説明

車両用空調装置

【課題】十分な暖房機能を発揮できるだけの熱源を確実に確保すると共に、排気熱を効率良く利用できる車両用空調装置を提供することを目的とする
【解決手段】圧縮後の冷媒を第1の熱交換媒体と熱交換させ凝縮させるサブコンデンサ40、膨張後の冷媒を第2の熱交換媒体と熱交換させ蒸発させるサブエバポレータ42、車室内から排出される空気と前記第2の熱交換媒体とを熱交換させる排気熱交換器21、前記冷媒の流通経路を変更させる流路変更手段、前記第1の熱交換媒体を前記サブコンデンサ40からヒータコア13へ流通させるヒータコア加熱サイクル6、前記第2の熱交換媒体を前記排気熱交換器21から前記サブエバポレータ42へ流通させる排熱回収サイクル7を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる空調装置に関し、特に電気自動車等の暖房用熱源が不足しがちな車両において適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車の開発、又エンジンの高効率化等が盛んに行われているが、このような車両においては、従来のエンジン走行車のようにエンジン冷却水を暖房の熱源として用いることができない、又は困難であるため、十分な暖房機能を得るための熱源の確保が模索されている。
【0003】
このような状況の下、ヒートポンプで冷暖房を行う車両用ヒートポンプ式空調装置において、車室外からの導入空気と、車室内から車室外への排気空気とを熱交換させる排気熱回収用熱交換器を備え、これにより冷房時には車室外空気よりも冷たい空気を、暖房時には車室空気よりも暖かい空気を導入できるとされるものが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、別の従来技術として、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮後の冷媒を外気と熱交換させる室外熱交換器、圧縮後の冷媒を他の熱交換媒体と熱交換させる媒体間熱交換器、冷媒を減圧する減圧手段、減圧後の冷媒を車内へ吹き出される空気と熱交換させる蒸発器、減圧後の冷媒を車内から排出される空気と熱交換させる排気熱交換器、前記他の熱交換媒体を車内へ吹き出される空気と熱交換させるヒータ用放熱器、所定の条件に基づいて冷媒の循環経路を変更する冷媒バイパス手段を具備して構成され、これにより媒体間熱交換器が凝縮器として機能し、この媒体間熱交換器において冷媒の熱が他の熱交換媒体に伝導し、他の熱交換媒体の熱がヒータ用放熱器によって放熱されるので、エンジン冷却水を熱源としなくても、十分な暖房機能を発揮することができ、また排気熱交換器が蒸発器として機能することにより、外気よりも高温の車内空気から吸熱することができるので、COPを向上させることができるものが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−206433号公報
【特許文献2】特開2006−182344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるものについては、暖房起動直後は車室内温度が低く、車室外空気と車室内空気との熱交換を行っても、暖房性能の向上は少ない。また、ヒートポンプ式であることから、暖房時には車室外空気から吸熱する構成となるため、低気温時には着霜の問題が生じる。
【0006】
着霜の問題は、上記特許文献1に記載の構成のようなエバポレータ(蒸発器)の下流側にヒータコア(ヒータ用熱交換器)が配置されるHVACにおいてはほとんど生じることはないが、このような構成においては、暖房起動直後等ヒータコア温度が十分に上昇するまでの間は、乗員に不快感を与えないために、HVACからの吹出風量を少なくする等の処置がとられていた。しかし、上記特許文献2に開示されるような排気熱から冷媒蒸発のための吸熱を行うシステムにおいては、HVACからの吹出風量の減少が、排気熱回収の効果を損なうこととなるため、ヒータコア温度の不足時あっても、できるだけ車室内空気を排気熱交換器へ流すことが、COP向上のために必要になってくる。このような点で、改善の余地が残されていた。
【0007】
そこで、本発明は、十分な暖房機能を発揮できるだけの熱源を確実に確保すると共に、排気熱を効率良く利用できる車両用空調装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成を図る本発明の車両用空調装置は、冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮後の冷媒を外気と熱交換させ凝縮させるコンデンサ、圧縮後の冷媒を第1の熱交換媒体と熱交換させ凝縮させるサブコンデンサ、凝縮後の冷媒を膨張させる膨張手段、膨張後の冷媒をHVAC内の空気と熱交換させ蒸発させるエバポレータ、膨張後の冷媒を第2の熱交換媒体と熱交換させ蒸発させるサブエバポレータ、車室内から車室外へ排出される空気と前記第2の熱交換媒体とを熱交換させる排気熱交換器、前記冷媒の流通経路を変更させる流路変更手段、前記第1の熱交換媒体を、少なくとも前記サブコンデンサと、HVAC内の前記エバポレータの下流側に配置されるヒータコアとを流通させるヒータコア加熱サイクル、前記第2の熱交換媒体を、少なくとも前記排気熱交換器と、前記サブエバポレータとを循環させる排熱回収サイクルを具備することを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
上記構成によれば、圧縮後の冷媒をサブコンデンサに流すことで、ヒータコアを流通する第1の熱交換媒体(水等)を加熱することができる。排気熱交換器によって回収された車室内からの排気熱は、サブエバポレータにおいて冷媒の吸熱に利用されるので、COPを向上させることができる。これにより、エンジン冷却水等による熱源がなくても、効率の良い暖房を行うことができる。
【0010】
また、上記請求項1記載の構成において、前記ヒータコア加熱サイクルには、電熱線により前記第1の熱交換媒体を加熱可能な加熱器が接続されていることが好ましい(請求項2)。
【0011】
これにより、必要に応じて暖房力を強化することができる。
【0012】
また、上記請求項1又は2記載の構成において、前記排熱回収サイクルには、車載発熱体の熱を前記第2の熱交換媒体に伝導させる熱交換器が接続されていることが好ましい(請求項3)。
【0013】
上記車載発熱体としては、バッテリ、インバータ、走行用モータ等が挙げられる。これにより、排熱回収の効果をより大きくすることができる。
【0014】
また、上記請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成において、前記ヒータコアによる加熱が必要であり、且つ前記エバポレータによる冷却が不要な場合において、前記流路変更手段は、前記コンプレッサ→前記サブコンデンサ→前記膨張手段→前記サブエバポレータ→前記コンプレッサの順で冷媒を流通させ、前記ヒータコア加熱サイクルを駆動させ、前記排熱回収サイクルを駆動させることが好ましい(請求項4)。
【0015】
この状況は、例えば室内設定温度が高い場合や、除湿が不要である場合の暖房時であり、このような場合には、HVAC内のエバポレータを機能させる必要がないので、膨張後の冷媒をサブエバポレータに流し、排熱回収サイクルによって車室内等の排熱をサブエバポレータでの吸熱に利用する。これにより、高効率な暖房を行うことができる。
【0016】
また、上記請求項1〜4のいずれか1つに記載の構成において、前記ヒータコアによる加熱及び前記エバポレータによる冷却の両方が必要な場合において、前記流路変更手段は、前記コンプレッサ→前記サブコンデンサ→前記膨張手段→前記エバポレータ→前記コンプレッサの順で冷媒を流通させ、前記ヒータコア加熱サイクルの前記第1のポンプを駆動させることが好ましい(請求項5)。
【0017】
この状況は、例えば室内温度と設定温度が近い場合や、除湿が必要な場合であり、このような場合には、膨張後の冷媒を通常のエバポレータに流すことによって、所望の機能を得ることができる。
【0018】
また、上記請求項1〜5のいずれか1つに記載の構成において、前記HVAC内の前記ヒータコアの下流側の空気を、乗員を回避するように前記排気熱交換器へ送る排気熱交換器配風手段を具備することが好ましい(請求項6)。
【0019】
排熱を回収してCOPを向上させるには、排気熱交換器によく風を通し、ここでの熱交換が活発に行われるようにする必要がある。しかし、暖房要求時であってヒータコアが所定温度に達していない場合、HVACからの送風が乗員に当たると乗員に不快感を与えてしまう。そこで、HVACから乗員を回避するように排気熱交換器へ送風できるようにすることによって、乗員に不快感を与えることなく、排熱回収によるCOPの向上を図ることができる。
【0020】
また、上記請求項6記載の構成において、前記排気熱交換器配風手段は、暖房時において前記ヒータコアが目標温度に到達するまで作動することが好ましい(請求項7)。
【0021】
ヒータコアが目標温度まで到達した後には、HVACの通常の吹出口から送風しても、乗員に不快感を与えることはない。
【0022】
また、上記請求項6又は7記載の構成において、乗員を回避するように送風する方法としては、前記HVAC内と前記排気熱交換器が収納されるユニットケース内とを連通させる配管を車両の座席下に配設したり(請求項8)、前記HVAC内の空気を車室の天井に沿って前記排気熱交換器が配置される車両後方部まで送るための上方吹出口を設けたり(請求項9)、車両の後方部に開口部と、該開口部を開閉する開閉手段とを設けたりすることが好ましい(請求項10)。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、圧縮後の冷媒をサブコンデンサに流すことで、ヒータコアを流通する第1の熱交換媒体(水等)を加熱することができ、また排気熱交換器によって回収された車室内からの排気熱を、サブエバポレータにおいて冷媒の吸熱に利用するので、COPを向上させることができる。これにより、エンジン冷却水等による熱源がなくても、十分な暖房性能を獲得することができる。また、HVAC内のヒータコアの下流側の空気を、乗員を回避するように排気熱交換器へ送る排気熱交換器配風手段を具備することによって、乗員に不快感を与えることなく、COPを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。尚、異なる実施例において、同一又は同様の作用効果を奏する箇所についてはその説明を省略する。
【実施例1】
【0025】
本実施例に係る車両用空調装置1は、HVAC2、ドラフタ3、冷凍サイクル4、サブ冷凍サイクル5、ヒータコア加熱サイクル6、排熱回収サイクル7を有して構成されている。
【0026】
HVAC2は、温度や湿度を調整した空気を車室8内に送り出す装置であり、ユニットケース9内に外気又は内気を選択的に取り込むインテーク部10、空気流を発生させるHVACファン11、冷凍サイクル4を循環する冷媒の気化熱を利用して周辺空気を冷却するエバポレータ12、後述するヒータコア加熱サイクル6を循環する熱交換媒体の放熱により周辺空気を加熱するヒータコア13、エバポレータ12を通過した空気のヒータコア13への通過量を調節するためのエアミックス手段14、エバポレータ12及びヒータコア13により調整された空気を車室8内へ吹き出す吹出口を切り替える吹出口切替手段15を有して構成される。
【0027】
ドラフタ3は、車室8内の空気を車外に排出するための装置であり、車室8と連通する吸入口17及び車外と連通する排気口18を有するユニットケース19、ユニットケース19内に配置され空気流を発生させるドラフタファン20、ユニットケース19内の空気と後述する排熱回収サイクル7を循環する熱交換媒体とを熱交換させる排気熱交換器21を有して構成される。
【0028】
冷凍サイクル4は、R134a等の冷媒を圧縮するコンプレッサ30、圧縮後の冷媒を外気との熱交換により冷却し凝縮させるコンデンサ31、凝縮後の冷媒を膨張(減圧)させる第1の膨張弁32、膨張後の冷媒をユニットケース9内の空気からの吸熱により蒸発させるエバポレータ12、蒸発後の冷媒を気液分離し気相のみをコンプレッサ30へ送るアキュムレータ33を有して構成される。
【0029】
サブ冷凍サイクル5は、前記冷凍サイクル4と同一の冷媒を循環させるものであり、コンプレッサ30、サブコンデンサ40、第2の膨張弁41、サブエバポレータ42を有して構成される。サブコンデンサ40は、コンプレッサ30により圧縮された冷媒と、後述するヒータコア加熱サイクル6を循環する熱交換媒体とを熱交換させるものであり、この熱交換により冷媒が凝縮され、ヒータコア加熱サイクル6を循環する熱交換媒体が加熱される。第2の膨張弁41は、サブコンデンサ40により凝縮された冷媒を膨張させる。サブエバポレータ42は、第2の膨張弁41により膨張された冷媒と、後述する排熱回収サイクル7を循環する熱交換媒体とを熱交換させるものであり、この熱交換により冷媒が蒸発し、排熱回収サイクル7を循環する熱交換媒体が冷却される。
【0030】
また、上記冷凍サイクル4及びサブ冷凍サイクル5には、冷媒の流通経路を変更させる手段が設けられており、この手段は、コンプレッサ30から圧送された冷媒の流通経路を2方向に分岐する第1の分岐点55、第1の分岐路55とコンデンサ31との間に配された第1の開閉弁56、コンデンサ31の下流部に配された第1の逆止弁57、第1の逆止弁57と第1の膨張弁32との間に配される合流点58、エバポレータ12とアキュムレータ33との間に配される第2の合流点59、第1の分岐点55とサブコンデンサ40との間に配された第2の開閉弁63、サブコンデンサ40と第2の膨張弁41との間に配される第2の分岐点64、第2の分岐点64と第1の合流点58とを結ぶバイパス路68、バイパス路68中に上流側から順に配される第3の開閉弁65及び第2の逆止弁66から構成される。この構成により、第1の開閉弁56、第2の開閉弁63、第3の開閉弁65を制御することにより、冷媒の流通経路を適宜変更することができる(流通経路のバリエーションについては後述する)。
【0031】
ヒータコア加熱サイクル6は、水等の熱交換媒体が循環され、前記サブコンデンサ40、熱交換媒体に流れを発生させる第1のポンプ45、熱交換媒体を貯蔵可能であると共に車載バッテリを電源とする電熱線等により該熱交換媒体を加熱可能な電熱加熱器46、前記ヒータコア13を有して構成される。このサイクルにより、サブコンデンサ40及び電熱加熱器46により加熱された熱交換媒体の熱をヒータコア13で放熱させることができる。また、ハイブリッド車等のエンジンを備える車両にあっては、ヒータコア加熱サイクル6の熱交換媒体がエンジン冷却用のラジエータを経由するようにすることが好ましい。
【0032】
排熱回収サイクル7は、水等の熱交換媒体が循環され、前記サブエバポレータ、熱交換媒体に流れを発生させる第2のポンプ45、前記ドラフタ3内に設置された排気熱交換器21、バッテリ、インバータ等の発熱体51と熱交換が可能な熱交換器が流路に接続されて構成される。このサイクルによれば、本来車外に排出される車室8内空気の熱が排気熱交換器21により熱交換媒体に吸収されると共に、発熱体51の熱により熱交換媒体が加熱され、この熱がサブエバポレータ42においてサブ冷凍サイクル5及び冷凍サイクル4を流通する冷媒の気化熱として利用されるので、冷凍サイクル4(サブ冷凍サイクル5)のCOPを向上させることができる。
【0033】
上記構成の車両用空調装置1において、暖房時(エバポレータ12により冷気を生成させる必要のない時)には、図2に示すように、コンプレッサ30を駆動させ、第1の開閉弁56を閉鎖し、第2の開閉弁63を開放し、第3の開閉弁65を閉鎖することによって、図2中太線で示すように、コンプレッサ30→サブコンデンサ40→第2の膨張弁41→サブエバポレータ42→アキュムレータ33→コンプレッサ30の冷媒サイクルを構成する。そして、ヒータコア加熱サイクル6及び排熱回収サイクル7を機能させるために、第1のポンプ45及び第2のポンプ50、また必要に応じて電熱加熱器46を作動させる。
【0034】
これにより、ヒータコア加熱サイクル6の熱交換媒体を、サブコンデンサ40及び必要に応じて作動する電熱加熱器46により加熱した後にヒータコア13に流入させることができる。そして、排熱回収サイクル7を循環する熱交換媒体は、排気熱交換器21において車室8内から排出される空気の熱を吸収すると共に、発熱体51の熱を吸収し、サブエバポレータ42において膨張後の冷媒に吸熱される。この排熱回収サイクル7による排熱の利用により、サブ冷凍サイクル5のCOPは、通常の冷凍サイクル4を利用した場合よりも良くなる。
【0035】
図3に示すのは、中間温度設定時や除湿モード時(エバポレータ12及びヒータコア13の両方を機能させる必要がある場合)における状態である。この場合、コンプレッサ30を駆動させ、第1の開閉弁56を閉鎖し、第2の開閉弁63を開放し、第3の開閉弁65を開放することによって、図3中太線で示すように、コンプレッサ30→サブコンデンサ40→第1の膨張弁32→エバポレータ12→アキュムレータ33→コンプレッサ30の冷媒サイクルを構成する。そして、ヒータコア加熱サイクル6を機能させるために、第1のポンプ45、及び必要に応じて電熱加熱器46を作動させる。
【0036】
これにより、サブコンデンサ40によって凝縮された冷媒がバイパス路68を通って第1の膨張弁32及びエバポレータ12に流入するので、エバポレータ12に冷却又は除湿の機能を持たせることができる。また、ヒータコア加熱サイクル6の熱交換媒体がサブコンデンサ40及び必要に応じて作動する電熱加熱器46により加熱された後ヒータコア13に流入するので、ヒータコア13を空気の加熱器として機能させることができる。
【0037】
以上のように、本構成の車両用空調装置1によれば、コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒とヒータコア加熱サイクル6を循環する熱交換媒体との間で熱交換させるサブコンデンサ40、及び電熱加熱器46を具備することによって、エンジンによる発熱が少なくても(若しくは全くなくても)、暖房のための熱源を確実に確保することができる。また、ドラフタ3に設けられた排気熱交換器21や発熱体51を冷却する機構を有して構成される排熱回収サイクル7によって、通常排気される熱をサブエバポレータ42における冷媒の吸熱に利用することができるので、エネルギー利用の効率化を図ることができる。
【0038】
更に、本構成の車両用空調装置1は、図4に示すように、ドラフタ3へ空気を積極的に送るドラフタ配風手段70を具備している。このドラフタ配風手段70は、HVAC2内のヒータコア13下流側の部分とドラフタ3の吸入口17とを連通させる風路71を有して構成される。この風路71は、車両の座席の下に配設されており、その入口部分に開閉ドア72が設けられている。この構成により、HVAC2駆動時に、開閉ドア72を開放すると共にドラフタファン20を駆動させることにより、HVAC2内の空気が直接、即ち乗員に当たることなくドラフタ3に送られる。
【0039】
上記ドラフタ配風手段70は、初期の暖房起動時等において、車室8内の排熱を積極的に回収して利用することにより、冷凍サイクルの高効率化を図り、サブコンデンサ40での発熱量を増加させ、ヒータコア加熱サイクル6を介してのヒータコア13の加熱を促進させることを目的とするものである。暖房起動直後は、HVAC2内のヒータコア13下流側の空気は低温である場合が多く、この空気が乗員に当たることは快適性を損なうこととなるので、乗員を回避可能なドラフタ3までの配風路が必要であり、本実施例においては、風路71をフロア下に配置することによりこれを達成している。このドラフタ配風手段70により、エネルギー利用の高効率化が図られ、暖房の立ち上がり性能を向上させることができる。
【0040】
図5において、ドラフタ配風手段70の制御例が示されている。図5(a)は、排気熱回収のために循環される空気の総風量の経時的変化を示すものである。風量の調節は、HVACファン11、ドラフタファン20、及び開閉ドア72を制御することによりなされる。線Aは排気熱交換器21を通過する風量を示し、線Bはヒータコア13を通過する風量を示す。線Aが示すように、始めは排気熱交換器21を通過する風量が総風量の目標値よりも大きくなるようにし、次いで線Bが示すように、ヒータコア13を通過する風量を目標値まで増加させ、その後排気熱交換器21を通過する風量を目標値まで下げるようにして制御される。
【0041】
また、図5(b)は、ヒータコア13温度の経時的変化を示すものである。先ず、エリアCで示すように、ヒータコア13の温度を仮の目標温度としての45℃にされる。これはヒータコア13を通過する風量の調節によってなされる。次いで、コンプレッサ30の回転数(吐出量)の制御によって、エリアDで示す最終的な目標値までヒータコア13温度が上げられる。
【実施例2】
【0042】
以下、ドラフタ配風手段のバリエーションを挙げる。図6において、本実施例に係るドラフタ配風手段80が示されており、このドラフタ配風手段80は、天井に向けて送風する上方吹出口81を備えている。この上方吹出口81から吹き出された空気は、車室8の天井に沿って乗員の頭上を超え、ドラフタ3が配置される車両後部まで達する。このような構成によっても、初期の暖房起動時等において、乗員に風を当てることなく、積極的に排気熱交換器21に空気を送ることができるので、上記実施例1に係るドラフタ配風手段70と同様に、エネルギー利用の高効率化が図られ、暖房の立ち上がり性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0043】
図7において、本実施例に係るドラフタ配風手段90が示されており、このドラフタ配風手段90は、車両後部のボディに設けられた開口部91及び開閉ドア92を有して構成される。これら開口部91及び開閉ドア92は、ドラフタ3の吸入口17に比較的近い場所に設けられている。この開閉ドア92を開放しドラフタファン20を駆動させることによって、外気が導入された空気が排気熱交換器21に積極的に導かれるので、上記実施例1又は2と同様に、エネルギー利用の高効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置において暖房時の状態を示す図である。
【図3】本発明に係る車両用空調装置において中間温度設定時又は除湿モード時の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る車両用空調装置のドラフタ配風手段の構成を示す図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図5】ドラフタ配風手段の制御例を示す図であり、(a)は風量と時間との関係を示すものであり、(b)はヒータコア温度と時間との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る車両用空調装置のドラフタ配風手段の構成を示す図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図7】本発明の実施例3に係る車両用空調装置のドラフタ配風手段の構成を示す図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用空調装置
2 HVAC
3 ドラフタ
4 冷凍サイクル
5 サブ冷凍サイクル
6 ヒータコア加熱サイクル
7 排熱回収サイクル
8 車室
11 HVACファン
12 エバポレータ
13 ヒータコア
20 ドラフタファン
21 排気熱交換器
30 コンプレッサ
31 コンデンサ
32 第1の膨張弁
40 サブコンデンサ
41 第2の膨張弁
42 サブエバポレータ
45 第1のポンプ
46 電熱加熱器
50 第2のポンプ
51 発熱体
56 第1の開閉弁
57 第1の逆止弁
63 第2の開閉弁
65 第3の開閉弁
66 第2の逆止弁
68 バイパス路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するコンプレッサ、
圧縮後の冷媒を外気と熱交換させ凝縮させるコンデンサ、
圧縮後の冷媒を第1の熱交換媒体と熱交換させ凝縮させるサブコンデンサ、
凝縮後の冷媒を膨張させる膨張手段、
膨張後の冷媒をHVAC内の空気と熱交換させ蒸発させるエバポレータ、
膨張後の冷媒を第2の熱交換媒体と熱交換させ蒸発させるサブエバポレータ、
車室内から車室外へ排出される空気と前記第2の熱交換媒体とを熱交換させる排気熱交換器、
前記冷媒の流通経路を変更させる流路変更手段、
前記第1の熱交換媒体を、少なくとも前記サブコンデンサと、HVAC内の前記エバポレータの下流側に配置されるヒータコアとを流通させるヒータコア加熱サイクル、
前記第2の熱交換媒体を、少なくとも前記排気熱交換器と、前記サブエバポレータとを循環させる排熱回収サイクル、
を具備することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記ヒータコア加熱サイクルには、電熱線により前記第1の熱交換媒体を加熱可能な加熱器が接続されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記排熱回収サイクルには、車載発熱体の熱を前記第2の熱交換媒体に伝導させる熱交換器が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ヒータコアによる加熱が必要であり、且つ前記エバポレータによる冷却が不要な場合において、
前記流路変更手段は、前記コンプレッサ→前記サブコンデンサ→前記膨張手段→前記サブエバポレータ→前記コンプレッサの順で冷媒を流通させ、
前記ヒータコア加熱サイクルの前記第1のポンプを駆動させ、
前記排熱回収サイクルを駆動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ヒータコアによる加熱及び前記エバポレータによる冷却の両方が必要な場合において、
前記流路変更手段は、前記コンプレッサ→前記サブコンデンサ→前記膨張手段→前記エバポレータ→前記コンプレッサの順で冷媒を流通させ、
前記ヒータコア加熱サイクルを駆動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記HVAC内の前記ヒータコアの下流側の空気を、乗員を回避するように前記排気熱交換器へ送る排気熱交換器配風手段を具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記排気熱交換器配風手段は、暖房時において前記ヒータコアが目標温度に到達するまで作動することを特徴とする請求項6記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記排気熱交換器配風手段は、前記HVAC内と前記排気熱交換器が収納されるユニットケース内とを連通させ、車両の座席下に配設された配管を有して構成されることを特徴とする請求項6又は7記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記排気熱交換器配風手段は、前記HVAC内の空気を車室の天井に沿って前記排気熱交換器が配置される車両後方部まで送るための上方吹出口を有して構成されることを特徴とする請求項6又は7記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記排気熱交換器配風手段は、車両の後方部に形成された開口部と、該開口部を開閉する開閉手段とを有して構成されることを特徴とする請求項6又は7記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23373(P2009−23373A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185229(P2007−185229)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】