説明

車両用空調装置

【課題】吸着剤から媒体を脱離するタイミングの自由度を向上させること。
【解決手段】暖房ユニット10は、車両に搭載されて、車両の室内を暖房する車両用空調装置である。暖房ユニット10は、吸着剤13と、媒体噴射ノズル15と、ファン12と、気液分離フィルタ14とを備える。吸着剤13は、活性炭やゼオライトであり、アルコールやエチルエーテル等の媒体を吸着して発熱する。媒体噴射ノズル15は、吸着剤13へ媒体LCを供給して、吸着剤13を発熱させる。ファン12によって吸着剤13へ送られる空気Wは、発熱した吸着剤13によって暖められる。吸着剤13で暖められた空気Wは、気液分離フィルタ14で液相の媒体LCが除去されてから、空気出口11Eを通って車両の室内へ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、車両の室内の温度を調整する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸着剤に、例えば水のような媒体を吸着させて発熱させることにより暖房を行い、車両に搭載される内燃機関の冷却水を用いて吸着剤を加熱することにより媒体を吸着剤から脱離させる車両用空調装置が提案されている。例えば、特許文献1には、媒体を吸着する際に発熱するとともに、前記内燃機関を冷却する冷却水によって加熱されることにより吸着していた媒体を脱離する吸着剤を有し、前記吸着剤が発生する吸着熱を利用して空調空気を加熱するとともに、媒体の蒸発潜熱を利用して空調空気を冷却する吸着式冷凍機を備える車両用空調装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−212735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される車両用空調装置は、内燃機関を冷却する冷却水によって吸着剤に吸着した媒体を脱離するので、内燃機関の冷間始動時のように冷却水の温度が低い場合には、吸着剤から媒体を脱離できない。このように、特許文献1に開示される車両用空調装置は、吸着剤から媒体を脱離するタイミングが制限される。その結果、吸着剤は媒体を吸着することができず、暖房が必要な場合に暖房をすることができなかったり、冷房が必要な場合に冷房ができなかったりするという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両用空調装置において、吸着剤から媒体を脱離するタイミングの自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、この発明に係る車両用空調装置は、車両に搭載されて、前記車両の室内の温度を調整する空調装置であり、媒体の吸着により発熱するとともに、前記媒体の脱離によって吸熱する吸着剤と、前記媒体を前記吸着剤に供給する媒体供給手段と、前記吸着剤に空気を送る送風手段と、前記吸着剤を通過した前記空気から前記媒体を分離する気液分離手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記構成により、例えば、内燃機関の冷却水の温度に関わらず、吸着剤から媒体を脱離できるので、車両用空調装置において、吸着剤から媒体を脱離するタイミングの自由度を向上させることができる。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、さらに、前記気液分離手段を通過した空気と、前記車両の室内へ送る空気とを熱交換させる熱交換手段と、前記気液分離手段を通過した空気を前記送風手段へ還流させる還流手段と、を備えることが好ましい。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、前記気液分離手段で分離された前記媒体を、前記媒体供給手段へ戻す媒体戻し手段を備えることが好ましい。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、前記媒体供給手段は、前記送風手段と前記吸着剤との間から前記媒体を供給することが好ましい。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、前記媒体供給手段は、前記吸着剤の温度に基づいて前記媒体の供給を停止して、前記吸着剤から前記媒体を脱離させることが好ましい。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、前記室内を暖房する場合、前記吸着剤へ前記媒体が供給されているときに前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導き、前記吸着剤から前記媒体を脱離させているときには、前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導かないことが好ましい。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記車両用空調装置において、前記室内を冷房する場合、前記吸着剤から前記媒体を脱離させているときに前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導き、前記吸着剤へ前記媒体が供給されているときには、前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導かないことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、吸着剤から媒体を脱離するタイミングの自由度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0016】
図1は、本実施形態に係る車両用空調装置及び車両用空調システムを搭載する車両の一部を示す模式図である。本実施形態は、吸着剤に媒体(液媒体)を供給し、吸着剤に媒体を吸着させて発熱させ、媒体の供給を停止することにより吸着剤から媒体を脱離させるとともに、気液分離手段により媒体を分離し、回収して再度吸着剤へ供給して発熱させる点に特徴がある。
【0017】
車両用空調システム100は、本実施形態に係る車両用空調装置である暖房ユニット10と、冷房ユニット30とを備えている。冷房ユニット30は、車両50の動力発生手段であるエンジン53によって駆動されるコンプレッサ31、凝縮器35、受液器32、蒸発器33及びこれらを接続する冷媒配管34を含んで構成される。ここで、図1に示す車両用空調システム100では、本実施形態に係る車両用空調装置を暖房専用の暖房ユニット10として用いるが、本実施形態に係る車両用空調装置は冷房にも用いることができる。暖房ユニット10の構成は後述する。
【0018】
冷房ユニット30の蒸発器33及びブロワ等の送風手段36、並びに暖房ユニット10は、一つの筐体に格納されて、車両50のエンジンルーム51と室内50Iとを仕切る隔壁55よりも室内50I側に配置される。暖房ユニット10、あるいは冷房ユニット30によって温度や湿度が調整された空気Wは、車両用空調システム100の送風口39から車両50の室内50Iへ送られる。
【0019】
送風口39には、エアミックスダンパ37が設けられている。エアミックスダンパ37は、ダンパ用アクチュエータ38により動作する。エアミックスダンパ37の開度を調整することにより、暖房ユニット10から送られる、少なくとも温度を調整した空気と、冷房ユニット30から送られる、少なくとも温度を調整した空気との混合割合を調整する。これにより、車両50の室内50Iへ送風する空気Wの温度等を調整する。なお、図1に示す例では、冷房ユニット30の送風口が閉じられ、暖房ユニット10の開度が全開になっているので、暖房ユニット10で温度が調整された空気のみが車両50の室内50Iへ送風される。
【0020】
図2は、本実施形態に係る車両用空調装置である暖房ユニットの構成を示す模式図である。暖房ユニット10は、筐体11内に送風手段であるファン12と、吸着剤13と、気液分離手段である気液分離フィルタ14とが配置されるとともに、ファン12と吸着剤13との間に媒体供給手段である媒体噴射ノズル15が配置される。媒体噴射ノズル15は、媒体タンク16内の媒体を、筐体11の内部であってファン12と吸着剤13との間に噴射する。これによって、媒体噴射ノズル15から噴射された媒体LCは、ファン12で生み出される空気の流れによって撹拌されて、均一に吸着剤13へ供給される。その結果、吸着剤13を有効に利用でき、好ましい。媒体噴射ノズル15は、例えば、電気式のノズルや、ベンチュリを用いた吸い上げ式のノズルを用いてもよい。
【0021】
吸着剤13は、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、シリカアルミナあるいはゼオライト等により構成される。吸着剤13は、媒体の吸着により発熱し、また、媒体の脱離により吸熱する特性を有する。本実施形態では、吸着剤13を細かい球状にして筐体11内へ配置する。なお、吸着剤13へ供給されて吸着剤13を発熱させる媒体には、例えば、アルコール、エチルエーテル、水等が用いられる。本実施形態において、媒体は、アルコール、エチルエーテルのような揮発性の高い物質を用いることが好ましい。これによって、ファン12による送風のみを用いた場合でも、媒体を吸着剤13から脱離させやすくなる。
【0022】
気液分離フィルタ14は、吸着剤13を通過した空気から、液相の媒体を取り除くものである。気液分離フィルタ14は、例えば、繊維や中空糸膜等で構成することができる。気液分離フィルタ14の下側、すなわち気液分離フィルタ14の鉛直方向(重力の作用方向、図2の矢印G方向)側には、媒体捕集手段である媒体受け皿17が設けられている。媒体受け皿17と媒体タンク16とは、媒体戻し手段である媒体戻し通路18で接続されている。これによって、媒体受け皿17に集められた媒体は、媒体タンク16へ戻されて、媒体噴射ノズル15から再び筐体11の内部へ噴射される。媒体戻し通路18を設けることにより、媒体を再利用することができるので、経済的である。
【0023】
筐体11の一端部には、空気入口11Iが設けられる。暖房ユニット10で温度が調整される空気は、空気入口11Iからファン12により吸引され、吸着剤13へ送られる。吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気は、筐体11の他端部、すなわち空気入口11Iが設けられる端部とは反対側における筐体11の端部に設けられる開口部から、筐体11の外部へ放出される。
【0024】
空気入口11Iが設けられる端部とは反対側における筐体11の端部には、温度が調整された空気Wを車両の室内へ吹き出す空気出口11Eと、吸着剤13から媒体を脱離させるときに吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気を排出する排出口11wとが設けられる。空気入口11Iが設けられる端部とは反対側における筐体11の端部には、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気の出口を切り替える切替ダンパ43が設けられている。
【0025】
切替ダンパ43は、出口側ダンパ43Aと排出口側ダンパ43Bとで構成されており、切替ダンパ駆動用アクチュエータ42によって図2の矢印R方向に回動する。切替ダンパ43を空気出口11E側に倒すと排出口側ダンパ43Bが排出口11wを閉じるとともに、空気出口11Eが開かれる。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気は空気出口11Eから放出される。また、切替ダンパ43を排出口11w側に倒すと出口側ダンパ43Aが空気出口11Eを閉じるとともに、排出口11wが開かれる。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気は排出口11wから放出される。
【0026】
ファン12、媒体噴射ノズル15、及び切替ダンパ駆動用アクチュエータ42の動作は、空調制御装置40によって制御される。空調制御装置40は、マイクロコンピュータ及びメモリを組み合わせて構成される。また、吸着剤13には、吸着剤13の温度を検出する温度センサ41及び吸着剤13の湿度を検出する湿度センサ44が設けられている。温度センサ41によって取得された吸着剤13の温度、及び湿度センサ44によって取得された吸着剤13の湿度は、空調制御装置40に取り込まれファン12、媒体噴射ノズル15、及び切替ダンパ駆動用アクチュエータ42の制御に用いられる。
【0027】
暖房ユニット10を用いて車両の室内を暖房する場合、媒体噴射ノズル15から筐体11内へ媒体LCを噴射して吸着剤13へ供給するとともに、ファン12を駆動して空気Wを吸着剤13へ送り込む。なお、暖房時において、切替ダンパ43は空気出口11E側に倒されており、空気出口11Eは開かれた状態である。
【0028】
媒体LCが吸着剤13へ供給されると、吸着剤13が発熱する。ファン12から送られる空気Wは、発熱した吸着剤13を通過する際に吸着剤13から受熱して昇温する。吸着剤13を通過した空気Wは、液相の媒体LCを含んでいる場合があるので、気液分離フィルタ14で液相の媒体LCを除去する。これによって、媒体LCが除去された暖かい空気Wが、空気出口11Eから車両の室内へ供給される。なお、気液分離フィルタ14で除去された液相の媒体LCは、媒体受け皿17に集められた後、媒体戻し通路18を通って媒体タンク16へ戻される。
【0029】
暖房ユニット10の吸着剤13から媒体LCを脱離させる場合、ファン12を駆動して空気Wを吸着剤13へ送り込むとともに、媒体噴射ノズル15からの媒体LCの噴射を停止して、吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止する。なお、媒体LCを脱離させる場合、切替ダンパ43を排出口11w側に倒し、排出口11wを開かれた状態とする。吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止すると、ファン12から供給される空気Wの流れによって、吸着剤13に吸着されていた媒体LCが除去される。そして、液相の媒体LCを含む空気Wは、気液分離フィルタ14を通過する過程で液相の媒体LCが除去される。これによって、吸着剤13から媒体LCが除去されるとともに、気液分離フィルタ14で除去された液相の媒体LCは、媒体受け皿17に集められた後、媒体戻し通路18を通って媒体タンク16へ戻される。
【0030】
図3は、本実施形態に係る車両用空調装置である暖房ユニットが備える吸着剤から媒体を脱離する手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る暖房ユニット10が備える吸着剤13は、媒体LCが過度に吸着すると発熱が低下するので、発熱が低下した場合には吸着剤13から媒体LCを脱離する。本実施形態において、吸着剤13の発熱の低下は、吸着剤13の温度低下により判定する。これにより、簡易かつ確実に媒体LCの脱離時期を判定することができる。
【0031】
ステップS101において、図2に示す空調制御装置40は、温度センサ41から吸着剤13の温度Thを取得する。そして、ステップS102において、空調制御装置40は、ステップS101で取得した吸着剤13の温度Thと、予め定めた脱離操作移行温度Thcとを比較する。ステップS102でNoと判定された場合、すなわちTh≧Thcであると空調制御装置40が判定した場合、吸着剤13はまだ媒体LCを吸着して発熱できるので、媒体LCの脱離は実行しない。
【0032】
ステップS102でYesと判定された場合、すなわちTh<Thcであると空調制御装置40が判定した場合、吸着剤13は媒体吸着量が増加して、暖房に必要な熱を発生できなくなったと判定できる。この場合、吸着剤13から媒体LCを脱離する。媒体LCの脱離中は、吸着剤13の吸熱反応により吸着剤13を通過した空気Wが冷却される。このため、ステップS103において、空調制御装置40は、図2に示す切替ダンパ駆動用アクチュエータ42により切替ダンパ43を駆動して、気液分離フィルタ14を通過した空気Wの出口を空気出口11Eから排出口11wに切り替える。これによって、媒体LCの脱離中において吸着剤13で冷却された空気が車両の室内へ流入することを回避して、室内の温度の急変を抑制する。
【0033】
次に、ステップS104において、空調制御装置40は、媒体噴射ノズル15からの媒体LCの噴射を停止して、吸着剤13への媒体LCの供給を停止する。この状態でファン12を駆動して、吸着剤13へ空気Wを供給すると、ファン12から供給される空気Wの流れ、及び吸着剤13の余熱によって、吸着剤13に吸着されていた媒体LCが除去される。
【0034】
ステップS105において、空調制御装置40は、吸着剤13が媒体LCを再吸着して、暖房に必要な熱を発生できるか否か、すなわち、媒体LCの脱離が十分か否かを判定する。媒体LCの脱離が十分か否かは、例えば、湿度センサ44によって検出された吸着剤13の湿度に基づいて判定することができる。例えば、吸着剤13の湿度が所定の値よりも低い場合には、媒体LCの脱離が十分であると判定する。
【0035】
ステップS105でNoと判定された場合、すなわち、空調制御装置40が、媒体LCの脱離が不十分であるため、吸着剤13は媒体LCを再吸着して暖房に必要な熱を発生できないと判定した場合、再吸着が可能になるまで、吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止する。
【0036】
ステップS105でYesと判定された場合、すなわち、媒体LCの脱離が十分であり、空調制御装置40が、吸着剤13は媒体LCを再吸着して暖房に必要な熱を発生できると判定した場合、ステップS106へ進む。ステップS106において、空調制御装置40は、図2に示す切替ダンパ駆動用アクチュエータ42により切替ダンパ43を駆動して、気液分離フィルタ14を通過した空気Wの出口を排出口11wから空気出口11Eに切り替える。そして、ステップS107に進み、空調制御装置40は、媒体噴射ノズル15から媒体LCを噴射して、吸着剤13に対する媒体LCの供給を開始する。
【0037】
これによって、媒体LCが十分に脱離された吸着剤13へ媒体LCが供給されるので、吸着剤13は暖房に必要な熱を発生することができる。この状態でファン12から吸着剤13へ空気Wを供給すれば、車両の室内を暖房することができる。上記手法により、吸着剤13から媒体LCを脱離することができる。
【0038】
図4は、本実施形態の変形例に係る車両用空調装置である暖房ユニットの構成を示す模式図である。図4に示す暖房ユニット10Aは、上記暖房ユニット10(図2参照)とほぼ同様の構成であるが、次の点が異なる。すなわち、本変形例に係る暖房ユニット10Aは、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気WIを再びファン12によって吸着剤13へ送風する内部循環方式を用いるとともに、車両の室内へ供給する空気と吸着剤13を通過した空気とを熱交換させてから、車両の室内へ供給する。
【0039】
暖房ユニット10Aは、空気出口11Eと空気入口11Iとが還流手段である還流通路23で接続されている。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気WIをファン12へ戻し、再び吸着剤13へ送風する。これによって、筐体11A内で空気WIが循環し、筐体11Aの外部へは漏れないので、様々な種類の媒体LCを用いることができる。
【0040】
媒体LCが供給され、発熱した吸着剤13をファン12によって送風された空気WIが通過すると、この空気WIは発熱した吸着剤13から受熱して昇温する。昇温した空気WIは気液分離フィルタ14で液体の媒体LCが除去された後、空気出口11Eへ流出する。暖房ユニット10Aは、空気出口11Eに熱交換手段である熱交換器22が設けられている。熱交換器22は、入口側ヘッダ21HIと出口側ヘッダ21HEとを複数の空気通路22Pで接続するとともに、空気通路22P同士の間にフィン22Fを配置して構成される。
【0041】
入口側ヘッダ21HIには、送風手段であるブロワ20が接続されている。ブロワ20は、空調制御装置40によって制御されて、熱交換器22へ空気Wを送風する。この空気Wは、暖房ユニット10Aで温度が調整された筐体11Aの内部の空気WIと熱交換して温度が調整されてから、車両の室内へ開口する吹き出し口24を通って車両の室内へ送られる。
【0042】
吸着剤13へ媒体LCを供給するとともにファン12で送風すると、吸着剤13の発熱により吸着剤13を通過した空気WIは加熱される。この場合、車両の室内へ送られる空気Wは、加熱された空気WIと熱交換するので、昇温する。これによって、車両の室内を暖房することができる。一方、吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止するとともにファン12で送風すると、吸着剤13の吸熱により吸着剤13を通過した空気WIは冷却される。この場合、車両の室内へ送られる空気Wは、冷却された空気WIと熱交換するので、温度が低下する。これによって、車両の室内を冷房することができる。このように、本変形例に係る暖房ユニット10Aは、暖房のみならず冷房もできる。
【0043】
図5は、本実施形態の変形例に係る車両用空調装置である冷暖房ユニットの構成を示す模式図である。本変形例に係る車両用空調装置は、暖房のみならず冷房にも使用できるように構成したものである。本変形例に係る車両用空調装置である冷暖房ユニット10Bは、図2に示す本実施形態に係る暖房ユニット10とほぼ同様の構成であるが、次の点が異なる。すなわち、本変形例に係る冷暖房ユニット10Bは、気液分離フィルタ14の出口側(吸着剤13とは反対側)に暖気通路11Eh及び冷気通路11Ecを備え、吸着剤13へ媒体LCが供給されているときに、暖気通路11Ehを介して吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導き、吸着剤13から媒体LCを脱離させているときに、冷気通路11Ecを介して吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導く。
【0044】
冷暖房ユニット10Bは、気液分離フィルタ14の出口側、すなわち空気Wの流れ方向下流側に、吸着剤13で暖められた空気が導かれる暖気通路11Ehと、吸着剤13で冷却された空気が導かれる冷気通路11Ecとが設けられる。暖気通路11Ehと冷気通路11Ecとは、冷暖房ユニット10Bの空気出口11Eで合流する。また、気液分離フィルタ14の出口側には、暖気通路11Eh又は冷気通路11Ecのいずれか一方を選択して、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気を流すための通路切替手段として、通路切替ダンパ45が設けられている。
【0045】
通路切替ダンパ45は、通路切替ダンパ駆動用アクチュエータ46によって図5の矢印R方向に回動する。通路切替ダンパ45を冷気通路11Ec側に倒すと通路切替ダンパ45が冷気通路11Ecの入口を閉じるとともに、暖気通路11Ehの入口を開く。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気は暖気通路11Ehへ導かれ、空気出口11Eから車両の室内へ放出される。また、通路切替ダンパ45を暖気通路11Eh側に倒すと通路切替ダンパ45が暖気通路11Ehの入口を閉じるとともに、冷気通路11Ecの入口を開く。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気は冷気通路11Ecへ導かれ、空気出口11Eから車両の室内へ放出される。
【0046】
この冷暖房ユニット10Bで暖房する場合、通路切替ダンパ45を冷気通路11Ec側に倒して暖気通路11Ehの入口を開く。そして、媒体噴射ノズル15から媒体LCを筐体11内へ噴射して、媒体LCを吸着剤13へ供給する。この状態でファン12から吸着剤13へ空気Wを送風すると、発熱した吸着剤13を通過することによって昇温した空気Wは、暖気通路11Ehを通って空気出口11Eから車両の室内へ供給される。すなわち、冷暖房ユニット10Bで暖房する場合、吸着剤13へ媒体LCが供給されているときに吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導き、吸着剤13から媒体LCを脱離させているときには、吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導かないようにする。これによって、冷暖房ユニット10Bで車両の室内を暖房することができる。
【0047】
また、この冷暖房ユニット10Bで冷房する場合、通路切替ダンパ45を暖気通路11Eh側に倒して冷気通路11Ecの入口を開く。そして、媒体噴射ノズル15からの媒体LCの噴射を停止することにより、吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止する。この状態でファン12から吸着剤13へ空気Wを送風すると、吸着剤13は、媒体LCが脱離することにより吸熱する。したがって、吸着剤13を通過することによってファン12から送られる空気Wは冷却される。吸着剤13を通過して冷却された空気Wは、冷気通路11Ecを通って空気出口11Eから車両の室内へ供給される。すなわち、冷暖房ユニット10Bで車両の室内を冷房する場合、吸着剤13から媒体LCを脱離させているときに吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導き、吸着剤13へ媒体LCが供給されているときには、吸着剤13を通過した空気を車両の室内へ導かないようにする。これによって、冷暖房ユニット10Bで車両の室内を冷房することができる。
【0048】
図6は、図5に示す冷暖房ユニットの運転制御の手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートを用いて、本変形例に係る冷暖房ユニット10Bの運転制御の一例を説明する。ステップS201において、図6に示す空調制御装置40は、暖房の要求があるか否かを判定する。ステップS201でYesと判定された場合、すなわち、空調制御装置40が暖房の要求があると判定した場合、ステップS202へ進む。
【0049】
ステップS202において、空調制御装置40は、通路切替ダンパ駆動用アクチュエータ46を駆動して、通路切替ダンパ45を冷気通路11Ec側に倒す。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気が導入される通路を、暖気通路11Ehへ切り替える。次に、ステップS203において、空調制御装置40は、ファン12を駆動して吸着剤13に対する送風を開始し、ステップS204において、媒体噴射ノズル15から媒体LCを噴射して吸着剤13へ供給する。これによって、吸着剤13の発熱によって昇温した空気は、暖気通路11Ehを通って車両の室内へ供給される。
【0050】
ステップS201でNoと判定された場合、すなわち、空調制御装置40が暖房の要求はないと判定した場合、ステップS205へ進む。ステップS205において、空調制御装置40は、冷房の要求があるか否かを判定する。ステップS205でNoと判定された場合、すなわち、冷房の要求も暖房の要求もない場合、冷暖房ユニット10Bを運転する必要はないので、空調制御装置40は、本変形例に係る冷暖房ユニット10Bの運転制御を終了する。
【0051】
ステップS205でYesと判定された場合、すなわち、冷房の要求がある場合、ステップS206に進む。ステップS206において、空調制御装置40は、通路切替ダンパ駆動用アクチュエータ46を駆動して、通路切替ダンパ45を暖気通路11Eh側に倒す。これによって、吸着剤13及び気液分離フィルタ14を通過した空気が導入される通路を、冷気通路11Ecへ切り替える。
【0052】
次にステップS207へ進み、空調制御装置40は、媒体噴射ノズル15からの媒体LCの噴射を停止して、吸着剤13に対する媒体LCの供給を停止する。そして、ステップS208において、空調制御装置40は、ファン12を駆動して吸着剤13に対する送風を開始する。これによって、吸着剤13の吸熱によって温度が低下した空気は、冷気通路11Ecを通って車両の室内へ供給される。
【0053】
以上、本実施形態及びその変形例では、吸着剤から媒体を脱離する際には、媒体の供給を停止するとともに送風手段により空気を吸着剤へ送る。これによって、内燃機関の冷却水の温度に関わらず、吸着剤から媒体を脱離できるので吸着剤から媒体を脱離するタイミングの自由度が向上する。その結果、冷間始動時であって冷却水の温度が上昇していない場合に媒体を脱離する必要がある場合でも、媒体を吸着剤から脱離させて車両の室内の暖房に用いることができる。また、冷間始動時において、暖房の要求があるが、吸着剤が媒体を吸着できない場合でも、冷却水を用いずに吸着剤から媒体を脱離して、車両の室内を暖房することができる。また、冷却水の温度に関係なく媒体を脱離することができるので、冷房が可能な時期も増加する。
【0054】
また、本実施形態及びその変形例では、車両の室内を暖房する場合に冷却水の熱を利用する必要はないので、冷間始動の直後から車両の室内を暖房することができる。これによって、車両の搭乗者へ快適な環境を提供できる。また、冷間始動時に冷却水から暖房のための熱を受け取る必要がないため、暖機を早期に完了させることができる。さらに、冷間始動時の暖房において、冷却水の温度を早期に上昇させるために燃料の噴射量を多くする必要はないので、燃料消費の増加を抑制できるとともに、暖機が早期に完了するため未燃HCも抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係る車両用空調装置は、吸着剤に媒体を吸着させ、あるいは離脱させることにより車両の室内の温度を調整する車両用の空調装置に有用であり、特に、吸着剤から媒体を離脱させることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る車両用空調装置及び車両用空調システムを搭載する車両の一部を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る車両用空調装置である暖房ユニットの構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る車両用空調装置である暖房ユニットが備える吸着剤から媒体を脱離する手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の変形例に係る車両用空調装置である暖房ユニットの構成を示す模式図である。
【図5】本実施形態の変形例に係る車両用空調装置である冷暖房ユニットの構成を示す模式図である。
【図6】図5に示す冷暖房ユニットの運転制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10、10A 暖房ユニット
10B 冷暖房ユニット
11、11A 筐体
11E 空気出口
11Ec 冷気通路
11Eh 暖気通路
11I 空気入口
11w 排出口
12 ファン
13 吸着剤
14 気液分離フィルタ
15 媒体噴射ノズル
16 媒体タンク
17 媒体受け皿
18 媒体戻し通路
20 ブロワ
22 熱交換器
23 還流通路
30 冷房ユニット
39 送風口
40 空調制御装置
41 温度センサ
42 切替ダンパ駆動用アクチュエータ
43 切替ダンパ
44 湿度センサ
45 通路切替ダンパ
46 通路切替ダンパ駆動用アクチュエータ
50 車両
50I 室内
100 車両用空調システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、前記車両の室内の温度を調整する空調装置であり、
媒体の吸着により発熱するとともに、前記媒体の脱離によって吸熱する吸着剤と、
前記媒体を前記吸着剤に供給する媒体供給手段と、
前記吸着剤に空気を送る送風手段と、
前記吸着剤を通過した前記空気から前記媒体を分離する気液分離手段と、
を含むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
さらに、前記気液分離手段を通過した空気と、前記車両の室内へ送る空気とを熱交換させる熱交換手段と、
前記気液分離手段を通過した空気を前記送風手段へ還流させる還流手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記気液分離手段で分離された前記媒体を、前記媒体供給手段へ戻す媒体戻し手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記媒体供給手段は、前記送風手段と前記吸着剤との間から前記媒体を供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記媒体供給手段は、前記吸着剤の温度に基づいて前記媒体の供給を停止して、前記吸着剤から前記媒体を脱離させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記室内を暖房する場合、前記吸着剤へ前記媒体が供給されているときに前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導き、前記吸着剤から前記媒体を脱離させているときには、前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導かないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記室内を冷房する場合、前記吸着剤から前記媒体を脱離させているときに前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導き、前記吸着剤へ前記媒体が供給されているときには、前記吸着剤を通過した空気を前記室内へ導かないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−40315(P2009−40315A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209409(P2007−209409)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】