説明

車両用空気調和装置

【課題】車室外の温度が低温の環境下においても、吸熱器に着霜が生じることのない車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】除湿暖房運転時において、車室外の温度Tamが所定温度T1以下の場合、または、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2以下の場合で、冷却空気温度センサ44の検出温度Teが温度Tet−β以下となった場合に第3電磁弁25cを閉鎖するようにしている。これにより、除湿暖房運転時において、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、吸熱器14への冷媒の流通を停止するので、吸熱器14における着霜を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車に適用可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記車両用空気調和装置において、圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を吸熱器において吸熱させる冷房運転と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行うようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−25446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記車両用空気調和装置では、除湿暖房運転を行う場合に、放熱器において放出する熱量を室外熱交換器において車室外の空気から吸熱している。このため、車室外の温度が低温の環境下においては、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度が低くなる。室外熱交換器における冷媒の蒸発温度が低くなると、吸熱器における冷媒の蒸発温度も低くなるため吸熱器に着霜を生じるおそれがあり、吸熱器に着霜が生じた場合には車室内の温度および湿度の制御が困難となる。
【0006】
本発明の目的とするところは、車室外の温度が低温の環境下においても、吸熱器に着霜が生じることのない車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、吸熱器の冷媒流通方向上流側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によって吸熱器に流入する冷媒の流量を減少させる流量調整制御手段と、を備えている。
【0008】
これにより、吸熱器における冷媒の蒸発温度が所定温度以下となった場合に、吸熱器に流入する冷媒の流量を減少することから、吸熱器における着霜を防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、吸熱器の冷媒流入側の冷媒流通路と冷媒流出側の冷媒流通路とを連通するバイパス流通路と、バイパス流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によってバイパス流通路を流通する冷媒の流量を増加させる冷媒流量制御手段と、を備えている。
【0010】
これにより、吸熱器における冷媒の蒸発温度が所定温度以下となった場合に、バイパス流路を流通する冷媒の流量の増加によって吸熱器に流入する冷媒の流量が減少することから、吸熱器における着霜を防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、室外熱交換器の冷媒流入側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によって室外熱交換器に流入する冷媒の流量を増加させる冷媒流量制御手段と、を備えている。
【0012】
これにより、吸熱器における冷媒の蒸発温度が所定温度以下となった場合に、吸熱器に流入する冷媒の流量が減少することから、吸熱器における着霜を防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、室外熱交換器の冷媒流入側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を開閉可能な開閉弁と、吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、開閉弁によって室外熱交換器への冷媒の流通を規制する冷媒流通規制制御手段と、を備えている。
【0014】
これにより、吸熱における冷媒の蒸発温度が所定温度以下となった場合に、室外熱交換器における冷媒の吸熱を規制して、吸熱器においてのみ冷媒が吸熱することから、吸熱器における冷媒の蒸発温度の低下を防止することができ、吸熱器における着霜を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸熱器における着霜を防止することができるので、低温の環境下における除湿暖房運転時の除湿能力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図2】制御系を示すブロック図である。
【図3】冷房運転及び除湿冷房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図4】暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図5】除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図6】除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図7】吸熱器温度制御処理を示すフローチャートである。
【図8】電磁弁の開閉と吸熱器の温度との関係を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図10】制御系を示すブロック図である。
【図11】吸熱器温度制御処理を示すフローチャートである。
【図12】電磁弁の開閉と吸熱器の温度との関係を示す図である。
【図13】本発明の第3実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図14】制御系を示すブロック図である。
【図15】吸熱器温度制御処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4実施形態を示す吸熱器温度制御処理のフローチャートである。
【図17】電磁弁の開閉と吸熱器の温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図9は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0018】
本発明の車両用空気調和装置は、図1に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0019】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0020】
空気流通路11の一端側には、空気を空気流通路11の一端側から他端側に向かって流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。この室内送風機12は電動モータ12aによって駆動される。
【0021】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。この吸入口切換えダンパ13は電動モータ13aによって駆動される。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0022】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成され、電動モータ13eによってそれぞれ開閉される。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0023】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0024】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は電動モータ16aによって駆動される。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0025】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、放熱器15から流出する、または室外熱交換器22を流通した冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器23、冷媒の流路を切換えるための電動の三方弁24、第1〜第4電磁弁25a〜25d及び第1〜第2逆止弁26a〜26b、流通する冷媒を減圧するための第1及び第2膨張弁27a,27b、余剰となる冷媒を貯留するためのレシーバタンク28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外に配置されている。また、圧縮機21は電動モータ21aによって駆動される。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機30が設けられている。室外送風機30は、電動モータ30aによって駆動される。
【0026】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。冷媒流通路20bには、三方弁24が設けられ、三方弁24の一方の冷媒流出側と他方の冷媒流出側が互いに並列に室外熱交換器22の冷媒流入側に接続され、それぞれ冷媒流通路20c,20dが設けられている。冷媒流通路20dには、冷媒流通方向の上流側から順に、レシーバタンク28、第1膨張弁27a、第1逆止弁26aが設けられている。室外熱交換器22の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側と、冷媒流通路20dの三方弁24とレシーバタンク28との間と、が互いに並列に接続されることによって、それぞれ冷媒流通路20e,20fが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁25a、アキュムレータ29が設けられている。また、冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁25b、第2逆止弁26bが設けられている。また、冷媒流通路20dのレシーバタンク28と第1膨張弁27aとの間には、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続され、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第3電磁弁25cが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2膨張弁27bが設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁25aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20aには、室外熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、第4電磁弁25dが設けられている。
【0027】
さらに、車両用空気調和装置は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0028】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0029】
コントローラ40の出力側には、図2に示すように、室内送風機12駆動用の電動モータ12a、吸入口切換えダンパ13駆動用の電動モータ13a、吹出口切換えダンパ13b,13c,13d駆動用の電動モータ13e、エアミックスダンパ16駆動用の電動モータ16a、圧縮機21駆動用の電動モータ21a、三方弁24、第1〜第4電磁弁25a〜25d、室外送風機30駆動用の電動モータ30aが接続されている。
【0030】
コントローラ40の入力側には、図2に示すように、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、空気流通路11に流入する空気の温度Tiを検出するための吸気温度センサ43、吸熱器14において冷却された後の空気の温度Teを検出するための冷却空気温度センサ44、放熱器15において加熱された後の空気の温度Tcを検出するための加熱空気温度センサ45、車室内の湿度Rhを検出するための内気湿度センサ46、室外熱交換器22において熱交換した後の冷媒の温度Thexを検出するための冷媒温度センサ47、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ48、車両の速度Vを検出するための速度センサ49、目標設定温度Tsetや運転の切換えに関するモードを設定するための操作部50が接続されている。
【0031】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、除湿暖房運転、除霜運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0032】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、三方弁24の流路を冷媒流通路20c側に設定し、第2及び第3電磁弁25b,25cを開放するとともに、第1及び第4電磁弁25a,25dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図3に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20f,20d,20g、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20h、吸熱器14、冷媒流通路20i、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20j,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。また、除湿冷房運転としてエアミックスダンパ16が開放されている場合には放熱器15においても放熱する。
【0033】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を設定温度とするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0034】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0035】
暖房運転において、冷媒回路20では、三方弁24の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1電磁弁25aを開放するとともに、第2〜第4電磁弁25b〜25dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図4に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20d、室外熱交換器22、冷媒流通路22eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0036】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0037】
除湿暖房運転において、冷媒回路20では、三方弁24の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1及び第3電磁弁25a,25cを開放するとともに、第2及び第4電磁弁25b,25dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図5に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20dを順に流通する。冷媒流通路20dを流通する冷媒の一部は、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20dを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20g、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20h、吸熱器14、冷媒流通路20i、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20j,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0038】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気またはすべての空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0039】
除霜運転において、冷媒回路20では、三方弁24の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1及び第4電磁弁25a,25dを開放するとともに、第2及び第3電磁弁25b,25cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒の一部は、図6に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20dを順に流通して室外熱交換器22に流入する。また、圧縮機21から吐出されたその他の冷媒は、冷媒流通路20a,20kを流通して室外熱交換器22に流入する。室外熱交換器22から流出した冷媒は、冷媒流通路20eを流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱するとともに、室外熱交換器22において放熱と同時に吸熱する。
【0040】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する冷媒と熱交換することによって加熱され、車室内に吹き出される。
【0041】
コントローラ40は、操作部50のオートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、除湿暖房運転、除霜運転を車室内外の温度等の環境条件に基づいて切換える運転切換え制御処理を行う。
【0042】
また、コントローラ40は、運転切換え制御処理によって切り換えられる各運転において、目標吹出温度TAOに応じてフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを行う。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0043】
また、コントローラ40は、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって吹出口11c,11d,11eのモードを切換えるとともに、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとするために、エアミックスダンパ16の開度を制御する。
【0044】
ここで、除湿暖房運転中において、車室外の温度Tamが低温(例えば、10℃以下)の場合には、室外熱交換器22における冷媒の蒸発温度が低温(例えば、5℃〜10℃)となる。このとき、吸熱器14においても、冷媒の蒸発温度が低温(例えば、0℃〜5℃)となるため、吸熱器14に着霜を生じるおそれがある。
【0045】
除湿暖房運転中における吸熱器14の着霜を防止するため、コントローラ40は、吸熱器温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、車室外の温度Tamが所定温度T1(例えば、10℃)以下か否かを判定する。温度Tamが所定温度T1以下の場合にはステップS4に処理を移し、温度Tamが所定温度T1より高い場合にはステップS2に処理を移す。
【0047】
(ステップS2)
ステップS1において温度Tamが所定温度T1より高い場合に、ステップS2においてCPUは、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2(例えば、5〜10℃)以下か否かを判定する。温度Thexが所定温度T2以下の場合にはステップS4に処理を移し、温度Thexが所定温度T2より高い場合にはステップS3に処理を移す。
【0048】
(ステップS3)
ステップS2において冷媒の温度Thexが所定温度T2より高い場合に、ステップS3においてCPUは、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetから所定温度α減じた温度(Tet−α)以下であるか否かを判定する。温度TeがTet−α以下の場合にはステップS4に処理を移し、温度TeがTet−αよりも高い場合には吸熱器温度制御処理を終了する。
ここで、目標温度Tetは、車室内の窓ガラスに曇りを生じないようにするために必要な絶対湿度となる空気の露点温度であり、車室外の温度Tam及び車室内の温度Trに基づいて算出される。
【0049】
(ステップS4)
ステップS1において温度Tamが所定温度T1以下の場合、ステップS2において温度Thexが所定温度T2以下の場合、またはステップS3において温度TeがTet−α以下の場合に、ステップS4においてCPUは、第3電磁弁25cの切換え制御を行う。
具体的には、図8に示すように、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetよりも高い温度から目標温度Tetから所定温度βを減じた温度(Tet−β)まで低下したときに第3電磁弁25cが閉鎖される。また、吸熱器14の温度TeがTet−βよりも低い温度から目標温度Tetまで上昇したときに第3電磁弁25cが開放される。
【0050】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、除湿暖房運転時において、車室外の温度Tamが所定温度T1以下の場合、または、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2以下の場合で、冷却空気温度センサ44の検出した温度TeがTet−β以下となった場合に第3電磁弁25cを閉鎖するようにしている。これにより、除湿暖房運転時において、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、吸熱器14への冷媒の流通を停止するので、吸熱器14における着霜を防止することができる。
【0051】
尚、前記第1実施形態では、吸熱器14への冷媒の流入を規制する手段として、冷媒流通路20gに設けられた第3電磁弁25cを閉鎖するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、吸熱器14の冷媒流入側の冷媒流通路20hに設けられた第2膨張弁27bとして、弁開度を調整可能な電子膨張弁を用いることによって、吸熱器14への冷媒の流入を規制するようにしてもよい。
【0052】
また、前記第1実施形態では、吸熱器14の冷媒の流入を、第3電磁弁25cを閉鎖することによって遮断するようにしたものを示したが、吸熱器14への冷媒の流通量を減少させるようにしても、吸熱器14における着霜を防止することが可能となる。
【0053】
図9乃至図12は、本発明の第2実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0054】
本実施形態の車両用空気調和装置は、図9に示すように、冷媒流通路20hの第2膨張弁27bの冷媒流通方向下流側と冷媒流通路20iとを連通するように設けられ、冷媒流通路20hを流通する冷媒が吸熱器14を迂回して冷媒流通路20iに流入するバイパス流通路20lを備えている。また、バイパス流通路20lには、冷媒流路を開閉可能なバイパス用電磁弁25eが設けられている。バイパス用電磁弁25eは、図10に示すように、コントローラ40の出力側に接続されている。
【0055】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、コントローラ40は、除湿暖房運転中において、車室外の温度Tamが低温の場合に吸熱器14における着霜を防止するための吸熱器温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図11のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、車室外の温度Tamが所定温度T1(例えば、10℃)以下か否かを判定する。温度Tamが所定温度T1以下の場合にはステップS14に処理を移し、温度Tamが所定温度T1より高い場合にはステップS12に処理を移す。
【0057】
(ステップS12)
ステップS11において温度Tamが所定温度T1より高い場合に、ステップS12においてCPUは、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2(例えば、5〜10℃)以下か否かを判定する。温度Thexが所定温度T2以下の場合にはステップS14に処理を移し、温度Thexが所定温度T2より高い場合にはステップS13に処理を移す。
【0058】
(ステップS13)
ステップS12において冷媒の温度Thexが所定温度T2より高い場合に、ステップS13においてCPUは、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetから所定温度α減じた温度(Tet−α)以下であるか否かを判定する。温度TeがTet−α以下の場合にはステップS14に処理を移し、温度TeがTet−αよりも高い場合には吸熱器温度制御処理を終了する。
【0059】
(ステップS14)
ステップS11において温度Tamが所定温度T1以下の場合、ステップS12において温度Thexが所定温度T2以下の場合、またはステップS13において温度TeがTet−α以下の場合に、ステップS14においてCPUは、バイパス用電磁弁25eの切換え制御を行う。
具体的には、図12に示すように、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetよりも高い温度から目標温度Tetから所定温度βを減じた温度(Tet−β)まで低下したときにバイパス用電磁弁25eが開放される。また、吸熱器14の温度TeがTet−βよりも低い温度から目標温度Tetまで上昇したときにバイパス用電磁弁25eが閉鎖される。
【0060】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、除湿暖房運転時において、車室外の温度Tamが所定温度T1以下の場合、または、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2以下の場合で、冷却空気温度センサ44の検出した温度TeがTet−β以下となった場合にバイパス用電磁弁25eを開放するようにしている。これにより、除湿暖房運転時において、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、冷媒をバイパス流通路20lに流入させて吸熱器14への冷媒の流通量を減少させることで、吸熱器14における着霜を防止することができる。
【0061】
また、バイパス流通路20lが、冷媒流通路20hの第2膨張弁27bの冷媒流通方向下流側と冷媒流通路20iとを連通するように設けられている。これにより、バイパス流通路20lには、第2膨張弁27bにおいて減圧された冷媒を流通させることができることから、バイパス用電磁弁25eの開閉により生じる衝撃を抑制することができる。
【0062】
尚、前記第1及び第2実施形態では、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、第3電磁弁25cやバイパス用電磁弁25eの開閉を切換えることによって、冷媒流通路20g,20kへの冷媒の流通と冷媒の流通の停止を切換えているがこれに限られるものではない。例えば、第3電磁弁25cやバイパス用電磁弁25eとして、弁の開度が調整可能な弁を用いることによって、冷媒流通路20g,20kの冷媒の流通量を制御するようにしても、前記第1及び第2実施形態と同様に、吸熱器14に着霜が生じることを防止することができる。
また、弁の開度が調整可能な弁として、ソレノイドによって弁を開閉する電磁弁を用い、所定時間のうちの弁が開放している時間の割合を変更することにより冷媒の流量を変更するようにしてもよい。
【0063】
図13乃至図15は、本発明の第3実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0064】
本実施形態の車両用空気調和装置は、前記第1実施形態の冷媒回路20における第1膨張弁として、弁開度を調整可能な電子式制御弁としての電子膨張弁27cが用いられている。また、室外熱交換器22には、室外熱交換器22における冷媒の圧力Pを検出するための圧力センサ51が設けられている。電子膨張弁27c及び圧力センサ51は、図14に示すように、それぞれコントローラ40の出力側及び入力側に接続されている。
【0065】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、コントローラ40は、除湿暖房運転中において、車室外の温度Tamが低温の場合に吸熱器14における着霜を防止するための吸熱器温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図15のフローチャートを用いて説明する。
【0066】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、車室外の温度Tam及び吸熱器14の目標温度Tetに基づいて仮目標過熱度SHtpを算出し、ステップS22に処理を移す。
【0067】
(ステップS22)
ステップS22においてCPUは、吸熱器14の温度Te及び吸熱器14の目標温度Tetに基づいて過熱度の補正量Hを算出する。
具体的には、吸熱器14の温度Teが目標温度Tetから所定温度γを減じた温度(Tet−γ)以下か否かを判定し、温度TeがTet−γ以下の場合に目標過熱度SHtが小さくなる補正量H(H<0)とし、温度TeがTet−γより大きい場合に目標過熱度SHtが大きくなる補正量H(H>0)とする。
【0068】
(ステップS23)
ステップS23においてCPUは、仮目標過熱度SHtpに補正量Hを加えて目標過熱度SHtを算出する。
【0069】
(ステップS24)
ステップS24においてCPUは、目標過熱度SHt及び実際の過熱度SHに基づいて電子膨張弁27cの弁開度を算出し、算出された弁開度となるように電子膨張弁27cを制御する。
ここで、実際の過熱度SHは、室外熱交換器22における冷媒の圧力P及び室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexに基づいて算出される。
【0070】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、除湿暖房運転時において、冷却空気温度センサ44の検出した温度TeがTet−γ以下となった場合に目標過熱度SHtを小さくするようにしている。これにより、除湿暖房運転時において、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、過熱度SHを小さくするように電子膨張弁27cを制御することによって室外熱交換器22を流通する冷媒の流量を増加させて吸熱器14への冷媒の流通量を減少させることで、吸熱器14における着霜を防止することができる。
【0071】
図16及び図17は、本発明の第4実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0072】
本実施形態の車両用空気調和装置は、第3実施形態と同様の構成において、吸熱器温度制御処理として電子膨張弁27cを開閉している。このときのコントローラ40の動作を図16のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
(ステップS31)
ステップS31においてCPUは、車室外の温度Tamが所定温度T1(例えば、10℃)以下か否かを判定する。温度Tamが所定温度T1以下の場合にはステップS34に処理を移し、温度Tamが所定温度T1より高い場合にはステップS32に処理を移す。
【0074】
(ステップS32)
ステップS31において温度Tamが所定温度T1より高い場合に、ステップS32においてCPUは、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2(例えば、5〜10℃)以下か否かを判定する。温度Thexが所定温度T2以下の場合にはステップS34に処理を移し、温度Thexが所定温度T2より高い場合にはステップS33に処理を移す。
【0075】
(ステップS33)
ステップS32において冷媒の温度Thexが所定温度T2より高い場合に、ステップS3においてCPUは、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetから所定温度α減じた温度(Tet−α)以下であるか否かを判定する。温度TeがTet−α以下の場合にはステップS34に処理を移し、温度TeがTet−αよりも高い場合には吸熱器温度制御処理を終了する。
【0076】
(ステップS34)
ステップS31において温度Tamが所定温度T1以下の場合、ステップS32において温度Thexが所定温度T2以下の場合、またはステップS33において温度TeがTet−α以下の場合に、ステップS34においてCPUは、電子膨張弁27cの切換え制御を行う。
具体的には、図17に示すように、吸熱器14の温度Teが吸熱器14の目標温度Tetよりも高い温度から目標温度Tetから所定温度βを減じた温度(Tet−β)まで低下したときに電子膨張弁27cが閉鎖される。また、吸熱器14の温度TeがTet−βよりも低い温度から目標温度Tetまで上昇したときに電子膨張弁27cが開放される。
【0077】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、除湿暖房運転時において、車室外の温度Tamが所定温度T1以下の場合、または、室外熱交換器22から流出する冷媒の温度Thexが所定温度T2以下の場合で、冷却空気温度センサ44の検出した温度TeがTet−β以下となった場合に電子膨張弁27cを閉鎖するようにしている。これにより、除湿暖房運転時において、吸熱器14に着霜が生じるおそれがある場合に、室外熱交換器22への冷媒の流通を停止することによって、室外熱交換器22における冷媒の吸熱を規制して、吸熱器14においてのみ冷媒を吸熱させることができるので、吸熱器14における冷媒の蒸発温度が低下することを防止することができ、吸熱器14における着霜を防止することができる。
【0078】
尚、前記実施形態では、空気流通路11を流通する空気が放熱器15において冷媒と熱交換する熱量を暖房、除湿暖房及び除湿冷房の熱源としたものを示したが、熱量が不足する場合には補助の熱源を設けるようにしてもよい。例えば、放熱器15とは別に、熱源として空気流通路1内に空気流通路11を流通する空気を直接加熱可能な電気ヒータを備えるようにしてもよい。また、空気流通路11の内外に亘って温水回路を構成し、温水回路内を流通する温水を空気流通路11外において加熱して、空気流通路11において放熱させるようにしてもよい。
【0079】
また、冷媒回路20において、冷媒流通路20c,20dを切換えるために三方弁24を用いたものを示したが、三方弁24の代わりに2台の電磁弁の開閉によって冷媒流通路20c,20dを切換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…空調ユニット、14…吸熱器、15…放熱器、20…冷媒回路、20a〜20j…冷媒流通路、20k…バイパス流通路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、24…三方弁、25a〜25e…第1〜第5電磁弁、26a〜26c…第1〜第3逆止弁、27a…第1膨張弁、27b…第2膨張弁、27c…電子膨張弁、40…コントローラ、41…外気温度センサ、42…内気温度センサ、43…吸気温度センサ、44…冷却空気温度センサ、45…加熱空気温度センサ、46…内気湿度センサ、47…冷媒温度センサ、48…日射センサ、49…速度センサ、50…操作部、51…圧力センサ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、
車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、
車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、
圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、
吸熱器の冷媒流通方向上流側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、
吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、
除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によって吸熱器に流入する冷媒の流量を減少させる流量調整制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、
車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、
車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、
圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、
吸熱器の冷媒流入側の冷媒流通路と冷媒流出側の冷媒流通路とを連通するバイパス流通路と、
バイパス流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、
吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、
除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によってバイパス流通路を流通する冷媒の流量を増加させる冷媒流量制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、
車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、
車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、
圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、
室外熱交換器の冷媒流入側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を流通する冷媒の流量を調整可能な流量調整弁と、
吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、
除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、流量調整弁によって室外熱交換器に流入する冷媒の流量を増加させる冷媒流量制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記流量調整弁は、弁開度を調整可能な電子式制御弁である
ことを特徴とする請求項1または3記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室内側に設けられ、冷媒を放熱させる放熱器と、
車室内側に設けられ、冷媒を吸熱させる吸熱器と、
車室外側に設けられ、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、を備え、
圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる冷房運転と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、放熱器及び室外熱交換器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる暖房運転と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱させた冷媒の一部を膨張手段によって減圧させた後に吸熱器において吸熱させるとともに、その他の冷媒を膨張手段によって減圧させた後に室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房運転と、を行う車両用空気調和装置であって、
室外熱交換器の冷媒流入側の冷媒流通路に設けられ、冷媒流通路を開閉可能な開閉弁と、
吸熱器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段と、
除湿暖房運転時に、蒸発温度検出手段の検出温度が所定温度以下となった場合に、開閉弁によって室外熱交換器への冷媒の流通を規制する冷媒流通規制制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−166606(P2012−166606A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27304(P2011−27304)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】