説明

車両用空調装置

【課題】圧縮機34の回転数を制限して車室内の静粛性を維持する車両用空調装置において、車両停止時等での空調性能の確保と静粛性の両立を図る。
【解決手段】圧縮機34の回転数を制御する制御装置50は、予め設定された圧縮機34の回転数の最大値Y6、Y7を選択し、該最大値は、少なくとも送風機のブロワ風量を表すブロワ電圧、及び車両エンジンの回転数の値から求められる。そして、最大値に相当する制限回転数(最高回転数)以下に圧縮機回転数を制限することで、ブロワ風量(ブロワ騒音)または車両エンジンの回転数(エンジン騒音)が低い時、圧縮機34の回転数を低くすることが出来る。一方、ブロワ風量または車両エンジンの回転数が高い時、圧縮機34の回転数を高くすることが出来る。これにより、車両停止時等においても、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,
圧縮機を用いて熱交換器に冷媒を送り、車両の室内を空調する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、圧縮機回転数が、所定の最高回転数より高い時は、圧縮機の必要回転数が非常に高い場合であっても、騒音面から、車両の速度に応じて、回転数を制限する技術が記載されている。
【0003】
換言すれば、特許文献1では、車両の速度と使用可能な圧縮機の回転数の関係を表したマップにより、そのときの車両の速度から圧縮機の使用可能な回転数を演算している。
【0004】
そして、圧縮機回転数が、上記使用可能な回転数を超えることがないように制御されている。これによって、圧縮機の必要回転数が非常に高い場合であっても回転数を制限することによる騒音対策を行っている。つまり、騒音要因から圧縮機の最高回転数が決められている。
【0005】
具体的には特許文献1記載の技術は、ハイブリッド自動車用空調制御システムである。そして圧縮機は、吸入した冷媒を圧縮して吐出するもので、駆動源としての電動モータ(可変速電動機)と、この電動モータの回転数を変更する回転数可変手段としてのエアコン用インバータとを備えている。
【0006】
次に、制御においては、数式に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度(TAO)を算出している。そして、目標吹出温度(TAO)に対応する目標エバ後温度(TEO)が設定されている。次に、設定された目標エバ後温度(TEO)とエバ後温度センサにて検出した実際のエバ後温度(TE)との偏差(En)が算出されている。また、偏差変化率(Edot)が算出されている。
【0007】
次に、算出した偏差(En)と算出した偏差変化率(Edot)とを用いて、4秒前の圧縮機の電動モータの目標回転数(fn-1)対して増減する回転数Δf(rpm/4sec)が求められている。
【0008】
次に、マップから、圧縮機の目標回転数(fn)に対応する使用可能な回転数fn(fa)が求めている。これにより、特定周波数域が車両及びその部品の共振周波数と重なって圧縮機が加振源となってハンドルの振動、こもり音及び圧縮機の作動音が大きくなる回転数であることが実車確認で分かっている場合には、これらの特定周波数域に係る回転数域は使用不可回転数とし、その他の回転数を使用可能な回転数としている。
【0009】
次に、マップから、車両の速度に対応する使用可能な回転数fn(fb)が求められている。そして、例えば、圧縮機の目標回転数(fn)が6000rpmの時には、目標回転数に対応する使用可能な回転数fn(fa)も6000rpmとなる。このとき、車両の速度が5km/h以下の時には、車速に対応する使用可能な回転数fn(fb)は4000rpmとなる。この場合には、車室内は静かであるため、圧縮機の目標回転数(fout)が低い値に設定されることで、急速冷房をある程度犠牲にしても、圧縮機の作動音が抑えられている。
【0010】
また、目標回転数に対応する使用可能な回転数fn(fa)が5000rpmの時、車両が停車していれば、乗員は車両の暗騒音が小さいので、圧縮機に起因する騒音を少しうるさいと感じることが考慮されている。そして、車両が走行すれば、車両エンジン音、路面振動、騒音、風切り音等で圧縮機に起因する騒音は、かき消されてしまうため、全く気にならないことも考慮されている。
【0011】
こうすることで、車室内の急速冷房をある程度犠牲にしながらも、圧縮機の作動音を低く抑えることができる。よって、圧縮機に起因する騒音を低減することができている。
【0012】
次に、空調ユニット内に室内凝縮器を有し、暖房時においても圧縮機の回転数制御により冷媒圧縮を行い空気調和する電気自動車用空調装置は、特許文献2として知られている。
【特許文献1】特開2001−26214号公報
【特許文献2】特開平8−14632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1の技術では、停車時は、圧縮機の最高回転数が低く抑えられるため、最大空調能力が得られず、車両の乗員から冷え不良等を指摘されるという問題があった。従って、特許文献1の技術を特許文献2のような電気自動車用空調装置に適用しても上記問題が残る。
【0014】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、停車時でも充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、圧縮機で圧縮された冷媒が流れ、車両の室内の空気を暖房または冷房する熱交換器を備えた車両用空調装置において、熱交換器を経由して流れる空気を送風する送風機、及び圧縮機の回転数を制御し冷媒の流量を制御する制御手段を備え、制御手段は、予め設定された圧縮機の回転数の最大値を選択して圧縮機の回転数を制限し、該最大値は、少なくとも送風機のブロワ風量を表す値、または車両に搭載されたエンジンの回転数の値から求められることを特徴としている。
【0016】
この請求項1に記載の発明によれば、圧縮機の回転数を高く設定して充分な空調性能を確保しながら、ブロワ風量または車両エンジンの回転数が低い時は、圧縮機の回転数を低く制限することが出来る。これにより、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。また、停車時でも送風機の騒音が大きい時、または車両エンジンの回転数が高いときは、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明によれば、制御手段は、圧縮機の冷媒の圧力に関する目標冷媒圧力情報(PSO)と実冷媒圧力情報(PS)との偏差に基づいて、圧縮機の回転数を制御するものであり、目標冷媒圧力情報(PSO)と実冷媒圧力情報(PS)との偏差に基づいて演算された圧縮機の回転数を、最大値に相当する制限回転数以下に制限するものであることを特徴としている。
【0018】
この請求項2記載の発明によれば、目標冷媒圧力情報(PSO)と実冷媒圧力情報(PS)との偏差に基づいて圧縮機回転数を演算し、更に演算された圧縮機回転数を、最大値に相当する制限回転数以下に制限することで、圧縮機の回転数を正確に制御できる。
【0019】
次に、請求項3に記載の発明によれば、送風機のブロワ風量を表す値が大きいほど、最大値を高く設定することを特徴としている。
【0020】
この請求項3記載の発明によれば、車両の室内での送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容でき、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。よって、例えば車室内の乗員が空調不足を感じて、手動でブロワ風量のみを増加させた場合でも、圧縮機の回転数を高く出来るので、空調不足が解消される。また、停車時でも送風機の騒音が大きい時は、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0021】
次に、請求項4に記載の発明によれば、エンジンの回転数の値が高いほど最大値を高く設定することを特徴としている。
【0022】
この請求項4記載の発明によれば、エンジンの回転数が高いとき即ちエンジン騒音が高いときは、高い圧縮機の回転数を許容でき、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。また、停車時でもエンジンの回転数が高いとき、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0023】
次に、請求項5に記載の発明によれば、エンジンの回転数の値が高いほど、及びブロワ風量を表す値が大きいほど、及び車両の速度の値が高いほど、最大値を高く設定することを特徴としている。
【0024】
この請求項5記載の発明によれば、送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。かつ、エンジンの騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時も、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。また、停車時でもエンジンの騒音が大きいとき、または送風機の騒音が大きいときは充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0025】
次に、請求項6に記載の発明によれば、エンジンの回転数の値が高いほど、及びブロワ風量を表す値が大きいほど、最大値を高くすることを特徴としている。
【0026】
この請求項6記載の発明によれば、送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。かつ、車両エンジンの騒音が大きい時は、高い圧縮機回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。よって、例えば夏季駐車中に急速冷房したいような場合は、ブロワ風量を高くしてアクセルを踏み込みエンジン回転数を上げると、それらの騒音量に応じて圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な急速冷房が得られる。
【0027】
次に、請求項7に記載の発明によれば、車両エンジンの回転数の値が大きいほど、及び車両の速度の値が高いほど、最大値を高くすることを特徴としている。
【0028】
この請求項7記載の発明によれば、エンジンの騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時は、高い圧縮機回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。よって、例えば高速走行しているときはエンジンの騒音または走行騒音によってマスキングできる限度まで圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な空調能力が得られる。
【0029】
また、停車時でも少なくともエンジンの騒音が大きいときは、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される
次に、請求項8に記載の発明によれば、送風機のブロワ風量を表す値が大きいほど、及び車両の速度の値が高いほど、最大値を高くすることを特徴としている。
【0030】
この請求項8記載の発明によれば、送風機の騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時は、高い圧縮機回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。よって、例えば高速道路を高速走行しているときに、送風機の騒音または走行騒音によってマスキングできる限度まで圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な空調能力が得られる。また、停車時でも送風機の騒音が大きいときは、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0031】
次に、請求項9に記載の発明によれば、前記最大値を求める値の変化に時間遅れを設定して、最大値が求められることを特徴としている。
【0032】
この請求項9記載の発明によれば、車両エンジンの回転数の値、車両の速度の値、及び送風機のブロワ風量を表す値のいずれかの変動がはげしい時、圧縮機回転数がはげしく変動することによる圧縮機騒音の変化を抑えることが出来、乗員の違和感を軽減することができる。
【0033】
次に、請求項10に記載の発明によれば、目標冷媒圧力情報(PSO)と、実冷媒圧力情報(PS)とは、圧縮機の低圧側の冷媒の圧力に関する目標低圧側圧力(PSO)と実低圧側圧力(PS)であることを特徴としている。
【0034】
この請求項10記載の発明によれば、圧縮機の低圧側の冷媒圧力を実低圧側圧力として検出することで、圧縮機の回転数を空調負荷を考慮して自動的に適切に制御できる。
【0035】
なお、特許請求の範囲及び上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態を、図1乃至図6を用いて説明する。図1は全体構成図、図2はコントロールパネルの外形図、図3はエアコンECUを成す制御装置50周辺の電気回路図、図4は制御装置(エアコンECU)50への各種センサ及び被制御機器の接続状態を示すブロック回路図、図5は制御装置の基本的なフローチャート、図6は上記フローチャート内の圧縮機回転数を演算するステップS8(図5)部分のフローチャートである。従って、スタートとあるのは図5のステップS7に続く開始ステップであることを示す。
【0037】
図1において、車室内に向けて空気を送る空気通路としてのダクト2が車室内に配設されている。このダクト2の空気上流側一端には、内外気切替手段3と送風機4とが設けられている。
【0038】
内外気切替手段3は、車室内と連通して車室内の空気(内気)を導入する内気導入口5と、車室外と連通して車室外の空気(外気)を導入する外気導入口6とを備えている。
【0039】
また、内外気切替手段3には、内気導入口5と外気導入口6とを選択的に開閉する内外気切替開閉手段7、具体的には内外気切替ドア7が設けられている。またこの内外気切替ドア7は、内外気駆動手段としての図示されないサーボモータに連結されている。そして、このサーボモータの駆動によって、内外気切替ドア7が駆動される。
【0040】
内外気切替手段3の図中下方側には、上記送風機4が設けられている。この送風機4は、具体的にはファンケース8と、このファンケース8内に回転自在に設けられたファン9と、このファン9を回転駆動する駆動用モータ10とからなる。
【0041】
そしてファン9が回転すると、その回転数に応じて、ダクト2を介して車室内へ送風される風量が調節される。
【0042】
ダクト2の空気下流側端部には、ダクト2内を通過した空気を車室内の各部に向けて吹き出す各吹出口が形成されている。これらの吹出口は、車室内前部の中央より乗員の上半身に向けて主に冷風を吹き出すセンタフェイス吹出口13、車室内前部の両脇より乗員の上半身あるいはサイドガラスに向けて主に冷風を吹き出すサイドフェイス吹出口14a、及び14b、乗員の足元に向けて主に温風を吹き出すフット吹出口15、並びにフロントガラスに向けて主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口16からなる。
【0043】
また、ダクト2とセンタフェイス吹出口13とを連通するセンタフェイスダクト91の入口部分には、センタフェイスダクト91を開閉する手段17(センタフェイスドア)が設けられている。また、ダクト2とフット吹出口15とを連通するフットダクト92の入口部分には、フットダクト92を開閉する手段18(フットドア)が設けられている。
【0044】
また、ダクト2とデフロスタ吹出口16とを連通するデフロスタダクト93の入口部分には、デフロスタダクト92を開閉する手段19(デフロスタドア)が設けられている。
【0045】
また、センタフェイス吹出口13並びにサイドフェイス吹出口14a、及び14bには、乗員の好みに応じて空気の吹出量を手動調節するための手段13a、20a及び20b(手動開閉ドア)が設けられている。なお、上記各吹出口を開閉するアクチュエータが、図4にて吹出口切替アクチュエータ101eとして代表的に記載されている。
【0046】
次に、ダクト2の上流側には、ダクト2内の空気を冷却する手段をなす蒸発器80が配設されている。また、蒸発器80の空気下流側に、ダクト2内の空気を加熱する手段をなす室内凝縮器81が配設されている。
【0047】
上記蒸発器80は、圧縮機34、室外熱交換器33、第1減圧器35a、第2減圧器35b、受液器36、冷媒の流れ方向を切り換える四方弁37、及びこれらを接続する冷媒配管38とともに、車室内の冷房と暖房とを行うヒートポンプ式冷凍サイクル31を構成している。
【0048】
圧縮機34は、冷媒の吸入、圧縮、吐出を行うもので、電動モータ90により駆動される。この圧縮機34は、電動モータ90と一体的に密封ケース内に設けられている。電動モータ90は、インバータ42の制御によって回転数が連続的に可変する。そして、電動モータ90の回転数の変化によって、圧縮機34の冷媒吐出容量が連続的に変化する。
【0049】
室外熱交換器33は、ダクト2の外部において、車室外の空気と冷媒との熱交換を行うものである。この室外熱交換器33は、室外ファン41を備えるとともに、車両の走行によって生じる走行風が当たる位置に設けられている。
【0050】
第1減圧器35aは、具体的には冷房用キャピラリーチューブ43で構成されており、冷媒配管38の一部に挿入されている。この冷房用キャピラリーチューブ43は、室外熱交換器33から蒸発器80へ流入する冷媒を減圧するものである。
【0051】
また、冷房用キャピラリーチューブ43と四方弁37とを結ぶ冷媒配管38の途中に、この配管通路を開閉する手段45、具体的には電磁弁45が設けられている。この電磁弁45は、後述する冷房運転時に閉じて、室外熱交換器33からの高圧冷媒が、受液器36内に導かれるのを防ぐ。また、この電磁弁45は、暖房運転時に開いて、冷媒が、冷房用キャピラリーチューブ43をバイパスするようにするものである。
【0052】
第2減圧器35bは、具体的には暖房用キャピラリーチューブ44で構成されており、冷媒配管38の一部に挿入されている。この暖房用キャピラリーチューブ44は、室内凝縮器81から室外熱交換器33へ流入する冷媒を減圧するものである。
【0053】
また、暖房用キャピラリーチューブ44と並列する冷媒配管途中には、この配管通路を開閉する手段46、具体的には電磁弁46が設けられている。この電磁弁46は、暖房運転時に閉じて、室内凝縮器81からの高圧冷媒が、暖房用キャピラリーチューブ44にて減圧されるようにする。
【0054】
上記電磁弁46と室外熱交換器33とを結ぶ冷媒配管38の途中には、冷房運転時に室内凝縮器81へ冷媒が流入しないようにするための一方向弁47が設けられている。また、室外熱交換器33と四方弁37とを結ぶ冷媒配管38の途中には、暖房運転時に四方弁37に冷媒が流入しないようにするための一方向弁48が設けられている。
【0055】
受液器36は、アキュムレータで構成される。この受液器36は、冷凍サイクル31内の余剰冷媒を蓄えるとともに、圧縮機34に気相冷媒のみを送り、圧縮機34が液圧縮を行わないようにするためのものである。
【0056】
四方弁37は、冷媒の流れ方向を切り換えて、室外熱交換器33を蒸発器として機能させたり、凝縮器として機能させたりするものである。そして、四方弁37は、後述する冷房運転時と暖房運転時とで、それぞれ異なる冷媒の流れに、冷媒の流れ方向を切り換える。
【0057】
冷房運転時は、図1中矢印Cに示すように(なお、図面においては矢印の符号は丸印の中に記した。)、圧縮機34が吐出した冷媒は、四方弁37→室外熱交換器33→冷房用キャピラリーチューブ43→蒸発器80→アキュムレータ36→圧縮機34の順で流れる。
【0058】
一方、暖房運転時は、図中矢印Hに示すように、圧縮機34が吐出した冷媒は、四方弁37→室内凝縮器81→暖房用キャピラリーチューブ44→室外熱交換器33→電磁弁45→アキュムレータ36→圧縮機34の順に流れる。
【0059】
図4の送風機4の駆動用モータ10、四方弁37、インバータ42、室外ファン41、電磁弁45及び46、内外気切替開閉手段7、並びに各ドアを駆動する吹出口切替アクチュエータ101eは、制御装置50によって通電制御される。
【0060】
次に、この第1実施形態におけるコントロールパネル100の構成について図2を用いて説明する。
【0061】
図2に示すように、コントロールパネル100には、各吹出モードの設定を行うためのプッシュ式の吹出モード切替スイッチ101a、101b、101c、及び101d、車室内への吹出風量を調節するための風量設定スイッチ102、運転モード(冷房モード、及び暖房モード)の切替を行うための運転モード切替スイッチ103、内外気切替モードの設定を行う内外気切替スイッチ104、温度設定手段となる温度設定レバー105、並びに圧縮機34の起動停止を制御するエアコンスイッチ106が設けられている。
【0062】
次に、制御装置50周辺の電気配線について図3を用いて説明する。図3に示すように制御装置50には、上記コントロールパネル100からの各信号が入力される。また、制御装置50は、車両エンジンの制御を行うエンジン制御装置50a(以下、エンジンECU50aと言う)と車内ネットワーク用多重通信配線50bを介して接続されている。
【0063】
そして、エンジンECU50aからは車両エンジンの回転数の信号E91(図4)が制御装置50に入力されている。つまり上記エンジンECU50aが図4のエンジン回転数検出手段50aを構成している。
【0064】
また、図3のバッテリー67は、車両を走行させる回転出力を発生する図示しない走行用モータに電力を供給するものである。このバッテリー67は走行等によって消費した電力を充電するための充電装置70を備える。この充電装置70は、電力供給源(電気スタンドあるいは商業用電源)に接続されるコンセント71を備える。そして、このコンセント71を電力供給源に接続することによりバッテリー67の充電が行われる。また、電気自動車の電源である直流200Vのバッテリー67からインバータ42に供給される電流値を検出する電流検出器68が制御装置50に接続されている。また、インバータ42は圧縮機34を可変速度で駆動する。
【0065】
次に、制御装置50の制御処理について述べる。なお、以下に述べる制御フローが記載されたプログラムは、後述するROMに記憶されている。
【0066】
図4は制御装置50に接続された各種センサ、及び被制御機器の概要を図示したものである。制御装置50に入力された上記各信号は、図示しないマルチプレクサ及びA/D変換器を経て、デジタル信号に変換されて、マイクロコンピュータ211hへ入力される。
【0067】
このマイクロコンピュータ211hは、中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入力回路211i、及び出力回路211j等を持つそれ自体周知のものである。
【0068】
図5は制御装置50による基本的な制御処理を示したフローチャートである。イグニッションスイッチが投入されて制御装置50に電源が供給されると、各パラメータ等を初期化(イニシャライズ)する(ステップS1)。
【0069】
次に、図2の温度設定スイッチ105、エアコンスイッチ106、図4の内気温センサ211b、外気温センサ211c、日射センサ211d、及び車両の速度センサ211g等の信号を読み込む(図5のステップS2及びステップS3)。
【0070】
次に、ROMに記憶された下記の数式1に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する(ステップS4)。
【0071】
(数式1)TAO=Kset×Tset−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
ここで、Tsetは図2の温度設定スイッチ105にて設定された設定温度、TRは図4の内気温センサ211bにて検出した内気温度、TAMは外気温センサ211cにて検出した外気温度、TSは日射センサ211dにて検出した日射量である。また、Kset、KR、KAM及びKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0072】
次に、演算された目標吹出温度TAO等に基づいて、図5のステップS5、S6、S7のように、ブロア電圧、内外気モード、及び吹出口モードが決定される。
【0073】
次に、制御器制御のステップS8にて、後述する圧縮機制御における圧縮機回転数等が求められる。そして求められた制御量に基づいて、ステップS9で制御信号が出力される。
【0074】
具体的には、ステップS5で、コントロールパネルからの手動操作信号に基づいて、送風機4の駆動用モータ10への印加電圧(ブロワ電圧)を決定する。なお、手動操作がなされていない場合は自動モードとなる。この自動モードのときは、上記ROMに記憶された特性図から、周知のように目標吹出温度TAOに対応するブロワ電圧を決定する。
【0075】
次に、ステップS6で、ROMに記憶された特性図から、目標吹出温度TAOに対応する内外気モードを決定する。この場合、目標吹出温度TAOが高いときには内気循環モードが選択され、目標吹出温度TAOが低いときには外気導入モードが選択される。なお、コントロールパネル100からの手動操作信号が制御装置50に入力されたときは、手動操作による内外気モードが優先される。
【0076】
次に、ステップS7で、ROMに記憶された特性図から、目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。この場合、目標吹出温度TAOが高いときにはフットモードが選択され、目標吹出温度TAOが低くなるに伴って、バイレベルモード、更にはフェイスモードの順に選択される。なお、コントロールパネルからの手動操作信号があったときは、手動操作による吹出口モードが優先される。
【0077】
次に、ステップS8にて、後述する図6に示すフローチャート等に基づいて、圧縮機34の回転数等を決定する。この後、ステップS9にて、各ステップS4〜S8で算出または決定した各制御状態が得られるように、各種アクチュエータ等の被制御機器に対して制御信号を出力する。更に、ステップS10で、所定時間Tの経過を待ってからステップS2に戻る。
【0078】
以下、図6に示すフローチャートについて述べる。図6は、第1実施形態における圧縮機34の回転数を決定するフローチャートである。このフローチャートは、図5のステップS8に係るものである。そして、この圧縮機回転数制御の演算は、1秒に1回演算される。
【0079】
図2のコントロールパネル100のエアコンスイッチ106が投入されているか否か、またはデフロスタスイッチ101dが投入されているか否かに基づいて、圧縮機34を稼動させる必要があるか否かを判定し(図6のステップS20)、圧縮機34を稼動させる必要がない場合には、YESとなって、目標圧縮機回転数IVOを0rpmとする(ステップS21)。
【0080】
一方、圧縮機34を稼動させる必要があると判定された場合には、圧縮機34を停止状態から起動させる時であるか否か、つまり前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmであるか否かを判定する(ステップS22)。この判定の結果、圧縮機21を停止状態から起動させる時、つまり前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmである場合には、YESと判定され、空調負荷の大きさを示す目標吹出温度TAOに基づいて、目標圧縮機回転数IVOnを決定する(ステップS23)。
【0081】
また、圧縮機21を停止状態から起動させる時でない、つまり前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmでない場合には、ステップS22で判定がNOとなる。そして、予め温度設定スイッチ105(図2)にて設定した設定温度Tsetにより決定されている目標低圧側圧力PSO(詳細は後述する)と実際に図1の低圧側圧力センサPS91で測定した実低圧側圧力PSに基づいて、仮の目標圧縮機回転数IVOを算出する(ステップS24〜ステップS27)。
【0082】
上記目標低圧側圧力PSOは、図2の温度設定手段をとなる温度設定レバー105にて設定された設定温度Tsetと、図12及び図13のマップとに基いて設定されたものである。そして、冷房が手動選択されたときは、図12のマップで目標低圧側圧力PSOが設定される。一方、暖房時には図13のマップで目標低圧側圧力PSOが設定される。なお、暖房時は目標低圧側圧力PSOを制御パラメータにすることにより、間接的に圧縮機高圧側の冷媒圧力を制御している。
【0083】
具体的には、仮の目標圧縮機回転数IVOは、目標低圧側圧力PSOと実際に図1の低圧側圧力センサPS91で測定した実低圧側圧力PSの検出圧力との偏差En、及び偏差変化率Edotをパラメータとする。そして、これらのパラメータは、下記数式2、数式3に基づいて決定する。
【0084】
(数式2)En=PSO−PS
(数式3)Edot=En−En-1
ここで、En-1は、偏差Enの前回の値である。偏差Enは4秒毎に更新されるため、前回の偏差En-1は、偏差Enに対して4秒前の値となる。
【0085】
そして、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数、及びルールに基づいて、上記で算出した偏差En及び偏差変化率Edotにおける目標増加回転数Δf(rpm)を算出する(ステップS26)。
【0086】
ここで、この目標増加回転数Δfは、前回の目標圧縮機回転数IVOn-1、すなわち4秒前の目標圧縮機回転数IVOn-1に対して増減する圧縮機21aの回転数のことである。
【0087】
そして、ステップS27にて、仮の目標圧縮機回転数IVOを数式4に基づいて決定する。
【0088】
(数式4)仮のIVO=IVO(n-1)+Δf
このように、図6のステップS27において、先回の目標圧縮機回転数IVO(n-1)に対し、ステップS26で算出した今回変化分Δfを加算し、今回の仮の目標圧縮機回転数IVOを演算する。
【0089】
次に、ステップS61で、先に求められたブロワ電圧に対する第1最高回転数Y1を求める。つまり、ステップS61で、ステップS61中に記入されたマップを用いて送風騒音の原因となるブロワ電圧により、許容最高回転数(rpm)となる第1最高回転数Y1を演算する。
【0090】
次に、ステップS62で、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと、ステップS61で演算した、許容最高回転数である第1最高回転数Y1とを比較し、回転数の低い方を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。こうすることで、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0091】
図6のステップS61内に図示したように、ブロワ風量が低い時、圧縮機34の回転数を低くするように上記第1最高回転数Y1が設定される。なお、このステップS61内で使用するブロワ電圧は、電圧値の変動を抑えるためフィルタ手段にて処理され、60秒の時定数をかけた値が上記第1最高回転数Y1の設定に用いられる。
【0092】
これにより、ブロワ風量を表す値の変化に時間遅れを設定して上記最大値である第1最高回転数Y1が求められる。なお、このようにブロワ電圧等の測定値の変動を抑制する技術は、種々周知であり、上述のようにフィルタ手段を成す演算で時定数をかけた処理を行っても良いし、所定時間内の平均値を演算するようにしても良い。また、所定時間内の積分値を用いてもよい。
【0093】
その結果、送風機のブロワ風量を表す値のいずれかの変動がはげしい時、圧縮機回転数がはげしく変動することによる圧縮機騒音の変化を抑えることが出来、乗員の違和感を軽減することができる。
【0094】
そして、ステップS62において、実の目標圧縮機回転数IVOとして、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと上記第1最高回転数Y1のうち最小の値を選択する。
【0095】
次に、この第1実施形態の作用効果を述べる。この第1実施形態は、送風機のブロワ風量を表す値が大きいほど、最大値となる第1最高回転数Y1を高く設定している。これによれば、車両の室内での送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容でき、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な冷房能力を確保できる。よって、例えば車室内の乗員が冷房不足を感じて、手動でブロワ風量のみを増加させた場合でも、圧縮機の回転数を高く出来るので、冷房不足等が解消される。また、停車時でも送風機の騒音が大きい時は、極力充分な冷房能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0096】
また、制御手段を成す図4の制御装置50は、目標低圧側情報となる目標低圧側圧力PSOと実低圧側情報となる実際に圧力センサで測定した実低圧側圧力PSとの偏差に基づいて圧縮機回転数を制御するものである。また、制御装置50は、目標低圧側情報と実低圧側情報との偏差に基づいて演算された圧縮機回転数を、最大値に相当する所定回転数以下の制限回転数(第1最高回転数Y1)に制限するものである。
【0097】
これにより、実の目標圧縮機回転数IVOが、送風機のブロワ風量(ブロワ騒音)に応じて第1最高回転数Y1で規制され、圧縮機作動音が目立ちにくくなる。この結果、車両乗員の違和感が緩和される。また、通常、最大冷房能力が必要な時には、ブロワ風量を最大にするので、圧縮機は上記第1最高回転数Y1で駆動される。
【0098】
また、圧縮機34を起動させる時は、図6のステップS23のように、空調負荷の大きさを示す目標吹出温度TAOに基づいて目標圧縮機回転数IVOnを決定する。
【0099】
そのため、現状の圧縮機21の回転数(fn-1)、つまり起動時の0rpmに増減回転数Δfを加算するといった上記特許文献1(特開2001−26214号公報)に記載の制御方法に比べて、目標冷却能力(目標低圧側圧力PSOの関数)に早く近づけることができる。
【0100】
従って、短時間で大きな冷房能力を得ることができるので、空調装置始動時の急速冷房時に速やかに室内の温度を快適な温度まで低下させることができる。
【0101】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における圧縮機回転数を決定するフローチャートである。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成及び特徴について説明する。
【0102】
第1実施形態では、第1最高回転数Y1が、ブロワ電圧の関数として算出されたが、この第2実施形態では、図7のステップS612のように、最高回転数(第2最高回転数Y2)が、車両走行用のエンジン回転数の値(単にエンジン回転数とも言う)の関数として算出されるものである。
【0103】
なお、車両エンジン回転数は20秒の時定数をかけたものを用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0104】
次に、図7のステップS622で、上述の仮の目標圧縮機回転数IVOと、ステップS612で演算した第2最高回転数Y2とを比較し、回転数の低い方を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。これにより、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0105】
この第2実施形態は、エンジンの回転数が高いほど、最大値となる第2最高回転数Y2を高く設定する。これにより、エンジンの回転数が高いとき、即ちエンジン騒音が高いときは、高い圧縮機の回転数を許容でき、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。また、停車時でもエンジンの回転数が高いとき、充分な冷房能力が得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0106】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、第3実施形態における圧縮機回転数を決定するフローチャートである。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
【0107】
この第3実施形態では、図8のステップS613のように、第3最高回転数Y3が、エンジン回転数の関数として算出される。また、ステップS623のように、第4最高回転数Y4が、ブロワ電圧の関数として算出される。更に、ステップS633のように、第5最高回転数Y5が、車両の速度の関数として算出される。
【0108】
なお、車両エンジン回転数、及び車両の速度は、20秒の時定数をかけたものを用いる。また、ブロワ電圧の値は、60秒の時定数をかけた値を用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0109】
次に、図のステップS643で、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと、上記各ステップで演算した第3最高回転数Y3と第4最高回転数Y4と第5最高回転数Y5とを比較し、回転数の最も低い値を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。このことで、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0110】
この第3実施形態では、エンジンの回転数が高いほど、ブロワ風量を表す値が大きいほど、及び車両の速度が高いほど、最大値(第3最高回転数Y3と第4最高回転数Y4と第5最高回転数Y5)を高く設定している。
【0111】
これによれば、送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。かつ、エンジンの騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時も、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。また、停車時でもエンジンの騒音が大きいとき、または送風機の騒音が大きいときは、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態における圧縮機回転数を決定するフローチャートである。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
【0112】
この第4実施形態では、図9のステップS614のように、第6最高回転数Y6が、車両エンジン回転数の関数として算出される。また、ステップS624のように、第7最高回転数Y7が、ブロワ電圧の関数として算出される。
【0113】
なお、車両エンジン回転数は、20秒の時定数をかけたものを用いる。また、ブロワ電圧の値は20秒の時定数をかけた値を用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0114】
次に、図のステップS644で、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと、上述の各ステップで演算した、第6最高回転数Y6と第7最高回転数Y7とを比較し、回転数の低い方の値を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。このことで、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0115】
この第4実施形態では、エンジンの回転数が高いほど、及びブロワ風量を表す値が大きいほど、最大値(第6最高回転数Y6と第7最高回転数Y7)を高くしている。
【0116】
これによれば、送風機の騒音が大きい時は、高い圧縮機の回転数を許容することが出来、圧縮機騒音を目立たせることなく、必要な空調能力を確保できる。かつ、車両エンジンの騒音が大きい時は、高い圧縮機最高回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い空調能力を確保できる。
【0117】
よって、例えば夏季駐車中に急速冷房したいような場合は、ブロワ風量を高くするか、またはアクセルペダルを軽く踏んでエンジン回転数を上げると、ブロワ騒音またはエンジン騒音に応じて圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な急速冷房が得られる。
【0118】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図10は、第5実施形態における圧縮機回転数を決定するフローチャートである。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
【0119】
この第5実施形態では、図10のステップS615のように、第8最高回転数Y8が、車両エンジン回転数の関数として算出される。また、ステップS635のように、第9最高回転数Y9が、車両の速度の関数として算出される。
【0120】
なお、車両エンジン回転数は、20秒の時定数をかけた値を第8最高回転数Y8算出に用いる。また、車両の速度の値は20秒の時定数をかけた値を第9最高回転数Y9算出に用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0121】
次に、図10のステップS645で、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと、上記各ステップで演算した、第8最高回転数Y8と第9最高回転数Y9とを比較し、回転数の低い方の値を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。このことで、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0122】
この第5実施形態では、エンジンの回転数が大きいほど、及び車両の速度が高いほど最大値(第8最高回転数Y8と第9最高回転数Y9)を高くしている。
【0123】
これによれば、エンジンの騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時は、高い圧縮機最高回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い冷房能力を確保できる。よって、例えば高速走行しているときはエンジンの騒音または走行騒音によってマスキングできる限度まで圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な空調能力が得られる。
【0124】
また、停車時でも少なくともエンジンの騒音が大きいときは、充分な空調能力を得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0125】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図11は、第6実施形態における圧縮機回転数を決定するフローチャートである。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
【0126】
この第6実施形態では、図11のステップS626のように、第10最高回転数Y10が、ブロワ電圧の関数として算出される。また、ステップS636のように、第11最高回転数Y11が、車両の速度の関数として算出される。
【0127】
なお、ブロワ電圧は、20秒の時定数をかけた値を上記算出に用いる。また、車両の速度の値は20秒の時定数をかけた値を上記算出に用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0128】
次に、図のステップS646で、上記仮の目標圧縮機回転数IVOと、上記各ステップで演算した、第10最高回転数Y10と第11最高回転数Y11とを比較し、回転数の低い方の値を、今回の実の目標圧縮機回転数IVOとして選択する。このことで、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0129】
この第3実施形態では、送風機のブロワ風量を表す値が大きいほど、及び車両の速度が高いほど、最大値(第10最高回転数Y10と第11最高回転数Y11)を高くしている。
【0130】
これによれば、ブロワの騒音、及び車両の速度が高く走行騒音が大きい時は、高い圧縮機最高回転数を許容することで、圧縮機騒音を目立たせることなく、高い冷房能力を確保できる。
【0131】
よって、例えば高速道路を高速走行しているときでもブロワの騒音または走行騒音によってマスキングできる限度まで圧縮機の回転数を高く設定可能になり、充分な空調能力が得られる。また、停車時でも送風機の騒音が大きいときは、充分な空調能力が得られると共に、圧縮機作動音が目立ちにくくなり、車両乗員の違和感が緩和される。
【0132】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することが出来る。例えば上述の実施形態では、圧縮機が電動モータによって駆動され、バッテリーから車両を走行させる走行用モータに電力を供給する電気自動車用の空調装置に本発明を適用した。これは、特にこの種の車両の室内が静かであることに起因しているが、電気自動車用空調装置に限らず、その他の車両用空調装置に、本発明を適用可能である。
【0133】
また、圧縮機の回転数を高めて暖房する必要のある、室内凝縮器を有するヒートポンプ式冷凍サイクルに、本発明を適用するとメリットが大きいが、ヒータコアとエアミックスダンパを備え、車両熱源となる温水により暖房する車両用空調装置に適用することも出来る。
【0134】
また、送風機のブロワ風量を表す値は、送風機駆動用のモータに印加する電圧に限らず、送風機制御のための手動操作信号や送風機風量の実測値でも良いことは勿論である。
【0135】
また、制御手段は、圧縮機の低圧側の冷媒の圧力に関する目標低圧側情報(PSO)と実低圧側情報(PS)との偏差に基づいて、圧縮機の回転数を制御するものとしたが、暖房時には、圧縮機の吐出側である高圧側の目標冷媒圧力である目標高圧側圧力と実高圧側圧力との偏差に基づいて、圧縮機の回転数を制御するものであっても良い。
【0136】
更に、車両を駆動するエンジンの回転数は、通常エンジンECUから与えられるが、停車時におけるアクセルの踏み込み量等を本発明のエンジンの回転数としても良い。また、図1において、除霜運転を行うときは矢印Fに沿って冷媒を流せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の第1実施形態の全体構成図である。
【図2】上記実施形態のコントロールパネルの外形図である。
【図3】上記実施形態の制御装置周辺の電気回路図である。
【図4】上記実施形態に係る制御装置への各種センサ及び被制御機器の接続状態を示すブロック回路図である。
【図5】上記実施形態に係る空調装置の基本的制御フローを示すフローチャートである。
【図6】上記実施形態に係る上記基本的フローチャート内の圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図8】第3実施形態に係る圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図9】第4実施形態に係る圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図10】第5実施形態に係る圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図11】第6実施形態に係る圧縮機回転数を演算する部分のフローチャートである。
【図12】上記各実施形態において、冷房運転時に目標低圧側圧力(PSO)を決定するマップの一例を示す特性図である。
【図13】上記各実施形態において、暖房運転時に目標低圧側圧力(PSO)を決定するマップの一例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0138】
4 送風機(送風手段)
34 圧縮機
50 制御装置を成すエアコンECU
80 蒸発器(熱交換器)
81 室内凝縮器(熱交換器)
105 温度設定スイッチ(温度設定手段)
PS91 低圧側圧力センサ
50a エンジン回転数検出手段を成すエンジンECU
211g 車速センサ
Y1〜Y11 最大値(制限回転数または最高回転数)
IVO 目標圧縮機回転数
PSO 目標冷媒圧力情報(目標低圧側圧力)
PS 実冷媒圧力情報(実低圧側圧力)
En 偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(34)で圧縮された冷媒が流れ、車両の室内の空気を暖房または冷房する熱交換器(80、81)を備えた車両用空調装置において、
前記熱交換器(80、81)を経由して流れる空気を送風する送風機(4)、及び
前記圧縮機(34)の回転数を制御し前記冷媒の流量を制御する制御手段(50)を備え、
前記制御手段(50)は、予め設定された前記圧縮機(34)の回転数の最大値を選択して前記圧縮機の回転数を制限し、該最大値は、少なくとも前記送風機(4)のブロワ風量を表す値、または前記車両に搭載されたエンジンの回転数の値から求められることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(50)は、前記圧縮機(34)の冷媒の圧力に関する目標冷媒圧力情報(PSO)と実冷媒圧力情報(PS)との偏差(En)に基づいて、前記圧縮機(34)の回転数を制御するものであり、前記目標冷媒圧力情報(PSO)と前記実冷媒圧力情報(PS)との偏差(En)に基づいて演算された前記圧縮機(34)の回転数を、前記最大値に相当する制限回転数以下に制限するものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記送風機(4)の前記ブロワ風量を表す値が大きいほど、前記最大値を高く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記エンジンの回転数の値が高いほど前記最大値を高く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エンジンの回転数の値が高いほど、及び前記ブロワ風量を表す値が大きいほど、及び前記車両の速度の値が高いほど、前記最大値を高く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記エンジンの回転数の値が高いほど、及び前記ブロワ風量を表す値が大きいほど、前記最大値を高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
車両エンジンの回転数の値が大きいほど、及び前記車両の速度の値が高いほど、前記最大値を高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記送風機(4)の前記ブロワ風量を表す値が大きいほど、及び前記車両の速度の値が高いほど、前記最大値を高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記最大値を求める値の変化に時間遅れを設定して、前記最大値が求められることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記目標冷媒圧力情報(PSO)と、前記実冷媒圧力情報(PS)とは、前記圧縮機(34)の低圧側の冷媒の圧力に関する目標低圧側圧力(PSO)と実低圧側圧力(PS)であることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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