説明

車両用表示装置

【課題】 表示パネルの表示制御に関する異常状態を検出できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 各種車両情報を表示する表示パネル1と、車両のイグニッションスイッチの操作状態を含む各種情報を入力し、これら情報に基づいて表示パネル1に各種車両情報を表示するための表示情報を生成し、表示パネル1を駆動制御する制御回路2と、を備え、制御回路2は、表示パネル1に前記表示情報を表示させる際に、所望の前記表示情報を表示させるための表示制御が行われたか否かを判定する表示判定処理を行い、この表示判定処理において前記表示制御がなされていなかったと判定した場合には、前記イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態へ移行した後に、表示制御の異常があった旨を報知するように促す報知処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を画面にて表示する表示パネルを備えた車両用表示装置に関し、特に、表示パネルの動作状態を監視し、誤動作時には異常を自動的に検出する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本分野に属する車両用表示装置として、例えば、特許文献1に開示される車両用計器があり、速度計からなる指針式表示部と、走行距離や車外温度などの各種情報を表示するための液晶や有機ELを用いた表示パネル部とが設けられる複合計器がある。
【0003】
これら車両用計器における表示パネルにあっては、様々な車両情報を画面切り替えして表示させることが望まれており、表示内容についても、重要度が次第に大きくなりつつある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献2に開示されるように、表示パネルの駆動電流を監視するとともに、表示輝度をフィードバック制御し、コントラストを最適にするなどして、視認性を高める表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−76294号公報
【特許文献2】特開2007−121988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表示内容の重要度が高まる中で、その表示内容が実際に該表示パネル部に表示出力されているのか、という判断は、視認者である車両利用者に委ねられており、表示出力された情報の信頼性を高める上で課題となっていた。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目してなされたものであって、表示パネルの表示制御に関する異常状態を検出できる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示装置は、各種車両情報を表示する表示パネルと、車両のメインスイッチの操作状態を含む各種情報を入力し、これら情報に基づいて前記表示パネルに各種車両情報を表示するための表示情報を生成し、前記表示パネルを駆動制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記表示パネルに前記表示情報を表示させる際に、所望の前記表示情報を表示させるための表示制御が行われたか否かを判定する表示判定処理を行い、この表示判定処理において前記表示制御がなされていなかったと判定した場合には、前記メインスイッチがオン状態からオフ状態へ移行した後に、表示制御の異常があった旨を報知するように促す報知処理を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記表示パネルの駆動信号を計測する計測手段を備え、前記制御手段は、前記表示情報として予め設定された特定画像を表示させる際に、前記計測手段からの情報に基づいて、前記表示パネルが前記特定画像を表示したか否かを判定することによって前記表示判定処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、前記車両利用者による入力操作に応じて操作信号を前記制御手段に出力する操作手段を備え、前記制御手段は、前記表示判定処理において、前記所望の表示制御が行われなかったと判定した場合には、前記操作手段からの所定操作に基づいて、前記表示制御の異常があったことを前記車両利用者が確認できるように報知することを促す確認処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、前記制御手段は、前記報知処理として、異常信号を他の機器へ送信してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両情報を画面にて表示する表示パネルを備えた車両用表示装置に関し、表示パネルの表示制御に関する異常状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の電気的な構成を示すブロック図。
【図2】同上実施の形態の制御回路の処理手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態として車両用計器に適用したものを例に挙げて添付図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る車両用計器の電気的な構成を示す図であり、表示パネル1と、制御回路(制御手段)2と、画像制御回路(制御手段)3と、電流検出手段(計測手段)4と、報知手段5と、を備えている。
【0016】
表示パネル1は、制御回路2による演算、または、車両用計器以外の制御回路による演算処理によって算出された計測値などの車両情報を画像にて表示出力する。また、表示パネル1は、車両のインストルメントパネルにおいて、車両利用者が車両情報の表示を視認できるように設けられる。この場合、表示パネル1は、図示しないバックライトとなる発光ダイオードを実装した回路基板や配線を介して画像制御回路3に接続され、画像制御回路3からの駆動信号に基づいて画像を表示出力する。
【0017】
また、表示パネル1は、駆動ドライバを設けたTFT型の液晶表示パネルを適用でき、この場合、車両の走行速度や、残燃料量や燃費、積算走行距離、ギアポジションなどのインジケータ、警報などの車両情報を表示でき、車両利用者が視認できるように設けられる。なお、表示パネル1は、画面切り換えによって、例えば、車両のドア開閉状態、時刻、車両周辺映像(バックモニタなど)、テレビジョン放送受像、無線通信による文字情報などの表示用途として使用することも考えられる。
【0018】
制御回路2は、前記回路基板上に実装されるマイクロコンピュータを適用でき、車両に搭載された各種センサからの情報を通信ケーブルを介して入力し、これら車両側からの各種情報やイグニッションスイッチ(メインスイッチ)の操作状態、電流検出手段4などの情報を入力し、所定プログラムに基づいて演算処理する。また、制御回路2は、画像制御回路3や報知手段5を制御するための制御信号や、外部機器を制御するための制御信号を生成し出力できるように、前記通信ケーブルや画像制御回路3などと接続される。
【0019】
なお、制御回路2は、車両情報を表示パネル1に表示させるため制御信号を生成し出力する表示処理の他に、後述する電流検出手段4からの検出信号に基づく表示判定処理や、イグニッションスイッチの操作状態に応じて画像制御回路3のリセット処理などを行うための各プログラムや演算結果を格納する記憶部を備えている。
【0020】
また、前記記憶部は、後述する処理において特定画像となる所定の表示情報(画面情報)を表示出力する際の信号の電流値について、これら所定の表示情報と電流値とを関連付けて、複数の表示パターン(複数の所定の表示情報)を前記記憶部に格納している。この場合、前記記憶部には、全ての画素へ駆動電流を供給した場合と、全ての画素への駆動電流を停止した場合などの表示パターンに対応する表示パネル1全体としての信号電流値を格納している。
【0021】
画像制御回路3は、制御回路2からの制御信号や、メモリに格納されたフォントやマークなどの画像データを用いて、表示パネル1に表示するための画像情報を描画処理するグラフィックコントローラを適用でき、前記画像情報を駆動信号として、表示パネル1に出力する。また、画像制御回路3は、制御回路2からのリセットを促す制御信号に基づいて、初期化処理を行うようにプログラムされている。
【0022】
電流検出手段4は、画像制御回路3と表示パネル1との間の配線に分岐して接続され、画像制御回路3から表示パネル1へ出力される信号の電流値に応じた検出信号を制御回路2へ出力している。
【0023】
報知手段5は、音声や警告灯の点灯などで車両利用者に状態を報知するためのスピーカやインジケータランプを適用できる。報知手段5は、制御回路2からの制御信号に基づいて、作動するように構成される。なお、報知手段5として、表示パネル1を含むように構成することも考えられる。
【0024】
以上の構成によって、制御回路2の表示処理によって表示パネル1が表示出力する画像に応じた電流値を電流検出手段4が検出し、検出信号として制御回路2へ帰還できる。また、この検出信号に基づく、制御回路2の表示判定処理について以下に説明する。
【0025】
制御回路2は、演算処理によって画像制御回路3を介して表示制御するための制御信号のうち、前記記憶部に格納された所定の表示情報に対応する表示を促している際の電流検出手段4からの検出信号を読み取り、複数の所定の画像情報を表示した際の電流値の差分を計測するとともに、前記記憶部に格納された電流値の差分と実際に計測された電流値の差分とを比較することによって、正常な表示制御がなされたか否かを判定する表示判定処理を行う。
【0026】
制御回路2は、この判定処理によって、実際の電流値の差分が異常な値であると判定した場合には、所望の表示画面が出力されていないものと判別し、その結果を記憶部に格納する。この場合、記憶部には、これまでの表示判定処理の判定履歴、あるいはイグニッションスイッチの操作による車両の起動からの前記表示制御が異常であると判定した回数や頻度などの履歴情報が格納される。
【0027】
これらの処理を、車両起動時、表示パネル1の表示画面切換時、車両利用者による操作時など、所望のタイミングにて行うことによって、表示パネル1の表示制御が異常であるか否かを判別することができる。この記憶部に格納された履歴情報に基づいて、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態へ操作された際の、制御回路2による処理手順について図2を用いて、以下に説明する。
【0028】
制御回路2は、該記憶部に格納された履歴情報に基づいて、イグニッションスイッチがオフ操作される前のオン状態における表示判定処理の判定結果を読み出し、表示パネル1の表示制御が異常であったと判定した履歴があるか否かを判定する履歴判定処理(S1)を行う。
【0029】
制御回路2は、この履歴判定処理によって、異常な表示制御を行った履歴があった場合には、報知手段5を用いて異常な表示制御が発生したことを車両利用者に知らせる報知処理(S2)を行う。この場合、制御回路2は、音声出力を行ったり、所定の警報マークを点灯されるなどの報知を行うように報知手段5を制御するとともに、車両用計器とは別体に設けられた他の表示機器や音響機器などの車載外部機器へ異常表示があった旨の信号を発することができる。これら外部機器は、この信号をうけて車両用計器が異常である旨の表示や音声出力を行うことができる。
【0030】
また、制御回路2は、報知処理後、あるいは報知処理とともに、「正常に表示されましたか?」のような車両利用者に対して質問する文章表示と、「OK」などの車両利用者に対して入力操作を促すボタン表示とを例えば、タッチパネルを内蔵してなる表示パネル1に表示させる。
【0031】
次に制御回路2は、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態へ移行してから、所定時間(例えば、30秒)経過したか否かを判定する時間判定処理(S3)を行う。
【0032】
制御回路2は、この時間判定処理によって、所定時間経過したと判定した場合に、表示パネル1の表示制御に異常があった可能性があるとして、車両販売店の連絡先やサポートセンター等関係機関の連絡先を表示パネル1に表示、または報知手段5を用いて報知するように制御する(S4)。また、この際、外部機器に前述連絡先等を出力させるように制御することもできる。
【0033】
また、制御回路2は、前述時間判定処理において、前記所定時間経過していないと判定した場合に、車両用計器に設けられた図示しないスイッチの入力操作があったか否かを判定(S5)し、この判定にて入力操作がないと判定した場合には、前述した報知処理(S2)を継続し、入力操作があったと判定した場合には、表示パネル1の表示を含む車両用計器全体の表示を終了する処理(S6)を行う。
【0034】
以上の処理によって、自動的に表示パネル1による表示制御の良否判定を行うことができるだけでなく、表示パネル1の表示制御の異常について、イグニッションスイッチの操作を行う車両停車状態と思われるタイミングで、効果的に車両利用者へ報知できる。
【0035】
斯かる車両用表示装置は、各種車両情報を表示する表示パネル1と、車両のイグニッションスイッチの操作状態を含む各種情報を入力し、これら情報に基づいて表示パネル1に各種車両情報を表示するための表示情報を生成し、表示パネル1を駆動制御する制御回路2と、を備え、制御回路2は、表示パネル1に前記表示情報を表示させる際に、所望の前記表示情報を表示させるための表示制御が行われたか否かを判定する表示判定処理を行い、この表示判定処理において前記表示制御がなされていなかったと判定した場合には、前記イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態へ移行した後に、表示制御の異常があった旨を報知するように促す報知処理を行う。
【0036】
従って、車両利用者は、表示パネルの表示制御に関する異常状態を確認でき、表示出力された情報の信頼性を高めることができる。
【0037】
また、表示パネル1の駆動信号を計測する電流検出手段4を備え、制御回路2は、前記表示情報として予め設定された特定画像を表示させる際に、電流検出手段4からの情報に基づいて、表示パネル1が前記特定画像を表示したか否かを判定することによって前記表示判定処理を行うことによって、異常な表示制御があったか否かを推定することができ、車両利用者の視認だけでなく、セルフチェックできる構成となる。
【0038】
また、前記車両利用者による入力操作を応じて操作信号を制御回路2に出力する操作手段を備え、制御回路2は、前記表示判定処理において、前記所望の表示制御が行われなかったと判定した場合には、前記操作手段からの所定操作に基づいて、前記表示制御の異常があったことを前記車両利用者が確認できるように報知するように促す確認処理を行うことによって、車両利用者の都合によって表示出力の判定について確認するタイミングを選択できる。
【0039】
また、制御回路2は、報知処理として、異常信号を他の機器へ送信してなることによって、表示パネル1の表示が、全く表示できないような故障状態の際に、車両利用者に状態を報知することが可能となる。
【0040】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。例えば、表示パネル1は、操作入力可能な操作手段と兼ねてタッチパネルにて構成することもできる。この場合、タッチパネル部分による入力操作に異常がないことを確認するため、前記タッチパネルに表示された数字や符号を、同画面上に表示されたボタンによって入力するように促すなど、入力部の異常判定を実施する過程を別途設けても良い。
【0041】
また、計測手段として画像制御回路2から出力される信号の電流値を検出する電流検出手段4を示したが、電圧値を検出できるように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る車両用表示装置は、誤動作による表示パネルの異常表示を検出でき、例えば、自動車やバイクに搭載される車両情報を画像として表示する車両用表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 表示パネル
2 制御回路(制御手段)
3 画像制御回路(制御手段)
4 電流検出手段(計測手段)
5 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種車両情報を表示する表示パネルと、
車両のメインスイッチの操作状態を含む各種情報を入力し、これら情報に基づいて前記表示パネルに各種車両情報を表示するための表示情報を生成し、前記表示パネルを駆動制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記表示パネルに前記表示情報を表示させる際に、所望の前記表示情報を表示させるための表示制御が行われたか否かを判定する表示判定処理を行い、この表示判定処理において前記表示制御がなされていなかったと判定した場合には、前記メインスイッチがオン状態からオフ状態へ移行した後に、表示制御の異常があった旨を報知するように促す報知処理を行うことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示パネルの駆動信号を計測する計測手段を備え、
前記制御手段は、前記表示情報として予め設定された特定画像を表示させる際に、前記計測手段からの情報に基づいて、前記表示パネルが前記特定画像を表示したか否かを判定することによって前記表示判定処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記車両利用者による入力操作を応じて操作信号を前記制御手段に出力する操作手段を備え、
前記制御手段は、前記表示判定処理において、前記所望の表示制御が行われなかったと判定した場合には、前記操作手段からの所定操作に基づいて、前記表示制御の異常があったことを前記車両利用者が確認できるように報知することを促す確認処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記報知処理として、異常信号を他の機器へ送信してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−195007(P2011−195007A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63630(P2010−63630)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】