説明

車両用計器

【課題】車両の走行中に運転者がトリップメータや平均燃費等の表示情報の初期化を規制し、規制されたことを運転者に報知することで、運転者が走行中に長押し操作することを抑制し、運転の安全性に寄与する車両用計器を提供する。
【解決手段】制御手段が、車両の走行状態を示す車両情報に基づき、車両が走行中と判断したとき、走行距離等の表示情報を初期化するリセット操作(S1)を規制する規制処理(S4)を有し、この規制処理(S4)が実行されたとき、規制処理が実行されたことを自車両の乗員に報知する報知手段を備える(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の速度等を表示するメータ装置において、車両の全走行距離を表すオドメータや、車両の走行距離を表すトリップメータを表示し、任意に走行距離をリセット可能な車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度等を表示する車両用計器は、速度を表すスピードメータやエンジンの回転数を表すタコメータの他に、車両の全走行距離を示すオドメータや車両の乗員が任意にリセット可能な走行距離を示すトリップメータ等を表示する。
【0003】
さらに、時計表示、外気温表示、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離等の様々な情報を車両用計器に表示することが求められているが、これらの表示をそれぞれメータ装置に表示すると、運転者にとって必要な情報を瞬時に認識することが困難になり、車両用計器に長い時間視線を奪われることで、運転者が運転操作に集中し難いという問題があった。そこで、特許文献1には、このような多様な車両情報のうち運転者の必要とする情報を切替えて液晶ディスプレイに表示することで、走行中、運転者が瞬時に車両情報を得ることでき、車両用計器に視線が奪われる時間を短縮することができる車両用表示装置が開示されている。
【0004】
また、トリップメータや平均燃費などを有する車両用計器は、液晶ディスプレイに表示する内容を切替えるセレクトスイッチを有しており、このセレクトスイッチを押圧操作(例えば0.1秒以上2秒未満押す)することにより表示ディスプレイに表示する内容を切替えることができる。また、従来より、このセレクトスイッチを長押しする(例えば2秒以上押す)ことにより、トリップメータや平均燃費等の値をリセットできる車両用計器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−20508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような車両用計器にあっては、トリップメータや平均燃費等の値をリセットするために、スイッチを長押ししている間(押圧操作を行う数秒間)、運転者が運転操作に集中し難いという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述の課題を鑑みて、車両の走行中に運転者がトリップメータや平均燃費等の値をリセットする為のスイッチの長押し操作を規制し、走行中にリセット操作が出来ないことを運転者に報知することで、運転者が走行中に長押し操作をすることを抑制し、運転の安全性に寄与する車両用計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した課題を解決するため、請求項1では、自車両の表示情報を表示する表示部と、前記表示情報をリセットする初期化手段と、を備えた車両用計器において、車両の走行状態を示す車両情報に基づき、前記初期化手段を規制する規制手段と、前記帰零操作が規制されていることを自車両の乗員に報知する報知手段と、を備えるものである。
【0009】
また、請求項2では、前記報知手段は、音声により報知するものである。
【0010】
また、請求項3では、前記報知手段は、前記表示部を点滅表示させるものである。
【0011】
また、請求項4では、前記報知手段は、前記表示部に表示された前記走行距離のみを点滅表示させるものである。
【0012】
また、請求項5では、前記報知手段は、前記表示板に文字で表示させることで報知するものである。
【0013】
また、請求項6では、前記表示部の表示を切替える表示切替手段を備え、前記表示切替手段により表示切替えを行ったとき、前記初期化手段が規制されていることを報知する音声と異なる音調で前記表示部の表示切替えを報知するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、車両走行中に運転者がトリップメータや平均燃費等の表示情報をリセットする為に操作部の長押し操作を規制し、走行中に初期化操作が出来ないことを運転者に報知することで、運転者が走行中に操作部の長押し操作をすることを抑制し、運転の安全性に寄与する車両用計器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の車両用計器の構成を示すブロック図
【図2】上記実施形態の車両用計器の正面図
【図3】上記実施形態の表示部の表示切替え例
【図4】上記実施形態のリセット操作時の表示例
【図5】上記実施形態のリセット操作のフローチャート図
【図6】本発明の第2、第3、第4実施形態の報知処理例
【図7】本発明の第5実施形態の報知処理例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、一実施形態に係わる車両用計器について説明する。
図1は、車両用計器の電気的な構成を示す図であり、車両用計器100は、表示部1と、制御手段2と、スピードメータ3と、タコメータ4と、操作部5と、を備える。この場合、車両用計器100は、表示部1、スピードメータ3、タコメータ4の表示部分と、操作部5の操作部分とが、車両のステアリングを介して臨むことができるように運転席に対向するインストルメントパネルに配置される。
【0017】
表示部1は、例えばドットマトリクス式の液晶パネルや有機ELパネルなど画像表示可能な表示パネルからなり、図示しない駆動ドライバや配線を介して制御手段2と接続され、制御手段2からの制御信号に基づいて、例えばシフトポジション、オド表示、残燃料量、トリップメータ、時計表示、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離、外部温度等からなる車両表示やシートベルト警報、給油警報、ドア警報、バッテリ警報等からなる警報表示を画像表示する。
【0018】
制御手段2は、マイクロコンピュータから構成され、車速や走行距離を求めるためのプログラムを記憶するROM21、前記プログラムを実行するCPU22、演算結果やデータを一時的に記憶するRAM23、車両側の電気制御を行う車両用ECU(図示しない)から出力される車両の走行速度,エンジンの回転数,残燃料等の車両情報60を入力するためのインターフェース回路24等を有している。
【0019】
スピードメータ3と、オドメータ4は、図2に示すようにモータを駆動源として回動する指針と、この指針の指示対象となる目盛りなどの指標部を設けたアナログ式計器である。制御手段2は、車両ECUから出力された車両情報60に基づいて、計測された車速とエンジン回転数をそれぞれ指示表示するように促す指針制御信号を、該駆動源に出力させて、運転者に車速情報、エンジン回転数情報を表示させる。
【0020】
操作部5は、図2に示すように、表示部1の近傍に配設されており、運転者の押圧操作により操作信号が制御手段2に出力され、制御手段2がこの操作信号を検知することで、表示部1の表示内容は切替えられる(表示切替操作(表示切替手段)S0)。例えば、図3に示すように、操作部5で表示切替操作S0を実行すると、オド表示、トリップ表示A0、外部温度表示、航続可能距離A1、平均燃費A2、瞬間燃費A3、燃料計A4等に表示内容が切り替わる。
【0021】
また、トリップ表示A0、平均燃費A2等の表示情報は、図4のように、運転者が任意でリセット可能である。このリセット操作(初期化手段)S1は、操作部5を長押し(例えば2秒以上)することで行うことができる。例えば、トリップ表示A0時に、リセット操作S1を行うと、走行距離がリセットされ、平均燃費A2表示時に、リセット操作S1を行うと、平均燃費がリセットされる。また、走行距離や平均燃費などが表示されていない時でも、リセット操作S1を行うと走行距離等がリセットされるようなプログラムを制御手段2に設定してもよい。
【0022】
次に、車両が走行中にリセット操作S1を規制する規制処理(規制手段)について図5、6を用いて説明する。車速センサ(図示しない)により測定された速度が車両情報60として車両ECUから制御手段2に出力される。制御手段2は、車両情報60により車両が停止しているか、走行中であるかを判断する。(ステップS2)
制御手段2が、車両が停止していると判断した場合、走行距離等の表示情報がリセットされる。(ステップS3)
制御手段2が、車両が走行中であると判断した場合、リセット操作S1を行っても表示情報がリセットされないように規制処理を実行する。(ステップS4)
規制処理(ステップS4)が実行されたとき、規制処理S4がはたらいていることを、運転者に報知する報知処理(報知手段)が実行される。(ステップS5)
【0023】
本発明の第1実施形態における報知手段は、スピーカーやブザー等の発音手段70の出力する音声にて運転者に報知する。出力される音声は、具体的に、例えば、スピーカーから出力される「走行中につき走行距離をリセットできません。」等の音声や、ブザーから出力される警告音等である。この場合、発音手段70は、車両用計器100に内蔵するものであり、この音の出力源の近傍に配置される操作部5との関連性を運転者に意識付けすることができるが、例えば、車載音響機器のスピーカーを用いることも考えられる。
【0024】
以上の構成からなる本発明の車両用計器は、
操作部5を用いて表示切替操作(押圧操作)することにより、表示部1の表示内容が切り替わる。
トリップ表示A0や平均燃費A2等の表示情報は、リセット操作S1(操作部5を長押し操作)により、リセットされる。
しかし、車両が走行中のとき、制御手段2はリセット操作S1で走行距離等の表示情報をリセットできないように規制する規制処理S4を実行する。斯かる構成により、車両走行中にリセット操作ができないことを車両運転者に経験的に認識させ、車両運転者が走行中に操作部5を長押し操作することを抑制し、より集中した運転操作を促すことができる。
また、リセット操作S1が規制されていることを発音手段70にて、運転者に報知することで、運転者がリセット操作をしたときに走行距離等の表示情報をリセットできないことによる違和感を軽減できるとともに、規制処理をより強く車両運転者に認識させることができる。
【0025】
これより、本実施形態の変形例について、図6、図7を参照して説明する。
【0026】
上記第1実施形態では、走行中のリセット操作を規制する規制処理S4を運転者に報知する報知手段S5は、音声によるものであったが、図6(a)のように表示部1を点滅させることにより、規制処理S4がはたらいたことを報知してもよい(S5a)。斯かる構成により、運転者がリセット操作をしたときにリセットできないことによる違和感を軽減できるとともに規制処理をより強く車両運転者に認識させることができる。(第2実施形態)
【0027】
また、報知処理S5は、図6(b)のようにトリップ表示を点滅させることにより、規制処理S4がはたらいたことを報知してもよい(S5b)。斯かる構成により、運転者がリセット操作をしたときにリセットできないことによる違和感を軽減できるとともに規制処理をより強く車両運転者に認識させることができる。(第3実施形態)
【0028】
また、報知処理S5は、図6(c)に示すように表示部1を文字表示に切替えることで運転者に報知してもよい(S5c)。文字表示は、具体的に、例えば「走行中につきリセットできません」等である。運転者がリセット操作をしたときにリセットできないことによる違和感を軽減できるとともに規制処理をより強く車両運転者に認識させることができる。(第4実施形態)また、上述した音声によって報知することで、リセット操作できない原因を認識できる。
【0029】
また、規制処理S4が実行されたとき、発音手段70が発生させる音声を規制音声Aとすると、図7に示したように、表示切替操作S0が実行されたとき音声出力手段70は、規制音声Aとは異なる音調(音の大きさ、音の高さ、音の長さ、音声の内容等が異なる)の切替音声Bを出力する。切替音声Bは切替える表示(平均燃費表示、燃料計表示等)により音声をそれぞれ異なるものに設定してもよい。斯かる構成により、表示切替操作が実行されたのか、規制処理が実行されたのかを音調により区別でき、規制処理をより強く車両運転者に認識させることができる。(第5実施形態)
【0030】
なお、規制処理が実行された場合に、制御手段2は、車両情報60により車両が停止したことを判断し、規制解除した旨を表示部1に報知させる(規制解除報知処理)。規制解除報知処理は、具体的に例えば、車両が停止したことを発音手段70により、「車両が停止しました。走行距離をリセットしますか?」等の音声や、ブザーによる警告音を出力する。また、規制解除報知処理は、表示部1に「走行距離をリセットしますか?」等の文字表示を行う。斯かる構成により、運転者は、規制処理を行ったが走行中につきリセット操作できなかった後に、車両が停車しリセット操作が可能であることを認識でき、停車中にリセット操作を忘れずに行うことができる。(第6実施形態)
【符号の説明】
【0031】
100 車両用計器
1 表示部
2 制御手段
3 スピードメータ
4 オドメータ
5 操作部
21 ROM
22 CPU
23 RAM
24 I/F
60 車両情報
A0 トリップ表示
A2 平均燃費
S0 表示切替操作(表示切替手段)
S1 リセット操作(初期化操作)
S4 規制処理
S5 報知処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の表示情報を表示する表示部と、前記表示情報をリセットする初期化手段と、を備えた車両用計器において、車両の走行状態を示す車両情報に基づき、前記初期化手段を規制する規制手段と、前記帰零操作が規制されていることを自車両の乗員に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記報知手段は、音声により報知することを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記報知手段は、前記表示部を点滅表示させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記報知手段は、前記表示部に表示された前記走行距離のみを点滅表示させることを特徴とする請求項3に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記報知手段は、前記表示板に文字で表示させることで報知することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両用計器。
【請求項6】
前記表示部の表示を切替える表示切替手段を備え、前記表示切替手段により表示切替えを行ったとき、前記初期化手段が規制されていることを報知する音声と異なる音調で前記表示部の表示切替えを報知することを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の車両用計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166581(P2012−166581A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26638(P2011−26638)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】