説明

車両用空調装置

【課題】車室内の温度快適性を損なうことなく、窓ガラスの外面の曇りを防止することが可能な車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】、吹出口切替ダンパがデフロスタ開口部を開いて車両の窓ガラスの内面に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出す吹出モードが設定されていたとしても、ステップ164で目標吹出温度TAOが外気温度TAMよりも低いと判断した場合には、ステップ166でデフロスタ開口部を閉じるように吹出口切替ダンパを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出し防曇を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば初夏や初秋の雨上がり時などのように、外気の温度および湿度がいずれも比較的高いときには、車室内の快適性を確保するために、車両用空調装置の車室内へ吹き出す空気の温度が比較的低く設定される。このときに、車両の前面窓ガラスの内面に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出すと、前面窓ガラスの外面に曇りが発生し、乗員の視界を妨げる場合がある。これに対して、外気温度が高いときには、デフロスタ吹出口からの吹出温度を上昇させて、前面窓ガラス外面の曇りを防止する技術が知られている(下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−1515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の車両用空調装置では、外気温が比較的高いときに、デフロスタ吹出口から車室内へ比較的高温の空気が吹き出されるので、車室内の温度快適性を確保することが難しく、車室内の乗員が不快を感じる場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、車室内の温度快適性を損なうことなく、窓ガラスの外面の曇りを防止することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
車室内へ吹き出す空気の通路が内部に形成された空調ダクト(10)と、
空調ダクト(10)に設けられ、車両の窓ガラス(5)の内面に向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出口に接続されるデフロスタ開口部(18)と、
空調ダクト(10)に設けられ、車室内へ空気を吹き出すデフロスタ吹出口以外の吹出口に接続される、デフロスタ開口部(18)以外の他の開口部(19、20)と、
デフロスタ開口部(18)を開閉するドア手段(21)と、
デフロスタ開口部(18)および他の開口部(19、20)から車室内への空気の吹出しモードを設定する吹出しモード設定手段(150)と、
デフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度(TAO)を第1温度として取得する第1温度取得手段(162)と、
窓ガラス(5)の外面における外気の露点温度もしくは外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度(TAM)を第2温度として取得する第2温度取得手段(163)と、
吹出しモード設定手段(150)により設定された空気の吹出しモード、第1温度取得手段(162)が取得した第1温度(TAO)および第2温度取得手段(163)が取得した第2温度(TAM)に基づいて、ドア手段(21)の開閉動作を制御する制御手段(7)と、を備え、
制御手段(7)は、吹出しモード設定手段(150)によりドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときであっても、第1温度(TAO)が第2温度(TAM)よりも低い場合には、デフロスタ開口部(18)を閉じるようにドア手段(21)を制御することを特徴としている。
【0007】
これによると、ドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を開いて車両の窓ガラスの内面に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出す吹出モードが設定されていたとしても、デフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度(TAO)である第1温度が、窓ガラス(5)の外面における外気の露点温度もしくは外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度(TAM)である第2温度よりも低い場合には、制御手段(7)はドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じる。
【0008】
デフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度(TAO)である第1温度が窓ガラス(5)の外面における外気の露点温度もしくは外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度(TAM)である第2温度よりも低い場合、すなわち、窓ガラス(5)の外面に曇りが発生し易い場合には、窓ガラス(5)の内面に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出す吹出モードが設定されていたとしても、ドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を閉じて窓ガラス(5)の内面に向かう風の吹出しが禁止され、窓ガラス(5)の外面の曇りの発生が抑止される。
【0009】
したがって、窓ガラスの外面の曇りの発生の抑止のためにデフロスタ吹出口から車室内へ高温の空気を吹き出す必要がないので、例えば外気温が比較的高いときであっても、車室内の温度快適性が損なわれることがない。このようにして、車室内の温度快適性を損なうことなく、窓ガラスの外面の曇りを防止することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、第2温度取得手段(163)は、窓ガラス(5)の外面における外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度である外気温度(TAM)を、第2温度として取得することを特徴としている。すなわち、制御手段(7)が窓ガラス(5)外面の防曇を行うために第1温度と比較する第2温度を、外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度である(外気の相対湿度が100%のときの露点温度に相当する)外気温度としている。したがって、外気の湿度を検出しなくても、第2温度を容易に取得することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、
空調ダクト(10)内へ導入する内気及び外気の比率を調節する内外気比率調節手段(13)を備え、
制御手段(7)は、
吹出しモード設定手段(150)によりドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、第1温度(TAO)および第2温度(TAM)に基づいてデフロスタ開口部(18)を閉じるようにドア手段(21)を制御した場合には、
空調ダクト(10)内へ導入する外気比率を増大させるように内外気比率調節手段(13)を制御し、
他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から車室内へ空気を吹き出すことを特徴としている。
【0012】
これによると、制御手段(7)は、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じて窓ガラス(5)の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、内外気比率調節手段(13)を制御して空調ダクト(10)内へ導入する外気比率を増大させる。したがって、内気よりも比較的絶対湿度が低い場合が多い外気の空調ダクト(10)内への導入比率を増大させて、空調ダクト(10)内から開状態である他の開口部を介して車室内へ空気を吹き出すことができる。このようにして、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じたとしても、窓ガラス(5)内面の曇りを抑制することが可能である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、
車室内へ吹き出す空気の風量を調節する風量調節手段(32)を備え、
制御手段(7)は、
吹出しモード設定手段(150)によりドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、第1温度(TAO)および第2温度(TAM)に基づいてデフロスタ開口部(18)を閉じるようにドア手段(21)を制御した場合には、
車室内へ吹き出す空気の風量を増大させるように風量調節手段(32)を制御し、
他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から車室内へ空気を吹き出すことを特徴としている。
【0014】
これによると、制御手段(7)は、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じて窓ガラス(5)の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、風量調節手段(32)を制御して、開状態である他の開口部から車室内へ吹き出す空気の風量を増大させる。したがって、車室内の空気の流動が活発となり、一般的に外部に対して完全には密閉状態となり難い車室内の換気が促進される。このようにして、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じたとしても、窓ガラス(5)内面の曇りを抑制することが可能である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、
空調ダクト(10)内を流通する空気を冷却する冷却用熱交換器(45)と、
冷却用熱交換器(45)による空気の冷却能力を調節する冷却能力調節手段(41)と、
冷却用熱交換器(45)で冷却された空気の温度調節をする温度調節手段(52)と、を備え、
制御手段(7)は、
吹出しモード設定手段(150)によりドア手段(21)がデフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、第1温度(TAO)および第2温度(TAM)に基づいてデフロスタ開口部(18)を閉じるようにドア手段(21)を制御した場合には、
冷却用熱交換器(45)による空気の冷却能力を増大するように冷却能力調節手段(41)を制御するとともに、他の開口部(19、20)から車室内への吹出し温度が冷却用熱交換器(45)の冷却能力の増大前後で変化しないように温度調節手段(52)を制御し、
他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から車室内へ空気を吹き出すことを特徴としている。
【0016】
これによると、制御手段(7)は、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じて窓ガラス(5)の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、冷却能力調節手段(41)を制御して冷却用熱交換器(45)による空気の冷却能力を増大させる。また、制御手段(7)は、温度調節手段(52)を制御して他の開口部(19、20)から車室内への吹出し温度を変化させない。したがって、冷却用熱交換器(45)の冷却能力の増大により空気を除湿し、除湿のために冷却された空気の温度を温度調節手段(52)で調節して、除湿された空気を車室内へ吹出すことができる。このようにして、ドア手段(21)でデフロスタ開口部(18)を閉じたとしても、窓ガラス(5)内面の曇りを抑制することが可能である。
【0017】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の全体概略構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態における車両用空調装置の制御系を示したブロック図である。
【図3】第1の実施形態におけるエアコンECU7による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【図4】図3中のステップ160における概略制御処理を示すフローチャートである。
【図5】目標吹出温度TAOに対応する吸込口モード特性図である。
【図6】目標吹出温度TAOに対応する吹出口モード特性図である。
【図7】内気相対湿度RHに対応するデフロスタ開度増加量特性図である。
【図8】図4中のステップ164を実行する際の判定基準の切り換えを示す特性図である。
【図9】目標吹出温度TAOに対応するブロワ風量特性図である。
【図10】他の実施形態における車両用空調装置の制御系を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の全体概略構成を示す模式図である。また、図2は車両用空調装置の制御系を示したブロック図である。
【0021】
本実施形態の空調装置は、車室内を空調するエアコンユニット6の各空調手段(アクチュエータ等)を、空調制御装置(以下エアコンECUと言う)7によって制御することにより、車室内の温度を常に設定値に自動制御するように構成されたオートエアコンである。
【0022】
エアコンユニット(空調ユニット)6は、図1に示すように車室内に空調空気を導く空気通路を形成する空調ダクト10、この空調ダクト10内において空気流を発生させる遠心式の送風機30、空調ダクト10内を流れる空気を冷却して車室内を冷房するための冷凍サイクル40、および空調ダクト10内を流れる空気を加熱して車室内を暖房するための冷却水(温水)回路50等から構成されている。
【0023】
空調ダクト10は、車室内の前方部に配設されている。その空調ダクト10の最も上流側(風上側)は内外気(吸込口)切替箱を構成する部分で、車室内空気(以下内気と言う場合がある)を取り入れる内気吸込口11、および車室外空気(以下外気と言う場合がある)を取り入れる外気吸込口12を有している。さらに、内気吸込口11および外気吸込口12の内側には、内外気(吸込口)切替ダンパ13(内外気切替ドア)が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ダンパ13は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吸込口モードを内気循環モード、外気導入モード等に切り替える。内外気切替ダンパ13は、空調ダクト10内へ導入する内気および外気の比率を調節する内外気比率調節手段に相当する。
【0024】
空調ダクト10の最も下流側(風下側)は吹出口モード切替部を構成する部分で、デフロスタ(DEF)開口部18、フェイス(FACE)開口部19およびフット(FOOT)開口部20が形成されている。そして、デフロスタ開口部18にはデフロスタダクト15が接続されて、このデフロスタダクト15の最下流端のデフロスタ(DEF)吹出口から車両のフロント窓ガラス5の内面に向かって主に温風を吹き出す。
【0025】
また、フェイス開口部19にはフェイスダクト16が接続されて、このフェイスダクト16の最下流端のフェイス(FACE)吹出口から、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出す。さらに、フット開口部20にはフットダクト17が接続されて、このフットダクト17の最下流端のフット(FOOT)吹出口から乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出す。
【0026】
デフロスタ開口部18の内側には、デフロスタ開口部18を開閉する吹出口切替ダンパ(デフロスタドア)21が回動自在に取り付けられている。、フェイス開口部19の内側には、フェイス開口部19を開閉する吹出口切替ダンパ(フェイスドア)22が回動自在に取り付けられている。フット開口部20の内側には、フット開口部20を開閉する吹出口切替ダンパ(フットドア)23が回動自在に取り付けられている。吹出口切替ダンパ(デフロスタドア)21は、デフロスタ開口部18を開閉するドア手段に相当する。
【0027】
3個の吹出口切替ダンパ(吹出口切替ドア)21〜23は、サーボモータ等のアクチュエータによりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モードまたはデフロスタ(DEF)モードのいずれかに切り替える。
【0028】
フェイスモードとは、デフロスタ開口部18を閉じ、フェイス開口部19を開き、フット開口部20を閉じるモードである。バイレベルモードとは、デフロスタ開口部18を閉じ、フェイス開口部19を開き、フット開口部20を開くモードである。フットモードとは、デフロスタ開口部18を僅かに開き(フットデフモードよりも小さく開き)、フェイス開口部19を閉じ、フット開口部20を開くモードである。
【0029】
フットデフモードとは、デフロスタ開口部18を開き、フェイス開口部19を閉じ、フット開口部20を開くモードである。デフロスタモードとは、デフロスタ開口部18を開き、フェイス開口部19を閉じ、フット開口部20を閉じるモードである。なお、図示は省略しているが、本実施形態の空調ダクト10は、サイドフェイス吹出口に接続する常開のサイドフェイス開口部を備えており、サイドフェイス吹出口から乗員の頭胸部に向かって冷風を吹き出したり、側面窓ガラスの内面に向かって温風を吹出すことができるようになっている。
【0030】
フェイス開口部19、フット開口部20およびサイドフェイス開口部が、本実施形態におけるデフロスタ開口部以外の他の開口部に相当する。
【0031】
送風機30は、空調ダクト10と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン31、およびこの遠心式ファン31を回転駆動するブロワモータ32を有している。そして、ブロワモータ32は、ブロワ駆動回路を介して印加されるブロワ電圧に基づいて、送風量(遠心式ファン31の回転速度)が制御される。ブロワモータ32は、車室内へ吹き出す空気の風量を調節する風量調節手段に相当する。
【0032】
冷凍サイクル40は、冷媒を圧縮するコンプレッサ41、圧縮された冷媒を凝縮液化させる凝縮器42、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流す受液器(気液分離器)43、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁(減圧手段)44、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる蒸発器45、およびこれらを接続する冷媒配管等から構成されている。このうち、蒸発器45は空調ダクト10内の送風空気を冷却除湿する冷却用熱交換器である。また、コンプレッサ41は、蒸発器45による送風空気の冷却能力を調節する冷却能力調節手段に相当する。
【0033】
冷却水回路50は、ウォータポンプ50aによって、エンジン1のウォータジャケットで暖められた冷却水を循環させる回路で、ラジエータ、サーモスタット(いずれも図示を省略)およびヒータコア51を有している。このヒータコア51は、内部にエンジン1を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する加熱用熱交換器である。
【0034】
そして、ヒータコア51は空調ダクト10内において蒸発器45よりも下流側に配設され、このヒータコア51の空気上流側にはエアミックスダンパ(エアミックスドア)52が回動自在に取り付けられている。このエアミックスダンパ52(吹出温度調整手段)は、サーボモータ等のアクチュエータに駆動されて回動位置が調整され、その回動位置によって、ヒータコア51を通過する空気(温風)量とヒータコア51を迂回する空気(冷風)量との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する。エアミックスダンパ52は、蒸発器45で冷却された空気を温度調節する温度調節手段に相当する。
【0035】
本例では、吹出温度制御方式をエアミックス方式としているが、リヒート方式を採用することも可能である。リヒート方式の場合には、蒸発器よりも下流側で空調ダクト内の空気通路の全域を横切るように配置されたヒータコアに対して、流通する冷却水の流量を調節する流量調節弁装置が、温度調節手段に相当することになる。
【0036】
次に、本実施形態の制御系の構成を図2に基づいて説明する。エアコンECU7には、車室内前面に設けられたコントロールパネルP上の温度設定スイッチ等の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。
【0037】
ここで、各センサとは、図2に示したように、車室内の空気温度(以下内気温と言う場合がある)TRを検出する内気温センサ71、車室外の空気温度(以下外気温と言う場合がある)TAMを検出する外気温センサ72、車室内に照射される日射量TSを検出する日射センサ73、蒸発器45の空気を冷却する熱交換部の外表面温度TEを検出するエバ表面温度センサ(エバ温センサ)74、ヒータコア51に流入するエンジン冷却水の温度(冷却水温)TWを検出する水温センサ75、および車室内の空気の相対湿度RHを検出する湿度センサ(湿度検出手段)76等がある。
【0038】
このうち、エバ表面温度センサ74は、具体的には、蒸発器45のうち、内部を冷媒が流通する冷媒管の外表面に熱的に接続されたフィンに配置され、フィンの温度を検出するサーミスタからなる。また、湿度センサ76は、例えば、窓ガラス5の近傍や車両の計器盤の下方付近等に、内気温センサ71とともに設置され、車室内空気の相対湿度に比例した電圧を発生する。
【0039】
なお、内気温センサ71および湿度センサ76は、車室内の空気が通風される通風経路内に設けられ、通風経路を通過する空気の温度および湿度を検出するようになっている。この通風経路にはアスピレータ装置が設けられ、空調ダクト10内の通風量に応じて発生する負圧により、通風経路に空調ダクト10内の通風量に応じた量の車室内の空気が通風されるようになっている。
【0040】
エアコンECU7の内部には、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピータが設けられ、各センサ71〜76からのセンサ信号は、エアコンECU7内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0041】
本実施形態における制御手段であるエアコンECU7は、コントロールパネルPの各スイッチからの入力信号および各センサ71〜76からの入力信号等に基づいて、後述する手順に従って、送風機30、吹出口切替ダンパ21〜23、内外気切替ダンパ(吸込口ダンパ)13、エアミックスダンパ52、コンプレッサ41等を作動制御するようになっている。
【0042】
次に、上記構成に基づき、本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。
【0043】
ここで、図3はエアコンECU7による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【0044】
まず、イグニッションスイッチがONされてエアコンECU7に直流電源が供給されると、図3のルーチンが起動され、エアコンECU7は、ステップ110にて各イニシャライズおよび初期設定を行う。次に、ステップ120にて温度設定スイッチ等の各スイッチからスイッチ信号を読み込む。次に、ステップ130にて内気温センサ71、外気温センサ72、日射センサ73、エバ表面温度センサ74、冷却水温度センサ75、および湿度センサ76等からのセンサ信号を読み込む。
【0045】
次に、ステップ140にて、予めROMに記憶された下記の数式1に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。
(数1)
TAO=KSET×TSET−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
なお、TSETは温度設定スイッチにて設定した設定温度、TRは内気温センサ71にて検出した内気温度、TAMは外気温センサ72にて検出した外気温度、TSは日射センサ73にて検出した日射量である。また、KSET、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0046】
ステップ140において目標吹出温度TAOを算出したら、ステップ150にて、例えば、予めROMに記憶された図5および図6に示す特性図(マップ)から、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードおよび吹出口モード(吹出モード)を決定する。なお、コントロールパネルP上において吸込口モードおよび吹出口モードが手動操作により設定されている場合には、その設定モードに決定する。
【0047】
ステップ150では、上記したように吹出モードを決定したら、例えば、予めROMに記憶された図7に示す特性図(マップ)から、湿度センサ76が検出する内気の相対湿度RHに対応して、デフロスタ開口部18の開度を増加させる。図7に例示するように、内気の相対湿度RHが、所定値以上である場合には、相対湿度RHの増大に応じてデフロスタ開度の増加量が増大するように、デフロスタ開口部18を開口する。
【0048】
これにより、車室内の相対湿度RHが比較的高く、車両の窓ガラス5の内面に結露し易い場合には、デフロスタ開口部18の開度を増加させて、窓ガラス5の内面が曇ることを防止する。例えば、フェイスモード(フェイス吹出モード)およびバイレベルモード(バイレベル吹出モード)の場合には、閉じていたデフロスタ開口部18を開口する。また、フットモード(フット吹出モード)の場合には、僅かに開いていたデフロスタ開口部18の開度を上昇させる。
【0049】
ここでは、湿度センサ76が検出する内気の相対湿度RHに対応したデフロスタ開口部18の開度増加について説明したが、内気の露点温度と窓ガラス5の内面の温度とに基づき、窓ガラス5内面における結露の発生しやすさの度合いに応じて、デフロスタ開口部18の開度増加を行うことが好ましい。
【0050】
窓ガラス5内面の曇り現象(曇り発生)は、ガラス表面温度(ガラス内面温度)Twとそれに接する空気の露点温度Tdとによって生じる。即ち、Tw<Tdの関係となったときに窓ガラス5内面に結露して曇りが発生する。
【0051】
ここで、例えば、ガラス表面温度Twは、TAM、TR、TS、αam、αr、v、δ、λから算出することができる。また、露点温度Tdは、RH、TRから算出することができる。(但し、αamは車外の熱伝導率、αrは室内の熱伝導率、vは車速、δはフロントガラスの厚さ、λはガラスの熱伝導率である。)
また、窓ガラス5の内表面温度は、窓ガラス5の内表面に接するように設けられたサーミスタ(内表面温度検出手段)により精度よく検出するものであってもよい。
【0052】
ステップ150は、デフロスタ開口部18およびデフロスタ開口部18以外の他の開口部から車室内への空気の吹出しモードを設定する吹出しモード設定手段に相当する。
【0053】
以上説明したように、ステップ150を実行したら、次に、ステップ160にて、窓ガラス5の外表面の曇り防止のための補正制御を行う。図4は、ステップ160の概略制御動作を説明するフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、エアコンECU7は、まず、デフロスタ開口部18が開く吹出モードが設定されているか否か判断する(ステップ161)。すなわち、ステップ150で、フット吹出モードが設定されているか、あるいは、フェイス吹出モードおよびバイレベル吹出モードで内面防曇のためにデフロスタ開口部18が開口されたモードが設定されているかどうかを判断する。
【0055】
ステップ161において、デフロスタ開口部18が開く吹出モードではないと判断した場合には、ステップ170へ進む。
【0056】
なお、ステップ161では、オートモード(吹出口自動制御モード)が設定されて、目標吹出温度TAOに対応して決定された吹出モード、および、その吹出モードから窓ガラス5内面の防曇のためにデフロスタ開口部18が開口するように設定された吹出モードにおいて、デフロスタ開口部18が開く吹出モードが設定されているか否か判断する。すなわち、コントロールパネルP上において吹出口モードが手動操作により設定されている場合には、実質的に外側防曇のための補正制御を行わずに、ステップ170へ進む。
【0057】
一方、ステップ161において、デフロスタ開口部18が開く吹出モードであると判断した場合には、ステップ140で算出したTAOを取得する(ステップ162)。これに加えて、外気温センサ72が検出した外気温度TAMを取得する(ステップ163)。
【0058】
ここで、ステップ162で取得した目標吹出温度TAOは、デフロスタ開口部18が開いているときには、デフロスタ吹出口から車室内へ吹き出される空気の温度に相当するものである。したがって、ステップ162は、本実施形態においてデフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度を第1温度として取得する第1温度取得手段に相当する。
【0059】
また、ステップ163で取得した外気温度TAMは、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも若干高い温度(温度が高い側で近似した温度)である(外気の相対湿度が100%であれば、露点温度と等しい)。ステップ163では、外気温度TAMを、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度として取得している。したがって、ステップ163は、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度を第2温度として取得する第2温度取得手段に相当する。
【0060】
ステップ162、163を実行したら、次に、ステップ162で取得した目標吹出温度TAOが外気温TAM以上であるか否か判断する(ステップ164)。ステップ164において、目標吹出温度TAOが外気温TAM以上であると判断した場合には、デフロスタ吹出口から窓ガラス5に向かって吹き出される風により窓ガラス5の外面が曇ることはないので、ステップ150で設定した吹出モードを選択して(ステップ165)、ステップ170へ進む。
【0061】
ステップ164において、目標吹出温度TAOが外気温TAMよりも低いと判断した場合には、デフロスタ吹出口から窓ガラス5に向かって吹き出される風により窓ガラス5の外面が曇る可能性が高いので、ステップ150で設定した吹出モードに対して、吹出口切替ダンパ21でデフロスタ開口部18を閉じるモードを設定する(ステップ166)。
【0062】
なお、ステップ164の判断ステップを実行する際には、図8に示すように、前回の制御フロー実行時のデフロスタ開口部18の開閉状態も加味して判定基準を切り換え(所謂ヒステリシスを設け)、吹出口切替ダンパ21のハンチング動作を防止することが好ましい。
【0063】
ステップ166を実行したら、次に、ステップ150で設定した吸込口モードが、内気のみを導入する内気導入モードもしくは内気および外気をともに導入する内外気導入モードであるか否か判断する(ステップ167)。
【0064】
ステップ167において、吸込口モードが内気導入モードもしくは内外気導入モードでないと判断した場合、すなわち、外気のみを導入する外気導入モードであると判断した場合には、そのままステップ170へ進む。一方、ステップ167において、吸込口モードが内気導入モードもしくは内外気導入モードでないと判断した場合には、吸込口モードを外気導入モードに設定変更し(ステップ168)、ステップ170へ進む。
【0065】
以上のようにステップ160を実行したら、次に、ステップ170にて、ブロワ風量(実質的には送風機30のブロワモータ32に印加する電圧)を決定する。エアコンECU7は、例えば、予めROMに記憶された図9に示す特性図(マップ)から、目標吹出温度TAOに対応するブロワ風量を決定する。
【0066】
ブロワ風量を決定したら、次に、ステップ180にて、予めROMに記憶された下記の数式2に基づいてエアミックスダンパ52の目標ダンパ開度SWを算出する。
(数2)
SW={(TAO−TE)/(TW−TE)}×100(%)
なお、TEはエバ表面温度センサ74にて検出したエバ表面温度で、TWは冷却水温度センサ75にて検出した冷却水温度である。
【0067】
そして、SW≦0(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の全てをヒータコア51から迂回させる位置(MAXCOOL位置)に制御される。また、SW≧100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の全てをヒータコア51へ通す位置(MAXHOT位置)に制御される。さらに、0(%)<SW<100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の一部をヒータコア51に通し、冷風の残部をヒータコア51から迂回させる中間位置に制御される。
【0068】
次に、ステップ190へ進み、コンプレッサ41を駆動制御するための目標エバ表面温度TEOを算出する。エアコンECU7は、車室内の温度調節制御、車室内の快適湿度制御、窓ガラス内面の防曇制御等の各制御を実行する際に必要となる蒸発器45の熱交換部外表面温度が得られるように目標エバ表面温度TEOを算出する。
【0069】
ここで、温度調節制御とは、目標吹出温度TAOに応じた目標エバ表面温度が得られるようにコンプレッサ41を駆動する制御である。また、快適湿度制御とは、車室内湿度に応じた目標エバ表面温度となるようにコンプレッサ41を駆動制御するもので、車室内湿度が上限設定値と下限設定値との間となるようにコンプレッサ41を駆動する制御である。そして、防曇制御とは、車室内湿度が外気温に対する曇り限界室内湿度に到達しないような目標エバ表面温度が得られるようにコンプレッサ41を駆動する制御のことである。
【0070】
エアコンECU7は、目標エバ表面温度TEOを設定した後に、ステップ200へ進み、エバ表面温度センサ74の検出温度TEが設定された目標エバ表面温度TEOとなるようにコンプレッサ41の制御状態を決定する。
【0071】
次に、ステップ210において、上記各ステップ150、160、170、180、200にて算出または決定した各制御状態が得られるように、制御信号を出力する。そして、ステップ120へリターンする。
【0072】
上述の構成および作動によれば、エアコンECU7は、図3に示すステップ150において吹出口切替ダンパ21がデフロスタ開口部18を開いて車両の窓ガラス5の内面に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出す吹出モードが設定されていたとしても、図4に示すステップ164で目標吹出温度TAOが外気温度TAMよりも低いと判断した場合には、ステップ166でデフロスタ開口部18を閉じるように吹出口切替ダンパ21を制御する。
【0073】
デフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度である目標吹出温度TAOが、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも若干高い外気温度TAMよりも低い場合には、デフロスタ吹出口から窓ガラス5に向かって風を吹き出すと窓ガラス5の外面に曇りが発生し易い。しかしながら、本実施形態によれば、窓ガラス5に向かってデフロスタ吹出口から風を吹き出す吹出モードが設定されていたとしても、デフロスタ開口部18を閉じて窓ガラス5の内面に向かう風の吹出しが禁止され、窓ガラス5の外面の曇りの発生を抑止することができる。
【0074】
これに加えて、窓ガラス5の外面の曇りの発生の抑止のためにデフロスタ吹出口からの風の吹き出しを禁止するだけで、車室内へ吹き出す空気の温度を上昇させることはないので、例えば外気温が比較的高いときであっても、車室内の温度快適性が損なわれることがない。
【0075】
また、図4に示すステップ163では、外気温度TAMを、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも高い露点温度の関連温度として取得している。外気温度TAMは、外気の相対湿度が100%のときの露点温度に相当する温度であり、通常(相対湿度が100%未満のときには)、外気の露点温度よりも若干高い温度となる。したがって、窓ガラス5の外面の防曇のためにデフロスタ開口部18を閉じるか否かを判断するために必要な、窓ガラス5の外面における外気の露点温度よりも若干高い露点温度の関連温度を、外気の湿度検出を行わずに、容易に取得することができる。
【0076】
また、図4に示すステップ166を実行して、デフロスタ開口部18を開く吹出モードが設定されているときであってもデフロスタ開口部18を閉じるように補正を行った場合には、ステップ167、168により、吸込口のモードを外気導入モードとしている。
【0077】
これによると、窓ガラス5外面の防曇のためにデフロスタ開口部18を閉じて窓ガラス5の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、内気よりも絶対湿度が低い場合が多い外気を空調ダクト20に積極的に導入することができる。したがって、デフロスタ開口部18を閉じて窓ガラス5の内面に向かう風の吹出しを禁止したとしても、デフロスタ開口部18以外の他の開口部のうち開状態である開口部を介して、車室内へ比較的湿度が低い空調風を吹き出し、窓ガラス5内面の曇りを抑制することができる。
【0078】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0079】
上記実施形態では、ステップ162で取得する第1温度を目標吹出温度TAOとしていたが、これに限定されるものではない。例えば、デフロスタ吹出口に吹出温度検出手段としてサーミスタ等を設け、デフロスタ吹出口から吹き出される空気の温度を検出して取得するものであってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ステップ163で取得する第2温度を外気温度TAMとしていたが、これに限定されるものではない。第2温度は、窓ガラス5の外面における外気の露点温度もしくは露点温度よりも高い露点温度の関連温度であればよい。
【0081】
例えば、図10に示すように、外気の相対湿度RHamを検出する外気湿度検出手段として湿度センサ77を設け、外気温センサ72が検出する外気温TAMと湿度センサ77が検出する外気相対湿度RHamとにより、外気の露点温度を算出して、第2温度として取得するものであってもよい。また、これに加えて、窓ガラス5の外表面に接するように設けられたサーミスタ(外表面温度検出手段)により精度よく窓ガラス5の外表面の温度を検出し、窓ガラス5の外表面における高精度の外気露点温度を取得するものであってもよい。
【0082】
また、ステップ163で取得する第2温度を、窓ガラス5の外表面温度としてもかまわない。また、外気の露点温度の変動に伴って変動する露点温度よりも低い温度を検出して、この検出温度に例えば所定温度を加算する等の補正を加えて露点温度以上の第2温度として算出し、取得するものであってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ステップ167における判定で、外気導入モードが設定されていない場合には、ステップ168で外気導入モードへの設定変更を行っていたが、これに限定されるものではない。例えば、ステップ167における判定に加えて、内気の露点温度に基づき、窓ガラス5内面における結露の発生しやすさの度合いも判定し、窓ガラス5内面の防曇が必要と判断したときに、外気導入モードへの設定変更を行うものであってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ステップ166でデフロスタ開口部18を閉じる設定変更をしたときには、ステップ167、168により、吸込口モードを外気導入モードに設定していたが、これに限定されるものではない。例えば、デフロスタ開口部18を閉じたときには、外気の導入比率を増大させるものであってもよい。
【0085】
また、外気導入比率を増大させるものに限定されるものでもない。例えば、車室内へ吹き出す空気の風量を増大させるように風量調節手段であるブロワモータ32を制御してもかまわない。これによると、デフロスタ開口部18を閉じて窓ガラス5の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、開状態にある他の開口部から車室内へ吹き出す空気の風量を増大させる。したがって、車室内の空気の流動が活発となり、一般的に車室外に対して完全には密閉状態となり難い車室内の換気が促進される。このようにして、デフロスタ開口部18を閉じたとしても、窓ガラス5内面の曇りを抑制することができる。車室内へ吹き出す空気の風量増大は、外気が導入される吸込口モードを設定して行うことが、車室内の換気が一層促進でき好適である。
【0086】
また、例えば、蒸発器45による空気の冷却能力を増大するように冷却能力調節手段であるコンプレッサ41を制御するとともに、蒸発器45の冷却能力の増大に伴ってデフロスタ開口部18以外の他の開口部から車室内への吹出し温度が、蒸発器45の冷却能力の増大前後で変化しないように温度調節手段であるエアミックスダンパ52を制御するものであってもよい。蒸発器45による空気の冷却能力を増大するようにコンプレッサ41を制御するとは、コンプレッサ41がオフ状態であるときにはオン状態とすることであり、コンプレッサ41がオン状態であるときには、冷媒吐出量を増大させることである。
【0087】
これによると、デフロスタ開口部18を閉じて窓ガラス5の内面に向かう風の吹出しを禁止した場合には、コンプレッサ41を制御して蒸発器45による空気の冷却能力を増大させる。また、エアミックスダンパ52を制御して車室内への吹出し温度を変化させないようにする。したがって、蒸発器45の冷却能力の増大により空気を除湿し、除湿のために冷却された空気の温度をエアミックスダンパ52で調節して、除湿された空気を開状態にある他の開口部から車室内へ吹き出す。このようにして、デフロスタ開口部18を閉じたとしても、窓ガラス5内面の曇りを抑制することができる。
【0088】
ステップ166でデフロスタ開口部18を閉じる設定変更をしたときには、デフロスタ吹出口からの空調風の吹き出しが禁止されてしまうが、上記した、外気導入比率の増大、車室内へ吹き出す空気の風量増大、および、蒸発器45による空気の冷却能力の増大のうち、1つもしくは複数を組み合わせて行うことにより、デフロスタ開口部18を閉じたとしても、窓ガラス5内面の曇りを抑制することが可能である。
【0089】
また、上記実施形態では、オートモード(吹出口自動制御モード)が設定されているときに、図4に示す外側防曇のための補正制御を行うものであり、吹出口モードが手動操作により設定されているときには、実質的に外側防曇のための補正制御を行わないものであったが、吹出口モードが手動操作により設定されているときにも、外側防曇のための補正制御を行うものであってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、窓ガラス5は、車両のフロント(前面)窓ガラスであったが、これに限定されるものではない。例えば、サイドやリヤの窓ガラスの防曇に本発明を適用しても極めて有効である。
【符号の説明】
【0091】
5 窓ガラス
7 空調制御装置(エアコンECU、制御手段)
10 空調ダクト
13 内外気切替ダンパ(内外気比率調節手段)
18 デフロスタ開口部
19 フェイス開口部(他の開口部)
20 フット開口部(他の開口部)
21 吹出口切替ダンパ(デフロスタドア、ドア手段)
32 ブロワモータ(風量調節手段)
41 コンプレッサ(冷却能力調節手段)
45 蒸発器(冷却用熱交換器)
52 エアミックスダンパ(温度調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ吹き出す空気の通路が内部に形成された空調ダクト(10)と、
前記空調ダクト(10)に設けられ、車両の窓ガラス(5)の内面に向けて前記空気を吹き出すデフロスタ吹出口に接続されるデフロスタ開口部(18)と、
前記空調ダクト(10)に設けられ、前記車室内へ前記空気を吹き出す前記デフロスタ吹出口以外の吹出口に接続される、前記デフロスタ開口部(18)以外の他の開口部(19、20)と、
前記デフロスタ開口部(18)を開閉するドア手段(21)と、
前記デフロスタ開口部(18)および前記他の開口部(19、20)から前記車室内への前記空気の吹出しモードを設定する吹出しモード設定手段(150)と、
前記デフロスタ吹出口から吹き出される前記空気の温度(TAO)を第1温度として取得する第1温度取得手段(162)と、
前記窓ガラス(5)の外面における外気の露点温度もしくは前記露点温度よりも高い前記露点温度の関連温度(TAM)を第2温度として取得する第2温度取得手段(163)と、
前記吹出しモード設定手段(150)により設定された前記吹出しモード、前記第1温度取得手段(162)が取得した前記第1温度(TAO)および前記第2温度取得手段(163)が取得した前記第2温度(TAM)に基づいて、前記ドア手段(21)の開閉動作を制御する制御手段(7)と、を備え、
前記制御手段(7)は、前記吹出しモード設定手段(150)により前記ドア手段(21)が前記デフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときであっても、前記第1温度(TAO)が前記第2温度(TAM)よりも低い場合には、前記デフロスタ開口部(18)を閉じるように前記ドア手段(21)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第2温度取得手段(163)は、前記露点温度の関連温度である外気温度(TAM)を、第2温度として取得することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ダクト(10)内へ導入する内気及び外気の比率を調節する内外気比率調節手段(13)を備え、
前記制御手段(7)は、
前記吹出しモード設定手段(150)により前記ドア手段(21)が前記デフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、前記第1温度(TAO)および前記第2温度(TAM)に基づいて前記デフロスタ開口部(18)を閉じるように前記ドア手段(21)を制御した場合には、
前記空調ダクト(10)内へ導入する外気比率を増大させるように前記内外気比率調節手段(13)を制御し、
前記他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から前記車室内へ前記空気を吹き出すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記車室内へ吹き出す前記空気の風量を調節する風量調節手段(32)を備え、
前記制御手段(7)は、
前記吹出しモード設定手段(150)により前記ドア手段(21)が前記デフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、前記第1温度(TAO)および前記第2温度(TAM)に基づいて前記デフロスタ開口部(18)を閉じるように前記ドア手段(21)を制御した場合には、
前記車室内へ吹き出す前記空気の風量を増大させるように前記風量調節手段(32)を制御し、
前記他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から前記車室内へ前記空気を吹き出すことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調ダクト(10)内を流通する前記空気を冷却する冷却用熱交換器(45)と、
前記冷却用熱交換器(45)による前記空気の冷却能力を調節する冷却能力調節手段(41)と、
前記冷却用熱交換器(45)で冷却された前記空気の温度調節をする温度調節手段(52)と、を備え、
前記制御手段(7)は、
前記吹出しモード設定手段(150)により前記ドア手段(21)が前記デフロスタ開口部(18)を開く吹出モードが設定されているときに、前記第1温度(TAO)および前記第2温度(TAM)に基づいて前記デフロスタ開口部(18)を閉じるように前記ドア手段(21)を制御した場合には、
前記冷却用熱交換器(45)による前記空気の冷却能力を増大するように前記冷却能力調節手段(41)を制御するとともに、前記他の開口部(19、20)から前記車室内への吹出し温度が前記冷却能力の増大前後で変化しないように前記温度調節手段(52)を制御し、
前記他の開口部(19、20)のうち開状態である開口部から前記車室内へ前記空気を吹き出すことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245921(P2012−245921A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120505(P2011−120505)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】