説明

車両用障害物検出装置

【課題】カメラレンズに付着した異物等を検出対象の範囲から除外して、障害物の検出精度を向上できる「車両用障害物検出装置」を提供することである。
【解決手段】車両の周囲の障害物検出領域を撮影するカメラと、カメラが撮影した障害物検出領域の画像に基づいて車両の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定手段とを備えた車両用障害物検出装置であって、カメラが撮影した障害物検出領域内の変化しない部分である不動領域を検出する不動領域検出手段(S15)と、不動領域検出手段により検出された不動領域から検出不可領域を決定する検出不可領域決定手段(S16)と、検出不可領域決定手段により決定された検出不可領域を障害物検出領域から除外する検出不可領域除外手段(S18)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラが撮影した障害物検出領域の画像に基づいて車両の周囲に障害物が存在するか否かを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲がCCDカメラにより撮影され、車両の走行状態が車両挙動測定装置により検出され、CCDカメラで得られた画像が画像認識装置により道路面内の平面画像に変換され、この画像認識装置は画像内の物体が道路上の平面物体であるか否かを識別するように構成された車両用障害物検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された車両用障害物検出装置では、先ず車載のCCDカメラが、ある時刻T0の前方画像と、次の時刻T1の前方画像を撮影する。次いで画像認識装置が、上記時刻の異なるT0及びT1の前方画像を取得して平面画像にそれぞれ変換する。また車両挙動装置が車両の走行状態を検出し、この検出出力を画像認識装置に供給する。次に画像認識装置は、ある時刻T0の平面画像と時間T1−T0における車両の走行状態に基づいて、画像内の物体が道路上の平面物であると仮定した場合に時刻T1で得られるであろう予測平面画像を算出する。更に画像認識装置は、時刻T1における予測平面画像と、実際に時刻T1で得られた平面画像とを比較して、両者が一致すればその物体が平面物であると判定し、一致しない場合は立体物であると判定する。この結果、道路上の物体が立体物であるか或いは平面物であるか、即ち道路上の物体が車両にとって障害物となり得るか否かを迅速に識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−222679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の特許文献1に示された車両用画像処理装置では、CCDカメラのレンズに泥、雪または雨粒のような異物が付着したり、或いは自車両のバンパー部分がCCDカメラの撮影した画像に映り込んだりした場合、これらは障害物が移動しても、或いは自車両が移動しても、CCDカメラの撮影した画像上の位置が変わらない。このため、従来の特許文献1に示された車両用画像処理装置では、実際に存在する障害物の一部が上記異物等により遮られたり、或いは上記異物等が障害物と認識されたりして、障害物の検出精度の向上を図ることが難しい場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カメラレンズに付着した異物とカメラに映り込んだ自車両の一部を検出対象の範囲から除外することにより、障害物の検出精度を向上でき、また検出対象の範囲から除外された異物等の割合に応じて、車両の運転者に警報を発することができ、また自動的に障害物の検出動作を中止できるとともに車両の運転者にその中止を報知することができる車両用障害物検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用障害物検出装置は、車両の周囲の障害物検出領域を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した前記障害物検出領域の画像に基づいて前記車両の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定手段とを備えた車両用障害物検出装置であって、前記カメラが撮影した前記障害物検出領域内の変化しない部分である不動領域を検出する不動領域検出手段と、前記不動領域検出手段により検出された前記不動領域から検出不可領域を決定する検出不可領域決定手段と、前記検出不可領域決定手段により決定された前記検出不可領域を前記障害物検出領域から除外する検出不可領域除外手段とを備えた構成とする。
【0008】
このような構成により、カメラが撮影した障害物検出領域内のうち比較的短い時間が経過しても変化しない部分、即ちカメラのレンズに付着した異物、カメラの撮影画像に映り込んだ自車両の一部、或いは空(そら)が不動領域として検出され、これらの不動領域のうちカメラのレンズに付着した異物とカメラに映り込んだ自車両の一部が検出不可領域として決定され、更にこの検出不可領域が障害物検出領域から除外される。
【0009】
本発明に係る車両用障害物検出装置において、前記カメラがある時刻に撮影して得られた第1画像と、前記カメラが前記ある時刻から所定時間経過後に撮影して得られた第2画像との差分により、前記不動領域検出手段が前記不動領域を検出するように構成することができる。
【0010】
このような構成より、カメラが撮影した障害物検出領域内のうち、ある時刻に撮影して得られた第1画像と、ある時刻から所定時間経過後に撮影して得られた第2画像とを比較して、変化しない部分、即ちカメラのレンズに付着した異物、カメラの撮影画像に映り込んだ自車両の一部、或いは空(そら)が不動領域として検出され、これらの不動領域のうちカメラのレンズに付着した異物とカメラに映り込んだ自車両の一部が検出不可領域として決定され、更にこの検出不可領域が障害物検出領域から除外される。
【0011】
また、本発明に係る車両用障害物検出装置において、前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第1の割合以上になったか否かを判定する第1割合判定手段と、前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が前記第1の割合より大きい第2の割合以上になったか否かを検出する前記第2割合判定手段と、前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第1の割合以上であって第2の割合未満になったことを前記第1及び第2割合判定手段が検出したときに前記車両の運転者に警報を発する警報手段とを更に備えてもよい。
【0012】
このような構成より、障害物検出領域に対する検出不可領域の割合が第1の割合以上であって第2の割合未満になると、カメラのレンズへの異物の付着量が比較的多くなったという警報が車両の運転者に発せられる。但し、上記障害物検出領域に対する検出不可領域の割合を算出する際に、障害物検出領域及び検出不可領域からカメラの撮影画像に映り込んだ自車両の一部は除かれる。
【0013】
更に、本発明に係る車両用障害物検出装置において、前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第2の割合以上になったことを前記第2割合判定手段が検出したときに前記障害物の検出を中止する障害物検出中止手段と、前記障害物検出中止手段により前記障害物の検出が中止されたことを前記車両の運転者に報知する中止報知手段とを更に備えることができる。
【0014】
このような構成により、障害物検出領域に対する検出不可領域の割合が第2の割合以上になると、カメラのレンズへの異物の付着量が極めて多くなって、障害物の検出精度が悪くなったので、自動的に障害物の検出動作が中止されるとともに、車両の運転者にその中止が報知される。但し、上記障害物検出領域に対する検出不可領域の割合を算出する際に、障害物検出領域及び検出不可領域からカメラの撮影画像に映り込んだ自車両の一部は除かれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両用障害物検出装置によれば、カメラが撮影した障害物検出領域内のうち比較的短い時間が経過しても変化しない部分、即ちカメラのレンズに付着した異物、カメラの撮影画像に映り込んだ自車両のバンパー、或いは空(そら)が不動領域として検出され、これらの不動領域のうちカメラのレンズに付着した異物とカメラに映り込んだ自車両の一部が検出不可領域として決定され、更にこの検出不可領域が障害物検出領域から除外される。この結果、障害物の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の一形態に係る車両用障害物検出装置のカメラを備えた車両の側面図である。
【図2】図1に示したカメラの撮影範囲を破線で示すカメラの平面図である。
【図3】図1に示したカメラを含む車両用障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図4】その車両用障害物検出装置の処理ユニットによる検出不可領域の除外処理の一例を示すフローチャートである。
【図5A】そのカメラがある時刻に撮影して得られた第1画像を示す図である。
【図5B】そのカメラがある時刻から所定時間経過後に撮影して得られた第2画像を示す図である。
【図6】第1画像と第2画像との差分により不動領域に斜線を施した画像を示す図である。
【図7A】図6の斜線を施した不動領域のうち検出不可領域のみに斜線を施した画像を示す図である。
【図7B】そのカメラの撮影範囲のうち検出不可領域に斜線を施したカメラの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本発明の実施の一形態に係る車両用障害物検出装置100は、図3に示すように構成される。図3において、車両用障害物検出装置100は、コンピュータユニット(CPUを含む)にて構成される処理ユニット11を有している。処理ユニット11の制御入力にはカメラ12及び車速センサ13の各検出出力が接続され、処理ユニット11の制御出力には音声出力回路14及び表示ユニット15がそれぞれ接続される。また音声出力回路14にはスピーカ16が接続されている。
【0019】
カメラ12としては、広角レンズを有するCCDカメラ等が挙げられ、このカメラ12による障害物検出領域は図2の破線で示すように比較的広く設定される。このカメラ12は、この実施の形態では、図1に示すように、車両20の前面のうちフロントバンパー21の直上に設置され、このカメラ12により車両20の前方の障害物検出領域を撮影するように構成される。カメラ12により撮影された画像が検出出力として処理ユニット11の制御入力に送出される。また車速センサ13は車両20の速度を検出するように構成され、表示ユニット15及びスピーカ16は車室内にそれぞれ設けられる。更に処理ユニット11にはカメラ12の撮影した画像を記憶する記憶部17が接続されている。なお、上記カメラは車両の後面または側面に設置してもよい。
【0020】
このように構成された車両用障害物検出装置100の動作を説明する。処理ユニット11はカメラ12の撮影した画像に不動領域が存在するか否かを検出する。このため処理ユニット11は、先ず障害物検出領域(A:車両前方の半球部の体積(図2の破線で囲まれた部分の体積)または車両前方の長方形部の面積(図5Aの長方形枠内の部分の面積))を設定する(S11)。この障害物検出領域(A)はカメラ12の撮影した全領域(障害物検出領域)に一致する。次いで処理ユニット11は、カメラ12がある時刻に撮影して得られた第1画像(図4中のS12、図5A)と、カメラ12が上記ある時刻から所定時間経過後(例えば、0.1秒後または0.5秒後)に撮影して得られた第2画像(図4中のS13、図5B)とを比較する。車両前方に実際に障害物30が存在する場合にはその障害物30は第1画像(図5A)より第2画像(図5B)の方が大きく映し出される。そして、処理ユニット11は、車両20が走行していることを車速センサ13が検出しているときに上記第1画像及び第2画像に基づいて車両20の前方に障害物30が存在するか否かを判定する(S14:障害物判定手段)。
【0021】
一方、処理ユニット11は、第1画像と第2画像で大きさ及び位置が変化しない部分を不動領域(図6の斜線を施した部分)として検出する(S15:不動領域検出手段)。この不動領域は、例えば、カメラ12のレンズに付着した泥、雪または雨粒のような異物に対応した部分31と、カメラ12の撮影画像に映り込んだ自車両20のフロントバンパー21に対応した部分32と、カメラ12の撮影した空(そら)に対応した部分33とからなる。処理ユニット11は、これらの不動領域のうち、カメラ12の撮影した空に対応した部分33を除く領域(図6)、即ちカメラ12のレンズ21に付着した異物に対応した部分31と、カメラ12の撮影画像に映り込んだ自車両20のフロントバンパー21に対応した部分32とを検出不可領域(B:車両前方の円錐部の体積(図7Bの斜線を施した部分の体積)または車両前方の楕円形部の面積(図7Aの斜線を施した部分の面積))と決定する(S16:検出不可領域決定手段)。そして、処理ユニット11は、(B/A)×100がα%(第1の割合)未満であると(S17でYES)、障害物検出領域(A)から検出不可領域(B)を除外する(S18:検出不可領域除外手段)。この結果、障害物30の検出精度を向上できる。但し、本明細書では、式(B/A)×100の計算において、カメラ12の撮影画像に映り込んだ自車両20のフロントバンパー21に対応した部分32はB及びAから除かれる。
【0022】
一方、(B/A)×100がα%(第1の割合)以上であって(S17でNO)、(B/A)×100がβ%(第2の割合)未満になると(S19でNO)、処理ユニット11は、音声出力回路13を制御してカメラ12のレンズへの異物(部分31に相当)の付着量が比較的多くなったという警報をスピーカ16から出力させ(S20)、カメラ12のレンズへの異物の付着量が比較的多くなったことを表示ユニット15に表示する。また(B/A)×100がβ%(第2の割合)以上になると(S19でYES)、処理ユニット11は、障害物30の検出動作を中止するとともに(S21)、音声出力回路13を制御してカメラ12のレンズへの異物(部分31に相当)の付着量が極めて多くなって、障害物30の検出精度が悪くなったため障害物30の検出動作を中止する旨のメッセージをスピーカ16から出力させ(S22)、更に、このメッセージを表示ユニット15に表示する。上記メッセージを聞いた運転者は車両20を停止してカメラ12のレンズを拭くことができる。これにより(B/A)×100がα%(第1の割合)未満になるので(S17でYES)、処理ユニット11は障害物31の検出動作を再開する。このとき再開メッセージをスピーカ16から発するとともに、表示ユニット15に表示することが好ましい。
【0023】
なお、カメラが撮影した空(そら)の部分に、カメラのレンズに付着した異物が存在するときには、この異物の体積または面積は上記A(障害物検出領域:車両前方の半球部の体積(図2の破線で囲まれた部分の体積)または車両前方の長方形部の面積(図5Aの長方形枠内の部分の面積))及びB(検出不可領域:車両前方の円錐部の体積(図7Bの斜線を施した部分の体積)にそれぞれ加算してB/Aが算出される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上、説明したように、本発明に係る車両用障害物検出装置は、カメラレンズに付着した異物やカメラの撮影画像に映り込んだ自車両の一部を検出対象の範囲から除外することにより、障害物の検出精度を向上でき、また検出対象の範囲から除外された異物等の割合に応じて、車両の運転者に警報を発することができ、また自動的に障害物の検出動作を中止することができるとともに車両の利用者にその中止を報知することができる効果を有し、カメラが撮影した障害物検出領域の画像に基づいて車両の周囲に障害物が存在するか否かを検出する装置として有用である。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用障害物検出装置
11 処理ユニット
12 カメラ
13 車速センサ
14 音声認識回路
15 表示ユニット
16 スピーカ
17 記憶部
20 車両
21 フロントバンパー
30 障害物
31 異物の画像
32 フロントバンパーの画像
33 空の画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の障害物検出領域を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した前記障害物検出領域の画像に基づいて前記車両の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定手段と
を備えた車両用障害物検出装置であって、
前記カメラが撮影した前記障害物検出領域内の変化しない部分である不動領域を検出する不動領域検出手段と、
前記不動領域検出手段により検出された前記不動領域から検出不可領域を決定する検出不可領域決定手段と、
前記検出不可領域決定手段により決定された前記検出不可領域を前記障害物検出領域から除外する検出不可領域除外手段と
を備えたことを特徴とする車両用障害物検出装置。
【請求項2】
前記カメラがある時刻に撮影して得られた第1画像と、前記カメラが前記ある時刻から所定時間経過後に撮影して得られた第2画像との差分により、前記不動領域検出手段が前記不動領域を検出するように構成された請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項3】
前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第1の割合以上になったか否かを判定する第1割合判定手段と、
前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が前記第1の割合より大きい第2の割合以上になったか否かを検出する第2割合判定手段と、
前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第1の割合以上であって第2の割合未満になったことを前記第1及び第2割合判定手段が検出したときに前記車両の運転者に警報を発する警報手段と
を更に備えた請求項1または2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項4】
前記障害物検出領域に対する前記検出不可領域の割合が第2の割合以上になったことを前記第2割合判定手段が検出したときに前記障害物の検出を中止する障害物検出中止手段と、
前記障害物検出中止手段により前記障害物の検出が中止されたことを前記車両の運転者に報知する中止報知手段と
を更に備えた請求項3記載の車両用障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−38048(P2012−38048A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176895(P2010−176895)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】