説明

車両用運転支援装置

【課題】車両間通信により車両の位置情報に基づいて、他車に対する自車の走行についての運転支援情報を提供する車両用運転支援装置において、運転支援情報の見易さや認知性の向上を図る。
【解決手段】自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、自車及び他車間で位置情報の送受信を行い、位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムを搭載した車両であって、運転支援情報を表示する表示手段と、自車と他車の位置関係に基づいて前記表示手段の表示態様を制御する表示制御手段とを備えた車両用運転支援装置において、前記表示手段は、自車よりも前方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示する第1表示手段110と、第1表示手段110とは別体でバックミラー装置103に設けられ、自車よりも後方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示する第2表示手段120を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体同士で位置情報の送受信を行い、車両に対して位置情報に基づいた走行についての運転支援情報を提供する車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、車両後方の状況を認識するための車両ドアミラーの鏡面部内に、車両の走行に関わる道路交通情報を表示する情報表示部を設けた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−329640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、近距離無線を使用して車両間通信で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認する車車間通信システムが提案されている。
この車車間通信システムでは、例えば、他車からの車両間通信により、ウィンカ等の操作スイッチの作動情報や、他車の位置情報、速度、ヨーレート、横加速度等の車両走行状態の情報を受信することで、自車の周辺に存在する他車の走行状態及び相対位置、画像情報、道路状況や標識等の情報を警報・表示部に表示するものである。
【0005】
このような車車間通信システムを備えた車両においては、周囲の他車情報を素早く車両の運転者に認知させることが特に重要であるため、情報の見易さや認知性を向上させることが望まれる。
しかしながら、特許文献1に記載された構成のように、得られた情報の全てをミラーに設けられた情報表示部に表示する構成では、情報が表示されるたびに表示された内容を認識するために情報を注視しなければならないという課題がある。したがって、表示されている内容及び自車周囲の状態を把握するまでに時間がかかるだけでなく、その後の運転者の適切な処理も遅くなる可能性があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、車両間通信により車両の位置情報に基づいて、他車に対する自車の走行についての運転支援情報を提供する車両用運転支援装置において、運転支援情報の見易さや認知性の向上を可能とした車両用運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1は、自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムを搭載した車両であって、前記運転支援情報を表示する表示手段と、前記自車と他車の位置関係に基づいて前記表示手段の表示態様を制御する表示制御手段とを備えた車両用運転支援装置において、次の構成を含むことを特徴としている。
前記表示手段は、前記自車よりも前方位置に他車が存在する場合に前記運転支援情報を表示する第1表示手段(110)と、当該第1表示手段(110)とは別体で、且つ前記自車よりも後方位置に他車が存在する場合に前記運転支援情報を表示する第2表示手段(120)とを備える。
第2表示手段(120)は、車両後方を映すバックミラー装置(103)に設けられる。
【0008】
請求項2は、請求項1の車両用運転支援装置において、前記第1表示手段(110)は、前記第2表示手段(120)よりも車両前方、または車両後方にずらして設けられたことを特徴としている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は請求項2の車両用運転支援装置において、前記車両は、車両前部を覆うフロントカウル(100)と、前記フロントカウル(100)に取り付けられたメータ装置(101)と、前輪を転舵するとともに前記フロントカウル(100)に対して回動自在なバーハンドル(102)とを備える鞍乗型車両であって、前記バーハンドル(102)の左右に左ミラー及び右ミラーを設け、前記左ミラー及び右ミラーに前記第2表示手段(120)をそれぞれ設け、前記第1表示手段(110)が前記左ミラーと右ミラーの間で、且つ前記フロントカウル(100)又はメータ装置(101)に設けられたことを特徴としている。
【0010】
請求項4は、請求項3の車両用運転支援装置において、車両に乗車した運転者の正面視で、前記左ミラーと右ミラーとにそれぞれ設けた第2表示手段(120)間を結ぶ直線上に、前記第1表示手段(110)を配置することを特徴としている。
【0011】
請求項5は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置において、前記第1表示手段(110)及び第2表示手段(120)は、点灯表示が可能な灯体であることを特徴としている。
【0012】
請求項6は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置において、前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)を更に備え、当該運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、前記(A)段階においては、前記第1表示手段(110)及び第2表示手段(120)を全点灯させ、前記(B)段階においては、対象となる他車が存在する方向に対応した前記表示手段を点灯させることを特徴としている。
【0013】
請求項7は、請求項6の車両用運転支援装置において、方向を指定する方向指定操作手段(130)を更に備え、前記表示制御手段は、前記(A)段階においては、前記方向指定操作手段(130)が操作されて指定された方向に他車が存在する場合は、当該指定された方向に対応する前記表示手段を点灯することを特徴としている。
【0014】
請求項8は、請求項6または請求項7の車両用運転支援装置において、前記(B)段階において、前記方向指定操作手段(130)が操作された場合は、当該操作を無効とすることを特徴としている。
【0015】
請求項9は、請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置において、前記第2表示手段(120)は、点発光が可能な点発光部と、面発光が可能な面発光部とを備え、前記(A)段階においては前記点発光部を点灯させ、前記(B)段階においては前記点発光部及び面発光部を点灯させることを特徴としている。
【0016】
請求項10は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置において、前記バックミラー装置(103)は、鏡面部(302)と、一方側が車体に取り付けられるミラーステー部(301)と、当該ミラーステー部(301)の他方側に取り付けられるとともに前記鏡面部(302)を保持するハウジング部(303)を備え、
前記第2表示手段(120)は、前記ミラーステー部(301)またはハウジング部(302)に取り付けられるとともに、当該第2表示手段(120)と鏡面部(302)との間には、凸状の庇部(306)が設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1によれば、車車間通信によって、自車より後方位置に他車が存在することが分かった場合には、バックミラー装置に設けられた第2表示手段に運転支援情報を表示するので、車両の運転者は第2表示手段によって表示された情報が自車後方のものであるということを認知し易くなる上、当該情報を認知してから、実際にミラーで後方の状況を確認するのに、少ない視線の移動量で確認を行うことができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでを一連の動作で素早く行うことができる。
更に、自車後方に関連しない情報、例えば自車前方に関連する情報については、バックミラーに設けられた第2表示手段とは異なる場所に設けられた第1表示手段により確認することができ、表示された情報が自車前方のものであることを認知し易くなる。
【0018】
請求項2によれば、車両の前後方向で第1表示手段と第2表示手段とを明確に分離することができるので、自車前方の情報と自車後方の情報との区別がしやすくなる。特に、第1表示手段を第2表示手段よりも車両前方に設けた場合は、当該情報を認知してから、実際に前方の状況を確認するのに、少ない視線の移動量で確認を行うことができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでを一連の動作で素早く行うことができる。
【0019】
請求項3によれば、第2表示手段がバーハンドルの左右のミラーに設けられるので、ハンドルを切った状態であっても、左右いずれかの第2表示手段を運転者に近づけることができ、情報の認知が容易になる。更に、第1表示手段を左右ミラーに設けられる第2表示手段の間に設けたので、第1表示手段及び第2表示手段間の視線移動量も少なくすることができる。
【0020】
請求項4によれば、左右ミラーの第2表示手段間の最短距離上に第1表示手段を配置することができ、少ない視線移動で全ての表示手段を確認することができる。
【0021】
請求項5によれば、表示手段の点灯状態だけで自車周囲の情報を認知することができるので、表示手段を注視することなく、情報の認知から実際の状況を把握するまでの素早く行うことができる。
【0022】
請求項6によれば、表示手段の点灯状態だけで他車情報の緊急性を簡単に把握することができる。更に、緊急性の高い(B)段階における他車情報については、表示手段を注視することなく、素早く他車の存在する方向を認知することができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでの素早く行うことができる。
【0023】
請求項7によれば、全点灯がなされている(A)段階であったとしても、運転者が知りたい方向の他車情報を得ることができ、事前の認知が可能となる。
【0024】
請求項8によれば、(B)段階において、緊急性の高い情報を優先して運転者に知らせ続けることができ、表示情報の切り換わりを防止することができる。
【0025】
請求項9によれば、点灯の変化を運転者が素早く認知することができ、緊急性の変化に素早く対処することができる。
【0026】
請求項10によれば、第2表示手段の表示内容が鏡面部に映り込むのを防ぐことができる。したがって、第2表示手段と鏡面部とを近接配置する場合であっても、鏡面部への映り込みを防いで鏡面部での後方確認を容易に行うことができるので、第2表示手段で表示される情報を認知してから、実際にミラーで後方の状況を確認するのに、より一層少ない視線の移動量で確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の車両用運転支援装置が使用される運転支援システムの一例を示すブロック図である。
【図2】誤差発生領域記憶部に記憶された誤差地図の一例を示す図である。
【図3】電子地図データの一例を示す図である。
【図4】誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図5】車両位置データと直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図である。
【図6】車両位置データについて誤差大小によりエリア区分を説明する図である。
【図7】車両位置データについて縦方向誤差を考慮するための説明図であり、(a)は横方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(b)は縦方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(c)は車両速度グラフである。
【図8】縦方向の誤差を考慮した場合に加える誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図9】ジャイロセンサを使用してフィッティング直線を補正する場合の説明図であり、(a)は車両位置データと直線リンク、補正直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図、(b)はヨーク角度θ1の変化を示すグラフである。
【図10】運転支援システムにおける運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図11】運転支援システムにおける他の例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図12】運転支援システムの他の実施形態を示すブロック図である。
【図13】運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図14】本発明の車両用運転支援装置が搭載される二輪車の一部分を示す説明図である。
【図15】(a)(b)は車両用運転支援装置における第1表示装置及び第2表示装置の各表示部の点灯例を示す説明図である。
【図16】(a)(b)は車両用運転支援装置における第1表示装置及び第2表示装置の各表示部の点灯例を示す説明図である。
【図17】車両用運転支援装置における第1表示装置及び第2表示装置の各表示部の点灯処理手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の他例の車両用運転支援装置が搭載される二輪車の一部分を示す説明図である。
【図19】車両用運転支援装置における第2表示装置の発光部の例を示すもので、(a)は点発光している状況、(b)は面発光している状況を示す説明図である。
【図20】(a)(b)本発明の車両用運転支援装置における第2表示装置が一体的に設けられたバックミラー装置を示すもので、(a)は平面説明図、(b)はA−A´線断面説明図である。
【図21】図20における第2表示装置の平面説明図である。
【図22】バックミラー装置において第2表示装置を別体とした場合の構造説明図である。
【図23】(a)〜(c)本発明の車両用運転支援装置における第2表示装置が汎用バックミラーに装着された例を示すもので、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図、(c)はB−B´線断面説明図である。
【図24】汎用バックミラーに装着される第2表示装置の他例を示す断面構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
先ず、本発明の車両用運転支援装置が運用される運転支援システムの一例について、図面を参照しながら説明する。本発明の運転支援システムは、自車の通信エリア内に他車がいる場合、または、自車と他車(四輪車を含む)の離間距離が所定距離以下の場合に、近距離無線を使用して車両間通信(車車間通信)で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認することにより、自車の走行に際しての運転支援情報を提供するものである。
【0029】
以下、自車が二輪車である場合の運転支援システムについて説明する。
運転支援システムは、例えば図1に示すように、自車に対して運転支援装置1、無線通信機2、GPS受信機4及び各種のセンサ5、運転支援情報を出力する出力装置6、電子地図が格納された外部記憶装置7、運転支援に関する情報を管理する管理センター9との通信用の携帯電話8をそれぞれ設置し、他車3からの他車情報、GPS受信機4からの自車の緯度経度情報、各種のセンサ5から自車の走行情報をそれぞれ得ることで、これらの情報から出力装置6に対して運転支援情報を提供するよう構成されている。
【0030】
無線通信機2は、車車間通信により自車を中心として一定範囲となる通信範囲内を走行している他車3からの他車情報を得るものであり、例えば車車間通信の通信速度は、10Hz(1秒間に10回送信)で行われている。車車間通信の通信速度は、車速に応じて変化するようにしてもよい。他車情報としては、例えば車両の種類(二輪車、普通四輪車、大型四輪車等)、位置、速度、向きの情報が得られるようにする。
また、無線通信機2は、路車間通信により、光ビーコンやETC設置場所等の通過を受信することで渋滞情報を取得する。
【0031】
GPS受信機4は、自車の緯度・経度情報を受信する。
各種のセンサ5は、車速を検知する車速センサ等の各種センサやジャイロセンサにより、自車の車速、加速度、向き、傾き(二輪車の場合)、ブレーキ状態、ウィンカ状態等を検知する。
【0032】
出力装置6は、自車(車両)に搭載された音声出力用のスピーカ、ハンドルバー前方に装着されたメータ内やフロントスクリーン内側下部に設置されたインジケータ、シート付近に装着された振動子等から構成され、運転者(ライダー)が視覚や聴覚等により運転支援装置1により提供された他車情報を認識できるように構成されている。
【0033】
外部記憶装置7には、予め電子地図情報が格納されている。
管理センター9は、走行中の全ての車両情報を一括管理するもので、運転支援に関する情報として、地図上における位置情報についての誤差が発生しやすいエリアを記憶する誤差発生領域記憶部92を備えている。誤差発生領域記憶部92は、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶するものである。
また、管理センター9は、電子地図情報91を備えていても良い。この場合、管理センター9は、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信することで、誤差情報を集中管理する。管理センター9で管理される誤差情報は、携帯電話8との間の通信により運転支援装置1側に提供されるようになっている。
【0034】
運転支援装置1は、無線通信機2、GPS受信機4、センサ5からの情報が入力されることで自車の車両情報を把握する車両情報把握部10を備えている。車両情報把握部10は、現在位置判定部11と道路状況把握部12を有し、外部記録装置7の地図データベースからノード・リンク情報を取得し、現在位置判定部11は、GPS受信機4で得られた情報により、外部記憶装置7から取得した電子地図上における自車の現在位置を判定することで、自車の走行先に存在する交差点に対する現時点での自車の位置を把握することができる。
道路状況把握部12は、無線通信機2により路車間通信により、渋滞情報等の道路状況を把握する。
【0035】
また、運転支援装置1は、現在位置判定部11による自車の軌跡から取得情報の誤差レベルを判定する誤差レベル判定部13と、自車の走行領域に応じて運転支援情報の提供度合いを段階的に変化させる運転支援レベル判定部14と、運転支援情報の出力装置6へ提供を制御するHMI制御実行部15と、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部16を備えている。
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順の詳細については後述する。
【0036】
運転支援レベル判定部14による運転支援レベルは、自車と他車との距離や速度に応じてHMI制御実行部15を介して出力装置6に情報提供されるもので、例えば、「情報提供」「注意喚起」、「警報」の三段階から構成されて、自車と他車間の距離が離れている場合には「情報提供」が、それよりも両者が近づいた場合(例えば、ある反応時間でブレーキを掛けられれば、停止できる限界位置)には「注意喚起」が、出会うまでに時間的な余裕がない場合(ブレーキを掛けるように指示しないと停止できない位置)には「警報」が発せられる。
【0037】
「情報提供」は、(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階であり、運転支援装置1で判断することなく、情報を提示するだけ(「通信エリア内に他車が存在する」程度の案内)であり、具体的には出力装置6によりインジケータ点灯等を行う。
【0038】
「注意喚起」は、(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階であり、運転支援装置1が判断するが、行動は指示しない。具体的には、出力装置6のインジケータにより何れの方向に存在するかが解る点灯を行う。ナビを持った車両では、画面上に他車の進行する向き表示する。
【0039】
「警報」は、(C)自車の行動を指示する段階であり、運転支援装置1が判断して出力装置6により音声等で行動(減速等)を指示する。尚、情報提供は、(C)をなくして(A)と(B)の二段階としてもよい。
【0040】
誤差発生領域記憶部92は、図2に示すように、数キロメートル四方の領域を1エリア(メッシュ)とし、複数エリアを結合した誤差地図(誤差エリアマップ)が記憶されている。各エリアの地図情報には、各道路の直線リンクAに対して道路幅方向に長さが異なる誤差レベル大エリア、誤差レベル中エリア、誤差レベル小エリア、誤差無しエリアがそれぞれ設定されている。各誤差エリアは、予め設定されている場所が記憶されるとともに、誤差レベル判定部13により新たな誤差エリアが確認された場合は、該当場所が記憶・更新される。
上述の例では、誤差発生領域記憶部92を管理センター9側に設置し、自車側に設置された携帯電話8との間の通信を介して誤差レベル判定部13に誤差情報が提供されるとともに、管理センター9側に新たな誤差情報を送信して誤差発生領域記憶部92における誤差情報の更新が行われる。
【0041】
また、管理センター9側の誤差発生領域記憶部92に代えて、運転支援装置1内に誤差発生領域記憶部16を設置するように構成してもよい。この場合、誤差レベル判定部13により新たに誤差領域が確認された場合は、自車の運転支援装置1内の誤差発生領域記憶部16でのみ情報が更新される。
【0042】
本発明の運転支援システムにおいては、誤差レベル判定部13に対して誤差発生領域記憶部92や誤差発生領域記憶部16から提供される位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、自車に対しての運転支援情報の提供度合いが所定以上となる運転支援情報を制限するようになっている。
すなわち、運転支援装置1において、位置情報の誤差が所定(例えば誤差レベル中)以上となる領域に自車が存在すると判断した場合は、出力装置6に対して、少なくとも上述した自車の行動を指示する「警報」に対応する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。(A)と(B)の二段階の場合は、(B)を禁止する。
【0043】
次に、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図3〜図6を参照しながら説明する。
外部記録装置7の地図データベースから取得される電子地図は、図3に示すように、直線道路の両端に存在するノード(端点)と、曲線道路の中心位置に間隔をおいて存在する補助ノード(形状補間点)を備えている。実際に車両が通行した場合に取得される車両位置のデータは、道路の周辺に高い建物が存在する等の状況により受信状況が異なることで誤差が生じ、ノードを結んだ線である直線リンクA上から外れることがある。
例えば、図3において、電子地図上で、車両の走行軌跡がXである場合に、車両が通行した際に取得される車両位置のデータは星印でプロットした位置となり、自車がビルや家等の影になる場所にいてGPS衛星との通信が行い難い場合については誤差が発生し易く、野原のように上方の見通しのよい箇所では誤差が少なくなる。
【0044】
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定は、図4のフローチャートに示すように、先ず、車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ51)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われ、取得したデータから地図上での近接するノードの位置を検出し、直線リンクAを作成する(ステップ52)。すなわち、図3に示すように、車両位置データ(星印)がプロットされた領域におけるノードOや補助ノードPを検出し、隣接するノード同士(補助ノードもノードとみなす)を直線で結ぶことで直線リンクAを作成する。
【0045】
続いて、1つの直線リンク分のGPSデータを車両位置データ(図5における複数の星印に対応するデータ)として記録する(ステップ53)。
複数の車両位置データ(星印)からフィッティング直線(近似直線)Bを作成する(ステップ54)。フィッティング直線Bは、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出することで行われる。
次に、直線リンクAとフィッティング直線Bの平行度をチェックし所定角度以内かを判断する(ステップ55)。
所定角度以内でない場合は、再度フィッティング直線を作成する(ステップ54)。
すなわち、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出し、その傾きとリンクの傾きを比較し、ある許容量を超えていたら、データ列を選択し直してフィッティング直線Bを作り直す。この場合、一番古い車両位置データ(GPSデータ)を1つ削除して再度フィッティング直線Bを作成し直すことが行われる。
【0046】
フィッティング直線Bの平行度が所定角度以内である場合(ステップ55)、各GPSデータとフィッティング直線Bまでの鉛直線距離Yを計算する(ステップ56)。
距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定を行う(ステップ57)。誤差の大きい区間の判定は、ある値(例えば、その区間の平均値)より大きい場合は、そのデータが入っている区間が誤差の大きくなる区間とする。また、この判定は距離Yの値により、「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」、「誤差無し」に分類される。
誤差が生じる区間(「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」)を直線リンクAに反映させ、誤差発生領域記憶部92(誤差発生記憶部16)の誤差地図(図2)の情報更新を行う(ステップ58)。
【0047】
誤差エリアの直線リンクAに沿った方向は、レベルが異なる場合の中点で区切る。例えば図6に示すように、直線リンクAに対して発生誤差が異なる車両位置データ(丸星印)が連続して存在する場合、誤差レベルが大きい車両位置データと、誤差レベルが小さい車両位置データとの中間位置(図6における縦線で表示)が、誤差エリアの境となる。
また、誤差エリアの横幅は、誤差量(距離Y)と同じにするか、誤差量+道路の片側幅で設定される。
【0048】
上述した例では、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図5に示したように、横方向の誤差のみを判定して処理したが、図7に示すように、横方向の誤差(図7(a))に対して、縦方向の誤差(図7(b))を考慮して判定してもよい。
1つの直線リンク分の車両位置データ(GPSデータ)において、図7(c)のように、ある程度速度がV0で一定の区間があった時、図7(b)における車両位置データのプロット位置は、直線リンクAの進行方向に対して等間隔に位置するはずである。等間隔にない場合は、縦方向において誤差が発生していると考えられる。図7では丸星印で示した二か所のデータについて、速度が略一定にも関わらず進行方向の間隔が等間隔でないので、縦方向の誤差が生じていると判断する。図7(b)の四角で囲まれた部分は、縦方向で誤差の大きそうなエリアを示している。
すなわち、図4のフローチャートの「距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定」ステップ57に続けて、図8のように、縦方向のデータの間隔に基づき、誤差の大きい区間の判定を行い(ステップ61)、「横及び縦両方に含まれる」若しくは、「横又は縦のどちらか含まれる」領域を区間として区切る(ステップ62)。
【0049】
また、誤差発生エリア設定における精度向上を図るため、図4のフローチャートにおいてフィッティング直線を作成する場合に(ステップ54)、ジャイロセンサから得たデータを使用してもよい。二輪車の場合、四輪車と異なり、道路幅を一杯に使って(例えば斜め方向に)走行する場合があり、車両の軌跡と道路に設定される直線リンクとの傾きが異なる可能性がある。このような場合に、車両に装着したジャイロセンサから方位の変化、すなわち走行軌跡の傾きを算出し直線リンクを補正し、補正した直線リンクとフィッティング直線との比較を行うようにする。
すなわち、図9に示すように、車両(二輪車)の実際の軌跡が、直線リンク内で変化した時は、そのヨー角度θ(方位角)をヨーレートジャイロセンサの値(ヨー角速度)を積分することで算出し(図9(b))、その角度変化分θ1を直線リンクAに加えた直線リンクA´を作成し(図9(a))、図4のフローチャートのステップ55において、この直線リンクA´とフィッティング直線との平行度を比較する。すなわち、直線リンクAに対するフィッティング直線の角度をθ2とし、(θ1−θ2)の絶対値が設定値αより小の場合は、フィッティングされたと判定する。
【0050】
次に、管理センター9と外部記憶装置7に電子地図データを備えている運転支援装置1の運転支援レベル判定部14による運転支援レベル設定の処理手順について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ21)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶装置7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0051】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ23)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ29)。次のリンクに切り替わった場合は、直前のリンクに対応する誤差地図の作成を完了し(ステップ24)、管理センター9に誤差地図または誤差レベル情報を送信する(ステップ25)。
【0052】
一方、現在位置を含む近傍のエリアに誤差地図があるかどうかを判断し(ステップ26)、ない場合には、管理センター9から近傍のメッシュの誤差地図を取得する(ステップ27)。
取得した誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ28)。すなわち、誤差地図(図2)における自車の位置が、誤差レベル大、誤差レベル中となる領域にある場合は、少なくとも上述した自車の行動を指示する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。
この実施例の場合、自車・他車がそれぞれ作成した誤差地図を共有することができ、誤差地図の精度も向上する。
【0053】
次に、外部記憶装置7に電子地図データを備えているが管理センター9が存在しない場合の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ31)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶銅値7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0054】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ33)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ36)。次のリンクに切り替わった場合は、直前のリンクに対応する誤差地図の作成を完了し更新する(ステップ34)。
一方、既に作成済の誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ35)。
この実施例の場合、自車のみが作成した誤差地図を使って、運転支援レベルの設定を行う。
【0055】
図12は、運転支援システムの他の例を示すもので、図1と同じ構成をとる部分については同一の符合を付している。
この例は、車両に外部記憶装置7を備えていないタイプであり、この場合、地図に関する情報は管理センター9で管理された電子地図91から取得するようになる。
また、誤差発生領域記憶部92及び誤差レベル判定部93についても管理センター9側に設置され、運転支援装置1側には、図1の誤差レベル判定部13に代えて誤差レベル取得部17を備えている。誤差レベル取得部17は、携帯電話8を介した通信により管理センター9の電子地図91及び誤差レベル判定部93から地図上での自車の位置の誤差レベルの情報を取得するものである。
【0056】
図12の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ41)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
管理センター9に対して自車の位置・方位情報をシステム時間(例えば0.5秒)毎に送信する(ステップ42)。
管理センター9から自車の位置についての誤差レベルを受信する(ステップ43)。
受信した誤差レベルに基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ44)。
この実施例の場合、管理センター9側で誤差情報の集中管理を行うことができる。
【0057】
次に、本発明の車両用運転支援装置の特徴的な構成部分である出力装置6についての具体例について、図14を参照しながら説明する。
出力装置6は、車両前部を覆うフロントカウル100と、フロントカウル100に取り付けられたメータ装置101と、前輪を転舵するとともにフロントカウル100に対して回動自在なバーハンドル102とを備える二輪車(鞍乗型車両)に搭載されている。
出力装置6は、二輪車のフロントカウル100内側に設置された第1表示装置110と、バーハンドル102の左右に設けられ車両後方を映す各バックミラー装置103のミラー基部104に設けられた第2表示装置120から構成されている。第1表示装置110は、前記左右のバックミラー装置103の間で、且つフロントカウル100又はメータ装置101に設けることで、自車よりも前方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示するものである。第2表示装置120は、第1表示装置110よりも後方に位置するようにバックミラー装置103のミラー基部104に設けられ、自車よりも後方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示するものである。
【0058】
第1表示装置110は、左右方向に細長い上側表示部111と、上側表示部111の下方に位置し3分割された下側表示部112L、112C,112Rとにより、面発光タイプのインジケータで構成されている。上側表示部111及び下側表示部112は、アレイ状に配列された複数のLEDから構成され、異なる色が表示可能に構成されている。上側表示部111は、上述した運転支援装置1において「誤差の大きいエリアに自車が位置する」場合に緑色に点灯するようになっている。3分割された下側表示部112は、運転支援装置1の車車間通信において提供された他車情報が表示され、「通信エリアに他車が存在する」情報提供(A)段階の場合においては、3分割された全ての下側表示部112L、112C,112Rが青色に点灯し、「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階においては、3分割された下側表示部112L、112C,112Rの内の他車が存在する方向(112L:左前方、112C:正面前方、又は、112R:右前方)のみ表示が青色に点灯するようになっている。
【0059】
バックミラー装置103のミラー基部104に設けられた第2表示部120は、内側に位置する面発光タイプの内側表示部121L(121R)と、外側に位置する面発光タイプの外側表示部122L(122R)とから構成されている。内側表示部121は、「誤差の大きいエリアに自車が位置する」場合に緑色に点灯し、上述した「通信エリアに他車が存在する」情報提供(A)段階の場合においては、左右の外側表示部122L,122Rが青色に点灯し、「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階においては、左右の外側表示部122の内の他車が存在する方向(122L:左後方、又は、122R:右後方)のみ表示が青色に点灯するようになっている。
第1表示装置110及び第2表示装置120における灯体の色は、他車から見られた時に停止灯や方向指示器の点灯と誤解されないように、赤や橙以外の色(この例の場合、緑色又は青色)が点灯するようにする。また、灯体の点滅もさせないようにする。
【0060】
また、ハンドルバー102の左位置におけるグリップ内側に位置するケース部131には、十字ボタンから構成される方向指定操作部130が設けられ、第1表示装置110において全ての下側表示部112(112L:左前方、112C:正面前方、112R:右前方)が点灯している場合に、十字ボタンの押圧部分により前後左右で「指定した方向に車両が存在するか」の確認を可能とし、それに応じて3分割された下側表示部112L、112C,112R(第1表示装置110)及び外側表示部122L,122R(第2表示装置120)の内の一つが点灯し他が消灯するようになっている。
方向指定操作部130を設けることで、第1表示装置110の下側表示部112(112L:左前方、112C:正面前方、112R:右前方)の全点灯がなされている情報提供(A)段階であったとしても、運転者が知りたい方向の他車情報を得ることができ、運転支援装置1による「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階が表示される前段階で、事前の認知が可能となる。
【0061】
次に、第1表示装置110及び第2表示装置120の具体的な点灯状況について、図15及び図16を参照して説明する。
例えば、図15(a)に示すように、第1表示装置110の上側表示部111及び第2表示装置120の内側表示部121L,121Rが緑色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、自車が誤差の大きいエリア内に位置していることを示している。
図15(b)に示すように、第1表示装置110の下側表示部112の全て(3分割された全ての下側表示部112L:左前方、112C:正面前方、112R:右前方)、及び、左右の外側表示部122L,122Rが青色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、「通信エリアに他車が存在する」情報提供(A)段階を意味する。
そして、「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階においては、第1表示装置110において3分割された下側表示部112L、112C,112Rの内の他車が存在する方向(112L:左前方、112C:正面前方、又は、112R:右前方)、又は、第2表示装置120の外側表示部122L,122Rの内の一つが点灯し他が消灯するようになっている。
例えば、前方正面方向に他車の存在を注意喚起する場合は、第1表示装置110における中央の下部表示部112Cのみが青色に点灯し(図16(a))、後方右方向に他車の存在を注意喚起する場合は、第2表示装置120における右側のバックミラー装置103における外側表示部122Rのみが青色に点灯する(図16(b))。
【0062】
上記構成によれば、車車間通信によって、自車より後方位置に他車が存在することが分かった場合には、バックミラー装置103に設けられた第2表示装置120に運転支援情報を表示するので、車両の運転者は第2表示装置120によって表示された情報が自車後方のものであるということを認知し易くなる。また、情報を認知してから、実際にバックミラー装置103で後方の状況を確認するのに、少ない視線の移動量で確認を行うことができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでを一連の動作で素早く行うことができる。
更に、自車後方に関連しない情報、例えば自車前方に関連する情報については、バックミラー装置103に設けられた第2表示装置120とは異なる場所に設けられた第1表示装置110により確認することができ、表示された情報が自車前方のものであることを認知し易くなる。
【0063】
第1表示装置110が第2表示装置120より車両前方に形成されることで、情報を認知してから実際に前方の状況を確認するのに、少ない視線の移動量で確認を行うことができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでを一連の動作で素早く行うことができる。
また、車両の前後方向で第1表示手段と第2表示手段とを明確に分離することができるので、自車前方の情報と自車後方の情報との区別がしやすくなる。
尚、第1表示装置110が第2表示装置120よりも車両後方に形成されていても良い。
【0064】
また、第2表示装置120がバーハンドル102の左右のバックミラー装置103の基部104に設けられるので、ハンドルを切った状態であっても、左右いずれかの第2表示装置120を運転者に近づけることができ、情報の認知が容易になる。更に、第1表示装置110を左右ミラーに設けられる第2表示装置120の間に設けたので、第1表示装置110及び第2表示装置120間の視線移動も少なくすることができる。
【0065】
また、「通信エリアに他車が存在する」情報提供(A)段階では第1表示装置110の下側表示部112L、112C,112Rを全部点灯させ、「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階では他車が存在する方向に対応した下側表示部112L、112C,112R又は第2表示装置120の外側表示部122L,122Rのいずれかが点灯するので、表示装置の点灯状態だけで他車情報の緊急性を簡単に把握することができる。更に、緊急性の高い(B)段階における他車情報については、表示手段を注視することなく、素早く他車の存在する方向を認知することができ、情報の認知から実際の状況を把握するまでの素早く行うことができる。
【0066】
次に、第1表示装置及び第2表示装置における各表示部の点灯処理手順について、図17のフローチャートを参照して説明する。
自車の位置情報について、誤差が大きい領域であるか否かを判断する(ステップ201)。
誤差が大きい領域である場合には、第1表示装置110の上部表示部111及び第2表示装置120の内側表示部121(これらを併せて誤差表示手段と呼ぶ)のLED(緑色)を点灯させる(ステップ202)。
誤差が大きい領域でない場合、誤差表示手段のLED(緑色)の消灯を確認し(ステップ203)、続いて他車の信号を受信の有無を判断する(ステップ204)。他車からの信号の受信がない場合、上述した誤差表示手段以外のLED(青色)を消灯させる(ステップ205)。
【0067】
提供段階が情報提供段階(A段階)であるか、注意喚起段階(B段階)であるかを判断する(ステップ206)。
情報提供段階(A段階)である場合、第1表示装置の3分割された各下部表示部及び第2の表示装置の外側表示部(併せて他車情報受信手段と呼ぶ)を全て点灯させる(ステップ207)。
次に、方向指定操作部のボタンが操作(ON)されたかどうかを判断する(ステップ208)。ボタンの操作(ON)があった場合、指定した方向に他車が存在するかどうかを判断する(ステップ209)。方向指定操作部のボタンは十字ボタンで構成されているため(a)上、(b)右(c)左(d)下の各方向が指定できるが、(a)上を指定した場合は前方左右を含む前方が、(b)右を指定した場合は右前方及び右後方が、(c)左を指定した場合は左前方及び左後方が、(d)下を指定した場合は後方左右方向の他車の存在を判断する。
【0068】
指定した方向に他車が存在する場合、当該指定した方向に対応する他車情報受信手段(第1表示装置110の3分割された各下部表示部111及び第2表示装置120の外側表示部122)のLEDのみを点灯する(ステップ210)。
指定した方向に他車が存在しない場合や、方向指定操作部130のボタン操作がない場合は、他車情報受信手段の全点灯を維持する。
【0069】
指定した方向に対応する他車情報受信手段のLEDのみを点灯後、方向指定操作部130のボタンが操作(OFF)を判断し(ステップ211)、OFFを確認して処理を終了する。すなわち、ボタンが操作されている間、LEDを点灯することとなる。
【0070】
注意喚起段階(B段階)である場合、第1表示装置110の3分割された各下部表示部111及び第2表示装置120の外側表示部122(他車情報受信手段)のLED(青色)の内、他車が存在する方向(正面前方、左前方、右前方、左後方、右後方)のLEDを点灯する(ステップ212)。
注意喚起段階(B段階)のフローにおいては、方向指定操作部130のボタン操作があった場合でもボタン操作を無効にする。したがって、注意喚起段階(B)段階においては、緊急性の高い情報を優先して運転者に知らせ続けることができ、表示情報の切り換わりを防止することができる。また、注意喚起されている状態であれば、運転者が自ら他車情報を取得する必要性もない。
【0071】
上述の例では、ステップ209において、指定した方向に他車が存在しない場合は、他車情報受信手段の全点灯を維持するようにしたが、LED点灯の態様を変化するようにしても良い。
尚、段落番号0039で説明した「警報」の運転支援を行う場合には、自車に搭載された音声出力用のスピーカ等を用いて、行動を指示するアナウンスを流す。
【0072】
図18は、二輪車に搭載された出力装置6の他の具体例について示すもので、図14と同様の構成を採る部分については同一符号を付している。
この例の場合、二輪車のフロントカウル100内側に設置された第1表示装置110と、バーハンドル102の左右に設けられ車両後方を映す各バックミラー装置103のミラー基部104に設けられた第2表示装置120に点発光タイプのインジケータを使用している。
すなわち、第1表示装置110は、前記左右のバックミラー装置103の間の略中央位置において車両メータ101の上方に設けた一対の光源で構成される中央表示部151C,152Cと、中央表示部151C,152Cに対して左右位置にそれぞれ一対の点光源(LED)が配置された右側表示部151R,152R、及び、左側表示部151L,152Lで構成され、図14の第1表示装置110と同様に、自車よりも前方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示する。中央表示部151C,右側表示部151R,左側表示部151Lは緑色LEDで、中央表示部152C,右側表示部152R,左側表示部152Lは青色LEDで構成されている。
【0073】
第2表示手段120は、第1表示装置110よりも後方に位置するように左右のバックミラー装置103の各ミラー基部104に一対の点光源(LED)161L,162L(、161R,162R)として設けられ、自車よりも後方位置に他車が存在する場合に運転支援情報を表示するものである。内側点光源161L(161R)は緑色LEDで、外側点光源162L(162R)は青色LEDで構成されている。
そして、第1表示装置110を構成する点光源と、第2表示装置120を構成する点光源とは、車両に乗車した運転者の正面視において水平方向に略一直線(点線上)に位置するように配置されている。
尚、具体的には、車両メータ101に設けられた151L、151C、151Rが車幅方向に略一直線に並ぶように車両メータ101に配設し、また、152L、152C、152Rも車幅方向に略一直線並ぶように車両メータ101に配設し、2つの直線が略並行となるのが望ましい。
【0074】
第1表示装置110及び第2表示装置120の点灯処理は、図14〜図16の例と同じであり、第1表示装置110の点光源を構成する各緑色LED151、及び、第2表示装置の点光源を構成する内側点光源(緑色LED)161は、自車が誤差の大きいエリア内に位置する際に点灯する。また、第1表示装置110の各点光源を構成する青色LED152は、その全てが点灯することで「通信エリアに他車が存在する」情報提供(A)段階を告知する。第1表示装置110及び第2表示装置120の各点光源を構成する青色LEDの内の一つが点灯する場合は、点灯した方向において「自車と位置関係が近い他車が存在する」注意喚起(B)段階を告知する。
【0075】
上記例の構成によれば、左右ミラーの第2表示装置120間の最短距離上に第1表示装置110を配置することができ、少ない視線移動で全ての表示手段を確認することができる。
また、表示装置をエリア(画像表示)ではなく点灯箇所として表示したので、点灯状態だけで自車周囲の情報を認知することができる。そのため、画像表示を注視することなく、情報の認知から実際の状況を把握するまでの素早く行うことができる。
【0076】
また、第2表示装置120について、図19に示すように、点発光が可能な点発光部125と、面発光が可能な面発光部126とを備えることで、情報提供(A)段階においては点発光部126を点灯させ(図19(a))、注意喚起(B)段階においては点発光部125及び面発光部126を点灯させる(図19(b))ようにしても良い。
この構成によれば、情報提供(A)段階と注意喚起(B)段階において、発光面積に大小の変化をつけることで、点灯の変化を運転者が素早く認知することができ、緊急性の変化に素早く対処することができる。
【0077】
上述した出力装置6における第2表示装置120は、バックミラー103の基部104に設けるようにしたが、第2表示装置をバックミラーの鏡面部に一体的に形成するようにしても良い。
例えば図20に示すように、ミラーステー部301を介してハンドルバー側に固定されるバックミラー装置において、鏡面部302が固定されるハウジング303内のミラーステー側に、LED基板304上に形成された面発光LED305を配置する。ハウジング303は、ミラーステー部301に対して可動することで後方視覚範囲を調整するようになっている。また、ハウジング303には鏡面部302に対して凸状となる庇部306を設けることで、面発光LED305による光が鏡面部302に入射しないようにしている。光が鏡面部302に入射することによる反射光の発生を防止するためである。面発光LED305へは、ハーネス307から電源電圧が供給されている。
また、庇部306の面発光LED305側の壁面を反射面とすることで、LEDの光を運転者の方へ反射させるようにしても良い。
また、図21に示すように、面発光LED305に代えて、LED基板304上に複数の点光源308を配置して第2表示装置120を形成してもよい。この例では、緑色光源308Gが1個に対して2個の青色光源308Bが配置されている。
更に、図22に示すように、L字状の庇部306をハウジング303とは別体で形成し、庇部306に折曲して連続する底面にLED基板304を配置するようにしてもよい。
【0078】
また、第2表示装置120について、汎用のバックミラーのミラーステー部301に固定可能なように構成しても良い。例えば、図23に示すように、ミラーステー部301に嵌合可能な溝部401を有するベース部材400の上側位置に、点発光LED403が装着されたLED基板402を固定し、レンズ404で覆うような構造とする。ベース部材400は、力を加えると変形可能な部材を用いることで、溝部401をミラーステー301に押し込んで固定することができる。
ベース部材400の一端側には庇部405が形成され、点発光LED403による光がミラー103の鏡面に入射しないようにし、第2表示装置120の光が鏡面部に映り込むのを防ぐことができる。したがって、第2表示装置120と鏡面部とを近接配置する場合であっても、鏡面部への映り込みを防いで鏡面部での後方確認を容易に行うことができるので、第2表示装置120で表示される情報を認知してから、実際にミラーで後方の状況を確認するのに、少ない視線の移動量で確認を行うことができる。
【0079】
図24は、汎用のバックミラーに装着可能な第2表示装置120の他例を示すものある。図23と同じ構成を採る部分については、同一符号を付している。この例では、第2表示装置120の点発光LED403と反対側にポジションやウィンカ等の点灯部503を設けている。すなわち、点発光LED403が配置されたベース部材400と、ポジションやウィンカ等の点灯部503がLED基板502上に配置されたベース部材500とでミラーステー部301を挟み、運転手側に点発光LED403が、車両前方側のウィンカ等の点灯部503が位置するようにボルト505を介して両者を固定するようになっている。ウィンカ等の点灯部503は、点発光LED403と同様にベース部材500に固定されるレンズ504で覆われている。
【符号の説明】
【0080】
1…運転支援装置、 2…無線通信機、 3…他車、 4…GPS受信機、 5…センサ、 6…出力装置、 7…外部記憶装置、 8…携帯電話、 9…管理センター、 10…車両情報把握部、 11…現在位置判定部、 12…道路状況把握部、 13…誤差レベル判定部、 14…運転支援レベル判定部、 15…HMI制御実行部、 16…誤差発生領域記憶部、 17…誤差レベル取得部、 70…表示装置、 71…上側表示部、 72…下側表示部、 91…電子地図、 92…誤差発生領域記憶部、 93…誤差レベル判定部、 100…フロントカウル、 101…メータ装置、 102…バーハンドル、 103…バックミラー装置、 104…ミラー基部、 110…第1表示装置(第1表示手段)、 111…上側表示部(緑色)、 112…下側表示部(青色)、 120…第2表示装置(第2表示手段)、 121…内側表示部(緑色)、 122…外側表示部(青色)、 125…点発光部、 126…面発光部、 130…方向指定操作部(方向指定操作手段)、 301…ミラーステー部、 302…鏡面部、 303…ハウジング部、 305…面発光LED、 306…庇部、 403…点発光LED、 406…庇部、 A…直線リンク、 B…フィッティング直線(近似直線)、 O…ノード、 P…補助ノード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムを搭載した車両であって、
前記運転支援情報を表示する表示手段と、
前記自車と他車の位置関係に基づいて前記表示手段の表示態様を制御する表示制御手段とを備えた車両用運転支援装置において、
前記表示手段は、
前記自車よりも前方位置に他車が存在する場合に前記運転支援情報を表示する第1表示手段(110)と、
当該第1表示手段(110)とは別体で、且つ前記自車よりも後方位置に他車が存在する場合に前記運転支援情報を表示する第2表示手段(120)とを備え、
当該第2表示手段(120)が、車両後方を映すバックミラー装置(103)に設けられる
ことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記第1表示手段(110)は、前記第2表示手段(120)よりも車両前方、または車両後方にずらして設けられた請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記車両は、
車両前部を覆うフロントカウル(100)と、
前記フロントカウル(100)に取り付けられたメータ装置(101)と、
前輪を転舵するとともに前記フロントカウル(100)に対して回動自在なバーハンドル(102)とを備える鞍乗型車両であって、
前記バーハンドル(102)の左右に左ミラー及び右ミラーを設け、前記左ミラー及び右ミラーに前記第2表示手段(120)をそれぞれ設け、
前記第1表示手段(110)が前記左ミラーと右ミラーの間で、且つ前記フロントカウル(100)又はメータ装置(101)に設けられた
請求項1又は請求項2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
車両に乗車した運転者の正面視で、前記左ミラーと右ミラーとにそれぞれ設けた第2表示手段(120)間を結ぶ直線上に、前記第1表示手段(110)を配置する請求項3に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記第1表示手段(110)及び第2表示手段(120)は、点灯表示が可能な灯体である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)を更に備え、
当該運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、
前記(A)段階においては、前記第1表示手段(110)及び第2表示手段(120)を全点灯させ、
前記(B)段階においては、対象となる他車が存在する方向に対応した前記表示手段を点灯させる
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項7】
方向を指定する方向指定操作手段(130)を更に備え、
前記表示制御手段は、
前記(A)段階においては、前記方向指定操作手段(130)が操作されて指定された方向に他車が存在する場合は、当該指定された方向に対応する前記表示手段を点灯する
請求項6に記載の車両用運転支援装置。
【請求項8】
前記(B)段階において、前記方向指定操作手段(130)が操作された場合は、当該操作を無効とする請求項6または請求項7に記載の車両用運転支援装置。
【請求項9】
前記第2表示手段(120)は、点発光が可能な点発光部(125)と、面発光が可能な面発光部(126)とを備え、
前記(A)段階においては前記点発光部(125)を点灯させ、前記(B)段階においては前記点発光部及び面発光部(126)を点灯させる請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。
【請求項10】
前記バックミラー装置(103)は、鏡面部(302)と、一方側が車体に取り付けられるミラーステー部(301)と、当該ミラーステー部(301)の他方側に取り付けられるとともに前記鏡面部(302)を保持するハウジング部(303)を備え、
前記第2表示手段(120)は、前記ミラーステー部(301)またはハウジング部(302)に取り付けられるとともに、当該第2表示手段(120)と鏡面部(302)との間には、凸状の庇部(306)が設けられた
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−164237(P2012−164237A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25494(P2011−25494)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】