】
コンデンシングユニット部3は、ユニットカバー5によって覆われており、このユニットカバー5には、図2に示すように、車両の前方に向けて大きく開口した吸い込み口6と車両の上方へ向けて開口している4つの吹き出し口7とが設けられている。この吸い込み口6には、その開口を覆うようにネット8が設けられており、走行風と共に運ばれてくる大きな異物は、このネット8に捕捉されて内部に入ることが阻止される。4つの吹き出し口7にはグリル9が取り付けられている。従って、ユニットカバー5は、車両の前後方向に対して、前方が開放され、後方及び両側方が閉鎖された構造となっている。
【0019】
図3は、本実施例の車両用空気調和装置1の内部を模式的に示す側面断面図である。この図に示されるように、コンデンシングユニット部3の内部には、薄型コンデンサ10と4つのコンデンサ冷却ファン用モータ11及びコンデンサ冷却ファン12とが取り付けられている。また図示されないが、コンデンサ冷却ファン12を取り囲むようにシュラウドが形成されている。本実施例の薄型コンデンサ10は、プレートフィンアンドチューブ型熱交換器であり、車両の前方から後方にかけて下がるように約10度の傾斜角で傾斜して取り付けられている。コンデンサ冷却ファン12は、ユニットカバー5の4つの吹き出し口7にそれぞれ対応して配置され、コンデンサ10の真上で、車両の平坦な屋根13に対して水平に設置されている。また、本実施例のコンデンサ冷却ファン12は、通常運転時の回転方向とは逆の方向に回転させることが可能なものである。さらに、コンデンサ10の後方端部付近に、後述する散水手段24のノズル23がコンデンサ10の上方に配設されている。なお、図3ではノズル23は一つだけしか図示されないが、本実施例では4つのノズル23が同様の位置で等間隔で配設されている。
【0020】
コンデンシングユニット部3の後端のクーリングユニット部4に隣接する部分の両側面には切欠き14が設けられている。この切欠は、コンデンサルーム内及びコンデンサ10のコアの上流に溜まった小さな異物をそこから排出するために設けられている。
【0021】
以上のように構成されたコンデンシングユニット部3においては、コンデンサ冷却ファン12によって生み出された空気流と走行風とが、図3の矢印で示されるように、ユニットカバー5の前方の吸い込み口6より吸い込まれて、コンデンサ10を通過してユニットカバー5の上方の4つの吹き出し口7より上方に吹き出される。
【0022】
一方、クーリングユニット部4は、ケーシング15により覆われており、その内部は図3に示されるように、車室内から導かれた空気を冷却するエバポレータ16と、エバポレータ16を通過した空気を車室内に供給するためのブロワ(不図示)とが配設された領域と、後述する貯水タンク18及びポンプ19が配設された領域とに区画されている。
【0023】
本発明では、エバポレータ16の下方にドレインパン20が設けられており、このドレインパン20は、エバポレータ16の表面で凝縮して滴下した凝縮水を受けるためのものである。ドレインパン20は車両の前方側が低くなるように傾斜しており、このためドレインパン20が受けた凝縮水は前方側に集まる。そして、ドレインパン20の前方から延びるパイプ21が接続された貯水タンク18がコンデンシングユニット部に近い側の領域に備えられていて、ドレインパン20で集めた凝縮水は貯水タンク18に移動してそこで貯水される。なお、ドレインパン20と貯水タンク18が貯水手段22を構成する。
【0024】
ポンプ19が貯水タンク18に隣接して設けられており、このポンプ19はタンクに貯水された凝縮水を前記4つのノズル23に送出するためのものである。なお、ポンプ19とノズル23が、散水手段24を構成する。ポンプ19からノズル23へはパイプ25が接続されており、このパイプ25はポンプ19の一つの吐出ポートを四つに分岐する分岐部(不図示)を含んでいる。分岐部で4本に分岐されたパイプ25は、コンデンシングユニット部3との境界の壁を貫通してコンデンシングユニット部3内に延びる。また、前記4本のパイプ25の先端に取り付けられたノズル23の開口はコンデンサ10の上面に対向するように方向付けられている。なお、ノズル23の位置は、本実施例ではコンデンサ10が最も汚れるその後方端付近に設定されている。
【0025】
次に、本実施例の車両用空気調和装置1のコンデンサ10がどのように洗浄されるかについて、コンデンサ冷却ファン用モータ11及びポンプ19の制御回路図である図4を参照しながら以下に説明する。まず、貯水タンク18は、バス及び空気調和装置を例えば一日運転したことによって、凝縮水が貯水された状態となっているものとする。次に、例えば翌日、バスの運行開始時の空気調和装置の始動時に、運転者が図4に示すエアコンスイッチSW1をONにすると、リレーRL2の接点が60秒間ONになりコンデンサ冷却ファン用モータ11及びコンデンサ冷却ファン12が60秒間逆回転し、これによりコンデンサに付着又は詰まっていたゴミ・異物がコンデンサ10の下方に吹き飛ばされる。なお、吹き飛ばされたゴミ等は、前記切欠き14及び吸い込み口6をとおしてコンデンシングユニット部3のケース外へ排出される。前記60秒が経過すると、リレーRL2の接点がOFFになると共にリレーRL1の接点がONになってファン用モータ11の回転方向が正回転に変わる。
【0026】
また、運転者がポンプ作動スイッチSW2をONにするとリレーRL3の接点がONになりポンプ19が作動してノズル23からコンデンサ10に向けて凝縮水が噴射され、コンデンサ10はそれに付着していたゴミ・異物が除去されて洗浄される。運転者が、適当な時間、例えば約10秒が経過した後、ポンプ作動スイッチSW2をOFFにするとリレーRL3の接点がOFFになりポンプの作動が停止して、凝縮水による洗浄が終了する。
【0027】
なお、本発明においては、ポンプ19の作動とコンデンサ冷却ファン12の作動の時間的関係は、記載した実施例のものに限られることはなく、例えばポンプ作動中にはコンデンサ冷却ファン12を停止するようにしてもよく、あるいはポンプ19の作動後にコンデンサ冷却ファン12を逆転させてもよく、さらにコンデンサ冷却ファン12の作動とは無関係にポンプ19を独立して作動させてもよい。
【0028】
また、記載した本実施例の散水手段24は、4つのノズル23と一つのポンプとから構成されていたが、ノズル及びポンプの数はそれぞれ増減可能であり、例えば一つのノズルと一つのポンプ、あるいは4つのノズルと4つのポンプから散水手段を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両用空気調和装置とそれが設置されたバスを示す斜視図である。
【図2】車両用空気調和装置の斜視図である。
【図3】車両用空気調和装置の側面断面図である。
【図4】車両用空気調和装置のコンデンサ冷却ファン用モータ及びポンプの制御回路図である。
【符号の説明】
【0030】
3 コンデンシングユニット部
4 クーリングユニット部
10 コンデンサ
12 コンデンサ冷却ファン
16 エバポレータ
18 貯水タンク
19 ポンプ
20 ドレインパン
22 貯水手段
23 ノズル
24 散水手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーリングユニット部(4)とコンデンシングユニット部(3)とを備えた車両用空気調和装置(1)の洗浄装置であって、
前記クーリングユニット部(4)のエバポレータ(16)で発生した凝縮水を集めて貯水する貯水手段(22)と、
前記貯水手段(22)に貯水された凝縮水を前記コンデンシングユニット部(3)に収容されたコンデンサ(10)の表面にかける散水手段(24)と、を具備し、
前記散水手段(24)から散水される凝縮水によって前記コンデンサ(10)の表面に付着したごみ又は異物を洗浄除去することを特徴とする車両用空気調和装置(1)の洗浄装置。
【請求項2】
前記貯水手段(22)が、前記エバポレータ(16)から滴下する前記凝縮水を受けるドレインパン(20)と、該ドレインパン(20)で受けた前記凝縮水を貯水する貯水タンク(18)とを具備し、
前記散水手段(24)が、前記凝縮水を噴射するノズル(23)と、前記貯水タンク(18)に貯水された前記凝縮水を前記ノズル(23)に送出するポンプ(19)とを具備することを特徴とする、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記散水手段(24)が、複数のノズル(23)を具備することを特徴とする、請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
クーリングユニット部(4)とコンデンシングユニット部(3)とを備えた車両用空気調和装置(1)の洗浄方法であって、
前記クーリングユニット部(4)のエバポレータ(16)で発生した凝縮水を貯水する段階と、
前記コンデンシングユニット部(3)内に収容されたコンデンサ(10)の表面に付着したごみ又は異物を洗浄除去するために、前記段階で貯水された凝縮水を前記コンデンサ(10)の表面にかける段階と、を含むことを特徴とする車両用空気調和装置(1)の洗浄方法。
【請求項5】
前記コンデンサ(10)に付着又は滞留したごみ又は異物を除去するためにコンデンサ冷却ファン(12)を逆回転さる段階を含むことを特徴とする、請求項4に記載の車両用空気調和装置(1)の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−155732(P2008−155732A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345444(P2006−345444)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】