説明

車両用運転姿勢調整装置及び車両用運転姿勢調整方法

【課題】運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる車両用運転姿勢調整装置を提供する。
【解決手段】車両用運転姿勢調整装置は、車両用シートを構成するシートバックの角度を変化させることによる運転者の姿勢快適性の調整と、車両用シートを構成するリフタを駆動してシートクッションの高さ及び角度を変化させることによる運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨をスイッチユニットを構成する性能選択スイッチによって運転者に提示し、運転者の姿勢快適性の調整を行った後に、視界の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに着座する運転者の姿勢を調整する車両用運転姿勢調整装置及び車両用運転姿勢調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートに着座する運転者の姿勢を調整する技術として、例えば特許文献1に記載された技術が提案されている。具体的には、この特許文献1には、シートバックを調整した後にシートスライダを調整する旨が開示されている。
【特許文献1】特開平8−164039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1に記載された従来の技術においては、先にシートスライダを調整してしまった場合には、後のリフタの調整後に手足の調整が崩れることから、再度シートスライダの調整を行う必要が生じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる車両用運転姿勢調整装置及び車両用運転姿勢調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる車両用運転姿勢調整装置は、車両用シートを構成するシートバックの角度を変化させることによって運転者の姿勢快適性を調整する姿勢快適性調整手段による運転者の姿勢快適性の調整と、車両用シートを構成するリフタを駆動してシートクッションの高さ及び角度を変化させることによって運転者の視界を調整する視界調整手段による運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨を調整手順提示手段によって運転者に提示し、姿勢快適性調整手段による運転者の姿勢快適性の調整を行った後に、視界調整手段による運転者の視界の調整を行うことで、上述の課題を解決する。
【0006】
また、本発明にかかる車両用運転姿勢調整方法は、車両用シートを構成するシートバックの角度を変化させることによって運転者の姿勢快適性を調整する姿勢快適性調整手段による運転者の姿勢快適性の調整と、車両用シートを構成するリフタを駆動してシートクッションの高さ及び角度を変化させることによって運転者の視界を調整する視界調整手段による運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨を運転者に提示し、姿勢快適性調整手段による運転者の姿勢快適性の調整を行った後に、視界調整手段による運転者の視界の調整を行うことで、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者の姿勢快適性の調整を行った後に、視界の調整を行うことから、運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態としての車両用運転姿勢調整装置について具体的に説明する。
【0009】
[第1実施形態]
[車両用運転姿勢調整装置の構成]
本発明の第1実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置は、少なくとも、上下方向に駆動可能なリフタと、前後方向に傾斜可能なシートバックと、前後方向に駆動可能なシートクッションと、前後方向に駆動可能なペダルとを備える車両に適用される。具体的には、車両用運転姿勢調整装置は、図1に示すような車両用シートに適用される。
【0010】
車両用シートは、シートクッション1と、シートバック3とからなる。これらシートクッション1及びシートバック3は、状態変更が可能なように構成されている。すなわち、シートクッション1は、その前側が前部リフタ17によってシートスライドレールアッパ21に支持されており、その後側が後部リフタ19によってシートスライドレールアッパ21に支持されている。
【0011】
前部リフタ17は、前部リフタモータ23と前部リフタアーム25とからなる。前部リフタモータ23は、シートスライドレールアッパ21に取り付けられている。前部リフタアーム25は、シートスライドレールアッパ21に回転自在に支持されるとともに、前部リフタモータ23に連動連結されている。前部リフタアーム25の上端は、シートクッション1側の前部リフタブラケット27に回転自在に支持されている。前部リフタブラケット27には、前部荷重センサ29が設けられている。したがって、前部荷重センサ29は、シートクッション1の下部の前側に設けられた構成となっている。
【0012】
後部リフタ19も、前部リフタ17と同一構成であり、後部リフタモータ31及び後部リフタアーム33からなる。後部リフタモータ31は、シートスライドレールアッパ21に取り付けられ、後部リフタアーム33の上部は、後部リフタブラケット35に支持されている。後部リフタブラケット35には、後部荷重センサ37が設けられている。したがって、シートクッション1の後部には、後部荷重センサ37を設けられることになる。
【0013】
なお、これら前部荷重センサ29及び後部荷重センサ37は、シートクッション1及びシートバック3に着座した運転者の荷重中心位置を検出する荷重中心検出手段として構成される。
【0014】
車両用シートは、前部リフタモータ23及び後部リフタモータ31を同時駆動又は別々に調整駆動することにより、シートクッション1の状態として、シートクッション角度及びシートクッション高さの状態変更が可能となっている。
【0015】
また、シートスライドレールアッパ21の後部には、シートバック支持アーム39が設けられている。シートバック支持アーム39には、シートバック3の下端が回転自在に支持されている。シートバック3の下部回転軸は、シートバック支持アーム39に取り付けられたシートバックモータ41に連動連結されている。したがって、車両用シートは、シートバックモータ41の駆動によってシートバック3がシートバック支持アーム39に対して回転し、シートバック3の状態としてシートバック角度の調整が行われる構成となっている。なお、シートバック3のシートバック角度は、シートバック角センサ43によって検出される。
【0016】
シートスライドレールアッパ21は、車体フロアFに取り付けられたシートスライドレールロア45に支持され、車体前後方向に移動調整ができるように構成されている。シートスライドレールアッパ21の前後移動は、シートスライドモータ47によって調整されるようになっている。また、シートスライドレールロア45に対するシートスライドレールアッパ21の前後位置、すなわち、車両用シートの前後位置は、スライドセンサ49によって検出される。
【0017】
前部リフタモータ23、後部リフタモータ31、及びシートバックモータ41は、コントローラ51によって制御される。コントローラ51は、シートクッション1及びシートバック3に着座した運転者の荷重中心位置が、当該運転者の体格に応じて予め定められた最適荷重中心位置となるように車両用シートの状態を変更させるべく、前部リフタモータ23、後部リフタモータ31、及びシートバックモータ41を制御する。
【0018】
また、シートバックモータ41及びシートスライドモータ47は、手動命令スイッチ53によって駆動命令できるように構成されている。
【0019】
さらに、コントローラ51には、ペダル踏込量検出センサ55によって検出された信号と、モードスイッチ57の信号が入力されるように構成されている。ペダル踏込量検出センサ55は、例えばアクセルペダルやブレーキペダルの踏込量を検出してコントローラ51に検出信号を供給する。モードスイッチ57は、通常モードであるかスポーツモードであるかの選択を運転者が行うために設けられるものであり、選択信号がコントローラ51に供給されるようになっている。なお、通常モードは、一般道の走行時における選択モードであり、スポーツモードは、例えば山道を走行する場合等のようにペダル踏込量が大きい場合に選択されるものである。
【0020】
車両用シートにおいては、このようなコントローラ51により、前部リフタモータ23、後部リフタモータ31、及びシートバックモータ41が制御され、上述したように、シートクッション1の高さ及び角度と、シートバック3の角度とが調整され、運転者の荷重中心位置が最適荷重中心位置となるように当該車両用シートの状態が変更される。車両用シートにおいては、このような調整により、運転者の腸腰筋等の股関節の屈筋群の筋力(筋負荷)が小さくなり、また、大腿部の圧迫感が減少して長時間走行時の筋疲労や大腿部のしびれ等を抑制し、運転者の著しい疲労軽減を図ることができる。なお、シートクッション1の高さ及び角度と、シートバック3の角度と、アクセルペダルやブレーキペダルの位置とは、手動命令スイッチ53による操作によって運転者の好みの状態に調整することもできる。
【0021】
車両用運転姿勢調整装置は、このような車両用シートに適用される。そして、車両用運転姿勢調整装置は、手動命令スイッチ53に相当するスイッチとして、図2に示すように、運転者の姿勢快適性、視界、ステアリング操作性(ステアリングチルトやステアリングテレスコ)、及びペダル操作性の調整をそれぞれ選択する4つのスイッチからなる性能選択スイッチSWAと、上方向及び前方向、又は、下方向及び後方向の2方向に調整方向を切り替える1つの駆動制御スイッチSWBとを有するスイッチユニットを備える。
【0022】
車両用運転姿勢調整装置においては、運転者が運転姿勢を調整しようとする際に、このようなスイッチユニットを使用し、性能選択スイッチSWAによって調整手順を運転者に提示する。なお、性能選択スイッチSWAには、運転者の理解を容易とするために、複数の性能の調整手順として、当該性能の調整手段としてのハードウェアの名称ではなく、当該性能の名称が提示されている。
【0023】
具体的には、車両用運転姿勢調整装置は、図3に示すような制御体系によって車両の駆動部を駆動し、運転者の姿勢の調整を図る。すなわち、車両用運転姿勢調整装置は、上述した4つのスイッチからなる性能選択スイッチSWAとして、姿勢快適性選択スイッチ101と、視界選択スイッチ102と、ステアリング操作性選択スイッチ103と、ペダル操作性選択スイッチ104とを備えるとともに、駆動制御スイッチSWBとして、駆動制御スイッチ105を備える。
【0024】
姿勢快適性選択スイッチ101は、車両用シートに着座した運転者の姿勢の快適性を調整するために設けられるスイッチであり、運転者が接触又は押下するのに応じて点滅動作を行う。車両用運転姿勢調整装置は、この姿勢快適性選択スイッチ101が接触又は押下されると、姿勢快適性調整モードに移行する。この姿勢快適性選択スイッチ101が接触又は押下された旨を示す操作信号は、選択スイッチ判断部106に供給される。
【0025】
視界選択スイッチ102は、車両用シートに着座した運転者の視界を調整するために設けられるスイッチであり、運転者が接触又は押下するのに応じて点滅動作を行う。車両用運転姿勢調整装置は、この視界選択スイッチ102が接触又は押下されると、視界調整モードに移行する。この視界選択スイッチ102が接触又は押下された旨を示す操作信号は、選択スイッチ判断部106に供給される。
【0026】
ステアリング操作性選択スイッチ103は、車両用シートに着座した運転者のステアリング操作性を調整するために設けられるスイッチであり、運転者が接触又は押下するのに応じて点滅動作を行う。車両用運転姿勢調整装置は、このステアリング操作性選択スイッチ103が接触又は押下されると、ステアリング操作性調整モードに移行する。このステアリング操作性選択スイッチ103が接触又は押下された旨を示す操作信号は、選択スイッチ判断部106に供給される。
【0027】
ペダル操作性選択スイッチ104は、車両用シートに着座した運転者のペダル操作性を調整するために設けられるスイッチであり、運転者が接触又は押下するのに応じて点滅動作を行う。車両用運転姿勢調整装置は、このペダル操作性選択スイッチ104が接触又は押下されると、ペダル操作性調整モードに移行する。このペダル操作性選択スイッチ104が接触又は押下された旨を示す操作信号は、選択スイッチ判断部106に供給される。
【0028】
駆動制御スイッチ105は、姿勢快適性調整モード、視界調整モード、ステアリング操作性調整モード、及びペダル操作性調整モードのそれぞれのモードに応じて、移動させるべき部材を、上方向及び前方向、又は、下方向及び後方向のいずれかに移動させるために設けられるスイッチである。この駆動制御スイッチ105が押下された旨を示す操作信号は、移動方向判断部107に供給される。
【0029】
また、車両用運転姿勢調整装置は、接触又は押下された姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104の内容を判断する選択スイッチ判断部106と、押下された駆動制御スイッチ105の内容を判断する移動方向判断部107と、接触又は押下されたスイッチを制御する選択スイッチ制御部108と、駆動内容を判断する駆動判断部109と、シートバック3の角度調整(リクライニング調整)を行う際に駆動すべき各部を制御するリクライニング駆動制御部110と、シートクッション1の高さ調整を行う際に駆動すべき各部を制御する上下リフタ駆動制御部112と、シートクッション1の位置調整を行う際に駆動すべき各部を制御するスライド駆動制御部114と、ペダルの位置調整を行う際に駆動すべき各部を制御するペダル駆動制御部116とを備える。
【0030】
選択スイッチ判断部106は、姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104からの操作信号に基づいて、これらスイッチのいずれが接触又は押下されたのかを判断する。選択スイッチ判断部106は、判断結果を示す情報を選択スイッチ制御部108に供給する。
【0031】
移動方向判断部107は、駆動制御スイッチ105からの操作信号に基づいて、上方向及び前方向、又は、下方向及び後方向のいずれの方向が調整方向(移動方向)として指示されたのかを判断する。移動方向判断部107は、判断結果を示す情報を選択スイッチ制御部108に供給する。
【0032】
選択スイッチ制御部108は、姿勢快適性調整モード、視界調整モード、ステアリング操作性調整モード、及びペダル操作性調整モードのいずれのモードであるかに応じて、各モードに対応する姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104を点滅動作させ、駆動制御スイッチ105によって設定可能な調整方向を制御する。また、選択スイッチ制御部108は、選択スイッチ判断部106による判断結果及び移動方向判断部107による判断結果を示す情報を駆動判断部109に供給する。
【0033】
駆動判断部109は、選択スイッチ制御部108から供給された、選択スイッチ判断部106による判断結果及び移動方向判断部107による判断結果を示す情報に基づいて、リクライニング駆動制御部110、上下リフタ駆動制御部112、スライド駆動制御部114、及びペダル駆動制御部116を制御する。
【0034】
リクライニング駆動制御部110は、姿勢快適性調整モードである場合に、駆動判断部109の制御のもとに、シートバック3の角度調整を行う際に駆動すべきシートバックモータ41等のリクライニング駆動手段111を制御して駆動させる。
【0035】
上下リフタ駆動制御部112は、視界調整モードである場合に、駆動判断部109の制御のもとに、シートクッション1の高さ調整を行う際に駆動すべき前部リフタモータ23や後部リフタモータ31等の上下リフタ駆動手段113を制御して駆動させる。
【0036】
スライド駆動制御部114は、ステアリング操作性調整モードである場合に、駆動判断部109の制御のもとに、シートクッション1の高さや前後方向の位置調整を行う際に駆動すべきシートスライドモータ47等のスライド駆動手段115を制御して駆動させる。
【0037】
ペダル駆動制御部116は、ペダル操作性調整モードである場合に、駆動判断部109の制御のもとに、ペダルの高さや前後方向の位置調整を行う際に駆動すべきアジャスタブルペダル等のペダル駆動手段117を制御して駆動させる。
【0038】
[車両用運転姿勢調整装置の動作]
このような車両用運転姿勢調整装置は、運転者の操作に応じて、姿勢快適性調整モード、視界調整モード、ステアリング操作性調整モード、及びペダル操作性調整モードの順序で自動的にモードを移行し、シートバック3の角度及び前後方向の位置、シートクッション1の高さ、角度及び前後方向の位置、並びに、ペダルの高さや前後方向の位置を調整する。具体的には、車両用運転姿勢調整装置は、以下のようにして各部の調整を行う。
【0039】
まず、車両用運転姿勢調整装置は、運転者がスイッチユニットを構成するスイッチのうち、いずれかのスイッチに接触すると、選択スイッチ制御部108の制御のもとに、姿勢快適性選択スイッチ101を点滅動作させ、姿勢快適性調整モードに移行する。
【0040】
車両用運転姿勢調整装置は、姿勢快適性調整モードに移行すると、運転者が駆動制御スイッチ105を操作するのに応じて、リクライニング駆動制御部110の制御のもとに、シートバック3の角度を変化させる。このとき、運転者は、自己の姿勢快適性が適したものとなるまで駆動制御スイッチ105を押下する。車両用運転姿勢調整装置は、押下された駆動制御スイッチ105の調整方向を移動方向判断部107によって判断し、その判断結果を示す情報をリクライニング駆動制御部110に指令として供給する。これに応じて、車両用運転姿勢調整装置は、リクライニング駆動制御部110の制御のもとに、シートバックモータ41等のリクライニング駆動手段111を制御して駆動させ、シートバック3の角度を変化させる。
【0041】
続いて、車両用運転姿勢調整装置は、リクライニング駆動手段111の駆動が停止してから予め定めた所定の時間経過後、選択スイッチ制御部108により、姿勢快適性の調整作業が完了したものと判断し、次の調整項目である視界調整モードに自動的に移行する。このとき、車両用運転姿勢調整装置は、選択スイッチ制御部108の制御のもとに、視界選択スイッチ102を点滅動作させ、視界調整を行う旨を運転者に報知する。
【0042】
車両用運転姿勢調整装置は、視界調整モードに移行すると、運転者が駆動制御スイッチ105を操作するのに応じて、上下リフタ駆動制御部112の制御のもとに、前部リフタ17及び後部リフタ19を駆動し、シートクッション1の高さ及び角度を変化させる。このとき、運転者は、自己の視界が適したものとなるまで駆動制御スイッチ105を押下する。車両用運転姿勢調整装置は、押下された駆動制御スイッチ105の調整方向を移動方向判断部107によって判断し、その判断結果を示す情報を上下リフタ駆動制御部112に指令として供給する。これに応じて、車両用運転姿勢調整装置は、上下リフタ駆動制御部112の制御のもとに、前部リフタモータ23や後部リフタモータ31等の上下リフタ駆動手段113を制御して駆動させ、シートクッション1の高さ及び角度を変化させる。
【0043】
続いて、車両用運転姿勢調整装置は、上下リフタ駆動手段113の駆動が停止してから予め定めた所定の時間経過後、選択スイッチ制御部108により、視界の調整作業が完了したものと判断し、次の調整項目であるステアリング操作性調整モードに自動的に移行する。このとき、車両用運転姿勢調整装置は、選択スイッチ制御部108の制御のもとに、ステアリング操作性選択スイッチ103を点滅動作させ、ステアリング操作性調整を行う旨を運転者に報知する。
【0044】
車両用運転姿勢調整装置は、ステアリング操作性調整モードに移行すると、運転者が駆動制御スイッチ105を操作するのに応じて、スライド駆動制御部114の制御のもとに、シートスライドレールアッパ21を駆動し、シートクッション1の高さや前後方向の位置を変化させ、ステアリングとシートクッション1に着座する運転者との相対的な高さ方向及び前後方向の距離を変化させる。このとき、運転者は、自己のステアリング操作性が適したものとなるまで駆動制御スイッチ105を押下する。車両用運転姿勢調整装置は、押下された駆動制御スイッチ105の調整方向を移動方向判断部107によって判断し、その判断結果を示す情報をスライド駆動制御部114に指令として供給する。これに応じて、車両用運転姿勢調整装置は、スライド駆動制御部114の制御のもとに、シートスライドモータ47等のスライド駆動手段115を制御して駆動させ、シートクッション1の前後方向の位置を変化させる。
【0045】
なお、ステアリング操作性の調整を行うためにシートクッション1の前後方向の位置を変化させるのは、車両にステアリングの調整機構が設けられていないためである。したがって、車両用運転姿勢調整装置は、ステアリングの調整機構が設けられている場合には、その調整機構を制御することになるのは勿論である。
【0046】
続いて、車両用運転姿勢調整装置は、スライド駆動手段115の駆動が停止してから予め定めた所定の時間経過後、選択スイッチ制御部108により、ステアリング操作性の調整作業が完了したものと判断し、次の調整項目であるペダル操作性調整モードに自動的に移行する。このとき、車両用運転姿勢調整装置は、選択スイッチ制御部108の制御のもとに、ペダル操作性選択スイッチ104を点滅動作させ、ペダル操作性調整を行う旨を運転者に報知する。
【0047】
車両用運転姿勢調整装置は、ペダル操作性調整モードに移行すると、運転者が駆動制御スイッチ105を操作するのに応じて、ペダル駆動制御部116の制御のもとに、ペダルの高さや前後方向の位置を変化させる。このとき、運転者は、自己のペダル操作性が適したものとなるまで駆動制御スイッチ105を押下する。車両用運転姿勢調整装置は、押下された駆動制御スイッチ105の調整方向を移動方向判断部107によって判断し、その判断結果を示す情報をペダル駆動制御部116に指令として供給する。これに応じて、車両用運転姿勢調整装置は、ペダル駆動制御部116の制御のもとに、ダッシュボードに取り付けられたアジャスタブルペダル等のペダル駆動手段117を制御して駆動させ、ペダルの高さや前後方向の位置を変化させる。
【0048】
続いて、車両用運転姿勢調整装置は、ペダル駆動手段117の駆動が停止してから予め定めた所定の時間経過後、選択スイッチ制御部108により、ペダル操作性の調整作業が完了したものと判断し、全ての調整が完了したとして一時待機モードに移行する。
【0049】
この後、車両用運転姿勢調整装置は、運転者が姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104のいずれかを押下した場合には、押下されたスイッチに対応する性能の微調整を行う。
【0050】
車両用運転姿勢調整装置は、このような一連の動作を行うことにより、運転者の姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性をそれぞれ調整することができる。このように、車両用運転姿勢調整装置においては、姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性の順序で運転姿勢の調整を行うことにより、運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる。特に、車両用運転姿勢調整装置においては、ステアリング操作性とペダル操作性とを分離して適切な順序で調整を行うことにより、姿勢快適性と視界の調整を行った結果、運転者がステアリングの近くに位置してぶら下がり気味となった姿勢を、ステアリングから離れた姿勢となるように適切に調整することができる。また、車両用運転姿勢調整装置においては、先に姿勢快適性の調整を行うことにより、他の運転にかかわる性能調整の影響を受けることなく、姿勢快適性の調整を行うことが可能となり、快適で疲労の少ないバランスのとれた運転姿勢に誘導することができる。
【0051】
ただし、姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性の順序での調整は、ステアリングの調整機構が設けられておらず且つペダルの前後方向の位置が調整可能である車両に適用可能なものである。車両用運転姿勢調整装置においては、ペダルの前後方向の位置調整ができず且つステアリングの前後方向の位置が調整可能である車両の場合には、姿勢快適性と視界との調整を行った後、シートクッション1の高さや前後方向の位置を調整することによってペダル操作性を調整し、その後ステアリング位置を調整することにより、同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、ここでは、電動の調整システムを用いた手順提示により、適正な運転姿勢に誘導するものとして説明したが、車両用運転姿勢調整装置においては、例えばナビゲーション画面を用いた誘導や音声による誘導を行うようにしてもよい。また、車両用運転姿勢調整装置においては、調整手順を運転者に提示できればよいことから、手動の調整システムにも適用することができるのはいうまでもない。
【0053】
[第1実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第1実施形態として示した車両用運転姿勢調整装置においては、車両用シートを構成するシートバック3の角度を変化させることによる運転者の姿勢快適性の調整と、車両用シートを構成する前部リフタ17及び後部リフタ19を駆動してシートクッション1の高さ及び角度を変化させることによる運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨をスイッチユニットを構成する性能選択スイッチSWAによって運転者に提示し、運転者の姿勢快適性の調整を行った後に、視界の調整を行う。
【0054】
これにより、この車両用運転姿勢調整装置においては、運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる。また、この車両用運転姿勢調整装置においては、先に姿勢快適性の調整を行うことにより、他の運転にかかわる性能調整の影響を受けることなく、姿勢快適性の調整を行うことが可能となり、快適で疲労の少ないバランスのとれた運転姿勢に誘導することができる。
【0055】
また、この車両用運転姿勢調整装置においては、予め定められた順序で複数の性能の調整手順を提示することから、最適な調整手順でのみ各性能の調整を行うことができる。
【0056】
さらに、この車両用運転姿勢調整装置においては、運転者の姿勢快適性の調整における調整方向と視界の調整における調整方向とを2方向のみの調整として提示することから、運転者が調整内容を明確に把握することが可能となる。
【0057】
さらにまた、この車両用運転姿勢調整装置においては、ステアリングチルトを含む運転者のステアリング操作性の調整機構が設けられた車両の場合には、運転者の視界の調整の後に、シートクッション1の高さ及び前後方向の位置を調整することによる運転者のペダル操作性の調整と、ステアリング操作性の調整機構によるステアリング操作性の調整とを、この順序で行う旨を運転者に提示する。この車両用運転姿勢調整装置においては、このようにステアリング操作性とペダル操作性とを分離して適切な順序で調整を行うことにより、姿勢快適性と視界の調整を行った結果、運転者がステアリングの近くに位置してぶら下がり気味となった姿勢を、ステアリングから離れた姿勢となるように適切に調整することができる。なお、この車両用運転姿勢調整装置においては、ステアリング操作性の調整機構がステアリングテレスコを含む場合には、ステアリングチルトとともにステアリングステレコの調整も同時に行うことができる。
【0058】
また、この車両用運転姿勢調整装置においては、アジャスタブルペダルを含む運転者のペダル操作性の調整機構が設けられた車両の場合には、運転者の視界の調整の後に、シートクッション1の高さ及び前後方向の位置を調整することによる運転者のステアリング操作性の調整と、ペダル操作性の調整機構によるペダル操作性の調整とを、この順序で行う旨を前記運転者に提示する。この車両用運転姿勢調整装置においては、このようにステアリング操作性とペダル操作性とを分離して適切な順序で調整を行うことにより、姿勢快適性と視界の調整を行った結果、運転者がステアリングの近くに位置してぶら下がり気味となった姿勢を、ステアリングから離れた姿勢となるように適切に調整することができる。
【0059】
さらに、この車両用運転姿勢調整装置においては、調整手順の提示手段として、運転者が操作可能な性能選択スイッチSWAとすることにより、ソフトウェア的に調整手順を自動的且つ適切に誘導することができる。
【0060】
さらにまた、この車両用運転姿勢調整装置においては、複数の性能の調整手順として、当該性能の調整手段としてのハードウェアの名称ではなく、当該性能の名称を提示することにより、運転者が調整手順を容易に理解することが可能となる。
【0061】
[第2実施形態]
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。
【0062】
この第2実施形態は、第1実施形態のように、ソフトウェア的に調整手順を誘導するのではなく、ハードウェア的に調整手順を誘導するものである。したがって、この第2実施形態においては、第1実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0063】
[車両用運転姿勢調整装置の構成及び動作]
本発明の第2実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置は、図4に示すように、先に図2を用いて説明した性能選択スイッチSWA及び駆動制御スイッチSWBからなるスイッチユニットの代わりに、調整レバーLVを備える。
【0064】
調整レバーLVは、図4中矢印Aで示すように、4段階に段階的に上下方向に移動可能に構成される。車両用運転姿勢調整装置においては、この調整レバーLVのノッチ位置により、姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104と同様に、姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性の調整手順を表す。
【0065】
また、調整レバーLVの先端には、図4中矢印Bで示すように回転可能なノブKNが設けられている。車両用運転姿勢調整装置においては、調整レバーLVを任意のノッチ位置に設定した上で、ノブKNを回転させることにより、姿勢快適性選択スイッチ101、視界選択スイッチ102、ステアリング操作性選択スイッチ103、及びペダル操作性選択スイッチ104のいずれかを操作したのと同様の動作を行う。
【0066】
すなわち、車両用運転姿勢調整装置においては、第1実施形態にて自動的に変化した調整すべき性能を、レバーLVのノッチ位置によって代用し、図4中矢印Aで示すように、上から順にレバーLVの位置を変えながら運転姿勢の調整を行う。したがって、調整レバーLVのノッチは、上から、姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性となる。
【0067】
このように、車両用運転姿勢調整装置は、調整レバーLVの位置を順次変化させ、ノブKNを回転させるのに応じて、運転者の姿勢快適性、視界、ステアリング操作性、及びペダル操作性をそれぞれ調整することができる。
【0068】
[第2実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第2実施形態として示した車両用運転姿勢調整装置においては、調整手順の提示手段として、運転者が操作可能な調整レバーLVとする。
【0069】
これにより、この車両用運転姿勢調整装置においては、第1実施形態ではソフトウェア的に自動送りされた性能選択が、運転者の操作によるノッチ位置移動に変更されるため、自動的に誘導されるわけではないが、調整レバーLVがハードウェアとして外在化していることから、順番に調整することが明確となり、運転姿勢を適正に誘導して再調整の手間をなくすことができる。
【0070】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはなく、この実施の形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置が適用される車両用シートの構成について示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置が備えるスイッチユニットの構成について示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置の制御体系の構成について示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態として示す車両用運転姿勢調整装置が備える調整レバーの構成について示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 シートクッション
3 シートバック
17 前部リフタ
19 後部リフタ
21 シートスライドレールアッパ
23 前部リフタモータ
25 前部リフタアーム
27 前部リフタブラケット
29 前部荷重センサ
31 後部リフタモータ
33 後部リフタアーム
35 後部リフタブラケット
37 後部荷重センサ
39 シートバック支持アーム
41 シートバックモータ
43 シートバック角センサ
45 シートスライドレールロア
47 スライドモータ
49 スライドセンサ
51 コントローラ
53 手動命令スイッチ
55 ペダル踏込量検出センサ
57 モードスイッチ
101 姿勢快適性選択スイッチ
102 視界選択スイッチ
103 ステアリング操作性選択スイッチ
104 ペダル操作性選択スイッチ
105 駆動制御スイッチ
106 選択スイッチ判断部
107 移動方向判断部
108 選択スイッチ制御部
109 駆動判断部
110 リクライニング駆動制御部
111 リクライニング駆動手段
112 上下リフタ駆動制御部
113 上下リフタ駆動手段
114 スライド駆動制御部
115 スライド駆動手段
116 ペダル駆動制御部
117 ペダル駆動手段
F 車体フロア
KN ノブ
LV 調整レバー
SWA 性能選択スイッチ
SWB 駆動制御スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに着座する運転者の姿勢を調整する車両用運転姿勢調整装置において、
前記車両用シートを構成するシートバックの角度を変化させることによって前記運転者の姿勢快適性を調整する姿勢快適性調整手段と、
前記車両用シートを構成するリフタを駆動してシートクッションの高さ及び角度を変化させることによって前記運転者の視界を調整する視界調整手段と、
前記姿勢快適性調整手段による前記運転者の姿勢快適性の調整と、前記視界調整手段による前記運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨を前記運転者に提示する調整手順提示手段とを備えること
を特徴とする車両用運転姿勢調整装置。
【請求項2】
前記調整手順提示手段は、予め定められた順序で複数の性能の調整手順を提示すること
を特徴とする請求項1記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項3】
前記調整手順提示手段は、前記姿勢快適性調整手段及び前記視界調整手段による調整方向を2方向のみの調整として提示すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項4】
ステアリングチルトを含む前記運転者のステアリング操作性の調整手段が設けられた車両の場合に、前記シートクッションの高さ及び前後方向の位置を調整することによって前記運転者のペダル操作性を調整するペダル操作性調整手段を備え、
前記調整手順提示手段は、前記視界調整手段による前記運転者の視界の調整の後に、前記ペダル操作性調整手段による前記運転者のペダル操作性の調整と、前記ステアリング操作性の調整手段による前記運転者のステアリング操作性の調整とを、この順序で行う旨を前記運転者に提示すること
を特徴とする請求項3記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項5】
前記ステアリング操作性の調整手段は、ステアリングテレスコを含むこと
を特徴とする請求項4記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項6】
アジャスタブルペダルを含む前記運転者のペダル操作性の調整手段が設けられた車両の場合に、前記シートクッションの高さ及び前後方向の位置を調整することによって前記運転者のステアリング操作性を調整するステアリング操作性調整手段を備え、
前記調整手順提示手段は、前記視界調整手段による前記運転者の視界の調整の後に、前記ステアリング操作性調整手段による前記運転者のステアリング操作性の調整と、前記ペダル操作性の調整手段による前記運転者のペダル操作性の調整とを、この順序で行う旨を前記運転者に提示すること
を特徴とする請求項3記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項7】
前記調整手順提示手段は、前記運転者が操作可能なスイッチであること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項8】
前記調整手順提示手段は、前記運転者が操作可能なレバーであること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項9】
前記調整手順提示手段は、複数の性能の調整手順として、当該性能の調整手段としてのハードウェアの名称ではなく、当該性能の名称を提示すること
を特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項記載の車両用運転姿勢調整装置。
【請求項10】
車両用シートに着座する運転者の姿勢を調整する車両用運転姿勢調整方法において、
前記車両用シートを構成するシートバックの角度を変化させることによって前記運転者の姿勢快適性を調整する姿勢快適性調整手段による前記運転者の姿勢快適性の調整と、前記車両用シートを構成するリフタを駆動してシートクッションの高さ及び角度を変化させることによって前記運転者の視界を調整する視界調整手段による前記運転者の視界の調整とを、この順序で行う旨を前記運転者に提示する調整手順提示工程と、
前記姿勢快適性調整手段による前記運転者の姿勢快適性の調整を行う姿勢快適性調整工程と、
前記視界調整手段による前記運転者の視界の調整を行う視界調整工程とを備えること
を特徴とする車両用運転姿勢調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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