説明

車両用電源システム

【課題】ハイレート劣化解消の機会を従来より多く得ることの可能な車両用電源システムを提供する。
【解決手段】車両用電源システム10は、二次電池14と、充放電可能な補助電源16と、前記二次電池14と前記補助電源16との間の電力変換を行う電力変換器18、20と、を備えている。さらに車両用電源システム10は、前記二次電池14に対するハイレート劣化戻し条件が成立したときに、前記二次電池14を放電させて前記補助電源16に電力を送る強制放電または前記補助電源16から電力を供給して前記二次電池14を充電させる強制充電を行うように前記電力変換器18を制御する制御部12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動源として回転電機が用いられるいわゆるハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)等の車両が従来から知られている。さらに、回転電機の電力源として充放電可能な二次電池が従来から使用されている。
【0003】
ここで、二次電池の放電または充電の際に電極間及び電極面内に塩濃度分布が生じ、それによって二次電池の内部抵抗が増加することが従来から知られている。さらに、この塩濃度分布は大電流放電時や大電流充電時に顕著となり、これに伴って内部抵抗も著しく増加することが知られている。大電流による充放電により内部抵抗が著しく増加することから、この現象を以下では「ハイレート劣化」と呼ぶ。
【0004】
このハイレート劣化は可逆的であって解消可能であることが知られている。例えば大電流放電によってハイレート劣化が生じた場合、大電流充電によってハイレート劣化を解消できることが知られている。そこで、例えば特許文献1においてはハイレート劣化の程度を推定し、ハイレート劣化の進行度合いに応じてハイレート劣化を解消する処理を行っている。
【0005】
特許文献1においては、大電流放電によって二次電池のハイレート劣化が進行し、その進行度合いが予め定めた閾値を超えた場合、図35に示すように回転電機112から二次電池110に大電流を流す(大電流充電)ことによりハイレート劣化を解消している。また、大電流充電によって二次電池110のハイレート劣化が進行し、その進行度合いが予め定めた閾値を超えた場合、二次電池110から回転電機112に大電流を流す(大電流放電)ことによりハイレート劣化を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−60406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、回転電機から二次電池に大電流を流すことができるのは回転電機から大きな回生電力を得られるときであって、車両が急勾配の坂道を下っている場合等に限られる。また、二次電池から回転電機に大電流を流すことができるのは回転電機の高出力時であって、加速時や急勾配の坂道を登っている場合等に限られる。したがって回転電機と二次電池との間で大電流放電や大電流充電を行って二次電池のハイレート劣化を解消しようとすると、解消の機会が限られるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両用電源システムに関するものである。当該電源システムは、二次電池と、充放電可能な補助電源と、前記二次電池と前記補助電源との間の電力変換を行う電力変換器と、を備えている。さらに、前記二次電池に対するハイレート劣化戻し条件が成立したときに、前記二次電池を放電させて前記補助電源に電力を送る強制放電または前記補助電源から電力を供給して前記二次電池を充電させる強制充電を行うように前記電力変換器を制御する制御部を備えている。
【0009】
また、上記車両用電源システムにおいて、前記補助電源は、導通時において電極間及び電極面内に塩濃度分布が生じない蓄電手段から構成されることが好適である。
【0010】
また、上記車両用電源システムにおいて、前記蓄電手段は、電気二重層キャパシタまたは全固体二次電池からなることが好適である。
【0011】
また、上記車両用電源システムにおいて、前記制御部は、前記強制放電を行う場合には、前記強制放電前に前記二次電池以外の機器に対して前記補助電源から放電を行わせるように前記電力変換器を制御し、前記強制充電を行う場合には、前記強制充電前に前記二次電池以外の機器から前記補助電源に充電を行わせるように前記電力変換器を制御することが好適である。
【0012】
また、上記車両用電源システムにおいて、前記制御部は、前記強制放電を行う場合には、前記二次電池から流れる電流値が前記二次電池に対して設定された大電流放電領域の電流値となるように前記電力変換器を制御し、前記強制充電を行う場合には、前記二次電池に流れる電流値が前記二次電池に対して設定された大電流充電領域の電流値となるように前記電力変換器を制御することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハイレート劣化解消の機会を従来より多く得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る電源システムを例示する図である。
【図2】制御部の機能ブロック図である。
【図3】塩濃度分布の発生原理を説明する図である。
【図4】塩濃度分布の発生原理を説明する図である。
【図5】電極面内に発生する塩濃度分布を説明する図である。
【図6】塩濃度分布と内部抵抗との関係を例示する図である。
【図7】経年劣化マップを例示する図である。
【図8】ハイレート劣化による抵抗成分の推定方法を説明する図である。
【図9】ハイレート劣化による抵抗成分の推定方法を説明する図である。
【図10】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図11】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図12】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図13】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図14】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図15】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図16】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図17】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図18】電池モデルを用いた内部抵抗およびその増加率の算出方法を説明する図である。
【図19】ハイレート劣化による抵抗成分の推定方法を説明する図である。
【図20】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図21】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図22】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図23】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図24】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図25】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図26】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図27】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図28】二次電池及び補助電源の電流値の変化を説明する図である。
【図29】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図30】第1の電力変換器及び第2の電力変換器の動作を説明する図である。
【図31】ハイレート劣化の解消処理のフローチャートである。
【図32】充放電過多指標を説明する図である。
【図33】ハイレート劣化の解消処理を実行する閾値の設定方法を説明する図である。
【図34】ハイレート劣化の解消処理のフローチャートである。
【図35】従来のハイレート劣化の解消処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明に係る電源システム10を例示する。電源システム10は、制御部12と、二次電池14と、補助電源16と、第1の電力変換器18と、第2の電力変換器20と、二次電池側電流センサ22と、補助電源側電流センサ24と、電圧センサ26と、温度センサ28とを含んで構成されている。これに加えて、補助電源16の端子電圧を測定する補助電源側電圧センサを設けてもよい。また、電源システム10は車両(図示せず)の駆動源となる回転電機30に電気的に接続されている。なお、図1においては第1の電力変換器18からの直流電力を交流電力に変換するとともに回転電機30からの交流電力を直流電力に変換するインバータの図示を省略している。
【0016】
制御部12は情報を演算するための演算処理部や情報を記憶するための記憶部を備えている。演算処理部は電圧値や電流値、温度を入力情報として受け入れて演算処理し得るとともに、第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作を制御する制御信号を送信し得る機器であればよく、例えばマイクロコンピュータを含んで構成される。このマイクロコンピュータは例えばハイブリッド車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)から構成することが可能である。また、記憶部は後述するハイレート劣化解消プログラムやハイレート劣化を推定する上で使用される経年劣化マップ、さらには電圧値、電流値、温度等の入力情報を記憶可能な機器であればよく、例えばROMやRAM、EPROM、ハードディスク装置等の1つまたは複数の組み合わせから構成することができる。
【0017】
なお、ハイレート劣化の推定及び解消に当たり、制御部12は複数の機能を実行する。制御部12を複数の機能ブロックの集合として表した模式図を図2に示す。制御部12は、算出部25と、補正部27と、判定部29とを含んで構成される。これらの各機能ブロックによるハイレート劣化の推定方法については後述する。
【0018】
図1に戻り、補助電源16は充放電可能な蓄電手段から構成され、例えば二次電池や電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等から構成される。後述するように、補助電源16を塩濃度分布が生じる蓄電手段(例えばリチウムイオン蓄電池)から構成した場合、二次電池14のハイレート劣化を解消する過程で補助電源16がハイレート劣化によって劣化してその結果補助電源16を頻繁に交換する必要が生じるおそれがある。したがって、交換の煩雑さを解消するために補助電源16をハイレート劣化の生じない蓄電手段から構成することが好適である。具体的には、ハイレート劣化は電極間及び電極面内の塩濃度分布によって生じることから、塩濃度分布が生じないような蓄電手段を用いることが好適である。例えば、電気二重層キャパシタ等のキャパシタや、電解液の代わりに固体電解質を用いる全固体二次電池を用いることが好適である。
【0019】
さらに、補助電源16としてキャパシタを用いた場合、補助電源16の端子電圧値を測定する電圧センサを省略できるという利点がある。すなわち、キャパシタは充電量(電荷量)に比例して端子電圧値が変化するという特性を有する。この特性を利用して、キャパシタに流入出する電流量を測定することによってキャパシタの充電量を算出し、さらに充電量から端子電圧値を求めることができる。
【0020】
第1の電力変換器18は二次電池14の電力変換を行う電気機器であって、二次電池14の出力電圧を昇圧するとともに回転電機30からの電圧を降圧する機能を有する。第1の電力変換器18は昇降圧回路を含む機器であればよく、例えば図1に示すような二象限チョッパ回路を含んで構成される。
【0021】
第1の電力変換器18は上アーム32及び下アーム34からなる1対のレグと、上アーム32及び下アーム34の間に接続されるリアクトル36を含んで構成される。上アーム32では上アーム側スイッチング素子38と帰還ダイオード40とが二次電池14に対して並列に接続されている。同様にして下アーム34では下アーム側スイッチング素子42と帰還ダイオード40が二次電池14に対して並列に接続されている。上アーム側スイッチング素子38及び下アーム側スイッチング素子42は制御部12からのスイッチング信号を受けて通電及び遮断を行ういわゆるバルブデバイスから構成され、例えばMOSFETやIGBTから構成される。
【0022】
第2の電力変換器20は補助電源16の電力変換を行う電気機器であって、補助電源16の出力電圧を昇圧するとともに回転電機30または二次電池14からの電圧を降圧する昇降圧回路を含んで構成される。第2の電力変換器20も第1の電力変換器18と同様にリアクトル43、上アーム44、下アーム46を備え、上アーム44では上アーム側スイッチング素子48及び帰還ダイオード40が二次電池14に対して並列に接続されるとともに、下アーム46では下アーム側スイッチング素子50及び帰還ダイオード40が二次電池14に対して並列に接続されている。
【0023】
電圧センサ26は二次電池14の正極側出力端及び負極側出力端に直接的あるいは間接的に接続され、二次電池14の端子電圧値を測定する。測定された端子電圧値Vは制御部12に送られる。
【0024】
二次電池側電流センサ22は二次電池14と第1の電力変換器18との間に接続され、二次電池14の放電電流I1OUTあるいは充電電流I1INを測定する。測定された電流値は制御部12に送られる。補助電源側電流センサ24は補助電源16と第2の電力変換器20との間に接続され、補助電源16の放電電流I2OUTあるいは充電電流I2INを測定する。測定された電流値は制御部12に送られる。
【0025】
温度センサ28は二次電池14の温度を測定し、測定された温度Tを制御部12に送る。温度測定箇所は1箇所であっても複数個所であってもよい。例えば二次電池14が複数個のセルの積層体から構成されている場合は、所定個数のセルの温度を測定してその平均値を制御部12に送るようにしてもよい。
【0026】
また、回転電機30は電源システム10に接続されている。回転電機30は図示しない車両の駆動源(モータ)として機能するともに回生電力を電源システム10に送る発電機(ジェネレータ)としても機能する電気機器であればよく、例えば永久磁石モータやリラクタンスモータから構成される。
【0027】
また、二次電池14は充放電可能な化学電池であればよく、例えばニッケル水素蓄電池やリチウムイオン蓄電池から構成される。ここで、二次電池14のハイレート劣化について図3を用いて説明する。図3では二次電池14の例としてリチウムイオン蓄電池を用いている。また、電解液の例としてLiPFを用いている。なお、電解液はリチウム塩を溶解させた有機電解液であればよく、例えばLiBF等を用いてもよい。また、図3では説明を簡略化するために、溶媒和などは省略した模式図を示している。
【0028】
二次電池14の電極面内及び電極間におけるリチウム塩濃度分布が発生することにより、二次電池14の内部抵抗が上昇する。この塩濃度分布の発生は主に二次電池14の導通時におけるイオンの泳動(輸率)によって生じる。図3には導通前の二次電池14の模式図が示されている。導通前においては電解液52内における陽イオン54及び陰イオン56はほぼ均一に分布している。
【0029】
二次電池14の充電時を図4に例示する。二次電池14が導通状態になると、正極39から陽イオン54が放出されるとともに、負極41では陽イオン54が吸蔵される。ここで、正極39での陽イオン54の放出量と負極41での陽イオン54の吸蔵量は副反応等を無視すれば理論上等しいから、電解液52中のLiPF量は導通遮断時と導通時とで変わらない。この際、輸率に応じて電解液52内に塩濃度分布(塩濃度勾配)が発生する。また、塩濃度分布は電極間だけでなく、図5に示すように電極59面内にも発生する。図5においては筒状に巻かれた電極59の端部の塩濃度が相対的に高くなり、電極59の中央部の塩濃度が相対的に低くなっている。
【0030】
塩濃度と二次電池14の内部抵抗との関係を図6に示す。この図に示されているように、内部抵抗は塩濃度によって変動し、内部抵抗が最低値を取るような最適濃度が存在する。これを受けて電解液の濃度を最適濃度に調整することが考えられる。しかし、上述したように二次電池が導通状態になると塩濃度分布が発生してしまい、電解液内では最適濃度から外れる領域が生じる。その結果電解液内の内部抵抗が増加する。この、塩濃度分布の発生に伴う内部抵抗の増加現象を本実施形態ではハイレート劣化と呼んでいる。
【0031】
塩濃度分布はイオンの泳動(輸率)によって生じることから理解されるように、大電流放電時または大電流充電時には塩濃度分布の発生が顕著となる(塩濃度勾配が急峻となる)。その結果二次電池14のハイレート劣化の進行が顕著となり、内部抵抗が増加する。一方、塩濃度分布を引き起こした電流の流れ方向と逆方向に電流を流すことによって塩濃度分布が解消され、ハイレート劣化を低減することができる。例えば大電流放電によってハイレート劣化が生じた場合には大電流充電を行うことによってハイレート劣化を解消することができる。
【0032】
したがって、ハイレート劣化を適切に検出してこれを解消することによって内部抵抗の増加を抑え、二次電池14の端子電圧の電圧降下を抑制できる。他方、上述したように二次電池14の内部抵抗の増加はハイレート劣化の他に経年劣化によっても生じる。経年劣化は二次電池14の使用期間の経過に伴って内部抵抗が増加する現象を指し、活物質の一部崩壊(構造変化)などが原因となって生じる。ハイレート劣化と異なり経年劣化は二次電池14の使用に伴って蓄積される不可逆的な(解消困難な)劣化である。制御部12は、二次電池14の内部抵抗を測定するとともに内部抵抗の増加分のうちの何割がハイレート劣化によるものかを推定し、推定結果に応じてハイレート劣化の解消処理を行うか否かを判定している。
【0033】
制御部12の補正部27(図2参照)には経年劣化による二次電池14の内部抵抗の増加傾向の実測値が記憶されている。具体的には補正部27には、二次電池14の初期状態からの延べ時間(総時間)に対する内部抵抗値や内部抵抗増加率の推移が関数またはマップ(表)として記憶されている。なお、初期状態とは二次電池14のハイレート劣化を検出するための基準時点を指しており、例えば二次電池14の新品状態や、二次電池14の電圧、電流、温度の測定が開始される時点を指している。また、二次電池14の使用総時間を時間軸に取る代わりに、二次電池14の満充電時容量の減少率や、二次電池14の温度履歴、二次電池14の積算電流量等を用いてもよい。
【0034】
ここで、補正部27に記憶された、経年劣化による内部抵抗の増加傾向の実測値が記録されたマップ(以下、経年劣化マップと呼ぶ)の取得について説明する。経年劣化マップの取得に当たっては、ハイレート劣化を生じさせない、または、車両に二次電池14を搭載して実際に使用した時と比較してハイレート劣化による内部抵抗の増加が無視できる程度の環境下で二次電池14の内部抵抗を予め測定する。例えば、大電流放電及び大電流充電を行わずに二次電池14の内部抵抗の測定を行う。具体的には、初期状態における二次電池の満充電時の容量をC[Ah]で表すと、1C[A]以下、例えば0.1C[A]の放電レートで定電流の充放電を行う。あるいは、大電流での充放電を行う場合には、大電流充電と大電流放電とを均等に行うようにする。例えば2C[A]での放電を30秒行ったときには同様に2C[A]での充電を30秒行うようにする。なお、経年劣化マップの取得用の二次電池14は車両に搭載される二次電池14と同一タイプのものを使用する。
【0035】
1回の放電と1回の充電を1サイクルとして、複数サイクルに亘ってIV特性を求める。例えば二次電池14の寿命に達するまでのサイクル(例えば5000サイクル)を複数のサイクル期間(例えば100サイクル)に分割し、1サイクル期間ごとに耐久試験を行ってその都度IV特性を求める。IV特性とは電流値の軸と電圧値の軸からなる平面上に電流値と電圧値をプロットしたときの近似直線の傾きまたは近似曲線の増加率であり、二次電池14の内部抵抗と捉えることができる。したがってIV特性の増加率を求めることで内部抵抗増加率を求めることができる。なお、内部抵抗増加率の算出に当たっては、初期状態からの増加率を求めてもよいし、任意の時点からの増加率を求めてもよい。
【0036】
また、経年劣化マップの時間軸として、二次電池14の総使用時間の代わりに積算電流量[Ah]を用いる場合は、積算電流量を複数の区間に区分して、例えば0.5Ahごとの範囲に区分して、各区間における電流値及び電圧値をプロットしてIV特性を求めることが好適である。また、満充電時容量減少率[%]についても同様に複数の区間に区分して当該区間内のIV特性を求めることが好適である。
【0037】
また、温度履歴は例えば以下のように算出する。二次電池14は温度特性を有しており、温度によって劣化の進行度合いが変化することが知られている。そこで、相対的に劣化の進みが遅い温度(例えば25℃)を相対的に重みの少ない温度パラメータ(例えば1)に変換するとともに、相対的に劣化状態の進みが速い温度(例えば40℃)を相対的に重みの大きい温度パラメータ(例えば10)に変換し、初期状態からの温度パラメータの積算値に対する二次電池14の内部抵抗を測定する。この場合においても温度パラメータの積算値を複数の区間に区分して当該区間内のIV特性を求めることが好適である。
【0038】
なお、二次電池14の内部抵抗は温度及び充電率(SOC)によって変化するから、上述したような電流値−電圧値のサンプリング点を使用総時間区間または満充電時容量減少率区間または温度パラメータ区間ごとにグループ化した上で、さらにそれぞれの区間における電流値−電圧値のサンプリング点を所定の温度区間及び所定のSOC区間別に振り分け、振り分けられたサンプリング点のグループごとにIV特性及びその増加率を求めることが好適である。増加率の算出に当たっては、IV特性を算出したSOC区間及び温度区間と同一の区間における初期状態のIV特性を基準にすることが好適である。図7に二次電池14の使用時間、温度、SOC別の複数の経年劣化マップを示す。なお、図7に示す経年劣化マップでは抵抗増加率が示されているが、これに代えてまたは加えて内部抵抗値(IV特性値)そのものを記憶するようにしてもよい。また、マップ(表)の状態で記憶する代わりに、最小二乗法等によって関係式を取得してこれを補正部27に記憶させてもよい。
【0039】
以上のようにして取得した経年劣化マップを用いて、二次電池14の内部抵抗中のハイレート劣化成分を推定する。ハイレート劣化の推定手段として、主に(1)二次電池14の緩和状態からの電圧降下に基づいて算出された内部抵抗値または内部抵抗増加率と経年劣化マップにおける内部抵抗値または内部抵抗増加率との比較(2)稼働中の二次電池14の電流地及び電圧値に基づいて算出された内部抵抗値または内部抵抗増加率と経年劣化マップにおける内部抵抗値または内部抵抗増加率との比較(3)電池モデルにより算出した内部抵抗値または内部抵抗増加率と経年劣化マップにおける内部抵抗値または内部抵抗増加率との比較、の3種類の手段が挙げられる。以下それぞれの手段について説明する。また、以下の説明において特に断りのない限り、経年劣化マップは二次電池14の初期状態からの延べ経過時間(使用総時間)を時間軸に取るものとする。
【0040】
(1)二次電池の緩和状態からの電圧降下に基づいて算出された内部抵抗値または内部低効率と経年劣化マップにおける内部抵抗増加率との比較
制御部12の算出部25は、電圧センサ26から電圧値Vを取得するとともに二次電池側電流センサ22から電流値Iを取得する。なお、この手段においては、二次電池14が緩和した状態すなわち電流が流れておらず電圧値が安定している状態(例えば停車時)からの電流値及び電圧値の経時変化を測定する。二次電池14が完全に緩和した状態における開放電圧(OCV)を測定後、二次電池14が完全に緩和した状態から一定値の電流を流し始めたときの電圧降下を所定時間測定することによって、IV特性を高精度に測定することが可能となる。また、車両がいわゆるプラグインハイブリッド車両である場合には、充電中などに所望のパターンの一定電流を流し、そのときの電圧値の経時変化を測定することによってもIV特性を高精度に求めることが可能となる。
【0041】
さらに算出部25は取得した電圧値V及び電流値Iをグループ分けする。具体的には、予め定めた時間区間内であって、さらに予め定めたSOC区間及び温度区間別に電流値−電圧値のサンプリング点を振り分ける。時間区間に基づく振り分けは算出部25に時刻情報を送信可能な図示しないタイマ等に基づいて行われる。また、SOC区間に基づく振り分けは二次電池14の積算電流量等に基づいて行われる。さらに温度区間に基づく振り分けは温度センサ28から送られた温度Tに基づいて行われる。
【0042】
算出部25は特定の時間区間、SOC区間、温度区間におけるサンプリング点からIV特性、つまり内部抵抗値を求める。また内部抵抗増加率を基準に取る場合はさらに内部抵抗値を求めたSOC区間及び温度区間に対応する二次電池14の初期状態における内部抵抗値を制御部12内の記憶部に記憶された経年劣化マップから呼び出し、初期状態からの内部抵抗増加率を算出する。ここで、初期状態に代えて任意の時点を増加率算出の基準時に設定してもよい。
【0043】
算出部25によって算出された内部抵抗値または内部抵抗増加率(以下、算出部による内部抵抗値または内部抵抗増加率と呼ぶ)は補正部27に送られる。補正部27は制御部12の記憶部から経年劣化マップを呼び出す。さらに補正部27は、算出部による内部抵抗値の時間区間、SOC区間、温度区間に対応した内部抵抗値、または、算出部による内部抵抗増加率の時間区間、SOC区間、温度区間に対応した内部抵抗増加率を経年劣化マップから抽出する。
【0044】
図8に示すように、補正部27は、算出部による内部抵抗値から経年劣化による内部抵抗値、または、算出部による内部抵抗増加率から経年劣化による内部抵抗増加率を減算する。図8においては算出部による内部抵抗増加率70から経年劣化マップによる内部抵抗増加率72を減算した様子を例示している。上述したように、算出部による内部抵抗値(または内部抵抗増加率)には経年劣化による内部抵抗値(または内部抵抗増加率)とハイレート劣化による内部抵抗値(または内部抵抗増加率)とが重ね合わされているものと考えられる。一方、経年劣化マップによる内部抵抗値(または内部抵抗増加率)は主に経年劣化による内部抵抗値(または内部抵抗増加率)を示していると考えられる。したがって算出部による内部抵抗値と経年劣化マップによる内部抵抗値との差、または、算出部による内部抵抗増加率と経年劣化マップによる内部抵抗増加率との差を求めることによってハイレート劣化による内部抵抗値または内部抵抗増加率を推定することができる。
【0045】
なお、時間軸として二次電池14の総時間を用いる代わりに満充電時の電池容量減少率を用いる場合、二次電池側電流センサ22等による二次電池14の積算電流量から正確な電池容量減少率を求めることが困難な場合がある。例えば満充電時から放電終止電圧までの積算電流量から満充電時の電池容量[Ah]を求めることができ、したがって満充電時の電池容量の減少率も求めることが可能となるが、実際の車両の運転時においては放電終止電圧に至る前に充電が開始されたり、満充電に至る前に放電が開始される場合がある。このような場合においては例えば特開2010−60384号公報にて説明されているような満充電容量のモデル式を用いることによって推定することが可能である。
【0046】
(2)稼働中の二次電池14の電流値及び電圧値に基づいて算出された内部抵抗値または内部抵抗増加率と経年劣化マップにおける内部抵抗値または内部抵抗増加率との比較
上述した(1)による手段では緩和状態の二次電池14を基点として内部抵抗値や内部抵抗増加率を求めていたが、これに代えて稼働中の二次電池14の電流値と電圧値から内部抵抗値や内部抵抗増加率を求めてもよい。算出部25は車両走行中等、二次電池14の充放電が行われている期間において二次電池14の電流値及び電圧値を測定し、測定された電流値及び電圧値からIV特性(内部抵抗値)を求める。IV特性の算出に当たっては(1)と同様に定められた時間区間、SOC区間、温度区間における電流値及び電圧値を抽出してこれに基づいてIV特性を求める。補正部27は算出したIV特性に対応する時間区間、SOC区間、温度区間における経年劣化マップの内部抵抗値を呼び出す。さらに補正部27は図9に示すように、算出部によるIV特性74(内部抵抗値)と、経年劣化マップにおける内部抵抗値76との差を求める。具体的にはそれぞれの直線の傾きの差を求める。この傾きの差がハイレート劣化を表すと考えられることから、判定部29によって傾きの差を監視することでハイレート劣化の増加傾向を把握することができる。
【0047】
また、算出部による内部抵抗値と経年劣化マップによる内部抵抗値を比較する代わりに、(1)と同様にして算出部による内部抵抗増加率と経年劣化マップの内部抵抗増加率を比較してもよい。すなわち、算出部による内部抵抗値を求めた時間区間、SOC区間、温度区間に対応する二次電池14の初期状態(や任意の時点)における内部抵抗値を制御部12内の記憶部に記憶された経年劣化マップから呼び出し、算出部による内部抵抗値を初期状態の内部抵抗値で割ることによって内部抵抗増加率を算出する。一方、経年劣化マップから、算出部による内部抵抗値を求めたSOC区間及び温度区間に対応する内部抵抗増加率を抽出する。さらにそれぞれ求められた内部抵抗増加率を比較する。
【0048】
(3)電池モデルにより算出した内部抵抗値または内部抵抗増加率と経年劣化マップにおける内部抵抗値または内部抵抗増加率との比較
本手段では二次電池内の活物質やイオン等の挙動をモデル化した電池モデルを使用する。図10は、電池モデルによって表現される二次電池の内部構成の概略を説明する概念図である。二次電池14は、負極41と、セパレータ114と、正極39とを含む。セパレータ114は、例えば負極41及び正極39の間に設けられた樹脂に電解液を浸透させることで構成される。
【0049】
負極41及び正極39の各々は、球状の活物質118の集合体で構成される。二次電池14の放電時において、負極41の活物質118の界面上では、リチウムイオンLi及び電子eを放出する化学反応が行われる。一方、正極39の活物質118の界面上ではリチウムイオンLi及び電子eを吸収する化学反応が行われる。なお、二次電池14の充電時においては、電子eの放出及び吸収に関して、上記の反応とは逆の反応が行われる。
【0050】
負極41には、電子eを吸収する電流コレクタ113が設けられ、正極39には、電子eを放出する電流コレクタ116が設けられる。負極の電流コレクタ113は代表的には銅で構成され、正極の電流コレクタ116は代表的にはアルミで構成される。電流コレクタ113には負極端子が設けられ、電流コレクタ116には正極端子が設けられる。セパレータ114を介したリチウムイオンLiの授受によって、二次電池14では充放電が行われ、充電電流または放電電流が生じる。
【0051】
すなわち、二次電池内部の充放電状態は、電極(負極41及び正極39)の活物質118におけるリチウム濃度分布によって異なる。このリチウムは、リチウムイオン電池における反応関与物質に相当する。
【0052】
負極41及び正極39で電子eの移動に対する純電気的な抵抗(純抵抗)Rd及び活物質界面での反応電流発生時に等価的に電気抵抗として作用する電荷移動抵抗(反応抵抗)Rrとを併せたものが、二次電池14をマクロに見た場合の内部抵抗(直流抵抗)に相当する。このマクロな内部抵抗を、以下では直流抵抗Raとも示す。また、活物質118内におけるリチウムLiの拡散は、拡散係数Dに支配される。すなわち、拡散係数Dは拡散抵抗の大きさを示すパラメータである。
【0053】
引き続き、電池モデル125の一例を説明する。なお、ここで説明する電池モデルでは、常温時における電気二重層キャパシタの影響が小さいことを考慮して、この影響を無視したモデルを構築している。さらに、電池モデルは、電極の単位極板面積あたりのモデルとして定義されるものとする。電極の単位極板面積あたりのモデルを用いることで、そのモデルを設計容量に対して一般化させることができる。
【0054】
まず、二次電池14の出力電圧である電池電圧Vについては、電池温度T、電池電流I、開放電圧(OCV)U及び、上述の二次電池14全体のマクロな直流抵抗Raを用いた下記の(1)式(電圧方程式)が成立する。ここで、電池電流Iは、単位極板面積あたりの電流値を示すものとする。すなわち、正負極端子に流れる電池電流(電流計により計測可能な電流値)をIbとし、電池の両面極板面積をSとすると、電池電流Iは、I=Ib/Sで定義される。以下、電池モデル中で述べる「電流」及び「電流推定値」については、特に説明のない限り、上記の単位極板面積あたりの電流を指すものとする。
【0055】
【数1】

【0056】
θ及びθは、それぞれ正極活物質表面における局所的SOC、及び負極活物質表面における局所的SOCを表す。開放電圧OCVは、正極開放電位U及び負極開放電位Uの電位差として表される。
【0057】
図11に示すように、正極開放電位U及び負極開放電位Uは、それぞれ局所的SOCθ及び局所的SOCθに依存して変化する特性を有する。したがって、二次電池14の初期状態において、局所的SOCθと正極開放電位Uとの関係、及び局所的SOCθと負極開放電位Uとの関係を測定することにより、局所的SOCθの変化に対する正極開放電位U(θ)の変化特性及び局所的SOCθの変化に対する負極開放電位U(θ)の変化特性を予め記憶する特性マップを作成することができる。
【0058】
また、直流抵抗Rは、局所的SOC(θ)、局所的SOC(θ)及び電池温度の変化に応じて変化する特性を有する。すなわち、直流抵抗Rは、SOC(より詳細には、局所的SOC(θ,θ))及び電池温度Tの関数として示される。したがって、二次電池14の初期状態における実測実験結果に基づき、図13に示されるような直流抵抗Rの初期状態値マップ131を予め作成することができる。
【0059】
図13を参照して、初期状態値マップ131では、0(%)〜100(%)を複数に分割したSOC範囲と、−Ty(℃)〜Tx(℃)を複数に分割した温度範囲との組み合わせによって定義される領域ごとに、直流抵抗Rの初期状態値が格納される。これらの複数の領域は、後述するパラメータ変化率の学習区分と一致するので、「学習領域」とも称する。
【0060】
再び図10を参照して、上述のように、負極41及び正極39それぞれの球状活物質モデルにおいて、活物質表面(電解液との界面)における局所的SOCθ(i=1,2)は、下記の(2)式で定義される。なお、局所的SOCθと同じく、以下の説明では、iで表された添え字は、1の場合は正極を表し、2の場合は負極を示すものと定義する。
【0061】
【数2】

【0062】
(2)式中において、cse,iは活物質界面におけるリチウム平均濃度であり、cs,i,maxは活物質における限界リチウム濃度である。
【0063】
球状モデルで取り扱われる活物質内では、リチウム濃度cs,jは、半径方向に分布を有する。すなわち、球状と仮定された活物質内でのリチウム濃度分布は下記の(3)式に示す極座標系の拡散方程式により規定される。
【0064】
【数3】

【0065】
(3)式において、Ds,iは活物質におけるリチウムの拡散係数である。図13に示すように、拡散係数Ds,iはSOC及び電池温度に依存して変化する特性を有する。以下では、Ds,i(i=1,2)を総称する場合には、単に拡散係数Dsとも称する。
【0066】
拡散係数Dsについても、上述の直流抵抗Raと同様に、二次電池14の初期状態における実測実験結果に基づき、図14に示されるような初期状態値マップ132を予め作成することができる。
【0067】
図14を参照して、初期状態値マップ132では、初期状態値マップ131と共通に区分された学習領域ごとに、拡散係数Dsの初期状態値が格納される。図13に示された初期状態値マップ131及び図14に示された初期状態値マップ132は、例えば制御部12の記憶部に記憶される。
【0068】
(3)式の拡散方程式の境界条件は下記(4)、(5)式のように設定される。
【0069】
【数4】

【0070】
(4)式は、活物質中心での濃度勾配が0であることを示している。(5)式では、活物質の電解液界面におけるリチウム濃度変化は、活物質表面からのリチウムが出入りすることに伴って変化することを意味している。
【0071】
(5)式においてrs,iは活物質半径を示し、εs,iは活物質の体積分率を示し、as,iは電極単位体積当たりの活物質表面積を示す。これらの値は、各種電気化学測定法により測定した結果より決定される。また、Fはファラデー定数である。
【0072】
さらに、(5)式中のjLiは単位体積・時間当たりのリチウム生成量であり、簡単化のために電極厚さ方向で反応が均一であると仮定すると、電極厚さLi及び単位極板面積あたりの電池電流Iを用いて下記(6)式で示される。
【0073】
【数5】

【0074】
電池電流Iまたは電池電圧Vを入力として、これら(1)〜(6)式を連立させて解くことによって、電圧推定値または電流推定値を算出しながら、二次電池14の内部状態を推定して、充電率を推定することが可能となる。
【0075】
この電池モデルを用いることにより、例えば、電池電圧Vを入力として二次電池の充電率を推定することが可能となる。電池電圧Vを入力とする場合、充電率は、図12に示されるような、活物質モデル内の平均リチウム濃度と充電率との関係を示すマップを用いて算出される。すなわち、電池モデル式によって算出された活物質モデル内の平均リチウム濃度から、図12のマップに従って現在のSOCを推定することができる。
【0076】
ここで、図15を用いて、上述の電池モデルを用いた二次電池の状態推定の制御処理手順を説明する。図15に示される処理は、制御部12によって所定の演算周期ごとに実行される。
【0077】
図15には、二次電池の状態推定およびパラメータ変化率学習の両方の制御処理手順が示される。制御部12は、ステップS100において、電圧センサ26により電池電圧Vbを測定する。制御部12は、ステップS110において、温度センサ28により電池温度Tbを測定する。今回の演算周期における電池電圧Vb及び電池温度Tbは、電池モデル式中の電池電圧V及び電池温度Tとしてそれぞれ用いられる。なお、制御部12は、測定により得られる電池電流Ibについても収集している。
【0078】
制御部12は、ステップS120において、(2)式に従って、前回の演算周期におけるリチウム濃度分布cse,jに基づき、活物質表面の局所的SOCθi(θ及びθ)を算出する。
【0079】
さらに、制御部12はステップS130において、図11に示したような、局所的SOCθiに対する開放電位Ui(θi)の特性マップから、開放電位Ui(U1及びU2)を算出し、その算出した開放電位UおよびUの電位差として、開放電圧推定値U#を算出する。
【0080】
さらに、制御部12は、ステップS140において、ステップS130で算出された局所的SOCθi及び測定された電池温度Tに基づいて、直流抵抗Raを求める。例えば、初期状態値マップ131に従って、直流抵抗Raが決定される。
【0081】
制御部12は、さらに、ステップS150において、電池電圧V(=Vb)と、算出した開放電圧推定値U#及び直流抵抗Raとを用いて、下記(7)式に基づいて電池電流の推定値Iteを算出する。
【0082】
【数6】

【0083】
次に、制御部12は、ステップS160において、電池電流推定値Iteを(6)式の電池電流Iに代入することにより、単位体積・時間当たりのリチウム生成量jLiを算出する。この単位体積・時間当たりのリチウム生成量jLiを(5)式の境界条件に用いて(3)式の拡散方程式を解くことにより、正負極それぞれの活物質内におけるリチウム濃度分布が決定される。なお、(3)式における拡散係数Ds,iについても、SOCおよび電池温度に基づいて求められる。たとえば、初期状態値マップ132に従って、拡散係数Ds,iが決定される。
【0084】
制御部12は、(3)式の拡散方程式を解く際には、位置および時間により離散化した拡散方程式を用いて、活物質内部のリチウム濃度分布cs,i,k(t+Δt)を更新する(ステップS170)。ここでΔtは離散時間ステップを示し、演算実行周期に相当する。またkは半径方向に離散化した離散位置番号を表す。拡散方程式を位置および時間により離散化する方法は公知であるので詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0085】
次に制御部12はステップS180により、下記(8)式に従って活物質内部の平均リチウム濃度csaveを算出する。ただし、(8)式においてNは球状の活物質を半径方向に離散化した場合の分割数である。
【0086】
【数7】

【0087】
そして、制御部12は、ステップS190において、図12に示すような、活物質内の平均リチウム濃度csaveと二次電池14の充電率(SOC)との関係を示した、予め記憶されたマップを用いてSOCを算出する。
【0088】
このようにして、制御部12は、センサによって測定された電池電圧Vbおよび電池温度Tbから、二次電池14の充電率(SOC)、開放電圧推定値U#、および単位極板面積当たりの電池電流の推定値を算出することができる。また、電池全体に流れる電流の推定値は、上述の電池電流Iの定義式より、単位極板面積当たりの電流推定値に電池の両面極板面積を乗じることにより算出できる。
【0089】
なお、以上の電池モデル式では、負極41および正極39のそれぞれについて、対応する別個の球状活物質モデルを設定した。ただし、制御部12の演算負荷を軽減するために、負極41および正極39での平均した特性を有する単一の球状モデルを、正極負極共通の活物質モデルとして使用してもよい。
【0090】
次に、電池モデル中のパラメータについて説明する。電池モデル式の複数のパラメータのいくつかは、二次電池の使用に伴う電池の劣化によって変化する。たとえば、上記直流抵抗Raは、電池の劣化によって次第に増加する。初期状態(代表的には新品時)における直流抵抗Ra(初期状態値)と、実際の直流抵抗Ra(現在のパラメータ値)との間の差が大きい場合には、SOCの推定誤差が生じやすくなる。
【0091】
同様に、電池の劣化によって、活物質内の反応関与物質の拡散速度が低下(すなわち拡散係数が低下)し、その結果、いわゆる拡散抵抗が増加する。拡散抵抗の増加は、特に大電流での充放電を継続するケースにおいて電池性能および電流−電圧特性に大きな影響を及ぼす。したがって、大電流で電池を充電あるいは放電する電動車両(ハイブリッド車両や電気車両)においては拡散抵抗の変化、すなわち活物質における拡散係数の変化を推定することが好ましい。
【0092】
したがって、本実施形態では、式(1)中の直流抵抗Raと式(3)中の拡散係数Dsについて、パラメータ変化率を逐次推定することによって、パラメータ値を更新する。
【0093】
まず、直流抵抗Raのパラメータ変化率について説明する。直流抵抗Raについて、初期状態値Ranからのパラメータ変化率grは、下記の(9)式により定義される。
【0094】
【数8】

【0095】
制御部12は、直流抵抗Raのパラメータ変化率grを、以下に説明する忘却要素付きの逐次最小自乗法を用いて推定する。まず、忘却係数付きの逐次最小自乗法について説明する。
【0096】
逐次最小自乗法によれば、下記の(10)式で示す線形回帰モデルで表されるシステムにおいて、(10)式中のパラメータΘは、(11)〜(13)式で示される時間更新式を、(14)、(15)式の初期条件により逐次演算することによって推定される。各式においてパラメータΘの推定値は、Θ#で示されている。
【0097】
【数9】

【0098】
(11)、(13)式においてλは忘却係数であり、通常λ<1.0である。また、Pは共分散行列であり、(15)式の初期値P(0)は単位行列Iの対角要素に定数γを乗じた行列とし、γには通常10〜10程度の大きな値を用いる。パラメータΘ#の初期値Θ#は通常ゼロベクトルとされる。
【0099】
このような、忘却要素付きの逐次最小自乗法を用いて、直流抵抗の変化率grを以下のようにして推定する。すなわち、新品状態から経年変化(劣化)した二次電池の直流抵抗Raは、(9)式の定義によりRa=gr・Ranと表せるので、これを(1)式に代入し、さらに(10)式の形に書き直すと、電池モデル式に基づく線形回帰モデル式として(16)式が得られる。
【0100】
【数10】

【0101】
二次電池14の使用中(オンライン時)には、(16)式の左辺の開放電圧U(θ)に、充電率推定処理の過程で推定した値を用い、Vには測定された電池電圧Vbを用いることにより、Yを計算することができる。(16)式の右辺については、電池温度Tbおよび局所的SOCθ1およびθを引数として初期状態値マップ131を参照することにより、直流抵抗の初期状態値Ranが求められる。また、電池電流Iとしては、現在の電池電流(測定値)Ibから算出した単位極板面積当たりの電流値を代入することにより、Zを計算することができる。
【0102】
このように演算したYおよびZを用いて、(11)〜(15)式の忘却要素付き逐次最小自乗法により、推定パラメータΘとして、直流抵抗Raのパラメータ変化率grを逐次推定することが可能となる。なお一括最小自乗法等の他方式の最小自乗法の適用も可能である。
【0103】
次に、拡散係数Dのパラメータ変化率の推定について説明する。拡散係数Dsについても、下記(17)式に従って、初期状態パラメータ値(Dsn)に対する変化率として、拡散係数のパラメータ変化率gdが定義される。
【0104】
【数11】

【0105】
制御部12は、拡散抵抗の影響が電池電圧に大きく表れる時間的範囲において、所定の周期で電池電圧Vb、電池電流Ibおよび電池温度Tbのデータを繰り返し取得する。
【0106】
さらに、制御部12は、その範囲の電池データを用いて、パラメータ変化率をある候補値としたときの電池モデルによって電池電流の推定値Iteを求めるとともに、実際の電池電流Ibとの誤差を評価する評価関数を算出する。さらに、たとえば公知のGSM法(黄金分割法)を用いて、パラメータ変化率を切り替えながら上記処理を所定の繰り返し回数実行することにより、評価関数が最小となるようなパラメータ変化率を探索することができる。
【0107】
GSM法が二分法の一種であり、探索範囲および許容誤差を決めることにより、既知の探索関数で許容誤差を満たす最適値を求められるという特徴がある。ある使用条件および使用期間後におけるリチウムイオン電池の活物質内リチウム拡散係数は、予め劣化試験等により把握することが可能であり、最大でどの程度まで初期状態と比較して拡散係数が変化するかについては事前に予測することができる。
【0108】
したがって、最大限変化し得る変化率の範囲を探索範囲として設定することにより、拡散係数変化率推定に必要な演算時間を予め予測できるという利点が生じる。このことは、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載された二次電池への適用に適している。なお、GSM法の詳細については公知であるため、詳細な説明はここでは省略する。
【0109】
本実施形態では、パラメータ変化率について、二次電池14のSOCおよび電池温度Tbの組み合わせによって規定される所定の学習領域ごとに学習が行われる。図16は、直流抵抗Raのパラメータ変化率を格納するための、変化率マップ141の概略的な構成を説明する概念図である。
【0110】
図16を参照して、変化率マップ141では、初期状態値マップ131、132と共通に設定された学習領域ごとに、式(9)で定義されるパラメータ変化率grの学習値grlが格納される。パラメータ変化率学習値grlの初期値は、各学習領域とも1.0である。そして制御部12は、所定の学習条件が成立すると、そのときのSOCおよび電池温度に対応する学習領域において、パラメータ変化率grの推定値に基づいて、マップ値(パラメータ変化率学習値grl)を更新する。
【0111】
例えば、更新前のマップ値g10および学習条件の成立時におけるパラメータ変化率の推定値gに基づいて、下記(18)式に従って、新たな学習値g11が算出される。なお、(18)式中の係数α(0<α<1)によって、学習値の変化が平滑化される。
【0112】
【数12】

【0113】
図17には、拡散係数Dsのパラメータ変化率学習値gdlを格納するための、変化率マップ142の概略的な構成を説明する概念図が示されている。変化率マップ142では、初期状態値マップ131、132および変化率マップ141と共通に設定された学習領域ごとに、式(17)で定義されるパラメータ変化率gdの学習値gdlが格納される。パラメータ変化率学習値gdlの初期値は、各学習領域とも1.0である。制御部12は、所定の学習条件が成立すると、そのときのSOCおよび電池温度に対応する学習領域において、パラメータ変化率gdの推定値に基づいて、マップ値(パラメータ変化率学習値gdl)を更新する。学習値の更新は、上記(18)式に従って実行することができる。
【0114】
図18は、変化率マップにおける学習値の更新についてのバリエーションを説明する概念図である。学習領域AR1において、パラメータ変化率の学習条件が成立したものとする。このとき、少なくとも学習領域AR1のマップ値が、上記式(18)に従って更新される。
【0115】
さらに、学習領域AR1に隣接する学習領域AR2〜AR8のうち少なくとも一部についても、マップ値を更新してもよい。このときには、式(18)中の係数αを、学習領域AR1におけるマップ値更新時と比較して、小さな値に設定することが好ましい。このようにすると、学習条件が成立した場合に、類似のSOCおよび/または電池温度領域においても、学習結果を反映することができる。
【0116】
次に、本実施形態における二次電池の評価システムにおけるパラメータ変化率学習の制御処理手順を説明する。図15を参照して、制御部12はステップS100〜S190と並列して、上述したパラメータ変化率gr、gdの推定処理を実行している。そして、制御部12は、ステップS200により、パラメータ変化率の学習条件が成立しているかどうかを判定する。
【0117】
直流抵抗Raは、電池電流に対し電池電圧が線形的に変化する領域において推定することが好ましい。したがって、このような二次電池14の充放電条件が成立しているときに、パラメータ変化率grの学習について、ステップS200をYES判定とするように学習条件を設定することができる。
【0118】
拡散係数Dsは、一旦発生した電池電流が0になった後における、活物質内のリチウムの拡散の度合いを示すものである。したがって、二次電池14が充放電した後であって、電池電流が0になった後における電池電圧の変化に基づいて、拡散係数が算出される。したがって、電池電流=0の期間がある程度継続したときに、パラメータ変化率gdの学習について、ステップS200をYES判定とするように学習条件を設定することができる。
【0119】
このように、直流抵抗Raのパラメータ変化率grと、拡散係数Dsのパラメータ変化率gdとは、独立に学習することが好ましい。すなわち、ステップS200、S210の処理についても、直流抵抗Raおよび拡散係数Dsのそれぞれについて別個に実行される。
【0120】
制御部12は、学習条件が成立すると(S200のYES判定時)、ステップS210において学習条件が成立したパラメータ変化率について、変化率マップ141または142に格納されたマップ値を更新する。これにより、少なくとも、学習条件成立時のSOCおよび電池温度に対応した学習領域におけるパラメータ変化率学習値が更新される。
【0121】
制御部12は、一方、学習条件が不成立のとき(S200のNO判定時)には、ステップS210の処理をスキップする。したがって、変化率マップ141または142に格納された当該パラメータ変化率のマップ値は維持される。
【0122】
このように、本実施形態における二次電池の劣化評価システムでは、二次電池14の使用時に、電池モデル中の所定パラメータ(代表的には、直流抵抗Raおよび拡散係数Ds)について、初期状態値に対する変化(パラメータ変化率)がオンライン推定されていることを前提としている。そして、推定されたパラメータ変化率に基づいて、図16、図17に示した変化率マップ141、142を用いて、SOCおよび電池温度の組み合わせによって規定される所定の学習区分ごとに、パラメータ変化率が学習されている。
【0123】
補正部28は、推定された直流抵抗Raの変化率gr及び拡散係数Dsの変化率に基づいて、電池モデルにおける内部抵抗(IV抵抗)増加率を計算する。具体的には、内部抵抗は直流抵抗と拡散抵抗の和で表すことができるから、直流抵抗変化率及び拡散係数の変化率に基づいて内部抵抗増加率を求めることができる。さらに、補正部28は、電池モデルによる内部抵抗増加率を求めたときのSOC、温度、総時間と同じ条件の内部抵抗増加率を経年劣化マップから呼び出す。さらに図19に示すように、電池モデルによって求めた内部抵抗増加率48から経年劣化マップによる内部抵抗増加率50を除く(減算する)。これによってハイレート劣化による内部抵抗増加率を推定することができる。
【0124】
また、内部抵抗増加率の代わりに内部抵抗値を用いてもよい。この場合、電池モデルによる内部抵抗増加率を求めたときのSOC、温度条件における初期状態の内部抵抗値を経年劣化マップから呼び出し、抽出された内部抵抗値と電池モデルによる内部抵抗増加率との積から電池モデルによる内部抵抗値を算出する。さらに電池モデルによる内部抵抗増加率を求めたときのSOC、温度、総時間と同じ条件の内部抵抗値を経年劣化マップから呼び出して、これと電池モデルによる内部抵抗値とを比較する。
【0125】
判定部29は上記(1)−(3)の手法を用いて求めたハイレート劣化による内部抵抗値または内部抵抗増加率が予め定めた上限値を超えたか否かを判定する。さらに上限値を超えたと判定部29により判定された際には、制御部12はハイレート劣化を解消するための処理を実行する。以下、ハイレート劣化を解消する処理を「ハイレート劣化戻し処理」と呼ぶ。また、ハイレート劣化による内部抵抗値または内部抵抗増加率が予め定めた上限値を超過した状態や、その他二次電池14のパラメータに基づいてハイレート劣化の解消が必要であると判定された状態を「ハイレート劣化戻し条件が成立した状態」とする。
【0126】
ハイレート劣化戻し処理を実行する際には、強制充電及び強制放電と呼ばれる処理が実行される。二次電池14から大電流放電が行われたことによってハイレート劣化が生じた場合、二次電池14に対して強制的に大電流充電を行うことによってハイレート劣化を解消する。また、二次電池14に大電流充電が行われたことによってハイレート劣化が生じた場合は、二次電池14に対して強制的に大電流放電を行うことによってハイレート劣化を解消する。
【0127】
強制充電および強制放電は、第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20のスイッチング素子を制御することにより実行される。以下、第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作について説明する。
【0128】
まず、強制充電及び強制放電を実施していない、通常状態における第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作について説明する。なお、図20から図30では図示を簡略化するために二次電池側電流センサ22、補助電源側電流センサ24、電圧センサ26、温度センサ28の図示を省略する。
【0129】
通常状態(強制放電及び強制充電時以外の状態)においては、第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20は電圧制御によって制御されている。例えば第1の電力変換器18の回転電機30側の電圧(以下、回転電機側電圧と呼ぶ)に対して指令電圧値VECUが予め定められている。また、第1の電力変換器18の二次電池14側の電圧(以下、二次電池側電圧と呼ぶ)に対して目標電圧値V1TGTが予め定められている。また、第2の電力変換器20については、補助電源16側の電圧(以下、補助電源側電圧と呼ぶ)に対して目標電圧値V2TGTが予め定められている。
【0130】
指令電圧値VECUは回転電機30への要求出力等に基づいて制御部12によって設定される。また、二次電池14に対する目標電圧値V1TGTは二次電池14のSOC(充電率)が所定のSOCとなるような電圧値として設定されている。補助電源16に対する目標電圧値V2TGTも目標電圧値V1TGTと同様に、補助電源16のSOCが所定のSOCとなるような電圧値として設定されている。目標電圧値V1TGT及び目標電圧値V2TGTは予め設定され所定の記憶手段、例えば制御部12の記憶部に記憶されている。
【0131】
これらの電圧値に加えて、二次電池14の測定端子電圧値V1BATと、補助電源16の測定端子電圧値V2BATとに基づき、制御部12は第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20を制御する。二次電池14の測定端子電圧値V1BATは電圧センサ26により測定される。また、補助電源16の測定端子電圧値V2BATは補助電源側電流センサ24に基づいて算出されるか、または補助電源側電圧センサ(図示せず)により測定される。
【0132】
力行時における第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作状態を図20から図22に例示する。図20には力行時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTに等しいときの第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作状態が例示されている。第1の電力変換器18は二次電池14の端子電圧値V1BATを指令電圧値VECUまで昇圧するとともに二次電池14から回転電機30に電流を供給する昇圧コンバータとして機能する。具体的には制御部12によって二次電池14の端子電圧値V1BATと指令電圧値VECUとに応じたデューティ(電圧変換率)が算出され、このデューティにしたがって第1の電力変換器18の下アーム34のスイッチング素子42のオン/オフ動作が制御される。一方、第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48及び下アーム46のスイッチング素子50はスイッチング動作を停止していてもよいし、リアクトル43に流れる電流を維持するためにスイッチング動作の1周期中に充電と放電を交互に繰り返すようにそれぞれのスイッチング素子を動作させてもよい。
【0133】
図21には力行時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTを割り込んだときの様子が例示されている。第1の電力変換器18は図20と同様に二次電池14の端子電圧値V1BATを指令電圧値VECUまで昇圧する。一方、第2の電力変換器20は二次電池14の電力または回転電機30からの回生電力を補助電源16に供給して補助電源16を充電させる。このとき第2の電力変換器20は回転電機側の電圧である指令電圧値VECUを補助電源16の目標電圧値V2TGTまで降圧させる降圧コンバータとして機能する。具体的には、指令電圧値VECUと目標電圧値V2TGTとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48のオン/オフ動作が制御される。
【0134】
図22には力行時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTを上回ったときの様子が例示されている。第1の電力変換器18は図20、21と同様に二次電池14の端子電圧値V1BATを指令電圧値VECUまで昇圧する。一方、第2の電力変換器20は補助電源16から二次電池14または回転電機30に電力を供給して補助電源16を放電させる。このとき第2の電力変換器20は補助電源16の端子電圧値V2BATを指令電圧値VECUまで昇圧する昇圧コンバータとして機能する。具体的には、補助電源16の端子電圧値V2BATと指令電圧値VECUとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の下アーム46のスイッチング素子50のオン/オフ動作が制御される。
【0135】
次に、回生時の第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作状態を図23から図25に例示する。図23には回生時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTに等しいときの第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作状態が例示されている。第1の電力変換器18は回転電機30の出力電圧を二次電池14の目標電圧値V1TGTまで降圧して回転電機30の回生電力を二次電池14に供給する降圧コンバータとして機能する。具体的には、二次電池14の目標電圧値V1TGTと指令電圧値VECUとに応じたデューティにしたがって第1の電力変換器18の上アーム32のスイッチング素子38のオン/オフ動作が制御される。一方、第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48及び下アーム46のスイッチング素子50はスイッチング動作を停止していてもよいし、リアクトル43に流れる電流を維持するためにスイッチング動作の1周期中に充電と放電を交互に繰り返すようにそれぞれのスイッチング素子を動作させてもよい。
【0136】
図24には回生時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTを割り込んだときの様子が例示されている。第1の電力変換器18は図23と同様に指令電圧値VECUを二次電池14の目標電圧値V1TGTまで降圧する。一方、第2の電力変換器20は指令電圧値VECUを補助電源16の目標電圧値V2TGTまで降圧させて回転電機30の回生電力を補助電源16に供給する降圧コンバータとして機能する。具体的には、指令電圧値VECUと目標電圧値V2TGTとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48のオン/オフ動作が制御される。
【0137】
図25には回生時であって補助電源16の端子電圧値V2BATが目標電圧値V2TGTを上回ったときの様子が例示されている。第1の電力変換器18は図23、24と同様に指令電圧値VECUを二次電池14の目標電圧値V1TGTまで降圧する。一方、第2の電力変換器20は補助電源16の端子電圧値V2BATを指令電圧値VECUまで昇圧して補助電源16の電力を二次電池14に供給する昇圧コンバータとして機能する。具体的には、補助電源16の端子電圧値V2BATと指令電圧値VECUとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の下アーム46のスイッチング素子50のオン/オフ動作が制御される。
【0138】
次に、ハイレート劣化戻し条件が成立して強制充電を行うにあたり、通常状態から強制充電に移行する移行期間における第1の電力変換器18及び第2の電力変換器20の動作状態を図26に例示する。強制充電においては補助電源16から二次電池14に大電流を流す。このとき、補助電源16の容量によっては短期間のうちに電荷が尽きてしまって二次電池14のハイレート劣化を解消し切れないおそれもある。そこで、強制充電に先駆けて補助電源16に溜め込む電荷量を通常状態よりも増加させて大電流放電に備える。
【0139】
制御部12は、補助電源16の目標電圧値V2TGTに増加分ΔVを加えた電圧値V2TGT+ΔVを補助電源16の新たな目標電圧値として設定する。具体的には新たな目標電圧値V2TGT+ΔVが目標電圧値V2TGT以上であって補助電源16のSOCが100%以下となるような範囲でΔVが設定される。この新たに設定された電圧値V2TGT+ΔVと指令電圧値VECUとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48のオン/オフ動作が制御される。これにより補助電源16にV2TGT+ΔV分の電荷が溜め込まれる。
【0140】
また、上述の移行期間及び後述する強制充電においては、第1の電力変換器18の制御方式が電圧制御から電流制御に切り替わる。すなわち、移行期間(例えば回転電機30が回生状態の場合)においては、回転電機30から補助電源16への充電を迅速に行うために、第1の電力変換器18には電流が流入しないように(I1in=0)第1の電力変換器18を制御する。具体的には図26に示すように、第1の電力変換器18の上アーム32のスイッチング素子38を常時オフにする。
【0141】
移行期間において補助電源16の電荷を溜め込んだ後に二次電池14に対する強制充電が行われる。図27に示すように、第2の電力変換器20の下アーム46のスイッチング素子50は、補助電源16の端子電圧値V2BAT(=V2TGT+ΔV)を指令電圧値VECUまで昇圧して補助電源16の電力を二次電池14に供給する。さらに、二次電池14に大電流を流入させるため、二次電池14に流入する電流値I1inが二次電池14に対して設定された大電流充電領域の任意の電流値I1in-maxとなるように第1の電力変換器18が制御される。ここで、大電流充電領域は二次電池14の満充電時の容量に応じて予め定められる。
【0142】
また、二次電池14に流入する電流値I1inを設定電流値I1in-maxに制御する電流制御は例えば以下のように行われる。すなわち、第2の電力変換器20から流れる電流値をI2out、デューティをαで表すと、α=I1in-max/I2outとの数式に基づいて、またはこの関係が記憶された表またはマップに基づいて制御部12はデューティαを設定するとともに、このデューティαにしたがって第1の電力変換器18の上アーム32のスイッチング素子38のオン/オフ制御を行う。この結果、二次電池14に大電流が供給され、二次電池14のハイレート劣化が解消される。
【0143】
図28に、移行期間から強制充電に至るまでの二次電池14及び補助電源16の電流値の変化と、補助電源16のSOCの変化を示す。強制充電への移行期間においては二次電池14への充電が遮断されるとともに補助電源16に電荷が溜め込まれる。これによって補助電源16のSOCは目標値SOCTGTよりもΔV分だけ高い値となる。さらに強制充電が実行されると補助電源16から二次電池14に設定電流値I1in-maxの電流が流れ込む。
【0144】
次に、強制放電と、通常状態から強制放電に至るまでの移行期間について説明する。強制放電においては二次電池14から補助電源16に電流を送り込む。このとき、補助電源16の容量によっては短期間のうちに満充電に到達して二次電池14のハイレート劣化を解消しきれないおそれもある。そこで、強制放電に先駆けて補助電源16の電荷を放出して大電流充電に備える。
【0145】
制御部12は、補助電源16の目標電圧値V2TGTにΔVを減じた電圧値V2TGT−ΔVを補助電源16の新たな目標電圧値とする。さらに図29に示すように新たな電圧値V2TGT−ΔVと指令電圧値VECUとに応じたデューティにしたがって第2の電力変換器20の下アーム46のスイッチング素子50のオン/オフ動作が制御される。
【0146】
移行期間において補助電源16の電荷を所定量放出した後に二次電池14による強制放電が実行される。図30に示すように、第2の電力変換器20の上アーム44のスイッチング素子48は、指令電圧VECUを補助電源16の端子電圧V2BAT(=V2TGT−ΔV)まで降圧して二次電池14からの電流を補助電源16に送り込む。
【0147】
さらに、第1の電力変換器18の制御方式が電圧制御から電流制御に切り替わる。すなわち二次電池14から大電流を放電させるため、二次電池14から流れる電流値I1outが二次電池14に対して設定された大電流放電領域の任意の電流値I1out-maxとなるように第1の電力変換器18が制御される。ここで、大電流放電領域は大電流充電領域と同様に、二次電池14の満充電時の容量に応じて予め定められる。
【0148】
第1の電力変換器18は、二次電池14から流れる電流値が設定電流値I1out-maxとなるように制御部12によって制御される。具体的には二次電池14から流れる電流値I1outと設定電流値I1out-maxとに基づき、β=1−I1out-max/I1outとの数式に基づいて、またはこの関係が記憶された表またはマップに基づいて制御部12はデューティβを設定するとともに、このデューティβにしたがって第1の電力変換器18の下アーム34のスイッチング素子42のオン/オフ制御を行う。この結果、補助電源16に大電流が供給される。
【0149】
以上説明したハイレート劣化戻し処理のフローチャートを図31に示す。まず電圧センサ26、二次電池側電流センサ22、温度センサ28による二次電池14の電流値、端子電圧値、温度の測定を行う(S1)。さらに算出部25は上述した(1)−(3)のいずれかの手段によって内部抵抗増加率または内部抵抗値を求める(S2)。さらに算出部による内部抵抗増加率と同じ条件の使用時間、SOC、温度における内部抵抗増加率または内部抵抗値を経年劣化マップから抽出する(S3)。さらに算出部による内部抵抗増加率と経年劣化マップによる内部抵抗増加率との差または算出部による内部抵抗値と経年劣化マップによる内部抵抗値の差、つまりハイレート劣化による内部抵抗増加率または内部抵抗値を求める(S4)。
【0150】
さらに判定部29はハイレート劣化による内部抵抗増加率または内部抵抗値が予め定めた閾値を超えているか否かを判定する(S5)。ハイレート劣化による内部抵抗増加率または内部抵抗値が閾値を超えた場合、さらに判定部29は二次電池14が放電過多または充電過多であるかを判定する(S6)。さらに放電過多であると判定された場合、制御部12は強制充電を行ってハイレート劣化を解消させる(S7)。一方、充電過多であると判定された場合は強制放電を行ってハイレート劣化を解消させる(S8)。
【0151】
ここで、上記ステップ(S6)において充電または放電の過多状態を判定する指標として、制御部12は以下の「充放電過多指標」を用いることが好適である。図32に示すように、所定期間における放電電流値及び充電電流値をプロットし、放電電流値の平均値と充電電流値の平均値とを比較する。二次電池側電流センサ22が放電電流を正の値として測定し、充電電流を負の値として測定する場合には、放電電流値の平均値と充電電流値の平均値の和が充放電過多指標となる。そしてこの指標が正のときは放電過多、負のときは充電過多と判定される。
【0152】
上記ステップ(S6)において、ハイレート劣化による内部抵抗の増加率または内部抵抗値が予め定めた閾値を超えたと判定したとき、制御部12はさらに充放電過多指標を求めるとともに、当該指標の正負に基づいて放電過多であるか充電過多であるかを判定する。この判定結果に基づいて強制充電を行うか(S7)、または強制放電を行う(S8)。
【0153】
なお、上述した実施形態においては、経年劣化マップを用いて二次電池14の全体の内部抵抗からハイレート劣化成分を取り出していたが、この形態に代えて、経年劣化マップを用いずに二次電池14の全体の内部抵抗から直接ハイレート劣化を推定するようにしてもよい。
【0154】
二次電池14を交換する判断基準として内部抵抗増加率を用いる場合がある。例えば内部抵抗増加率が閾値(例えば2.0倍)に達したときに二次電池14を交換する。この閾値を交換閾値IRREPLACEと呼ぶと、交換閾値IRREPLACEは内部抵抗値の増加に伴う二次電池14の劣化状態を勘案して設定される。
【0155】
二次電池14の内部抵抗増加率を交換閾値IRREPLACEまで引き上げる主な要因は、上述したように経年劣化及びハイレート劣化であるものと考えられる。このことから、経年劣化のみによる二次電池14の劣化を考慮した場合、その内部抵抗増加率IRAGINGは交換閾値IRREPLACEには及ばずに両者の間にはハイレート劣化分の差異が生じることになる。例えば交換閾値IRREPLACE=2.0に対して経年劣化による内部抵抗増加率IRAGINGは最大でも1.3程度となる。
【0156】
このことから、図33に示すように、経年劣化のみによる内部抵抗増加率IRAGINGの最大値IRAGING_MAXを超過し、かつ交換閾値IRREPLACEを下回る任意の値(例えば1.8)を判定値IRDETERMINATIONとして設定するとともに、二次電池14の全体的な、つまり経年劣化とハイレート劣化とによる内部抵抗の増加率IRTOTALが判定値IRDETERMINATIONを超過したことをもってハイレート劣化の発生を検知することが可能となる。
【0157】
制御部12は、二次電池14の全体的な、つまり経年劣化とハイレート劣化とによる内部抵抗の増加率を、上述した(1)−(3)のいずれかの手段によって求める。(1)−(3)の手段で求めた全体的な(経年劣化+ハイレート劣化)内部抵抗の増加率(以下、算出部による内部抵抗増加率と呼ぶ)IRTOTALを監視し、算出部による内部抵抗増加率IRTOTALが判定値IRDETERMINATIONを超えたときに、制御部12はハイレート劣化の進行を抑制するために電流制限を実行する。
【0158】
この電流制限の制御フローを図34に示す。まず制御部12は電圧センサ26、補助電源側電流センサ24、二次電池側電流センサ22、温度センサ28による二次電池14の電流値、端子電圧値、温度の測定を行う(S10)。さらに算出部25は上述した(1)−(3)のいずれかの手段によって内部抵抗の全体的な増加率IRTOTALを求める(S11)。判定部29はステップ(S11)において増加率IRTOTALを求めたときの二次電池14の温度及びSOCを取得するとともに、これらと同一のSOC及び温度に対して設定された判定値IRDETERMINATIONを記憶部から呼び出し、増加率IRTOTALが判定値IRDETERMINATIONを超えているか否かを判定する(S12)。
【0159】
さらに増加率IRTOTALが判定値IRDETERMINATIONを超えていると判定されたときには、制御部12は二次電池14が放電過多状態であるか充電過多状態であるかを判定する(S13)。この放電過多または充電過多の判定には上述した充放電過多指標を用いることが好適である。さらに放電過多であると判定された場合、制御部12は二次電池14に対して強制充電を行う(S14)。一方、充電過多であると判定された場合は制御部12は強制放電を行う(S15)。このように、二次電池14の全体的な内部抵抗から直接ハイレート劣化を推定し、電流制限制御を実行することができる。
【0160】
なお、内部抵抗の増加率を電流制限の基準パラメータとする代わりに、内部抵抗値そのものを基準パラメータとして用いてもよい。この場合は上述の判定値IRDETERMINATIONの代わりに判定値IRDETERMINATIONに初期状態の内部抵抗値を掛けた判定内部抵抗値RDETERMINATIONを用いるとともに、内部抵抗の増加率IRREPLACEの代わりに、上述した(1)−(3)のいずれかの手段で求めたIV特性、つまり全体的な(経年劣化+ハイレート劣化)内部抵抗値RTOTALを用いる。
【0161】
この実施形態によれば、ハイレート劣化単独の進行状態を推定することが困難となるものの、経年劣化マップを持たなくてもハイレート劣化の推定や電流制限制御を実行することができることから、経年劣化マップを記憶する記憶部の負荷が軽減される等の利点がある。
【0162】
なお、上述の実施形態において、二次電池14と補助電源16を組み合わせたいわゆるハイブリッド電源を用いて、二次電池14からの出力(電流)を制御し、二次電池14からの大電流放電を防止することで、ハイレート劣化を完全に抑制することも可能である。その一方で、ハイレート劣化を完全に抑制すると、ハイレート劣化を許容しながら都度解消する場合と比較して二次電池14の出力が抑制される。したがって本実施の形態のようにハイレート劣化をある程度許容し、速やかにハイレート劣化を解消させた方が二次電池14の出力を上げることができ(電池性能を発揮することができ、)ひいては車両性能(燃費やエンジンを用いずに走行するEV走行距離)を向上させる事が可能となる。
【符号の説明】
【0163】
10 電源システム、12 制御部、14 二次電池、16 補助電源、18 第1の電力変換器、20 第2の電力変換器、22 二次電池側電流センサ、24 補助電源側電流センサ、25 算出部、26 電圧センサ、27 補正部、28 温度センサ、29 判定部、30 回転電機、32 第1の電力変換器の上アーム、34 第1の電力変換器の下アーム、36 第1の電力変換器のリアクトル、38 第1の電力変換器の上アーム側スイッチング素子、39 正極、40 帰還ダイオード、41 負極、42 第1の電力変換器の下アーム側スイッチング素子、43 第2の電力変換器のリアクトル、44 第2の電力変換器の上アーム、46 第2の電力変換器の下アーム、48 第2の電力変換器の上アーム側スイッチング素子、50 第2の電力変換器の下アーム側スイッチング素子、52 電解液、54 陽イオン、56 陰イオン、59 電極、70 算出部による内部抵抗増加率、72,80 経年劣化マップによる内部抵抗増加率、74 算出部によるIV特性、76 経年劣化マップによる内部抵抗値、78 電池モデルによる内部抵抗増加率、113 電流コレクタ、114 セパレータ、116 電流コレクタ、118 活物質、125 電池モデル、131 直流抵抗の初期状態値マップ、132 拡散係数の初期状態値マップ、141 直流抵抗の変化率マップ、142 拡散係数の変化率マップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
充放電可能な補助電源と、
前記二次電池と前記補助電源との間の電力変換を行う電力変換器と、
前記二次電池に対するハイレート劣化戻し条件が成立したときに、前記二次電池を放電させて前記補助電源に電力を送る強制放電または前記補助電源から電力を供給して前記二次電池を充電させる強制充電を行うように前記電力変換器を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、車両用電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電源システムであって、
前記補助電源は、導通時において電極間及び電極面内の塩濃度分布が生じない蓄電手段から構成されることを特徴とする車両用電源システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電源システムであって、
前記蓄電手段は、電気二重層キャパシタまたは全固体二次電池からなることを特徴とする車両用電源システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用電源システムであって、
前記制御部は、
前記強制放電を行う場合には、前記強制放電前に前記二次電池以外の機器に対して前記補助電源から放電を行わせるように前記電力変換器を制御し、
前記強制充電を行う場合には、前記強制充電前に前記二次電池以外の機器から前記補助電源に充電を行わせるように前記電力変換器を制御することを特徴とする車両用電源システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用電源システムであって、
前記制御部は、
前記強制放電を行う場合には、前記二次電池から流れる電流値が前記二次電池に対して設定された大電流放電領域の電流値となるように前記電力変換器を制御し、
前記強制充電を行う場合には、前記二次電池に流れる電流値が前記二次電池に対して設定された大電流充電領域の電流値となるように前記電力変換器を制御することを特徴とする車両用電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−46446(P2013−46446A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181086(P2011−181086)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】