車両用空気質成分供給装置
【課題】空気砲放出時に発生する騒音を防止することができる車両用空気質成分供給装置を提供すること。
【解決手段】所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバ120と、空気質成分チャンバ120と連通し、空気砲が放出される放出孔110Aと、基準位置から空気質成分チャンバ120を押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバ120に保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出孔110Aから空気砲Fを放出させる圧縮手段130と、マグネット141と対をなすコイル142に駆動電流Iを供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段130を変位させる駆動手段140と、圧縮手段130が圧縮側に変位するときに圧縮手段130に対して基準位置側への規制力を加えるダンパー150とを備えた。
【解決手段】所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバ120と、空気質成分チャンバ120と連通し、空気砲が放出される放出孔110Aと、基準位置から空気質成分チャンバ120を押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバ120に保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出孔110Aから空気砲Fを放出させる圧縮手段130と、マグネット141と対をなすコイル142に駆動電流Iを供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段130を変位させる駆動手段140と、圧縮手段130が圧縮側に変位するときに圧縮手段130に対して基準位置側への規制力を加えるダンパー150とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空気質成分を車内に供給する車両用空気質成分供給装置に関し、特に、空気質成分供給時の騒音発生の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の空気質成分供給装置として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。これは、所定の空気質成分を保持する圧力室を介して放出孔と膜状の圧縮部材とを対向配置し、圧縮部材を放出孔に対して接近方向に変位させることで圧力室内にある空気質成分を含んだ空気を圧縮し、これによって放出孔から外部へ空気質成分を含んだ空気砲を放出する構成とされている。この圧縮部材には、マグネットと対をなすコイルが一体化されており、当該コイルに矩形波の駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により、この圧縮部材が放出孔に対して接近方向に変位するようになっている。
【特許文献1】特開2000−176339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来装置では、コイルに矩形波の駆動電流を供給しているため、圧縮部材の変位が矩形波に応答しきれずに、目標となる変位位置付近でこの圧縮部材が振動する過渡ひずみが発生する(図11(A),(B)参照)。この結果、過渡ひずみに起因する騒音が発生し、乗員に対して不快感を与えるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、空気砲放出時に発生する騒音を防止することができる車両用空気質成分供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段と、圧縮手段が圧縮側に変位する際に、圧縮手段に対して基準位置側への規制力を加える変位規制部材とを備えることを特徴としている。
【0006】
請求項1の発明によれば、圧縮手段が圧縮側に変位したときには、変位規制部材によって圧縮手段に対して基準位置側への規制力が加えられることとなる。このため、駆動電流に対する応答遅れに起因して圧縮手段が目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生が防止され、もって、騒音発生を防止することができる。
【0007】
請求項2の発明では、圧縮手段は、基準位置から圧縮側に変位可能な圧縮部材と、前記ローレンツ力を受けて圧縮部材を押圧する押圧部材とから構成されており、変位規制部材は、自己復帰力を有する可撓性部材により形成されており、一方側が押圧部材に接触して圧縮側に変位可能とされているとともに、他方側が圧縮側へ変位不能に固定されていることを特徴としている。
【0008】
本構成によれば、圧縮部材の圧縮側への変位に伴って押圧部材に接触した変位規制部材の一方側が圧縮側へ変位する。従って、圧縮部材の変位量の増大に伴って、変位規制部材の一方側の変位も増大することとなり、この変位規制部材の基準位置側への復帰力が増大する。このため、圧縮部材の変位量の増大に伴って圧縮部材に対する基準位置側への規制力が増大する。
【0009】
通常、圧縮部材の変位量が増大するに伴って、過渡ひずみにおける振動も増大するため、その変位量に応じた規制力が必要となるが、本構成では、上述したように、圧縮部材の変位量に応じた規制力が発揮されるから、変位量を増大した場合でも、これに伴って増大する過渡ひずみの振動を効果的に防止できる規制力が得られる。
【0010】
請求項3の発明では、変位規制部材は弾性材料により構成されていることを特徴としている。これによれば、圧縮部材の変位量に応じて基準位置側への弾発力が発揮されて圧縮部材の圧縮側への変位に対する規制力が増大するため、過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0011】
請求項4の発明では、変位規制部材は、一方側と他方側との間が蛇腹状に形成されていることを特徴としている。これによれば、圧縮部材の変位量に応じて基準位置側への復帰力が発揮されて圧縮部材の圧縮側への変位に対する規制力が増大するため、過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0012】
請求項5の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、コイルに供給する駆動電流は、空気砲を発生させるための主パルスに、ブレーキパルスを重畳したものであることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明によれば、ブレーキパルスによって、主パルスに対する応答遅れに起因する圧縮手段の振動による過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0014】
請求項6の発明では、ブレーキパルスのパルス振幅は、主パルスの振幅に応じた振幅とされていることを特徴としている。
【0015】
主パルスの振幅に応じて圧縮手段の変位量が決定されるため、主パルスの振幅に応じて過渡ひずみにおける圧縮手段の振動の大きさも異なる。このため、圧縮手段の振動の大きさに応じた振幅のブレーキパルスを重畳する必要がある。本構成では、ブレーキパルスの振幅を主パルスの振幅に応じた振幅としているため、圧縮手段の振動を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項7の発明では、ブレーキパルスのパルス振幅は、先行側のパルス振幅よりも後続側のパルス振幅のほうが小さくされていることを特徴としている。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材の振動は、目標となる変位位置に向かって減衰しながら収束するため、この振動の減衰に応じたブレーキパルスを重畳することが望ましい。本構成では、後続パルスの振幅を先行パルスの振幅よりも小さくしているから、一層効果的に圧縮部材の振動を防止することができる。
【0017】
請求項8の発明では、ブレーキパルスのパルス周期は、先行側のパルス周期よりも後続側のパルス周期のほうが短くされていることを特徴としている。過渡ひずみにおける圧縮部材の振動周期は徐々に短くなるため、この周期変化に応じたブレーキパルスを重畳することが望ましい。これに対して、本構成では、後続パルスの周期を先行パルスの周期よりも短くしているため、圧縮部材の振動を一層効果的に防止することができる。
【0018】
請求項9の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、駆動電流の立ち上がり電流波形又は/及び立ち下がり電流波形を、圧縮手段が同期して変位可能な電流波形としたことを特徴としている。
【0019】
請求項9に記載の同期とは、駆動電流の立ち上がり変化又は/及び立ち下がり変化と圧縮手段の変位とが対応することであり、圧縮手段の変位が駆動電流の立ち上がり変化又は/及び立ち下がり変化に対して追従可能なことをいう。従って、本構成では、圧縮手段の変位を駆動電流の立ち上がり又は/及び立ち下がり変化に同期(追従)させることができるため、駆動電流の変化に追従しきれずに目標となる変位位置(基準位置)付近で振動する過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0020】
請求項10の発明では、立ち上がり電流波形は、目標電流に対して漸近的に変化する電流波形であることを特徴としている。即ち、駆動電流の立ち上がりにおいて、目標電流に近づくにつれて電流変化を小さくすることで、駆動電流が目標電流へ徐々に近づくような電流波形としている。供給される駆動電流の電流変化に対して圧縮手段の圧縮側への変位を確実に追従させることができるため、過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0021】
請求項11の発明では、立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度以下としたことを特徴としている。
【0022】
請求項11に記載の、第1の傾度とは、駆動電流の立ち上がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち上がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち上がりに応答することができずに目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0023】
請求項12の発明では、立ち下がり電流波形において、その立ち下がり電流傾度を予め設定した第2の傾度以下としたことを特徴としている。
【0024】
請求項12に記載の第2の傾度とは、駆動電流の立ち下がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち下がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち下がりに応答することができずに基準位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1の実施形態>
本発明に係る車両用空気質成分供給装置の実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。本実施形態の車両用空気質成分供給装置は、自動車1の車内2に備えられた空気質成分放出手段10A〜10Cから所定の空気質成分を含んだ空気砲Fを放出することで、乗員3,4に対して個別に空気質成分を供給するものである。
【0026】
各空気質成分放出手段10A〜10Cは、図1に示すように、乗員3,4に向けて空気砲Fを放出可能な位置に配置されており、このうち、放出手段10Aはインストルメントパネル70内に、放出手段10Bは前席側天井部分に形成されるオーバーヘッドモジュール80内にそれぞれ配置されており、前席乗員3の方向に空気砲Fを放出する。また、放出手段10Cは、後席側天井部に配置されており、後席乗員4に対して空気砲Fを放出する。
【0027】
尚、本発明における空気砲Fは、ある空間に貯められた流体が圧縮されることにより、その空間に形成された放出口から押し出されて、流体の塊となって放出されるものを意図している。空気砲Fの形態としては、例えば、渦輪状、球体状などの形状の塊となって放出されるもの全般をいう。この空気砲Fは、乗員3,4に到達して顔や肩などに当たると、空気砲Fの塊が崩れるとともに含有されている空気質成分が拡散領域7,8内で拡散する。
【0028】
各空気質成分放出手段10A〜10Cは、図2に示すように、搬送手段30により空気質成分貯留手段20に貯留された空気質成分を受給可能とされている。このうち、空気質成分貯留手段20は、湿度成分、芳香成分等の所定の空気質成分を貯留封入するタンクにより構成されている。また、搬送手段30は、空気質成分貯留手段20と気質成分放出手段10A〜10C内の空気質成分チャンバ120(これについては後述する)とを連結する連結チューブ31と、連結チューブ31を開閉するバルブ32と、空気質成分貯留手段20内の空気質成分を空気質成分チャンバ120に搬送する搬送ポンプ33とから構成されている。
【0029】
このうち、バルブ32は後述する制御手段200からの駆動信号に基づいて開閉動作するものであり、これが開状態とされているときには空気質成分貯留手段20内の空気質成分が連結チューブ33に流れ込む。搬送ポンプ33は、同じく制御手段200からの駆動信号を受けて動作するものであって、連結チューブ32内に滞留している空気質成分成分を空気質供給チャンバ120に送り込む。
【0030】
空気質成分放出手段10A〜10Cは、図3に示すように、筐体110内に、空気質成分を保持する空気質成分チャンバ120と、この空気質成分チャンバ120内の空気を圧縮する圧縮手段130と、圧縮手段130を駆動する駆動手段140と、圧縮手段130の変位を規制するダンパー150(変位規制部材)と、押圧部材132を支持する支持部材160を備えて構成されている。
【0031】
筐体110は、例えば円柱形状をなしており、前面には空気砲Fが車内2に放出される円形の放出孔110A(放出部)が形成されている。空気質成分チャンバ120は、連結チューブ31によって空気質成分貯留手段20と連結されており、バルブ32及び搬送ポンプ33の動作によって空気質成分を受給可能とされている。従って、空気質成分チャンバ120内には、空気質成分を含有する空気が保持される。
【0032】
圧縮手段130は、放出孔110Aに対して対向配置され、この放出孔110Aに対して相対変位可能な膜状の圧縮部材131と、圧縮部材131を圧縮側に押圧する押圧部材132とから構成されている。
【0033】
圧縮部材131は、円形形状をなしており、外周部が筐体110に固定されている。また、外周側にはエッジ部131Aが形成されており、当該圧縮部材131の前後方向への変位が許容されるようになっている。従って、圧縮部材131は、放出孔110Aに対して所定の離間距離を隔てた基準位置(図3参照。ダンパー150の撓み変形が発生しない位置。)から、空気質成分チャンバ120を押し縮める圧縮側(前方側)に変位可能とされている(図4参照)。従って、圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位することにより、空気質成分チャンバ120内の空気が圧縮され、これによって放出孔110Aから空気質成分を含んだ空気砲Fが放出される。
【0034】
押圧部材132は、円筒形状に形成されており、先端側には圧縮側に先細り形状をなすテーパ部132Aを有しているとともに、基端側には後述する駆動手段140を構成するコイル142がらせん状に巻回されている。この押圧部材132の先端は圧縮部材131と一体化されている。
【0035】
駆動手段140は、筐体110に固定されたマグネット141と、このマグネット141と対をなし、押圧部材132に一体化されるコイル142とから構成されている。円柱状に形成されたマグネット141は、前方に突き出した姿勢で筐体110の後面に保持固定されており、押圧部材132の後方側からその内部に進入している。コイル142は、押圧部材132の基端側にらせん状に巻回されていることで、マグネット141を取り巻くように配置されており、後述する制御手段200からの駆動電流Iの供給を受けるようになっている。
【0036】
従って、コイル142に駆動電流Iが供給された場合には、マグネット141が形成する磁界によってローレンツ力が発生し、このローレンツ力によってコイル142に対して前方への付勢力が作用することで、コイル142と一体化された押圧部材132が圧縮部材131を押圧し、結果として圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位する。また、駆動電流Iが途絶えるとコイル142に対する前方への付勢力が消滅し、圧縮部材131が基準位置へ復帰するようになっている。
【0037】
尚、コイル142に供給される駆動電流Iは、空気砲Fを発生させるに必要な電流波形とされており、例えば、矩形波電流が供給されるようになっている。また、矩形波電流の振幅によって発生するローレンツ力が決定されるため、この矩形波電流の振幅によって圧縮部材131の変位量が決定される。
【0038】
ダンパー150は、ゴム、ウレタン等の自己復帰力を有する可撓性材料を膜状に形成したものであり、その中心側には、前方に傾斜突出した台形形状の突出部151が形成されているとともに、突出部151の中心にテーパ部132Aの前後中央位置の断面形状と略同一形状の開口が形成されている。また、ダンパー150の中心部分に形成された開口には押圧部材132が後方側から挿通されてダンパー150の内周部152(一方側)がこの押圧部材132のテーパ部132Aに接触しているとともに、外周部153(他方側)は筐体110に保持固定されている。従って、ダンパー150の内周部152は、押圧部材131とともに前後方向に変位可能とされており、外周部153は前後方向への変位が不能とされている。
【0039】
支持部材160は、押圧部材132を支持するためのものであり、膜状の部材を蛇腹形状に形成して構成されている。この支持部材160は正面形状が環状に形成されており、その外周部が筐体110に固定されているとともに、内周部が押圧部材132に固定されている。また、蛇腹状に形成されているため、押圧部材132が変位したとしても内周部が押圧部材132の変位に追従して押圧部材132を継続的に支持することができるようになっている。
【0040】
ところで、制御手段200は、図2に示すように、各条件に応じて上述したバルブ31、搬送ポンプ33、及び駆動電流Iを制御するものである。例えば、車内2における所定の空気質成分の濃度を検出する検出センサを設け、この検出センサにより検出された空気質成分の濃度に基づいて、バルブ31、搬送ポンプ33、及びコイル142への駆動電流Iを制御することができる。具体的には、検出された空気質成分の濃度が所定濃度以下であるときには、車内2に空気質成分が不足していると判断し、空気砲Fを放出するためにバルブ31を開放して搬送ポンプ33を作動させた後、コイル142に駆動電流Iを供給する。
【0041】
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について説明する。制御手段200は、空気砲Fを放出するタイミングに合わせて、バルブ32、搬送ポンプ33、及び駆動電流Iの制御を行う。即ち、バルブ32を開くとともに搬送ポンプ33作動させて空気質成分チャンバ120内に空気質成分を供給する。そして、空気質成分チャンバ120内に空気質成分を供給し終えた後にコイル142に対して駆動電流Iを供給する。これにより、押圧部材132が圧縮部材131を前方に押圧することでこの圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位し、空気質成分チャンバ120内の空気が圧縮され、放出孔110Aから空気質成分を含んだ空気砲Fが乗員3,4に向けて放出される。
【0042】
圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位する過程では(図3から図4の状態に変位する過程では)、ダンパー150の内周部152が圧縮側に変位することでダンパー150が撓み変形し、その変形量は圧縮部材131の変位量とともに増大する。また、ダンパー150には、その撓み変形に伴って基準位置側への自己復帰力が発生し、撓み変形の変形量の増大に伴って基準位置側への自己復帰力も増大する。従って、圧縮部材131の変位量が増大すると、ダンパー150の自己復帰力も増大することとなり、圧縮部材131に対する基準位置側への規制力が増大する。
【0043】
本実施形態では、ダンパー150によって圧縮部材131の圧縮側への変位が規制されるため、圧縮部材131はダンパー150による規制力を受けつつ目標となる変位位置に到達することとなる。従って、駆動電流Iの立ち上がり後であっても、圧縮部材131はダンパー150によって基準位置側への規制力を受け続けるため、目標となる変位位置付近で圧縮手部材131が振動することがない。
【0044】
従って、本実施形態によれば、ダンパー150が圧縮部材131が圧縮側へ変位したときに、圧縮部材131に対して基準位置側への規制力を発揮するようにしているから、目標となる変位位置付近で圧縮部材131が振動する過渡ひずみの発生を防止し、もって、騒音発生を防止することができる。また、ダンパー150は、圧縮部材131の変位量に応じた規制力を発揮するから、圧縮部材131の変位量が増大した場合でも、これに伴って増大する過渡ひずみの振動を防止できる規制力が得られる。 また、本実施形態においては、ダンパー150を弾性材料であるゴム、ウレタン等により構成しているため、圧縮部材131の変位量に応じて基準位置側への弾発力が発揮され、これによって過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0045】
<変形例1>
本実施形態では、ダンパー150は、ゴム、ウレタン等の自己復帰力を有する可撓性材料を膜状に形成したものを用いて構成するようにしていたが、例えば、図5に示すように、突出部151から外周側にかけて蛇腹状に形成したものを用いても良い。このようにしても、圧縮部材131の変位量に応じて基準位置側への復帰力が発揮されるため、これによって過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0046】
<変形例2>
本実施形態では、駆動手段140を構成するマグネット141とコイル142とのうち、マグネット141を筐体110に固定し、コイル142を押圧部材132に一体化する構成としていたが、たとえば、図6に示すように、コイル142を筐体110に固定し、マグネット141を押圧部材132と一体化した構成としてもよい。これによれば、コイル142に駆動電流Iを供給することで発生するローレンツ力により、マグネット141と一体化された押圧部材132が前方へ付勢されるため、上記と同様に圧縮部材131が圧縮側に変位することとなる。
【0047】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。本実施形態では、ダンパー150を省略し、図7(A)に示すように、空気砲Fを放出させるための主パルスPmに、この主パルスPmの供給に起因して発生する過渡ひずみによる振動を防止するためのブレーキパルスPbを重畳したものを駆動電流Iとしてコイル142に供給する構成とした。
【0048】
このブレーキパルスPbは、主パルスPmの立ち上がり後に重畳される負のパルスと、主パルスPmの立ち下がり後に重畳される正のパルスとからなる。各ブレーキパルスPbのパルス振幅は、主パルスPmのパルス振幅に応じて決定されており、主パルスPmによる過渡ひずみで発生すると予測される圧縮部材131の振動を抑止するに適した振幅に設定される。また、主パルスPmの立ち上がり後及び立ち下がり後に重畳するブレーキパルスPbのパルス数についても、過渡ひずみによる圧縮部材131の振動を効果的に抑止することができるパルス数に設定される。また、各ブレーキパルスPbのパルス周期は、それぞれ同一としている。
【0049】
このように設定されたブレーキパルスPbを主パルスPmに重畳した駆動電流Iをコイル142に供給すると、図7(B)に示すように、主パルスPmの立ち上がりにおいて、圧縮部材131の変位は目標となる変位位置(目標変位位置)を越えることなく、ブレーキパルスPbによってその手前に止められる。従って、圧縮部材131は、ブレーキパルスPbによって圧縮側への変位が規制されるため、過渡ひずみに伴う圧縮部材131の振動が防止される。また、主パルスPmの立ち下がりにおいても、圧縮部材131の変位は基準位置を超えようとするが、ブレーキパルスPbによって基準位置側への変位が規制されるため、圧縮部材131の振動が防止される。 本実施形態によれば、主パルスPmに重畳されたブレーキパルスPbによって、圧縮部材131の圧縮側(基準位置側)への変位を規制するようにしているため、過渡ひずみに伴う圧縮部材131の振動発生を防止することができる。また、ブレーキパルスPbのパルス振幅を主パルスPmのパルス振幅に応じて決定しているため、主パルスPmのパルス振幅の大きさに応じて発生すると予測される圧縮部材131の振動を効果的に抑止することができる。
【0050】
<変形例1>
ブレーキパルスPbのパルス振幅及びパルス周期のうち少なくともいずれか一方を変更しても良い。各ブレーキパルスPbのパルス振幅は、図8(A)に示すように、後続パルスのパルス振幅を先行パルスのパルス振幅よりも小さく設定するようにすれば良い。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材131の振動は、目標変位位置に向かって減衰しながら収束するため、この振動の減衰に応じて後続パルスの振幅を先行パルスの振幅よりも小さくすれば、一層効果的に圧縮部材131の振動を防止することができる。
【0051】
また、各ブレーキパルスPbのパルス周期は、図8(B)に示すように、後続パルスのパルス周期を先行パルスのパルス周期よりも小さく設定するようにすれば良い。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材131の振動は、徐々に短くなるため、この周期変化に応じて後続パルスのパルス周期を先行パルスのパルス周期よりも小さくすれば、一層効果的に圧縮部材131の振動を防止することができる。
【0052】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について図9(A),(B)を参照して説明する。尚、上記第2の実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。本実施形態では、駆動電流Iの立ち上がり電流波形及び立ち下がり電流波形を、圧縮手段130が同期して変位可能な電流波形としている。
【0053】
ここでいう同期とは、駆動電流Iの立ち上がり変化及び立ち下がり変化と圧縮手段130の変位とが対応することであり、圧縮手段130の変位が駆動電流Iの立ち上がり変化及び立ち下がり変化に対して追従可能なことをいう。
【0054】
具体的には、駆動電流Iの立ち上がり電流波形を目標電流に対して漸近的に変化する電流波形としている。即ち、図示するように、駆動電流Iの立ち上がりにおいて、目標電流に近づくにつれて電流変化を小さくすることで、駆動電流Iが目標電流へ徐々に近づくような電流波形としている。このようにすれば、供給される駆動電流Iの電流変化に対して圧縮部材131の変位を確実に追従させることができるため、過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0055】
さらに、駆動電流Iの立ち下がり電流傾度を、予め設定した第2の傾度(図9(A)の破線)よりも小さい傾度に設定している。ここで、予め設定した第2の傾度とは、圧縮部材131の変位が駆動電流Iの立ち下がり変化と同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。
【0056】
これにより、駆動電流Iの立ち下がりに対して圧縮部材131が同期(追従)して変位するため、駆動電流Iの立ち下がりに追従できずに圧縮部材131が急激に変位することに起因する衝撃音の発生を抑制することができる。また、駆動電流Iの立ち下がりに対する応答遅れにより基準位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0057】
なお、立ち下がり電流傾度を第2の傾度とした場合、空気質成分チャンバ120が膨張することで放出孔110Aから空気質成分チャンバ120内に空気砲Fが発生し、さらに放出孔110Aから外部に空気砲Fが放出されることが知られている。
【0058】
従って、圧縮部材131を基準位置へ復帰させる際には、不要な空気砲Fの発生を防止するために、図示したように、立ち下がり電流傾度を第2の傾度よりも低く設定している。勿論、空気砲Fを連続的に放出したいなどの場合には、立ち下がり電流傾度を第2の傾度に設定しても良い。
【0059】
<変形例1>
本実施形態では、駆動電流Iの立ち上がり電流波形を、目標電流に対して漸近的に変化させるようにしていたが、図10に示すように、立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度に設定しても良い。ここで、第1の傾度とは、駆動電流の立ち上がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち上がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち上がりに応答することができずに目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0060】
尚、立ち上がり電流傾度は第1の傾度に限らず、空気砲Fを発生させることができれば、この第1の傾度よりも低い傾度に設定しても良い。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0062】
上記第1の実施形態では、ダンパー150の突出部151の形状を、押圧部材132のテーパ部132A全周に接触するような形状となるように構成したが、これに限られず、例えばテーパ部132Aの一部に接触するような形状であっても良い。また、ダンパー150を膜状以外の形状として、例えば棒状、薄板状のものとしても良い。
【0063】
また、上記第1の実施形態では、ダンパー150の内周側に突出部151を形成した構成を示したが、突出部151を形成せずに面一形状としても良い。
【0064】
また、上記第2の実施形態では、ブレーキパルスPbを2つ重畳した構成を示したが、重畳するブレーキパルスPbは1つあるいは3つ以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態に係る車両用空気質成分供給装置の車内配置を示した概略図である。
【図2】車両用空気質成分供給装置の全体構成を示した概念図である。
【図3】圧縮部材が基準位置にあるときの筐体内の構成を示した断面図である。
【図4】圧縮部材が圧縮側に変位したときの筐体内の構成を示した断面図である。
【図5】ダンパーの他の構成を示した筐体内断面図である(変形例1)。
【図6】コイル及びマグネットの他の配置位置を示した筐体内断面図である(変形例2)。
【図7】第2の実施形態において、(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【図8】(A)はブレーキパルスのパルス振幅変化を示した波形図である。(B)はブレーキパルスのパルス周期変化を示した波形図である。
【図9】第3の実施形態において、(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【図10】(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である(変形例1)。
【図11】(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【符号の説明】
【0066】
110…筐体
110A…放出孔(放出部)
120…空気質成分チャンバ
130…圧縮手段
131…圧縮部材
132…押圧部材
132A…テーパ部
140…駆動手段
141…マグネット
142…コイル
150…ダンパー(変位規制部材)
151…突出部
I…駆動電流
Pm…主パルス
Pb…ブレーキパルス
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空気質成分を車内に供給する車両用空気質成分供給装置に関し、特に、空気質成分供給時の騒音発生の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の空気質成分供給装置として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。これは、所定の空気質成分を保持する圧力室を介して放出孔と膜状の圧縮部材とを対向配置し、圧縮部材を放出孔に対して接近方向に変位させることで圧力室内にある空気質成分を含んだ空気を圧縮し、これによって放出孔から外部へ空気質成分を含んだ空気砲を放出する構成とされている。この圧縮部材には、マグネットと対をなすコイルが一体化されており、当該コイルに矩形波の駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により、この圧縮部材が放出孔に対して接近方向に変位するようになっている。
【特許文献1】特開2000−176339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来装置では、コイルに矩形波の駆動電流を供給しているため、圧縮部材の変位が矩形波に応答しきれずに、目標となる変位位置付近でこの圧縮部材が振動する過渡ひずみが発生する(図11(A),(B)参照)。この結果、過渡ひずみに起因する騒音が発生し、乗員に対して不快感を与えるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、空気砲放出時に発生する騒音を防止することができる車両用空気質成分供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段と、圧縮手段が圧縮側に変位する際に、圧縮手段に対して基準位置側への規制力を加える変位規制部材とを備えることを特徴としている。
【0006】
請求項1の発明によれば、圧縮手段が圧縮側に変位したときには、変位規制部材によって圧縮手段に対して基準位置側への規制力が加えられることとなる。このため、駆動電流に対する応答遅れに起因して圧縮手段が目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生が防止され、もって、騒音発生を防止することができる。
【0007】
請求項2の発明では、圧縮手段は、基準位置から圧縮側に変位可能な圧縮部材と、前記ローレンツ力を受けて圧縮部材を押圧する押圧部材とから構成されており、変位規制部材は、自己復帰力を有する可撓性部材により形成されており、一方側が押圧部材に接触して圧縮側に変位可能とされているとともに、他方側が圧縮側へ変位不能に固定されていることを特徴としている。
【0008】
本構成によれば、圧縮部材の圧縮側への変位に伴って押圧部材に接触した変位規制部材の一方側が圧縮側へ変位する。従って、圧縮部材の変位量の増大に伴って、変位規制部材の一方側の変位も増大することとなり、この変位規制部材の基準位置側への復帰力が増大する。このため、圧縮部材の変位量の増大に伴って圧縮部材に対する基準位置側への規制力が増大する。
【0009】
通常、圧縮部材の変位量が増大するに伴って、過渡ひずみにおける振動も増大するため、その変位量に応じた規制力が必要となるが、本構成では、上述したように、圧縮部材の変位量に応じた規制力が発揮されるから、変位量を増大した場合でも、これに伴って増大する過渡ひずみの振動を効果的に防止できる規制力が得られる。
【0010】
請求項3の発明では、変位規制部材は弾性材料により構成されていることを特徴としている。これによれば、圧縮部材の変位量に応じて基準位置側への弾発力が発揮されて圧縮部材の圧縮側への変位に対する規制力が増大するため、過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0011】
請求項4の発明では、変位規制部材は、一方側と他方側との間が蛇腹状に形成されていることを特徴としている。これによれば、圧縮部材の変位量に応じて基準位置側への復帰力が発揮されて圧縮部材の圧縮側への変位に対する規制力が増大するため、過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0012】
請求項5の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、コイルに供給する駆動電流は、空気砲を発生させるための主パルスに、ブレーキパルスを重畳したものであることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明によれば、ブレーキパルスによって、主パルスに対する応答遅れに起因する圧縮手段の振動による過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0014】
請求項6の発明では、ブレーキパルスのパルス振幅は、主パルスの振幅に応じた振幅とされていることを特徴としている。
【0015】
主パルスの振幅に応じて圧縮手段の変位量が決定されるため、主パルスの振幅に応じて過渡ひずみにおける圧縮手段の振動の大きさも異なる。このため、圧縮手段の振動の大きさに応じた振幅のブレーキパルスを重畳する必要がある。本構成では、ブレーキパルスの振幅を主パルスの振幅に応じた振幅としているため、圧縮手段の振動を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項7の発明では、ブレーキパルスのパルス振幅は、先行側のパルス振幅よりも後続側のパルス振幅のほうが小さくされていることを特徴としている。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材の振動は、目標となる変位位置に向かって減衰しながら収束するため、この振動の減衰に応じたブレーキパルスを重畳することが望ましい。本構成では、後続パルスの振幅を先行パルスの振幅よりも小さくしているから、一層効果的に圧縮部材の振動を防止することができる。
【0017】
請求項8の発明では、ブレーキパルスのパルス周期は、先行側のパルス周期よりも後続側のパルス周期のほうが短くされていることを特徴としている。過渡ひずみにおける圧縮部材の振動周期は徐々に短くなるため、この周期変化に応じたブレーキパルスを重畳することが望ましい。これに対して、本構成では、後続パルスの周期を先行パルスの周期よりも短くしているため、圧縮部材の振動を一層効果的に防止することができる。
【0018】
請求項9の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、基準位置から空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、駆動電流の立ち上がり電流波形又は/及び立ち下がり電流波形を、圧縮手段が同期して変位可能な電流波形としたことを特徴としている。
【0019】
請求項9に記載の同期とは、駆動電流の立ち上がり変化又は/及び立ち下がり変化と圧縮手段の変位とが対応することであり、圧縮手段の変位が駆動電流の立ち上がり変化又は/及び立ち下がり変化に対して追従可能なことをいう。従って、本構成では、圧縮手段の変位を駆動電流の立ち上がり又は/及び立ち下がり変化に同期(追従)させることができるため、駆動電流の変化に追従しきれずに目標となる変位位置(基準位置)付近で振動する過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0020】
請求項10の発明では、立ち上がり電流波形は、目標電流に対して漸近的に変化する電流波形であることを特徴としている。即ち、駆動電流の立ち上がりにおいて、目標電流に近づくにつれて電流変化を小さくすることで、駆動電流が目標電流へ徐々に近づくような電流波形としている。供給される駆動電流の電流変化に対して圧縮手段の圧縮側への変位を確実に追従させることができるため、過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0021】
請求項11の発明では、立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度以下としたことを特徴としている。
【0022】
請求項11に記載の、第1の傾度とは、駆動電流の立ち上がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち上がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち上がりに応答することができずに目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0023】
請求項12の発明では、立ち下がり電流波形において、その立ち下がり電流傾度を予め設定した第2の傾度以下としたことを特徴としている。
【0024】
請求項12に記載の第2の傾度とは、駆動電流の立ち下がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち下がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち下がりに応答することができずに基準位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1の実施形態>
本発明に係る車両用空気質成分供給装置の実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。本実施形態の車両用空気質成分供給装置は、自動車1の車内2に備えられた空気質成分放出手段10A〜10Cから所定の空気質成分を含んだ空気砲Fを放出することで、乗員3,4に対して個別に空気質成分を供給するものである。
【0026】
各空気質成分放出手段10A〜10Cは、図1に示すように、乗員3,4に向けて空気砲Fを放出可能な位置に配置されており、このうち、放出手段10Aはインストルメントパネル70内に、放出手段10Bは前席側天井部分に形成されるオーバーヘッドモジュール80内にそれぞれ配置されており、前席乗員3の方向に空気砲Fを放出する。また、放出手段10Cは、後席側天井部に配置されており、後席乗員4に対して空気砲Fを放出する。
【0027】
尚、本発明における空気砲Fは、ある空間に貯められた流体が圧縮されることにより、その空間に形成された放出口から押し出されて、流体の塊となって放出されるものを意図している。空気砲Fの形態としては、例えば、渦輪状、球体状などの形状の塊となって放出されるもの全般をいう。この空気砲Fは、乗員3,4に到達して顔や肩などに当たると、空気砲Fの塊が崩れるとともに含有されている空気質成分が拡散領域7,8内で拡散する。
【0028】
各空気質成分放出手段10A〜10Cは、図2に示すように、搬送手段30により空気質成分貯留手段20に貯留された空気質成分を受給可能とされている。このうち、空気質成分貯留手段20は、湿度成分、芳香成分等の所定の空気質成分を貯留封入するタンクにより構成されている。また、搬送手段30は、空気質成分貯留手段20と気質成分放出手段10A〜10C内の空気質成分チャンバ120(これについては後述する)とを連結する連結チューブ31と、連結チューブ31を開閉するバルブ32と、空気質成分貯留手段20内の空気質成分を空気質成分チャンバ120に搬送する搬送ポンプ33とから構成されている。
【0029】
このうち、バルブ32は後述する制御手段200からの駆動信号に基づいて開閉動作するものであり、これが開状態とされているときには空気質成分貯留手段20内の空気質成分が連結チューブ33に流れ込む。搬送ポンプ33は、同じく制御手段200からの駆動信号を受けて動作するものであって、連結チューブ32内に滞留している空気質成分成分を空気質供給チャンバ120に送り込む。
【0030】
空気質成分放出手段10A〜10Cは、図3に示すように、筐体110内に、空気質成分を保持する空気質成分チャンバ120と、この空気質成分チャンバ120内の空気を圧縮する圧縮手段130と、圧縮手段130を駆動する駆動手段140と、圧縮手段130の変位を規制するダンパー150(変位規制部材)と、押圧部材132を支持する支持部材160を備えて構成されている。
【0031】
筐体110は、例えば円柱形状をなしており、前面には空気砲Fが車内2に放出される円形の放出孔110A(放出部)が形成されている。空気質成分チャンバ120は、連結チューブ31によって空気質成分貯留手段20と連結されており、バルブ32及び搬送ポンプ33の動作によって空気質成分を受給可能とされている。従って、空気質成分チャンバ120内には、空気質成分を含有する空気が保持される。
【0032】
圧縮手段130は、放出孔110Aに対して対向配置され、この放出孔110Aに対して相対変位可能な膜状の圧縮部材131と、圧縮部材131を圧縮側に押圧する押圧部材132とから構成されている。
【0033】
圧縮部材131は、円形形状をなしており、外周部が筐体110に固定されている。また、外周側にはエッジ部131Aが形成されており、当該圧縮部材131の前後方向への変位が許容されるようになっている。従って、圧縮部材131は、放出孔110Aに対して所定の離間距離を隔てた基準位置(図3参照。ダンパー150の撓み変形が発生しない位置。)から、空気質成分チャンバ120を押し縮める圧縮側(前方側)に変位可能とされている(図4参照)。従って、圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位することにより、空気質成分チャンバ120内の空気が圧縮され、これによって放出孔110Aから空気質成分を含んだ空気砲Fが放出される。
【0034】
押圧部材132は、円筒形状に形成されており、先端側には圧縮側に先細り形状をなすテーパ部132Aを有しているとともに、基端側には後述する駆動手段140を構成するコイル142がらせん状に巻回されている。この押圧部材132の先端は圧縮部材131と一体化されている。
【0035】
駆動手段140は、筐体110に固定されたマグネット141と、このマグネット141と対をなし、押圧部材132に一体化されるコイル142とから構成されている。円柱状に形成されたマグネット141は、前方に突き出した姿勢で筐体110の後面に保持固定されており、押圧部材132の後方側からその内部に進入している。コイル142は、押圧部材132の基端側にらせん状に巻回されていることで、マグネット141を取り巻くように配置されており、後述する制御手段200からの駆動電流Iの供給を受けるようになっている。
【0036】
従って、コイル142に駆動電流Iが供給された場合には、マグネット141が形成する磁界によってローレンツ力が発生し、このローレンツ力によってコイル142に対して前方への付勢力が作用することで、コイル142と一体化された押圧部材132が圧縮部材131を押圧し、結果として圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位する。また、駆動電流Iが途絶えるとコイル142に対する前方への付勢力が消滅し、圧縮部材131が基準位置へ復帰するようになっている。
【0037】
尚、コイル142に供給される駆動電流Iは、空気砲Fを発生させるに必要な電流波形とされており、例えば、矩形波電流が供給されるようになっている。また、矩形波電流の振幅によって発生するローレンツ力が決定されるため、この矩形波電流の振幅によって圧縮部材131の変位量が決定される。
【0038】
ダンパー150は、ゴム、ウレタン等の自己復帰力を有する可撓性材料を膜状に形成したものであり、その中心側には、前方に傾斜突出した台形形状の突出部151が形成されているとともに、突出部151の中心にテーパ部132Aの前後中央位置の断面形状と略同一形状の開口が形成されている。また、ダンパー150の中心部分に形成された開口には押圧部材132が後方側から挿通されてダンパー150の内周部152(一方側)がこの押圧部材132のテーパ部132Aに接触しているとともに、外周部153(他方側)は筐体110に保持固定されている。従って、ダンパー150の内周部152は、押圧部材131とともに前後方向に変位可能とされており、外周部153は前後方向への変位が不能とされている。
【0039】
支持部材160は、押圧部材132を支持するためのものであり、膜状の部材を蛇腹形状に形成して構成されている。この支持部材160は正面形状が環状に形成されており、その外周部が筐体110に固定されているとともに、内周部が押圧部材132に固定されている。また、蛇腹状に形成されているため、押圧部材132が変位したとしても内周部が押圧部材132の変位に追従して押圧部材132を継続的に支持することができるようになっている。
【0040】
ところで、制御手段200は、図2に示すように、各条件に応じて上述したバルブ31、搬送ポンプ33、及び駆動電流Iを制御するものである。例えば、車内2における所定の空気質成分の濃度を検出する検出センサを設け、この検出センサにより検出された空気質成分の濃度に基づいて、バルブ31、搬送ポンプ33、及びコイル142への駆動電流Iを制御することができる。具体的には、検出された空気質成分の濃度が所定濃度以下であるときには、車内2に空気質成分が不足していると判断し、空気砲Fを放出するためにバルブ31を開放して搬送ポンプ33を作動させた後、コイル142に駆動電流Iを供給する。
【0041】
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について説明する。制御手段200は、空気砲Fを放出するタイミングに合わせて、バルブ32、搬送ポンプ33、及び駆動電流Iの制御を行う。即ち、バルブ32を開くとともに搬送ポンプ33作動させて空気質成分チャンバ120内に空気質成分を供給する。そして、空気質成分チャンバ120内に空気質成分を供給し終えた後にコイル142に対して駆動電流Iを供給する。これにより、押圧部材132が圧縮部材131を前方に押圧することでこの圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位し、空気質成分チャンバ120内の空気が圧縮され、放出孔110Aから空気質成分を含んだ空気砲Fが乗員3,4に向けて放出される。
【0042】
圧縮部材131が基準位置から圧縮側に変位する過程では(図3から図4の状態に変位する過程では)、ダンパー150の内周部152が圧縮側に変位することでダンパー150が撓み変形し、その変形量は圧縮部材131の変位量とともに増大する。また、ダンパー150には、その撓み変形に伴って基準位置側への自己復帰力が発生し、撓み変形の変形量の増大に伴って基準位置側への自己復帰力も増大する。従って、圧縮部材131の変位量が増大すると、ダンパー150の自己復帰力も増大することとなり、圧縮部材131に対する基準位置側への規制力が増大する。
【0043】
本実施形態では、ダンパー150によって圧縮部材131の圧縮側への変位が規制されるため、圧縮部材131はダンパー150による規制力を受けつつ目標となる変位位置に到達することとなる。従って、駆動電流Iの立ち上がり後であっても、圧縮部材131はダンパー150によって基準位置側への規制力を受け続けるため、目標となる変位位置付近で圧縮手部材131が振動することがない。
【0044】
従って、本実施形態によれば、ダンパー150が圧縮部材131が圧縮側へ変位したときに、圧縮部材131に対して基準位置側への規制力を発揮するようにしているから、目標となる変位位置付近で圧縮部材131が振動する過渡ひずみの発生を防止し、もって、騒音発生を防止することができる。また、ダンパー150は、圧縮部材131の変位量に応じた規制力を発揮するから、圧縮部材131の変位量が増大した場合でも、これに伴って増大する過渡ひずみの振動を防止できる規制力が得られる。 また、本実施形態においては、ダンパー150を弾性材料であるゴム、ウレタン等により構成しているため、圧縮部材131の変位量に応じて基準位置側への弾発力が発揮され、これによって過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0045】
<変形例1>
本実施形態では、ダンパー150は、ゴム、ウレタン等の自己復帰力を有する可撓性材料を膜状に形成したものを用いて構成するようにしていたが、例えば、図5に示すように、突出部151から外周側にかけて蛇腹状に形成したものを用いても良い。このようにしても、圧縮部材131の変位量に応じて基準位置側への復帰力が発揮されるため、これによって過渡ひずみを効果的に防止することができる。
【0046】
<変形例2>
本実施形態では、駆動手段140を構成するマグネット141とコイル142とのうち、マグネット141を筐体110に固定し、コイル142を押圧部材132に一体化する構成としていたが、たとえば、図6に示すように、コイル142を筐体110に固定し、マグネット141を押圧部材132と一体化した構成としてもよい。これによれば、コイル142に駆動電流Iを供給することで発生するローレンツ力により、マグネット141と一体化された押圧部材132が前方へ付勢されるため、上記と同様に圧縮部材131が圧縮側に変位することとなる。
【0047】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。尚、上記第1の実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。本実施形態では、ダンパー150を省略し、図7(A)に示すように、空気砲Fを放出させるための主パルスPmに、この主パルスPmの供給に起因して発生する過渡ひずみによる振動を防止するためのブレーキパルスPbを重畳したものを駆動電流Iとしてコイル142に供給する構成とした。
【0048】
このブレーキパルスPbは、主パルスPmの立ち上がり後に重畳される負のパルスと、主パルスPmの立ち下がり後に重畳される正のパルスとからなる。各ブレーキパルスPbのパルス振幅は、主パルスPmのパルス振幅に応じて決定されており、主パルスPmによる過渡ひずみで発生すると予測される圧縮部材131の振動を抑止するに適した振幅に設定される。また、主パルスPmの立ち上がり後及び立ち下がり後に重畳するブレーキパルスPbのパルス数についても、過渡ひずみによる圧縮部材131の振動を効果的に抑止することができるパルス数に設定される。また、各ブレーキパルスPbのパルス周期は、それぞれ同一としている。
【0049】
このように設定されたブレーキパルスPbを主パルスPmに重畳した駆動電流Iをコイル142に供給すると、図7(B)に示すように、主パルスPmの立ち上がりにおいて、圧縮部材131の変位は目標となる変位位置(目標変位位置)を越えることなく、ブレーキパルスPbによってその手前に止められる。従って、圧縮部材131は、ブレーキパルスPbによって圧縮側への変位が規制されるため、過渡ひずみに伴う圧縮部材131の振動が防止される。また、主パルスPmの立ち下がりにおいても、圧縮部材131の変位は基準位置を超えようとするが、ブレーキパルスPbによって基準位置側への変位が規制されるため、圧縮部材131の振動が防止される。 本実施形態によれば、主パルスPmに重畳されたブレーキパルスPbによって、圧縮部材131の圧縮側(基準位置側)への変位を規制するようにしているため、過渡ひずみに伴う圧縮部材131の振動発生を防止することができる。また、ブレーキパルスPbのパルス振幅を主パルスPmのパルス振幅に応じて決定しているため、主パルスPmのパルス振幅の大きさに応じて発生すると予測される圧縮部材131の振動を効果的に抑止することができる。
【0050】
<変形例1>
ブレーキパルスPbのパルス振幅及びパルス周期のうち少なくともいずれか一方を変更しても良い。各ブレーキパルスPbのパルス振幅は、図8(A)に示すように、後続パルスのパルス振幅を先行パルスのパルス振幅よりも小さく設定するようにすれば良い。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材131の振動は、目標変位位置に向かって減衰しながら収束するため、この振動の減衰に応じて後続パルスの振幅を先行パルスの振幅よりも小さくすれば、一層効果的に圧縮部材131の振動を防止することができる。
【0051】
また、各ブレーキパルスPbのパルス周期は、図8(B)に示すように、後続パルスのパルス周期を先行パルスのパルス周期よりも小さく設定するようにすれば良い。通常、過渡ひずみにおける圧縮部材131の振動は、徐々に短くなるため、この周期変化に応じて後続パルスのパルス周期を先行パルスのパルス周期よりも小さくすれば、一層効果的に圧縮部材131の振動を防止することができる。
【0052】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について図9(A),(B)を参照して説明する。尚、上記第2の実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。本実施形態では、駆動電流Iの立ち上がり電流波形及び立ち下がり電流波形を、圧縮手段130が同期して変位可能な電流波形としている。
【0053】
ここでいう同期とは、駆動電流Iの立ち上がり変化及び立ち下がり変化と圧縮手段130の変位とが対応することであり、圧縮手段130の変位が駆動電流Iの立ち上がり変化及び立ち下がり変化に対して追従可能なことをいう。
【0054】
具体的には、駆動電流Iの立ち上がり電流波形を目標電流に対して漸近的に変化する電流波形としている。即ち、図示するように、駆動電流Iの立ち上がりにおいて、目標電流に近づくにつれて電流変化を小さくすることで、駆動電流Iが目標電流へ徐々に近づくような電流波形としている。このようにすれば、供給される駆動電流Iの電流変化に対して圧縮部材131の変位を確実に追従させることができるため、過渡ひずみの発生を防止することができる。
【0055】
さらに、駆動電流Iの立ち下がり電流傾度を、予め設定した第2の傾度(図9(A)の破線)よりも小さい傾度に設定している。ここで、予め設定した第2の傾度とは、圧縮部材131の変位が駆動電流Iの立ち下がり変化と同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。
【0056】
これにより、駆動電流Iの立ち下がりに対して圧縮部材131が同期(追従)して変位するため、駆動電流Iの立ち下がりに追従できずに圧縮部材131が急激に変位することに起因する衝撃音の発生を抑制することができる。また、駆動電流Iの立ち下がりに対する応答遅れにより基準位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0057】
なお、立ち下がり電流傾度を第2の傾度とした場合、空気質成分チャンバ120が膨張することで放出孔110Aから空気質成分チャンバ120内に空気砲Fが発生し、さらに放出孔110Aから外部に空気砲Fが放出されることが知られている。
【0058】
従って、圧縮部材131を基準位置へ復帰させる際には、不要な空気砲Fの発生を防止するために、図示したように、立ち下がり電流傾度を第2の傾度よりも低く設定している。勿論、空気砲Fを連続的に放出したいなどの場合には、立ち下がり電流傾度を第2の傾度に設定しても良い。
【0059】
<変形例1>
本実施形態では、駆動電流Iの立ち上がり電流波形を、目標電流に対して漸近的に変化させるようにしていたが、図10に示すように、立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度に設定しても良い。ここで、第1の傾度とは、駆動電流の立ち上がり変化に対して圧縮手段の変位が同期可能(追従可能)な限界の傾度のことである。従って、駆動電流の立ち上がりに対して圧縮部材の変位を同期(追従)させることができるため、駆動電流の立ち上がりに応答することができずに目標となる変位位置付近で振動する過渡ひずみの発生を抑止することができる。
【0060】
尚、立ち上がり電流傾度は第1の傾度に限らず、空気砲Fを発生させることができれば、この第1の傾度よりも低い傾度に設定しても良い。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0062】
上記第1の実施形態では、ダンパー150の突出部151の形状を、押圧部材132のテーパ部132A全周に接触するような形状となるように構成したが、これに限られず、例えばテーパ部132Aの一部に接触するような形状であっても良い。また、ダンパー150を膜状以外の形状として、例えば棒状、薄板状のものとしても良い。
【0063】
また、上記第1の実施形態では、ダンパー150の内周側に突出部151を形成した構成を示したが、突出部151を形成せずに面一形状としても良い。
【0064】
また、上記第2の実施形態では、ブレーキパルスPbを2つ重畳した構成を示したが、重畳するブレーキパルスPbは1つあるいは3つ以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態に係る車両用空気質成分供給装置の車内配置を示した概略図である。
【図2】車両用空気質成分供給装置の全体構成を示した概念図である。
【図3】圧縮部材が基準位置にあるときの筐体内の構成を示した断面図である。
【図4】圧縮部材が圧縮側に変位したときの筐体内の構成を示した断面図である。
【図5】ダンパーの他の構成を示した筐体内断面図である(変形例1)。
【図6】コイル及びマグネットの他の配置位置を示した筐体内断面図である(変形例2)。
【図7】第2の実施形態において、(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【図8】(A)はブレーキパルスのパルス振幅変化を示した波形図である。(B)はブレーキパルスのパルス周期変化を示した波形図である。
【図9】第3の実施形態において、(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【図10】(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である(変形例1)。
【図11】(A)はコイルに供給される駆動電流波形を示した波形図である。(B)は圧縮部材の変位を示した波形図である。
【符号の説明】
【0066】
110…筐体
110A…放出孔(放出部)
120…空気質成分チャンバ
130…圧縮手段
131…圧縮部材
132…押圧部材
132A…テーパ部
140…駆動手段
141…マグネット
142…コイル
150…ダンパー(変位規制部材)
151…突出部
I…駆動電流
Pm…主パルス
Pb…ブレーキパルス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段と、
前記圧縮手段が前記圧縮側に変位する際に、前記圧縮手段に対して前記基準位置側への規制力を加える変位規制部材とを備えることを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項2】
前記圧縮手段は、
前記基準位置から前記圧縮側に変位可能な圧縮部材と、前記ローレンツ力を受けて前記圧縮部材を押圧する押圧部材とから構成されており、
前記変位規制部材は、自己復帰力を有する可撓性部材により形成されており、一方側が前記押圧部材に接触して前記圧縮側に変位可能とされているとともに、他方側が前記圧縮側へ変位不能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項3】
前記変位規制部材は弾性材料により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項4】
前記変位規制部材は、前記一方側と前記他方側との間が蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項5】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、
前記コイルに供給する駆動電流は、前記空気砲を発生させるための主パルスに、ブレーキパルスを重畳したものであることを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項6】
前記ブレーキパルスのパルス振幅は、主パルスの振幅に応じた振幅とされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項7】
前記ブレーキパルスのパルス振幅は、先行側のパルス振幅よりも後続側のパルス振幅のほうが小さくされていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項8】
前記ブレーキパルスのパルス周期は、先行側のパルス周期よりも後続側のパルス周期のほうが短くされていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項9】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、
前記駆動電流の立ち上がり電流波形又は/及び立ち下がり電流波形を、前記圧縮手段が同期して変位可能な電流波形としたことを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項10】
前記立ち上がり電流波形は、目標電流に対して漸近的に変化する電流波形であることを特徴とする請求項9に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項11】
前記立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度以下としたことを特徴とする請求項9に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項12】
前記立ち下がり電流波形において、その立ち下がり電流傾度を予め設定した第2の傾度以下としたことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項1】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段と、
前記圧縮手段が前記圧縮側に変位する際に、前記圧縮手段に対して前記基準位置側への規制力を加える変位規制部材とを備えることを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項2】
前記圧縮手段は、
前記基準位置から前記圧縮側に変位可能な圧縮部材と、前記ローレンツ力を受けて前記圧縮部材を押圧する押圧部材とから構成されており、
前記変位規制部材は、自己復帰力を有する可撓性部材により形成されており、一方側が前記押圧部材に接触して前記圧縮側に変位可能とされているとともに、他方側が前記圧縮側へ変位不能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項3】
前記変位規制部材は弾性材料により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項4】
前記変位規制部材は、前記一方側と前記他方側との間が蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項5】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、
前記コイルに供給する駆動電流は、前記空気砲を発生させるための主パルスに、ブレーキパルスを重畳したものであることを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項6】
前記ブレーキパルスのパルス振幅は、主パルスの振幅に応じた振幅とされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項7】
前記ブレーキパルスのパルス振幅は、先行側のパルス振幅よりも後続側のパルス振幅のほうが小さくされていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項8】
前記ブレーキパルスのパルス周期は、先行側のパルス周期よりも後続側のパルス周期のほうが短くされていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項9】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
所定の空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
基準位置から前記空気質成分チャンバを押し縮める圧縮側に変位することで前記空気質成分チャンバに保持された空気質成分を含む空気を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
マグネットと対をなすコイルに駆動電流を供給することで発生するローレンツ力により前記圧縮手段を変位させる駆動手段とを備え、
前記駆動電流の立ち上がり電流波形又は/及び立ち下がり電流波形を、前記圧縮手段が同期して変位可能な電流波形としたことを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項10】
前記立ち上がり電流波形は、目標電流に対して漸近的に変化する電流波形であることを特徴とする請求項9に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項11】
前記立ち上がり電流波形において、その立ち上がり電流傾度を予め設定した第1の傾度以下としたことを特徴とする請求項9に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項12】
前記立ち下がり電流波形において、その立ち下がり電流傾度を予め設定した第2の傾度以下としたことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−261371(P2007−261371A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87865(P2006−87865)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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