説明

車両用艶消しクリヤー塗料組成物

【課題】塗装の外観、付着性、耐衝撃性、耐水性などの従来の艶消しクリヤー塗料の物性はそのまま維持しながら、塗装時の凝集を防止して均一な塗布を可能にし、シリカ艶消し剤の使用量を減少させて経済性も確保できる車両用艶消しクリヤー塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、塗料用高分子樹脂及び艶消し剤を含む車両用艶消しクリヤー塗料組成物であって、艶消し剤としてシリカ及びタルクを含有し、前記シリカの含量はクリヤー塗料組成物中の1〜10重量%であり、前記タルクの含量は1〜15重量%であり、前記タルクの直径は5〜15μmであり、吸油量は10〜50であり、前記塗料用高分子樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはウレタン樹脂であり、前記組成物は、硬化剤、ピンホール防止剤、流れ防止剤、及び表面調整剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用艶消しクリヤー塗料組成物に係り、より詳しくは、自動車などの車両を艶消し塗料により塗装する場合、顔料間の凝集を防止して均一な塗布を可能にし、外観品質の向上により商品価値を向上させる車両用艶消しクリヤー塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外観に対する車両購入者の要求が多様化するにつれて、従来にはなかった様々な色感及び質感を持った車両が商品化されつつある。その一環として自動車車体に対する艶消し塗装が、最近、消費者の人気を集めている。一例として、ベンツやBMWなどの高級車体を、従来と比較して著しく光沢感の低い艶消し塗料により塗装して市販している。
艶消し塗料とは、光沢計(60°)を基準に、仕上げ塗装の塗膜表面の光沢が約20〜40の範囲のものをいう。従来の光沢クリヤー塗料は、艶消し剤を含有していないため、光をそのまま正反射して光沢を出した(図1(a)及び(b)参照)。
【0003】
また、従来の車両用艶消しクリヤー塗料は、光沢クリヤー塗料に、艶消し剤のシリカ(SiO)を約8重量%以上混入させることにより、この艶消し塗料で塗装する場合、塗膜表面は光沢計(60°)を基準に約20〜40程度の光沢を出し、無機物の艶消し剤の混入により従来の光沢塗装面と比較して少し粗い質感を持たせていた(図2(a)、(b)参照)。
従来の塗料では艶消し効果を出すためにシリカを用いるが、光沢(60°)40以下を出すためには約8重量%以上のシリカを添加する必要があった。シリカを8重量%以上添加すると、場合によって塗料内で顔料間の凝集が発生し易くん塗料の製造が困難で、製造コストも増加する問題がある。
【0004】
具体的に説明すると、シリカの吸油量が約100〜190になり、これは他の顔料と比較して非常に高いため、凝集が発生し易く、塗料製造時の目に見えない微細な顔料の凝集が塗装後に表面を不均一にして外観の品質を低下させる。また、車両の均一性及び再現性も低下して車両を再び塗装しなければならないなど生産コストが増加して生産性が低下する。さらに、塗装ライン(line)の後で行われる組立工程において、作業者の服、作業に用いられる清掃用布、ネル生地などと艶消し塗膜との間の摩擦により、目立つ光沢がよく発生して組立工程中の塗装車体の管理が難しくなり、完成車出荷後にも生活スクラッチによる光沢がよく発生して車両塗膜が不均一になり車両の管理が困難であった。したがって、スクラッチによる光沢の発生を抑制し、様々な質感を確保してデザインの自由度を拡大させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−297631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は従来技術の問題点を解決するために研究した結果、クリヤー塗料に用いられる従来の艶消し剤のシリカ量を減らし、低吸油量の顔料を混合することにより、塗料内の凝集を防止して均一な艶消し塗装が可能になることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、塗装の外観、付着性、耐衝撃性、耐水性などの従来の艶消しクリヤー塗料の物性はそのまま維持しながら、塗装時の凝集を防止して均一な塗布を可能にし、シリカ艶消し剤の使用量を減少させて経済性も確保できる車両用艶消しクリヤー塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塗料用高分子樹脂及び艶消し剤を含む車両用艶消しクリヤー塗料組成物であって、艶消し剤としてシリカ及びタルクを含有し、前記シリカの含量はクリヤー塗料組成物中の1〜10重量%であり、前記タルクの含量は1〜15重量%であり、前記タルクの直径は5〜15μmであり、吸油量は10〜50であり、前記塗料用高分子樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはウレタン樹脂であり、前記組成物は、硬化剤、ピンホール防止剤、流れ防止剤、及び表面調整剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による車両用艶消しクリヤー塗料組成物は、シリカの使用量を減少でき、従来のシリカだけ用いた場合と比較しても艶消し効果が同等以上である。また、低吸油量のタルクを艶消し剤に混合して使用するため、塗料内の凝集を大幅減少させて均一な塗装を可能にする。また、布、ネル生地などの摩擦による艶消し性の低下、すなわち光沢の発生に対する抵抗性が増大する。さらに、タルクの量、大きさ、形状などの変更により、従来のシリカだけを用いた艶消し塗料と比較してタフな質感など様々な質感を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、従来の光沢クリヤー塗料の光沢感の発現を模式的に示す図面であり、(b)は、従来の光沢クリヤー塗料の形状をSEMで示す図面である。
【図2】(a)は、従来の艶消しクリヤー塗料の光沢感の発現を模式的に示す図面であり、(b)は、従来の艶消しクリヤー塗料の形状をSEMで示す図面である。
【図3】(a)は、本発明の一実施例による艶消しクリヤー塗料の光沢感の発現を模式的に示す図面であり、(b)は、本発明の一実施例による艶消しクリヤー塗料の形状をSEMで示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明による車両用艶消しクリヤー塗料組成物は、塗料用高分子樹脂及び艶消し剤を含み、艶消し剤としてシリカ及びタルクを含有することを特徴とする。
前記シリカの含量は、クリヤー塗料組成物中の1〜10重量%であり、前記タルクの含量は1〜15重量%であることが好ましい。シリカの含量を従来の艶消しと比較して減少させ、その代わりにタルクを含有して同等以上の艶消し効果を奏することができる。
【0011】
本発明において、前記タルクの直径は、用途に応じて変更することが可能であり、好ましくは5〜15μm、さらに好ましくは8〜14μmの直径を有するタルクを使用することが良い。また、前記タルクの吸油量は10〜50であることが好ましく、さらに好ましくは20〜40のタルクを使用することが良い。
また、本発明において、前記塗料用高分子樹脂は、自動車用クリヤー塗料として用いられるものであれば、何れの樹脂を使用してもよく、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはウレタン樹脂が挙げられる。
【0012】
本発明において、前記塗料組成物は、通常のクリヤー塗料組成物に用いられる硬化剤、ピンホール防止剤、流れ防止剤、及び表面調整剤などの添加剤を1種以上含むことができる。
前記硬化剤は、塗料を硬化させ、具体的には、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されることではない。
ピンホール防止剤は、塗料にピンホールが発生することを防止し、具体的には、アクリル系コポリマーが挙げられる。その含量は塗料組成物に対して0.2〜1.2重量%の範囲であることが好ましい。
【0013】
流れ防止剤は、塗料の流れを防止し、具体的には、アクリル系誘導体が挙げられる。その含量は塗料組成物に対して0.1〜1.0重量%の範囲であることが好ましい。
表面調整剤は、塗料の平滑性を向上させ、具体的には、シリコン系変性アクリルが挙げられる。その含量は塗料組成物に対して0.2〜1.2重量%の範囲であることが好ましい。
塗料組成物は、自動車用塗料に用いられる通常の溶剤を使用してもよい。具体的には、炭化水素系、アルコール系、エステル系が挙げられる。
【0014】
本発明によるクリヤー塗料組成物は、艶消し剤として従来のシリカだけでなく、タルクを含有することにより、乱反射をさらに円滑にして艶消し効果を向上させ、また、艶消し剤の使用量を減らしても同等な効果を奏するため、経済的である。タルクの量、大きさなどを変更することにより、様々な質感を付与できるという長所もある(図3(a)、(b)参照)。
【0015】
実施例及び比較例
表1に示す組成を用いてクリヤー塗料組成物を製造し、これを用いて光沢、摩擦時の光沢の増加、及び質感に対する効果を観察した。
【表1】

前記実施例及び比較例では、艶消し剤だけを記載し、高分子樹脂、溶剤、及び各種添加剤は、一般的に用いられるクリヤー塗料とほぼ同様の組成を有するものを使用して実施した。
表1の結果から分かるように、本発明により艶消し剤としてタルクと共にシリカを用いた場合が、シリカだけを用いた場合と比較して艶消し性に優れ、特に摩擦による光沢の増加も少なく、タフで重い質感などを有するなど、質感の変更が可能であるため、高級車種の艶消し塗料として好適である。
【0016】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料用高分子樹脂及び艶消し剤を含む車両用艶消しクリヤー塗料組成物であって、艶消し剤としてシリカ及びタルクを含有することを特徴とする車両用艶消しクリヤー塗料組成物。
【請求項2】
前記シリカの含量はクリヤー塗料組成物中の1〜10重量%であり、前記タルクの含量は1〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載の車両用艶消しクリヤー塗料組成物。
【請求項3】
前記タルクの直径は5〜15μmであり、吸油量は10〜50であることを特徴とする請求項1に記載の車両用艶消しクリヤー塗料組成物。
【請求項4】
前記塗料用高分子樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、またはウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の車両用艶消しクリヤー塗料組成物。
【請求項5】
前記組成物は、硬化剤、ピンホール防止剤、流れ防止剤、及び表面調整剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用艶消しクリヤー塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28778(P2013−28778A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238379(P2011−238379)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】