説明

車両用障害物検出装置

【課題】路面をターゲットであると誤検知することを防止することができる車両用障害物検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】バンパ6裏面と車輪との間に設けられて、該バンパ6を透過して外方向に電波を送信することで障害物を検出するレーダ装置4を備えた車両用障害物検出装置であって、レーダ装置4の下部または下方には、レーダ装置4からの送信波の一部aがレーダ装置4の送信部とバンパ6裏面との間を通過して路面Bへ到達し、路面Bから帰来する路面到達波αにより生じる誤検知を防止する誤検知防止構造7が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパ裏面と車両との間に設けられたレーダ装置からの電波を、バンパを透過して外方向に送信することで障害物を検出するような車両用障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダを用いた車両用障害物検出装置では、検出対象となるターゲット車両(他車両)とターゲット車両以外の識別が極めて重要となる。
上述の識別を誤った場合には、ターゲット車両以外の物体をターゲット車両であると見なすことになり、結果的に誤警報や誤制御の要因となる。
【0003】
自車両周辺の他車両を障害物として検出する車両用障害物検出装置を例示すると、リヤバンパ前方のリヤエンドパネルにブラケットを介してレーダ装置を取付け、レーダ装置からの電波を、樹脂バンパを透過させて外方向に送信し、上記他車両を検出するように構成されている。
しかしながら、上記レーダ装置からの送信波の一部がリヤバンパ裏面で反射する等して、該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達した後、路面から帰来する反射波がレーダ装置の受信部に入力されると、本来ターゲット車両ではない路面を、ターゲット車両であると誤検出する問題点があった。
【0004】
このような誤検出を防止するためには、レーダ装置の送受信部をバンパ裏面に密着することが考えられるが、この場合、軽度の後突等によりバンパに外部衝撃力が付加されると、直ちにレーダ装置が故障、破損するので実用上、望ましくない。
【0005】
ところで、特許文献1には、バンパ裏面による反射損を低減するために、受信ビームに基づいてバンパからの反射損が最小となるように、送信ビームの基準周波数foを制御するレーダ装置が開示されているが、この特許文献1には上述の如き誤検知については全く開示されておらず、その示唆もない。
【0006】
また、特許文献2には、電波レーダと該電波レーダ後方に位置するラジエータファンとの間に、電波レーダから放射されるサイドローブが車両のボディに反射してラジエータファンに到達することを防止する遮蔽板または電波吸収材を設け、レーダの後方にラジエータファンがあっても、サイドローブでこれを検知することによるノイズフロアの上昇を防止して、安定したターゲット検知性能を得るように構成した電波レーダの取付け構造が開示されている。
しかしながら、該特許文献2には、レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する反射波による誤検知を如何に防止するかという課題について開示されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−317162号公報
【特許文献2】特開2004−101450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、レーダ装置の下部または下方に、該レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止構造を設けることで、路面をターゲットであると誤検知することを防止することができる車両用障害物検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両用障害物検出装置は、バンパ裏面と車両との間に設けられて、該バンパを透過して外方向に電波を送信することで障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置であって、上記レーダ装置の下部または下方には、該レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止構造が設けられたものである。
上述のレーダ装置の電波としては、マイクロ波やミリ波を使い、例えば、24GHzや76GHzの電波を用いてもよい。また、バンパとしては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いる。
上記構成によれば、レーダ装置の下部または下方に誤検知防止構造を設けたので、レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を、該誤検知防止構造にて防止することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止構造は、レーダ装置とバンパとの間を塞ぎ路面到達波をしゃ断する遮蔽板で構成されたものである。
上記構成によれば、誤検知防止構造を簡単な遮蔽板にて構成することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記遮蔽板は、そのバンパ側の端部がバンパ裏面に密着して設けられたものである。
上記構成によれば、遮蔽板端部の密着構造により、該遮蔽板による路面到達波の遮蔽性能向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記レーダ装置をバンパに取付ける取付け部材を備えたものである。
上記構成によれば、レーダ装置は取付け部材を介してバンパに取付けられるので、レーダ装置のがたつきが抑制され、車両走行時に異音が発生するのを防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記取付け部材は、バンパ上面に該取付け部材を係止する係止部を備えたものである。
上記構成によれば、係止部により取付け部材を係止するので、取付け部材およびレーダ装置の安定した支持を確保することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記取付け部材は、上記レーダ装置の少なくとも左右両側面および下面を覆うカバー部材であることを特徴とする。
上記構成によれば、特に左右両側面に位置するようにカバー部材を設けたので、レーダ装置からの送信波の一部が左右側方から路面へ到達することに起因する誤検知防止も可能となる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記カバー部材は、レーダ装置側からバンパ裏面側に向けて末広がり形状に形成されたものである。
上記構成によれば、上述の末広がり形状によりレーダ装置からの送信波の送信エリアを確保しつつ、各カバー部材の傾斜構造により該カバー部材に対する一部の送信波の入射角を小さくし、該送信波を誤検知されにくい方向に向けて送信することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止構造は、バンパ裏面からレーダ装置の下方に向かって延出する遮蔽板であることを特徴とする。
上記構成によれば、バンパ裏面からレーダ装置の下方に向けて延出する遮蔽板により、路面到達波をしゃ断して、誤検知防止を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記遮蔽板の延出端部がレーダ装置の送受信部とオーバラップする位置まで延出されたものである。
上記構成によれば、バンパ裏面からレーダ装置の下方に向けて延びる遮蔽板の延出端部を、レーダ装置の送受信部とオーバラップさせたので、路面到達波を確実にしゃ断して、誤検知防止性能のさらなる向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記誤検知防止構造は、上記レーダ装置の路面到達波の経路上に設けられた反射防止構造であることを特徴とする。
上述の反射防止構造は、入射波を乱反射させてエネルギを分散する凹凸形状やカマボコ形状、入射波が反射する角度(反射波の角度)を変更するフレネル構造、ゴム部材にカーボン等を混入した電波吸収体などで構成してもよい。
上記構成によれば、誤検知防止構造として反射防止構造を採用し、この反射防止構造をレーダ装置の路面到達波の経路上に設けたので、路面をターゲットであると誤検知することを防止することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記反射防止構造は、上記レーダ装置の路面到達波がバンパ裏面で反射する反射点に設けられたものである。
上記構成によれば、反射点において路面到達波による影響を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、レーダ装置の下部または下方に、該レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止構造を設けたので、路面をターゲットであると誤検知することを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の車両用障害物検出装置の障害物検出エリアを示す平面図
【図2】右側後部の車両部分斜視図
【図3】図2のX−X線矢視断面図
【図4】図2のY−Y線矢視断面図
【図5】収納ボックスの斜視図
【図6】車両用障害物検出装置の実施例2を示す側面図
【図7】車両用障害物検出装置の実施例3を示す側面図
【図8】車両用障害物検出装置の実施例4を示す側面図
【図9】車両用障害物検出装置の実施例5を示す側面図
【図10】車両用障害物検出装置の実施例6を示す側面図
【図11】(a)は実施例6による回折波の変向を示す説明図、(b)は比較例の回折波放射方向を示す説明図
【図12】(a)は乱反射構造部を示す断面図、(b)は乱反射構造部を示す断面図、(c)はフレネルレンズ構造部を示す断面図、(d)は凸レンズ構造部を示す断面図
【図13】(a)はリヤバンパの部分正面図、(b)はリヤバンパおよびレーダ装置の部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
路面をターゲットとして誤検知することを防止するという目的を、バンパ裏面と車両との間に設けられて、該バンパを透過して外方向に電波を送信することで障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置において、上記レーダ装置の下部または下方に、該レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止構造を設けるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用障害物検出装置を示すが、以下の実施例においては、車両後方の他車両(ターゲット)などの障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示する。
【0024】
図1は障害物検出エリアを示す概略平面図であって、前車輪1,1および後車輪2,2を備えた車両3のバンパ裏面と車両との間の一例としての、バンパ裏面と後車輪2との間には、レーダ装置4が設けられており、レーダ装置4から発射された電波は樹脂製のバンパを透過して車両外方向、詳しくは、後方かつ外側方に送信され、障害物に反射して帰来する電波を受信することで、障害物の有無を検出すべく構成している。
図1において上述のレーダ装置4の障害物検出エリアをEで示す。ここで、レーダ装置4の電波としては、波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波(SHF)を用いている。
【0025】
図2は右側後部の車両部分斜視図、図3は図2のX−X線矢視断面図、図4は図2のY−Y線矢視断面図である。
【0026】
図3、図4に示すように車両後端部には、車幅方向に延び、かつ車幅方向端部が車両前方向へ屈曲形成されたリヤエンドパネル5が設けられている。
該リヤエンドパネル5の車両後方には、該リヤエンドパネル5を後方から離間して覆う合成樹脂製のリヤバンパ6が設けられている。
【0027】
この実施例1においては、レーダ装置4は図3、図4、図5に示すように箱形状の収納ボックスAに収納された状態で、リヤバンパ6に取付け支持されている。
上述の収納ボックスAの構成を、図3、図4、図5を参照して説明する。
【0028】
図4、図5に示すように、この収納ボックスAは、レーダ装置4の下部とリヤバンパ6裏面との間を塞ぎ路面到達波αをしゃ断する遮蔽板7を備えている。
ここに、路面到達波αとは、レーダ装置4からの送信波の一部が、リヤバンパ6裏面で反射する等して、レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6裏面との間を通過して路面Bへ到達し、路面Bから帰来する波のことで、レーダ装置4がこの路面到達波αを受信すると、ターゲットでない路面Bをターゲットであると誤検知するので、上述の遮蔽板7で、この路面到達波α(送信波および帰来波の少なくとも一方)をしゃ断して、誤検知を防止するものである。
【0029】
上述の遮蔽板を設けると、図4に示すように、レーダ装置4から発射された送信波の一部は、図4に矢印aで示すように遮蔽板7に入射し、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように、送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向に指向すると共に、実質的に路面到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0030】
上述の遮蔽板7は金属で形成してもよく、合成樹脂で形成してもよく、また合成樹脂板の表面に金属テープを貼着したものを用いてもよく、さらに合成樹脂の表面に金属の蒸着または化学メッキにより金属層を形成したものを用いてもよく、あるいは電波吸収体(例えば、ゴム材料中にカーボンを混入したもの)を用いてもよいが、上述の実施例1では軽量化と製作性向上とを両立させるために、合成樹脂で形成されている。
【0031】
また、上述の収納ボックスAは、レーダ装置4の下面を覆うところのカバー部材を兼ねる上記遮蔽板7と、 レーダ装置4の左右両側面を覆うカバー部材8,9と、レーダ装置4の上面を覆うカバー部材10と、レーダ装置4の裏面つまり車両前面側を覆うカバー部材11と、リヤバンパ6上面に収納ボックスAを係止する側面視逆L字状の係止部12と、カバー部材10に形成されたメンテナンス用の開口部13と、を備えている。
【0032】
そして、これらの各要素7〜12が一体または一体的に形成され、図4に示すように、係止部12がボルト14等の取付け部材を用いて、リヤバンパ6の上面に取付け固定されている。
【0033】
図3に示すように、左右両側のカバー部材8,9のバンパ側の端部は、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられ、図4に示すように、上側のカバー部材10と、下側のカバー部材を兼ねる遮蔽版7とのバンパ側の端部は、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられている。
詳しくは、上述のカバー部材8,9,10および遮蔽版7の後端部が接着剤による接着にて、リヤバンパ6の裏面に密着固定されたものである。
【0034】
図3に示すように、左右両側のカバー部材8,9は、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されており、同様に、図4に示すように、上側のカバー部材10と遮蔽板7も、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されていて、レーダ装置4の送受信部4aとリヤバンパ6裏面との間には、送受信波の送受信エリアを阻害しないように、末広がり状の空間部が形成されると共に、斯かる末広がり形状による各要素7,8,9の傾斜構造にて、これら各要素7,8,9に対する一部の送信波の入射角を可及的小さくし、該送信波を誤検知されにくい方向に向けて送信するように構成している。ここで、送信波の入射角を僅少と成すと、該送信波は入射角と反射角とが等しくなるように略全反射されることになる。
【0035】
なお、図2において、15はリヤコンビランプ、図1、図4においてmは送信電波のうちのメインローブ、Sは送信電波のうちのサイドローブを模式的に示すものであり、また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0036】
このように構成した車両用障害物検出装置の作用を、以下に説明する。
図1に示すレーダ装置4の障害物検出エリアE(図面では模式的に示しているが、実際は約50m未満で、かつ比較的広い範囲のエリア)にターゲットとしての他車両が侵入してくると、他車両に当って反射する反射波を、レーダ装置4の送受信部4aが受信するので、当該他車両を検出することができる(通常の障害物検出)。
【0037】
図4に示す遮蔽板7が存在しない場合には、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、リヤバンパ6裏面で反射する等して、レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6裏面との間を通過して図4に点線で示すように路面Bへ到達し、路面Bから同じ経路を通って帰来する路面到達波αにより、レーダ装置4は本来ターゲットでない路面Bをターゲットであると誤検知する。
【0038】
この実施例は、このような誤検知を防止するものである。
すなわち、レーダ装置4とリヤバンパ6裏面との間を塞ぎ、路面到達波αをしゃ断する誤検知防止構造としての遮蔽板7を設けたものであって、このように遮蔽板7を設けると、図4に示すように、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図4に矢印aで示すように遮蔽板7に入射しても、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向(図示実施例では、路面Bから遠ざかる車両後方)に指向し、また、実質的に路面到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0039】
このように、図1〜図5で示した実施例1の車両用障害物検出装置は、リヤバンパ6裏面と車両との間に設けられて、該リヤバンパ6を透過して外方向に電波を送信することで他車両などの障害物を検出するレーダ装置4を備えた車両用障害物検出装置であって、上記レーダ装置4の下部には、該レーダ装置4からの送信波の一部が該レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6の裏面との間を通過して路面Bへ到達し、路面Bから帰来する路面到達波αにより生じる誤検知を防止する誤検知防止構造(遮蔽版7参照)が設けられたものである(図4参照)。
【0040】
この実施例では、上述のレーダ装置の電波としては、波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波(SHF)を用いている。また、リヤバンパ6としては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いている。
この構成によれば、レーダ装置4の下部に誤検知防止構造(遮蔽板7参照)を設けたので、レーダ装置4からの送信波の一部が該レーダ装置4の送信部とリヤバンパ6裏面との間を通過して路面Bへ到達し、路面Bから帰来する路面到達波αにより生じる誤検知を、該誤検知防止構造(遮蔽板7参照)にて防止することができる。
【0041】
また、上記誤検知防止構造は、レーダ装置4とリヤバンパ6との間を塞ぎ路面到達波αをしゃ断する遮蔽板7で構成されたものである(図4参照)。
この構成によれば、誤検知防止構造を簡単な遮蔽板7にて構成することができる。
【0042】
さらに、上記遮蔽板7は、そのリヤバンパ6側の端部(つまり後端部)がリヤバンパ16裏面に密着して設けられたものである(図4参照)。
この構成によれば、遮蔽板7端部の密着構造により、該遮蔽板7による路面到達波αの遮蔽性能向上を図ることができる。
【0043】
加えて、上記レーダ装置4をリヤバンパ6に取付ける取付け部材(収納ボックスA参照)を備えたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、レーダ装置4は取付け部材(収納ボックスA)を介してリヤバンパ6に取付けられるので、レーダ装置4のがたつきが抑制され、車両走行時に異音が発生するのを防止することができる。
【0044】
また、上記取付け部材(収納ボックスA参照)は、リヤバンパ6上面に該取付け部材(収納ボックスA)を係止する係止部12を備えたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、係止部12により取付け部材(収納ボックスA)を係止するので、取付け部材(収納ボックスA)およびレーダ装置4の安定した支持を確保することができる。
【0045】
さらに、上記取付け部材(収納ボックスA参照)は、上記レーダ装置4の少なくとも左右両側面および下面を覆うカバー部材7,8,9(遮蔽版7は下面を覆うカバー部材を兼ねる)であることを特徴とする(図5参照)。
この構成によれば、特に左右両側面に位置するようにカバー部材8,9を設けたので、レーダ装置4からの送信波の一部が左右側方から路面Bへ到達することに起因する誤検知防止も可能となる。
【0046】
さらにまた、上記カバー部材8,9は、レーダ装置4側からリヤバンパ6裏面側に向けて末広がり形状に形成されたものである(図3参照)。
この構成によれば、上述の末広がり形状によりレーダ装置4からの送信波の送信エリアを確保しつつ、各カバー部材8,9の傾斜構造により該カバー部材8,9に対する一部の送信波の入射角を小さくし、該送信波を誤検知されにくい方向に向けて送信することができる。
【実施例2】
【0047】
図6は車両用障害物検出装置の実施例2を示す側面図である。
この実施例2においても先の実施例1と同様に、遮蔽板7でレーダ装置4の下部とリヤバンパ6裏面との間を塞ぎ、該遮蔽板7で路面到達波αをしゃ断すべく構成している。但し、この実施例2においては、遮蔽板7は水平または略水平に延びて、そのリヤバンパ6側の後端部が接着剤を用いて該リヤバンパ6の裏面に密着固定されている。
【0048】
図6に示す実施例2においても、先の実施例1とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図6において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0049】
図7は車両用障害物検出装置の実施例3を示す側面図である。
この実施例3では、遮蔽板7を前部遮蔽板7Aと、後部遮蔽板7Bとに2分割し、前部遮蔽板7Aを合成樹脂平板で形成して、レーダ装置4の下部からリヤバンパ6側に向けて延ばし、後部遮蔽板7Bは電波吸収材(ゴム材中にカーボンを混入したもの)、または導電性ゴム、またはウレタン構造物を側面視で波形状と成して可撓性を有するように構成している。
【0050】
レーダ装置4の下部とリヤバンパ6の裏面との間の車両前後方向の長さのうちの過半部を前部遮蔽板7Aで塞ぎ、残りの部分を後部遮蔽板7Bで塞いでいる。つまり、レーダ装置4の下部とリヤバンパ6の裏面との間を遮蔽板7で、隙間が生じないように完全に塞いだものである。
上述の後部遮蔽板7Bとしては電波吸収材が最も望ましい。
【0051】
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図7に矢印で示すように、後部遮蔽板7Bに入射すると、入射した送信波は吸収または減衰されるので、同図に点線で示す路面到達波αの影響を実質的になくすことができる。つまり、路面到達波αに起因するレーダ装置4の誤検知を防止することができる。
【0052】
また、後部遮蔽板7Bが可撓性を有するので、リヤバンパ6に対する組付け性の向上を図ることができると共に、組付け後の車両走行時において異音が発生するのを防止することができる。
要するに、電波の遮断性、組付け性、異音発生防止の全てを満足することができるものである。
【0053】
図7で示す実施例3においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図7において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例4】
【0054】
図8は車両用障害物検出装置の実施例4を示す側面図である。
この実施例4では、遮蔽板7を前部遮蔽板7Cと、後部遮蔽板7Dとに2分割し、前部遮蔽板7Cを合成樹脂平板で形成して、レーダ装置4の下部からリヤバンパ6裏面側に向けて水平後方に延ばし、後部遮蔽板7Dを合成樹脂平板で形成し、前部遮蔽板7Cよりも下方位置においてリヤバンパ6の裏面からレーダ装置4の下方、詳しくは前部遮蔽板7Cの後端下方に向かって車両前方に水平に延出させたものである。つまり、遮蔽板7C,7Dをレーダ装置4の下部とリヤバンパ6裏面との双方から後方、前方に向けて延出したものである。
【0055】
そして、平面視においてレーダ装置4とリヤバンパ6裏面との間を、前後一対の遮蔽板7C,7Dにて完全に塞ぐように形成している。
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図8に矢印で示すように、リヤバンパ6の裏面に入射して反射すると、この反射波は後部遮蔽板7Dで再反射し、誤検知に影響がない方向に指向するので、同図に点線で示す路面到達波αの影響を実質的になくすことができる。
【0056】
また、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図8に矢印cで示すように、前部遮蔽板7Cの後端部から下方に向けて回折しても、この回折波を後部遮蔽板7Dで、誤検知に影響がない方向に変向させることができる。
よって、路面到達波αに起因するレーダ装置4の誤検知を防止することができる。
【0057】
さらに、上述の遮蔽板7を前部遮蔽板7Cと後部遮蔽板7Dとに分割したので、レーダ装置4および各遮蔽板7C,7Dの組付け性向上を図ることができると共に、異音発生防止効果をも確保することができる。
ここで、前部遮蔽板7Cの後部と、後部遮蔽板7Dの前部とを、平面から見てオーバラップさせるように構成することが、さらに望ましい。このようにオーバラップさせた場合、並びに、図8に示す構造の場合、上下の遮蔽板7C,7D間の間隔を通って下方へ回り込むような回折波が仮に発生しても、その電波を弱めることができるので、誤検知に影響を与えるものではない。
【0058】
図8で示した実施例4においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図8の実施例4においては、後部遮蔽板7Dはリヤバンパ6と別体で構成してもよく、または、リヤバンパ6と一体形成してもよい。
【実施例5】
【0059】
図9は車両用障害物検出装置の実施例5を示す側面図である。
この実施例5では、樹脂平板から成る遮蔽板7を設け、この遮蔽板7をリヤバンパ6の裏面からレーダ装置4の下方に向けて延出し、該遮蔽板7で誤検知防止構造を構成したものである。
【0060】
しかも、図9に示すように、上述の遮蔽板7の車両前方側の延出端部は、レーダ装置4の送受信部4aとオーバラップする位置まで前方へ延出されている。
このように構成すると、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部が、図9に矢印aで示すように遮蔽板7に入射しても、遮蔽板7からは入射角と反射角とが等しくなるように送信波の一部が反射(矢印b参照)し、この反射波bは誤検知に影響を与えない方向に指向し、また、実質的に路面到達波αを大幅に減衰乃至なくすことができる。
【0061】
図9で示した実施例5においては、上記誤検知防止構造は、リヤバンパ6裏面からレーダ装置4の下方に向かって延出する遮蔽板7であることを特徴とする。
この構成によれば、リヤバンパ6裏面からレーダ装置4の下方に向けて延出する遮蔽板7により、路面到達波αをしゃ断して、誤検知防止を図ることができる。
【0062】
また、上記遮蔽板7の延出端部がレーダ装置4の送受信部4aとオーバラップする位置まで延出されたものである。
この構成によれば、リヤバンパ6裏面からレーダ装置4の下方に向けて延びる遮蔽板7の延出端部を、レーダ装置4の送受信部4aとオーバラップさせたので、路面到達波αを確実にしゃ断して、誤検知防止性能のさらなる向上を図ることができる。
【0063】
なお、図9で示した実施例において、上述のレーダ装置4は図示しない取付け部材を用いてリヤバンパ6に取付けてもよく、あるいは、ブラケット等を介してリヤエンドパネル5に取付けてもよい。
【0064】
図9で示した実施例5においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図9において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例6】
【0065】
図10は車両用障害物検出装置の実施例6を示す側面図である。
この実施例6では、レーダ装置4の下部に樹脂製の遮蔽板7を取付け、該遮蔽板7をレーダ装置4下部からリヤバンパ6の裏面方向に延出すると共に、その延出端部には、回折波の回折方向変更手段として上方に向けて延びる突片7aを一体形成し、電波の回折方向を変向すべく構成したものである。
【0066】
図11の(b)に比較例を示すように、遮蔽板7の延出端部に突片7aが存在しない場合には、レーダ装置4の送信部から発射された送信波の一部は、遮蔽版7の後端エッジ部にて下方へ回り込み、同図に矢印dで示すように路面B方向へ放射されるが、この実施例6では、遮蔽板7に上記突片7aを設けたので、送信波の一部の回折方向を図11の(a)に示すように路面B以外の方向(矢印e方向)に変向することができる。
【0067】
この結果、路面方向へ向けて放射される回折波に起因して、誤検知が行なわれるのを防止することができる。なお、図10において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【実施例7】
【0068】
図12は車両用障害物検出装置の実施例7を示す説明図である。
図12の(a)(b)(c)(d)の何れも、レーダ装置4の路面到達波αの経路上に設けられた反射防止構造を示すものであり、この実施例7では、レーダ装置4の路面到達波αがリヤバンパ6裏面で反射する反射点RP(図4、図6、図7、図8、図9、図10参照)に、上記反射防止構造を設けたものである。
【0069】
図12の(a)に示す構造は、反射点RPおよびその周囲を、断面三角形状の凹凸部にて形成した乱反射構造部6Aに構成し、入射波を乱反射させて、そのエネルギを分散させ、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0070】
図12の(b)に示す構造は、反射点RPおよびその周囲を、断面半円形状の凹凸部にて形成した乱反射構造部6Bに構成し、入射波を乱反射させて、そのエネルギを分散させ、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0071】
図12の(c)に示す構造は、反射点RPおよびその周囲を、フレネルレンズ構造部6Cに構成し、入射波に対する反射波の角度を変更し、誤検知に影響を与えないように反射波の変向方向をコントロールすべく構成したものである。
【0072】
図12の(d)に示す構造は、反射点RPを特定し、この特定された反射点RPを凸レンズ構造部(いわゆるカマボコ形状部)6Dに構成し、反射波を拡散させて、誤検知に影響を与えないように成したものである。
【0073】
このように、図12で示した実施例7においては、上記誤検知防止構造は、上記レーダ装置4の路面到達波αの経路上に設けられた反射防止構造(乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6D参照)であることを特徴とする。
この構成によれば、誤検知防止構造として反射防止構造(各構造部6A,6B,6C,6D参照)を採用し、この反射防止構造をレーダ装置4の路面到達波αの経路上に設けたので、路面をターゲットであると誤検知することを防止することができる。
【0074】
また、上記反射防止構造(乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6D参照)は、上記レーダ装置4の路面到達波αがリヤバンパ6裏面で反射する反射点RPに設けられたものである。
この構成によれば、反射点RPにおいて路面到達波αによる影響を回避することができる。
【0075】
なお、上記反射防止構造は、図12の(a)〜(d)で示した各構造部6A,6B,6C,6Dに代えて、ゴム部材にカーボン等を混入した電波吸収体で構成してもよく、また、リヤバンパ6裏面の反射点RPのみならず、遮蔽板7の必要箇所に図12の(a)〜(d)で示した構造部6A,6B,6C,6Dや電波吸収体の構成を採用してもよい。
【実施例8】
【0076】
図13は車両用障害物検出装置の実施例8を示す説明図であり、図13の(b)は平面図、図13の(a)は図13の(b)のレーダ装置4側から見た状態を示すリヤバンパ6の正面図である。
【0077】
この実施例8では、レーダ装置4の送受信部4a(送信電波面)と対向して、換言すれば、メインローブmの発射エリアと対応してリヤバンパ6の所定部を、該リヤバンパ6を樹脂そのままの構造と成した電波透過部6Eに設定し、リヤバンパ6の他の部分(図示の便宜上、図13の(a)に多点を施して示す部分)は、図12の(a)〜(d)で示した何れかの構造、または、電波吸収体構造、あるいは、樹脂に金属板や金属テープを貼着もしくは蒸着または化学メッキによる金属メッキ層を形成した構造の電波非透過部6Fに設定したものである。
【0078】
このように構成すると、レーダ装置4から発射される電波のうち、ターゲット検出に必要なメインローブmは電波透過部6Eから透過して、車両後方かつ側方に放射される一方で、サイドローブSを含む洩れ電波による不要反射をなくすことができ、路面Bがターゲットであると誤検出することを防止できる。
【0079】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のバンパは、実施例のリヤバンパ6に対応し、
以下同様に、
車輪は、後車輪2に対応し、
誤検知防止構造は、遮蔽板7または反射防止構造に対応し、
反射防止構造は、乱反射構造部6A,6B、フレネルレンズ構造部6C、凸レンズ構造部6Dに対応し、
取付け部材は、収納ボックスAに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては車両後方の障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示したが、車両前方の障害物を検出する車両用障害物検出装置に適用してもよい。
【0080】
また、レーダ装置4の電波としては24GHzのマイクロ波(SHF)を用いたが、波長が1cm〜1mmで、周波数が30GHzから300GHzのミリ波(EHF)を用いてもよい。
さらに、遮蔽板7やカバー部材8,9に図12の構造を採用してもよく、これら各要素7,8,9として電波吸収体、樹脂に金属板を貼着したもの、樹脂に金属を蒸着したもの、樹脂表面に化学メッキで金属メッキ層を形成したものを用いてもよい。
さらにまた、図8、図9、図10で示した実施例にあっては、レーダ装置4はリヤバンパ6またはリヤエンドパネル5の何れか一方に取付けることができる。
【符号の説明】
【0081】
2…後車輪(車輪)
4…レーダ装置
4a…送受信部
6…リヤバンパ(バンパ)
6A,6B…乱反射構造部(反射防止構造)
6C…フレネルレンズ構造部(反射防止構造)
6D…凸レンズ構造部(反射防止構造)
7…遮蔽板(誤検知防止構造)
8,9…カバー部材
12…係止部
A…収納ボックス(取付け部材)
RP…反射点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパ裏面と車両との間に設けられて、該バンパを透過して外方向に電波を送信することで障害物を検出するレーダ装置を備えた車両用障害物検出装置であって、
上記レーダ装置の下部または下方には、該レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して路面へ到達し、路面から帰来する路面到達波により生じる誤検知を防止する誤検知防止構造が設けられた
車両用障害物検出装置。
【請求項2】
上記誤検知防止構造は、レーダ装置とバンパとの間を塞ぎ路面到達波をしゃ断する遮蔽板で構成された
請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項3】
上記遮蔽板は、そのバンパ側の端部がバンパ裏面に密着して設けられた
請求項2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項4】
上記レーダ装置をバンパに取付ける取付け部材を備えた
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項5】
上記取付け部材は、バンパ上面に該取付け部材を係止する係止部を備えた
請求項4記載の車両用障害物検出装置。
【請求項6】
上記取付け部材は、上記レーダ装置の少なくとも左右両側面および下面を覆うカバー部材である
請求項4または5記載の車両用障害物検出装置。
【請求項7】
上記カバー部材は、レーダ装置側からバンパ裏面側に向けて末広がり形状に形成された
請求項6記載の車両用障害物検出装置。
【請求項8】
上記誤検知防止構造は、バンパ裏面からレーダ装置の下方に向かって延出する遮蔽板である
請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項9】
上記遮蔽板の延出端部がレーダ装置の送受信部とオーバラップする位置まで延出された
請求項8記載の車両用障害物検出装置。
【請求項10】
上記誤検知防止構造は、上記レーダ装置の路面到達波の経路上に設けられた反射防止構造である
請求項1または2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項11】
上記反射防止構造は、上記レーダ装置の路面到達波がバンパ裏面で反射する反射点に設けられた
請求項10記載の車両用障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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