説明

車両用空気調和装置

【課題】 冷却水循環回路の第3熱交換器を送風ダクト内に収容することにより、車室内に送る空気を直接加熱して暖房性能の向上を図ることができる車両用空気調和装置の提供。
【解決手段】 ダクト1と、送風機2と、冷媒圧縮機31と、ダクト1内に設置され、且つ、冷媒圧縮機31から吐出された冷媒の凝縮熱により空気を加熱させる第1熱交換器35と、第1熱交換器35の風上に配置され、且つ、第1熱交換器35から流入した冷媒の蒸発熱により空気を冷却する第2熱交換器37を有する冷媒循環回路と、ダクト1内において第2熱交換器37の風上に配置され、且つ、少なくともインバータ42またはモータ43を含む強電系部品によって加熱された冷却水の放熱により空気を加熱させる第3熱交換器46を有する冷却水循環回路を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置に関し、特に電気自動車や燃料電池車等の車室内の暖房に用いて好適な車両用空気調和装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車及び燃料電池車等では、一般的なエンジン冷却水の廃熱を利用して車室内を暖房できないため、燃焼式ヒータを利用して車室内の暖房を行うようにしている。
また、インバータやモータ等の強電系部品で加熱された冷却水と冷媒循環回路の冷媒を熱交換させて暖房性能を向上させる技術が公知になっている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平05−270252号公報
【特許文献2】特開平07−329544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明において、燃焼式ヒータを用いた場合には消費電力が大きくなって車両のバッテリに大きな負担が掛かるという問題点があった。
また、冷却水循環回路の冷却水と冷媒循環回路の冷媒とを熱交換させた場合にはある程度の効果が得られるものの、熱交換率が悪いという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、冷却水循環回路の熱交換器を送風ダクト内に収容することにより、冷却水循環回路の冷却水と車室内に送る空気とを直接熱交換させて空気を直接加熱することにより暖房性能の向上を図ることができる車両用空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、車室内へ向かって空気を送るためのダクトと、前記ダクト内において車室内へ送風する送風機と、冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機と、前記ダクト内に設置され、且つ、前記冷媒圧縮機から吐出された冷媒の凝縮熱により空気を加熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器の風上に配置され、且つ、前記第1熱交換器から流入した冷媒の蒸発熱により空気を冷却する第2熱交換器を有する冷媒循環回路と、前記ダクト内において前記第2熱交換器の風上に配置され、且つ、少なくともインバータまたはモータを含む強電系部品によって加熱された冷却水の放熱により空気を加熱させる第3熱交換器を有する冷却水循環回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、車室内へ向かって空気を送るためのダクトと、前記ダクト内において車室内へ送風する送風機と、冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機と、前記ダクト内に設置され、且つ、前記冷媒圧縮機から吐出された冷媒の凝縮熱により空気を加熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器の風上に配置され、且つ、前記第1熱交換器から流入した冷媒の蒸発熱により空気を冷却する第2熱交換器を有する冷媒循環回路と、前記ダクト内において前記第2熱交換器の風上に配置され、且つ、少なくともインバータまたはモータを含む強電系部品によって加熱された冷却水の放熱により空気を加熱させる第3熱交換器を有する冷却水循環回路を備えるため、冷却水循環回路の熱交換器を送風ダクト内に収容することにより、冷却水循環回路の冷却水と車室内に送る空気とを熱交換させて空気を直接加熱することにより暖房性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1の車両用空気調和装置を示す図、図2は本実施例1の車室内の暖房時における車両用空気調和装置の作動を説明する図、図3は本実施例1の車室内の冷房時における車両用空気調和装置の作動を説明する図、図4は本実施例1の車室内の空調の停止時における車両用空気調和装置の作動を説明する図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1の車両用空気調和装置では、電気自動車や燃料電池車等の車室内の空調を行うものであって、車室内へ向かって空気を送るためのダクト1と、このダクト1内において車室内へ送風する送風機2と、空調系の冷媒(HFC134a、CO等)が循環する冷媒循環回路3と、強電系部品の冷却水(純水等)が循環する冷却水循環回路4が備えられている。
【0010】
ダクト1内には、図外の内気導入口または外気導入口から導入した空気を車室内への排出口であるデフ吹き出し口11、フェイス吹き出し口12、フット吹き出し口13へ送る空気通路14が形成されている。
【0011】
また、ダクト1内における後述する第3熱交換器46付近は、仕切り部15で第1通路R1と第2通路R2に区分けされる他、仕切り部15の風上及び風下にはドアD1,D2(請求項の調整機構に相当)が設けられると共に、第1通路R1に沿ってドアD3(請求項の調整機構に相当)が設けられ、これらはそれぞれ一点鎖線で示す軌跡に従って回動可能に設けられている。
また、ドアD1が第1連通路R1側を開いた状態で、且つ、ドアD2,D3が破線で示す位置に配置された場合には、第1連通路R1と車外(外部)に連通した連通路R3が連通するようになっている。
【0012】
さらに、ダクト1内における後述する第2熱交換器37付近は、仕切り部16で第4通路R4と第5通路R5に区分けされる他、仕切り部16の風上側にはドアD4(請求項の調整機構に相当)が一点鎖線で示す軌跡に従って回動可能に設けられている。
【0013】
送風機2は、ダクト1内の風上側に設置される他、ケーシング内に収容されたブロアがブロアモータによって回転駆動されることにより、図外の内気導入口または外気導入口から導入された空気が吸引されて車室内側へ送風されるようになっている。
【0014】
冷媒循環回路3は、冷媒圧縮機31と、三方弁32と、車室外熱交換器33と、レシーバタンク34と、第1熱交換器35と、膨張弁36と、第2熱交換器37と、アキュムレータ38が各接続管3a〜3gによって略環状に接続された状態で構成されている。
【0015】
また、接続管3aには、三方弁32から車室外熱交換器32とレシーバタンク34を迂回して接続管3cに接続されたパイパス管3hが設けられる他、接続管3cにはレシーバタンク34への冷媒の逆流を防止する逆止弁39が設けられている。
【0016】
冷媒圧縮機31は、所謂電動式のコンプレッサであり、接続管3gから内部に流入した低温・低圧のガス冷媒を圧縮することにより高温・高圧にした状態で接続管3aへ排出するようになっている。
【0017】
三方弁32は、暖房時にパイパス管3h側へ流路を開く一方、冷房時には接続管3aから車室外熱交換器33側へ流路を開くようになっている。
【0018】
車室外熱交換器33は、車両前部に設置され、且つ、電動ファンが装着される所謂コンデンサであり、接続管3aから内部に流入した高温・高圧のガス冷媒を車両走行風または図外のファンの強制風と熱交換して凝縮した後、接続管3bへ排出するようになっている。
【0019】
レシーバタンク34は、所謂気液分離器であり、接続管3bから内部に流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒に分離して液冷媒のみを接続管3cへ排出するようになっている。
【0020】
第1熱交換器35は、車室外熱交換器33と略同様の構造を成してダクト1内に設置される他、暖房時には接続管3cから内部に流入したガス冷媒を空気と熱交換させることにより空気を加熱すると同時にガス冷媒を凝縮させる一方、冷房時には接続管3cから内部に流入した液冷媒をダクト1内の空気と熱交換させることにより空気を加熱(再加熱)すると同時に液冷媒を過冷却した後、接続管3dへ排出するようになっている。
【0021】
膨張弁36は、例えばキャピラリチューブ等の固定絞りであり、接続管3dから内部に流入した冷媒を減圧して気液二層状態の冷媒を接続管3eへ排出するようになっている。
【0022】
第2熱交換器37は、ダクト1内の第1熱交換器35の風上に設置される所謂エバポレータであり、接続管3eから内部に流入した冷媒を空気と熱交換させることにより空気を冷却・除湿すると同時に冷媒を蒸発させた後、接続管3fへ排出するようになっている。
【0023】
アキュムレータ38は、接続管3fから内部に流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒に分離して低温・低圧のガス冷媒のみを接続管3fへ排出するようになっている。
【0024】
冷却水循環回路4は、ウォーターポンプ41と、インバータ42と、モータ43と、三方弁44と、蓄熱器45と、第3熱交換器46が各接続管4a〜4eによって略環状に接続された状態で構成されている。
【0025】
また、接続管4cには、三方弁44から蓄熱器45を迂回して接続管4dに接続されたパイパス管4fが設けられる他、接続管4dには蓄熱器45への冷却水の逆流を防止する逆止弁47が設けられている。
【0026】
ウォーターポンプ41は、所謂電動式の循環ポンプであり、接続管4eから内部に流入した冷却水を接続管4aへ排出するようになっている。
【0027】
インバータ42は、金属製のケーシング内に収容されたトランジスタ等の発熱体で構成されており、該ケーシングに装着されたウォータージャケット内に接続管4aを介して流入した冷却水と発熱体とが熱交換することにより、発熱体を冷却すると同時に冷却水を加熱した後、接続管4bへ排出するようになっている。
【0028】
モータ43は、車両を走行させるためのモータ43であり、金属製のケーシングに装着されたウォータージャケット内に接続管4bを介して流入した冷却水とケーシング内の発熱部品とが熱交換することにより、モータ43を冷却すると同時に冷却水を加熱した後、接続管4cへ排出するようになっている。
【0029】
蓄熱器45は、金属製のケーシング内に蓄熱材が充填された所謂保温器であり、接続管4cから内部に流入した冷却水を保温しつつ、接続管4dへ排出するようになっている。
【0030】
第3熱交換器46は、ダクト1内の第2熱交換器37の風上に設置される他、一般的なラジエータと同様の構造に形成され、接続管4dから内部に流入した高温な冷却水を空気と熱交換させて、空気を加熱すると同時に冷却水を冷却した後、接続管4eへ排出するようになっている。
【0031】
次に、作用を説明する。
先ず、本実施例1の空気調和装置における車室内の暖房時について説明する。
図2に示すように、車室内の暖房時には、三方弁32がバイパス管3h側に開くことにより、冷媒循環回路3の冷媒は、冷媒圧縮機31、三方弁32、第1熱交換器35、膨張弁36、第2熱交換器37、アキュムレータ38の順番に循環する。
【0032】
また、三方弁44が蓄熱器45側に開くことにより、冷却水循環回路4の冷却水は、ウォーターポンプ41、インバータ42、モータ43、三方弁44、蓄熱器45、第3熱交換器46の順番に循環する。
【0033】
さらに、ダクト1内のドアD1〜D3が第2通路R2及び第3通路R3を閉じるように回動することにより、ダクト1内で送風機2から車室内側へ向かう空気(破線矢印で図示)は、その全量が第1通路R1の第3熱交換器46へ向かう。
この際、第3熱交換器46を通過する空気と冷却水循環回路4の高温な冷却水とが熱交換することにより空気が加熱されると同時に冷却水が冷却されてインバータ42及びモータ43が冷却される。
【0034】
次に、第3熱交換器46を通過した空気は、第2熱交換器37へ向かう。
この際、第2熱交換器37を通過する空気と冷媒循環回路3の低温な冷媒とが熱交換することにより空気が冷却・除湿されると同時に冷媒が蒸発される。
【0035】
次に、第2熱交換器37を通過した空気は第4通路R4の第1熱交換器35へ向かう空気と第5通路R5に向かう空気に分岐した後、吹き出し口11〜13の直前で混合されて所望の温度に調整された状態で所定の吹き出し口11〜13を介して車室内に送られ、これにより車室内を暖房できる。
この際、第1熱交換器35を通過する空気と冷媒循環回路3の高温な冷媒とが熱交換することにより、空気が加熱されると同時に冷媒が凝縮される。
【0036】
従って、送風機2から車室内側へ向かう空気は、第2熱交換器37で冷却・除湿された後、さらに第1熱交換器35で加熱されて乾燥空気として車室内に送られ、これにより、冷却式除湿装置と同様の効果を得ることができる。
【0037】
なお、第4通路R4と第5通路R5の空気の混合比は、ドアD4の回動調整で常に制御されるが、暖房時においてドアD4は殆ど第5通路R5側に回動調整されることとなる。勿論、各ドアD1〜D3を回動調整して空気の温度を調整することもできる。
【0038】
また、本実施例1では、三方弁44を予め蓄熱器45に貯留された高温な冷却水を利用して冷却水の即暖性を図ることを目的として三方弁44を蓄熱器45側に開いたが、その後冷却水が循環して所定温度まで上昇した際には、三方弁44をバイパス管4f側に開いても良い。
【0039】
従って、本実施例1の空気調和装置では、車室内の暖房時において、冷却水循環回路4の第3熱交換器46の高温な冷却水で空気を直接加熱して効率よく暖めた状態とし、その後、第2熱交換器37で冷却・除湿して、さらに第1熱交換器35で再加熱することによって暖房性能を大幅に向上できる。
【0040】
また、第2熱交換器37を第1熱交換器35の風上に配置しているため、冷却式除湿装置として機能させて空気を良好に除湿できる。
【0041】
また、第3熱交換器46を第2熱交換器37の風上に配置しているため、高温な空気を第2熱交換器37に通過させて冷媒の圧力を上げて蒸発化を促進でき、冷媒循環回路3の熱交換性能を向上できる。
【0042】
さらに、蓄熱器45に保温された冷却水を利用して第3熱交換器46に高温な冷却水を安定して供給することができ、所望の暖房性能を向上できる。
【0043】
次に、本実施例1の空気調和装置における車室内の冷房時について説明する。
図3に示すように、車室内の冷房時には、三方弁32が車室外熱交換器33側に開くことにより、冷媒循環回路3の冷媒は、冷媒圧縮機31、三方弁32、車室外熱交換器33、レシーバタンク34、第1熱交換器35、膨張弁36、第2熱交換器37、アキュムレータ38の順番に循環する。
【0044】
また、三方弁44がバイパス管4f側に開くことにより、冷却水循環回路4の冷却水は、ウォーターポンプ41、インバータ42、モータ43、第3熱交換器46の順番に循環する。
【0045】
さらに、ダクト1内のドアD1〜D3が第1通路R1及び第3通路R3を連通し、且つ、第2通路R2を車室内側へ連通するように回動することにより、ダクト1内で送風機2から車室内側へ向かう空気(破線矢印で図示)は、先ず、第1通路R1と第2通路R2に分岐すると共に、第1通路R1に流入した空気は、第3熱交換器46を通過した後、第3通路R3を介して車外(外部)へ排出される一方、第2通路に流入した空気は、第2熱交換器37へ向かう。
この際、第1通路R1では、第3熱交換器46を通過する空気と冷却水循環回路4の高温な冷却水とが熱交換することにより空気が加熱されると同時に冷却水が冷却されることによりインバータ42及びモータ43が冷却される。
【0046】
一方、第2通路に流入した空気は第2熱交換器37を通過し、この際、第2熱交換器37を通過する空気と冷媒循環回路3の低温な冷媒とが熱交換することにより空気が冷却・除湿されると同時に冷媒が蒸発される。
【0047】
次に、第2熱交換器37を通過した空気は第4通路R4の第1熱交換器35へ向かう空気と第5通路R5に向かう空気に分岐した後、吹き出し口11〜13の直前で混合されて所望の温度に調整された状態で所定の吹き出し口11〜13を介して車室内に送られ、これにより車室内を冷房できる。
この際、第1熱交換器35を通過する空気と冷媒循環回路3の幾分低温な冷媒とが熱交換することにより、空気が加熱されて除湿されると同時に冷媒が過冷却される。
【0048】
従って、送風機2から車室内側へ向かう空気は、第2熱交換器37で冷却・除湿された後、さらに第1熱交換器35で加熱されて乾燥空気として車室内に送られ、これにより、冷却式除湿装置と同様の効果を得ることができる。
【0049】
なお、第4通路R4と第5通路R5の空気の混合比は、ドアD4の回動調整により常に行われるが、冷房時においてドアD4は殆ど第4通路R4側に回動調整されることとなる。また、各ドアD1〜D3を回動調整して空気の温度を調整することもできる。
【0050】
また、本実施例1では、冷却水の温度を上昇させることを目的として蓄熱器45に冷却水を用いる必要はあまりないため、三方弁44をバイパス管4f側に開いたがこの限りではなく、その後冷却水の温度が所定温度まで上昇すれば蓄熱器45に冷却水を貯留する目的で三方弁44を蓄熱器45側に開いても良い。
【0051】
従って、本実施例1の空気調和装置では、車室内の冷房時において、冷却水循環回路4の第3熱交換器46によりダクト1内の空気を直接加熱した後、第3通路R3を介して車外(外部)に排出するようにしたため、インバータ42及びモータ43の冷却を実現しつつ、冷房性能が低下するのを防止できる。
【0052】
次に、車室内の空調を停止する場合について説明する。
車室内の空調を停止する場合には、図4に示すように、コンプレッサを停止して冷媒循環回路3の冷媒の循環を停止する。
【0053】
また、三方弁44がバイパス管4f側に開くことにより、冷却水循環回路4の冷却水は、ウォーターポンプ41、インバータ42、モータ43、第3熱交換器46の順番に循環する。
【0054】
さらに、ダクト1内のドアD1が第2通路R2を閉じるように回動すると共に、ドアD2,D3が第1通路R1及び第3通路R3を連通するように回動する。
【0055】
これにより、ダクト1内で送風機2から車室内側へ向かう空気(破線矢印で図示)は、その全量が第1通路R1に流入して第3熱交換器46を通過した後、第3通路R3を介して車外(外部)へ排出される。
【0056】
この際、第1通路R1では、第3熱交換器46を通過する空気と冷却水循環回路4の高温な冷却水とが熱交換することにより空気が加熱されると同時に冷却水が冷却されることによりインバータ42及びモータ43が冷却される。
【0057】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の車両用空気調和装置にあっては、車室内へ向かって空気を送るためのダクト1と、ダクト1内において車室内へ送風する送風機2と、冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機31と、ダクト1内に設置され、且つ、冷媒圧縮機31から吐出された冷媒の凝縮熱により空気を加熱させる第1熱交換器35と、第1熱交換器35の風上に配置され、且つ、第1熱交換器35から流入した冷媒の蒸発熱により空気を冷却する第2熱交換器37を有する冷媒循環回路と、ダクト1内において第2熱交換器37の風上に配置され、且つ、少なくともインバータ42またはモータ43を含む強電系部品によって加熱された冷却水の放熱により空気を加熱させる第3熱交換器46を有する冷却水循環回路を備えるため、冷却水循環回路4の第3熱交換器46を送風ダクト1内に収容することにより、冷却水循環回路4の冷却水と車室内に送る空気とを直接熱交換させて空気を直接加熱することにより暖房性能の向上を図ることができる。
【0058】
また、ダクト1内に空気の温度を調整可能なドアD1〜D4を設けたため、車室内へ送る空気の温度を容易に調整でき、好適となる。
【0059】
また、冷却水循環回路に蓄熱器45を設けたため、強電系部品が起動直後等で冷却水が低温であっても蓄熱器45で予め保温した冷却水を循環させることで第3熱交換器46に高温な冷却水を供給でき、所望の暖房性能を実現できる。
【0060】
さらに、冷却水循環回路4の第3熱交換器46を車両前部に設ける必要がないため、車両前部の設計レイアウトの自由度を拡大できる。
【0061】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、本発明は電気自動車や燃料電池自動車に限らず、ハイブリッド自動車や一般的なエンジン自動車に適用しても良い。
また、強電系部品はインバータやモータに限らず、その他の様々な熱源となるものを適用しても良い。
【0062】
また、冷房時において第1熱交換器35の放熱量が十分に大きい場合には、三方弁32をバイパス管3h側へ開くことも考えられる。
【0063】
また、第1熱交換器35及び第3熱交換器46に加えて、第2熱交換器37と熱交換する空気の量を調整して空気の温度を調整可能な調整機構を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1の車両用空気調和装置の構成図である。
【図2】本実施例1の車室内の暖房時における車両用空気調和装置の作動を説明する図である。
【図3】本実施例1の車室内の冷房時における車両用空気調和装置の作動を説明する図である。
【図4】本実施例1の車室内の空調の停止時における車両用空気調和装置の作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
D1、D2、D3、D4 ドア
R1 第1通路
R2 第2通路
R3 第3通路
R4 第4通路
R5 第5通路
1 ダクト
11 デフ吹き出し口
12 フェイス吹き出し口
13 フット吹き出し口
14 空気通路
15 仕切り部
16 仕切り部
2 送風機
3 冷媒循環回路
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g 接続管
3h バイパス管
31 冷媒圧縮機
32 三方弁
33 車室外熱交換器
34 レシーバタンク
35 第1熱交換器
36 膨張弁
37 第2熱交換器
38 アキュムレータ
39 逆止弁
4 冷却水循環回路
4a、4b、4c、4d、4e 接続管
4f バイパス管
41 ウォーターポンプ
42 インバータ
43 モータ
44 三方弁
45 蓄熱器
46 第3熱交換器
47 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ向かって空気を送るためのダクトと、
前記ダクト内において車室内へ送風する送風機と、
冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機と、前記ダクト内に設置され、且つ、前記冷媒圧縮機から吐出された冷媒の凝縮熱により空気を加熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器の風上に配置され、且つ、前記第1熱交換器から流入した冷媒の蒸発熱により空気を冷却する第2熱交換器を有する冷媒循環回路と、
前記ダクト内において前記第2熱交換器の風上に配置され、且つ、少なくともインバータまたはモータを含む強電系部品によって加熱された冷却水の放熱により空気を加熱させる第3熱交換器を有する冷却水循環回路を備えることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和装置において、
前記ダクト内に空気の温度を調整可能な調整機構を設けたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用空気調和装置において、
前記冷却水循環回路に蓄熱器を設けたことを特徴とする車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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