説明

車両用空気調和装置及び車両用空気調和装置の制御方法並びにプログラム

【課題】車両の乗員の体感に適合する空調制御を簡便な処理によって行うこと。
【解決手段】車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置であって、隣接する第1の空調ゾーン201及び第2の空調ゾーン202の境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定する日射センサと43、日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する判定部と、太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御部と、太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置及び車両用空気調和装置の制御方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両において、たとえば運転席側及び助手席側のように、乗員の好みに応じて車室内の左右に分割された空調ゾーンを各々独立した温度に制御することができる車両用空気調和装置が実用化されている。左右に分割された空調ゾーンに対して独立して空調制御する設備として、換気空調設備(以下、HVACと省略する。HVAC;Heating Ventilating and Air-Conditioning System)があるが、その中でも偏日射センサを採用し、偏日射に応じて左右が独立して空調制御を行う車両用空気調和装置がある。これは、左右の日射量等とによって、左右の吹き出し温度や風量を制御する。例えば、特開平01−136811号公報によれば、左右の空調ゾーンから検出された値と、所定の計算に基づいた計算値とを比較し、上記比較した値のうち大きい方の値を補正値とし、車内の空調制御機器を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−136811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の発明では、左右の空調ゾーンに対する空調温度の補正値を求めるのに、多くの演算が必要であり、処理が複雑になるという問題があった。
また、太陽は大きさが大きく、かつ、車両からの距離が遠いため、日射の方向が多少中央からずれていても、乗員の体感温度は変わらない。それにも拘らず、特許文献1に開示されている発明では、日射の方向が中央から若干ずれただけでも空調設備が細やかに制御されてしまい、吹き出し温度が頻繁に変更されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、車両の乗員の体感に適合する空調制御を簡便な処理によって行うことを可能とする車両空気調和装置及び車両空気調和装置の制御方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
【0007】
本発明は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置であって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定する日射センサと、前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御手段と、太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御手段とを具備することを特徴とする車両用空気調和装置を提供する。
【0008】
このような構成によれば、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近における太陽の入射角度が日射センサによって測定され、この入射角度が所定範囲内であるか否かが判定手段によって判定される。太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合には、隣接する第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御が行われ、太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合には、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御が行われる。これにより、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対して略同量の日差しが差し込んでおり、体感温度が略同等であると推定される場合には、両空調ゾーンにおける空調制御を共通にすることで頻繁な空調変更を防止することができるとともに、体感温度が略同等であると推定できない場合には、各空調ゾーンの空調状態に応じた空調制御を行うことができる。上記所定範囲は、例えば、角度−45度〜45度である。
【0009】
本発明の参考例は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置であって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの各々の日射量を測定する日射センサと、前記第1の空調ゾーンの日射量と前記第2の空調ゾーンの日射量との差分が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、該差分が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御手段と、該差分が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御手段とを具備することを特徴とする車両用空気調和装置を提供する。
【0010】
このような参考例の構成によれば、車室内が複数に分割された空調ゾーンのうち、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの各々の日射量が日射センサにより測定され、日射センサによって測定された第1の空調ゾーンの日射量と第2の空調ゾーンの日射量との差分が所定範囲内であるか否かが判定手段により判定される。この差分が所定範囲内であった場合には、隣接する第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御が行われ、該差分が所定範囲外であった場合には、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対してそれぞれ独立した空調制御が行われる。
これにより、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとにおいて、日射の体感がほぼ同等である場合には、空調の温度差をつけないようにすることが可能となりまた、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとにおいて、日射の体感が異なる場合には、各空調ゾーンの空調状態に応じた空調制御を行うことが可能となる。
【0011】
上記車両用空気調和装置において、前記第1制御手段は、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンのうち、日射量の大きい方の空調ゾーンを第1基準ゾーンとして選定し、該第1基準ゾーンの日射量に基づいて、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンの空調制御を行うこととしてもよい。
【0012】
このように、日射量の大きい方の空調ゾーンにおける日射量を基準として、各空調ゾーンに対する空調制御を行うので、各空調ゾーンの温度の補正を簡便に行うことが可能となる。
【0013】
上記車両用空気調和装置において、前記第2制御手段は、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンのうち、いずれか一方を第2基準ゾーンとして選定し、該第2基準ゾーンの日射量に基づいて他方の空調ゾーンの空調制御を行うこととしてもよい。
【0014】
このように、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンのうち、いずれか一方を第2基準ゾーンとして選定し、第2基準ゾーンの日射量に基づいて他方の空調ゾーンに対する空調制御を行うので、温度の補正を簡便に行うことが可能となる。
【0015】
上記空気調和装置において、前記第2制御手段は、日射量の大きい方の空調ゾーンを前記第2基準ゾーンとして選定することとしてもよい。
【0016】
これにより、日射量が大きく、体感が悪いと想定される空調ゾーンの日射量に基づいて、制御を行うことが可能となる。
【0017】
本発明の参考例は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置の制御方法であって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの各々の日射量を測定し、前記第1の空調ゾーンの日射量と前記第2の空調ゾーンの日射量との差分が所定範囲内であるか否かを判定する過程と、該差分が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御過程と、該差分が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御過程とを有することを特徴とする車両用空気調和装置の制御方法を提供する。
【0018】
本発明の参考例は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置に適用される制御プログラムであって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの各々の日射量を測定し、前記第1の空調ゾーンの日射量と前記第2の空調ゾーンの日射量との差分が所定範囲内であるか否かを判定する判定処理と、該差分が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御処理と、該差分が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御処理とをコンピュータに実行させる車両用空気調和プログラムを提供する。
【0019】
本発明は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置の制御方法であって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定し、前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する過程と、太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御過程と、太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御過程とを有することを特徴とする車両用空気調和装置の制御方法を提供する。
【0020】
本発明は、車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置に適用される制御プログラムであって、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定し、前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する判定処理と、太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御処理と、太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御処理とをコンピュータに実行させる車両用空気調和プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、車両の乗員の体感に適合する空調制御を簡便な処理によって行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の参考例に係る車両用空気調和装置の概略構成を示した回路ブロック図である。
【図2】本発明の参考例に係る車両の空調ゾーンを説明するための図である。
【図3】本発明の参考例に係る車両用空気調和装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【図4】本発明の参考例に係る制御部の機能ブロック図である。
【図5】本発明の参考例に係る判定部の動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る車両空気調和装置及び車両空気調和装置の制御方法並びにプログラムの一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、冷房モードを想定して説明する。
【0024】
図1は、本発明の参考例とする車両用空気調和装置の概略構成を示した図である。
車両用空気調和装置(以下「空調装置」という。)50は、主に、冷暖房などの空気調和を行う空調ユニットであるHVAC10と、空調ユニット内へ冷媒を供給する冷媒系(図示略)と、空調ユニット内へ熱源となるエンジン冷却水を供給する加熱源系(図示略)と、装置全体の作動制御を行う制御部40とを備えて構成されている。
このような空調装置が設置される車両の室内は、複数の空調ゾーンに分割されており、各空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能とされている。本参考例では、図2に示すように、車両の走行方向に平行な軸線で室内を二分することで、室内を運転席側の第1の空調ゾーン201と、助手席側の第2の空調ゾーン202とに分割した場合を想定している。
【0025】
HVAC10は、本体ケーシング11内に送風ファン12、エバポレータ13及びヒータコア14等の機器類を備えた構成とされる。
本体ケーシング11には、車室外の空気(外気)または車室内の空気(内気)を選択して導入するための空気取入口である外気導入口21及び内気導入口22と、空調した冷風や温風等を選択した運転モードに応じて車室内へ吹き出すための空気吹出口として、デフロスト吹出口(不図示)、運転席側のフェース吹出口2L,2R及びフット吹出口5、助手席側のフェース吹出口3L,3R及びフット吹出口6が開口している。なお、以下の説明では、空気取入口から導入する車室外の空気(外気)及び車室内の空気(内気)を総称して「導入空気」と呼ぶことにする。
HVAC10は、空調ゾーン毎にエアミックスダンパ32,33を備えている。また、仕切板15により分割された第1の空調ゾーン側流路24及び第2の空調ゾーン側流路25毎に、各々ダンパを取り付けた吹出口を備えているため、制御部40は空調ゾーン毎に各々独立して異なる空調制御を行うことができる。
【0026】
本体ケーシング11の内部には、内外気切換ダンパ31を操作し、外気または内気の導入空気を流して空調する流路23が形成されている。この流路23は、外気導入口21及び内気導入口22の下流に送風ファン12を備え、さらに、流れ方向上流側から順にエバポレータ13及びヒータコア14が所定の間隔をもって配置されている。
ヒータコア14の下流側では、流路23が仕切板15により運転席側流路24及び助手席側流路25に分割されている。
【0027】
また、ヒータコア14には、流路23を流れてきた導入空気の分配及び流路切換を行うエアミックスダンパ32,33が設けられている。すなわち、エアミックスダンパ32,33には、その操作位置や開度に応じて、ヒータコア14を通過して流れる導入空気量とヒータコア14をバイパスして流れる導入空気量との分配や、導入空気の全量がヒータコア14を通過して流れる状態から導入空気の全量がヒータコア14をバイパスして流れる状態まで流路切換を行うなど導入空気の流れを調整する機能がある。従って、エアミックスダンパ32,33の開度制御により、エバポレータ13を通過した冷風とヒータコア14を通過した温風との混合割合を変化させ、空気吹出口から車室内へ吹き出す空調空気の吹出温度を調整することができる。
【0028】
運転席側流路24には、フェース吹出口2L、2R、フット吹出口5及びデフロスト吹出口が設けられ、各吹出口にはダンパが取り付けられている。なお、フェース吹出口2L、2Rに取り付けられたダンパを運転席用フェースダンパ34と呼び、フット吹出口5に取り付けられたダンパを運転席用フットダンパ35と呼ぶ。
同様に、助手席側流路25には、上述したフェース吹出口3L,3R、フット吹出口6及びデフロスト吹出口が設けられ、各吹出口にはダンパが取り付けられている。なお、フェース吹出口3L,3Rに取り付けられたダンパを助手席用フェースダンパ36と呼び、フット吹出口6に取り付けられたダンパを助手席用フットダンパ37と呼ぶ。
また、空調装置50は、車室外の温度を検出する外気温センサ41、車室内の温度を検出する室温センサ42、及び日射量を検出する日射センサ43を備えている。
【0029】
制御部40は、いわゆるコンピュータシステムであり、図3に示すように、CPU(中央演算処理装置)1、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置2、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置(記憶手段)3外部の装置と通信を行う通信部4などを備えて構成されている。補助記憶装置3には、各種プログラム(車両用空気調和プログラム)が格納されており、CPU1が補助記憶装置3からRAMなどの主記憶装置2にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0030】
制御部40は、図1に示される外気温センサ41、室温センサ42、及び日射センサ43と電気的に接続され、各センサから検出値の入力を受ける。また、制御部40は、設定温度や運転モードなど、乗員が各種の設定を行うためのスイッチ類(図示略)とも接続されている。そして、制御部40が各検出値及び設定の制御指令を受けると、予め定められた制御プログラムに基づいて空調装置の運転制御を実施する。具体的な運転制御としては、空調運転のオン・オフ、送風ファン12の風量制御及び各ダンパ類の開閉制御等がある。
【0031】
図4は、制御部40により実現される機能を展開して示した機能ブロック図である。図4に示すように、制御部40は、判定部(判定手段)100、第1制御部(第1制御手段)101、及び第2制御部(第2制御手段)102を備えており、日射センサから測定された各空調ゾーンの日射量、太陽光の角度等の情報である日射情報に応じて空調制御を行う。
【0032】
日射センサ43は、隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの各々の日射量を測定する。本参考例では、1つの筐体に運転席側の第1の空調ゾーン201の日射量を測定する第1計測部と、助手席側の第2の空調ゾーン202の日射量を測定する第2計測部とが内蔵された日射センサを用いる。
図2に示すように、日射センサ43は、例えば、車室内のフロントウィンドウシールドの内側の略中央位置に配置されている。なお、配置位置はフロントウィンドウシールドの中心であってもよいし、運転席側に多少寄っていても、助手席側に多少寄っていてもよいこととする。また、本参考例では車両の前方に配置したが、車両の後方であってもよい。
【0033】
制御部40において、判定部(判定手段)100は、第1の空調ゾーンの日射量と第2の空調ゾーンの日射量との差分が所定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、運転席側の第1計測部から測定された日射量と、助手席側の第2計測部から測定された日射量との差分を算出し、該差分が、所定範囲内であるか否かを判定する。この結果、該差分が所定範囲内、例えば、該差分の絶対値が0以上100ミリワット毎平方メートル以下である場合には、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとの体感が同じであると判断する。
【0034】
第1制御部(第1制御手段)101は、判定部100によって該差分が所定範囲内であると判定された場合に、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う。具体的には、第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンのうち、日射量の大きい方の空調ゾーンを第1の基準ゾーンとして選定し、該選定した第1の基準ゾーンの日射量に基づいて、第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの空調制御を行う。
【0035】
例えば、第1制御部101は、運転席側の日射量が助手席側の日射量よりも大きかった場合に、運転席側の空調ゾーンを第1基準ゾーンとして選定し、運転席側の日射量に基づいて、運転席側の制御値を算出し、この制御値に基づいて、運転席側及び助手席側に対し同一の空調制御を行う。
【0036】
第2制御部(第2制御手段)102は、判定部100によって、該差分が所定範囲外であると判定された場合に、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う。
具体的には、第2制御部102は、第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンのうち、一方の空調ゾーンを第2基準ゾーンとして選定し、第2基準ゾーンの日射量を基本日射量とする。この基本日射量に基づいて、第2基準ゾーンの空調制御の制御値を決定する。続いて、第2基準ゾーンの制御値が、基本日射量と他方の空調ゾーンの日射量との差分に基づいて補正されることで、他方の空調ゾーンの制御値が算出される。
【0037】
例えば、運転席側を第2基準ゾーンとして選定することが予め登録されていた場合には、第2制御部102は、運転席側の空調ゾーンを第2の基準ゾーンとして選定する。そして、運転席側の日射量を基本日射量とし、基本日射量に基づいて運転席側の制御値が決定される。続いて、運転席側の制御値を運転席側の日射量と助手席側の日射量との差分に基づいて補正することで助手席側の制御値を算出する。
【0038】
このように、第2基準ゾーンの空調制御値を、第2基準ゾーンの日射量と他方の空調ゾーンの日射量との差分に基づいて補正することにより、他方の空調ゾーンの制御値を決定するので、複数の空調ゾーンの空調制御を簡便に行うことができる。
【0039】
図5は、上述した制御部40で行われる空調制御の動作フローを示した図である。以下のフローにおいては、第2基準ゾーンとして運転席側の空調ゾーンが選定される場合を想定して説明する。
日射センサ43により、運転席側及び助手席側の各々の日射量が測定され、判定部100によって、運転席側及び助手席側の各々の日射量の差分が算出され、第1の所定値を超えるか否かが判定される(図5のステップSA1)。第1の所定値を超えていない場合には、第1制御部101によって、運転席側の日射量と助手席側の日射量とが比較され、大きい値の方の空調ゾーンが第1基準ゾーンとして選定される(ステップSA3)。そして、第1基準ゾーンにおける日射量に基づいて空調制御値が算出され、この空調制御値に基づく空調制御が運転席側及び助手席側に対して行われ(ステップSA4)、本処理を終了する。
【0040】
一方、判定部100において、運転席側と助手席側との各々の日射量の差分が、第1の所定値を超えていた場合には、第2基準ゾーンとして運転席側の空調ゾーンが選定され、更に、この空調ゾーンにおける日射量が基準日射量として設定される。そして、第2基準ゾーンの日射量、つまり、運転席側の日射量に基づいて第2基準ゾーンにおける制御値が決定される(ステップSA2)。続いて、運転席側と助手席側との日射量の大きさが比較され(ステップSA5)、運転席側の日射量が、助手席側の日射量を上回っている場合には、「運転席側日射量−助手席側日射量−第2の所定値」の計算が行われ、助手席側の補正量が算出される。ここで、第2の所定値は、運転席側における制御値と助手席側における制御値とを調整するために設けられたパラメータであり、任意に設定される値である。本参考例では、例えば、100ワット毎平方メートルに設定されている。続いて、この補正量が上述した運転席側の制御値に加算されることで、助手席側の制御値が算出され(ステップSA6)、この制御値に基づいて助手席側の空調制御が行われ(ステップSA7)、本処理を終了する。この結果、例えば、助手席側の吹き出し温度が上昇され、助手席側の冷房効果が抑制される。
【0041】
また、ステップSA5において、運転席側の日射量が助手席側の日射量を下回っていた場合には、「運転席側日射量−助手席側日射量+第3の所定値」の計算が行われ、助手席側の補正量が算出される。ここで、第3の所定値は、運転席側における制御値と助手席側における制御値とを調整するために設けられたパラメータであり、任意に設定される値である。本参考例では、例えば、100ワット毎平方メートルに設定されている。続いて、この補正量が上述した運転席側の制御値に加算されることで、助手席側の制御値が算出され(ステップSA8)、この制御値に基づいて助手席側の空調制御が行われ(ステップSA9)、本処理を終了する。この結果、例えば、吹き出し温度を低下され、助手席側の冷房効果が高められる。
【0042】
上記説明においては、第2基準ゾーンとして、運転席側を設定する場合について述べたが、第2基準ゾーンとして助手席側を設定することとしてもよい。この場合には、助手席側の日射量に基づいて、助手席側の制御値が決定されるとともに、助手席側の日射量と運転席側の日射量との差分に応じて助手席側の制御値が補正されることにより、運転席側の制御値が決定されることとなる。
また、上記フローにおいて、第1の所定値、第2の所定値、第3の所定値は、外気温(季節)、吹き出しモード毎に変更することとしてもよい。また、第2の所定値、第3の所定値は、上述した第1の所定値と同値でなくてもよい。これにより、より細やかな空調制御が可能となる。
【0043】
以上説明してきたように、本参考例に係る空調制御によれば、車室内が複数に分割された空調ゾーンのうち、隣接する空調ゾーンである運転席側と助手席側の各々の日射量を測定する日射センサを用い、運転席側と助手席側との日射量の差分が所定範囲内か否かを判定する。所定範囲内である場合には、運転席側と助手席側とに対し同一の空調制御を行うことで、日射の体感がほぼ同等である運転席側と助手席側とに対し、温度差が出ないように温調制御を行うことが可能となる。また、所定範囲外である場合には、運転席側と助手席側とに対しそれぞれ独立した空調制御を行う。これにより、日射の体感が異なる空調ゾーンに対し、各空調ゾーンに応じた空調制御を行うことが可能となる。
また、本参考例に係る制御部の制御によれば、運転席側と助手席側との日射量の差分が所定範囲内である場合には、運転席側と助手席側とに対し同一の空調制御を行うため、運転席側と助手席側の体感が同じである場合にも、偏日射に応じて吹き出し温度が制御されていた場合に起きていた体感と吹き出し温度との差のずれを回避することが可能となる。
さらに、運転席側と助手席側との日射量の差分が所定範囲内であるか否かを判定する場合に、所定の出力値の範囲内であるか否かを測定することで幅を持たせ、判定している。これにより、日射センサの個体差を吸収することが可能となる。
【0044】
〔変形例1〕
上記参考例では、第2制御部102は、大きな日射量を持つ空調ゾーンである運転席側の日射量に基づいて、助手席側の補正量を設定していたが、これに限られない。例えば、該当する差分が所定値以上である場合には、運転席側と助手席側の各々の日射センサの入力値に基づいて、運転席側と助手席側に対し、それぞれ独立した日射補正を実施することとしてもよい。
【0045】
なお、上記参考例に係る車両空気調和装置において、各空調ゾーンの日射量の測定を行う場合に、1つの日射センサに各空調ゾーンの日射量を測定する第1計測部及び第2計測部を備えていたが、これに限られない。例えば、各空調ゾーンの日射量を測定する日射センサを、空調ゾーン毎に設けることとしてもよい。
【0046】
また、上記参考例に係る空調制御において、車室内を分割した複数の空調ゾーンは、運転席側と助手席側とで、車の進行方向に対し左右に分けた2分割であったが、これに限られない。例えば、車の進行方向に対し左右に2分割し、かつ、車の前後にさらに2分割するような車室内を4分割にすることとしてもよい。
【0047】
また、上記参考例に係る空調制御において、第2基準ゾーンとして運転席側を選定することとして予め登録されていたが、これに限られない。例えば、日射量の大きい方の空調ゾーンを第2基準ゾーンとして選定することとしてもよい。
【0048】
また、上記参考例に係る空調制御において、稼働モードとして冷房に適用していたが、これに限られない。例えば、暖房に適用することとしてもよい。
【0049】
〔第1の実施形態〕
次に、本発明の第1の実施形態に係る空調制御について説明する。
本実施形態においては、日射センサの出力として太陽光の入射角度が出力される点、判定部(判定手段)が、太陽光の入射角度に基づいて判定を行う点で上記参考例と異なる。
具体的には、本実施形態においては、日射センサは、隣接する第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとの境界付近に設けられ、自己に対する太陽光の入射角度を出力する。判定部は、日射センサの出力である太陽光の入射角度が自己の基準をゼロ度として所定の範囲内、例えば、−α以上+α以下(例えば、自己を中心として、−45°以上+45°以下)の範囲内である場合には、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとにおける体感温度がほぼ等しいとみなし、−α以上+α以下(例えば、自己を中心として、−45°以上+45°以下)の範囲外である場合には、第1の空調ゾーンと第2の空調ゾーンとにおける体感温度に差が生じるとみなす。
【0050】
入射角度が所定の範囲内であった場合には、第1制御部により第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンに対して同じ空調制御が行われ、太陽の入射角度が所定の範囲外であった場合には、第2制御部により第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンに対して独立した空調制御がそれぞれ行われる。第1制御部及び第2制御部による詳細な空調制御については、上述した参考例と同様である。
【0051】
このように、本実施形態に係る車両用空気調和機50によれば、日射センサに入力される太陽光の角度を用いて、日射の方向が境界付近か否かを判定するので、これにより、簡便に日射の方向を判定することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 空調ユニット(HVAC)
12 送風ファン
13 エバポレータ
14 ヒータコア
15 仕切板
24 運転席側流路
25 助手席側流路
31 内外気切換ダンパ
32、33 エアミックスダンパ
40 制御部
43 日射センサ
50 車両用空気調和装置
100 判定部
101 第1の制御部
102 第2の制御部
201 第1の空調ゾーン
202 第2の空調ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置であって、
隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定する日射センサと、
前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御手段と、
太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御手段とを具備することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記第1制御手段は、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンのうち、日射量の大きい方の空調ゾーンを第1基準ゾーンとして選定し、該第1基準ゾーンの日射量に基づいて、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンの空調制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記第1の空調ゾーン及び前記第2の空調ゾーンのうち、いずれか一方を第2基準ゾーンとして選定し、該第2基準ゾーンの日射量に基づいて他方の空調ゾーンの空調制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記第2制御手段は、日射量の大きい方の空調ゾーンを前記第2基準ゾーンとして選定することを特徴とする請求項3に記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置の制御方法であって、
隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定し、
前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する過程と、
太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御過程と、
太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御過程とを有することを特徴とする車両用空気調和装置の制御方法。
【請求項6】
車室内が複数の空調ゾーンに分割され、各該空調ゾーンに対して独立した空調制御が可能な車両用空気調和装置に適用される制御プログラムであって、
隣接する第1の空調ゾーン及び第2の空調ゾーンの境界付近に設けられ、太陽光の入射角度を測定し、
前記日射センサによって検出された太陽光の入射角度が所定範囲内であるか否かを判定する判定処理と、
太陽光の入射角度が所定範囲内であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対し同一の空調制御を行う第1制御処理と、
太陽光の入射角度が所定範囲外であった場合に、前記第1の空調ゾーンと前記第2の空調ゾーンとに対しそれぞれ独立した空調制御を行う第2制御処理とをコンピュータに実行させる車両用空気調和プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−91493(P2013−91493A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4629(P2013−4629)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2008−264338(P2008−264338)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】