説明

車両用空調装置

【課題】主に、前席に対する空調性能の低下を防止し得るようにする。
【解決手段】リアダクト3の中間部に車室内空気bを取込可能な空気取込口21が設けられ、空気取込口21に、空気取込口21またはリアダクト3の開閉または開度調整の少なくともいずれかを行うことにより、リア吹出口2から吹出される空気における、空調装置本体1からの空調用空気aの引込量および空気取込口21からの車室内空気bの取込量を調整可能な流量調整用ドア部22が設けられるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、自動車などの車両Aには、空調装置(空気調和装置)が設けられている。
【0003】
このような空調装置では、車室Bの前部に、主に前席Cを空調可能な空調装置本体1が設置される。
【0004】
そして、空調装置本体1と後席Dに対して設けられたリア吹出口2との間にリアダクト3が接続されると共に、リアダクト3後端のリア吹出口2近傍に空調装置本体1からの空調用空気aを引込可能な後席用ファン4が設けられたものも存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような空調装置によれば、後席用ファン4によって空調装置本体1からの空調用空気aをリアダクト3を介し後席D側へ引込んでリア吹出口2から吹出させることができる。即ち、後席Dの空調を行うことができる。
【0006】
なお、上記した空調装置本体1は、その内部に、前側ファン5と、エバポレータ6(冷却用熱交換器)と、ヒータコア7(加熱用熱交換器)と、ヒータコア7をバイパス可能なバイパス通路8とを順に備えている。また、空調装置本体1は、その外面部分に、窓曇防止用吹出口11(フロントDEF及びサイドDEF)と、前席空調用吹出口12と、上記リアダクト3の前端が接続される後席用開口部13とを備えている。そして、窓曇防止用吹出口11には、窓曇防止用ドア機構14が設けられ、前席空調用吹出口12には前席吹出口用ドア機構15が設けられている。また、バイパス通路8の入側におけるエバポレータ6とヒータコア7との間には前側ミックスドア機構16が設けられ、バイパス通路8の出側におけるヒータコア7との間には後側ミックスドア機構17が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−76484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記空調装置には、以下のような問題があった。
【0009】
即ち、空調装置本体1には供給可能な空調用空気aの絶対量に限界があるため、後席D側に、後席用ファン4を用いて強制的に空調用空気aを引込んだ場合、前席Cに対する空調性能が低下するなどのおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、空調装置本体とリア吹出口との間のリアダクトに車室内空気を取込可能な空気取込口が設けられ、空気取込口に、空気取込口またはリアダクトの開閉または開度調整の少なくともいずれかを行うことにより、リア吹出口から吹出される空気における、空調装置本体からの空調用空気の引込量および空気取込口からの車室内空気の取込量を調整可能な流量調整用ドア部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、リアダクトの中間部に空気取込口を設けて、流量調整用ドア部で、空気取込口またはリアダクトの開閉または開度調整を行うことにより、リア吹出口から吹出す空気における、空調装置本体からの空調用空気の引込量および空気取込口からの車室内空気の取込量を調整することが可能となる。これにより、前席に対する空調性能の低下などを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例にかかる車両の空調装置を示す断面図である。
【図2】空気取込口および流量調整用ドア部を備えたリアダクトの断面図であり、(a)〜(e)は、それぞれ作動の状態を示す図である。
【図3】窓曇防止モードの場合の図1と同様の図である。
【図4】窓曇防止モードの場合の制御フローチャートである。
【図5】内気循環モードの場合の制御フローチャートである。
【図6】後席に設けられた空調装置の操作ユニットを示す図である。
【図7】従来例にかかる車両の空調装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
<構成>以下、構成について説明する。
【0015】
図1〜図6は、この実施例を示すものである。
【0016】
図1の断面図に示すように、自動車などの車両Aに対し、空調装置(空気調和装置)が設けられる。
【0017】
この空調装置は、車室Bの前部に、主に前席Cを空調可能な空調装置本体1が設置される。
【0018】
そして、空調装置本体1と後席Dに対して設けられたリア吹出口2との間にリアダクト3が接続されると共に、リアダクト3後端のリア吹出口2近傍に空調装置本体1からの空調用空気aを引込可能な後席用ファン4が設けられる。
【0019】
そして、後席用ファン4によって空調装置本体1からの空調用空気aをリアダクト3を介し後席D側へ引込んでリア吹出口2から吹出させることができるようにする。即ち、後席Dの空調を行うことができるようにする。
【0020】
なお、以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。また、空調装置本体1の内部および外部の構成については、窓曇防止用吹出口11(フロントDEF及びサイドDEF)や前席空調用吹出口12や後席用開口部13などを含めて上記した従来例のものとほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0021】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0022】
(構成1)
空調装置本体1とリア吹出口2との間のリアダクト3(の中間部)に、図2に示すように、車室内空気bを取込可能な空気取込口21が設けられる。この空気取込口21に、空気取込口21またはリアダクト3の開閉または開度調整の少なくともいずれか(または全て)を行うことにより、リア吹出口2から吹出される空気における、空調装置本体1からの空調用空気aの引込量および空気取込口21からの車室内空気bの取込量を調整可能な流量調整用ドア部22が設けられる。
【0023】
ここで、流量調整用ドア部22は、空気取込口21の開閉および開度調整と、リアダクト3の開閉および開度調整との全てが可能なものとするのが最も好ましい。
【0024】
例えば、流量調整用ドア部22は、空気取込口21の周辺に設けられた、リアダクト3の幅方向(紙面と直角方向)へ延びる回転軸22aを中心にリアダクト3の(内部や)外部を回動して、空気取込口21の開閉や開度調整が可能な室内空気用羽根部22bを有するものなどとする。なお、空気取込口21の縁部には、室内空気用羽根部22bの先端の回動軌跡に沿って、室内空気用羽根部22bによる空気取込口21の閉範囲を規定可能な閉範囲規定用壁部22cが設けられる。
【0025】
また、流量調整用ドア部22は、空気取込口21の周辺に設けられた、リアダクト3の幅方向へ延びる回転軸22aを中心にリアダクト3の内部を回動して、リアダクト3の開閉や開度調整が可能な空調空気用羽根部22dを有するものなどとする。
【0026】
この場合には、閉範囲規定用壁部22cは、空調空気用羽根部22dによるリアダクト3の全開から全閉までの範囲が90度となっているので、これに合わせて90度の範囲に亘って設けるようにしている。また、流量調整用ドア部22を、回転軸22aを共通にし、室内空気用羽根部22bと空調空気用羽根部22dとを一体化して同時に回動し得るようにしている。但し、室内空気用羽根部22bと空調空気用羽根部22dとは、別個独立に回動し得るようにしても良い。この際、回転軸22aは、上記したように同一のものとしても、それぞれ別のものとしても良い。
【0027】
また、空気取込口21をリアダクト3の上部に設け、回転軸22aを空気取込口21の前縁部に設置すると共に、閉範囲規定用壁部22cを空気取込口21の後縁部に設けるようにしている。但し、空気取込口21の位置は、これに限るものではなく、例えば、リアダクト3の側部や下部に設けるようにすることもできる。また、回転軸22aの位置は、これに限るものではなく、例えば、リアダクト3の内部に設置するようにしても良い。この場合には、リアダクト3内部で室内空気用羽根部22bや空調空気用羽根部22dが回動可能となるように、円形状の膨張壁部を設けるようにする。
【0028】
(構成2)
そして、空調装置本体1による後席Dへの空調用空気aの供給量が不足した時に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、空気取込口21から車室内空気bを取込んで、リア吹出口2から吹出し得るように構成する。
【0029】
ここで、上記操作は、空調装置をコントロールするための空調制御装置23(図1参照)が、空調装置本体1、後席用ファン4、流量調整用ドア部22を制御することによって行われる(以下、同様)。
【0030】
より具体的には、空調装置本体1の運転モードには、通常空調モードや、窓曇防止モードなどが存在する。また、外気導入モードや内気循環モードなどが存在する。このうち、通常空調モードは、図1に示すように、前席空調用吹出口12から空調用空気aを吹出して主に前席Cに対する空調を行うものである。また、窓曇防止モードは、図3に示すように、窓曇防止用吹出口11から窓ガラスへ向けて空調用空気aを吹出すことにより窓曇りを防止させるようにするものである。窓曇防止モードの場合、空調用空気aは、窓曇防止のために優先的に使用されることとなる。また、内気循環モードは、車室内空気bを循環させて空調に使用するものである。内気循環モードの場合、外気導入モードと比べて、空調装置本体1への空気の取込量が制限される傾向にある。以下、通常空調モードの場合、窓曇防止モードの場合、内気循環モードの場合についての具体的な制御を説明する。
【0031】
(構成3)通常空調モードの場合
空調装置本体1が、空調モードで、前席Cへの空調用空気aの吹出量と、後席Dへの空調用空気aの吹出量とが共に多くなるよう(空調制御装置23からの)指示(または制御指令)が出されたかまたは(乗員による)操作がなされた場合に、即ち、空調装置本体1の能力を超える要求がなされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、車室内空気bを取込ませるよう構成する。
【0032】
なお、乗員がマニュアルで操作する場合、前席Cや後席Dに対する吹出量は、例えば、大(Hi)・中・小(LO)などの複数段階で設定される。
【0033】
より具体的には、以下の一覧のようにする。
【0034】
前席空調 後席空調 リアダクト 空気取込口 後席用ファン
(a) ファンLO LO 開(調整可能) 閉 On(50%)
(b) ファンLO Hi 開(調整可能) 閉 On(100%)
(c) ファンHi Off 閉 閉 Off
(d) ファンHi LO 開(15%) 閉 Off
(e) ファンHi Hi 閉または小開 開 On(100%)

まず、概略を述べると、空調装置本体1による前席Cへの空調用空気aの吹出量が少ない(ファンLO)時には、後席Dへの空気の吹出量に拘わらず、後席Dへの空調用空気aの供給量が足りているので、空気取込口21を開いて車室内空気bを取込む必要はない(ケースa,b)。
【0035】
また、空調装置本体1による前席Cへの空調用空気aの吹出量が多い(ファンHi)時であっても、後席Dへの空気の吹出量がないかまたは少ないのであれば、後席Dへの空調用空気aの供給量が足りるので、空気取込口21を開いて車室内空気bを取込む必要はない(ケースc,d)。
【0036】
しかし、空調装置本体1による前席Cへの空調用空気aの吹出量が多い(ファンHi)時に、後席Dへの空気の吹出量が多くなった場合には、後席Dへの空調用空気aの供給量が不足するので、空気取込口21を開いて車室内空気bを取込むようにする(ケースe)。
【0037】
即ち、より具体的には、「ケースa」のように、前席Cへの空調用空気aの吹出量が少なく(ファンLO)、後席Dへの空気の吹出量が少ない(LO)場合には、図2(a)に示すように、リアダクト3を僅かに開にして空調用空気aをリア吹出口2へ送給し、空気取込口21を閉にして車室内空気bを取込まないようにし、後席用ファン4をOn(50%程度)にして、空調用空気aをリア吹出口2へ少量引込むようにする。この際、リアダクト3の開度は、全閉と全開との間の中間の位置で適宜調整するようにしても良い。また、後席用ファン4の出力は50%の前後で適宜調整するようにしても良い。
【0038】
また、「ケースb」のように、前席Cへの空調用空気aの吹出量が少なく(ファンLO)、後席Dへの空気の吹出量が多い(Hi)場合には、図2(b)に示すように、リアダクト3をより大きく開にして空調用空気aをリア吹出口2へ送給し、空気取込口21を閉にして車室内空気bを取込まないようにし、後席用ファン4をOn(100%)にして、空調用空気aをリア吹出口2へ多量に引込むようにする。この際、リアダクト3の開度は、全開または全開に近い位置で適宜調整するようにしても良い。また、後席用ファン4の出力は100%の前後で適宜調整するようにしても良い。
【0039】
そして、「ケースc」のように、前席Cへの空調用空気aの吹出量が多く(ファンHi)、後席Dへの空気の吹出がない(Off)場合には、図2(c)に示すように、リアダクト3を閉にしてリア吹出口2への空調用空気aの送給や漏れを停止し、空気取込口21を閉にして車室内空気bを取込まないようにし、後席用ファン4をOffにして、空調用空気aおよび車室内空気bをリア吹出口2へ引込まないようにする。
【0040】
また、「ケースd」のように、前席Cへの空調用空気aの吹出量が多く(ファンHi)、後席Dへの空気の吹出量が少ない(LO)場合には、図2(d)に示すように、リアダクト3を僅かに開(15%程度)にして空調用空気aをリア吹出口2へ少量送給し、空気取込口21を閉にして車室内空気bを取込まないようにし、後席用ファン4をOffにして、空調用空気aおよび車室内空気bをリア吹出口2へ引込まないようにする。これにより、前席C側の空調装置本体1のファンによって空調用空気aがリア吹出口2へ少量送給されることになる。この際、リアダクト3の開度は、15%程度の位置で適宜調整するようにしても良い。
【0041】
そして、「ケースe」のように、前席Cへの空調用空気aの吹出量が多く(ファンHi)、後席Dへの空気の吹出量も多い(Hi)場合には、図2(e)に示すように、リアダクト3を閉にして空調用空気aをリア吹出口2へ送給しないようにし(即ち、空調用空気aをほぼ前席Cのみで使用するようにし)、空気取込口21を開にして車室内空気bを取込むようにし、後席用ファン4をOn(100%)にして、車室内空気bをリア吹出口2へ多量に引込むようにする。これにより、後席用ファン4によって車室内空気bがリア吹出口2へ多量に送給されることになる(即ち、ほぼ車室内空気bのみで後席Dを空調させるようにする)。このようにしても、車室内空気bが、空調用空気aによって空調されたものであれば、特に大きな影響のないものとすることができる(以下同様)。なお、リアダクト3の開度を、小開にして若干の空調用空気aを車室内空気bに混入させてリア吹出口2から吹出させることにより、若干の空調用空気aによる空調感が得られるようにしても良い。
【0042】
なお、上記した100%、50%15%などの数値は、単なる例示であり、これに限るものではない。
【0043】
(構成4)窓曇防止モード(DEFモード)の場合
空調装置本体1が、図3に示すように、窓曇防止用吹出口11から窓ガラスへ向けて空調用空気aを吹出す窓曇防止モードとされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、車室内空気bを取込ませるか、または、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気吹出量を規制する(即ち、指示や操作よりも吹出量が小さくなるようにする)かの少なくとも一方を行い得るよう構成する。
【0044】
より具体的には、図4のフローチャートに示すように、ステップ1(S1)で、空調装置本体1の前側ファン5(フロントファン)がOnであるかどうかを判断し、No(即ち、フロントファンがOff)である場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)を閉にし、空気取込口21(車室内空気b)を閉にして、後席用ファン4をOffに保つ。これにより、リア吹出口2からの吹出量は0になる。
【0045】
また、ステップ1(S1)がYes(即ち、フロントファンが0n)である場合には、ステップ2(S2)で、後席用ファン4がOnであるかどうかを判断し、No(即ち、後席用ファン4がOff)である場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)を閉にし、空気取込口21(車室内空気b)を閉にして、後席用ファン4をOffに保つ。これにより、リア吹出口2からの吹出量は0になる。
【0046】
そして、ステップ2(S2)がYes(即ち、後席用ファン4が0n)である場合には、ステップ3(S3)で、窓曇防止モードであるかどうか(フロントDEF?)を判断し、No(即ち、フロントDEFがOff)である場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)を開方向に調整とし、空気取込口21(車室内空気b)を閉にして、後席用ファン4を必要に応じて調整し得るようにする。これにより、リア吹出口2からは空調用空気aが吹出されることになる。
【0047】
そして、ステップ3(S3)がYes(即ち、フロントDEFが0n)である場合には、ステップ4(S4)で、後席用ファン4の状態を確認し、後席用ファン4がLOである場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)をやや閉の状態で調整し得るようにし、空気取込口21(車室内空気b)をやや開の状態にして、後席用ファン4を必要に応じて調整し得るようにする。これにより、リア吹出口2からは空調用空気aと車室内空気bとが混合した空気が吹出されることになる。なお、後席用ファン4の調整範囲は、空調装置本体1の余力に応じたものとする。
【0048】
これに対し、後席用ファン4がHiである場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)を閉状態(全閉またはほぼ全閉状態)で調整し得るようにし、リア吹出口2(車室内空気b)を開状態(全開またはほぼ全開状態)にして、後席用ファン4を必要に応じて調整し得るようにする。
【0049】
これにより、リア吹出口2からは主に車室内空気bが吹出されるようにする。そして、空調装置本体1を窓曇防止のために優先的に使用させるようにする。但し、リアダクト3(空調用空気a)を完全な全閉状態ではなく、ほぼ全閉状態とすることにより、リアダクト3からの空調用空気aの若干の漏れを混入させて、若干の空調用空気aによる空調感が得られるようにしても良い。なお、後席用ファン4の調整範囲は、空調装置本体1の余力に応じたものとする。
【0050】
このように、窓曇防止モードの場合には、ステップ4(S4)のような、リア吹出口2を使用したり、後席用ファン4を規制したり、または、これらを組合わせた制御が行われることになる。
【0051】
(構成5)内気循環モードの場合
空調装置本体1が、車室内空気bを循環させて空調に使用する内気循環モードで、前席Cへの空調用空気aの吹出量よりも後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気の吹出量の方が多くなるよう(空調制御装置23からの)指示(即ち制御指令)が出されたかまたは(乗員による)操作がなされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、車室内空気bを取込ませるか、または、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気吹出量を規制する(即ち、指示や操作よりも吹出量が小さくなるようにする)かの少なくとも一方を行い得るよう構成する。
【0052】
より具体的には、図5のフローチャートに示すように、ステップ5(S5)で、空調装置本体1の前側ファン(フロントファン)が規定風量以下であるかどうかを判断し、No(即ち、フロントファンが規定風量以上)である場合には、流量調整用ドア部22と、後席用ファン4とを、通常制御にする。
【0053】
次に、ステップ5(S5)がYes(即ち、フロントファンが規定風量以下)である場合には、ステップ6(S6)で、後席用ファン4が規定風量以上であるかどうかを判断し、No(即ち、後席用ファン4が規定風量以下)である場合には、流量調整用ドア部22と、後席用ファン4とを、通常制御にする。
【0054】
ステップ6(S6)がYes(即ち、後席用ファン4が規定風量以上)である場合には、ステップ7(S7)で、内気循環モード(この場合には、インテーク状態?)であるかどうかを判断し、内気循環モード以外(REC以外。即ち、外気導入モード)である場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)をやや閉状態にし、空気取込口21(車室内空気b)をやや開状態にする。この際、リア吹出口2からの空気の吹出量(リア風量)は、後席用ファン4による風量と、リアダクト3(フロント側)からの空調用空気aの漏れ流量との和となり、反対に、空気取込口21からの車室内空気bの取込量は、リア吹出口2からの空気の吹出量とリアダクト3からの空調用空気aの漏れ流量との差となる。即ち、空気取込口21を若干開けて車室内空気bを取込み、空調装置本体1の供給能力の不足分を補わせることにより、前席と後席とに対し空調用空気aを供給できるようにする。
【0055】
反対に、内気循環モード(REC)である場合には、流量調整用ドア部22により、リアダクト3(空調用空気a)を全閉かまたはほぼ全閉状態にし、空気取込口21(車室内空気b)を全開かほぼ全開状態にする。この際、リア吹出口2からの空気吹出量(リア風量)は、ほぼ後席用ファン4による風量そのものとなり、反対に、空気取込口21からの車室内空気bの取込量は、ほぼリア吹出口2からの空気吹出量となる。即ち、空調装置本体1を前席Cに対して優先的に使用させるようにする。但し、リアダクト3(空調用空気a)を完全な全閉状態ではなく、ほぼ全閉状態とすることにより、リアダクト3からの空調用空気aの若干の漏れを混入させて、若干の空調用空気aによる空調感が得られるようにしても良い。または、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気吹出量を規制するようにしても良い。
【0056】
このように、内気循環モードの場合には、ステップ7(S7)のような、リア吹出口2を使用したり、後席用ファン4を規制したりする制御が行われることになる。
(構成6)表示について
図6は、後席Dに設けられた空調装置の操作ユニット25を示すものであり、この操作ユニット25は、温度上昇用スイッチ25a(TEMP UP)と、温度下降用スイッチ25b(TEMP DOWN)と、風量増加用スイッチ25c(FAN UP)と、風量低減用スイッチ25d(FAN DOWN)とを備えている。
【0057】
そして、この操作ユニット25には、表示装置26が設けられている。
【0058】
この表示装置26は、後部座席の温度(温度表示部26a)、後部座席の乗員(を示す図形)に対する空気の吹出位置(矢印26b,26cの表示や非表示)、または温風か冷風の別(例えば、矢印26b,26cの色を変化させたり、矢印26b,26cを白塗りや黒塗りにしたりする)、風量(バー表示部26d)などの各表示要素を、文字や記号や図などで表示できるようになっている。
【0059】
そして、空気取込口21を開いて車室内空気bを取込むようにする場合や、これに伴って、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気の吹出量を規制するような場合には、空調感が不足したり、リア吹出口2からの空気の吹出量が不足したりすることになるので、その旨を表示装置26によって警告表示できるように構成する。
【0060】
表示装置26による警告表示は、上記した表示要素とは別に、直接文字や記号や図などによって表すようにすることができる。また、上記した表示要素の一部や全部を点滅させたり色(または白塗り、黒塗りの状態)を変化させたりするようにすることができる。または、これらを組合せるようにすることができる。
【0061】
また、前席Cの図示しない操作ユニット(の表示装置)に対して、上記と同様の表示を行わせるようにしても良い。
【0062】
<作用>この実施例の主な作用は、以下の通りである。
【0063】
空調装置本体1は、主に前席Cの空調を行うものとして使用される。
【0064】
そして、後席用ファン4を駆動することにより、リアダクト3を介して、空調装置本体1からの空調用空気aを後席D側へ引込んでリア吹出口2から吹出させることができる。これにより、前席C用の空調装置本体1を利用して後席Dの空調も行うことが可能となる。
【0065】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(作用効果1)
リアダクト3の中間部に空気取込口21を設けて、流量調整用ドア部22で、空気取込口21またはリアダクト3の開閉または開度調整を行うことにより、リア吹出口2から吹出す空気における、空調装置本体1からの空調用空気aの引込量および空気取込口21からの車室内空気bの取込量を調整することが可能となる。これにより、前席Cに対する空調性能の低下を防止することが可能となる。
【0067】
(作用効果2)
空調装置本体1による後席Dへの空調用空気aの供給量が不足した時に、流量調整用ドア部22により空気取込口21を開いて、空気取込口21から車室内空気bを取込み、リア吹出口2から吹出させることにより、前席Cに対する空調性能をほとんど低下させることなく後席Dの空調を行うことができるようになる。以って、前席Cと後席Dの両方に対して快適性を確保し、向上することができる。
【0068】
(作用効果3)
空調装置本体1が、通常空調モードで、前席Cへの空調用空気aの吹出量と、後席Dへの空調用空気aの吹出量とが共に多くなるよう指示が出されたかまたは操作がなされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開き、車室内空気bを取込ませることにより、前席Cに対する空調と後席Dに対する空調とをほぼ同時に満たすことができるようになる。
【0069】
(作用効果4)
空調装置本体1が、窓曇防止モードとされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、車室内空気bを取込ませるか、または、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気の吹出量を規制するかの少なくとも一方を行う。これにより、窓ガラスに対する窓曇防止を優先的に行いつつ、後席Dに対する空調も一部行わせることができる。
【0070】
(作用効果5)
前記空調装置本体1が、内気循環モードで、前席Cへの空調用空気aの吹出量よりも後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気の吹出量の方が多くなるよう指示が出されたかまたは操作がなされた場合に、流量調整用ドア部22によって空気取込口21を開くことにより、車室内空気bを取込ませるか、または、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気の吹出量を規制するかの少なくとも一方を行う。これにより、外気導入モードと比べて空調装置本体1への空気の取込量が制限される内気循環モードの場合に、前席C側が負圧状態となって、前席C側の吹出口から空気を吸込むような事態が発生するのを防止することができる。
【0071】
(作用効果6)
空気取込口21を開いて車室内空気bを取込むようにする場合や、これに伴って、後席用ファン4によるリア吹出口2からの空気吹出量を規制するような場合に、その旨を表示装置26によって警告表示することにより、後席乗員に、空調感の不足や、リア吹出口2からの空気吹出量の不足の発生を知らせることができる。
【0072】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0073】
1 空調装置本体
2 リア吹出口
3 リアダクト
4 後席用ファン
21 空気取込口
22 流量調整用ドア部
A 車両
B 車室
C 前席
D 後席
a 空調用空気
b 車室内空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に前席を空調可能な空調装置本体が設置され、該空調装置本体と後席に対して設けられたリア吹出口との間にリアダクトが接続され、該リアダクト後端の前記リア吹出口近傍に空調装置本体からの空調用空気を引込可能な後席用ファンが設けられて、該後席用ファンによって前記空調装置本体からの空調用空気をリアダクトを介し後席側へ引込んでリア吹出口から吹出し得るようにした車両用空調装置において、
前記空調装置本体と前記リア吹出口との間のリアダクトに車室内空気を取込可能な空気取込口が設けられ、
該空気取込口に、前記空気取込口または前記リアダクトの開閉または開度調整の少なくともいずれかを行うことにより、リア吹出口から吹出される空気における、空調装置本体からの空調用空気の引込量および空気取込口からの車室内空気の取込量を調整可能な流量調整用ドア部が設けられたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調装置本体による後席への空調用空気の供給量が不足した時に、流量調整用ドア部によって空気取込口を開くことにより、空気取込口から車室内空気を取込んで、リア吹出口から吹出し得るよう構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調装置本体が、通常空調モードで、
前席への空調用空気の吹出量と、後席への空調用空気の吹出量とが共に多くなるよう指示が出されたかまたは操作がなされた場合に、流量調整用ドア部によって空気取込口を開くことにより、車室内空気を取込ませるよう構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調装置本体が、窓曇防止モードとされた場合に、
流量調整用ドア部によって空気取込口を開くことにより、車室内空気を取込ませるか、または、後席用ファンによるリア吹出口からの空気吹出量を規制するかの少なくとも一方を行い得るよう構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調装置本体が、内気循環モードで、
前席への空調用空気の吹出量よりも後席用ファンによるリア吹出口からの空気の吹出量の方が多くなるよう指示が出されたかまたは操作がなされた場合に、
流量調整用ドア部によって空気取込口を開くことにより、車室内空気を取込ませるか、または、後席用ファンによるリア吹出口からの空気吹出量を規制するかの少なくとも一方を行い得るよう構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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