車両用計器及びその製造方法
【課題】昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板1に印刷された表記部5を含む指標が、立体的に見える車両用計器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】側方から表示板1内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、透明の表示板1の裏側に、指標となる表記部5を有する印刷部1aを有する。また、表記部5の影に相当する位置に、表側から見たときに立体表示部5bとなる窪み5b1を有し、この窪み5b1は、傾斜面10と垂直面11を有する。印刷部1aの塗料が窪み5b1内に流れこんでも、垂直面11があるため、傾斜面10まで覆うことがなく、より確実に傾斜面10で照明光を反射することができる。昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表側から見たときに、表示板1の表記部5が窪み5b1によって、立体的に見える。
【解決手段】側方から表示板1内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、透明の表示板1の裏側に、指標となる表記部5を有する印刷部1aを有する。また、表記部5の影に相当する位置に、表側から見たときに立体表示部5bとなる窪み5b1を有し、この窪み5b1は、傾斜面10と垂直面11を有する。印刷部1aの塗料が窪み5b1内に流れこんでも、垂直面11があるため、傾斜面10まで覆うことがなく、より確実に傾斜面10で照明光を反射することができる。昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表側から見たときに、表示板1の表記部5が窪み5b1によって、立体的に見える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目盛が形成された表示板のエッジ部から照明光を表示板内に導入するエッジライト照明を採用した車両用計器及びその製造方法に関するものである。特に、表示板の裏面に窪みからなる立体表示部を形成して、表示板の表記部が、立体的に視認される車両用計器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の車両用計器が知られている。図10は、特許文献1の車両用計器を示す正面図、図11は、図10の矢印F11−F11線に沿う一部断面図である。この図10に示した車両用計器は、図11のように、指針4が表示板1の裏側をムーブメント20で駆動されて回転する。表示板1(目盛ダイヤルとも呼ばれる)の厚み方向に対して、直角方向である矢印Y11方向から照明光が表示板1内に導入される。このような照明は、エッジライト照明と呼ばれる。
【0003】
図11の表示板1のエッジ部3に対して、一列に、複数の発光ダイオード8(以下、LED8とも言う)が並べられている。そして、複数のLED8から出た照明光は、メータケースの内部表面で反射して、アクリル樹脂製の表示板1内に導光される。また、指針4は、モータ等のムーブメント20に駆動されて、透明の表示板1の裏面に印刷された表記部5(図10)を指し示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−85113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような表示板1に印刷された表記部5は、そのままでは立体的に見えない。ところが、近年、車両用計器の立体的な見栄えを演出したいという要望、及び昼夜の見栄えを変化させたいという要望がある。
【0006】
上記特許文献1においては、表示板1の裏面に表記部5、目盛、及び単位からなる指標を印刷し、表示板1のエッジ部3から照明光を表示板1内に導入していたが、裏面に指標を印刷するため、どうしても表示板1の裏面は全体として平面形状にならざるをえない。
【0007】
指標を立体的に見せるためには、指標のデザインで陰影を描いて立体的に見えるように工夫するいわゆる陰影法に基づく方法、及び立体的部品を表示板上に追加して、指標を立体的に見せる方法が考えられた。立体的部品を表示板上に追加して、指標を立体的に見せる方法では、コストアップして好ましくない。そこで、表記部5をなす特に数字部の形状に影部分を描いて、イラスト的に立体化する方法が考えられた。この方法では、昼の見栄えには有効であるが、夜間照明時には効果が少ない。
【0008】
また、表示板1自体を成型するときに、表記部5等の指標を盛り上げて成型し、立体的に見えるようにすることが考えられる。しかし、表示板1の一部を立体的に盛り上げて成型することは、裏面に印刷された指標に、成型時の歪の影響が出たり、成型材料のひけの影響で、不自然な筋が表示板1に形成されたりするため、好ましくなかった。更に、仮に、問題なく立体的に見えたとしても、昼と夜とで見栄えを変えたいという要求を満たすことができない。
【0009】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板に印刷された表記部を含む指標が、立体的に見える車両用計器及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
従来技術として列挙された特許文献1の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、表示板の側方から表示板内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、表示板の裏側に印刷され、指標となる表記部と、表示板の裏側に設けられ、表記部を立体的に表示する立体表示部とを有し、立体表示部は、表示板の裏面側から表面側に窪み、表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、垂直面の表側に形成された傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、表示板のエッジ部を通して導入される照明光が、傾斜面と表記部とにより反射して、表示板の表面側に向かうことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、立体表示部は、表示板の裏面側から表面側に窪み、表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、垂直面の表側に形成された傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、表示板のエッジ部を通して導入される照明光が傾斜面と表記部とにより反射して表示板の表面側に向かうから、立体表示部によって表記部が立体的に視認される。また、表示板のエッジ部を経由して表示板の内部に導光された照明光が、傾斜面に反射して、立体表示部が夜間において光って視認される。また、垂直面が形成されているから、印刷された表記部が窪み内に浸入して垂直面を覆っても、傾斜面まで覆うことがなく、より確実に傾斜面で照明光を反射することができる。また、エッジライト照明がなされないときは、傾斜面が外来光を飛散させる。これにより、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板に印刷された表記部が立体表示部によって、立体的に見える車両用計器を提供できる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、平面方向に表記部を挟んで反対側に形成されていることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、平面方向に表記部を挟んで反対側に形成されているから、立体表示部により表記部が立体的に見え易い。
【0015】
請求項3に記載の発明では、平面方向の表記部を挟んで立体表示部とは反対側に、表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されていることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、平面方向の表記部を挟んで立体表示部とは反対側に、表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されているから、表記部の輪郭が輪郭線と立体表示部とによって、一層明確になり、表記部が判読し易くなる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、表記部は、着色されている中心着色部と、中心着色部の周囲を取り囲み、かつ中心着色部よりも照明光の反射率が高い色調の周囲着色部とからなり、立体表示部は、周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、表記部は、中心着色部と、この中心着色部の周囲を取り囲む周囲着色部からなり、立体表示部は、周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されているから、周囲着色部が台に見え、中心着色部が、台の上に乗っているように見えるため、一層、表記部が立体的に見える。
【0019】
請求項5に記載の発明では、立体表示部をなす窪みの平面方向の最大幅が、中心着色部の平面方向の最大幅の25%から75%の幅を有することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、立体表示部をなす窪みの最大幅が中心着色部の最大幅の少なくとも25%から75%の幅を有するから、立体表示部により充分に表記部を立体的に見せ、かつ傾斜面が充分に照明光を反射して、高級感のある表記部の指標としての表示が可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、立体表示部の傾斜面は、シボ加工されていることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、傾斜面にシボ加工されているから、傾斜面全体が輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、立体表示部の傾斜面が、表示板の裏面よりも表面粗さが細かい鏡面に形成されていることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、傾斜面に鏡面が形成されているから、傾斜面の輝きが強調され、傾斜面が強く輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、表示板の平面方向に対する傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されていることを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、平面方向に対する傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されているから、照明光が傾斜面で良好に反射して輝きが増し、見栄えを良くすることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明では、表示板の裏側に、表示板の平面方向に対して傾斜した傾斜面と垂直面を持った窪みからなる立体表示部を形成する工程、及び立体表示部が形成された表示板に対して、表示板の裏側から表示板の指標となる表記部を印刷し、表示板の裏側に印刷部を形成する工程を有することを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、表示板の裏側から表示板の指標となる表記部を印刷し、印刷部を形成するときに、立体表示部を形成する窪みの中に印刷部が入り込んでも、この印刷部が垂直面上に形成されるため、傾斜面を印刷部で覆うことがなく、傾斜面の輝きを損なうことにない車両用計器を製造することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明では、印刷部を形成する工程は、表示板の裏側に印刷版を押し付けることにより印刷し、印刷版を押し付けるときに、表示板の裏面側の開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、開口部内に配置し、インキ透過部をインキ不透過部の周囲に配置したことを特徴としている。
【0030】
この発明によれば、印刷版を押し付けるときに、表示板の裏面側の開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、開口部内に配置し、インキ透過部をインキ不透過部の周囲に配置したから、印刷版の位置が表示板に対してずれても、窪みと表示板の裏面との境目まで確実に印刷できる。また、印刷部が境目を越えて窪みの内部に浸入しても、印刷部が垂直面の表面に形成され、印刷部が傾斜部に形成されることがないから、傾斜面での照明光の反射を阻害しない車両用計器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用計器の正面図である。
【図2】図1に図示された表記部のうち、特に、「180」、「200」部分の拡大図である。
【図3】表示板に導光する照明手段を構成するLEDの配置を模式的に示す図2のF3−F3線に沿う一部断面斜視図である。
【図4】図1の表示板上の表記部「20」の寸法関係を説明する正面図である。
【図5】図4に示したF5−F5線に沿う断面を示し、特に立体表示部の寸法関係を説明する模式断面図である。
【図6】図6は、立体表示部をなす窪み内に印刷部が形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。
【図7】本発明の比較例を示すV字カット内に印刷部が形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。
【図8】表示板を射出成型するために使用する金型の表面における表記部の「20」に対応する部分を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明のその他の立体表示部の断面形状を示す模式断面図である。
【図10】従来の特許文献1の車両用計器を示す正面図である。
【図11】図10の矢印F11−F11線に沿う一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0033】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図6を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す車両用計器の正面図である。透明のアクリル樹脂から成る表示板1は、成型ダイヤルとも呼ばれ、図1紙面裏側に位置する裏面は平面形状である。表示板1の表面は、なだらかな曲面形状に成型されている。なお、表面の曲面形状は、必須のものではない。
【0034】
この表示板1は、特許文献1と同じく、目盛2が形成された表示板1のエッジ部3から照明光を表示板1内に導入するエッジライト照明によって照明される。表示板1上を指針4が回転して指針先端が表記部5をなす数字部を指し示すように構成されている。表示板1の裏側には、少なくとも表記部5を含む指標が印刷され、表記部5は、透明の表示板1を透かして表側から視認される。
【0035】
具体的には、表示板1の裏には、「0」、「20」、「40」から「180」、「200」までの、11箇所の数字の表記部5が形成されている。この表記部5には、立体的に見えるよう後述する立体表示部が設けられている。その立体表示部の形状に合わせて、表示板1のアクリル樹脂の裏面にV字状の溝または窪みからなる後述する窪み5b1(図3)が形成されている。
【0036】
図2は、図1に図示された表記部5のうち、特に、「180」、「200」部分の拡大図である。「180」、「200」といった表記部5は、表示板1の裏側に印刷され、数字自体を表す数字表記部5aを有する。また、この数字表記部5aの右側に略隣接して表記部5を立体的に見せる立体表示部5bを有している。この立体表示部5bは、表示板1の裏面側から表面側に凹んで形成された窪み5b1(図3)から成る。
【0037】
なお、表示板1の表側から見れば、立体表示部5bであり、表示板1の裏側から見れば、窪み5b1であり、立体表示部5bと窪み5b1とは同じものであるが、便宜上、立体表示部というときには5bの符号を付し、窪みというときには5b1の符号を付して説明する。
【0038】
図3は、表示板1に導光する照明手段を構成するLED8の配置を模式的に示す図2のF3−F3線に沿う一部断面斜視図である。表示板1のエッジ部3から矢印Y3等で示された照明光を表示板1の内部に導光し、この導光された照明光が、表示板1の裏面の表記部5等を印刷した印刷部1a、及び窪み5b1で反射する。
【0039】
図3は、窪み5b1での反射のみを示している。反射された照明光は、表示板1の表側から出て、車両の運転者の目に入ることにより、表記部5を立体的に視認可能としている。なお、図3において、表記部5は印刷部1a内に設けられているため、実際には表記部5は図3のようには見えないが、便宜上、対応関係を示して模式的に図3を図示している。
【0040】
窪み5b1は、表示板1の表側からは立体表示部5bとして見え、立体感を表記部5に与えている。窪み5b1は、表示板1の裏側に形成され、後述する傾斜面10(図3、図5)を有する窪みである。この一実施形態においては、傾斜面10は、印刷処理がされていないが、鏡面に仕上げることで夜間には部分的にキラっと発光し、指標が立体的に見え、非常に高級感も演出できる。
【0041】
なお、昼間のエッジライト照明がなされていないときは、外来光が窪み5b1に当たっても当たる方向によっては戻ってこないため、立体表示部5bは影として見える。夜間は、窪み5b1が、エッジライト照明の照明光を反射するため昼と夜とで見栄えを変えることができる、
図4は、図1の表示板1上の表記部「20」の寸法関係を説明する正面図である。図5は、図4に示したF5−F5線に沿う断面を示し、特に窪み5b1の寸法関係を説明する模式断面図である。図6は、窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版12で印刷する工程を示す説明図である。なお、図5においては、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0042】
図4において、数字表記部5aは、照明光が反射しにくい色調で着色された中心着色部5a1を有する。また、該中心着色部5a1の周囲を取り囲み中心着色部5a1よりも照明光が反射し易い、つまり、反射率の高い色調の周囲着色部5a2を有する。
【0043】
そして、立体表示部5bは、周囲着色部5a2の周囲の少なくとも一部に形成されている。また、立体表示部5bは、表示板1の左側方から仮想的に進入すると考えた矢印Y40にて示す光が表記部5に照射される側とは反対側に形成されている。これは立体感を表すためには、左側から光が当たり反対側に影ができるように描いたほうが立体的に見えるからである。
【0044】
更に、周囲着色部5a2の周囲の立体表示部5bが存在しない図4左側の表記部5の輪郭部分に、表記部5の輪郭を示す輪郭線5cが形成されている。また、図3において、LED8は、プリント基板9の上に実装されている。LED8からの照明光は、メータケース6の内壁で反射して、表示板1の中にエッジ部3から導入される。
【0045】
図4及び図5のBは、立体表示部5bともなる窪み5b1の最大幅であり、溝の最大幅に相当する。なお、この窪み5b1は、断面が三角形状のトンネル状である。また、図4のCは、数字表記部5aの構成要素である中心着色部5a1の最大幅である。窪み5b1の最大幅Bは、中心着色部5a1の最大幅Cの25%から75%、好ましくは40%から60%の範囲内に選定されている。
【0046】
次に、図4の文字「0」、あるいは、図1の表記部5内の文字のうち「4」と「6」と「8」と「9」のように、内部に中心着色部5a1によって閉じられた内周部5d(図4)を有する数字は、中心着色部5a1の内周部5d側に沿って形成され中心着色部5a1よりも照明光の反射率が高い色調の内周側周囲着色部5a21を有する。
【0047】
そして、内周側周囲着色部5a21の内周部5d側に、内周側立体表示部5b2が形成されている。但し、この内周側立体表示部5b2は、単なるデザイン上の陰影であり、窪み5b1相当の凹みは形成されていない。内周側立体表示部5b2の内周部5dを挟んだ反対側に内周側輪郭線5c1が形成されている。また、中心着色部5a1の外周に沿って形成され中心着色部5a1よりも照明光の反射率が高い色調の外周側周囲着色部5a22を有する。
【0048】
図5のように、表示板1内部には、矢印Y50にて代表するエッジライト照明による照明光が侵入している。表示板1の裏面の印刷部1aが設けられた平面部の平面方向に対して、θ1=44度の傾斜面10を対向して持った断面形状が二等辺三角形のV字状窪み部を窪み5b1が持っている。また、このV字状窪み部の図5下側には垂直面11を有する開口側窪み部を窪み5b1が持っている。
【0049】
傾斜面10は、印刷部1aが設けられた表示板1の裏側から表側に向かう方向に傾斜している。よって、傾斜面10が、照明光に対して反射面として作用し、矢印Y51等のように表示板1の表側から反射光が出て、運転者の目に入る。なお、この一実施形態では、表示板1の厚さTpは、3〜4mm、V字状窪み部の深さDは、0.3mmである。
【0050】
このV字状窪み部の深さDと垂直面11の深さH11の合計は、表示板1の表面の、不規則な意図しない模様の原因となる表示板1成形時のひけ、またはウエルドラインの発生防止を考慮して、表示板1の板厚Tp(Tp=3mm〜4mm)の30%程度までに抑えることが好ましい。従って、V字状窪み部の深さDと垂直面11の深さH11の合計は、0.3mmから1.0mmの範囲としている。Tjは、表示板1の窪み5b1の直上の板厚である。
【0051】
また、V字カット5b1の幅Bは0.62mmであり、その半分は0.31mmであるから、この場合の傾斜角をθ1とした場合、Tanθ1=0.3/0.31となり、傾斜角θ1は、44度となる。従って、窪み5b1のカット角θ2は、92度(180−2×44=92)となる。なお、照明光が良好に反射して、キラっと輝くために傾斜角θ1は、40度から50度の範囲が好ましい。なお、後述するように、傾斜面10にシボを施す場合は、この傾斜角θ1は、30度から60度の範囲内が好ましい。
【0052】
図6は、窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版12で印刷する工程を示す説明図である。図6のように文字板1の裏側には平面方向に延在する印刷部1aが形成されている。また、平面方向に対し垂直方向に立ち上がった垂直面11を有している。この垂直面11により、印刷部1aの印刷時に、印刷工程能力上、印刷がずれて印刷インキが窪み5b1内に入っても、印刷インキからなる印刷部1aが、垂直面11に張り付き、傾斜面10に印刷部1aが形成されないから、傾斜面10での照明光反射性能に悪影響を与えない。
【0053】
なお、単に、印刷部1aが傾斜面10に付着しないようにするだけなら、窪み5b1が存在するところに、マージンを取って避けて印刷すれば良いが、きれいな印刷面を確保するためには、窪み5b1以外は、確実に印刷することが望ましい。従って印刷がずれた場合においても、印刷の塗り残しが無いように、スクリーン印刷の印刷版12から出た印刷インキが窪み5b1内にオーバーラップするように印刷する。
【0054】
印刷版12は、多孔質の部材からなり印刷インキが透過するインキ透過部12a、12bと印刷インキが透過しないインキ不透過部12cとから構成されている。図6に示すように、上記オーバーラップ量OL1、OL2は、印刷ずれ工程能力と昼間の見栄えを考慮して、0.2mmに設定されている。
【0055】
印刷時には、印刷版12に対して文字板1の窪み5b1が地方向(図6の紙面上方が地方向)になるように文字板1を配置して行う。これにより、印刷時に印刷インキが窪み5b1に入り込むが、印刷インキは、垂直面11の部分に重力で矢印Y61、Y62のようにたれて止まり、垂直面11が、窪み5b1に入りこんだ印刷インキを溜める。窪み5b1に入り込む印刷インキの量を推定して、垂直面11の高さH11が設定されている。
【0056】
従って、印刷インキが傾斜面10までたれることは無いため、照明光の反射面積を確保することができる。これにより製品不良を低減して、生産性を確保できる。またθ31及びθ32は、成形型が容易に抜けるように設けたテーパの角度である。このように、垂直面11は、実質的に垂直であればよい。
【0057】
図7は、本発明の比較例を示す窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。この図7の比較例では、垂直面11が無いために、矢印Y61及びY62のように垂れ下がった印刷インキが傾斜面10に付着し、その分、照明光を反射する効果が減少し、見栄えが低下する。
【0058】
図8は、表示板1を射出成型するために使用する金型12の表面の、表記部5の「20」に対応する部分を、模式的に示す斜視図である。図8の(a)部分は、金型12の表面の凸形状を示し、図8の(b)部分は、領域R8で示した部分の拡大図である。説明上の都合で、仮想的に表記部5の「20」が、金型12の表面に、二点鎖線で描かれている。この表記部5の「20」における立体表示部5bの窪み5b1に対応する部分が、山脈状に隆起した隆起部13a、13b、13cとして形成されている。
【0059】
この隆起部13a、13b、13cの高さH8が、図5のV字状窪み部の深さD=0.3mmと垂直面11の高さH11との合計に対応している。また、図8の隆起部13a、13b、13cの断面の三角形状の山の先端角θ13は、窪み5b1のカット角θ2(図5)に対応している。
【0060】
次に、一実施形態の車両用計器の作用効果および製造方法について説明する。図6のように、立体表示部5bは、表示板1の裏面側から表面側に窪み、表示板1の平面方向に対して傾斜した傾斜面10を持った窪み5b1から構成されている。かつ、この窪み5b1は、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面11と該垂直面11の表示板1の表側に連続して形成された傾斜面10とから構成されている。
【0061】
表示板1のエッジ部を通して導入される照明光が、傾斜面10と印刷部1a内の表記部5とにより反射して、表示板1の表面側に向かうから、立体表示部5bによって表記部5が立体的に視認される。また、表示板1のエッジ部3(図3)を経由して表示板1の内部に導光された照明光が、傾斜面10に反射して、立体表示部5bが夜間において光って視認される。
【0062】
また、垂直面11(図6)が形成されているから、表記部5の印刷部1aが垂直面11を覆っても、窪み5b1の傾斜面10まで覆うことがなく、より確実に傾斜面10で照明光を反射することができる。また、エッジライト照明がなされないときは、立体表示部5bが外来光を飛散させる。これにより、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板1に印刷された表記部5(図4)が立体表示部5bによって、立体的に見える車両用計器を提供することができる。
【0063】
次に、立体表示部5bは、仮想の光進入方向である表示板1の左側(図1下側)に対して、平面方向に表記部5を挟んで反対側に形成されているから、つまり立体表示部5bの影相当側に形成されているから、立体表示部5bにより表記部5が立体的に見え易い。次に、平面方向の表記部5を挟んで立体表示部5bとは反対側に、表記部5の外周側の輪郭を示す輪郭線5c(図4)が形成されているから、表記部5の輪郭が輪郭線5cと立体表示部5bとによって、一層明確になり、表記部5が立体的に見えて判読し易くなる。
【0064】
次に、表記部5は、中心着色部5a1と、この中心着色部5a1の周囲を取り囲む周囲着色部5a2からなり、立体表示部5bは、周囲着色部5a2の周囲の少なくとも一部に形成されているから、周囲着色部5a2が台に見え、中心着色部5a1が、台の上に乗っているように見えるため、一層、表記部5が立体的に見える。
【0065】
次に、立体表示部5bは、溝状の窪みからなり、溝の最大幅Bが中心着色部5a2の最大幅Cの少なくとも25%から75%の幅を有するから、立体表示部5bにより充分に立体的に見え、かつ傾斜面10が充分に反射して、高級感のある文字表示が可能となる。次に、傾斜面10にシボ加工した場合は、傾斜面10全体が輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0066】
次に、傾斜面10に鏡面が形成されることにより、傾斜面10の輝きが強調され、傾斜面10が強く輝いて立体的に表記部を視認させることができる。また、平面方向に対する傾斜面の傾斜角θ1は、40度から50度の範囲に形成されているから、照明光が傾斜面10で良好に反射して輝きが増し、見栄えを良くすることができる。
【0067】
次に、立体表示部5bに対して、表示板1の裏側から表示板1の指標となる表記部5を印刷し、立体表示部5bの裏側に印刷部1aを形成するときに、立体表示部5bを形成する窪み5b1の中に印刷部1aが入り込んでも、この印刷部1aが垂直面11上に形成されるため、傾斜面10を印刷部1aで覆うことがなく、傾斜面10の輝きを損なうことにない車両用計器の製造方法を得ることができる。
【0068】
次に、製造方法について説明する。印刷部1aを形成する工程では、図6のように、表示板1の裏側に天方向から印刷版12を押し付けることによりスクリーン印刷する。印刷版12は、窪み5b1の幅よりも狭い幅のインキ不透過部12cと、該インキ不透過部12cの周りにおいて平面方向に延在するインキ透過部12a、12bとを有する。そのため、印刷版12の位置が表示板1に対してずれて、窪み5b1と表示板1の裏面との境目まで確実に印刷できる。
【0069】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。図9は、本発明のその他の窪み5b1の断面形状を示す模式断面図である。この図9に示すような、その他の窪み5b1の断面形状を持つものであっても良い。図9の(a)は、垂直面11の表示板1表側に不等辺三角形の断面形状部を持つものである。図11の(b)は、垂直面11の表示板1表側に台形状の断面形状部を持つものである。なお、図9においては、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0070】
次に、窪み5b1内の傾斜面10に鏡面加工を施して鏡面を形成し、この鏡面で照明光を反射させることが望ましいが、単なる成型上のカット面とし、特別な鏡面として表面粗さを細かくしなくても良い。また、V字カット5b1の傾斜面10にシボを形成することで、夜間照明時、シボの全体が光り、全体が浮き出て見えて、また違った立体感を演出できる。
【0071】
また、印刷部1aを印刷した後に、窪み5b1の傾斜面10に、輝きのある印刷膜を形成するように、鏡面印刷してもよい。あるいは、マスキングしていない窪み5b1の内面に塗膜が付着するように鏡面インキによる塗装を施しても良い。このように、窪み5b1内の傾斜面10に、輝きのある鏡面印刷や、鏡面インキの塗膜を形成することで、傾斜面10の輝きが強調され、一層、立体的に表記部5を視認させることができる。また、照明光は、指標に対して上下左右どちら方向から表記部5に照射されても効果があるため、エッジライト照明と、表示板1の裏側から照明するバックライト照明を組み合わせても良い。
【0072】
また、指針4の先端から指針内部に導光された照明光が放射されるタイプの車両用計器に本発明を適用して、指針先端からの光により、指針4が指し示している表記部5での反射を強調するようにしても良い。また、照明光の色を表示中に変えても良い。
【0073】
また、窪み5b1に、反射させるための印刷やシボ加工がされていない場合は、形状によっては、窪み5b1を表から見た立体表示部5bを介して計器内部構造が見えてしまう。このため、傾斜面10の傾斜角θ1(図5)を、好ましくは、35度〜45度に設定すれば、照明光を全反射させて、内部構造を隠蔽できる効果がある。また、速度計(スピードメータ)のみでなく、エンジン回転計(タコメータ)、燃料系等、その他の計器にも、採用することができる。
【0074】
また、傾斜面は、テーパ面でなく、なだらかな曲面でも良い。また、表記部として数字部を使用した実施形態を示したが、EやFといった数字ではない表記部を指針が指し示す計器に本発明を使用することもできる。更に、指針は無くても良く、指標の位置を指示する複数の発光ダイオードの点灯位置の推移で指針の代用としても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 表示板
1a 印刷部
2 目盛
3 エッジ部
4 指針
5 表記部
5a 数字表記部
5a1 中心着色部
5a2 周囲着色部
5a21 内周側周囲着色部
5a22 外周側周囲着色部
5b 立体表示部
5b1 窪み
5b2 内周側立体表示部
5c 輪郭線
5d 内周部
10 傾斜面
11 垂直面
B 窪み5b1の最大幅
C 中心着色部5aの最大幅
θ1 傾斜角
θ2 カット角
【技術分野】
【0001】
本発明は、目盛が形成された表示板のエッジ部から照明光を表示板内に導入するエッジライト照明を採用した車両用計器及びその製造方法に関するものである。特に、表示板の裏面に窪みからなる立体表示部を形成して、表示板の表記部が、立体的に視認される車両用計器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の車両用計器が知られている。図10は、特許文献1の車両用計器を示す正面図、図11は、図10の矢印F11−F11線に沿う一部断面図である。この図10に示した車両用計器は、図11のように、指針4が表示板1の裏側をムーブメント20で駆動されて回転する。表示板1(目盛ダイヤルとも呼ばれる)の厚み方向に対して、直角方向である矢印Y11方向から照明光が表示板1内に導入される。このような照明は、エッジライト照明と呼ばれる。
【0003】
図11の表示板1のエッジ部3に対して、一列に、複数の発光ダイオード8(以下、LED8とも言う)が並べられている。そして、複数のLED8から出た照明光は、メータケースの内部表面で反射して、アクリル樹脂製の表示板1内に導光される。また、指針4は、モータ等のムーブメント20に駆動されて、透明の表示板1の裏面に印刷された表記部5(図10)を指し示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−85113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような表示板1に印刷された表記部5は、そのままでは立体的に見えない。ところが、近年、車両用計器の立体的な見栄えを演出したいという要望、及び昼夜の見栄えを変化させたいという要望がある。
【0006】
上記特許文献1においては、表示板1の裏面に表記部5、目盛、及び単位からなる指標を印刷し、表示板1のエッジ部3から照明光を表示板1内に導入していたが、裏面に指標を印刷するため、どうしても表示板1の裏面は全体として平面形状にならざるをえない。
【0007】
指標を立体的に見せるためには、指標のデザインで陰影を描いて立体的に見えるように工夫するいわゆる陰影法に基づく方法、及び立体的部品を表示板上に追加して、指標を立体的に見せる方法が考えられた。立体的部品を表示板上に追加して、指標を立体的に見せる方法では、コストアップして好ましくない。そこで、表記部5をなす特に数字部の形状に影部分を描いて、イラスト的に立体化する方法が考えられた。この方法では、昼の見栄えには有効であるが、夜間照明時には効果が少ない。
【0008】
また、表示板1自体を成型するときに、表記部5等の指標を盛り上げて成型し、立体的に見えるようにすることが考えられる。しかし、表示板1の一部を立体的に盛り上げて成型することは、裏面に印刷された指標に、成型時の歪の影響が出たり、成型材料のひけの影響で、不自然な筋が表示板1に形成されたりするため、好ましくなかった。更に、仮に、問題なく立体的に見えたとしても、昼と夜とで見栄えを変えたいという要求を満たすことができない。
【0009】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板に印刷された表記部を含む指標が、立体的に見える車両用計器及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
従来技術として列挙された特許文献1の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、表示板の側方から表示板内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、表示板の裏側に印刷され、指標となる表記部と、表示板の裏側に設けられ、表記部を立体的に表示する立体表示部とを有し、立体表示部は、表示板の裏面側から表面側に窪み、表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、垂直面の表側に形成された傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、表示板のエッジ部を通して導入される照明光が、傾斜面と表記部とにより反射して、表示板の表面側に向かうことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、立体表示部は、表示板の裏面側から表面側に窪み、表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、垂直面の表側に形成された傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、表示板のエッジ部を通して導入される照明光が傾斜面と表記部とにより反射して表示板の表面側に向かうから、立体表示部によって表記部が立体的に視認される。また、表示板のエッジ部を経由して表示板の内部に導光された照明光が、傾斜面に反射して、立体表示部が夜間において光って視認される。また、垂直面が形成されているから、印刷された表記部が窪み内に浸入して垂直面を覆っても、傾斜面まで覆うことがなく、より確実に傾斜面で照明光を反射することができる。また、エッジライト照明がなされないときは、傾斜面が外来光を飛散させる。これにより、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板に印刷された表記部が立体表示部によって、立体的に見える車両用計器を提供できる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、平面方向に表記部を挟んで反対側に形成されていることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、平面方向に表記部を挟んで反対側に形成されているから、立体表示部により表記部が立体的に見え易い。
【0015】
請求項3に記載の発明では、平面方向の表記部を挟んで立体表示部とは反対側に、表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されていることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、平面方向の表記部を挟んで立体表示部とは反対側に、表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されているから、表記部の輪郭が輪郭線と立体表示部とによって、一層明確になり、表記部が判読し易くなる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、表記部は、着色されている中心着色部と、中心着色部の周囲を取り囲み、かつ中心着色部よりも照明光の反射率が高い色調の周囲着色部とからなり、立体表示部は、周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、表記部は、中心着色部と、この中心着色部の周囲を取り囲む周囲着色部からなり、立体表示部は、周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されているから、周囲着色部が台に見え、中心着色部が、台の上に乗っているように見えるため、一層、表記部が立体的に見える。
【0019】
請求項5に記載の発明では、立体表示部をなす窪みの平面方向の最大幅が、中心着色部の平面方向の最大幅の25%から75%の幅を有することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、立体表示部をなす窪みの最大幅が中心着色部の最大幅の少なくとも25%から75%の幅を有するから、立体表示部により充分に表記部を立体的に見せ、かつ傾斜面が充分に照明光を反射して、高級感のある表記部の指標としての表示が可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、立体表示部の傾斜面は、シボ加工されていることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、傾斜面にシボ加工されているから、傾斜面全体が輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、立体表示部の傾斜面が、表示板の裏面よりも表面粗さが細かい鏡面に形成されていることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、傾斜面に鏡面が形成されているから、傾斜面の輝きが強調され、傾斜面が強く輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、表示板の平面方向に対する傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されていることを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、平面方向に対する傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されているから、照明光が傾斜面で良好に反射して輝きが増し、見栄えを良くすることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明では、表示板の裏側に、表示板の平面方向に対して傾斜した傾斜面と垂直面を持った窪みからなる立体表示部を形成する工程、及び立体表示部が形成された表示板に対して、表示板の裏側から表示板の指標となる表記部を印刷し、表示板の裏側に印刷部を形成する工程を有することを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、表示板の裏側から表示板の指標となる表記部を印刷し、印刷部を形成するときに、立体表示部を形成する窪みの中に印刷部が入り込んでも、この印刷部が垂直面上に形成されるため、傾斜面を印刷部で覆うことがなく、傾斜面の輝きを損なうことにない車両用計器を製造することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明では、印刷部を形成する工程は、表示板の裏側に印刷版を押し付けることにより印刷し、印刷版を押し付けるときに、表示板の裏面側の開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、開口部内に配置し、インキ透過部をインキ不透過部の周囲に配置したことを特徴としている。
【0030】
この発明によれば、印刷版を押し付けるときに、表示板の裏面側の開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、開口部内に配置し、インキ透過部をインキ不透過部の周囲に配置したから、印刷版の位置が表示板に対してずれても、窪みと表示板の裏面との境目まで確実に印刷できる。また、印刷部が境目を越えて窪みの内部に浸入しても、印刷部が垂直面の表面に形成され、印刷部が傾斜部に形成されることがないから、傾斜面での照明光の反射を阻害しない車両用計器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用計器の正面図である。
【図2】図1に図示された表記部のうち、特に、「180」、「200」部分の拡大図である。
【図3】表示板に導光する照明手段を構成するLEDの配置を模式的に示す図2のF3−F3線に沿う一部断面斜視図である。
【図4】図1の表示板上の表記部「20」の寸法関係を説明する正面図である。
【図5】図4に示したF5−F5線に沿う断面を示し、特に立体表示部の寸法関係を説明する模式断面図である。
【図6】図6は、立体表示部をなす窪み内に印刷部が形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。
【図7】本発明の比較例を示すV字カット内に印刷部が形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。
【図8】表示板を射出成型するために使用する金型の表面における表記部の「20」に対応する部分を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明のその他の立体表示部の断面形状を示す模式断面図である。
【図10】従来の特許文献1の車両用計器を示す正面図である。
【図11】図10の矢印F11−F11線に沿う一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0033】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図6を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す車両用計器の正面図である。透明のアクリル樹脂から成る表示板1は、成型ダイヤルとも呼ばれ、図1紙面裏側に位置する裏面は平面形状である。表示板1の表面は、なだらかな曲面形状に成型されている。なお、表面の曲面形状は、必須のものではない。
【0034】
この表示板1は、特許文献1と同じく、目盛2が形成された表示板1のエッジ部3から照明光を表示板1内に導入するエッジライト照明によって照明される。表示板1上を指針4が回転して指針先端が表記部5をなす数字部を指し示すように構成されている。表示板1の裏側には、少なくとも表記部5を含む指標が印刷され、表記部5は、透明の表示板1を透かして表側から視認される。
【0035】
具体的には、表示板1の裏には、「0」、「20」、「40」から「180」、「200」までの、11箇所の数字の表記部5が形成されている。この表記部5には、立体的に見えるよう後述する立体表示部が設けられている。その立体表示部の形状に合わせて、表示板1のアクリル樹脂の裏面にV字状の溝または窪みからなる後述する窪み5b1(図3)が形成されている。
【0036】
図2は、図1に図示された表記部5のうち、特に、「180」、「200」部分の拡大図である。「180」、「200」といった表記部5は、表示板1の裏側に印刷され、数字自体を表す数字表記部5aを有する。また、この数字表記部5aの右側に略隣接して表記部5を立体的に見せる立体表示部5bを有している。この立体表示部5bは、表示板1の裏面側から表面側に凹んで形成された窪み5b1(図3)から成る。
【0037】
なお、表示板1の表側から見れば、立体表示部5bであり、表示板1の裏側から見れば、窪み5b1であり、立体表示部5bと窪み5b1とは同じものであるが、便宜上、立体表示部というときには5bの符号を付し、窪みというときには5b1の符号を付して説明する。
【0038】
図3は、表示板1に導光する照明手段を構成するLED8の配置を模式的に示す図2のF3−F3線に沿う一部断面斜視図である。表示板1のエッジ部3から矢印Y3等で示された照明光を表示板1の内部に導光し、この導光された照明光が、表示板1の裏面の表記部5等を印刷した印刷部1a、及び窪み5b1で反射する。
【0039】
図3は、窪み5b1での反射のみを示している。反射された照明光は、表示板1の表側から出て、車両の運転者の目に入ることにより、表記部5を立体的に視認可能としている。なお、図3において、表記部5は印刷部1a内に設けられているため、実際には表記部5は図3のようには見えないが、便宜上、対応関係を示して模式的に図3を図示している。
【0040】
窪み5b1は、表示板1の表側からは立体表示部5bとして見え、立体感を表記部5に与えている。窪み5b1は、表示板1の裏側に形成され、後述する傾斜面10(図3、図5)を有する窪みである。この一実施形態においては、傾斜面10は、印刷処理がされていないが、鏡面に仕上げることで夜間には部分的にキラっと発光し、指標が立体的に見え、非常に高級感も演出できる。
【0041】
なお、昼間のエッジライト照明がなされていないときは、外来光が窪み5b1に当たっても当たる方向によっては戻ってこないため、立体表示部5bは影として見える。夜間は、窪み5b1が、エッジライト照明の照明光を反射するため昼と夜とで見栄えを変えることができる、
図4は、図1の表示板1上の表記部「20」の寸法関係を説明する正面図である。図5は、図4に示したF5−F5線に沿う断面を示し、特に窪み5b1の寸法関係を説明する模式断面図である。図6は、窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版12で印刷する工程を示す説明図である。なお、図5においては、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0042】
図4において、数字表記部5aは、照明光が反射しにくい色調で着色された中心着色部5a1を有する。また、該中心着色部5a1の周囲を取り囲み中心着色部5a1よりも照明光が反射し易い、つまり、反射率の高い色調の周囲着色部5a2を有する。
【0043】
そして、立体表示部5bは、周囲着色部5a2の周囲の少なくとも一部に形成されている。また、立体表示部5bは、表示板1の左側方から仮想的に進入すると考えた矢印Y40にて示す光が表記部5に照射される側とは反対側に形成されている。これは立体感を表すためには、左側から光が当たり反対側に影ができるように描いたほうが立体的に見えるからである。
【0044】
更に、周囲着色部5a2の周囲の立体表示部5bが存在しない図4左側の表記部5の輪郭部分に、表記部5の輪郭を示す輪郭線5cが形成されている。また、図3において、LED8は、プリント基板9の上に実装されている。LED8からの照明光は、メータケース6の内壁で反射して、表示板1の中にエッジ部3から導入される。
【0045】
図4及び図5のBは、立体表示部5bともなる窪み5b1の最大幅であり、溝の最大幅に相当する。なお、この窪み5b1は、断面が三角形状のトンネル状である。また、図4のCは、数字表記部5aの構成要素である中心着色部5a1の最大幅である。窪み5b1の最大幅Bは、中心着色部5a1の最大幅Cの25%から75%、好ましくは40%から60%の範囲内に選定されている。
【0046】
次に、図4の文字「0」、あるいは、図1の表記部5内の文字のうち「4」と「6」と「8」と「9」のように、内部に中心着色部5a1によって閉じられた内周部5d(図4)を有する数字は、中心着色部5a1の内周部5d側に沿って形成され中心着色部5a1よりも照明光の反射率が高い色調の内周側周囲着色部5a21を有する。
【0047】
そして、内周側周囲着色部5a21の内周部5d側に、内周側立体表示部5b2が形成されている。但し、この内周側立体表示部5b2は、単なるデザイン上の陰影であり、窪み5b1相当の凹みは形成されていない。内周側立体表示部5b2の内周部5dを挟んだ反対側に内周側輪郭線5c1が形成されている。また、中心着色部5a1の外周に沿って形成され中心着色部5a1よりも照明光の反射率が高い色調の外周側周囲着色部5a22を有する。
【0048】
図5のように、表示板1内部には、矢印Y50にて代表するエッジライト照明による照明光が侵入している。表示板1の裏面の印刷部1aが設けられた平面部の平面方向に対して、θ1=44度の傾斜面10を対向して持った断面形状が二等辺三角形のV字状窪み部を窪み5b1が持っている。また、このV字状窪み部の図5下側には垂直面11を有する開口側窪み部を窪み5b1が持っている。
【0049】
傾斜面10は、印刷部1aが設けられた表示板1の裏側から表側に向かう方向に傾斜している。よって、傾斜面10が、照明光に対して反射面として作用し、矢印Y51等のように表示板1の表側から反射光が出て、運転者の目に入る。なお、この一実施形態では、表示板1の厚さTpは、3〜4mm、V字状窪み部の深さDは、0.3mmである。
【0050】
このV字状窪み部の深さDと垂直面11の深さH11の合計は、表示板1の表面の、不規則な意図しない模様の原因となる表示板1成形時のひけ、またはウエルドラインの発生防止を考慮して、表示板1の板厚Tp(Tp=3mm〜4mm)の30%程度までに抑えることが好ましい。従って、V字状窪み部の深さDと垂直面11の深さH11の合計は、0.3mmから1.0mmの範囲としている。Tjは、表示板1の窪み5b1の直上の板厚である。
【0051】
また、V字カット5b1の幅Bは0.62mmであり、その半分は0.31mmであるから、この場合の傾斜角をθ1とした場合、Tanθ1=0.3/0.31となり、傾斜角θ1は、44度となる。従って、窪み5b1のカット角θ2は、92度(180−2×44=92)となる。なお、照明光が良好に反射して、キラっと輝くために傾斜角θ1は、40度から50度の範囲が好ましい。なお、後述するように、傾斜面10にシボを施す場合は、この傾斜角θ1は、30度から60度の範囲内が好ましい。
【0052】
図6は、窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版12で印刷する工程を示す説明図である。図6のように文字板1の裏側には平面方向に延在する印刷部1aが形成されている。また、平面方向に対し垂直方向に立ち上がった垂直面11を有している。この垂直面11により、印刷部1aの印刷時に、印刷工程能力上、印刷がずれて印刷インキが窪み5b1内に入っても、印刷インキからなる印刷部1aが、垂直面11に張り付き、傾斜面10に印刷部1aが形成されないから、傾斜面10での照明光反射性能に悪影響を与えない。
【0053】
なお、単に、印刷部1aが傾斜面10に付着しないようにするだけなら、窪み5b1が存在するところに、マージンを取って避けて印刷すれば良いが、きれいな印刷面を確保するためには、窪み5b1以外は、確実に印刷することが望ましい。従って印刷がずれた場合においても、印刷の塗り残しが無いように、スクリーン印刷の印刷版12から出た印刷インキが窪み5b1内にオーバーラップするように印刷する。
【0054】
印刷版12は、多孔質の部材からなり印刷インキが透過するインキ透過部12a、12bと印刷インキが透過しないインキ不透過部12cとから構成されている。図6に示すように、上記オーバーラップ量OL1、OL2は、印刷ずれ工程能力と昼間の見栄えを考慮して、0.2mmに設定されている。
【0055】
印刷時には、印刷版12に対して文字板1の窪み5b1が地方向(図6の紙面上方が地方向)になるように文字板1を配置して行う。これにより、印刷時に印刷インキが窪み5b1に入り込むが、印刷インキは、垂直面11の部分に重力で矢印Y61、Y62のようにたれて止まり、垂直面11が、窪み5b1に入りこんだ印刷インキを溜める。窪み5b1に入り込む印刷インキの量を推定して、垂直面11の高さH11が設定されている。
【0056】
従って、印刷インキが傾斜面10までたれることは無いため、照明光の反射面積を確保することができる。これにより製品不良を低減して、生産性を確保できる。またθ31及びθ32は、成形型が容易に抜けるように設けたテーパの角度である。このように、垂直面11は、実質的に垂直であればよい。
【0057】
図7は、本発明の比較例を示す窪み5b1内に印刷部1aが形成されるように、印刷版で印刷する工程を示す説明図である。この図7の比較例では、垂直面11が無いために、矢印Y61及びY62のように垂れ下がった印刷インキが傾斜面10に付着し、その分、照明光を反射する効果が減少し、見栄えが低下する。
【0058】
図8は、表示板1を射出成型するために使用する金型12の表面の、表記部5の「20」に対応する部分を、模式的に示す斜視図である。図8の(a)部分は、金型12の表面の凸形状を示し、図8の(b)部分は、領域R8で示した部分の拡大図である。説明上の都合で、仮想的に表記部5の「20」が、金型12の表面に、二点鎖線で描かれている。この表記部5の「20」における立体表示部5bの窪み5b1に対応する部分が、山脈状に隆起した隆起部13a、13b、13cとして形成されている。
【0059】
この隆起部13a、13b、13cの高さH8が、図5のV字状窪み部の深さD=0.3mmと垂直面11の高さH11との合計に対応している。また、図8の隆起部13a、13b、13cの断面の三角形状の山の先端角θ13は、窪み5b1のカット角θ2(図5)に対応している。
【0060】
次に、一実施形態の車両用計器の作用効果および製造方法について説明する。図6のように、立体表示部5bは、表示板1の裏面側から表面側に窪み、表示板1の平面方向に対して傾斜した傾斜面10を持った窪み5b1から構成されている。かつ、この窪み5b1は、平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面11と該垂直面11の表示板1の表側に連続して形成された傾斜面10とから構成されている。
【0061】
表示板1のエッジ部を通して導入される照明光が、傾斜面10と印刷部1a内の表記部5とにより反射して、表示板1の表面側に向かうから、立体表示部5bによって表記部5が立体的に視認される。また、表示板1のエッジ部3(図3)を経由して表示板1の内部に導光された照明光が、傾斜面10に反射して、立体表示部5bが夜間において光って視認される。
【0062】
また、垂直面11(図6)が形成されているから、表記部5の印刷部1aが垂直面11を覆っても、窪み5b1の傾斜面10まで覆うことがなく、より確実に傾斜面10で照明光を反射することができる。また、エッジライト照明がなされないときは、立体表示部5bが外来光を飛散させる。これにより、昼と夜とで見栄えを変えることができると共に、表示板1に印刷された表記部5(図4)が立体表示部5bによって、立体的に見える車両用計器を提供することができる。
【0063】
次に、立体表示部5bは、仮想の光進入方向である表示板1の左側(図1下側)に対して、平面方向に表記部5を挟んで反対側に形成されているから、つまり立体表示部5bの影相当側に形成されているから、立体表示部5bにより表記部5が立体的に見え易い。次に、平面方向の表記部5を挟んで立体表示部5bとは反対側に、表記部5の外周側の輪郭を示す輪郭線5c(図4)が形成されているから、表記部5の輪郭が輪郭線5cと立体表示部5bとによって、一層明確になり、表記部5が立体的に見えて判読し易くなる。
【0064】
次に、表記部5は、中心着色部5a1と、この中心着色部5a1の周囲を取り囲む周囲着色部5a2からなり、立体表示部5bは、周囲着色部5a2の周囲の少なくとも一部に形成されているから、周囲着色部5a2が台に見え、中心着色部5a1が、台の上に乗っているように見えるため、一層、表記部5が立体的に見える。
【0065】
次に、立体表示部5bは、溝状の窪みからなり、溝の最大幅Bが中心着色部5a2の最大幅Cの少なくとも25%から75%の幅を有するから、立体表示部5bにより充分に立体的に見え、かつ傾斜面10が充分に反射して、高級感のある文字表示が可能となる。次に、傾斜面10にシボ加工した場合は、傾斜面10全体が輝いて立体的に表記部を視認させることができる。
【0066】
次に、傾斜面10に鏡面が形成されることにより、傾斜面10の輝きが強調され、傾斜面10が強く輝いて立体的に表記部を視認させることができる。また、平面方向に対する傾斜面の傾斜角θ1は、40度から50度の範囲に形成されているから、照明光が傾斜面10で良好に反射して輝きが増し、見栄えを良くすることができる。
【0067】
次に、立体表示部5bに対して、表示板1の裏側から表示板1の指標となる表記部5を印刷し、立体表示部5bの裏側に印刷部1aを形成するときに、立体表示部5bを形成する窪み5b1の中に印刷部1aが入り込んでも、この印刷部1aが垂直面11上に形成されるため、傾斜面10を印刷部1aで覆うことがなく、傾斜面10の輝きを損なうことにない車両用計器の製造方法を得ることができる。
【0068】
次に、製造方法について説明する。印刷部1aを形成する工程では、図6のように、表示板1の裏側に天方向から印刷版12を押し付けることによりスクリーン印刷する。印刷版12は、窪み5b1の幅よりも狭い幅のインキ不透過部12cと、該インキ不透過部12cの周りにおいて平面方向に延在するインキ透過部12a、12bとを有する。そのため、印刷版12の位置が表示板1に対してずれて、窪み5b1と表示板1の裏面との境目まで確実に印刷できる。
【0069】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。図9は、本発明のその他の窪み5b1の断面形状を示す模式断面図である。この図9に示すような、その他の窪み5b1の断面形状を持つものであっても良い。図9の(a)は、垂直面11の表示板1表側に不等辺三角形の断面形状部を持つものである。図11の(b)は、垂直面11の表示板1表側に台形状の断面形状部を持つものである。なお、図9においては、断面を示すハッチングは一部省略している。
【0070】
次に、窪み5b1内の傾斜面10に鏡面加工を施して鏡面を形成し、この鏡面で照明光を反射させることが望ましいが、単なる成型上のカット面とし、特別な鏡面として表面粗さを細かくしなくても良い。また、V字カット5b1の傾斜面10にシボを形成することで、夜間照明時、シボの全体が光り、全体が浮き出て見えて、また違った立体感を演出できる。
【0071】
また、印刷部1aを印刷した後に、窪み5b1の傾斜面10に、輝きのある印刷膜を形成するように、鏡面印刷してもよい。あるいは、マスキングしていない窪み5b1の内面に塗膜が付着するように鏡面インキによる塗装を施しても良い。このように、窪み5b1内の傾斜面10に、輝きのある鏡面印刷や、鏡面インキの塗膜を形成することで、傾斜面10の輝きが強調され、一層、立体的に表記部5を視認させることができる。また、照明光は、指標に対して上下左右どちら方向から表記部5に照射されても効果があるため、エッジライト照明と、表示板1の裏側から照明するバックライト照明を組み合わせても良い。
【0072】
また、指針4の先端から指針内部に導光された照明光が放射されるタイプの車両用計器に本発明を適用して、指針先端からの光により、指針4が指し示している表記部5での反射を強調するようにしても良い。また、照明光の色を表示中に変えても良い。
【0073】
また、窪み5b1に、反射させるための印刷やシボ加工がされていない場合は、形状によっては、窪み5b1を表から見た立体表示部5bを介して計器内部構造が見えてしまう。このため、傾斜面10の傾斜角θ1(図5)を、好ましくは、35度〜45度に設定すれば、照明光を全反射させて、内部構造を隠蔽できる効果がある。また、速度計(スピードメータ)のみでなく、エンジン回転計(タコメータ)、燃料系等、その他の計器にも、採用することができる。
【0074】
また、傾斜面は、テーパ面でなく、なだらかな曲面でも良い。また、表記部として数字部を使用した実施形態を示したが、EやFといった数字ではない表記部を指針が指し示す計器に本発明を使用することもできる。更に、指針は無くても良く、指標の位置を指示する複数の発光ダイオードの点灯位置の推移で指針の代用としても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 表示板
1a 印刷部
2 目盛
3 エッジ部
4 指針
5 表記部
5a 数字表記部
5a1 中心着色部
5a2 周囲着色部
5a21 内周側周囲着色部
5a22 外周側周囲着色部
5b 立体表示部
5b1 窪み
5b2 内周側立体表示部
5c 輪郭線
5d 内周部
10 傾斜面
11 垂直面
B 窪み5b1の最大幅
C 中心着色部5aの最大幅
θ1 傾斜角
θ2 カット角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示板の側方から前記表示板内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、
前記表示板の裏側に印刷され、指標となる表記部と、
前記表示板の裏側に設けられ、前記表記部を立体的に表示する立体表示部とを有し、
前記立体表示部は、前記表示板の裏面側から表面側に窪み、前記表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、前記平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と前記表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、前記垂直面の表側に形成された前記傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、
前記表示板のエッジ部を通して導入される前記照明光が、前記傾斜面と前記表記部とにより反射して、前記表示板の表面側に向かうことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、前記平面方向に前記表記部を挟んで反対側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記平面方向の前記表記部を挟んで前記立体表示部とは反対側に、前記表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記表記部は、着色されている中心着色部と、前記中心着色部の周囲を取り囲み、かつ前記中心着色部よりも前記照明光の反射率が高い色調の周囲着色部とからなり、
前記立体表示部は、前記周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記立体表示部をなす前記窪みの前記平面方向の最大幅が、前記中心着色部の前記平面方向の最大幅の25%から75%の幅を有することを特徴とする請求項1なし4のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項6】
前記立体表示部の前記傾斜面は、シボ加工されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項7】
前記立体表示部の前記傾斜面が、前記表示板の裏面よりも表面粗さが細かい鏡面に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項8】
前記表示板の前記平面方向に対する前記傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの車両用計器を製造する方法であって、前記表示板の裏側に、前記表示板の平面方向に対して傾斜した前記傾斜面と前記垂直面を持った前記窪みからなる前記立体表示部を形成する工程、
前記立体表示部が形成された前記表示板に対して、前記表示板の裏側から前記表示板の指標となる表記部を印刷し、前記表示板の裏側に印刷部を形成する工程を有することを特徴とする車両用計器の製造方法。
【請求項10】
前記印刷部を形成する工程は、前記表示板の裏側に印刷版を押し付けることにより印刷し、
前記印刷版を押し付けるときに、前記表示板の裏面側の前記開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、前記開口部内に配置し、インキ透過部を前記インキ不透過部の周囲に配置したことを特徴とする請求項9に記載の車両用計器の製造方法。
【請求項1】
表示板の側方から前記表示板内に照明光を導入するエッジライト照明式の車両用計器であって、
前記表示板の裏側に印刷され、指標となる表記部と、
前記表示板の裏側に設けられ、前記表記部を立体的に表示する立体表示部とを有し、
前記立体表示部は、前記表示板の裏面側から表面側に窪み、前記表示板の平面方向に対して裏側から表側に向かって傾斜した傾斜面を持った窪みから成り、かつ該窪みは、前記平面方向に対して垂直方向に立ち上がった垂直面と前記表示板の裏面側の開口部とを有するに開口側窪み部と、前記垂直面の表側に形成された前記傾斜面を有する断面V字状のV字状窪み部とから構成され、
前記表示板のエッジ部を通して導入される前記照明光が、前記傾斜面と前記表記部とにより反射して、前記表示板の表面側に向かうことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記立体表示部は、表示板の左右いずれかの側に対して、前記平面方向に前記表記部を挟んで反対側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記平面方向の前記表記部を挟んで前記立体表示部とは反対側に、前記表記部の輪郭を示す輪郭線が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記表記部は、着色されている中心着色部と、前記中心着色部の周囲を取り囲み、かつ前記中心着色部よりも前記照明光の反射率が高い色調の周囲着色部とからなり、
前記立体表示部は、前記周囲着色部の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記立体表示部をなす前記窪みの前記平面方向の最大幅が、前記中心着色部の前記平面方向の最大幅の25%から75%の幅を有することを特徴とする請求項1なし4のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項6】
前記立体表示部の前記傾斜面は、シボ加工されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項7】
前記立体表示部の前記傾斜面が、前記表示板の裏面よりも表面粗さが細かい鏡面に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項8】
前記表示板の前記平面方向に対する前記傾斜面の傾斜角は、40度から50度の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの車両用計器を製造する方法であって、前記表示板の裏側に、前記表示板の平面方向に対して傾斜した前記傾斜面と前記垂直面を持った前記窪みからなる前記立体表示部を形成する工程、
前記立体表示部が形成された前記表示板に対して、前記表示板の裏側から前記表示板の指標となる表記部を印刷し、前記表示板の裏側に印刷部を形成する工程を有することを特徴とする車両用計器の製造方法。
【請求項10】
前記印刷部を形成する工程は、前記表示板の裏側に印刷版を押し付けることにより印刷し、
前記印刷版を押し付けるときに、前記表示板の裏面側の前記開口部の開口幅よりも狭い幅のインキ不透過部を、前記開口部内に配置し、インキ透過部を前記インキ不透過部の周囲に配置したことを特徴とする請求項9に記載の車両用計器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−112830(P2012−112830A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262635(P2010−262635)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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