説明

車両用空調制御装置

【課題】高濃度の冷媒ガスが、乗員に吸い込まれることを防止できる車両用空調制御装置を提供すること。
【解決手段】ユニットハウジング1hに設けられ、送風路18に送風を形成する送風機4と、送風路18の送風を冷却可能な冷却器5を備え、空気よりも比重の重い冷媒ガスを用いた冷凍サイクル50と、複数の吹出口の吹出モードを、フット吹出口12bを開いたフットモード、およびフット吹出口12bよりも相対的に乗員の顔に近い位置に送風を行う吹出口を開いた他の吹出口モードを形成可能な各ドア15a.15b.15cと、各ドア15a,15b,15cの作動、送風機4の作動を含む装置の作動を制御するコントロールユニット2と、を備え、コントロールユニット2は、送風機4の運転開始時に、吹出口モードをフットモードとする送風開始時吹出口処理を実行することを特徴とする車両用空調制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置に関し、特に、冷媒としてCOを用いたものに好適な車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用空調制御装置の冷媒として、COなどの自然冷媒を用いるものが開発されている。
このようなCO冷媒を用いた空調装置では、従来のフロンガスを用いたものよりも高圧で使用されるため、フロンガスを用いたものよりも冷媒漏れが問題となる。
そこで、従来、車室内のCOセンサによりCO濃度を検出し、CO濃度が設定濃度を超えると、外気導入に切り換えて、車室内のCO濃度が高くならないようにしたものが、例えば、特許文献1などにより知られている。この従来技術を用いれば、冷媒としてCOを使用した場合に、CO漏れが生じても、車室内のCO濃度が高くなるのを防止できる。
【特許文献1】特公昭62−4248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のようなCO漏れが、車両用空調制御装置を作動させていない駐車中などに生じた場合、COは比重が空気よりも重いことから、拡散せずに車両用空調制御装置のユニットハウジング内に溜まるおそれがある。
そして、このように、ユニットハウジング内に冷媒ガスが溜まった状態では、上述の車室内に設けられたCOセンサでは検出できず、しかも、空調装置の送風開始時に、高濃度の冷媒ガスが車室内に吹き出され、これを乗員が吸い込むおそれがある。
【0004】
本発明は、上述の従来の問題点に着目して成されたもので、冷媒ガス漏れが生じても、高濃度の冷媒ガスが、乗員に吸い込まれることを防止できる車両用空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、空気取入口から車室側の複数の吹出口に至る送風路を有したユニットハウジングと、このユニットハウジングに設けられ、前記送風路に送風を形成する送風機と、前記送風路の送風を冷却可能な冷却器を備え、空気よりも比重の重い冷媒ガスを用いた冷凍サイクルと、前記複数の吹出口の吹出モードを、相対的に乗員の顔に近い位置に送風を行う第1吹出口を開いた第1吹出口モード、および相対的に乗員の顔から離れた位置に送風を行う第2吹出口を開いた第2吹出口モードを形成可能な吹出口ドアと、前記吹出口ドアの作動、前記送風機の作動を含む装置の作動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記送風機の運転開始時に、前記吹出口モードを第2吹出口モードとする送風開始時吹出口処理を実行することを特徴とする車両用空調制御装置とした。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調制御装置において、前記空気取入口のインテークモードを、外気導入モードと内気循環モードとに切り換え可能なインテークドアを備え、前記制御装置が、前記送風開始時吹出口処理時に、前記第2吹出口モードとするのに加え、前記インテークモードを外気導入モードとすることを特徴とする車両用空調制御装置とした。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の車両用空調制御装置において、前記送風開始時吹出口処理は、処理開始後、前記ユニットハウジング内の空気容量相当の空気を吹き出すことが可能な時間に設定された設定時間が経過したら、処理を終了し、あらかじめ設定された通常制御に移行することを特徴とする車両用空調制御装置とした。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置において、前記送風開始時吹出口処理が、イグニッションスイッチをONとしたときに、前記送風機を駆動させる操作を行う送風機スイッチがONとなっている場合、現在の吹出口モードが第2吹出口モードであるか否か判定し、前記第2吹出口モードでない場合に、前記第2吹出口モードに切り換える処理を含むことを特徴とする車両用空調制御装置とした。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置において、前記第2吹出口モードが、乗員の足元に向けて送風を吹き出すフット吹出口から送風を行うフットモードであり、前記第1吹出口モードが、前記フットモード以外のモードであることを特徴とする車両用空調制御装置とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両用空調制御装置では、車両用空調制御装置の送風機の運転開始時に、送風開始時吹出口処理が実行されて、吹出口モードが、第2吹出口モードとされて第2吹出口から乗員の顔から離れた位置に送風される。
したがって、ユニットハウジングに空気よりも比重の重い冷媒ガスが漏れて溜まっていたとしても、高濃度の冷媒ガスは、乗員の顔から離れた位置に送風されて拡散され、乗員が、高濃度の冷媒ガスを直接吸い込むことを防止できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、送風開始時吹出口処理の実行時に、インテークドアを外気導入モードとするため、冷媒ガスを含まない空気を確実にユニットハウジング内に取り入れることができ、車室内に吹き出した冷媒ガスを再度取り入れるおそれのある内気循環モードで送風開始時吹出口処理を実行するのと比較して、車室内の冷媒ガス濃度を低下させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、送風開始時吹出口処理は、処理開始後、ユニットハウジング内の空気容量相当の空気を吹き出すことが可能な設定時間が経過したら処理を終了し、その後、通常制御に移行する。
したがって、ユニットハウジング内に溜まった冷媒ガスを確実にユニットハウジング外部に吹き出すだけ送風機を駆動させたら、通常制御に移行するため、設定と異なる吹出口モードの送風により、乗員に違和感を与えることが生じるおそれを抑えることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、ユニットハウジング内に冷媒が溜まっている場合、イグニッションスイッチをONとした後の送風機の始動時に、確実に第2吹出口モードで、乗員の顔から離れた位置に吹き出すことができる。
すなわち、送風機スイッチをOFFにしている場合には、車両の運転開始後、走行風による換気などに伴い、ユニットハウジング内に漏れた冷媒は、徐々に車室内に拡散される可能性がある。これに対し、エンジンの始動直後の送風機の運転開始時には、最も高濃度の冷媒ガスが吹き出されるおそれが高い。
この高濃度の冷媒ガスを、確実に乗員の顔から離れた位置に向けて吹き出すことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、送風開始時吹出口処理の実行時には、冷媒漏れが発生していた場合、空気よりも比重の重い冷媒ガスがフット吹出口から吹き出され、乗員の顔から遠い足元で拡散され、冷媒ガスを乗員が吸い込む可能性をいっそう低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施の形態の車両用空調制御装置は、空気取入口(11)から車室側の複数の吹出口(12a,12b,12c)に至る送風路(18)を有したユニットハウジング(1h)と、このユニットハウジング(1h)に設けられ、前記送風路(18)に送風を形成する送風機(4)と、前記送風路(18)の送風を冷却可能な冷却器(5)を備え、空気よりも比重の重い冷媒ガスを用いた冷凍サイクル(50)と、前記複数の吹出口(12a,12b,12c)の吹出モードを、相対的に乗員の顔に近い位置に送風を行う第1吹出口を開いた第1吹出口モード、および相対的に乗員の顔から離れた位置に送風を行う第2吹出口を開いた第2吹出口モードを形成可能な吹出口ドア(15a,15b,15c)と、前記吹出口ドアの作動、前記送風機の作動を含む装置の作動を制御する制御装置(2)と、を備え、前記制御装置(2)は、前記送風機(4)の運転開始時に、前記吹出口モードを第2吹出口モードとする送風開始時吹出口処理を実行することを特徴とする車両用空調制御装置である。
【実施例1】
【0016】
以下に、図1および図2に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用空調制御装置Aについて説明する。
図1は車両用空調制御装置Aの構成の概略を示す全体概略図であって、この車両用空調制御装置Aは、空調ユニット1とコントロールユニット(制御装置)2とセンサ群3とを備えている。
【0017】
空調ユニット1は、図示を省略したインストルメントパネル内に設置されたユニットハウジング1hを備えている。
このユニットハウジング1hは、樹脂などにより箱状に形成されており、内外気を選択的に取入可能な空気取入口11から、車室内に繋がる各種ダクトが接続されるデフ吹出口12a,フット吹出口12b,ベント吹出口12cに至る送風路18を備えている。
【0018】
この送風路18には、送風上流側から順に、空気取入口11から各吹出口12a〜12cへ向かう送風を形成する送風機4と、送風を冷却する冷却器5と、送風を加熱する加熱器6と、が設置されている。
【0019】
冷却器5は、周知の冷媒を循環する冷凍サイクル50の構成要素の一つである。この冷凍サイクル50は、冷媒が冷媒循環路51に沿って、コンプレッサ52、コンデンサ53、膨張弁54、冷却器5、アキュムレータ55の順で循環するよう構成されている。
なお、本実施例1では、冷媒としてCOガスを用いている。
【0020】
さらに、ユニットハウジング1hには、インテークドア13、エアミックスドア14、デフドア15a、フットドア15b、ベントドア15cが設けられている。
なお、インテークドア13は、空気取入口11に取り付けられ、インテークドアアクチュエータ13aの駆動により、内気取入口11aを全閉にして外気取入口11bから外気のみを取り入れる外気導入モードと、これとは逆に、外気取入口11bを全閉にして内気取入口11aから内気のみを取り入れる内気循環モードと、に切り換え可能となっている。なお、インテークドア13を、内気循環モードと外気導入モードとの中間位置に配置し、内気と外気との両方を取り入れる中間モードを形成可能としてもよい。
【0021】
エアミックスドア14は、エアミックスドアアクチュエータ14aの駆動により開度を変更することで、冷却器5を通過した冷風と、加熱器6を通過した温風との混合割合を調節して、空調ユニット1からの吹出空気温度を調節可能とするドアである。
【0022】
デフドア15a、フットドア15b、ベントドア15cドアは、それぞれ、デフ吹出口12a、フット吹出口12b、ベント吹出口12cを開閉するドアであり、ドアモードアクチュエータ16により駆動される。これにより空調ユニット1の吹出口モードは、デフ吹出口12aを開いたデフモード、ベント吹出口12cを開いたベントモード、フット吹出口12bを開いたフットモード、ベント吹出口12cとフット吹出口12bを開いたバイレベルモードとに切り換えることができる。
本実施例1では、乗員の顔から最も遠いフット吹出口12bが第2吹出口に相当し、このフット吹出口12bのみを開いたフットモードが第2吹出口モードに相当する。
一方、この第2吹出口であるフット吹出口12b以外の、デフ吹出口12a、ベント吹出口12cを、フット吹出口12bに対して吹出方向が相対的に乗員の顔に近い第1吹出口に相当し、これらの吹出口12a,12cを開いたデフモード、ベントモード、バイレベルモードが、第1吹出口モードに相当する。
【0023】
センサ群3には、操作スイッチ31、内気温センサ32、外気温センサ33、日射センサ34、水温センサ35、車速センサ36、COセンサ37が含まれている。
操作スイッチ31は、図示は省略するが、風量を設定するファンスイッチ(送風機スイッチ)、車室温度を設定する温度設定スイッチ、インテークドア13のモードを設定するインテークモード設定スイッチ、吹出口モードを設定する吹出口モード設定スイッチ、冷凍サイクルのON・OFFを設定するエアコンスイッチなどを備えている。
なお、周知のように、内気温センサ32は、車室内の温度を検出するセンサ、外気温センサ33は、車外温度を検出するセンサ、日射センサ34は、日射量を検出するセンサ、水温センサ35は、エンジン冷却水温度を検出するセンサ、車速センサ36は、車両の走行速度を検出するセンサ、COセンサ37は、車室内のCO濃度を検出するセンサである。
なお、COセンサ37は、車室内において、内気温センサ32あるいは日射センサ34と共に1個のセンサユニットとして組み付けられている。
【0024】
コントロールユニット2は、センサ群3からの入力に基づいて空調ユニット1の作動を制御するもので、通常空調制御処理および送風開始時吹出口処理を実行する。なお、コントロールユニット2は、図示のようにイグニッションスイッチ7に接続されている。
【0025】
通常空調制御処理は、乗員が操作スイッチ31を操作して設定された風量、設定温度、インテークモード、吹出口モードなどを含むセンサ群3からの入力に応じ、あらかじめ入力されている制御プログラムに基づいて、吹出空気温度、吹出風量、吹出モード、インテークモードなどを最適に調節する制御である。なお、この通常空調制御処理は、周知の制御であり本願の要旨とするものではないため、詳細な説明は省略する。
【0026】
送風開始時吹出口処理は、送風機4の運転を開始して、空調ユニット1から送風を開始する場合に、設定時間、フットモードで送風を行う処理であって、この送風開始時吹出口処理の詳細を図2のフローチャートにより説明する。
ステップS1では、イグニッションスイッチ7がONであるか否か判定し、ONに切り換った時点でステップS2に進む。
【0027】
ステップS2では、操作スイッチ31の送風機スイッチがONであるか否か判定し、ONの場合には、ステップS3に進み、OFFの場合には、ステップS20の通常空調制御処理に進む。
【0028】
ステップS3では、吹出口モードがフットモードに設定されているか否か判定し、フットモードの場合には、ステップS20の通常空調制御処理に進み、フットモード以外のモードの場合は、ステップS4に進む。
【0029】
ステップS4では、吹出口モードを、フットモードに切り換える信号をドアモードアクチュエータ16に出力する。
【0030】
続くステップS5では、インテークモードが内気循環モードであるか否か判定し、内気循環モードである場合は、ステップS6に進んで、インテークモードを、外気導入モードに制御する信号を、インテークドアアクチュエータ13aに出力する。
【0031】
次のステップS7では、吹出口モードおよびインテークモードが切り換る第1設定時間t1を待った後、送風機4を駆動させる出力を行う。この時点で、空調ユニット1内の送風機4の回転が開始される。
【0032】
次のステップS8では、第2設定時間t2の設定を行う。第2設定時間t2は、ユニットハウジング1h内の空気の略全量が、フット吹出口12bから吹き出されるのに必要な時間であって、本実施例1では、送風機スイッチの設定風量に応じて異なる時間に設定されている。
すなわち、本実施例1では、ユニットハウジング1hの空気容量は、4〜5リットル程度であり、設定時間は、風量に応じ、2〜5秒程度の時間に設定されている。すなわち、最大風量であれば、第2設定時間t2は、最短の2秒程度であり、最少風量であれば、設定時間t2は、最長の5秒程度に設定される。
【0033】
続くステップS9では、送風機4の回転開始からの経過時間tnが、第2設定時間t2を越えたか否か判定し、第2設定時間t2を越えた時点で、ステップS20の通常処理に進む。
【0034】
また、本実施例1では、処理の詳細は省略するが、COセンサ37が設定濃度を越えるCOを検出したときには、コントロールユニット2は、インテークモードを外気導入モードに切り換える処理を実行する。この場合、さらに図外のサイドウインドウガラスを開ける処理を追加してもよい。
【0035】
次に、実施例1の動作を具体的に説明する。
冷凍サイクル50では、冷媒循環路51において、ユニットハウジング1hの内外を貫通する継ぎ目部分などで、冷媒ガスの漏れが生じることがある。特に、冷媒ガスにCOを用いた場合、フロンなどを用いた場合よりも高圧で使用するため、漏れが生じる可能性が高い。
【0036】
そこで、冷媒ガスの漏れが生じ、駐車中に、ユニットハウジング1h内に冷媒ガスが溜まっている場合の動作を以下に説明する。
なお、以下の動作を説明するのにあたり、操作スイッチ31は、駐車前の時点で、ベントモードおよび内気循環モードで、冷房運転を行うように設定されているものとする。
【0037】
この状態から、エンジンの始動を行うために、イグニッションスイッチ7をONにすると、送風機スイッチがONとなっていることから、ステップS1→S2→S3と進み、ステップS3において、吹出口モードがベントモードに設定されていることから、ステップS3→S4と進む。よって、コントロールユニット2から、吹出口モードをフットモードにする出力が成される。さらに、インテークモードが内気循環となっている場合は、外気導入モードとする出力が成される(ステップS5→S6)。
【0038】
したがって、ドアモードアクチュエータ16およびインテークドアアクチュエータ13aが駆動されて、空調ユニット1は、ベントモードおよび内気循環モードからフットモードおよび外気導入モードに切り換えられる。
【0039】
その後、第1設定時間t1の経過を待って、ステップS7の処理により送風機4の運転が開始される。
そして、送風機4の運転が開始されたら、現在の設定風量に応じ、ユニットハウジング1hに溜まった冷媒の略全量が、車室に吹き出されるのに十分な時間である第2設定時間t2を設定し(ステップS8)、さらに、この第2設定時間t2が経過した後(ステップS9)、通常制御処理に進む。
したがって、本実施例1では、空調ユニット1からの送風Wは、図3(b)に示すように、乗員Mの顔から離れたフット吹出口12bから車室に吹き出される。よって、ユニットハウジング1hに冷媒ガスが溜まっていた場合に、この高濃度の冷媒ガスが、乗員Mの足元で拡散され、乗員Mが、高濃度の冷媒ガスを直接吸い込むことを防止できる。
ちなみに、操作スイッチ31の操作に従ってベント吹出口12aから吹き出した場合には、空調ユニット1からの送風Wは、図3(a)に示すように、乗員Mの顔に向けて送風される。この場合、ユニットハウジング1hに冷媒ガスが溜まっていた場合には、乗員Mが、高濃度の冷媒ガスを吸い込むおそれがある。
また、本実施例1では、ユニットハウジング1h内に、COセンサを設けることなしに、上記乗員Mが、高濃度の冷媒ガスを吸い込むことの防止を図ることができる。
【0040】
しかも、本実施例1では、この送風開始時吹出口処理により、インテークモードが、外気導入モードに切り換えられるため、ユニットハウジング1hから車室に吹き出された冷媒ガスが、再度、ユニットハウジング1h内に吸い込まれるのが防止される。
よって、車室内の冷媒ガス濃度をいっそう確実に低下させることができる。
さらに、ユニットハウジング1h内に漏れていた冷媒ガスの略全量が車室内に放出された後は、通常制御処理に復帰され、乗員に操作スイッチ31の操作と異なるモードで運転される違和感を与えることを最小限に抑えることができる。
また、吹出口モードをフットモードとする時間は、送風機風量に応じ可変とし、ユニットハウジング1h内に溜まった冷媒ガスの全量を放出できる最少限の時間に設定したため、上述の違和感を与えるのを、より短時間に抑えることができる。
【0041】
なお、本実施例1では、イグニッションスイッチ7をONとした後の送風機4の送風開始時に、吹出口モードがフットモードに設定されている場合、通常制御処理に進むが(S3→S20)、この場合は、冷媒ガスは、フット吹出口12bから送風されて拡散される。
【0042】
また、イグニッションスイッチ7をONとしたときに、ファンスイッチがOFFである場合、吹出口モードは、操作スイッチ31の設定状態のモードに制御される。この場合、ユニットハウジング1h内に溜まった冷媒ガスは、走行風による気圧差などにより、徐々に、車室内に送られて拡散される。したがって、このとき、仮に、吹出口モードがベントモードであっても、図3(a)のように、高濃度の冷媒ガスを含む送風Wが乗員Mの顔に向けて送風されることは無い。
【0043】
(他の実施例)
次に、本発明の実施の形態の他の実施例について説明する。
なお、これら他の実施例を説明するのにあたり、実施例1と共通する構成には、実施例1で示した符号を付けることで、説明を省略する。また、作用についても、実施例1と共通する作用については説明を省略する。
【実施例2】
【0044】
実施例2の車両用空調制御装置は、送風開始時吹出口処理として、停車時処理と始動時処理とを実行するようにした例である。なお、他の構成は、実施例1と同様である。
図4は停車時処理を示し、図5は始動時処理を示している。
まず、図4の停車時処理を説明すると、ステップS21では、イグニッションスイッチ7がOFFに切り換ったか否か判定し、OFFに切り換わった時点で、ステップS22に進む。
ステップS22では、現在の吹出口モードがフットモードであるか否か判定し、フットモード以外のモードである場合には、ステップS23に進んで、吹出口モードをフットモードとする出力を行う。
【0045】
続くステップS24では、インテークモードが内気循環モードであるか否か判定し、内気循環モードである場合には、ステップS25に進んで、外気導入モードに切り換える出力を行う。
【0046】
したがって、車両の運転終了時には、空調ユニット1の吹出口モードは、フットモードに設定され、かつ、インテークモードは内気循環モードに設定される。
【0047】
次に、図5の始動時処理を説明すると、まず、ステップS31では、イグニッションスイッチ7がONに切り換ったか否か判定し、ONに切り換った場合は、ステップS32に進む。
ステップS32では、送風機スイッチがONとなっているか否か判定し、ONとなっている場合は、ステップS33に進んで、直ちに送風機4の駆動を開始する。
【0048】
次のステップS34では、実施例1のステップS7と同様に、第2設定時間t2の設定を行い、続くステップS35では、実施例1のステップS8と同様に、第2設定時間t2が経過した時点で、ステップS20の通常空調制御処理に進む。
【0049】
以上説明したように、実施例2では、イグニッションスイッチ7をOFFとした時点でフットモードならびに内気循環モードに切り換えるため、エンジン始動後に、吹出モードならびにインテークモードを切り換える動作が不要であり、早期に送風機4による送風を開始できる。
したがって、送風機4の駆動開始の遅れによる違和感を与えない。
【0050】
なお、他の作用効果については実施例1と同様であり、乗員が、高濃度の冷媒ガスを直接吸い込むことを防止でき、外気導入モードとすることで、車室内の冷媒ガス濃度をいっそう確実に低下させることができ、送風開始時吹出口処理の終了後は、通常制御処理に復帰され乗員に違和感を与えることを抑えることができ、第2設定時間t2の設定により、ユニットハウジング1h内に溜まった冷媒ガスをユニットハウジング1hの外部に確実に放出できるとともに、そのために吹出口モードを設定と異なることの違和感を抑えることができる。
【0051】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0052】
例えば、実施例1,2では、第2吹出口モードとして、フットモードを示したが、これに限定されない。すなわち、第1吹出口モードと第2吹出口モードとは、吹出方向が相対的に乗員に近いものと離れたものとの関係となっている。したがって、第1吹出口モードが例えばベントモードである場合に、サイドウインドウの曇り取りを行うサイドデフ吹出口を第2吹出口とし、このサイドデフ吹出口から吹き出すモードを第2吹出口モードとしてもよい。
【0053】
また、実施例1,2では、冷媒ガスとして、COガスを示したが、空気よりも比重が重く、ユニットハウジングに溜まるおそれのある冷媒ガスであれば、他の冷媒ガスを用いてもよい。
【0054】
また、実施例1,2では、送風開始時吹出口処理において、第2吹出口としてのフットモードの送風を、エンジン始動直後に実行する例を示したが、エンジン始動直後でなくても、送風機4の始動時に実行するようにしてもよい。
この場合、例えば、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS2の送風機スイッチONの判定で、NOの場合、ステップS2に戻るようにすればよい。このようにすれば、エンジン始動後、送風機スイッチがONとなるまで、この判定が繰り返され、ONとなった時点で、ステップS3〜S9により、ユニットハウジング1hに溜まった空気がフット吹出口12bから吹き出される。
また、実施例2では、ステップS32でNOの場合に、ステップS32に戻るようにすれば、同様の作用が得られる。
【0055】
また、実施例1,2では、送風開始時吹出口処理を実行する際に、インテークモードを外気導入モードに切り換える例を示したが、これに限定されず、インテークモードは、通常空調制御処理に基づくモードに制御するようにしてもよい。
【0056】
また、実施例1,2では、送風開始時吹出口処理を実行する時間を、風量に応じて変更する例を示したが、これに限定されず、一定時間としてもよい。この場合、2〜5秒の範囲内の時間から任意に設定してよく、ユニットハウジング1h内の空気の全量が吹き出されるのに必要な時間に設定する必要はない。
【0057】
また、実施例1,2では、送風開始時吹出口処理を、設定時間の経過で行うようにした例を示したが、その終了条件は、これに限定されるものではない。例えば、COセンサ37を、車室内のユニットハウジング1hのフット吹出口12bの近傍に配置し、フットモードでの送風開始後に、COセンサ37が所定濃度以上のCOを検出しない場合に、送風開始時吹出口処理を終了するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用空調制御装置Aの構成を示す全体概略図である。
【図2】実施例1の車両用空調制御装置Aによる送風開始時吹出口処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の車両用空調制御装置Aの作用説明図であって、(a)はベントモードによる送風状態を示し、(b)はフットモードによる送風状態を示している。
【図4】実施例2の車両用空調制御装置による送風開始時吹出口処理における停車時処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例2の車両用空調制御装置による送風開始時吹出口処理における始動時処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1h ユニットハウジング
2 コントロールユニット(制御装置)
4 送風機
5 冷却器
7 イグニッションスイッチ
11 空気取入口
12a デフ吹出口(第1吹出口)
12b フット吹出口(第2吹出口)
12c ベント吹出口(第1吹出口)
13 インテークドア
15a デフドア(吹出口ドア)
15b フットドア(吹出口ドア)
15c ベントドア(吹出口ドア)
18 送風路
50 冷凍サイクル
A 車両用空調制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気取入口から車室側の複数の吹出口に至る送風路を有したユニットハウジングと、
このユニットハウジングに設けられ、前記送風路に送風を形成する送風機と、
前記送風路の送風を冷却可能な冷却器を備え、空気よりも比重の重い冷媒ガスを用いた冷凍サイクルと、
前記複数の吹出口の吹出モードを、相対的に乗員の顔に近い位置に送風を行う第1吹出口を開いた第1吹出口モード、および相対的に乗員の顔から離れた位置に送風を行う第2吹出口を開いた第2吹出口モードを形成可能な吹出口ドアと、
前記吹出口ドアの作動、前記送風機の作動を含む装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記送風機の運転開始時に、前記吹出口モードを第2吹出口モードとする送風開始時吹出口処理を実行することを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記空気取入口のインテークモードを、外気導入モードと内気循環モードとに切り換え可能なインテークドアを備え、
前記制御装置が、前記送風開始時吹出口処理時に、前記第2吹出口モードとするのに加え、前記インテークモードを外気導入モードとすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記送風開始時吹出口処理は、処理開始後、前記ユニットハウジング内の空気容量相当の空気を吹き出すことが可能な時間に設定された設定時間が経過したら処理を終了し、あらかじめ設定された通常制御に移行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記送風開始時吹出口処理が、イグニッションスイッチをONとしたときに、前記送風機を駆動させる操作を行う送風機スイッチがONとなっている場合、現在の吹出口モードが第2吹出口モードであるか否か判定し、前記第2吹出口モードでない場合に、前記第2吹出口モードに切り換えた後、前記送風機による送風を開始する処理を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記第2吹出口モードが、乗員の足元に向けて送風を吹き出すフット吹出口から送風を行うフットモードであり、
前記第1吹出口モードが、前記フットモード以外のモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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