説明

車両用空調装置

【課題】乗員が体感する空調に違和感を覚えないように、オートエアコンにおける空調ダクトからの吹出し温度を調整する。
【解決手段】温度設定スイッチ41により設定された温度と、車室内気温センサ31、日射量センサ32、外気温センサ33による検出信号から制御部3により空調を行うオートエアコンにおいて、例えばオープンカーのルーフが開放すると、空調選択スイッチ42を操作可能とし、このスイッチ42のオンに連動して、車室内気温センサ31の制御部3への入力を遮断して、吹出し温度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室を区画形成する開閉可能な隔壁を備え、該隔壁を開放した状態で走行可能な車両に用いられる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の自動空調装置すなわちオートエアコンは、乗員が任意に設定できる設定温度Tsetとともに、車室内外の環境により決まる室内温度Tr、外気温度Tair、日射量Tsにより、必要吹出し温度Taoを決定して、車室内を設定温度に維持して快適な空調を行えるようにしている。しかし、オープンカーでルーフをオープンにした場合等、外気、日射あるいは走行風の巻き込み等を遮る隔壁がない場合、従来のオードエアコン制御のみでは、制御結果の空調に違和感を覚えることがあった。
【0003】
従来のオートエアコンにおいては、室内温度Trを検出する内気温度センサは、その車種に応じて最適と考えられる場所を選び、車種ごとに一律に同じ位置に配置されている。したがって、通常は乗員の周囲環境と内気温センサ周囲の環境と並行してほぼ同様に変化する。しかし、オープンカーでルーフをオープンにした場合等には、外気、日射あるいは走行風によっては、内気温度センサの検出値Trは、乗員が体感する温度と大きく乖離する場合がある。したがって、内気温センサの検出値Trに基づいて算出される吹出し温度Taoは、乗員の希望する吹出し温度とかけはなれてしまうことがあった。これは、オープンカーのルーフだけではなく、パワーウインドウを開放した場合にも起こることである。さらには、車室内を区分する開閉可能な壁あるいは窓を開放した場合にも、乗員がオートエアコンによる空調に違和感を覚えることがあった。
【0004】
従来、空調環境が乗員の温冷感に適合しない場合に、吹出し温度を変更できるようにすることが公知である(特許文献1参照)。しかしながら、内気温センサの検出温度と乗員の体感温度との相違に基づく問題を開示するものではなく、したがってこの問題点を解決しようとするものでもない。
【特許文献1】特開平7−172147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、乗員が体感する空調に違和感を覚えないように、オートエアコンにおける空調ダクトからの吹出し温度を調整する車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車室を区画形成する開閉可能な隔壁(5、6、7)を備え、該隔壁を開放した状態で走行可能な車両に用いられる車両用空調装置であって、目標温度を設定する温度設定スイッチ(41)と、前記隔壁の開放により使用可能となる空調選択スイッチ(42)と、車室内気温センサ(31)を含む環境状態を取得する各種センサ(31、32、33)と、前記温度設定スイッチ(41)によって設定された温度と前記各種センサ(31、32、33)からの入力とに基づいて、車室内空調を自動制御する制御部(3)とを備え、前記空調選択スイッチ(42)のオンに連動して、少なくとも前記車室内気温センサ(31)の前記制御部(3)への入力を遮断することを特徴とする。
【0007】
これにより、隔壁の開放により車室内の温度分布が大きく変化して、オートエアコンによる空調が乗員に違和感を与えるような場合に、乗員による空調選択スイッチの操作により吹出し温度を乗員の設定した温度に近づけて、乗員の違和感を少なくすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記各種センサは、さらに日射センサ(32)と外気温センサ(33)とを含み、前記空調選択スイッチのオンに連動して、さらに日射センサ(32)および外気温センサ(33)のいずれかの前記制御装置への入力を遮断するか、または日射センサ(32)および外気温センサ(33)の双方の前記制御装置への入力を遮断するものである。これにより、空調選択スイッチで実行される空調による吹出し温度を乗員の設定した温度にさらに近づけることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、車室を区画形成する開閉可能な隔壁(5、6、7)を備え、該隔壁を開放した状態で走行可能な車両に用いられる車両用空調装置であって、目標温度を設定する温度設定スイッチ(41)と、車室内気温センサ(31)を含む環境状態を取得する各種センサ(31、32、33)と、前記温度設定スイッチ(41)によって設定された温度と前記各種センサ(31、32、33)からの入力とに基づいて、車室内空調を自動制御する制御部(3)とを備え、前記隔壁の開放に連動して、少なくとも前記車室内気温センサ(31)の前記制御部(3)への入力を遮断することを特徴とする。
【0010】
これにより、隔壁の開放により車室内の温度分布が大きく変化して、オートエアコンによる空調が乗員に違和感を与えるような場合に、隔壁の開放に連動して吹出し温度を乗員の設定した温度に近づけて、乗員の違和感を少なくすることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記各種センサは、さらに日射センサ(32)と外気温センサ(33)とを含み、前記隔壁の開放に連動して、さらに日射センサ(32)および外気温センサ(33)のいずれかの前記制御装置への入力を遮断するか、または日射センサ(32)および外気温センサ(33)の双方の前記制御装置への入力を遮断するものである。これにより、空調選択スイッチで実行される空調による吹出し温度を乗員の設定した温度にさらに近づけることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記隔壁は、車室を外気から遮断する隔壁(5、6)であり、外気の車室内への流入により、乗員の空調に対する違和感が生じても、その違和感を少なくすることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記隔壁は、車室を区分する隔壁(7)であり、車室を区分している隔壁が開放され、車両の他の場所からの空気の流入により乗員の空調への違和感が発生する場合でも、その違和感を少なくすることができる。
【0014】
なお、発明の構成要素に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明による車両用空調装置の第1の実施形態を模式的に示す図であり、図2は、本発明を適用した一例であるオープンカーを模式的に示す図である。本発明が適用される隔壁の一例として、オープンカーの可動ルーフを示すが、これに限定されるものではない。車室と外気とを区画する部材であり、その部材を開放したまま走行できるものできるものは、本発明の隔壁に相当する。例えばパワーウインドウのような窓であってもよい。さらには車室内を区切る可動壁あるいは可動窓を、本発明の隔壁とみなすこともできる。いずれにせよ、本発明の隔壁は、車室を区分する開閉可能な部材であって、その部材を開放したまま走行できるもので、その部材の開放により乗員が空調に対する違和感を覚えるような部材である。
【0016】
図1に示すように、車両用空調装置1の空気流路となる空調ダクト2の上流端には、車室内気を吸入するための内気吸入口と外気を吸入するための外気吸入口を選択的に開閉する吸入口切換ドア11が設けられている。この吸入口切換ドア11は、内外気切替えサーボモー12によって開閉される。
【0017】
吸入口切換ドア11の下流には、送風ブロワ13が配設されており、この送風ブロワ13により外気吸入口あるいは内気吸入孔から吸入された空気が、吹出口の方向に送風される。
【0018】
送風ブロワ13の下流には、空気を冷却するエバポレータ15が配設されており、送風ブロワ13により送風された空気はすべてこのエバポレータ15を通過する。エバポレータ15の下流には、空気を加熱するヒータコア16が配設され、このヒータコア16は、車両を駆動するエンジン(図示せず)の冷却水を熱源として空気を加熱する。
【0019】
ヒータコア16の上流には、ヒータコア16を通る空気とヒータコアを通らない空気との風量割合を調節するエアミックスドア17が配設されている。エアミックスドア17の開度は、エアミックスサーボモータ18により調節される。その結果、冷風と温風の割合が調節され、空調温度が決定する。
【0020】
空調ダクト2の最下流には、車室内に空調空気を吹出す吹出し口と吹き出し口を切り替えるための吹出し口切替えドア20が設けられる。吹出し口切替えドア20は、吹出し口切替サーボモータ21により開度が調節される。図1には、吹き出し口の切り替えのための1組の吹出し口切替えドア20と吹出し口切替サーボモータ21が、模式的に例示されている。
【0021】
空調ダクト2の吹出し口としては通常、図2に示すように、乗員の上半身に空調空気を吹き出すためのフェイス開口23(図2では2個の開口が示されている)と、乗員の足元に空気を吹き出すためのフット開口24と、フロントガラスの内面に向かって空気を吹き出すためのデフロスタ開口25が設けられる。実際には、それぞれが吹出し口切替ドアを備え、これらのドアを連動させて、それぞれの開口を開閉することにより、吹出しモードが切替えられる。さらには、これらのドアの開度を調節することにより、各吹き出し口からの風量が調節可能である。
【0022】
オートエアコンを制御するために電子制御装置(ECU)3が備えられる。ECU3は中央演算装置(CPU)、随時読み出し書き込み可能な記憶装置(RAM)及び読み出し専用の記憶装置(ROM)等を備えている。ECU3は、当該車両のイグニッションスイッチ(図示せず)のON時にバッテリ(図示せず)から給電されて作動状態になり、この空調装置1の作動を開始させるエアコンスイッチのON時にECU3内に記憶されたコンピュータプログラムの実行を開始する。
【0023】
車両には、車室内の温度を検出する内気温センサ31、車室内に侵入する日射量を検出する日射センサ32、外気の温度を検出する外気温センサ33が設けられ、さらに乗員により所望の車室内温度Tsetを設定できる温度設定スイッチ41が設けられる。
【0024】
ECU3は、これらセンサ31〜33、および温度設定スイッチ41からの入力信号に基づいて、オートエアコン動作を行う。すなわち、ブロアモータ14、エアミックスドアサーボモータ18や、内外気切替えドア11を駆動するサーボモータ12や、吹き出し口切替えドア20を駆動するサーボモータ21に制御信号を出力して、温度、風量を調整する。なお、オートエアコンでは通常、エバポレータ後センサによる情報等その他の情報を考慮するが、本実施形態の動作には直接関係しないので説明を省略している。
【0025】
本実施形態では、さらに空調を選択あるいは切替えることができるスイッチであって、吹出し温度を好みの温度に近づけることができる空調選択スイッチ42が設けられる。空調選択スイッチ42は、オープンカー(図2)のルーフ5が、ルーフ開スイッチ43のオンにより開放された場合に、動作可能となるスイッチである。ルーフ5が開放された後、動作可能となった空調選択スイッチ42を操作することにより、ECU3への内気温センサ31の検出信号の入力を遮断する。
【0026】
図3は、第2の温度設定スイッチである空調選択スイッチ42の動作を説明するブロック図である。オープンカーのルーフ開スイッチをオンすると、ルーフ5が開放されるとともに、空調選択スイッチ42が動作可能となる。ここで、空調選択スイッチ42をオンにすると、ECU3は、内気温センサ31の検出信号の入力を遮断して、日射センサ32と外気温センサ33との検出信号と、温度設定スイッチ41で定められたTsetに基づいて、吹出し温度Taoを算出する。次いで、ECU3は、算出された吹出し温度Taoに基づいて、エアミックスドア17の開度を決定して、エアミックスサーボモータ18に対する切替え指示を作成する。エアミックスサーボモータ18は、ECU3から指示を受信すると、指示に従ってサーボモータを駆動し、エアミックスドア17の開度を制御して、吹出し温度を調整する。エアミックスドアの開度は、ポテンショメータ19により位置検出信号としてECU3に送られ、サーボモータが正常に動作しているかが検証される。
【0027】
このように、ルーフの開放により、内気温センサ33の検出信号が乗員の体感温度と乖離するような場合でも、空調選択スイッチ42をオンすることにより、内気温センサ31の出力を考慮しないで吹出し温度Taoを決定するので、乗員に違和感を与えない空調を実行することができる。
【0028】
さらに、空調選択スイッチ42をオンすることにより、内気温センサ31の検出信号のみならず、日射センサ32と外気温センサ33の検出信号のいずれかあるいはその両方について、ECU3への入力を遮断するようにしてもよい。これらの選択は、空調選択スイッチ42をオンにした後、乗員が自由に選択できるようにすることもできる。また、本実施形態では、空調選択スイッチ42は、センサ出力を遮断する信号をECUに与えるのみで、温度の設定は、温度設定スイッチ41の設定に従うようになっている。しかし、空調選択スイッチ42をオンすると、温度設定スイッチ41の設定をキャンセルして、空調選択スイッチ42により温度設定をするようにもできる。なお、乗員への設定温度の表示は、温度自体の値を表示するようにしてもよいが、最低温度を与えるMAX−COOLを0%、最高温度を与えるMAX−HOTを100%とするパーセント表示でもよい。
【0029】
また、本実施形態では、オープンカーのルーフの開放により、空調選択スイッチ42を操作可能にしたが、図5に示す、パワーウインドウ6の開放により、空調選択スイッチ42を操作可能にすることもできる。すなわち、車室と外気とを遮断している隔壁が開放され、そのまま走行可能であるような車両には本発明を適用することができる。さらには、図5に示すような、車室内を区分する壁あるいは窓等の隔壁7があり、その隔壁が可動である場合には、可動隔壁が開放されたことにより、空調選択スイッチ42を操作可能にすることもできる。いずれも、車室を区分する隔壁の開放により乗員の空調に対する違和感が起きる場合、その違和感を減少させることができる。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態の空調制御動作を示すフローチャートである。
【0031】
空調制御がスタートすると、まずステップS1で、オープンカーのルーフ5(図2)が開放されたか否かが判定される。ルーフ5が開放されたか否かを判定する手段は、ルーフ開放スイッチ43のオン・オフにより判定することができる。また、これに代えて、ルーフの開放をセンサにより検出するようにしてもよい。
【0032】
ルーフ5が開放されていなければ、ステップS5に進み、温度設定スイッチ41により乗員の設定した温度Tsetと、内気温センサ31と、日射センサ32、外気温センサ33を含む各種センサの入力信号に基づいて必要吹出し温度Taoを算出して、従来どおりのオートエアコン制御を行う。
【0033】
ステップS1で、ルーフ5がオープンであると判定されると、ステップS2で、空調選択スイッチ42が使用可能であることを乗員に知らせる。乗員に知らせる方法としては、空調選択スイッチ42の動作表示を行うスイッチランプを点滅させるようにしてもよい。また、カーナビ用ディスプレイあるいは各種計測値を表示する表示パネル等のインパネに配置されたディスプレイ上に、空調選択スイッチが使用可能であることを表示するようにしてもよい。さらには、音声により乗員に報知することもできる。
【0034】
次にステップS3で、空調選択スイッチ42がオンされたか否かが判定される。乗員が空調選択スイッチ42をオンして、所望の温度を設定した場合には、従来のオートエアコン制御に用いるセンサ出力のうち、内気温センサ31の検出信号のECU3への入力を遮断する。したがって、ECU3は、内気温センサ31の検出信号を使用しないで、乗員が設定した所望の温度Tsetと、日射センサ32、外気温センサ33の検出信号に基づいて、吹出し温度Taoを算出する。このようにすると、オープンカーのルーフを開放することにより、内気温センサ31で検出される温度と乗員の感じる温度とが乖離したとしても、乗員が設定した温度を、適切に吹出し温度Taoに反映することができ、乗員に違和感を与えない空調を実行することができる。
【0035】
なお、場合によっては、内気温センサ31の検出信号のみならず、日射センサ32または外気温センサ33の検出信号のECU3への入力を遮断するようにしてもよい。さらには、内気温センサ31と、日射センサ32と、外気温センサ33のすべての検出信号を遮断するようにして、乗員が空調選択スイッチ42を用いて、設定した温度Tsetそれ自体を吹出し温度とするようにしてもよい。
【0036】
ステップS3で、空調選択スイッチ42が使用可能であるとしても、乗員が空調選択スイッチ42をオンにしないときは、ステップS4に進み、従来どおりのオートエアコン制御を続行する。乗員が空調選択スイッチ42をオンにしない場合、所定の時間が経過すると、空調選択スイッチ42の使用可能を乗員に知らせる報知を終了するようにしてもよい。ただし、ルーフ5が開放されている場合は、空調選択スイッチ42の使用はいつでも可能である。
【0037】
図6〜8に、本発明の第2の実施形態を示す。第1の実施形態では、オープンカーの可動ルーフが開放したことにより、空調選択スイッチの操作を可能として、乗員が空調選択スイッチを操作することにより内気温センサの入力を遮断して、乗員の設定した温度に近い吹出し温度とするようにしている。本実施形態では、乗員の空調選択スイッチの操作を介することなく、オープンカーの可動ルーフが開放したことを検出すると、自動的に内気温センサの入力を遮断するようにする。
第2の実施形態は、第1の実施形態の空調選択スイッチ42を省略した以外は、第1の実施形態と同一である。以下、変更のない部材についての説明は省略して、変更点のみを説明する。
【0038】
図6は、第2の実施形態である車両用空調装置を模式的に示す図であり、図7は、図1に示す第2の実施形態の要部を示す。オープンカーのルーフ5が、ルーフ開スイッチ43のオンにより開放されると、ルーフ開スイッチ43のオン信号が、ECU3に入力される。ECU3は、ルーフ開スイッチ43のオン信号が入力されると、内気温センサ31の検出信号のECU3への入力を遮断する。
【0039】
ECU3は、ルーフ開の信号の入力により、内気温センサ31の検出信号の入力を遮断して、日射センサ32と外気温センサ33との検出信号と、温度設定スイッチ41で定められたTsetに基づいて、吹出し温度Taoを算出する。次いで、ECU3は、算出された吹出し温度Taoに基づいて、エアミックスドア17の開度を決定して、エアミックスサーボモータ18に対する切替え指示を作成する。エアミックスサーボモータ18は、ECU3から指示を受信すると、指示に従ってエアミックスサーボモータ18を駆動し、エアミックスドア17の開度を制御して、吹出し温度を調整する。エアミックスドアの開度は、ポテンショメータ19により位置検出信号としてECU3に送られ、サーボモータが正常に動作しているかが検証される。
【0040】
このように、第2の実施形態では、ルーフの開放に連動して、内気温センサ31の出力を考慮しないで吹出し温度Taoを決定するように動作するので、乗員の手を煩わせることなく、乗員に違和感を与えない空調を実行することができる。
【0041】
さらに、ルーフの開放に連動して、内気温センサ31の検出信号のみならず、日射センサ32と外気温センサ33の検出信号のいずれかあるいはその両方について、ECU3への入力を遮断するようにしてもよい。また、本実施形態では、オープンカーのルーフの開放に連動して動作する例を示したが、パワーウインドウの開放、あるいは車室内を区分する隔壁の開放に連動させることもできる。いずれも、車室を区分する隔壁の開放により乗員の空調に対する違和感が起きる場合、その違和感を減少させることができる。
【0042】
図8は、本発明の第2の実施形態の空調制御動作を示すフローチャートである。空調制御がスタートすると、まずステップS11で、オープンカーのルーフ5(図2)が開放されたか否かが判定される。ルーフ5が開放されたか否かを判定する手段は、ルーフ開放スイッチ43のオン・オフにより判定することができる。またこれに代えて、ルーフの開放を例えばマグネットセンサのようなセンサにより検出するようにしてもよい。
【0043】
ルーフ5が開放されていなければ、ステップS13に進み、温度設定スイッチ41により乗員の設定した温度Tsetと、内気温センサ31、日射センサ32、外気温センサ33を含む各種センサの入力信号に基づいて必要吹出し温度Taoを算出して、従来どおりのオートエアコン制御を行う。
【0044】
ステップS11で、ルーフ5がオープンであると判定されると、ステップS12で、従来のオートエアコン制御に用いるセンサ出力のうち、内気温センサ31の検出信号のECU3への入力を遮断する。したがって、ECU3は、内気温センサ31の検出信号を使用しないで、乗員が設定した所望の温度Tsetと、日射センサ32と外気温センサ33との検出信号に基づいて、吹出し温度Taoを算出する。このようにすると、オープンカーのルーフを開放することにより、内気温センサで検出される温度と乗員の感じる温度とが乖離したとしても、乗員が設定した温度を、適切に吹出し温度Taoに反映することができ、乗員に違和感を与えない空調を実行することができる。
【0045】
場合によっては、ルーフの開放に連動して、内気温センサ31の検出信号のみならず、日射センサ32または外気温センサ33のいずれかの検出信号のECU3への入力を遮断するようにしてもよい。さらには、内気温センサ31と、日射センサ32と、外気温センサ33と、のすべての検出信号を遮断するようにして、設定した温度Tsetそれ自体を吹出し温度とするようにしてもよい。
【0046】
さらに、カーナビ用ディスプレイあるいは各種計測値を表示する表示パネル等のインパネに配置されたディスプレイ上に、ルーフ開放により空調の変更があったことを表示するようにしてもよい。さらには、音声により乗員に報知することもできる。
【0047】
なお、図9に示すように、ルーフ開スイッチ43とECU3との間に、キャンセルスイッチ45を介在させることもできる。ルーフの開放に連動して、内気温センサ31のECU3への入力を遮断する制御を行っている場合でも、必要があれば、キャンセルスイッチ45を操作して、ルーフ開放の信号をECU3に入力させないようにして、内気温センサ31の入力を使用する従来の空調を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の車両用空調装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を適用する車両の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の動作を説明するブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態を適用する車両の他の例を示す図である。
【図6】本発明の車両用空調装置の第2の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の動作を説明するブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 空調装置
2 空調ダクト
3 ECU
5 ルーフ
6 パワーウインドウ
7 車室内窓
11 内外気切替えドア
12 内外気切替えサーボモータ
13 ブロア
14 ブロワモータ
15 エバポレータ
16 ヒータコア
17 エアミックスドア
18 エアミックスサーボモータ
19 ポテンショメータ
20 吹き出し口切替えドア
21 吹出し口切替えサーボモータ
31 内気温センサ
32 日射センサ
33 外気温センサ
41 温度設定スイッチ
42 空調選択スイッチ
43 ルーフ開スイッチ
45 キャンセルスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を区画形成する開閉可能な隔壁(5、6、7)を備え、該隔壁を開放した状態で走行可能な車両に用いられる車両用空調装置であって、
目標温度を設定する温度設定スイッチ(41)と、
前記隔壁の開放により使用可能となる空調選択スイッチ(42)と、
車室内気温センサ(31)を含む環境状態を取得する各種センサ(31、32、33)と、
前記温度設定スイッチ(41)によって設定された温度と前記各種センサ(31、32、33)からの入力とに基づいて、車室内空調を自動制御する制御部(3)と
を備え、
前記空調選択スイッチ(42)のオンに連動して、少なくとも前記車室内気温センサ(31)の前記制御部(3)への入力を遮断することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記各種センサは、さらに日射センサ(32)と外気温センサ(33)とを含み、
前記空調選択スイッチのオンに連動して、さらに日射センサ(32)および外気温センサ(33)のいずれかの前記制御装置への入力を遮断するか、または日射センサ(32)および外気温センサ(33)の双方の前記制御装置への入力を遮断する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
車室を区画形成する開閉可能な隔壁(5、6、7)を備え、該隔壁を開放した状態で走行可能な車両に用いられる車両用空調装置であって、
目標温度を設定する温度設定スイッチ(41)と、
車室内気温センサ(31)を含む環境状態を取得する各種センサ(31、32、33)と、
前記温度設定スイッチ(41)によって設定された温度と前記各種センサ(31、32、33)からの入力とに基づいて、車室内空調を自動制御する制御部(3)と
を備え、
前記隔壁の開放に連動して、少なくとも前記車室内気温センサ(31)の前記制御部(3)への入力を遮断することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記各種センサは、さらに日射センサ(32)と外気温センサ(33)とを含み、
前記隔壁の開放に連動して、さらに日射センサ(32)および外気温センサ(33)のいずれかの前記制御装置への入力を遮断するか、または日射センサ(32)および外気温センサ(33)の双方の前記制御装置への入力を遮断する請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記隔壁は、車室を外気から遮断する隔壁(5、6)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記隔壁は、車室を区分する隔壁(7)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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