説明

車両用統合ミラー装置

【課題】車室の外方に配置される車室外ミラーを含む車室外ユニットと、車室外ミラーと協働して車両の後方視界を得るようにしつつ車室外ミラーに近接した位置で車室内に配置される車室内ミラーを含む車室内ユニットとを備え、ドアを含む車体に支持される車両用統合ミラー装置において、車室外ミラーの配置によって車両の全体幅が広がることを防止する。
【解決手段】上部の車幅が下部の車幅よりも狭く設定される車体Bの上部に、該車体Bの最大車幅内に車室外ユニット30L;30Rを配置するようにして、統合ミラー装置が取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の外方に配置される車室外ミラーを含む車室外ユニットと、前記車室外ミラーと協働して同時に車両の後方および側方視界を得るようにしつつ前記車室外ミラーに近接した位置で車室内に配置される車室内ミラーを含む車室内ユニットとを備え、ドアを含む車体に支持される車両用統合ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の外方に配置される車室外ミラーと、車室外ミラーに近接して車室内に配置される車室外ミラーとを左右両側に備える車両が、たとえば特許文献1および特許文献2で知られている。
【特許文献1】登録実用新案第3017776号公報
【特許文献2】米国特許第4815689号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1および2で開示されたものでは、車室内ミラーおよび車室外ミラーが、前部ドアの前方コーナー部に取付けられている。しかるに車体の幅は上部の方が下部よりも狭くなるように設定されるのが一般的であり、上述のように前部ドアの前方コーナー部に取付けられる構造では、後方視界を充分に得るためには車室外ミラーを含む車室外ユニットを車体の最大幅よりも側方にはみ出すように構成せざるを得ない。そのため、車両全体の幅が広くなり、立体駐車場への乗り入れ時には車室外ユニットを倒す必要があり、また狭い道路でのすれ違いにも注意を払わなければならず、さらに車室外ユニットに不所望の外力が作用した場合を考慮して可倒・脱落等の機構を設けなければならず、構造が複雑となる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、車室外ミラーの配置によって車両の全体幅が広がることを防止した車両用統合ミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車室の外方に配置される車室外ミラーを含む車室外ユニットと、前記車室外ミラーと協働して車両の後方視界を得るようにしつつ前記車室外ミラーに近接した位置で車室内に配置される車室内ミラーを含む車室内ユニットとを備え、ドアを含む車体に支持される車両用統合ミラー装置において、上部の車幅が下部の車幅よりも狭く設定される前記車体の上部に、該車体の最大車幅内に前記車室外ユニットを配置するようにして取付けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記車室外ミラーが曲率鏡であることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記車室外ミラーが複合曲率鏡であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、車室外ユニットおよび車室内ユニットを、ドアを含む車体の上部に取付けることで、車室外ユニットを車体の最大車幅内に配置しても充分な後方視界が得られるようにし、車室外ユニットによって車両の全体幅が広がることを防止することができ、特に、車室外ユニットを可倒構造とすることが必須条件とはならないようにしてミラー構造の単純化を図ることができる。また狭い道路での運転が容易となる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、車室外ミラーによって得られる後方視界をより広くすることができる。
【0010】
さらに請求項3記載の発明によれば、車室外ミラーによって得られる後方視界をさらに(特に車体外方側に)より広くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図10は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は乗用自動車を前方から見た斜視図、図2は乗用自動車の車室内から前方を見た状態を示す斜視図、図3は乗用自動車の一部切欠き平面図、図4は乗用自動車の背面図、図5は支持板を省略して右統合ミラー装置を車両の後方側から見た図、図6は図5の6−6線断面図、図7は右統合ミラー装置の分解斜視図、図8は右統合ミラー装置のうち車室外に配置される部分の分解斜視図、図9は右統合ミラー装置のうち車室内に配置される部分を示す分解斜視図、図10は運転席上の運転者の前方視界内での右統合ミラー装置の配置を簡略化して示す平面図である。
【0013】
先ず図1〜図3において、乗用自動車の車体Bは、前方側から順に間隔をあけて左および右フロントピラー15L,15Rと、左および右センターピラー16L,16Rと、左および右リヤピラー17L,17Rとをそれぞれ備えるものであり、フロントガラス18の左右両側部が前記左・右フロントピラー15L,15Rで支持される。また左・右フロントピラー15L,15Rおよび左・右センターピラー16L,16R間には、車体Bの一部を構成する左および右前部サイドドア19L,19Rがそれぞれ開閉可能に配設され、左・右センターピラー16L,16Rおよび左・右リヤピラー17L,17R間には、車体Bの一部を構成する左および右後部サイドドア20L,20Rがそれぞれ開閉可能に配設される。
【0014】
図4を併せて参照して、車体Bの後部の幅方向中央部には、左・右リヤピラー17L,17Rとの間に左および右リヤウインド21L,21Rをそれぞれ形成するピラー22が設けられており、それらの左・右リヤウインド21L,21Rには、左・右リヤピラー17L,17Rおよび前記ピラー22で両側部が支持されるようにして左および右リヤガラス23L,23Rがそれぞれ取付けられる。
【0015】
前記車体B内には車室24が形成されるのであるが、車体Bが左および右側面に備える複数のピラーすなわちフロントピラー15L,15R、センターピラー16L,16Rおよびリヤピラー17L,17Rのうち最後部のピラーである左・右リヤピラー17L,17Rは、車室24の最後部の左および右角部よりも前方に配置される。すなわち車室24の最後部の左右角部は、左・右リヤガラス23L,23Rによってそれぞれ形成されるものであり、左・右リヤガラス23L,23Rは車室24の最後部の左右角部を形成するように彎曲して形成される。
【0016】
ところで、車体Bの一部を構成する左前部サイドドア19Lの前方側上部には、車室24の外方に配置される車室外ミラー27Lと、該車室外ミラー27Lと協働して同時に車両の後方および側方視界を得るようにして前記車室外ミラー27Lに近接した位置で車室24内に配置される車室内ミラー28Lとを有する左統合ミラー装置29Lが取付けられ、車体Bの一部を構成する右前部サイドドア19Rの前方側上部には、車室24の外方に配置される車室外ミラー27Rと、該車室外ミラー27Rと協働して同時に車両の後方および側方視界を得るようにして前記車室外ミラー27Rに近接した位置で車室24内に配置される車室内ミラー28Rとを有する右統合ミラー装置29Rが取付けられる。
【0017】
このような左・右統合ミラー装置29L,29Rにより、車室24内の運転席25(図2参照)は車両の後方および側方を視認することができるのであるが、車体Bの両側面に配置される左・右リヤピラー17L,17Rの車幅方向断面幅WRは、前記左・右統合ミラー装置29L,29Rで得られる後方視界内で、左・右センターピラー16L,16Rの後方に隠れる範囲に設定される。
【0018】
図5〜図9において、右統合ミラー装置29Rは、車室24の外方に配置される車室外ユニット30Rと、車室24内に配置される車室内ユニット31Rとを有して、右前部サイドドア29Rにおけるドアサッシ32の前側上部に設けられる支持板33に取付けられる。而して右前部サイドドア19Rのドアガラス34には、前記支持板33を配置するための切欠き部34aが設けられる。
【0019】
前記車室外ユニット30Rは、支持板33に取付けられるブラケット35と、該ブラケット35に取付けられる車室外ハウジング36と、車室外ハウジング36に取付けられるバイザー37と、前記ブラケット35に固定されるアクチュエータケース38と、車両の後方を視認するようにしてバイザー37内に配置される車室外ミラー27Rとを備え、また車室内ユニット31Rは、前記支持板33に取付けられる車室内ハウジング39と、車両の後方を視認するようにして車室内ハウジング39内に配置される車室内ミラー28Rとを備えるものであり、車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rは、車室外ユニット30Rおよび車室内ユニット31Rに共通であるホルダ板40に保持される。
【0020】
前記支持板33には、車室24の外方側から支持板33との間に外側シール部材41を介在させてブラケット35が取付けられる。すなわちブラケット35には、外側シール部材41を気密に貫通して支持板33の外面に当接するたとえば1つの取付けボス42が一体に突設されるとともにたとえば一対のねじ部材83,83が植設されており、前記支持板33には前記取付けボス42および両ねじ部材83…に個別に対応した挿通孔43…が設けられる。而して1つの挿通孔43に車室24内から挿通されるねじ部材44が螺合され、残余の2つの挿通孔43…にそれぞれ挿通される前記ねじ部材83…の車室24側の端部にはナット84,84が螺合されるものであり、ねじ部材44およびナット84…を締めつけることでブラケット35が支持板33に取付けられる。
【0021】
前記ブラケット35を車両の前方側から覆う合成樹脂製の車室外ハウジング36が、前記ブラケット35に複数のねじ部材47…で取付けられる。この車室外ハウジング36の開口縁には、該車室外ハウジング36内に配置される椀状部37aを一体に有して車室外ハウジング36に複数のねじ部材48…で取付けられるバイザー37の周縁部が連接される。前記車室外ハウジング36の中間部から外側にかけて開口部49が設けられ、この開口部49には、ウインカ50の一部を構成するレンズ51が取付けられる。
【0022】
前記ブラケット35には、前記取付けボス42…以外に、前記支持板33を挟んで前記車室内ハウジング39を締結するための2つのボス部52,52が一体に設けられており、それらのボス部52…も外側シール部材41を気密に貫通して前記支持板38の外面に当接される。さらに前記バイザー37にも、外側シール部材41を気密に貫通して支持板33の外面に当接する1つのボス部53が突設される。
【0023】
車室内ミラー28Rを車両の前方側から覆う合成樹脂製の車室内ハウジング39と、車室24側に臨む支持板33の内面との間には内側シール部材54が介装されており、車室内ハウジング39は、たとえば3つのねじ部材55…でブラケット35およびバイザー37に取付けられる。すなわち、支持板33には、前記挿通孔43…以外に3つの挿通孔56…が、ブラケット35のボス部52…およびバイザー37のボス部53に対応して設けられており、それらの挿通孔56…に対応して車室内ハウジング39、内側シール部材54および支持板33に挿通されるねじ部材55…が、ブラケット35のボス部52…およびバイザー37のボス部53に螺合され、それらのねじ部材55…を締めつけることで車室内ハウジング39が、支持板33に支持される。
【0024】
また車室外ミラー27Rを車両の前方側から覆う前記車室外ハウジング36を車両運転者が目視したときの投影範囲が、図10の鎖線で示す範囲であるときに、車室内ハウジング39は、その投影範囲内に配置されるように形成される。
【0025】
車室外ミラー27Rを保持する外側保持部材57と、車室内ミラー28Rを保持する内側保持部材58とは、前記支持板33および内側シール部材54に設けられた貫通孔59,60を貫通するホルダ板40に係脱可能に係合される。すなわち車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rは共通なホルダ板40で保持される。
【0026】
しかも車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rは、曲率中心Cを同一とした同一曲率半径Rを有して彎曲成形されるものであり、車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rの上縁および下縁の少なくとも一方、この実施例では上縁は、図5で明示するように、1つの仮想直線IL上にほぼ揃えて配置される。また車室内ミラー28Rの少なくとも上下方向中間部での左右方向の幅Wは、50mm以上であって車両運転者の映り込みが生じる値よりも小さく設定される。
【0027】
さらにバイザー37の外端部には、該バイザー37内に配置される車室外ミラー27Rにバイザー37が映り込むのを回避するための切欠き部37bが設けられる。
【0028】
外側シール部材41には、前記貫通孔59,60から車室内ハウジング38側に膨出した膨出部41aが一体に形成されるものであり、該膨出部41aに設けられたスリット61を前記ホルダ板40が貫通し、ホルダ板40には、前記スリット61の周縁で膨出部41aすなわち外側シール部材41を全周にわたって係合する係合溝62が設けられる。
【0029】
前記ホルダ板40は、前記ブラケット35に固定されるアクチュエータケース38に設けられるミラー支持部63で上下、左右に揺動し得るように支承される。而してバイザー37の椀状部37aには、ブラケット35に固定されるアクチュエータケース38、ならびに該アクチュエータケース38のミラー支持部63で支承されるホルダ板40を配置するための切欠き45が設けられる。
【0030】
前記ミラー支持部63は、アクチュエータケース38に一体に突設される円筒状の支軸64と、横断面円弧状としてホルダ板40側に臨みつつ支軸64を囲むようにしてアクチュエータケース38に設けられる支持座面65とから成り、車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28R間の中間部に対応する部分に配置される。
【0031】
一方、前記ホルダ板40には、横断面円弧状である前記支持座面65と中心を同一とした円弧状の横断面形状を有するように外面および内面が形成される受け部66が一体に設けられており、その受け部66の外面は前記支持座面65に摺接される。また受け部66内に突入する前記支軸64には、前記受け部66の内面に摺接する横断面円弧状の外面を有する挟持部材67が軸方向移動可能に装着されており、支軸64の先端にねじ部材68で固定されるリテーナ69および挟持部材67間に、前記受け部66を支持座面65および挟持部材67間に挟む方向に挟持部材67を付勢するばね70が縮設される。
【0032】
このようにしてホルダ板40が、アクチュエータケース38のミラー支持部63に、上下、左右に揺動し得るようにして支承されることになる。
【0033】
前記アクチュエータケース38は、前記外側シール部材41の膨出部41a内に一部を配置するようにして複数のねじ部材71…でブラケット35に取付けられるものであり、外側保持部材57および内側保持部材58が係合される前のホルダ板40がミラー支持部63で支持された状態で、前記アクチュエータケース38をブラケット35に固定するための複数の前記ねじ部材71…のうち、ホルダ板40が取付けの邪魔になる位置に配置されるねじ部材71…を回転操作することを可能とするための複数の操作孔72…がホルダ板40に設けられる。
【0034】
また前記ミラー支持部63を通る水平な第1直線LA上に軸線を配置する第1駆動軸75と、前記ミラー支持部63を通って鉛直方向に延びる第2直線LB上に軸線を配置する第2駆動軸76とが、軸線方向の移動を可能として前記アクチュエータケース38から突出されており、アクチュエータケース38内には、第1駆動軸75を軸方向に往復駆動する動力を発揮する第1電動モータ77と、第2駆動軸76を軸方向に往復駆動する動力を発揮する第2電動モータ78とが収納、固定される。
【0035】
第1駆動軸75の一端部は、第1の直線LAを含む平面内での首振りを可能として前記ホルダ板40に連結され、第2駆動軸76の一端部は、第2の直線LBを含む平面内での首振りを可能としてホルダ板40に連結される。而して第1電動モータ77の作動によって第1駆動軸75が軸方向に作動すると、ホルダ板40すなわち車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rはミラー支持部63を支点として左右に揺動し、第2電動モータ78の作動によって第2駆動軸76が軸方向に作動すると、ホルダ板40すなわち車室外ミラー27Rおよび車室内ミラー28Rはミラー支持部63を支点として上下に揺動することになる。
【0036】
前記アクチュエータケース38には、第1および第2電動モータ77,78に接続されるべきハーネス端子を保持するカプラ79が着脱可能に取付けられるものであり、このカプラ79を配置するための円形の開口部80が支持板33に設けられ、外側シール部材41には、前記カプラ79を貫通せしめるとともに該カプラ79の外周に弾発的に密接するカプラシール部41bが一体に形成される。
【0037】
このような右統合ミラー装置29Rの支持板33への取付けにあたっては、外側シール部材41を介して外方側からブラケット35を支持板33に取付けた後、車室外ハウジング36のブラケット35への取付け、ならびにホルダ板40をミラー支持部63で支持した状態にあるアクチュエータケース38のブラケット35への取付けを順次行い、さらにバイザー37を車室外ハウジング36に取付けた後、車室外ミラー27Rを保持する外側保持部材57をホルダ板40に係合するようにして車室外ユニット30Rを先ず支持板33に組付ける。次いで車室24内で、車室内ハウジング39を取付けた後、車室内ミラー28Rを保持する内側保持部材58をホルダ板40に係合することで、右統合ミラー装置29Rの支持板33への取付けが完了する。
【0038】
ところで図4で明示するように、車体Bは、その上部の車幅が下部の車幅よりも狭くなるように構成されるのであるが、右統合ミラー装置29Rは、前記車体Bの最大車幅内に車室外ミラー27Rを含む車室外ユニット30Rを配置するようにして右前部サイドドア19Rの前方側上部に取付けられている。
【0039】
ところで、車体Bの一部を構成する左前部サイドドア19Lの前方側上部には、車室24の外方に配置される車室外ミラー27Lを有する車室外ユニット30Lと、前記車室外ミラー27Lと協働して車両の後方視界を得るようにして前記車室外ミラー27Lに近接した位置で車室24内に配置される車室内ミラー28Lを有する車室内ユニット31Lとで構成される左統合ミラー装置29Lが取付けられるものであり、この左統合ミラー装置29Lは、上述の右統合ミラー装置29Rと基本的には同一の構成を有するので、詳細な説明は省略する。
【0040】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、車体Bの一部を構成する左・右前部サイドドア19L,19Rにおけるドアサッシ32の前側上部に設けられる支持板33に左・右統合ミラー装置29L,29Rが取付けられるのであるが、それらの左・右統合ミラー装置29L,29Rにおいては、支持板33に取付けられるブラケット35に、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rを揺動可能として支持するミラー支持部63が設けられるとともに、車室外ミラー27L,27Rを車両の前方側から覆う車室外ハウジング36が取付けられている。
【0041】
したがって車両の走行に伴う風圧が車室外ミラー27L,27Rに直接当たることはなく、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rを支持する力は比較的小さくてすみ、したがって車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rの揺動角度の調整に要する力も小さくてすみ、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rの揺動角度を容易に調整することができる。またブラケット35には、車室外ハウジング36が取付けられるだけでなく、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rを揺動可能として支持するミラー支持部63を有するアクチュエータケース38が取付けられるので、組み合わせ部品を少なくすることが可能であり、部品組付け時のばらつきも小さくてすむ。
【0042】
また車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rを保持するホルダ板40が、ミラー支持部63に揺動可能に支承され、ホルダ板40を貫通させる貫通孔59が支持板33に設けられるので、ブラケット35の支持板33への組付けが容易となる。
【0043】
また支持板33およびホルダ板40間には、支持板33およびブラケット35間に介装される外側シール部材41に一体に形成される膨出部41aが、貫通孔59を塞ぐようにして設けられるので、ホルダ板40の揺動作動を妨げることなく車室24の内外間での空気や雨水の流通を防止することができる。
【0044】
さらにブラケット35が車室24の外方から支持板33に取付けられるので、ブラケット35の支持板33への取付け時に、車体構成部品で邪魔されることがなく、ブラケット35の支持板33への取付け作業が容易となる。
【0045】
しかも車室内ミラー28L,28Rの上下方向中間部での左右方向の幅が、50mm以上であって車両運転者の映り込みが生じる値よりも小さく設定されるので、どのような車両運転者でも車室内ミラー28L,28Rを見るときに必要最小限の視界を確保して後方像を立体視することができ、遠近感を損なうことがない。
【0046】
ところで社団法人人間生活工学研究センターによる平成9年10月発行の「日本人の人体計測データ」によると、車両の運転免許を取得し得る年齢である18歳以上の人間の両目の瞳孔間隔の最小値は20〜24歳の女性の50.2mmであるので、車室内ミラー28L,28Rの上下方向中間部での左右方向の幅の最小値を50mmとすることで、どのような車両運転者でも、両目の瞳孔間隔よりも大きな幅を車室内ミラー28L,28Rが有することになるものであり、必要最小限の視界を車室内ミラー28L,28Rで確保することが可能となる。また車室内ミラー28L,28Rの上下方向中間部での左右方向の幅の最大値を車両運転者の映り込みが生じる値よりも小さく設定することにより、車両運転者の映り込みによって死角が生じてしまうことを防止し、視認性を高めることができる。
【0047】
また車室外ミラー27L,27Rを車両の前方側から覆う車室外ハウジング36を車両運転者が目視したときの投影範囲内に、車室内ミラー28L,28Rを前方から覆う車室内ハウジング39が配置されるので、車室内ハウジング39によって死角となる範囲が生じることはなく、車室外ミラー27L,27Rによって生じる最小の死角範囲ですむ。
【0048】
それに加えて、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rの上縁および下縁の少なくとも一方、この実施例では、上縁が1つの仮想直線IL上にほぼ揃えて配置されるので、車室内ミラー28L,28Rおよび車室外ミラー27L,27Rでそれぞれ得られる視界の上縁および下縁の少なくとも一方がほぼ揃うことになり、瞬時の後方視界確認を違和感なく行うことができる。
【0049】
また車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rが曲率中心Cを同一とした同一曲率半径Rで彎曲成形されるので、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rを彎曲成形することでより広い視界を得ることを可能とした上に、両ミラー27L,27R;28L,28Rで得られる像を違和感なく連続して視認することが可能となる。
【0050】
ところで車体Bは、上部の車幅を下部の車幅よりも狭くして形成されるのであるが、その車体Bの一部を構成する左・右前部サイドドア19L,19Rにおけるドアサッシ32の前側上部に、車体Bの最大車幅内に車室外ユニット30L,30Rを配置するようにして、左・右統合ミラー装置29L,29Rが取付けられるので、車室外ユニット30L,30Rを車体Bの最大車幅内に配置しても充分な後方視界が得られるようにし、車室外ミラー27L,27Rによって車両の全体幅が広がることを防止することができ、特に、車室外ユニット30L,30Rを可倒構造とすることが必須条件とはならないようにしてミラー構造の単純化を図ることができる。また狭い道路での運転が容易となる。
【0051】
さらに車体Bがその両側面に備える複数のピラーのうち最後部のピラーである左・右リヤピラー17L,17Rは、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rで得られる後方視界内で車体Bを構成する部材のうちの最後方に位置することになるが、その左・右リヤピラー17L,17Rを車室24の最後部の左右角部よりも前方に配置することで、車室外ミラー27R,27Lおよび車室内ミラー28L,28Rで得られる後方視界内の死角を最小として、広範囲の後方視界を充分に得ることができる。
【0052】
しかも車体Bの後部の幅方向中央部に、前記最後部のピラーであるリヤピラー17L,17Rで一側部が支持されるリヤガラス23L,23Rの他側部を支持するピラー22が設けられるので、車室24の最後部の左右角部を占めるようにリヤガラス23L,23Rを彎曲形成させる必要があるが、そのようなリヤガラス23L,23Rを、車体Bの後部の車幅方向中央部に配置されるピラー22で保持することができる。
【0053】
さらに左・右リヤピラー17L,17Rの車幅方向断面幅WRが、車室外ミラー27L,27Rおよび車室内ミラー28L,28Rで得られる視角内で、左・右センターピラー16L,16Rの後方に隠れる範囲内に設定されるので、車体Bの両側面に配置される複数のピラー15L〜17L,15R〜17Rによって生じる死角を最小限とすることができる。
【0054】
図11は本発明の第2実施例を示すものであり、上記第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0055】
車室外ミラー27R′を有する車室外ユニット30R′と、車室内ミラー28Rを有する車室内ユニット31Rとで構成される右統合ミラー装置29R′が、右前部サイドドア19R(第1実施例参照)の前方側上部に取付けられる。
【0056】
車室外ミラー27R′は、曲率鏡であり、特に車室内ミラー28Rと曲率中心Cを同一とした同一の曲率半径Rで彎曲成形される主曲率部81と、前記曲率半径Rよりも小さな曲率半径R′で彎曲成形されて車室外ハウジング36の先端側で主曲率部81に連設される小曲率部82とから成る複合曲率鏡であり、該車室外ミラー27R′を保持する外側保持部材57′がホルダ板40に係合される。
【0057】
また図示はしないが、左統合ミラー装置も上記右統合ミラー装置30R′と同様に構成される。
【0058】
この第2実施例によれば、曲率鏡である車室外ミラー27R′によって得られる後方視界をより広くすることができ、特に複合曲率であるので、車両外側方側への視界をより拡大することが可能である。
【0059】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】乗用自動車を前方から見た斜視図である。
【図2】乗用自動車の車室内から前方を見た状態を示す斜視図である。
【図3】乗用自動車の一部切欠き平面図である。
【図4】乗用自動車の背面図である。
【図5】支持板を省略して右統合ミラー装置を車両の後方側から見た図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】右統合ミラー装置の分解斜視図である。
【図8】右統合ミラー装置のうち車室外に配置される部分の分解斜視図である。
【図9】右統合ミラー装置のうち車室内に配置される部分を示す分解斜視図である。
【図10】運転席上の運転者の前方視界内での右統合ミラー装置の配置を簡略化して示す平面図である。
【図11】第2実施例の図6に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0061】
19L,19R・・・ドア
24・・・車室
27L;27R,27R′・・・車室外ミラー
28L,28R・・・車室内ミラー
29L,29R,29R′・・・統合ミラー装置
30L,30R,30R′・・・車室外ユニット
31L,31R・・・車室内ユニット
B・・・車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室(24)の外方に配置される車室外ミラー(27L;27R,27R′)を含む車室外ユニット(30L;30R,30R′)と、前記車室外ミラー(27L;27R,27R′)と協働して車両の後方視界を得るようにしつつ前記車室外ミラー(27L;27R,27R′)に近接した位置で車室(24)内に配置される車室内ミラー(28L,28R)を含む車室内ユニット(31L,31R)とを備え、ドア(19L,19R)を含む車体(B)に支持される車両用統合ミラー装置において、上部の車幅が下部の車幅よりも狭く設定される前記車体(B)の上部に、該車体(B)の最大車幅内に前記車室外ユニット(30L;30R,30R′)を配置するようにして取付けられることを特徴とする車両用統合ミラー装置。
【請求項2】
前記車室外ミラー(27R′)が、曲率鏡であることを特徴とする請求項1記載の車両用統合ミラー装置。
【請求項3】
前記車室外ミラー(27R′)が、複合曲率鏡であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用統合ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−83983(P2007−83983A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277889(P2005−277889)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】