説明

車両用空調装置

【課題】装置構成に要する費用の増大を防止し、車室内の吹出し温度を適切に制御する。
【解決手段】制御装置18は、内燃機関11の作動時においては、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に対して第1時定数τ1(例えば、30秒など)を設定し、この第1時定数τ1に亘ってエバポレータセンサ19から逐次出力された複数の検出結果の平均値(例えば、30秒間の時間加重平均値Teva(30s)など)に応じて、エバポレータ出口空気温度Teを算出する。制御装置18は、内燃機関11のアイドル停止時においては、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に対して第2時定数τ2(例えば、0.5秒など)を設定し、この第2時定数τ2に亘ってエバポレータセンサ19から逐次出力された複数の検出結果の平均値(例えば、0.5秒間の時間加重平均値Teva(0.5s)など)に応じて、エバポレータ出口空気温度Teを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両エンジンの稼働中にエバポレータにおける凝縮水の蓄冷量を増加させる蓄冷モードを実行する場合と、車両エンジンの停止時にエバポレータの凝縮水の蓄冷量の放冷により空気を冷却する放冷モードを実行する場合とにおいて、エバポレータの吹出温度を検出する温度センサの時定数を切り替えることによって、温度センサの測温応答性を切り替える空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この空調装置では、蓄冷モ−ドに比して放冷モードの方が蒸発器の吹出温度の変動が大きいことから、放冷モードでは温度センサの時定数を小さくすることで蒸発器の吹出温度の早い変化に対して応答よく追従し、室内吹出温度の制御遅れを抑制する。
一方、蒸発器の吹出温度の変動が小さい蓄冷モ−ドでは、温度センサの時定数を大きくすることで実際の蒸発器の吹出温度の変化に対する応答を遅らせて、圧縮機の断続回数の増加を抑制し、電磁クラッチなどの耐久性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−81121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術に係る空調装置においては、ヒータコアに導入される風量を変更可能なダンパーの開度は、エバポレータの吹出空気温度と、ヒータコアの温水温度と、目標吹出空気温度とに基づいて算出されている。
そして、エバポレータの吹出空気温度には車両エンジンの稼働時と停止時とで切り替えられる温度センサの時定数が反映されているが、ヒータコアの温水温度は適宜のセンサによって検出されているだけである。
【0006】
このため、例えばヒータコアの温水温度を検出するセンサをヒータコア側ではなく内燃機関側に備える車両においては、内燃機関の作動時には、センサの検出結果をヒータコアの実際の温水温度に等しいとみなすことは可能であっても、アイドル停止時には、センサの検出結果とヒータコアの実際の温水温度とは大きく相違する虞がある。
この場合、ヒータコアの実際の温水温度とは大きく相違するセンサの検出結果を用いると、空調装置から車室内への送風の吹出温度を適切に制御することができないという問題が生じる。
このような問題が生じることに対して、例えば、ヒータコアの温水温度を直接的に(つまり、ヒータコアの近傍で)検出するセンサを新たに設ける場合には、装置構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置構成に要する費用の増大を防止ししつつ車室内への送風の吹出温度を適切に制御することが可能な車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用空調装置(例えば、実施の形態での車両用空調装置10)は、エバポレータ(例えば、実施の形態でのエバポレータ14)およびヒータコア(例えば、実施の形態でのヒータコア16)および空調装置本体(例えば、実施の形態での空調装置本体10a)を備え、車両に搭載された内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関11)により暖められた冷却水を前記ヒータコアに送水し、前記冷却水によって前記ヒータコアを暖めることにより、前記冷却水を前記空調装置の熱源とする車両用空調装置であって、前記内燃機関が一時的に停止するアイドル停止時と、前記内燃機関の作動時とにおいて、前記空調装置本体から車室内への送風の吹出し温度に関連したパラメータ(例えば、実施の形態でのエバポレータ出口空気温度Te、コア内部水温Tcw、ヒータコア出口空気温度Th)に対する時定数を変化させる制御手段(例えば、実施の形態での制御装置18)を備える。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用空調装置では、前記制御手段は、前記内燃機関の作動時の前記時定数に比べて、前記アイドル停止時の前記時定数を、より小さくする。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用空調装置は、前記エバポレータに設けられ、前記エバポレータの出口空気温度を検出する温度センサ(例えば、実施の形態でのエバポレータセンサ19)を備え、前記制御手段は、前記温度センサから出力される前記出口空気温度の検出結果に応じた補正値(例えば、実施の形態での第1補正量C1、第2補正量C2)によって前記出口空気温度の検出結果を補正する。
【0011】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用空調装置は、前記ヒータコアを通過する風量を取得する風量取得手段(例えば、実施の形態での制御装置18が兼ねる)と、前記エバポレータに設けられ、前記エバポレータの出口空気温度を検出する温度センサ(例えば、実施の形態でのエバポレータセンサ19)とを備え、前記制御手段は、前記風量取得手段から出力される前記風量の取得結果と、前記温度センサから出力される前記出口空気温度の検出結果とに基づき、前記ヒータコアに送水された前記冷却水の水温(例えば、実施の形態でのコア内部水温Tcw)を取得する。
【0012】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用空調装置は、前記エバポレータおよび前記ヒータコアに向けて送風する送風機(例えば、実施の形態での送風機13)と、前記送風機の送風方向において前記ヒータコアよりも上流側に設けられ、前記送風による風量のうち前記ヒータコアに導入される風量を開度により変更可能なダンパー(例えば、実施の形態でのダンパー15)とを備え、前記風量取得手段は、前記送風機の駆動電圧(例えば、実施の形態でのファン電圧V)と、前記ダンパーの前記開度とに基づき、前記ヒータコアを通過する風量を取得する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る車両用空調装置によれば、アイドル停止時と内燃機関の作動時とにおいて、空調装置本体から車室内への送風の吹出し温度に関連したパラメータに対する時定数を変化させることから、例えばアイドル停止時において車室内への送風の吹出し温度の変化が増大する場合であっても、この吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができる。
これにより、例えばアイドル停止時であっても、吹出し温度を適宜の目標温度に一致させるようにして、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0014】
しかも、例えば新たな温度センサなどを追加する必要無しに、既存の装置構成によって車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用空調装置によれば、例えば内燃機関の作動時においては、車室内への送風の吹出し温度に対して過剰な頻度で各種の制御が実行されてしまうことを防止することができる。
また、例えばアイドル停止時においては、車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を適切なタイミングで実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用空調装置によれば、エバポレータの出口空気温度の検出結果に応じた補正値、例えば出口空気温度や単位時間当たりの出口空気温度の変化量などに応じた補正値によって、温度センサの検出結果を補正することにより、エバポレータの出口空気温度を精度良く検知することができる。
これにより、車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を適切なタイミングで実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用空調装置によれば、ヒータコアに送水された冷却水の水温(例えば、ヒータコア内部の冷却水の水温)を、エバポレータの出口空気温度の検出結果と、ヒータコアを通過する風量とに基づき取得することによって、水温の精度を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用空調装置によれば、ヒータコアを通過する風量を、送風機の駆動電圧と、ダンパーの開度とに基づき取得することによって、風量の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る時間加重平均値Teva(0.5s)の単位時間当たりの変化量(Teva(0.5s)変化量)と第1補正量C1との対応関係の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る時間加重平均値Teva(0.5s)と第2補正量C2との対応関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るコンプレッサーの作動(ON)および作動停止(OFF)の変化と、エバポレータセンサの検出結果(検出値)と、実際のエバポレータ出口空気温度(実温度)との対応関係の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る送風機の駆動電圧(ファン電圧)Vに応じた実車風量Fの変化の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るアイドル停止時と内燃機関の作動時とにおける、エンジン水温センサから出力される検出結果(エンジン水温)と、コア内部水温Tcwとの対応関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る実施例および比較例での車両走行時と車両停車時とにおけるヒータコア出口空気温度Thおよびエバポレータ出口空気温度Teおよび吹出し温度の各変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用空調装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関11から出力される駆動力によって走行する車両(図示略)に搭載されており、通風ダクト12の上流側に設けられた空気導入口12aから下流側に設けられた空気吹出口12bに向かい、順次、送風機13と、エバポレータ14と、ダンパー15と、ヒータコア16とを備えて構成されている。
さらに、車両用空調装置10は、エバポレータ14に接続された冷凍サイクル17と、制御装置18と、エバポレータセンサ19と、エンジン水温センサ20とを備えて構成されている。
【0021】
通風ダクト12の空気導入口12aは、内気(車室内空気)および外気(車室外空気)を空調装置本体10a内に導入可能に設けられている。
通風ダクト12の空気吹出口12bは、空調装置本体10a内から車室内へ空気を送風可能に設けられている。
【0022】
送風機13は、例えば制御装置18の制御により印加される駆動電圧(ファン電圧)Vに応じて駆動し、空気導入口12aから導入された空気(内気および外気)を通風ダクト12の上流側から下流側の空気吹出口12bに向かい、つまりエバポレータ14およびヒータコア16に向けて送風する。
【0023】
エバポレータ14は冷凍サイクルに17に接続されている。
冷凍サイクル17は、電磁クラッチ(図示略)などを介して遮断可能に内燃機関11に機械的に連結されたコンプレッサー31と、コンデンサー32と、コンデンサーファン33と、レシーバー34と、膨張弁35とを備えて構成されている。
【0024】
コンプレッサー31は、内燃機関11から出力される駆動力によって駆動し、エバポレータ14から冷媒を吸入し、この冷媒を圧縮してコンデンサー32に吐出する。
コンデンサー32は、内部に流入した冷媒をコンデンサーファン33の送風により冷却する。
レシーバー34は、コンデンサー32から流出して内部に流入した冷媒の気液を分離する。
膨張弁35は、レシーバー34から流出する液冷媒を低圧に減圧し、低圧の気液2相状態を形成し、この低圧冷媒をエバポレータ14に吐出する。
エバポレータ14は、内部に流入した低圧冷媒が蒸発する際の吸熱によって、通風ダクト12内の空気を冷却する。
【0025】
エバポレータセンサ19は、通風ダクト12内のエバポレータ14の下流側の位置に配置され、エバポレータ14を通過した空気の温度(エバポレータ出口空気温度Te)を検出し、この検出結果の信号を制御装置18に出力する。
【0026】
ダンパー15は、例えば制御装置18の制御により駆動するモータMによって回動可能とされ、送風機13の送風によってエバポレータ14を通過した空気の風量のうち、ヒータコア16に導入される風量と、ヒータコア16を迂回する風量との風量割合を、開度(例えば、ヒータコア16に向かう通風路に対する開度)により調整する。
【0027】
ヒータコア16は、内燃機関11を冷却することで暖められる冷却水を熱源として、内燃機関11から流出して内部に流入した冷却水の放熱によって、通風ダクト12内のうちヒータコア16に向かう通風路内の空気を加熱する。
【0028】
エンジン水温センサ20は、内燃機関11内を流通する冷却水の温度(エンジン水温Tw)を検出し、この検出結果の信号を制御装置18に出力する。
【0029】
制御装置18は、内燃機関11が一時的に停止するアイドル停止時と、内燃機関11の作動時とにおいて、空調装置本体10aから車室内への送風の吹出し温度に関連したパラメータに対する時定数を変化させており、例えば、内燃機関11の作動時の時定数に比べて、アイドル停止時の時定数を、より小さくする。
【0030】
例えば、制御装置18は、内燃機関11の作動時においては、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に対して第1時定数τ1(例えば、30秒など)を設定し、この第1時定数τ1に亘ってエバポレータセンサ19から逐次出力された複数の検出結果の平均値(例えば、30秒間の時間加重平均値Teva(30s)など)に応じて、エバポレータ出口空気温度Te(例えば、Te=Teva(30s)+所定定数Tなど)を算出する。
【0031】
また、例えば、制御装置18は、内燃機関11のアイドル停止時においては、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に対して第2時定数τ2(例えば、0.5秒など)を設定し、この第2時定数τ2に亘ってエバポレータセンサ19から逐次出力された複数の検出結果の平均値(例えば、0.5秒間の時間加重平均値Teva(0.5s)など)に応じて、例えば下記数式(1)に示すように記述されるエバポレータ出口空気温度Teを算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
なお、上記数式(1)に示すように、制御装置18は、内燃機関11のアイドル停止時においては、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に応じた補正値(例えば、第1補正量C1および第2補正量C2など)によってエバポレータセンサ19から出力される検出結果を補正する。
【0034】
例えば、制御装置18は、下記数式(2)および図2に示すように、エバポレータセンサ19から出力された検出結果に応じた時間加重平均値Teva(0.5s)の単位時間当たりの変化量(Teva(0.5s)変化量)が増大することに伴い、増大傾向に変化するとともに、時間加重平均値Teva(0.5s)の単位時間当たりの変化量(Teva(0.5s)変化量)がゼロである場合にゼロとなる第1補正量C1を設定する。
なお、下記数式(2)は、所定の係数αにより記述されている。
【0035】
【数2】

【0036】
また、例えば、制御装置18は、下記数式(3)および図3に示すように、エバポレータセンサ19から出力された検出結果に応じた時間加重平均値Teva(0.5s)が、ゼロよりも大きい所定温度範囲(例えば、第1温度T1〜第2温度T2の温度範囲)において増大することに伴い、所定値C2aからゼロに向かい減少傾向に変化する第2補正量C2を設定する。
なお、下記数式(3)は、所定の係数β,γにより記述されている。
【0037】
【数3】

【0038】
なお、第2補正量C2は、例えば、時間加重平均値Teva(0.5s)がゼロ以上かつ第1温度T1以下においては所定値C2aとなり、時間加重平均値Teva(0.5s)が第2温度T2以上においてはゼロとなっている。
【0039】
すなわち、制御装置18は、内燃機関11およびコンプレッサー31が停止するアイドル停止時には、内燃機関11およびコンプレッサー31の作動時に比べて、エバポレータ14の温度変化が大きくなることから、エバポレータセンサ19の検出結果に対する時定数を第1時定数τ1から第2時定数τ2へと小さくすることによって、エバポレータ出口空気温度Teの演算結果を、エバポレータ14の早い温度変化に対して応答よく追従させる。
【0040】
さらに、制御装置18は、エバポレータセンサ19の検出結果の単位時間当たりの変化量およびエバポレータセンサ19の検出結果に基づく補正を行なうことによって、例えば図4に示すようなコンプレッサー31の作動(ON)および作動停止(OFF)の変化、つまり時刻t1から時刻t2おけるコンプレッサー31の作動停止(OFF)と時刻t2以降のコンプレッサー31の作動(ON)となどに応じて、エバポレータセンサ19の検出結果(検出値)と実際の温度(実温度)との差異が生じる場合であっても、エバポレータ出口空気温度Teの演算結果を、実温度に精度良く一致させる。
【0041】
なお、制御装置18は、アイドル停止時から内燃機関11の作動時への切り替え時において、所定条件が満たされるまでは、アイドル停止時の処理を継続して、例えば上記数式(1)を用いてエバポレータ出口空気温度Teの算出を継続してもよい。
この所定条件は、例えば、コンプレッサー31の作動開始により冷凍サイクル17で冷媒を循環させる制御が開始されること、かつ、第1時定数τ1による平均値(例えば、30秒間の時間加重平均値Teva(30s))が第2時定数τ2による平均値(例えば、0.5秒間の時間加重平均値Teva(0.5s))未満であること、などである。
【0042】
また、制御装置18は、内燃機関11が一時的に停止するアイドル停止時と、内燃機関11の作動時とにおいて、エンジン水温センサ20から出力される検出結果に基づき、内燃機関11からヒータコア16に送水された冷却水の水温、つまりヒータコア16の内部の冷却水の水温(コア内部水温)Tcwの演算を切り替える。
【0043】
例えば、制御装置18は、内燃機関11の作動時においては、エンジン水温センサ20から出力される検出結果と、コア内部水温Tcwとは等しい(Tw=Tcw)とする。
そして、コア内部水温Tcwは、ヒータコア16を通過した空気の温度(ヒータコア出口空気温度Th)にほぼ等しい(Th≒Tcw)とする。
【0044】
また、例えば、制御装置18は、内燃機関11のアイドル停止時においては、ヒータコア16を通過する風量(=F×SW/100)と、エバポレータセンサ19の検出結果に基づき、例えば上記数式(1)に示すように記述されるエバポレータ出口空気温度Teとに基づき、例えば下記数式(4)に示すように記述されるコア内部水温Tcwを算出する。
なお、制御装置18は、下記数式(4)において、コア内部水温Tcwは、ヒータコア16を通過した空気の温度(ヒータコア出口空気温度Th)にほぼ等しい(Th≒Tcw)としている。
また、下記数式(4)において、任意の自然数nによる今回値であるヒータコア出口空気温度Th(n)は、前回値Th(n−1)と、所定の係数δにより記述されており、n=1でのTh(0)はアイドル停止の開始時のコア内部水温Tcwに等しいとされている。
【0045】
【数4】

【0046】
また、制御装置18は、上記数式(4)における風量(=F×SW/100)を、例えば図5に示すように送風機13の駆動電圧(ファン電圧)Vに応じた実車風量(つまり、送風機13によって空気導入口12aから導入された空気の風量)Fと、混合割合SWに応じたダンパー15の開度とに基づき演算する。
【0047】
例えば図5において、実車風量Fは送風機13の駆動電圧(ファン電圧)Vの増大に伴い、増大傾向に変化するように設定されている。
【0048】
また、上記数式(4)における混合割合SWは、例えば下記数式(5)に示すように、空調装置本体10aから車室内への送風の吹出し温度に対する目標値である目標吐気温度Taoと、前回値であるヒータコア出口空気温度Th(n−1)と、エバポレータ出口空気温度Teとにより、例えば下記数式(5)に示すように記述される。
なお、目標吐気温度Taoは、例えば車両の乗員による入力操作などに応じて設定される。
【0049】
【数5】

【0050】
すなわち、制御装置18は、例えば図6に示すように、内燃機関11が停止するアイドル停止時には、内燃機関11の作動時に比べて、エンジン水温センサ20から出力される検出結果と、コア内部水温Tcwとは大きく相違することから、エバポレータセンサ19の検出結果に対する時定数の変更および補正が行なわれたエバポレータ出口空気温度Teの演算結果と、ヒータコア16を通過する風量(=F×SW/100)とに基づき、コア内部水温Tcwを算出することによって、算出精度を向上させる。
【0051】
そして、制御装置18は、エバポレータ出口空気温度Teおよびヒータコア出口空気温度Thに基づき、吹出し温度を目標吐気温度Taoに一致させるようにしてダンパー15の開度を調整することによって、吹出し温度の変化を抑制する制御を行なう。
【0052】
例えば図7(A)に示すように、アイドル停止時には、内燃機関11の作動時とは処理を切り替えて、上記数式(1)および数式(4)を用いる実施例では、例えば図7(B)に示すように、内燃機関11が停止するアイドル停止時であっても内燃機関11の作動時と同一の処理を行なう比較例に比べて、アイドル停止時(停車区間)と内燃機関11の作動時とにおける、吹出し温度の変化が抑制されていることが認められる。
【0053】
上述したように、本実施の形態による車両用空調装置10によれば、アイドル停止時と内燃機関11の作動時とにおいて、空調装置本体10aから車室内への送風の吹出し温度に関連したパラメータ(つまり、エバポレータ出口空気温度Teと、エバポレータ出口空気温度Teに基づき算出されるコア内部水温Tcwおよびヒータコア出口空気温度Th)に対する時定数を変化させることから、例えばアイドル停止時において車室内への送風の吹出し温度の変化が増大する場合であっても、この吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができる。
これにより、例えばアイドル停止時であっても、吹出し温度を目標吐気温度Taoに一致させるようにして、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0054】
しかも、例えば新たな温度センサなどを追加する必要無しに、既存の装置構成によって車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0055】
さらに、例えば内燃機関11の作動時においては、アイドル停止時に比べて時定数が大きくなることから、車室内への送風の吹出し温度に対して過剰な頻度で各種の制御が実行されてしまうことを防止することができる。
また、例えばアイドル停止時においては、車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を適切なタイミングで実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0056】
さらに、エバポレータ14の出口空気温度の検出結果に応じた補正値、例えば出口空気温度や単位時間当たりの出口空気温度の変化量などに応じた第1補正量C1および第2補正量C2によって、エバポレータセンサ19の検出結果を補正することにより、エバポレータ出口空気温度Teを精度良く検知することができる。
これにより、車室内への送風の吹出し温度の変化を精度良く適切に制御することができ、吹出し温度の変化を抑制するような各種の制御を適切なタイミングで実行することが可能であり、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0057】
さらに、ヒータコア16に送水された冷却水の水温(コア内部水温Tcw)を、エバポレータ出口空気温度Teの演算結果と、ヒータコア16を通過する風量(=F×SW/100)とに基づき、算出することによって、算出精度を向上させることができる。
【0058】
さらに、ヒータコア16を通過する風量(=F×SW/100)を、送風機13の駆動電圧と、ダンパー15の開度とに基づき取得することによって、風量の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用空調装置
10a 空調装置本体
11 内燃機関
13 送風機
14 エバポレータ
15 ダンパー
16 ヒータコア
18 制御装置(制御手段、風量取得手段)
19 エバポレータセンサ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータおよびヒータコアおよび空調装置本体を備え、車両に搭載された内燃機関により暖められた冷却水を前記ヒータコアに送水し、前記冷却水によって前記ヒータコアを暖めることにより、前記冷却水を前記空調装置の熱源とする車両用空調装置であって、
前記内燃機関が一時的に停止するアイドル停止時と、前記内燃機関の作動時とにおいて、前記空調装置本体から車室内への送風の吹出し温度に関連したパラメータに対する時定数を変化させる制御手段を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関の作動時の前記時定数に比べて、前記アイドル停止時の前記時定数を、より小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記エバポレータに設けられ、前記エバポレータの出口空気温度を検出する温度センサを備え、
前記制御手段は、前記温度センサから出力される前記出口空気温度の検出結果に応じた補正値によって前記出口空気温度の検出結果を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ヒータコアを通過する風量を取得する風量取得手段と、
前記エバポレータに設けられ、前記エバポレータの出口空気温度を検出する温度センサとを備え、
前記制御手段は、前記風量取得手段から出力される前記風量の取得結果と、前記温度センサから出力される前記出口空気温度の検出結果とに基づき、前記ヒータコアに送水された前記冷却水の水温を取得すること特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エバポレータおよび前記ヒータコアに向けて送風する送風機と、
前記送風機の送風方向において前記ヒータコアよりも上流側に設けられ、前記送風による風量のうち前記ヒータコアに導入される風量を開度により変更可能なダンパーとを備え、
前記風量取得手段は、前記送風機の駆動電圧と、前記ダンパーの前記開度とに基づき、前記ヒータコアを通過する風量を取得することを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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