説明

車両用空調装置

【課題】 ユーザに乗員が、乗車する前に、内気温が設定温度に到達するのに要する所要時間を知らせる。
【解決手段】 車両用空調装置は、携帯電話10から遠隔操作されて車室内の空調を開始するものであって、マイクロコンピュータ61は、内気温が設定温度に到達するのに要する所要時間を算出して(ステップS110)、この所要時間を示す時間データを携帯電話10に送信する(ステップS120)。したがって、携帯電話10が時間データに応じて、所要時間を乗員に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末から遠隔操作されて車室内の空調を開始する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員が乗車するに先だって、無線端末を用いて遠隔操作して、室内空調ユニットにより車室内空調を開始させるようにする車両用空調装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−264039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、乗員が乗車する以前に車室内空調を開始していても、乗車する際に、車室内の空気温度(以下、内気温という)が設定温度(すなわち、希望温度)に到達しているとは限らない。
【0004】
このため、内気温が設定温度に到達する前に乗車すると、乗員にとっては不快に感じる。一方、無線端末を用いて遠隔操作した後、長い時間を経過した後に乗車すれば、内気温が設定温度に到達した状態で乗車することができるものの、乗車以前に必要以上の長時間、室内空調ユニットを作動させることになり、無駄に、エネルギーを消費することになる。
【0005】
このため、本発明者は、快適空調および省エネルギー化を実現する為には、内気温が設定温度に到達する所要時間をユーザに知らせることが必要であると考えた。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、内気温が設定温度に到達する所要時間をユーザに知らせることが可能である車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内の空調状態を調整する室内空調ユニット(50)を備えて、無線端末(10)から遠隔操作されて、前記室内空調ユニットにより車室内の空調状態の調整を開始する車両用空調装置であって、
前記車室内の環境状態を検出する検出手段(70〜73、74)と、
前記検出手段による検出結果に応じて、前記車室内の空気温度が設定温度に到達するのに要する所要時間を算出する算出手段(S110)と、
前記算出される所要時間を示す時間データを前記無線端末に送信する時間データ送信手段(S120)と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
したがって、無線端末が、時間データに基づいて所要時間をユーザに通知すれば、ユーザが所要時間を知ることができる。このため、ユーザが乗車直前にて必要最小限の時間だけ、室内空調ユニットを作動させることができるので、省エネルギー化および快適空調を実現することができる。
【0009】
ここで、具体的には、算出手段は、請求項2に記載の発明の如く、前記検出手段による検出結果に応じて車室内の熱負荷を算出し、この算出された熱負荷と前記室内空調ユニットの最大空調能力とに基づき、前記所要時間を算出することが必要である。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、前記車室内の空気温度の通知を要求する要求信号を前記無線端末から受信されたとき、前記車室内の空気温度を示す温度データを前記無線端末に送信する温度データ送信手段(S210)と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
したがって、ユーザにとっては、無線端末により、車室内気温を確認することができるので、ユーザに安心感を与えることができる。
【0012】
ここで、無線端末としては、請求項4に記載の発明のように、携帯電話を用いてもよく、さらに、請求項5に記載の発明のように、走行用エンジンを遠隔操作で始動させる遠隔操作端末を用いてもよい。
【0013】
また、請求項6に記載の発明のように、検出手段として、車室内の表面温度を環境状態として非接触で検出する非接触温度センサ(74)を用いると、車室内の輻射熱を検出することができるので、車室内の環境状態を正確に検出することができる。これに伴い、熱負荷、ひいては、所要時間を正確に算出することができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態の車両用空調装置を示す。本実施形態の車両用空調装置においては、乗員が乗車する以前に、携帯電話10から遠隔操作されると、室内エアコンユニットが、自動車40の室内の空調状態の調整を開始するものである(図1参照)。
【0016】
次に、本実施形態の車両用空調装置の具体的構成について図2〜図4を用いて説明する。
【0017】
車両用空調装置は、図2に示す室内エアコンユニット50を備えており、室内エアコンユニット50は、計器盤内に収納される空調ケース51を備えている。
【0018】
この空調ケース51内において、内外気切換ドア52が、回転可能に支持されて、第1切換位置(図に実線で示す位置)に切り替えられて、空調ケース51内にその外気導入口52aから外気を流入させ、一方、第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り替えられて、空調ケース51内にその内気導入口52bから車室内の空気(内気)を流入させる。
【0019】
ここで、内気を流入させるモードを内気モードといい、外気を流入させるモードを外気モードという。
【0020】
ブロワ53は、ブロワモータ53aの回転速度に応じて、外気導入口52aからの外気または内気導入口52bからの内気を空気流としてエバポレータ54に向けて送風し、エバポレータ54は、そのブロワ53から吹き出される空気流を、公知の冷凍サイクルの作動によって循環する冷媒により冷却する。
【0021】
エアミックスドア(A/Mドア)55は、エバポレータ54から吹き出される冷却空気流をヒータコア56に流入される気流とヒータコア56をバイパスする気流(以下、バイパス冷却気流という)とに分ける。
【0022】
ヒータコア56に流入される気流は、ヒータコア56内のエンジン冷却水(温水)により加熱されるので、ヒータコア3から温風が吹き出されることになる。これに伴い、ヒータコア56から吹き出される温風とバイパス冷却気流とは混合されて吹出口ドア57、58、59に向けて流動されることになる。温風とバイパス冷却気流との混合比SW(%)は、エアミックスドア55の開度により決められることになる。
【0023】
吹出口ドア57は、デフモード時にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部57aを開けて開口部57aから主にフロントウインドシールドに向けて空気を吹き出さる。
【0024】
吹出口ドア58は、フェイスモード時に第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部58aを開けこの開口部58aから車室の乗員上半身に向けて空気を吹き出させる。
【0025】
吹出口ドア59は、フットモード時にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部59aを開け開口部59aから車室の乗員下半身に向けて空気を吹き出させる。
【0026】
さらに、車両用空調装置は、図3に示すエアコンECU60を備えており、エアコンECU60は、マイクロコンピュータ61、入力インターフェイス回路62、および出力インターフェイス回路63を備えている。
【0027】
マイクロコンピュータ61には、内気温センサ70により検出される内気温と、外気温センサ71により検出される外気温と、日射センサ72により検出される車室内の日射強度と、エバ吹出温度センサ73により検出されるエバポレータ54から吹き出される空気温度(以下、蒸発器吹出空気温度という)と、IRセンサ(非接触温度センサ)74で検出される車室内の所定箇所(例えば、座席、天井)の表面温度と、温度センサ75によりを検出されるエンジン冷却水(温水)の温水温度、乗員により設定された温度設定器75から出力される設定温度が入力される。ここで、IRセンサ74により車室内の輻射熱が検出されることになる。
【0028】
一方、マイクロコンピュータ61は、出力インターフェイス回路63を介してサーボモータ80〜82に制御信号を出力してサーボモータ80〜82を個々に制御する。
【0029】
ここで、サーボモータ80は、内外気切換ドア52を開閉するモータであり、サーボモータ81は、エアミックスドア55を開閉するモータである。サーボモータ82は、吹出口ドア57〜59をそれぞれ独立に開閉する。
【0030】
さらに、エアコンECU60は、図4に示すように、通信バスを介してデータ通信モジュール30に接続されている。データ通信モジュール(DCM)30は、移動体通信網20の基地局との間の無線通信を介して携帯電話10との間で通信する。データ通信モジュール(DCM)30は、アンテナ31を通して、移動体通信網20の基地局との間で無線通信を行うものである。携帯電話10は、後述するように、室内エアコンユニット50を遠隔操作する無線端末としての機能を果たす。また、エアコンECU60は、通信バスを介して、エンジンECU、ナビゲーションECUなどの各種の電子制御装置90、91、92との間で通信を行うものである。
【0031】
次に、本実施形態のエアコンECU60の具体的な作動について図5、図6を用いて説明する。
【0032】
エアコンECU60は、携帯電話10からの遠隔操作に応じて空調制御する遠隔空調制御処理と、携帯電話10からの要望により、内気温を示す温度データを携帯電話10に通知する内気温通知処理と、携帯電話10からの遠隔操作に応じて設定温度度を変更する設定温度変更処理、携帯電話10からの遠隔操作に応じてエンジンを停止するエンジン停止処理をそれぞれ実行する。以下、遠隔空調制御処理、内気温通知処理、設定温度変更処理、並びに、エンジン停止処理を大別して説明する。
【0033】
(遠隔空調制御処理)
エアコンECU60のマイクロコンピュータ61は、図5のフローチャートにしたがって、遠隔空調制御処理を実行する。当該遠隔空調制御処理は、走行用エンジンの停止中(すなわち、イグニッションスイッチIGのオフ中)にて、携帯電話10からの始動指示要求を受信したときに開始される。すなわち、ユーザが乗車する以前にて、携帯電話10に対して、走行用エンジンの始動を指令するための指令操作を行う。
【0034】
すると、携帯電話10が指令信号を送信し、この指令信号が移動体通信網20を介してアンテナ31を通してデータ通信モジュール(DCM)30で受信されると、マイクロコンピュータ61は、起動開始(ウェイクアップ)して、図5のフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムの実行を開始する。
【0035】
先ず、内気温センサ70、外気温センサ71、日射センサ72、エバ吹出温度センサ73、IRセンサ74によって、内気温、外気温、日射強度、蒸発器吹出空気温度、車室内表面温度を検出し、さらに、温度設定器75によって設定される設定温度(希望温度)が入力される(ステップS100)。ここで、設定温度は、乗員が下車する前に設定された温度である。
【0036】
次に、内気温Tr(℃)、外気温Tam(℃)、日射強度Ts(kW/m2)、車室内表面温度Tset(℃)、設定温度Tset(℃)に基づき、以下の如く、内気温が設定温度Tsetに到達するのに要する所要時間を算出する(ステップS110)。
【0037】
ここで、車室内空間容積=S(m)とすると、車室内の熱負荷L(J)は、数式1で計算できる。
【0038】
L(J) =A(J)+B(W)×t(sec)……(数式1)
ここで、A(J)は、外部からの熱量の侵入=0と仮定した場合に、内気温が設定温度に到達させるのに必要な熱量であり、B(W)は、内気温が設定温度に到達後に内気温が設定温度を維持するのに必要な負荷(熱量)であり、それぞれ、以下の様な数式2、数式3であらわされる。
【0039】
A(J) =S×{K1・(Tr−Tset)+K2・Tam
+K3・Ts+K4・Tir+C1}+C2……(数式2)
B(W)=S×(K5・Tset+K6・Tam+K7・Ts+C3)
+C4……(数式3)
ここで、Ki(i=1〜4)、Cj(j=1〜4)はそれぞれ定数である。
【0040】
次に、内気温が設定温度に到達するのに必要な所要時間を求める。先ず、車輌の最大冷房能力(最大暖房能力)は、搭載されている室内エアコンユニット50の能力によってきまる。
【0041】
ここで、最大冷房能力をK(W)とすると、所要時間tは、数式4であらわされる。
【0042】
所要時間t(sec)=L/K={A+(B×t)}/K……(数式4)
そして、数式4を変形すると、所要時間t=A/(K−B)が得られて、所要時間tを求めることができる。
【0043】
次に、所要時間tを示す時間データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS120)。このため、この時間データは、移動体通信網を通して携帯電話10に送られる。したがって、携帯電話10は、表示パネルにて所要時間tを表示させるので、所要時間tがユーザに通知される。
【0044】
次に、エンジンECUに対して走行用エンジンを始動させることを指令して、室内エアコンユニット50による車室内の空調制御を開始する(ステップS130)。
【0045】
先ず、車室内へ吹き出される空調風の目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは車室内を設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度である。
【0046】
TAO=Kset×Tset−Kr×TR−Kam×TAM
−Ks×TS+C……(数式5)
ここで、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cが、補正用の定数である。
【0047】
これに伴い、周知の如く、目標吹出温度TAOに基づいて、内気モード、外気モードのうち一方を内外気モードとして決定し、サーボモータ80を制御して当該決定される内外気モードを実行する。
【0048】
さらに、周知の如く、目標吹出温度TAOに基づいて、ブロワ53の風量(すなわち、ブロワモータ53aの回転数)を決定し、この決定される風量に基づいてブロワモータ53aを制御する。さらに、フェイスモード、フットモードのうち一方を吹出モードとして決定して、さらにサーボモータ82を制御して吹出口ドア58、59を開閉して当該決定される吹出モードを実施する。
【0049】
さらに、エアミックスドア55の目標開度SWを次の数式6により算出する。
【0050】
SW={(TAO−TE)/(TW−TE)}×100(%)
……(数式6)
ここで、TEは蒸発器吹出空気温度であり、TWは、エンジン冷却水の温水温度である。目標開度SWは、ヒータコア55の通風路を全閉する最大冷房位置を0%とし、冷風バイパス通路15を全閉する最大暖房位置を100%とする百分率で算出される。そして、サーボモータ81を制御してエアミックスドア55の開度を目標開度SWに一致させる。
【0051】
以上のように、ブロワ53、サーボモータ80、81、82をそれぞれ制御して、車室内に吹き出される空気温度を目標吹出温度TAOに近づけるようにすることになる。
【0052】
その後、内気温センサ70で検出される内気温が設定温度Tsetに到達すると、ステップS140でYESと判定し、その内気温が設定温度Tsetに到達した旨を示す完了データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS150)。このため、この時間データは、移動体通信網を通して携帯電話10に送られる。
【0053】
したがって、携帯電話10は、表示パネルにて「内気温が設定温度Tsetに到達した旨」を表示してユーザに通知する。その後、目標吹出温度TAOに応じて、ブロワ53、サーボモータ80、81、82をそれぞれ制御して、車室内の空調制御を継続する(ステップS160)。
【0054】
(内気温通知処理)
エアコンECU60のマイクロコンピュータ61は、図6のフローチャートにしたがって、内気温通知処理を実行する。当該内気温通知処理は、室内エアコンユニット50の空調制御の実行中にて、携帯電話10から内気温通知要求信号を受信したときに開始される。すなわち、ユーザが乗車する以前にて、携帯電話10に対して、内気温の通知を要求するための操作を行う。すると、携帯電話10が要求信号を送信し、この要求信号が移動体通信網20を介してアンテナ31を通してデータ通信モジュール(DCM)30で受信されると、マイクロコンピュータ61は、マイクロコンピュータ61は、図6のフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムの実行を開始する。
【0055】
先ず、内気温センサ70により内気温を検出し(ステップS200)、その検出される内気温を示す温度データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS210)。このため、この時間データは、移動体通信網を通して携帯電話10に送られる。したがって、携帯電話10は、表示パネルにて内気温を表示させるので、内気温がユーザに通知されることになる。その後、車室内の空調制御を継続する(ステップS220)。
【0056】
(設定温度変更処理)
エアコンECU60のマイクロコンピュータ61は、図7のフローチャートにしたがって、設定温度変更処理を実行する。なお、図7において、図5と同一符号は、同一処理を示す。
【0057】
当該設定温度変更処理は、室内エアコンユニット50の空調制御の実行中にて、携帯電話10から設定温度変更信号を受信したときに開始される。
【0058】
すなわち、ユーザが乗車する以前にて、携帯電話10に対して、設置温度を変更するための操作を行う。この操作により希望する設定温度が入力され、この入力される設定温度を含む設定温度変更信号が携帯電話10から送信される。
【0059】
この設定温度変更信号が移動体通信網20を介してアンテナ31を通してデータ通信モジュール(DCM)30で受信されると、マイクロコンピュータ61は、図7のフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムの実行を開始する。
【0060】
先ず、センサ70〜76によって、内気温Tr、外気温Tam、日射強度Ts、車室内表面温度Tir、蒸発器吹出空気温度TE、温水温度TWを検出する(ステップS100)。そして、この検出される内気温Tr、外気温Tam、日射強度Ts、車室内表面温度Tirと、携帯電話10により入力される設定温度Tsetとに応じて、上述と同様、数式1〜数式4を用いて、内気温が設定温度Tsetに到達するのに要する所要時間tを算出する(ステップS110)。
【0061】
その後、所要時間tを示す時間データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS120)。
【0062】
その後、内気温Tr、外気温Tam、日射強度Ts、車室内表面温度Tir、設定温度Tset、蒸発器吹出空気温度TE、温水温度TWに応じて、室内エアコンユニット50による車室内の空調制御を開始する(ステップS130)。そして、内気温が設定温度Tsetに到達すると、その内気温が設定温度Tsetに到達した旨を示す完了データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS150)。その後、車室内の空調制御を継続する(ステップS160)。
【0063】
(エンジン停止処理)
エアコンECU60のマイクロコンピュータ61は、図8のフローチャートにしたがって、エンジン停止処理を実行する。当該エンジン停止処理は、室内エアコンユニット50の空調制御の実行中にて、携帯電話10からエンジン停止信号を受信したときに開始される。
【0064】
すなわち、ユーザが乗車する以前にて、携帯電話10に対して、走行用エンジンを停止するための操作を行う。これに伴い、エンジン停止信号が携帯電話10から送信される。
このエンジン停止信号が移動体通信網20を介してアンテナ31を通してデータ通信モジュール(DCM)30で受信されると、マイクロコンピュータ61は、図8のフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムの実行を開始する。
【0065】
先ず、室内エアコンユニット50の空調制御を停止して(ステップS400)、エンジンECUに対して走行用エンジンの停止を指令して(ステップS410)、空調制御の停止および走行用エンジンの停止を通知するための通知データをデータ通信モジュール(DCM)30からアンテナ31を通して送信させる(ステップS420)。したがって、携帯電話10は、表示パネルにて「空調制御および走行用エンジンを停止した旨」を表示してユーザに通知する。その後、マイクロコンピュータ61は、スリープ状態になる(ステップS430)。
【0066】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。すなわち、本実施形態の車両用空調装置は、携帯電話10から遠隔操作されて車室内の空調を開始するものであって、マイクロコンピュータ61は、内気温が設定温度に到達するのに要する所要時間を算出して、この所要時間を示す時間データを携帯電話10に送信することを特徴とする。
【0067】
したがって、携帯電話10が時間データに応じて、所要時間を乗員に通知することができるので、乗員が、乗車する前に、「内気温が設定温度に到達するのに要する所要時間」を知ることができる。このため、ユーザが乗車直前にて必要最小限の時間だけ、室内エアコンユニット50を作動させることができる。
【0068】
例えば、所要時間が5分の場合には、乗車の5分前に、室内エアコンユニット50の作動を遠隔操作にて開始させることができるので、室内エアコンユニット50を無駄に作動させることを防ぐことができるので、省エネルギー化および快適空調を実現することができる。
【0069】
また、室内エアコンユニット50を遠隔操作するにあたり、携帯電話10を用いるので、携帯電話10のサービスエリア(すなわち、通信可能なエリア)内であれば、車両から遠く離れた場所でも、室内エアコンユニット50を遠隔操作することができる。
【0070】
さらに、IRセンサ74で検出される表面温度としての輻射熱を用いて、車室内の熱負荷を算出するので、より正確な熱負荷を求めることができる。これに伴い、内気温が設定温度Tsetに到達するのに要する所要時間を正確に算出することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、無線端末として携帯電話10を用いた例について説明したが、これに限らず、空調制御の遠隔操作を専用で行う専用端末を用いてもよく、また、走行用エンジンを遠隔操作するエンジンスタータとして機能する端末を用いてもよい。
【0072】
また、本発明の実施にあたり、熱負荷L、所要時間を算出する上で、ファジー演算、ニュートラルネットワーク演算を用いてもよい。また、熱負荷Lを算出する際に、内気温、外気温、日射量等以外に、緯度、経度、時間、季節などを加味して算出してもよい。
【0073】
以下、上記実施形態と特許請求項の範囲の構成との対応関係について説明すると、携帯電話10が無線端末に相当し、室内エアコンユニット50が「車室内の空調状態を調整する室内空調ユニット」に相当し、「内気温センサ70、外気温センサ71、日射センサ72、IRセンサ74」が検出手段に相当し、ステップS110の処理が、「検出手段による検出結果に応じて、前記車室内の空気温度が設定温度に到達するのに要する所要時間を算出する算出手段」に相当し、ステップS120の処理が「算出される所要時間を示す時間データを前記無線端末に送信する時間データ送信手段」に相当し、ステップS210の処理が「車室内の空気温度の通知を要求する要求信号を前記無線端末から受信されたとき、前記車室内の空気温度を示す温度データを前記無線端末に送信する温度データ送信手段」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の車両用空調装置の一実施形態の概略を説明するための図である。
【図2】図1の車両用空調装置の室内空調ユニットの構成を示す模式図である。
【図3】図1の車両用空調装置のエアコンECUの構成を示す模式図である。
【図4】図1のエアコンECUとデータ通信モジュールとの接続を示す模式図である。
【図5】図1のエアコンECUの制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図6】図1のエアコンECUの制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図7】図1のエアコンECUの制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図8】図1のエアコンECUの制御処理の残りを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
10…携帯電話、60…エアコンECUマイクロコンピュータ、
61…マイクロコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空調状態を調整する室内空調ユニット(50)を備えて、無線端末(10)から遠隔操作されて、前記室内空調ユニットにより車室内の空調状態の調整を開始する車両用空調装置であって、
前記車室内の環境状態を検出する検出手段(70〜73、74)と、
前記検出手段による検出結果に応じて、前記車室内の空気温度が設定温度に到達するのに要する所要時間を算出する算出手段(S110)と、
前記算出される所要時間を示す時間データを前記無線端末に送信する時間データ送信手段(S120)と、を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記検出手段による検出結果に応じて車室内の熱負荷を算出し、この算出された熱負荷と前記室内空調ユニットの最大空調能力とに基づき、前記所要時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記車室内の空気温度の通知を要求する要求信号を前記無線端末から受信されたとき、前記車室内の空気温度を示す温度データを前記無線端末に送信する温度データ送信手段(S210)と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記無線端末は、携帯電話であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記無線端末は、走行用エンジンを遠隔操作で始動させる遠隔操作端末であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記検出手段は、車室内の表面温度を前記環境状態として非接触で検出する非接触温度センサ(74)であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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