説明

車両用空調装置

【課題】ブロワモータによる風量調整が自動で行われ、車両室内の温度を適正化しうる安価な装置構成からなる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】ブロワモータBMを駆動することでエバポレータ又はヒータコアを通過させ、吹出口を介して車両室内へ吹き出す空調用エアーにより当該車両室内を空調する車両用空調装置1である。当該車両用空調装置1をオートモードを含む複数の動作モードに設定する風量設定スイッチ101と、FET1〜3を有し、オートモード設定時には、吹出口における空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが0(ゼロ)になるようにFET1〜3を予め設定したステップ毎にオンオフ動作させることで、ブロワモータBMに印加される電圧、及び、同ブロワモータBMの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段100とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、ブロワモータの駆動によって、冷却手段としてのエバポレータ、又は、加熱手段としてのヒータコアを通過させ、吹出口を介して車両室内へ吹き出す空調用エアーによって当該車両室内を空調する車両用空調装置を備えている。
【0003】
図4に示すように、この種の車両用空調装置10では、ブロワモータBM以外に、内外気切替ドア10a、エバポレータ1e、ヒータコア1h、エアミックスドア10b、3箇所のモード切替ドア10c、10d、10e、これら各部材を収容するケース10kを備えている。
【0004】
このケース10kには、サイドレジスタ12,14、センターレジスタ13、フロントガラス用吹出口(デフロスタ)15、足元吹出口16が設けられている。ここでサイドレジスタ12,14、及びセンターレジスタ13によって車両室内前方から運転席及び助手席に向けて空調用エアーを吹き出す吹出口17が構成されている。
【0005】
前記内外気切替ドア10aは、ブロワモータBMの吸入口に設けられており、開度が変更されることで、外気を導入するとともに内気を循環させる。前記エアミックスドア10bは、エバポレータ1eとヒータコア1hとの間に設けられており、開度が変更され、暖気と冷気の混合割合を変化させることで、空調用エアーを暖(HOT)〜冷(COOL)まで連続的に変化させる。
【0006】
前記モード切替ドア10cは、サイドレジスタ12,14、及びセンターレジスタ13からなる吹出口17に設けられており、開度が変更されることで、該吹出口17からの空調用エアーの吹き出し風量を調整する。前記モード切替ドア10dは、フロントガラス用吹出口15に設けられており、開度が変更されることで、該フロントガラス用吹出口15からの空調用エアーの吹き出し風量を調整する。前記モード切替ドア10eは、足元吹出口16に設けられており、開度が変更されることで、該足元吹出口16からの空調用エアーの吹き出し風量を調整する。
【0007】
この車両用空調装置10は、所謂オートエアコンを構成しており(例えば、特許文献1を参照)、例えば、吹出口17の温度制御では、図示しないオートエアコンECUによって、温度設定ダイヤルによる設定値に対し、各種温度センサ等からの入力信号に基づき、必要吹き出し温度が算出される。さらに同吹き出し温度に適宜補正が加えられることにより、前記エアミックスドア10bについて、仮の目標ドア開度が算出される。そして、この仮の目標ドア開度から、所定のマップを参照して真の目標ドア開度が算出される。さらに図示しないサーボモータ(アクチュエータ)が制御され、同サーボモータによって、モード切替ドア10dが任意の位置まで回転駆動される。各サーボモータは、ポテンシオメータにより位置検出信号(フィードバック信号)を前記オートエアコンECUに伝送する。
【0008】
このようなサーボモータは、前記モード切替ドア10c、10d、10eにも設けられており、前記オートエアコンECUによって、車両室内温度が設定温度になるように、入力信号に基づき、空調用エアーの吹き出し温度、吹き出し風量、及び吹出口15〜17の開度を自動計算しつつ、各サーボモータが正常に動作しているかを監視しながら、空調制御が自動的に行われる。
【0009】
こうしたオートエアコンが普及する以前では、図5に示すように、車両用空調装置20は、所謂マニュアルエアコンを構成していた。この車両用空調装置20では、ブロワモータBMによって送風される空調用エアーが、エアミックスドア10bの開度に応じた温度に調節され、同空調用エアーが吹出口15〜17から車両室内に吹き出し、同車両室内の温度が、当該空調用エアーの調節温度になるようにされる(図4参照)。尚、この車両用空調装置20では、内外気切替ドア10a、エアミックスドア10b、及び、モード切替ドア10c、10d、10e(図4参照)の各開度は、車両用空調装置10のようにサーボモータ(アクチュエータ)を使用せず、運転席横のセンタコンソールに設けられるレバーによってそれぞれ手動で操作される。
【0010】
図5に示すように、この車両用空調装置20は、図示しない風量調整ダイヤルの操作によって抵抗値が変わる可変抵抗回路としての直列抵抗回路Raを備えており、同風量調整ダイヤルの手動操作を通じて同直列抵抗回路Raの抵抗値を予め設定したステップ毎に変更し、それに応じて前記ブロワモータBMに印加する電圧(通電する電流値)を変え、同ブロワモータBMの回転数、及び、同ブロワモータBMの風量を段階的に変化させるように構成されている。
【0011】
即ち、車両用空調装置20は、前記風量調整ダイヤルの回動操作によって接点が変更される回転式の風量設定スイッチ21、コイルL21及びスイッチS21とからなるリレー回路Re21、並びに、イグニッションIG、車載電源(+B)、及び、風量設定スイッチ21に接続されたエアコンECU22を備えている。ここで、コイルL21は、イグニッションIGに接続されている。また、スイッチS21は、ブロワモータBMに対し、車載電源(+B)と接地電位とを切り換えるように構成されている。
【0012】
この風量設定スイッチ21を風量調整ダイヤルの回動操作を介して手動で切り換えることによって、車両用空調装置20は、ブロワモータBMの電源が切断されるオフモード(OFFモード)、同ブロワモータBMの風量が最小となるローモード(Loモード)、同風量がローモードの次に大きくなるミディアム1モード(M1モード)、同風量がミディアム1モードの次に大きくなるミディアム2モード(M2モード)、及び、同風量が最大となるハイモード(HIモード)に設定される。
【0013】
また、前記リレー回路Re21を介して、イグニッションIGのオン時に車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給される一方、イグニッションIGのオフ時に同ブロワモータBMが接地させられ、当該電流が遮断される。ここで車載電源(+B)、リレー回路Re21、ブロワモータBM、直列抵抗回路Ra又は風量設定スイッチ21、接地電位に至る経路によってブロワモータBMの通電経路が構成される。
【0014】
前記風量設定スイッチ21は、エアコンECU22が接続される円弧状接点21aと、オフモード用の端子(OFF)、ローモード用の端子(LO)、ミディアム1モード用の端子(M1)、ミディアム2モード用の端子(M2)、ハイモード用の端子(HI)、及び、接地電位(アース)とブロワモータBMとの間に接続されるコモン端子(COM)、該コモン端子(COM)に一端が常時接続され、前記風量調整ダイヤルを手動で操作することで、同風量調整ダイヤルと共に回動し、他端が前記各端子(OFF)〜(HI)に選択的に接続される(切り換えられる)可動接触子22aを備えている。図5に示したように、各端子(OFF)〜(HI)は、この順で時計回りに、且つ、コモン端子(COM)を中心とした円周状に配置されており、円弧状接点21aは、各端子(LO)〜(HI)の内周であって、コモン端子(COM)の外周に配設されている。
【0015】
このコモン端子(COM)とブロワモータBMとの間には、前記直列抵抗回路Raが挿入されており、同直列抵抗回路Raでは、抵抗R1,R2,R3が直列に接続されている。ここで、該抵抗R1と抵抗R2との間には、ミディアム1モード用の端子(M1)、抵抗R2と抵抗R3との間には、ミディアム2モード用の端子(M2)、抵抗R3とブロワモータBMとの間には、ハイモード用の端子(HI)がそれぞれ接続されている。そして、該可動接触子22aが前記風量調整ダイヤルの回動操作に伴い回動し、各端子(LO)〜(HI)に接続されると、同可動接触子22aは、前記円弧状接点21aにも接続されるように構成されている。
【0016】
この円弧状接点21aには、リレー回路Re21のコイルL21の一端が接続されており、可動接触子22aが各端子(LO)〜(HI)に接続され、円弧状接点21aにも接続されると、イグニッションIGから供給される電流は、コイルL21、円弧状接点21a、可動接触子22a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて流れるように構成されている。
【0017】
この車両用空調装置20は、イグニッションIGがオンされ、風量設定ダイヤルの手動による回動操作によって、可動接触子22aが前記各動作モード用の端子(LO)〜(HI)に接続されると、同可動接触子22aは円弧状接点21aにも接続され、イグニッションIGからコイルL21、円弧状接点21a、可動接触子22a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れ、リレー回路Re21のコイルL21が励磁される。そして、リレー回路Re21がオンとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給され、各端子(LO)〜(HI)に対応した動作モードに基づいて、同ブロワモータBMが作動する。
【0018】
一方、イグニッションIGがオフされると、リレー回路Re21のコイルL21が消磁され、リレー回路Re21がオフとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されず、同ブロワモータBMは作動不能となる(作動が停止される)。
【0019】
また、可動接触子22aが端子(OFF)に接続され、円弧状接点21aには接続されていない場合では、イグニッションIGがオンされても、コイルL21が励磁されないので、リレー回路Re21はオンとならず、ブロワモータBMは作動しない。
【0020】
詳しくは、図5に示すように、車両用空調装置20は、まずイグニッションIGがオンされ、さらに風量調整ダイヤルの回動操作に伴い、可動接触子22aが端子(LO)に接続されると、ローモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R1,R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)からスイッチS21(リレー回路Re21)、ブロワモータBM、抵抗R1,R2,R3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最大(=R1+R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧(ブロワモータBMに供給される電流)が最小となり、同ブロワモータBMの回転数がα(rpm)(α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最小となり、エアミックスドア10bの開度に応じた温度に調節され、吹出口15〜17から車両室内に吹き出す空調用エアーの風量が最小となる(図4参照)。
【0021】
また、同車両用空調装置20は、可動接触子22aが端子(M1)に接続されると、ミディアム1モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS21、ブロワモータBM、抵抗R2,R3、端子(M1)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がローモードの次に小さな値(=R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がローモードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がβ(rpm)(β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がローモードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もローモードの次に大きな値となる。
【0022】
また、同車両用空調装置20は、可動接触子22aが端子(M2)に接続されると、ミディアム2モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS21、ブロワモータBM、抵抗R3、端子(M2)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がミディアム1モードの次に小さな値(=R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がミディアム1モードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がγ(rpm)(γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がミディアム1モードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もミディアム1モードの次に大きな値となる。
【0023】
さらに、同車両用空調装置20は、可動接触子22aが端子(HI)に接続されると、ハイモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路には直列抵抗回路Raの抵抗R1〜R3がいずれも挿入されず、車載電源(+B)から、直列抵抗回路Raの各抵抗R1〜R3を介することなく、スイッチS21、ブロワモータBM、端子(HI)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最小(ほぼ0)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧が最大となり、同ブロワモータBMの回転数が最大のδ(rpm)(δ>γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最大となり、前記空調用エアーの風量も最大となる。そしてこのとき、車両用空調装置20によって、当該空調用エアーによる車両室内の温度調節が最大の効率で行われるようになる。
【0024】
そして、同車両用空調装置20は、可動接触子22aが端子(OFF)に接続されると、オフモードに設定され、円弧状接点21aが非接地の状態となる。よって、イグニッションIGからの電流はリレー回路Re21のコイルL21に供給されなくなり、同リレー回路Re21はオフとなる。すると、該リレー回路Re21(スイッチS21)を介して車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されなくなり、ブロワモータBMの回転が停止する。
【0025】
このようなマニュアルエアコン(ユニット)としての車両用空調装置20では、ブロワモータBMの風量調整のみで車両室内の空調が可能であるため、エアミックスドア10b、及び、モード切替ドア10c、10d、10eの各開度を調節するためのサーボモータ(アクチュエータ)が不要であり、しかも、エアコンECUによる複雑な空調制御も必要としないので、装置構成が安価で済むメリットがある。
【特許文献1】特開2006−150992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、このような車両用空調装置20では、車両室内の温度を適正化するにあたり、風量調整ダイヤルの手動操作によってブロワモータBMの風量を調整する必要があり、ユーザにとって煩瑣となるとともに、風量調整が段階的に行われるので、最適な風量調整が困難となるという問題があった。
【0027】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安価な装置構成でありながら、最適な状態でブロワモータによる風量調整が自動的に行われ、これにより車両室内の温度を適正化しうる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ブロワモータを駆動することで冷却手段又は加熱手段を通過させ、吹出口を介して車両室内へ吹き出す空調用エアーにより当該車両室内を空調する車両用空調装置であって、当該車両用空調装置をオートモードを含む複数の動作モードに設定する動作モード設定手段と、複数のスイッチング素子を有し、前記オートモード設定時には、前記吹出口における前記空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが小さくなるように前記各スイッチング素子を予め設定したステップ毎にオンオフ動作させることで、前記ブロワモータに印加される電圧、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段と、を具備すること、を要旨とする。
【0029】
同構成によれば、ブロワモータと、該ブロワモータに印加される電圧(ブロワモータに供給される電流)、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段とからなる簡単な装置構成によって、車室内温度Trを空調用エアーの温度Taに近づける空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【0030】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調装置において、前記スイッチング手段は、前記複数のスイッチング素子のオンオフ動作により前記ブロワモータの通電経路に挿入された抵抗の抵抗値を前記ステップ毎に変更することで、前記ブロワモータに印加される電圧を段階的に変化させるように構成されていること、を要旨とする。
【0031】
同構成によれば、スイッチング手段は、複数のスイッチング素子のオンオフ動作によりブロワモータの通電経路に挿入された抵抗の抵抗値がステップ毎に変更されることで、ブロワモータに印加される電圧が段階的に変化されるように構成されているので、簡単な構成によって、ブロワモータに印加される電圧、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させることが可能となる。
【0032】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置において、前記スイッチング手段は、前記温度絶対値Tsを電圧Vsに変換する温度電圧変換手段と、前記各ステップを区分するための閾値電圧Vth(nは自然数)を設定する閾値電圧設定手段と、前記各ステップに対応して設けられ、前記電圧Vsと当該各ステップに設定された閾値電圧Vthとを比較し、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも大きい場合にはHレベルの電圧を出力するとともに、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも小さい場合にはLレベルの電圧を出力するコンパレータとを備え、前記各スイッチング素子は、前記コンパレータの出力がHレベルの電圧であるときには、オンとなるとともに、前記コンパレータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフとなるFETであること、を要旨とする。
【0033】
同構成によれば、スイッチング手段において、温度電圧変換手段によって、温度絶対値Tsが電圧Vsに変換され、閾値電圧設定手段によって、各ステップを区分するために閾値電圧Vth(nは自然数)が設定され、各ステップに対応して設けられたコンパレータによって、該電圧Vsと当該各ステップに設定された閾値電圧Vthとが比較され、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも大きい場合にはHレベルの電圧が出力されるとともに、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも小さい場合にはLレベルの電圧が出力される。さらに、電圧Vsと各閾値電圧Vthとを比較するコンパレータ、及び、同コンパレータの出力がHレベルの電圧であるときには、オン動作するとともに、コンパレータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフ動作するFETをスイッチング手段の主たる構成要素とする簡素な装置構成によって、車室内温度Trを吹出口における空調用エアーの温度Taに近づける空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【0034】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、前記スイッチング手段は、当該車両用空調装置がオートモードに設定されたときには車載電源より電力が供給されて動作する一方、オートモードに設定されないときには、車載電源より電力が供給されずに動作しないように構成されていること、を要旨とする。
【0035】
同構成によれば、スイッチング手段は、車両用空調装置がオートモードに設定されたときに車載電源より電力が供給されて動作する一方、車両用空調装置がオートモードに設定されないときには、車載電源より電力が供給されずに動作しないので、このような車載電源からの電力の供給・不供給によるオートモードへの設定・非設定によって、スイッチング手段を作動させ、自動的に空調制御を行うオートモードと、スイッチング手段を作動させず、手動で空調制御を行わせるマニュアルモードとを簡単に区別して設定することができるようになる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置において、前記スイッチング手段は、前記各ステップを区分するべく閾値温度Tth(nは自然数)を設定し、且つ、前記温度絶対値Tsと各閾値温度Tthとを比較し、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも大きい場合にはHレベルの電圧を出力するとともに、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも小さい場合にはLレベルの電圧を出力するマイクロコンピュータを備え、前記各スイッチング素子は、前記マイクロコンピュータの出力がHレベルの電圧であるときには、オンとなるとともに、前記マイクロコンピュータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフとなるFETであること、を要旨とする。
【0037】
同構成によれば、スイッチング手段において、マイクロコンピュータによって、ステップを区分するために閾値温度Tth(nは自然数)が設定され、温度絶対値Tsと当該各閾値温度Tthとが比較され、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも大きい場合にはHレベルの電圧が出力されるとともに、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも小さい場合にはLレベルの電圧が出力される。このような温度絶対値Tsと各閾値温度Tthとを比較するマイクロコンピュータ、及び、同マイクロコンピュータの出力がHレベルの電圧であるときには、オン動作するとともに、同マイクロコンピュータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフ動作するFETをスイッチング手段の主たる構成要素とする簡素な装置構成によって、車室内温度Trを吹出口における空調用エアーの温度Taに近づける空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、安価な装置構成でありながら、最適な状態でブロワモータによる風量調整が自動的に行われ、これにより車両室内の温度を適正化しうる車両用空調装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
[第1実施形態]
<車両用空調装置1の構成>
図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、ブロワモータBMを備えており、該ブロワモータBMを駆動することで冷却手段であるエバポレータ1e又は加熱手段であるヒータコア1hを通過させ、吹出口15〜17(図4参照)を介して車両室内へ吹き出す空調用エアーにより当該車両室内を空調するものである。
【0040】
この車両用空調装置1は、図示しない風量調整ダイヤルによって抵抗値が変わる可変抵抗回路としての直列抵抗回路Raを備えており、同風量調整ダイヤルの手動操作を通じて同直列抵抗回路Raの抵抗値を予め設定した4段階のステップ1〜4毎に変更し、それに応じて前記ブロワモータBMに印加する電圧(通電する電流値)を変え、同ブロワモータBMの回転数、及び、同ブロワモータBMの風量を段階的に変化させうるように構成されている。
【0041】
この車両用空調装置1は、前記風量調整ダイヤルの回動操作によって接点が変更される回転式の風量設定スイッチ101、コイルL1及びスイッチS1を有するリレー回路Re1、並びに、イグニッションIG、車載電源(+B)、及び風量設定スイッチ101に接続されたエアコンECU1dを備えている。このエアコンECU1dには、図示しないクーラーコンプレッサが制御可能に接続されている。
【0042】
この風量設定スイッチ101は、車両用空調装置1を複数の動作モードに設定する動作モード設定手段として機能する。詳しくは、同風量設定スイッチ101を風量調整ダイヤルの回動操作を介して手動で切り換えることによって、車両用空調装置1は、ブロワモータBMの電源が切断されるオフモード(OFFモード)、ブロワモータBMの風量が自動制御されるオートモード(AUTOモード)、同ブロワモータBMの風量が最小となるローモード(Loモード)、同風量がLoモードの次に大きくなるミディアム1モード(M1モード)、同風量がミディアム1モードの次に大きくなるミディアム2モード(M2モード)、及び、同風量が最大となるハイモード(HIモード)に設定される。
【0043】
また、前記リレー回路Re1を介して、イグニッションIGのオン時に車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給される一方、イグニッションIGのオフ時に同ブロワモータBMが接地させられ、当該電流が遮断される。ここで車載電源(+B)、リレー回路Re1、ブロワモータBM、直列抵抗回路Ra又は風量設定スイッチ101、接地電位に至る経路によってブロワモータBMの通電経路が構成される。
【0044】
前記風量設定スイッチ101は、エアコンECU1dが接続される円弧状接点101aと、オフモード用の端子(OFF)、オートモード用の端子(AUTO)、ローモード用の端子(LO)、ミディアム1モード用の端子(M1)、ミディアム2モード用の端子(M2)、ハイモード用の端子(HI)、及び、接地電位(アース)とブロワモータBMとの間に接続されるコモン端子(COM)と、該コモン端子(COM)に一端が常時接続され、前記風量調整ダイヤルを手動で操作することで、同風量調整ダイヤルと共に回動し、他端が前記各端子(OFF)〜(HI)に選択的に接続される(切り換えられる)可動接触子102aとを備えている。図1に示すように、各端子(OFF)〜(HI)は、この順で時計回りに、且つ、コモン端子(COM)を中心とした円周状に配置されており、円弧状接点101aは、各端子(AUTO)〜(HI)の内周であって、コモン端子(COM)の外周に配設されている。
【0045】
このコモン端子(COM)とブロワモータBMとの間には、前記直列抵抗回路Raが挿入されており、同直列抵抗回路Raは、抵抗R1,R2,R3が直列に接続されてなる。ここで、該抵抗R1と抵抗R2との間には、ミディアム1モード用の端子(M1)、抵抗R2と抵抗R3との間には、ミディアム2モード用の端子(M2)、抵抗R3とブロワモータBMとの間には、ハイモード用の端子(HI)がそれぞれ接続されている。そして、該可動接触子102aが前記風量調整ダイヤルの回動操作に伴い回動し、各端子(AUTO)〜(HI)に接続されると、同可動接触子102aは、前記円弧状接点101aにも接続されるようになっている。
【0046】
この円弧状接点101aには、リレー回路Re1のコイルL1の一端が接続されており、可動接触子102aが各端子(AUTO)〜(HI)に接続され、円弧状接点101aにも接続されると、イグニッションIGからの電流は、コイルL1、円弧状接点101a、可動接触子102a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて流れるように構成されている。
【0047】
図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、複数のスイッチング素子(NチャネルMOSFET)であるFET1〜FET3を有し、該各FET1〜FET3を予め設定した4段階のステップ1〜ステップ4毎にオンオフ動作(スイッチング動作)させることで、前記ブロワモータBMに印加される電圧、及び、同ブロワモータBMの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段100を備えている。ここで、FET1のドレインは、ミディアム1モード用の端子(M1)、並びに、直列抵抗回路Raの抵抗R1及び抵抗R2の間、FET2のドレインは、ミディアム2モード用の端子(M2)、並びに、直列抵抗回路Raの抵抗R2及び抵抗R3の間、FET3のドレインは、ハイモード用の端子(HI)、並びに、直列抵抗回路Raの抵抗R3及びブロワモータBMの間にそれぞれ接続されている。さらに、同各FET1〜FET3のソースは、いずれも接地電位に接続されている。
【0048】
前記スイッチング手段100は、さらに、吹出口17(図4参照)における空調用エアーの温度Ta[℃]を検知すべく同吹出口17に配設された吹出口温度検知センサ1aと、車室内温度Tr[℃]を検知するべく、車両室内前方のインストルメントパネルに配設された車室内温度検知センサ1bと、吹出口温度検知センサ1aの検出信号と車室内温度検知センサ1bの検出信号との差分をとって増幅し、電気信号(電圧値)として出力する差動増幅回路AMPと、該差動増幅回路AMPの出力の絶対値(温度絶対値Ts[℃][=|Tr−Ta|]に対応する。)をとり、電気信号(電圧Vs)として出力する温度電圧変換手段としての絶対値回路1cとを備えている。この絶対値回路1cは、温度絶対値Tsを電圧Vs[V]に変換する温度電圧変換手段として機能する。ここで、該絶対値回路1cとしては、例えば、全波整流回路が使用できる。また、吹出口温度検知センサ1a及び車室内温度検知センサ1bの出力端子は、それぞれ差動増幅回路AMPの−入力端子及び+入力端子に接続されており、差動増幅回路AMPの出力端子は、絶対値回路1cの入力端子に接続されている。
【0049】
前記スイッチング手段100は、さらに、前記各FET1〜FET3のゲートにそれぞれ出力端子が接続されたコンパレータCOMP1〜COMP3を備えている。これらコンパレータCOMP1〜COMP3の各+入力端子には、それぞれ、前記絶対値回路1cの出力端子が接続され、前記温度絶対値Tsに対応する電圧Vsが入力されるようになっている。
【0050】
前記スイッチング手段100は、さらに、前記4段階のステップ1〜4を区分するための閾値電圧Vth[V]〜閾値電圧Vth[V](0<閾値電圧Vth<閾値電圧Vth<閾値電圧Vth)を設定する閾値電圧設定手段としての直列抵抗回路Rbを備えている。
【0051】
この直列抵抗回路Rbは、4つの抵抗R4,R5,R6,R7が直列に接続されて構成されており、抵抗R4側で車載電源(+B)に接続され、抵抗R7側で接地電位に接続されている。これにより、抵抗R4と抵抗R5との間は、閾値電圧Vth、抵抗R5と抵抗R6との間は、閾値電圧Vth、抵抗R6と抵抗R7との間は、閾値電圧Vthにそれぞれ設定されている。そして、該抵抗R4と抵抗R5との間には、コンパレータCOMP3の−入力端子、抵抗R5と抵抗R6との間には、コンパレータCOMP2の−入力端子、抵抗R6と抵抗R7との間には、コンパレータCOMP1の−入力端子がそれぞれ接続され、これにより、コンパレータCOMP3〜COMP1の各−入力端子に、それぞれ閾値電圧Vth,閾値電圧Vth,閾値電圧Vthの各電圧値が入力されるように構成されている。
【0052】
そして、コンパレータCOMP1〜COMP3は、−入力端子の電圧値(閾値電圧Vth〜閾値電圧Vth)>+入力端子の電圧値(電圧Vs)であるときには、Lレベルの電圧を出力するとともに、−入力端子の電圧値(閾値電圧Vth〜閾値電圧Vth)<+入力端子の電圧値(電圧Vs)であるときには、Hレベルの電圧を出力するように構成されている。
【0053】
さらに、前記各FET1〜FET3は、コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がHレベルの電圧であるときには、オン動作してソース−ドレイン間の抵抗値がほぼ0となるとともに、コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がLレベルの電圧であるときには、オフ動作してソース−ドレイン間の抵抗値が実質的に無限大となる(絶縁状態となる)。
【0054】
したがって、前記スイッチング手段100は、前記4段階の各ステップ1〜4に応じ、以下のように動作する。即ち、
・電圧Vs<閾値電圧Vthの場合には、各コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がLレベルとなり、各FET1〜FET3がオフとなる(ステップ1)。
・閾値電圧Vth<電圧Vs<閾値電圧Vthの場合には、コンパレータCOMP1の出力がHレベル、且つ、各コンパレータCOMP2,3の出力がLレベルとなり、FET1がオンとなり、各FET2,3がオフとなる(ステップ2)。
・閾値電圧Vth<電圧Vs<閾値電圧Vthの場合には、各コンパレータCOMP1,2の出力がHレベル、且つ、コンパレータCOMP3の出力がLレベルとなり、各FET1,2がオンとなり、FET3がオフとなる(ステップ3)。
・閾値電圧Vth<電圧Vsの場合には、各コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がHレベルとなり、各FET1〜FET3がオンとなる(ステップ4)。
【0055】
本実施形態のスイッチング手段100は、さらに、イグニッションIGに一端が接続され、前記風量設定スイッチ101における端子(AUTO)に他端が接続されたコイルL2と、ブロワモータBMに対し、車載電源(+B)と接地電位とを切り換えるように構成されたスイッチS2とからなるリレー回路Re2を備えている。そして、イグニッションIGからコイルL2に通電されて同コイルL2が励磁されると、スイッチS2がオンとなってリレー回路Re2がオンとなり、車載電源(+B)から、スイッチング手段100の差動増幅回路AMP及びコンパレータCOMP1〜COMP3に駆動電力が供給されるように構成されている。一方、イグニッションIGからコイルL2への通電が遮断されて同コイルL2が消磁されると、スイッチS2がオフとなってリレー回路Re2がオフとなり、車載電源(+B)から、スイッチング手段100の差動増幅回路AMP及びコンパレータCOMP1〜COMP3には駆動電力が供給されない(駆動電力が遮断される)ように構成されている。
<車両用空調装置1の動作>
本実施形態の車両用空調装置1は、以上のように構成され、以下その動作について説明する。
【0056】
本実施形態の車両用空調装置1においては、スイッチング手段100は、風量設定スイッチ101によって車両用空調装置1がオートモードに設定されたときに、前記吹出口17における空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが0(ゼロ)になるように、前記各FET1〜3が予め設定した4段階のステップ1〜4毎にオンオフ動作する。つまり、この車両用空調装置1では、オートモードに設定されると、前記吹出口17における空調用エアーの温度Taを目標値として、車室内温度Trが当該目標値に一致するように、ブロワモータBMを用いて空調制御が自動的に行なわれる。
【0057】
一方、車両用空調装置1がマニュアルモードに設定されたときには、スイッチング手段100は動作せず、同車両用空調装置1は、風量設定スイッチ101の手動切り替えによる各動作モードに対応した動作を行なうように構成されている。
【0058】
具体的には、本実施形態の車両用空調装置1は、以下に示すマニュアルモードとオートモードで動作する。
<マニュアルモードの動作>
図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、イグニッションIGがオンされ、風量設定ダイヤルの手動による回動操作によって、可動接触子102aが前記各動作モード用の端子(LO)〜(HI)に接続されると、マニュアルモードに設定される。尚、本実施形態において、このマニュアルモードの設定は、可動接触子102aがオートモード用の端子(AUTO)に接続されることなく端子(LO)〜(HI)に接続され、リレー回路Re2を介して、スイッチング手段100に駆動電力が供給されないことで実現される。即ち、この場合、前記各FET1〜FET4のゲートにHレベルの電圧が印加されることはなく、各FET1〜FET4はすべてオフとなっている。
【0059】
そしてこのとき、可動接触子102aは円弧状接点101aにも接続され、イグニッションIGからコイルL1、円弧状接点101a、可動接触子102a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れ、リレー回路Re1のコイルL1が励磁される。そして、リレー回路Re1がオンとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給され、各端子(LO)〜(HI)に対応した動作モードに基づいて、同ブロワモータBMが作動する。
【0060】
一方、イグニッションIGがオフされると、リレー回路Re1のコイルL1が消磁され、リレー回路Re1がオフとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されず、同ブロワモータBMは作動不能な状態となる(作動が停止される)。
【0061】
尚、可動接触子102aが端子(OFF)に接続され、円弧状接点101aには接続されていない場合では、イグニッションIGがオンされても、コイルL1が励磁されないので、リレー回路Re1はオンとならず、ブロワモータBMは作動しない。また、本マニュアルモードでは、可動接触子102aは端子(LO)〜(HI)のいずれかに接続されているので、コイルL2は励磁されず、リレー回路Re2はオフとなっており、車載電源(+B)からスイッチング手段100に駆動電力が供給されず、同スイッチング手段100は作動しない状態となっている。
【0062】
詳しくは、図1に示すように、車両用空調装置1は、まずイグニッションIGがオンされ、さらに風量調整ダイヤルの回動操作に伴い、可動接触子102aが端子(LO)に接続されると、ローモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R1,R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)からスイッチS1(リレー回路Re1)、ブロワモータBM、抵抗R1,R2,R3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最大(=R1+R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧(ブロワモータBMに供給される電流)が最小となり、同ブロワモータBMの回転数が最小のα(rpm)(α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最小となる。そして、エアミックスドア10bの開度に応じた温度に調節され、吹出口15〜17から車両室内に吹き出す空調用エアーの風量が最小となる(図4参照)。
【0063】
尚、本実施形態の車両用空調装置1では、内外気切替ドア10a、モード切替ドア10c、10d、10e(図4参照)の各開度は、車両用空調装置10のようにサーボモータ(アクチュエータ)を使用せず、通常のマニュアルエアコンと同様、運転席横のセンタコンソールに設けられるレバーの操作によってワイヤーを介してそれぞれ手動で調節される。
【0064】
また、同車両用空調装置1は、可動接触子102aが端子(M1)に接続されると、ミディアム1モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R2,R3、端子(M1)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がローモードの次に小さな値(=R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がローモードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がβ(rpm)(β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がローモードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もローモードの次に大きな値となる。
【0065】
また、同車両用空調装置1は、可動接触子102aが端子(M2)に接続されると、ミディアム2モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R3、端子(M2)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がミディアム1モードの次に小さな値(=R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がミディアム1モードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がγ(rpm)(γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がミディアム1モードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もミディアム1モードの次に大きな値となる。
【0066】
さらに、同車両用空調装置1は、可動接触子102aが端子(HI)に接続されると、ハイモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路には直列抵抗回路Raの抵抗R1〜R3がいずれも挿入されず、車載電源(+B)から、直列抵抗回路Raの各抵抗R1〜R3を介することなく、スイッチS1、ブロワモータBM、端子(HI)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最小(ほぼ0)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧が最大となり、同ブロワモータBMの回転数が最大のδ(rpm)(δ>γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最大となり、前記空調用エアーの風量も最大となる。そしてこの結果、車両用空調装置1によって、当該空調用エアーによる車両室内の温度調節がエアミックスドア10bの開度に応じて最大の効率で行われるようになる。
【0067】
そして、同車両用空調装置1は、可動接触子102aが端子(OFF)に接続されると、オフモードに設定され、円弧状接点101aが非接地の状態となる。よって、イグニッションIGからの電流はリレー回路Re1のコイルL1に供給されなくなり、同リレー回路Re1はオフとなる。すると、該リレー回路Re1(スイッチS1)を介して車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されなくなり、ブロワモータBMの回転が停止する。
<オートモードの動作>
一方、図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、イグニッションIGがオンされ、風量設定ダイヤルの手動による回動操作によって、可動接触子102aがオートモード用の端子(AUTO)に接続されると、オートモードに設定される。
【0068】
そしてこのとき、可動接触子102aは円弧状接点101aにも接続され、イグニッションIGからコイルL1、円弧状接点101a、可動接触子102a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れ、リレー回路Re1のコイルL1が励磁される。そして、リレー回路Re1がオンとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給され、同ブロワモータBMが本オートモードで作動可能な状態となる。
【0069】
一方、イグニッションIGがオフされると、リレー回路Re1のコイルL1が消磁され、リレー回路Re1がオフとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されず、同ブロワモータBMは作動不能な状態となる。尚、本オートモードでは、可動接触子102aが端子(AUTO)に接続されているので、リレー回路Re2はオンとなっており、車載電源(+B)からスイッチング手段100に駆動電力が供給され、同スイッチング手段は作動可能な状態となっている。
【0070】
詳しくは、図1に示すように、車両用空調装置1は、前記空調用エアーの温度Ta[℃]と、車室内温度Tr[℃]との温度差の絶対値である温度絶対値Ts[℃]、及び、該温度絶対値Tsに対応する電圧Vs[V]が小さく、電圧Vs<閾値電圧Vthである場合、各コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がLレベルとなり、各FET1〜FET3がオフとなる(ステップ1)。すると、前記端子(M1)〜端子(HI)がいずれも非接地の状態となる。即ち、車載電源(+B)からスイッチS1(リレー回路Re1)、ブロワモータBM、抵抗R1,R2,R3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置1は自動的にローモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最大(=R1+R2+R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてローモード設定時と同様の動作を行なう。
【0071】
次に、車両用空調装置1は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Ts、及び、該温度絶対値Tsに対応する電圧Vsが大きくなり、閾値電圧Vth<電圧Vs<閾値電圧Vthとなった場合、コンパレータCOMP1の出力がHレベル、且つ、各コンパレータCOMP2,3の出力がLレベルとなり、FET1がオンとなり、各FET2,3がオフとなる(ステップ2)。すると、前記端子(M1)が接地、且つ、端子(M2),端子(HI)がいずれも非接地の状態となる。即ち、このとき、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R2,R3、及びFET1を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置1は自動的にミディアム1モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が次に小さな値(=R2+R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてミディアム1モード設定時と同様の動作を行なう。
【0072】
次に、車両用空調装置1は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Ts、及び、温度絶対値Tsに対応する電圧Vsがさらに大きくなり、閾値電圧Vth<電圧Vs<閾値電圧Vthとなった場合、各コンパレータCOMP1,2の出力がHレベル、且つ、コンパレータCOMP3の出力がLレベルとなり、各FET1,2がオンとなり、FET3がオフとなる(ステップ3)。すると、前記端子(M1),端子(M2)がいずれも接地、且つ、端子(HI)が非接地の状態となる。即ち、このとき、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R3、及びFET2を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置1は自動的にミディアム2モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が次に小さな値(=R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてミディアム2モード設定時と同様の動作を行なう。
【0073】
そして、車両用空調装置1は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Ts、及び、該温度絶対値Tsに対応する電圧Vsがさらに大きくなり、閾値電圧Vth<電圧Vsとなった場合、各コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がHレベルとなり、各FET1〜FET3がオンとなる(ステップ4)。すると、前記端子(M1)〜端子(HI)がいずれも接地した状態となる。即ち、このとき、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、及びFET3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置1は自動的にハイモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最小となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてハイモード設定時と同様の動作を行なう。
【0074】
本実施形態の車両用空調装置1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ブロワモータBMと、該ブロワモータBMに印加される電圧(ブロワモータBMに供給される電流)、及び、同ブロワモータBMの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段100とからなる簡単な装置構成によって、エアミックスドア10bの開度によって調節しうる吹出口17における空調用エアーの温度Taを目標値としてブロワモータBMの作動を制御し、車室内温度Trを当該目標値である空調用エアーの温度Taに一致させる空調制御を自動的に行うことができるようになる。この結果、マニュアルエアコンに類似する簡単且つ安価な装置構成でありながら、最適な状態でブロワモータBMによる風量調整が自動的に行われ、これにより車両室内の温度を適正化することができる。
【0075】
(2)スイッチング手段100は、FET1〜3のオンオフ動作によりブロワモータBMの通電経路に挿入された抵抗R1〜R3からなる直列抵抗回路Raの抵抗値がステップ1〜4毎に変更されることで、ブロワモータBMに印加される電圧が段階的に変化されるように構成されているので、簡単な構成によって、同ブロワモータBMの回転数を段階的に変化させることが可能となる。
【0076】
(3)スイッチング手段100において、温度電圧変換手段としての絶対値回路1cによって、温度絶対値Tsが電圧Vsに変換され、閾値電圧設定手段としての直列抵抗回路Rbによって、4段階のステップ1〜4を区分するために閾値電圧Vth(n=1〜3)が設定され、各ステップ1〜4に対応して設けられたコンパレータCOMP1〜COMP3によって、該電圧Vsと当該各ステップ1〜4に設定された閾値電圧Vthとが比較され、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも大きい場合にはHレベルの電圧が出力されるとともに、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも小さい場合にはLレベルの電圧が出力される。さらに、電圧Vsと各閾値電圧Vthとを比較するコンパレータCOMP1〜COMP3、及び、同コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がHレベルの電圧であるときには、オン動作するとともに、コンパレータCOMP1〜COMP3の出力がLレベルの電圧であるときには、オフ動作するFET1〜3をスイッチング手段100の主たる構成要素とする簡素な装置構成によって、吹出口17における空調用エアーの温度Taを目標値とし、車室内温度Trを当該目標値である空調用エアーの温度Taに一致させる空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【0077】
(4)スイッチング手段100は、車両用空調装置1がオートモードに設定されたときに車載電源(+B)より電力が供給されて動作する一方、車両用空調装置1がオートモードに設定されないときには、車載電源(+B)より電力が供給されずに動作しないので、このような車載電源(+B)からの電力の供給・不供給によるオートモードへの設定・非設定によって、スイッチング手段100を作動させ、自動的に空調制御を行うオートモードと、スイッチング手段100を作動させず、手動で空調制御を行わせるマニュアルモードとを簡単に区別して設定することができるようになる。
[第2実施形態]
<車両用空調装置11の構成>
図2に示すように、本実施形態の車両用空調装置11は、第1実施形態の車両用空調装置1と同様な動作を行うものであり、第1実施形態のスイッチング手段100に相当するスイッチング手段200として次のものを用いる以外は、当該スイッチング手段100と同様の構成であり、対応する箇所には同一又は対応する符号を付してその説明を省略する。
【0078】
即ち、このスイッチング手段200は、吹出口17における空調用エアーの温度Ta[℃]を検知すべく同吹出口17に配設された吹出口温度検知センサ11a(図4参照)と、車室内温度Tr[℃]を検知するべく、車両室内前方のインストルメントパネルに配設された車室内温度検知センサ11bとを備えている。
【0079】
前記スイッチング手段200は、さらに、吹出口温度検知センサ11a及び車室内温度検知センサ11bと入力I/F11cを介して接続されたマイクロコンピュータ11mと、該マイクロコンピュータ11mとFETドライバ11eを介して接続された複数のスイッチング素子(NチャネルMOSFET)であるFET1〜FET3とを備えている。
【0080】
また、吹出口温度検知センサ11a及び車室内温度検知センサ11bは、入力I/F11cを介して、それぞれマイクロコンピュータ11mの入力用ピン(IN1),入力用ピン(IN2)に接続されている。また、FET1〜FET3は、それらの各ゲートが、FETドライバ11eを介して、それぞれマイクロコンピュータ11mの出力用ピン(OUT1),出力用ピン(OUT2),出力用ピン(OUT3)に接続されている。
【0081】
図2に示すマイクロコンピュータ11mでは、イグニッションIGがピン(+IG)に接続され、車載電源(+B)がピン(+B)に接続されている。さらに、接地電位がピン(GND)に接続されている。
【0082】
また、本実施形態のスイッチング手段200は、第1実施形態のスイッチング手段100と異なり、リレー回路Re2を備えていない(図1参照)。同スイッチング手段200では、該リレー回路Re2に代えて、風量設定スイッチ101における端子(AUTO)は、入力I/F11cを介して、マイクロコンピュータ11mのピン(IN0)に接続されている。これにより、風量設定ダイヤルの手動操作によって、可動接触子102aがオートモード用の端子(AUTO)に接続され、ピン(IN0)が接地電位(0[V])となると、当該マイクロコンピュータ11mによって車両用空調装置11がオートモードに設定されたことが認識(検知)されるように構成されている。そして、本実施形態では、マイクロコンピュータ11mは、イグニッションIGがオン、且つ、車両用空調装置11がオートモードに設定されたことで動作するように構成されている。
【0083】
さらに、本実施形態のスイッチング手段200は、差動増幅回路AMP、絶対値回路1c、コンパレータCOMP1〜COMP3、及び直列抵抗回路Rbを備えていない。つまり、これら差動増幅回路AMP、絶対値回路1c、コンパレータCOMP1〜COMP3、直列抵抗回路Rbの機能をマイクロコンピュータ11mが実現している。
【0084】
また、前述したように、第1実施形態のスイッチング手段100では、吹出口温度検知センサ11aで検知した空調用エアーの温度Taに対応する検出信号と、車室内温度検知センサ11bで検知した車室内温度Trに対応する検出信号との差分を差動増幅回路AMPで増幅して電気信号(電圧値)として出力する。そして、絶対値回路1cで変換して得られた温度絶対値Tsを直列抵抗回路Rbで設定した閾値電圧Vth〜閾値電圧Vthと比較し、コンパレータCOMP1〜COMP3を介して、スイッチング素子としてのFET1〜FET3を制御し、オンオフ動作させていた。これに対し、本実施形態のスイッチング手段200では、入力信号である空調用エアーの温度Ta及び車室内温度Trを直接マイクロコンピュータ11m内で演算処理してスイッチング素子としてのFET1〜FET3を制御し、オンオフ動作させている点において異なっている。
【0085】
即ち、図3の動作機能表に示すように、マイクロコンピュータ11m(以下、単に「マイコン11m」という。)の入力用ピン(IN0)へのオートモード用端子(AUTO)の電位、入力用ピン(IN1)への空調用エアーの温度Ta、及び、入力用ピン(IN2)への車室内温度Trに対応する信号の各入力が行なわれる。そして、これら信号に含まれる情報に基づき、マイコン11mによって温度絶対値Tsが演算されるとともに、前記4段階のステップ1〜4を区分するために設定した閾値温度Tth[℃]〜閾値温度Tth[℃](0<閾値温度Tth<閾値温度Tth<閾値温度Tth)と比較される。即ち、温度絶対値Ts[℃][=|Tr−Ta|]と、各閾値温度Tth〜Tthとの比較を行い、その判定結果に応じてマイコン11mの出力用ピン(OUT1)〜出力用ピン(OUT3)から2値化信号(0又は1)を出力し、各FET1〜FET3をオンオフ動作させる。すると、その結果に対応してブロワモータBMが、第1実施形態と同様、オフモード、ローモード、ミディアム1モード、ミディアム2モード、ハイモードに自動的に設定される。尚、図3の動作機能表に示すマイコン11mの動作は、同マイコン11m内のメモリ(図示せず)に格納された制御プログラムによって実行される。
<車両用空調装置11の動作>
本実施形態の車両用空調装置11は、以上のように構成され、以下その動作について説明する。
【0086】
本実施形態の車両用空調装置11においては、スイッチング手段200は、風量設定スイッチ101によって車両用空調装置11がオートモードに設定されたとき(ピン(IN0)の電位がLレベルの電圧とされたとき。)に、マイコン11mによって制御され、前記吹出口17における空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが0(ゼロ)になるように前記各FET1〜3が、予め設定した4段階のステップ1〜4毎にオンオフ動作する。つまり、この車両用空調装置11では、オートモードに設定されると、前記吹出口17における空調用エアーの温度Taを目標値として、車室内温度Trが当該目標値に一致するように、ブロワモータBMを用いて空調制御が自動的に行なわれる。
【0087】
一方、車両用空調装置11がマニュアルモードに設定されたとき(ピン(IN0)の電位が初期値であるHレベルの電圧とされたとき。)には、スイッチング手段200、即ち、マイコン11mは動作せず、同車両用空調装置11は、風量設定スイッチ101の手動による切り替えによる各動作モードの動作を行なうように構成されている。
【0088】
具体的には、本実施形態の車両用空調装置11は、以下に示すマニュアルモードとオートモードで動作する。
<マニュアルモードの動作>
図2に示すように、本実施形態の車両用空調装置11は、イグニッションIGがオンされ、風量設定ダイヤルの手動による回動操作によって、可動接触子102aが前記各動作モード用の端子(LO)〜(HI)に接続されると、マニュアルモードに設定される。尚、本実施形態において、このマニュアルモードの設定は、可動接触子102aがオートモード用の端子(AUTO)に接続されず(ピン(IN0)の電位が0とならず)、マイコン11mによって車両用空調装置11がマニュアルモードに設定されたことが認識されることで実現される。
【0089】
そしてこのとき、可動接触子102aは円弧状接点101aにも接続され、イグニッションIGからコイルL11、円弧状接点101a、可動接触子102a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れ、リレー回路Re11のコイルL11が励磁される。そして、リレー回路Re11がオンとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給され、各端子(LO)〜(HI)に対応した動作モードに基づいて、同ブロワモータBMが作動する。
【0090】
一方、イグニッションIGがオフされると、リレー回路Re11のコイルL11が消磁され、リレー回路Re11がオフとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されず、同ブロワモータBMは作動不能となる(作動が停止される)。
【0091】
尚、可動接触子102aが端子(OFF)に接続され、円弧状接点101aには接続されていない場合では、イグニッションIGがオンされても、円弧状接点101aを介してイグニッションIGから接地電位に電流が流れず、コイルL11が励磁されないので、リレー回路Re11はオンとならず、ブロワモータBMは作動しない。また、本マニュアルモードでは、可動接触子102aは各端子(LO)〜(HI)のいずれかに接続されているので、同可動接触子102aはオートモード用の端子(AUTO)に接続されておらず、マイコン11mによって車両用空調装置11がマニュアルモードに設定されたことが認識され、各FET1〜4はオフとされており、スイッチング手段200は動作不能な状態となっている。
【0092】
詳しくは、図2に示すように、車両用空調装置11は、まずイグニッションIGがオンされ、さらに風量調整ダイヤルの回動操作に伴い、可動接触子102aが端子(LO)に接続されると、ローモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R1,R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)からスイッチS11(リレー回路Re11)、ブロワモータBM、抵抗R1,R2,R3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最大(=R1+R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧(ブロワモータBMに供給される電流)が最小となり、同ブロワモータBMの回転数が最小のα(rpm)(α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最小となり、エアミックスドア10bの開度に応じた温度に調節され、吹出口15〜17から車両室内に吹き出す空調用エアーの風量が最小となる(図4参照)。
【0093】
また、同車両用空調装置11は、可動接触子102aが端子(M1)に接続されると、ミディアム1モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R2,R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS11、ブロワモータBM、抵抗R2,R3、端子(M1)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がローモードの次に小さな値(=R2+R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がローモードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がβ(rpm)(β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がローモードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もローモードの次に大きな値となる。
【0094】
また、同車両用空調装置11は、可動接触子102aが端子(M2)に接続されると、ミディアム2モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路に直列抵抗回路Raの抵抗R3が挿入される。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS11、ブロワモータBM、抵抗R3、端子(M2)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値がミディアム1モードの次に小さな値(=R3)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧がミディアム1モードの次に大きな値となり、同ブロワモータBMの回転数がγ(rpm)(γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量がミディアム1モードの次に大きな値となり、前記空調用エアーの風量もミディアム1モードの次に大きな値となる。
【0095】
さらに、同車両用空調装置11は、可動接触子102aが端子(HI)に接続されると、ハイモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路には直列抵抗回路Raの抵抗R1〜R3がいずれも挿入されず、車載電源(+B)から、直列抵抗回路Raの各抵抗R1〜R3を介することなく、スイッチS11、ブロワモータBM、端子(HI)、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に電流が流れる。この状態では、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最小(ほぼ0)となるので、車載電源(+B)によってブロワモータBMに印加される電圧が最大となり、同ブロワモータBMの回転数が最大のδ(rpm)(δ>γ>β>α>0)となる。このとき同ブロワモータBMの風量が最大となり、前記空調用エアーの風量も最大となる。そしてこの結果、車両用空調装置11によって、当該空調用エアーによる車両室内の温度調節がエアミックスドア10bの開度に応じて最大の効率で行われるようになる。
【0096】
そして、同車両用空調装置1は、可動接触子102aが端子(OFF)に接続されると、オフモードに設定され、円弧状接点101aが非接地の状態となる。よって、イグニッションIGからの電流はリレー回路Re11のコイルL11に供給されなくなり、同リレー回路Re11はオフとなる。すると、該リレー回路Re11(スイッチS11)を介して車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されなくなり、ブロワモータBMの回転が停止する。
<オートモードの動作>
一方、図2に示すように、本実施形態の車両用空調装置11は、イグニッションIGがオンされ、風量設定ダイヤルの手動による回動操作によって、可動接触子102aがオートモード用の端子(AUTO)に接続されると、オートモードに設定される。
【0097】
そして、可動接触子102aは円弧状接点101aにも接続され、イグニッションIGからコイルL11、円弧状接点101a、可動接触子102a、及びコモン端子(COM)を介して接地電位に向けて電流が流れ、リレー回路Re11のコイルL11が励磁される。そして、リレー回路Re11がオンとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給され、同ブロワモータBMが本オートモードで作動可能な状態となる。
【0098】
一方、イグニッションIGがオフされると、リレー回路Re11のコイルL11が消磁され、リレー回路Re11がオフとなり、車載電源(+B)からブロワモータBMに電流が供給されず、同ブロワモータBMは作動不能な状態となる。尚、本オートモードでは、可動接触子102aが端子(AUTO)に接続されているので、マイコン11mによって、車両用空調装置11がオートモードに設定されている旨が認識され、同スイッチング手段200は動作可能な状態となっている。
【0099】
詳しくは、図2及び図3に示すように、車両用空調装置11は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Tsが小さく、温度絶対値Ts<閾値温度Tthである場合、各ピン(OUT1)〜ピン(OUT3)の出力がLレベルとなる。そして、各FET1〜FET3がオフとなる(ステップ1)。すると、前記端子(M1)〜端子(HI)がいずれも非接地の状態となる。即ち、車載電源(+B)からスイッチS11(リレー回路Re11)、ブロワモータBM、抵抗R1,R2,R3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置11は自動的にローモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最大(=R1+R2+R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてローモード設定時と同様の動作を行なう。
【0100】
次に、車両用空調装置11は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Tsが大きくなり、閾値温度Tth<温度絶対値Ts<閾値温度Tthとなった場合、ピン(OUT1)の出力がHレベル、且つ、各ピン(OUT2),(OUT3)の出力がLレベルとなる。そして、FET1がオンとなり、各FET2,3がオフとなる(ステップ2)。すると、前記端子(M1)が接地、且つ、端子(M2),端子(HI)がいずれも非接地の状態となる。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R2,R3、及びFET1を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置11は自動的にミディアム1モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が次に小さな値(=R2+R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてミディアム1モード設定時と同様の動作を行なう。
【0101】
次に、車両用空調装置11は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Tsがさらに大きくなり、閾値温度Tth<温度絶対値Ts<閾値温度Tthとなった場合、各ピン(OUT1),(OUT2)の出力がHレベル、且つ、ピン(OUT3)の出力がLレベルとなる。そして、各FET1,2がオンとなり、FET3がオフとなる(ステップ3)。すると、前記端子(M1),端子(M2)がいずれも接地、且つ、端子(HI)が非接地の状態となる。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、抵抗R3、及びFET2を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置11は自動的にミディアム2モードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が次に小さな値(=R3)となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてミディアム2モード設定時と同様の動作を行なう。
【0102】
そして、車両用空調装置11は、前記空調用エアーの温度Taと、車室内温度Trとの温度差の絶対値である温度絶対値Tsがさらに大きくなり、閾値温度Tth<温度絶対値Tsとなった場合、各ピン(OUT1)〜ピン(OUT3)の出力がHレベルとなる。そして、各FET1〜FET3がオンとなる(ステップ4)。すると、前記端子(M1)〜端子(HI)がいずれも接地した状態となる。即ち、車載電源(+B)から、スイッチS1、ブロワモータBM、及びFET3を介して接地電位に向けて電流が流れる。この状態では、車両用空調装置11は自動的にハイモードに設定され、ブロワモータBMの通電経路において直列抵抗回路Raによる抵抗値が最小となるので、ブロワモータBMは前記マニュアルモードにおいてハイモード設定時と同様の動作を行なう。
【0103】
本実施形態の車両用空調装置11によれば、第1実施形態による前記(1)及び(2)の作用・効果に加えて、さらに以下のような作用・効果を得ることができる。
(5)スイッチング手段200において、マイコン11mによって、4段階のステップ1〜4を区分するために閾値温度Tth(n=1〜3)が設定され、温度絶対値Tsと当該各閾値温度Tthとが比較され、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも大きい場合にはHレベルの電圧が出力されるとともに、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも小さい場合にはLレベルの電圧が出力される。このような温度絶対値Tsと各閾値温度Tthとを比較するマイコン11m、及び、同マイコン11mの出力がHレベルの電圧であるときには、オン動作するとともに、同マイコン11mの出力がLレベルの電圧であるときには、オフ動作するFET1〜3をスイッチング手段200の主たる構成要素とする簡素な装置構成によって、吹出口17における空調用エアーの温度Taを目標値とし、車室内温度Trを当該目標値である空調用エアーの温度Taに一致させる空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【0104】
尚、上記各実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記各実施形態では、スイッチング素子であるFET1〜FET3としてNチャネルMOSFETを用いた。しかしこれに限られず、スイッチング素子としては、それ以外のもの、例えば、PチャネルMOSFETや、NPN型(PNP型)バイポーラトランジスタ、リレー回路等を用いることもできる。
【0105】
・上記各実施形態では、スイッチング手段100(200)のステップ1〜5におけるスイッチング動作により、ブロワモータBMの通電経路に挿入した直列抵抗回路Raの抵抗値を変更することで、当該ブロワモータBMに印加される電圧、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるようにした。しかしこれに限られず、スイッチング手段100(200)のスイッチング動作により、ブロワモータBMに印加する電圧又は同ブロワモータBMに通電する電流を直接変更することで、当該ブロワモータBMの回転数を段階的に変化させるようにすることもできる。
【0106】
・上記各実施形態では、吹出口温度検知センサ1aは、サイドレジスタ12,14、及びセンターレジスタ13を構成する吹出口17(図4参照)に配設したが、同吹出口温度検知センサ1aは、空調の目的に応じて、それ以外の吹出口15又は16に配設することもできる。
【0107】
・上記第2実施形態では、車両用空調装置11による自動空調制御をエアコンECU11dとは別体のマイコン11mを用いて実行するようにしたが、当該エアコンECU11dによって実行させることもできる。
【0108】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○請求項1に記載の車両用空調装置において、前記スイッチング手段は、前記オートモード設定時には、前記吹出口における前記空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが0になるように前記各スイッチング素子を予め設定したステップ毎にオンオフ動作させることで、前記ブロワモータに印加される電圧、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるものである車両用空調装置。
【0109】
同構成によれば、ブロワモータと、該ブロワモータに印加される電圧(ブロワモータに供給される電流)、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段とからなる安価な装置構成によって、吹出口における空調用エアーの温度Taを目標値としてブロワモータの作動を制御し、車室内温度Trを当該目標値である空調用エアーの温度Taに一致させる空調制御を自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の電気的構成を示す回路図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の電気的構成を示す回路図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るマイコン・ブロワモータ動作機能表(TthをTと略記)。
【図4】車両用空調装置の構造を示す模式図。
【図5】従来例の車両用空調装置の電気的構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0111】
1,11…車両用空調装置、15,16,17,…吹出口、100…スイッチング手段、101…風量設定スイッチ(動作モード設定手段)、BM…ブロワモータ、FET1,FET2,FET3…NチャネルMOSFET(スイッチング素子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロワモータを駆動することで冷却手段又は加熱手段を通過させ、吹出口を介して車両室内へ吹き出す空調用エアーにより当該車両室内を空調する車両用空調装置であって、
当該車両用空調装置をオートモードを含む複数の動作モードに設定する動作モード設定手段と、
複数のスイッチング素子を有し、前記オートモード設定時には、前記吹出口における前記空調用エアーの温度Taと車室内温度Trとの差の絶対値である温度絶対値Tsが小さくなるように前記各スイッチング素子を予め設定したステップ毎にオンオフ動作させることで、前記ブロワモータに印加される電圧、及び、同ブロワモータの回転数を段階的に変化させるスイッチング手段と、を具備することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記スイッチング手段は、前記複数のスイッチング素子のオンオフ動作により前記ブロワモータの通電経路に挿入された抵抗の抵抗値を前記ステップ毎に変更することで、前記ブロワモータに印加される電圧を段階的に変化させるように構成されている車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記スイッチング手段は、前記温度絶対値Tsを電圧Vsに変換する温度電圧変換手段と、
前記各ステップを区分するための閾値電圧Vth(nは自然数)を設定する閾値電圧設定手段と、
前記各ステップに対応して設けられ、前記電圧Vsと当該各ステップに設定された閾値電圧Vthとを比較し、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも大きい場合にはHレベルの電圧を出力するとともに、該電圧Vsが各閾値電圧Vthよりも小さい場合にはLレベルの電圧を出力するコンパレータとを備え、
前記各スイッチング素子は、前記コンパレータの出力がHレベルの電圧であるときには、オンとなるとともに、前記コンパレータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフとなるFETである車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、
前記スイッチング手段は、当該車両用空調装置がオートモードに設定されたときには車載電源より電力が供給されて動作する一方、オートモードに設定されないときには、車載電源より電力が供給されずに動作しないように構成されている車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記スイッチング手段は、前記各ステップを区分するべく閾値温度Tth(nは自然数)を設定し、且つ、前記温度絶対値Tsと各閾値温度Tthとを比較し、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも大きい場合にはHレベルの電圧を出力するとともに、該温度絶対値Tsが各閾値温度Tthよりも小さい場合にはLレベルの電圧を出力するマイクロコンピュータを備え、
前記各スイッチング素子は、前記マイクロコンピュータの出力がHレベルの電圧であるときには、オンとなるとともに、前記マイクロコンピュータの出力がLレベルの電圧であるときには、オフとなるFETである車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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