説明

車両用空調装置

【課題】換気可能な窓部を開けた場合の乗員の要求を的確に判断して、より快適な室内空調環境を得ることができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置のコントロールユニット2は、自動制御の実行時に窓部の開状態が検出されたときには、まず、窓部が開かれた時点の空調ユニット制御状態を読み込み、かつ、内気循環モードであれば外気導入モードに切り換え、さらに、喫煙が検出されている場合には、換気要求と判断して自動制御を続行させ、一方、喫煙が検出されていない場合には、非換気要求と判断して、空調ユニットを、読み込んだ制御状態に保持するとともに、自動制御をキャンセルして空調ユニットを手動操作する手動モードに切り換える窓部開対応処理を実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、自動制御を実行するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員にとって快適な室内環境を形成するために、室内外に設けられた各種センサから得られる環境情報、および乗員が設定した設定条件に基づいて制御する、一般にオートエアコンと呼ばれる車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、乗員が窓を開放した際に、換気を促進させるとともにウインドスロップ音や風切り音の発生を抑制すべく、空調装置を内気循環モードから外気導入モードに切り換えるようにした空調制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−62431号公報
【特許文献2】特開2005−22433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の車両用空調装置のように、各種センサに基づいて精密な空調制御を実行しても、必ずしも乗員にとって快適でない場合がある。例えば、乗員が、平均的な感覚よりも暑がりや寒がりである場合、自動制御により理想的と設定している空調環境を不快に感じる場合がある。
【0005】
そして、このような場合において、乗員が室内空調環境を外部環境に近付けようとして窓を開けることがある。このような場合、窓の開放により室温などが自動制御により形成していた状態から離れることから、制御手段が自動制御により、制御目標に近付けようと、吹出温度やファン風量を変更する。このため、窓を開けても乗員が望む環境変化が得られにくい場合があった。
【0006】
一方、乗員が窓を開ける場合は、温度的な環境のみではなく、喫煙時など、乗員が換気したいという要求がある場合もある。
【0007】
しかしながら、後者の従来技術では、窓の開放を乗員の換気要求の現れと認識とし、外気導入モードとして換気の促進を図っているのみであるので、上記のように乗員が室内空調環境を不快に感じて窓を開けた場合の問題を解決することができない。
【0008】
本発明は、上述の問題点に着目して成されたものであり、換気可能な窓部を開けた場合の乗員の要求を的確に判断して、より快適な室内空調環境を得ることができる車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために本発明の車両用空調装置は、内気循環モードと外気導入モードとを形成可能な空調ユニットと、車室内の温度環境に関する情報を検出する環境検出手段と、車室内に設けられ、車室内の温度環境の設定が行われる設定手段と、前記環境検出手段の検出に基づいて、前記設定手段の設定に応じた室内環境を形成するべく空調ユニットを作動させる自動制御を実行する制御手段と、を備えた車両用空調装置であって、前記制御手段の入力手段として、喫煙を検出する喫煙センサと、換気可能な窓部の開閉状態を検出する開閉検出手段と、を備え、前記制御手段は、自動制御の実行時に前記窓部の開状態が検出されたときには、窓部開対応処理を実行し、この窓部開対応処理は、まず、窓部が開かれた時点の空調ユニット制御状態を読み込み、かつ、内気循環モードであれば外気導入モードに切り換え、さらに、喫煙が検出されている場合には、換気要求と判断して自動制御を続行させ、一方、喫煙が検出されていない場合には、非換気要求と判断して、空調ユニットを、前記読み込んだ制御状態に保持するとともに、自動制御をキャンセルして空調ユニットを手動操作する手動モードに切り換える処理であることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、前記喫煙センサとして、車室内の熱に基づいて喫煙を検出するセンサが用いられていることを特徴とする車両用空調装置とした。
さらに、請求項3に記載の発明では請求項1に記載の車両用空調装置において、前記喫煙センサとして、空気の汚れ度合いを検出するセンサが用いられ、この喫煙センサが、外気の汚れ度合いを検出可能に設置された第1のセンサと、車室内空気の汚れ度合いを検出可能に設置された第2のセンサとを備え、かつ、第2のセンサが検出する車室内空気の汚れ度合いから第1のセンサが検出する外気の汚れ度合いを差し引いた値に基づいて喫煙の検出を行うことを特徴とする車両用空調装置とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用空調装置にあっては、乗員が、サイドドアに設けられた窓や天井に設けられたサンルーフなどの換気可能な窓部を開いた際には、窓部開対応処理を実行して以下のように作動する。
【0012】
まず、窓部が開かれた時点の制御状態を読み込み、さらに、内気循環モードであれば外気導入モードに切り換える。
【0013】
そして、この窓を開けたときに喫煙が行われている場合には、本発明では、喫煙センサにより喫煙が検出されることから、換気要求と判断して自動制御を続行させる。この場合、外気モードに切り換えられているため、車室の換気が促進される。また、自動制御が実行されることにより、空調ユニットは、制御手段により理想とする制御目標に向かって制御され、窓部を開くことによる環境変化を抑える方向に制御が実行される。
【0014】
一方、窓部を開ける要求が、自動制御により形成される室内空調環境が不快である場合、窓部開対応処理では、喫煙センサによる喫煙が検出されないことから、非換気要求と判断し、空調ユニットを、窓部を開いた時点で読み込まれた制御状態に保持し、さらに、自動制御をキャンセルして手動モードに切り換える。
【0015】
したがって、窓部を開くことにより室内空調環境が自動制御による制御目標から離されても、この制御目標に近付ける自動制御が実行されることが無く、室内空調環境が外気の状態に速やかに近付けられる。
【0016】
また、手動モードに切り換えているため、窓部の解放による室内環境の変化が不十分である場合には、乗員は、設定手段を手動操作することで、適宜、より自分の理想とする室内空調環境に近付けることができる。
【0017】
以上のように、本発明では、窓部を開けた場合の乗員の要求を的確に判断して、より快適な室内環境を得ることができる。
【0018】
さらに、請求項2に記載の発明では、喫煙センサとして、車室内の熱に基づいて喫煙を検出するセンサを用いたため、臭気やガス濃度などの空気の汚れを検出して喫煙を検出するセンサを用いた場合と比べて、外気の汚れの影響で、喫煙を誤検出することを防止できる。
このため、走行中に乗員が窓を開けた場合に、排気ガスなど汚れた外気が車室内に入っても、この外気の汚れを喫煙による汚れと誤検出して、窓部開対応処理において換気要求と判断して自動制御を続行させることで、窓を開いて車室温度を外気温に近付けたいとする乗員の意思に反した制御が実行されることを防止し、より快適な車室内環境を提供することが可能となる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明では、喫煙センサとして、空気の汚れ度合いを検出するセンサを用いながらも、車室内空気の汚れ度合いを検出する第2のセンサが検出する車室内空気の汚れ度合いから、外気の汚れ度合いを検出する第1のセンサが検出する外気の汚れ度合いを差し引いた値に基づいて喫煙の検出を行うようにしたため、走行中に乗員が窓を開けた場合に、排気ガスなど汚れた外気が車室内に入っても、上記差分を求めることで、この外気の汚れを喫煙による汚れと誤検出することを防止でき、窓を開いて車室温度を外気温に近付けたいとする乗員の意思に反した制御が実行されることを防止し、より快適な車室内環境を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下に、図1〜図4に基づいて、この発明の最良の実施の形態1の車両用空調装置について説明する。
【0021】
この車両用空調装置は、空調ユニット1と、その作動を制御するコントロールユニット2とを備えている。
【0022】
空調ユニット1は、図3に示すインストルメントパネル3の内側に収容されている。図2は、空調ユニット1の構成を示す概略図であり、この空調ユニット1は、一端側に空気取入口11を有し、かつ、他端側にベントダクト12、デフダクト13、フットダクト14が接続されている。そして、空気取入口11と各ダクト12,13,14との間に、ブロワファン15、エバポレータ16、ヒータコア17が設けられている。
【0023】
エバポレータ16には、エアミックスドア18が並設され、このエアミックスドア18の開度を変更することにより、ヒータコア17を通過する空気量を調節し、エバポレータ16を通過した空気とヒータコア17を通過した空気とを混合させる割合を調節することで、吹出空気温度の調節が可能となっている。
【0024】
また、空気取入口11は、インテークドア21,21により、図外の車室内から空気を取り入れる内気導入モードと、車外から空気を取り入れる外気導入モードとに切り換えられる。
【0025】
ベントダクト12は、一端がベントドア12aにより開閉され、他端は、インストルメントパネル3に設けられたベント吹出口31,31,31に接続されている(図3参照)。
【0026】
デフダクト13は、一端がデフドア13aにより開閉され、他端は、フロントガラス4の下部の中央および左右両端部にそれぞれ開口されたデフ吹出口32,32,32に接続されている(図3参照)。
【0027】
フットダクト14は、一端がフットドア14aにより開閉され、他端の吹出口14b,14bは、インストルメントパネル3の下方の図外のフロアパネル近傍に開口されている(図3参照)。
【0028】
このように構成された空調ユニット1では、前述のように吹出空気温度を任意に設定できるとともに、各ドア12a,13a,14aの開閉を切り換えて、任意の吹出モードを設定できるもので、その制御は、コントロールユニット2により行われる。
【0029】
コントロールユニット2は、図1に示すように、入力側に設定手段としての設定スイッチ群41、環境検出手段としての環境センサ群42、開閉検出手段としてのパワーウインド出力部43、車速センサ44、喫煙センサ45、イグニッションスイッチ46に接続され、出力側に、各種アクチュエータ51が接続されている。
【0030】
設定スイッチ群41は、図3に示すように、インストルメントパネル3の車幅方向略中央に設けられ、乗員により操作可能に形成されている。この設定スイッチ群41は、詳細な図示は省略するが、車室内の温度を設定する温度設定スイッチや、各吹出口の吹出モードを設定するモード設定スイッチや、エアコンの駆動・非駆動を切り換えるエアコンスイッチや、内気循環モードと外気導入モードとを切り換える内外気モード設定スイッチなどを備えている。
【0031】
図1に示す環境センサ群42は、車室内環境に関する情報を取得するセンサで構成され、例えば、外気温度センサ、室内温度センサ、日射量センサなどが含まれる。
【0032】
以上の設定スイッチ群41、環境センサ群42は、本発明の特徴となる部分ではないので、上記構成に限定されないとともに、詳細な説明は省略する。
【0033】
パワーウインド出力部43は、図外の窓部を開閉する図外の開閉制御装置において、図外のモータへ駆動信号を出力する部分である。この開閉制御装置は、図外のサイドドアに設けられた窓あるいは図外の天井に設けられたサンルーフなどの換気可能な窓部の開閉を制御するものであり、図外のモータの駆動により、ウインドガラスやリッドなどが移動する。
【0034】
車速センサ44は、車輪あるいは変速機から車輪へ駆動力を伝達する駆動伝達部材に設けられて、車両の走行速度を検出する周知のセンサである。
【0035】
喫煙センサ45は、車室内に設けられ、喫煙を検出するセンサである。この喫煙センサ45としては、タバコの臭気を検出するセンサ、タバコの煙を含む浮遊粒子を検出するセンサ、タバコの熱を検出するセンサなどを用いることができるが、本実施の形態では、熱を検出するセンサを用いているものとする。
【0036】
各種アクチュエータ51は、空調ユニット1を作動させるアクチュエータで構成され、上述の空調ユニット1に設けられたブロワファン15や各ドア12a,13a,14a,18,21を開閉させるドアアクチュエータなどが含まれている。
【0037】
次に、コントロールユニット2が実行する制御を、図4のフローチャートにより説明する。
このフローチャートは、自動制御実行時のルーチンを示しており、イグニッションスイッチ46がONであるときに設定スイッチ群41において自動制御が選択されている場合に、このルーチンが実行される。
【0038】
ステップS1では、通常自動制御が実行される。この通常自動制御は、従来の自動制御に相当するもので、各種センサからの入力に基づいてファン風量や吹出空気温度や吹出モードなどを決定し、室内空調環境を設定された環境に制御するもので、例えば、特許文献1に記載された周知の制御であり、本発明の特徴とするものではないため、その詳細な流れについては説明を省略する。
【0039】
本実施の形態1では、自動制御として、図4に示す処理を実行するが、本実施の形態1では、従来から実行されている室内空調環境を自動的に制御する自動制御に相当する部分と、本実施の形態1の特徴とする窓部開対応制御に相当する部分と、を区別するために、従来から実行されている自動制御に相当する処理を、通常自動制御と称している。
【0040】
また、空調ユニット1の作動モードとしては、上述の自動制御が成されるオートモードとマニュアルモードとの2通りが存在する。これらオートモードとマニュアルモードとの切り換えは、通常は、乗員が設定スイッチ群41を操作することで成される。また、マニュアルモードでは、設定スイッチ群41の手動操作に従って、空調ユニット1のファン風量や吹出空気温度や吹出モードが決定される。
【0041】
上記ステップS1に続く、ステップS2〜S11およびS21〜S24が、本実施の形態1の特徴とする窓部開対応処理における処理の流れを示している。
【0042】
ステップS2では、窓部が開かれていることを示す窓開フラグWOFが1であるか否か判断し、WOF=1の場合はステップS21に進み、WOF=0の場合は、ステップS3に進む。
【0043】
ステップS3では、パワーウインド出力部43の出力に基づいて、窓部が閉状態から開状態へ切り換わったか否か判定し、窓部が閉から開へ切り換わった場合には、ステップS4に進み、一方、窓部が閉じられている場合には、ステップS1の通常自動制御に戻る。
【0044】
ステップS4では、窓部が開かれていることを示す窓開フラグWOFを1に設定する。
【0045】
ステップS5では、窓部が開かれた時点の空調ユニット1の制御状態を保存する。本実施の形態1では、制御状態として、ファン風量とエアミックスドア開度とを保存する。なお、エアミックスドア開度は、吹出空気温度に相当し、これにファン風量を乗じることで、空調ユニット1から車室に対して出力される熱量に比例した値となる。
【0046】
続くステップS6では、車速センサ44から得られる現在の車速Vnkm/hが、あらかじめ設定された設定車速Xkm/h以上であるか否か判断し、Vn≧Xの場合は、ステップS7に進み、Vn<Xの場合は、ステップS1に戻る。なお、この設定車速Xkm/hは、本実施の形態の場合、停車時や後退時および徐行時を除く前進走行中であると判断できる速度であり、例えば、10km/h程度に設定されている。
【0047】
ステップS7では、空調ユニット1のインテークドア21の制御状態が内気循環モードであるか否か判断し、内気循環モードの場合にはステップS8に進み、外気導入モードの場合には、ステップS8をスキップしてステップS9に進む。
【0048】
ステップS8では、外気導入フラグOAFを1に設定し、空調ユニット1のインテークドア21を外気導入モードに切り換える。なお、外気導入フラグOAFが1にセットされたときには、ステップS1の通常自動制御の制御判断に関わりなくインテークドア21は外気導入モードに保持される。
【0049】
次のステップS9では、喫煙センサ45が喫煙を検出しているか否か判断し、喫煙検出時には、ステップS1に戻り、非喫煙検出時には、ステップS10に進む。
【0050】
ステップS10では、非喫煙と判断されてから、あらかじめ設定された判断基準時間Ysec以上経過したか否か判断し、Ysec以上経過した場合には、乗員が現在の室内環境を不快に感じていると判断してステップS11に進む、一方、Ysec以上経過していない場合には、ステップS1に戻る。なお、このステップS10では、非喫煙判断からの経過時間を判断しているが、このステップS10へは、窓部が開かれた場合に達するステップであり、この経過時間は、窓部が開かれ、かつ、非喫煙判断となってからの経過時間を意味する。この判断基準時間Ysecは、車室内の換気を終えるのに必要な時間が設定されており、本実施の形態では、60secに設定されている。
【0051】
ステップS11では、空調ユニット1の制御状態(ファン風量およびエアミックスドア開度)を、ステップS5において保存した制御状態とし、かつ、ステップS1の通常自動制御をキャンセルしてマニュアルモードに移行する。すなわち、ステップS2〜S10の処理においてステップS10に至りこのステップS10でYESと判定されない場合、ステップS1に戻り、通常自動制御が実行される。しかし、ステップS10において、YESと判定されてステップS11に進んでマニュアルモードに切り換えられた場合には、この図4に示す自動制御はキャンセルされ、マニュアルモードに移行する。
【0052】
なお、マニュアルモードに切り換えられた場合、ステップS5において保存されたエアミックスドア開度およびファン風量と、ステップS8において設定された外気導入フラグOAFは、次に、設定スイッチ群41が操作されるか、イグニッションスイッチ46がOFFに切り換えられるか、のいずれかでリセットされる。この時点で、空調ユニット1の作動状態が、設定スイッチ群41の操作状態に一致した作動状態となる。
【0053】
ステップS21〜S24は、窓部が開状態から再び閉状態となった場合の処理で、ステップS21では、パワーウインド出力部43の出力に基づいて、窓部が開状態から閉状態に変わったか否か判断し、開状態のままであればステップS6へ進む。一方、開状態から閉状態へ変わった場合には、ステップS22に進む。
ステップS22では、窓開フラグWOFを0にリセットする。
【0054】
次のステップS23では、外気導入フラグOAFが1にセットされているか否か判断し、1にセットされていない場合には、そのままステップS1に戻り、1にセットされている場合には、ステップS24に進んで外気導入フラグOAFを0にリセットしてインテークドア21を内気循環へ切り換えてからステップS1に戻る。
【0055】
次に、実施例の作用を説明する。
(通常時)
設定スイッチ群41においてオートモードが選択されている場合には、コントロールユニット2は、自動制御を実行し、設定スイッチ群41により設定した室温を形成すべく、空調ユニット1の作動を制御する。
【0056】
このように空調ユニット1の自動制御が実行されている場合には、一般に、窓部は閉じられており、図4のフローチャートでは、ステップS2,S3においてNOと判断されるため、ステップS1→S2→S3→S1のループで処理が繰り返される。
【0057】
≪窓部開時≫
次に、自動制御を行っている前進走行中に、乗員が窓部を開けた場合について説明する。この窓部を開ける状況として、車内喫煙により換気を行いたい場合と、乗員が自動制御により形成された室内環境を不快と感じ、窓部を開けて外気と熱交換を行う場合が考えられる。そこで、これらの場合の作動を説明する。
【0058】
(喫煙換気時)
喫煙による換気を行う場合、喫煙センサ45により喫煙が検出される。そこで、図4のフローチャートでは、ステップS1→S2→S3と進み、窓部が開かれたことによりステップS3でYESと判断され、ステップS4に進んで、窓開フラグWOFが0から1にセットされ、ステップS5において、その時点のファン風量およびエアミックスドア開度が保存される。
【0059】
さらに、ステップS6→S7に進み、インテークドア21が内気循環モードであるか否か判断され、内気循環である場合には、ステップS8に進んで、インテークドア21が外気導入モードに切り換えられる。そして、ステップS9に進み、喫煙検出によりステップS1に戻る。
【0060】
このように、喫煙により窓部を開いた場合には、外気導入モードに切り換えられて、車室内の換気を促進させる状態とした上で、ステップS1の通常自動制御が続行され、室内空調環境は、あくまで設定スイッチ群41により設定された室温に保つ制御が続行される。このように、換気は促進させながらも、窓部を開いたことによる室内空調環境の変化は極力抑える制御が成される。また、外気導入モードとすることにより、いわゆるウインドスロップ音および風切り音の発生が抑制される。
【0061】
そして、上述のように窓部が開かれて外気導入モードに切り換えられた後は、ステップS2においてYESと判定されるため、ステップS1→S2→S21と流れ、かつ、ステップS21でNOと判定されるため、S21→S6→S7→S9と流れる。そこで、これ以降は、窓部が開状態に維持されている間、このステップS1→S2→S21→S6→S7→S9→S1のループで処理が繰り返される。したがって、喫煙が続行されている間は、上述した外気導入モードで通常自動制御が維持される。
【0062】
また、喫煙を終了しても窓部を開けたままにしている場合、喫煙センサ45において非喫煙検出となっても、室内換気を終えるのに必要な時間(Ysec)が経過するまでは、上述のループにおいてステップS9からS10へと進んでからステップS1へ戻るループで処理が繰り返され、この時点でも、外気導入モードで通常自動制御が実行され、換気促進と室内空調環境の抑制とが図られる。
【0063】
また、喫煙の終了前後に乗員が窓を閉じた場合には、ステップS21において、窓部が開から閉へ切り換わったと判断されて、次のステップS22において、窓開フラグWOFが0にリセットされ、また、外気導入フラグOAF=1にセットされている場合には、ステップS23→S24の処理により内気循環へ戻され、かつ、外気導入フラグOAFが0にリセットされる。
【0064】
したがって、窓部を開いたことによりステップS8において、強制的に切り換えた外気導入モードはキャンセルされて、窓部を開く前の内気循環モードに戻された上で、通常自動制御が実行される。
【0065】
(不快熱交換時)
次に、車両用空調装置による自動制御が不快で、室内温度環境を外気に近付ける意図で、窓部を開いた場合の作動について説明する。
【0066】
この場合、窓部を開いたことにより、上記喫煙時と同様に、ステップS1→S2→S3→S4→S5→S6→S7と進み、内気循環モードである場合には、ステップS8において外気導入モードに切り換えた後、ステップS9へ進む。
【0067】
しかし、換気が目的の場合、喫煙が検出されないことから、上記の喫煙時とは流れが異なり、ステップS9からステップS10に進んで、非喫煙判断からの経過時間が判定され、この経過時間がYsecに達するまでは、ステップS1→S2→S21→S6→S7→S9→S10→S1のループで処理が繰り返される。
【0068】
その後、窓部が開かれ、かつ、非喫煙検出からYsec(本実施の形態1では60sec)が経過すると、ステップS10でYESと判定され、ステップS11によりステップS5で保存されたファン風量およびエアミックスドア開度に設定した上で、マニュアルモードへ移行される。
【0069】
よって、空調ユニットは、一旦、保存されたファン風量およびエアミックスドア開度に固定され、通常自動制御が実行された場合のように、風量および熱交換量が増大されることはない。
【0070】
すなわち、窓部を開いた後、ステップS9においてNOと判定されるまでに少なくとも60secを要し、かつ、この間は、ステップS1による通常自動制御が実行されている。したがって、コントロールユニット2は、窓部を開いたことによる室内空調環境の変動を抑えるべく、ファン風量およびエアミックスドア開度を変動させて、空調ユニット1による熱交換量を増大させている場合があり得る。
【0071】
そこで、本実施の形態1では、マニュアルモードに移行する際に、このような変動に対応した制御を行っている状態でマニュアルモードに移行するのではなく、窓部を開く前の状態に戻して、マニュアルモードに移行するようにして、乗員が不快と感じている方向への制御がなされないようにしている。
【0072】
このように、室内環境を外気温に近づける目的のために窓を開いている場合には、空調ユニットがマニュアルモードに移行され、かつ、ファン風量およびエアミックス開度が窓部を開いた時点の状態に保持されているため、室内空調環境を外気環境に速やかに近付けることができる。
【0073】
つまり、乗員は、その時点の室内環境よりも外気環境の方が心地良いと判断して、窓部を開いたと判断し、室内環境を、外気環境へ速やかに移行させることができる。
【0074】
また、マニュアルモードに切り換えているため、窓部の解放による室内環境の変化で不十分な場合には、乗員は、設定スイッチ群41を手動操作することで、適宜、より自分の理想とする室内空調環境に近付けることができる。
【0075】
なお、このように乗員が設定スイッチ群41を手動操作した場合には、ステップS8で成された強制的な外気導入モードおよび、ステップS11において設定されたファン風量およびエアミックス開度はキャンセルされる。
【0076】
以上、説明したように、本実施の形態1では、車両用空調装置が自動制御を実行しているときに、乗員が窓部を開いた場合、喫煙による換気を目的とするのか、室内空調環境を変更することを目的とするのか、を的確に判断し、前者の場合には、自動制御を続行させることで、窓部を開けたことによる室内空調環境の変動を抑え、後者の場合には、自動制御をキャンセルしてマニュアルモードとすることで、換気により室内空調環境を速やかに変動させることができる。これにより、窓部を開けた場合の乗員の要求を的確に判断して、より快適な室内環境を得ることができるという効果が得られる。
【0077】
しかも、マニュアルモードに移行する際には、窓部を開いた時点の空調ユニット1の制御状態に戻して移行させるため、窓部を開いたことによる室内空調環境の変動を受けてコントロールユニット2がファン風量やエアミックスドア開度と変動させた状態のままマニュアルモードに移行させないようにした。このため、乗員の意図に反して、車両用空調装置が、換気による室内空調環境の変動を抑える方向に作動することを防止できる。
【0078】
さらに、本実施の形態1では、乗員の要求が自動制御を不快と感じての換気であると判断するのに、ステップS10において、非喫煙検出からYsecの時間を確保している。これにより、例えば、喫煙の際には、換気のために窓部を開き、喫煙終了後、室内の換気が十分に行われるまでの間窓部を開けることがあるが、このような場合の、誤判断を防止することができる。
【0079】
すなわち、ステップS10の判断基準時間Ysecを確保しない場合、上記のように喫煙後もしばらくの間、換気を行おうとしたときでも、即座にマニュアルモードに移行してしまって、乗員の意図に十分に対応できない結果となる。
【0080】
それに対し、本実施の形態1では、判断基準時間Ysecを確保しているため、このような誤判断を防止できる。
【0081】
しかも、本実施の形態1では、この判断基準時間Ysecを、室内の換気を終えるのに十分な時間である60secとしている。このため、この判断時間が短すぎる場合のように、喫煙による換気を行っているのに、不快による換気であると誤判断することを防止することができる。また、この判断時間が長すぎる場合のように、喫煙後に、室内温度を変更する目的で窓部を開けたままにしている場合に、喫煙による換気要求であると誤判断することも防止することができる。
【0082】
さらに、本実施の形態1では、窓部開対応処理の実行判断条件として、車速Vnkm/hが設定車速Xkm/h以上であるか否か判断し、設定車速Xkm/h以上である場合に実行するようにするとともに、この設定車速Xkm/hを10km/hとした。したがって、車庫入れや時に極低速で窓を開けたり、有料道路などの料金支払などのために停車状態で窓を開けたりした際には、この窓部開対応処理による、導入モードの切り換えや、マニュアルモードへの変更が成されることがない。
【0083】
さらに、実施の形態1では、喫煙センサ45が、車室内の熱に基づいて喫煙を検出するセンサであるため、臭気やガス濃度などの空気の汚れを検出して喫煙を検出するセンサを用いた場合と比べて、外気の汚れの影響で、喫煙を誤検出することを防止できる。
このため、走行中に乗員が窓を開けた場合に、排気ガスなど汚れた外気が車室内に入っても、この外気の汚れを喫煙による汚れと誤検出して、窓部開対応処理において換気要求と判断して自動制御を続行させることで、窓を開いて車室温度を外気温に近付けたいとする乗員の意思に反した制御が実行されることを防止し、より快適な車室内環境を提供することが可能となる。
【0084】
(実施の形態2)
次に、図5〜図7に基づいてこの発明の実施の形態2の車両用空調装置について説明する。なお、実施の形態1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と相違する部分を中心として説明する。
【0085】
本実施の形態2では、実施の形態1の喫煙センサ45とは異なる喫煙センサ245が用いられている。
この喫煙センサ245は、臭気またはガス濃度に基づいて空気の汚れ度合いを検出するセンサが用いられており、排気ガスなど外気の汚れによる誤検出を防止するために、図5に示すように、外気センサ245aと車室センサ245bとの2つのセンサが設けられている。
【0086】
外気センサ245aは、外気中の臭気またはガスを検出可能に、図6に示すように、空調ユニット1の空気取入口11の外気導入側に設けられている。
【0087】
一方、車室センサ245bは、車室内喫煙による臭気またはガスを検出可能に図外の車室の天井やピラーなどの車室内に設置されている。
【0088】
そして、実施の形態2では、喫煙センサ245による喫煙の判定処理が実施の形態1と異なっている。
すなわち、図7のフローチャートに示すように、ステップS8に続くステップS201では、外気センサ245aの出力値Saと車室センサ245bの出力値Sbとを読み込む。なお、これらのセンサ245a,245bの出力は、臭気またはガス濃度など空気の汚れ度合いが高いほど、出力値が大きくなるものとする。
【0089】
次の、ステップS202では、車室センサ245bの出力値Sbと、外気センサ245aの出力値Saとの差が、あらかじめ設定された喫煙検出閾値αよりも大きいか否か判定する。そして、喫煙検出値αよりも大きい場合、すなわち、α<Sb−Saの場合は、喫煙検出としてステップS1に戻り、一方、喫煙検出値αよりも小さい場合、すなわち、α>Sb−Saの場合は、非喫煙として、ステップS10に進む。
【0090】
このように、実施の形態2では、喫煙センサ245として、臭気またはガス濃度などの空気の汚れ度合いを検出するセンサを用いながらも、喫煙センサ245は、車室センサ245bの出力値Sbと、外気センサ245aの出力値Saとの差に基づいて、車室内の喫煙の有無を判定するようにした。
このため、走行中に乗員が窓を開けた場合に、外気導入により排気ガスなど汚れた外気が車室内に入っても、この外気の汚れを喫煙による汚れと誤検出して、窓部開対応処理において換気要求と判断して自動制御を続行させることで、窓を開いて車室温度を外気温に近付けたいとする乗員の意思に反した制御が実行されることを防止し、より快適な車室内環境を提供することが可能となる。
なお、他の構成および作用効果については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0091】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態1および実施の形態2を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態1および実施の形態2に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0092】
すなわち、窓部として、実施の形態1および実施の形態2では、サイドドアに設けられたウインドウあるいは天井に設けられたサンルーフを例に挙げたが、これらの他にも、バックドアに設けられた窓など、換気が可能な窓部であれば、他の形態の窓であっても本発明を適用することができる。
【0093】
また、実施の形態1および実施の形態2では、窓部の開閉状態をパワーウインド出力部43の出力で検出するようにした例を示したが、これに限定されるものではなく、手動で開閉を行うものでは、窓ガラス、リッドなどの開閉部材の位置を直接検出するセンサやスイッチを用いることができる。
【0094】
また、実施の形態1および実施の形態2では、窓部開対応処理の実行判断条件として、車速Vnkm/hが設定車速Xkm/h(X=10)以上であるか否か判断するようにした例を示したが、この設定速度との比較は、行った方が好ましいものではあるが、制御開始条件として、他にも非喫煙検出からの経過時間を判断するようにしているため(ステップS10)、設定速度との比較を行わなくてもよい。また、比較を行うにしても、この設定車速Xkm/hは、10km/hに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の要部を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の空調ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1の車両用空調装置が設けられたインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の自動制御および窓部開対応処理の制御流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の要部を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の空調ユニットの構成を示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の自動制御および窓部開対応処理の制御流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 空調ユニット
2 コントロールユニット(制御手段)
11 空気取入口
15 ブロワファン
16 エバポレータ
17 ヒータコア
18 エアミックスドア
21 インテークドア
41 設定スイッチ群(設定手段)
42 環境センサ群(環境検出手段)
43 パワーウインド出力部(開閉検出手段)
44 車速センサ
45 喫煙センサ
46 イグニッションスイッチ
245 喫煙センサ
245a外気センサ
245b車室センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気循環モードと外気導入モードとを形成可能な空調ユニットと、
車室内の温度環境に関する情報を検出する環境検出手段と、
車室内に設けられ、車室内の温度環境の設定が行われる設定手段と、
前記環境検出手段の検出に基づいて、前記設定手段の設定に応じた室内環境を形成するべく空調ユニットを作動させる自動制御を実行する制御手段と、
を備えた車両用空調装置であって、
前記制御手段の入力手段として、喫煙を検出する喫煙センサと、換気可能な窓部の開閉状態を検出する開閉検出手段と、を備え、
前記制御手段は、自動制御の実行時に前記窓部の開状態が検出されたときには、窓部開対応処理を実行し、
この窓部開対応処理は、まず、窓部が開かれた時点の空調ユニット制御状態を読み込み、かつ、内気循環モードであれば外気導入モードに切り換え、さらに、喫煙が検出されている場合には、換気要求と判断して自動制御を続行させ、一方、喫煙が検出されていない場合には、非換気要求と判断して、空調ユニットを、前記読み込んだ制御状態に保持するとともに、自動制御をキャンセルして空調ユニットを手動操作する手動モードに切り換える処理であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記喫煙センサとして、車室内の熱に基づいて喫煙を検出するセンサが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記喫煙センサとして、空気の汚れ度合いを検出するセンサが用いられ、
この喫煙センサが、外気の汚れ度合いを検出可能に設置された第1のセンサと、車室内空気の汚れ度合いを検出可能に設置された第2のセンサとを備え、かつ、第2のセンサが検出する車室内空気の汚れ度合いから第1のセンサが検出する外気の汚れ度合いを差し引いた値に基づいて喫煙の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−284038(P2007−284038A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43367(P2007−43367)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】