説明

車両診断装置および方法

【課題】エンジンの燃料供給システムの運転状態を決定するための診断ユニット。
【解決手段】エンジンが複数の気筒を備え、気筒のそれぞれが燃焼室を含み、燃焼室の中に、関連する燃料噴射器によって燃料が噴射され、燃焼室の中で、使用中に、連続する燃焼事象間で気筒の燃焼サイクルを規定するように燃焼事象が繰り返し発生する。診断ユニットはエンジン回転に関するデータを受けるための入力部と、(i)入力部で受けたデータから、被試験気筒に関する第1のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第1のポイントで決定し、被試験気筒に関する第2のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第2の異なるポイントで決定し、(ii)被試験気筒に関連付けられた燃料供給システムの運転状態を識別するために被試験気筒に関する2つのエンジン回転パラメータを比較するように構成された処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両診断装置および方法に関する。詳細には、本発明は、排気ガスレベルの変動を引き起こす、車両の燃料供給システム内の障害を診断するための診断ユニットに関する。本発明は、燃料供給システム内の障害を診断する方法、およびこの装置/方法を較正する方法にまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
より厳しい排ガス規制の導入とともに(具体的には米国で)、過度の車両排気レベルを引き起こす障害を表示することを目的として車載診断(OBD)要件が出現している(排気閾値ベースの診断)。これら要件には、問題を迅速に、誘導を受けながら修復するために、障害の発生源の識別が含まれる。
【0003】
障害表示を必要とするシステムの1つが、車両の燃料供給システムである。規制は、燃焼の品質/量の増大/減少のどちらかを、したがって排気レベルの変動を引き起こす可能性がある燃料噴射量、圧力、およびタイミングの障害タイプの診断を必要とする。どのような障害診断システム/方法でも車両のエンジンの運転の全範囲(速度および負荷)にわたって確実に作動し、周囲条件、駆動条件およびスタイル、ならびに燃料品質の変動に強いことが必要であることに留意されたい。
【0004】
以前は、知られる診断システムおよび方法は、完全な燃焼の失火を検出することが必要であるだけであった。圧縮点火エンジンの応用例(例えば、ディーゼル燃料エンジンシステム)では、失火が、燃料噴射が全くできないこと、または気筒圧力の喪失のいずれかによって引き起こされる可能性がある。しかしながら、ほとんどの応用例では、失火を引き起こすことになる変化ほど厳しくない燃料供給の変化もまた、車両排気を指定された閾値を越えさせ、知られる検出システム介して検出されない場合がある。
【0005】
燃料噴射量、気筒圧力および噴射タイミングの変動が(その中で失火は極端な事例である)、エンジンのクランクシャフトの回転速度の変化を引き起こす。現行のクランク(シャフト)速度による失火診断方法は、1つの気筒から次の気筒にわたって平均エンジン速度を比較することによってこれを活用する。これら方法は、平均エンジン速度が計算されるクランク歯の数が異なるが、気筒の失火により隣接する気筒に対してその回転速度がいつ減速したかを検出することによって診断が行われる点で、原理は依然として同じである(注:この文脈での隣接は、点火順序での隣接を意味し、必ずしも物理的な隣接を意味しない)。
【0006】
エンジンが経験する可能性がある、あらゆる可能なエンジン故障モードがエンジン回転速度の減速を引き起こすならば、(失火に比べて)それほど重大でない障害を検出するように諸戦略をさらに微調整することが可能であろうと考えられる。
【0007】
しかしながら、ニードルが開いたまま動かないなど、エンジンの回転速度の増大を引き起こす燃料噴射器の故障モードがある。
【0008】
隣接する気筒クランク速度の比較に基づいている現行の診断方法では、実際には、所与の気筒でニードルが開いたまま動かない状態は、隣接する気筒での失火として誤診断される(というのは、障害のある気筒と比較して相対的な減速があることになり、(i)第1の気筒が正常であり、第2の気筒が、ニードルが開いた状態にあったか、または(ii)第1の気筒が失火の状態にあり、第2の気筒が正常であったかどうか区別することが可能でないことになるからである)。
【0009】
したがって、知られる診断方法の欠点は、エンジンが1つまたは複数の気筒で失火の状態にあるか、それともニードルが開いたままとなるタイプの故障にあるかを識別する確実な方法がないことである。
【0010】
代替の診断方法は、燃焼によって引き起こされる、エンジンの挙動における回転変動をモデル化/予測すること、および測定された変動をこの計算された/マップされた値と比較し、これにより障害があるかどうか診断することであろう。この方法に伴う問題は、感度のよいロバストな、適切なモデルを作成するために考慮することが必要とされる因子の数にある。例えば、燃料品質は燃焼事象から得られる回転エネルギーを変えることができる1つの因子であり、これはエンジンの使用とともに変わる場合があるが、ECUでそのような変動を測定/検出する現行の方法はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、知られる「気筒対気筒」診断方法の問題を実質的に克服または軽減し、エンジンシステム内の障害状態の確実な診断を可能にする診断装置/方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、エンジンの燃料供給システムの運転状態を決定するための診断ユニットであって、エンジンが複数の気筒を備え、気筒のそれぞれが燃焼室を含み、燃焼室の中に、関連する燃料噴射器によって燃料が噴射され、燃焼室の中で、使用中に、連続する燃焼事象間で気筒の燃焼サイクルを規定するように燃焼事象が繰り返し発生する、診断ユニットにおいて、エンジン回転に関するデータを受けるための入力部と、(i)入力部で受けたデータから、被試験気筒に関する第1のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第1のポイントで決定するように、および被試験気筒に関する第2のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第2の異なるポイントで決定するように、ならびに(ii)被試験気筒に関連付けられた燃料供給システムの運転状態を識別するために被試験気筒に関する2つのエンジン回転パラメータを比較するように構成された処理手段とを備える診断ユニットが提供される。
【0013】
本発明は、被試験気筒と関連するエンジンの燃料供給システムのこれら部品(例えば、エンジンの気筒、関連する燃料噴射器、および燃料ポンプなど)の運転状態を決定するために単一の気筒の燃焼サイクル内のエンジンの回転運動を解析する診断ユニットを提供する。「運転状態」または「気筒の運転状態」の参照が、気筒、燃料噴射器、燃料ポンプ、または被試験気筒に関連付けられた燃料供給システムの任意の他の部品の運転状態を含むものと考えられ、この言い回しの全ての例がそれに応じて読まれるべきものであることに留意されたい。
【0014】
エンジン回転パラメータは、気筒の燃焼サイクル内の2つの相異なるポイントで測定され、これら2つの値間の差を解析することによって気筒の運転状態の決定が行われることができる。例えば、正常な運転パラメータ内で作動する気筒に対しては、エンジン速度(エンジン速度パラメータの例)は気筒の上死点位置での最小値からその後燃焼ストロークの中で増大することを予測されることになる。それに反して、失火の気筒に対しては、エンジン速度は気筒の上死点での値からその後の燃焼ストロークの中で減少することになる。
【0015】
処理手段が、その後燃焼ストロークの中で、すなわち燃焼が起きた後で2つのエンジン回転パラメータを決定するように構成されることが好都合である。これにより、ユニットがエンジンの運転で燃焼の効果を評価することが可能になる。
【0016】
第1のポイントが気筒の上死点位置に対応し、第2のポイントがその後の燃焼サイクル内に対応することが好ましい。
【0017】
診断ユニットの精度を改善するためには、ユニットがいくつかの噴射/燃焼サイクルにわたってエンジンパラメータを評価することができることが好都合である。
【0018】
処理手段が、第1および第2の位置でエンジン回転パラメータ間の差を計算することができること、すなわちそれが被試験気筒に関する相対エンジン速度パラメータを計算できることが好都合である。次いで、この相対パラメータ値は、被試験気筒/噴射器の運転状態を識別するために用いられることができる。
【0019】
さらに、診断ユニットは、相対エンジン回転パラメータの決定の後にエンジンの運転状態の表示を出力する出力手段を備えることができる。
【0020】
処理手段が相対エンジン回転パラメータに対して負の値を返す場合には、出力手段は、重大な燃焼障害、例えば失火を表示する信号を出力することができる。
【0021】
上述で決定された相対エンジン回転パラメータが予測値と比較されることができることが好都合である。この予測値は機能マップ内に記憶されることができる(エンジン速度および要求される燃料噴射量の関数として)。
【0022】
処理手段が、予測相対エンジン回転パラメータが測定値より小さいことを決定した場合、出力手段は、燃料供給過剰通知信号、例えば「ニードルが開いたままである」通知信号を出力することができる。
【0023】
処理手段が、予測相対エンジン回転パラメータが測定値より大きいことを決定した場合、出力手段は「燃焼量/品質低減」通知信号、例えば失火信号を出力することができる。
【0024】
診断ユニットがまた、問題となりそうな気筒を決定するために気筒対気筒エンジン速度差を評価することができることが好都合である。
【0025】
診断ユニットが、機能マップ内に保持された予測相対エンジン回転パラメータを補正するように構成された補正手段を備えることが好都合である。診断ユニットが、障害が燃料システム内に存在しない期間を決定するために(全ての気筒にわたって気筒対気筒エンジン速度差の決定を介して)、次いでマップされた値を測定値と比較することによって機能マップ内に記憶された相対エンジン回転パラメータの値を補正するように構成されることが好ましい。
【0026】
機能マップ内に記憶された値の補正がPID制御を備えたフィードバックループに加えて機能マップからのフィードフォアワードタームを用いて実現されることができることが好都合である。
【0027】
診断ユニットの中に入力されるエンジン回転に関連するデータがエンジンの中のクランクホイールの回転に関するデータを含むことが好都合である。この場合には、処理手段は、被試験気筒の燃焼サイクル内の2つの相異なるポイントでクランクホイールの速度を決定することができる(このクランクホイールの速度はエンジンのエンジン速度に関連している)。
【0028】
典型的なクランクホイールが各気筒に関連付けられたいくつかの規則的に隔置された歯を備えることに留意されたい。したがって、処理手段が検出器を通過するこれら歯が要する時間を監視することができ、この時間情報から、クランクホイールの速度に関する値を得ることができることが好都合である。代替として、処理手段は、2つの相異なるクランク歯がクランク歯検出器を通過するのに要する時間を決定し比較することによってエンジンの運転状態を決定することができる(例えば、気筒当たり18個の歯を有する配置に対し、第1のエンジン回転パラメータが気筒のTDC位置で決定されることが好都合であり、第2のエンジン回転パラメータが燃焼ストロークの後のポイントで、例えば歯18で(気筒に関連付けられた最後の歯)で決定されることが好都合である)。
【0029】
本発明は、本発明の第1の態様による診断ユニットと、エンジンの中の各気筒に関連付けられた規則的に隔置されたクランク歯のグループを備えるクランクホイールと、クランク歯の動きを検出するクランク歯検出器とを備え、クランク歯検出器の出力が診断ユニットに入力される車両用のエンジン制御ユニットおよび車両の診断システムにまで及ぶ。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、エンジンの燃料供給システムの運転状態を決定する方法において、エンジンが複数の気筒を備え、気筒のそれぞれが燃焼室を含み、燃焼室の中に、関連する燃料噴射器によって燃料が噴射され、燃焼室の中で、使用中に、連続する燃焼事象間で気筒の燃焼サイクルを規定するように燃焼事象が繰り返し発生する、方法であって、エンジン回転に関するデータを受けるステップと、受けたデータから、被試験気筒に関する第1のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第1のポイントで決定するステップと、被試験気筒に関する第2のエンジン回転パラメータを、気筒の燃焼サイクル内の第2の異なるポイントで決定するステップと、被試験気筒に関連付けられた燃料供給システムの運転状態を識別するために被試験気筒に関する2つのエンジン回転パラメータを比較するステップとを含む方法が提供される。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の方法を実行するためにプロセッサ、コンピュータ、コントローラまたはエンジン制御ユニットを制御するためのコンピュータの読み取り可能なコードを担持するためのデータ記憶媒体が提供される。
【0032】
本発明の第2および第3の態様の好ましい特徴が、本発明の第1の態様の好ましい特徴と同じであることに留意されたい。
【0033】
本発明がより容易に理解されることができるために、ここで実施例の目的で添付図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
ディーゼルエンジンなど圧縮点火内燃機関では、燃焼が1つまたは複数の燃焼室または気筒の中で起き、各室は部分的に往復ピストンによっておよび部分的に気筒ヘッドの中に形成された気筒の内径の壁によって画成される。ピストンは、気筒の中を摺動し、その結果、エンジンが運転するとき燃焼室の容積は循環的に増減する。燃焼室がその最小容積であるとき、ピストンは「上死点」(TDC)にあると言われ、燃焼室がその最大容積であるとき、ピストンは「下死点」(BDC)にあると言われる。
【0035】
ピストンは、連接棒によりクランクシャフトの曲がり部に連結され、フライホイール(またはクランクホイール)がクランクシャフトの1つの端部に取り付けられる。したがって、ピストンの往復運動はクランクシャフトの回転運動に対応し、TDCがクランク角0°に対応する状態でクランクシャフトの曲がり部の角度に応じてピストンの位置を定義することが当技術分野では通例である。ピストンの吸入、圧縮、出力および排気ストロークを含む完全な内燃サイクルの間、クランクシャフトは、720°のクランク角の動きに対応する2回の完全な回転となる。
【0036】
図1は典型的なフライホイール2を示す。フライホイールがその外側周辺部上に3つのグループ(6、8、10)に配置されるいくつかの歯4を備えることがわかる。各グループ(6、8、10)は噴射器(噴射器X、噴射器X+1および噴射器X+2)と関連し、各グループは例えば6°の間隔で規則的に隔置された18個の歯を備える。噴射器Xに対する歯のグループには部分的に番号が付けられる(歯1、11および18は番号が付けられている)。
【0037】
フライホイールの上の3つの領域(12、14、16)は、機械加工されず、すなわち歯を有さない。検出器18、例えば可変リラクタンス検出器は、グループ6の中の歯11の向かい側に示される。この検出器は、クランク歯4の運動を検出するために用いられ、検出器から出力される復号信号は、エンジン速度測定および燃料パルススケジューリングのために用いられる位置情報をもたらすために用いられる。任意の適した検出器がクランク歯の運動を測定するために用いられることができ、例えば光学ベースの検出器が用いられることができることに留意されたい。
【0038】
クランク歯時間は、連続するクランク歯間の時間である。これは、図1の検出器から出力された復号信号を示す図2で示される。歯Nと歯N+1の間の時間はdtである。
【0039】
dt=T_歯N+1−T_歯
式中、T_歯は歯Nに対する絶対時間を参照する。
【0040】
図3は、試験噴射器Xおよび点火順序で続く噴射器X+1に対するクランク歯時間およびクランク速度の実施例を示す。
【0041】
図3は、4つの個別のグラフ(20、22、24、26)を示す。グラフ20、22は噴射器Xに関連し、グラフ24、26は噴射器X+1に関連する。グラフは、気筒の中で燃焼がある場合および燃焼がない場合の2つの相異なるエンジン状態に対して2つの噴射器のクランク歯時間およびクランク歯速度の実施例を示す。
【0042】
グラフ20は、燃焼ありおよび燃焼なしの場合に対して噴射器Xの歯時間対歯の番号のプロットを示す。ピストンの圧縮段階28および膨張段階30がプロットの上に示めされ、ピストンの「上死点」32および「下死点」34の位置が示される。フライホイールが圧縮ストロークの間減速し、クランク歯時間が増大することが理解されよう。逆に、フライホイールが膨張ストロークに入るにつれ、クランクホイールは加速し、クランク歯時間は減少する。
【0043】
燃焼がない場合と燃焼が起きる場合の間のクランク速度または歯時間の差は、膨張ストロークの終わりで理解されよう。燃焼が起きるとクランクホイールが加速することがグラフから理解されよう。
【0044】
上述のように、知られている監視/診断方法は、燃料供給システムの障害を検出するとき、気筒対気筒の変動を測定する傾向がある。
【0045】
図4に気筒対気筒の比較の1つのタイプの実施例を示す。
【0046】
図4は、6気筒エンジンシステム内の各気筒に対してエンジンの毎分回転数の差を示す。5つの別々のマルチショットのグラフが示され、これらグラフのそれぞれは、気筒2での相異なる燃料条件の効果を示す。エンジン速度が気筒の上死点(TDC)位置間の平均速度の比較に基づいて計算されることに留意されたい。
【0047】
例えば、典型的なエンジンでは、クランクホイールは1気筒当たり18個の歯を備えることができる。検出器18を用いて、噴射器/気筒Xの上死点(この上死点は、18個の歯を有する前述の実施例では歯13に対応する)から噴射器/気筒X+1の上死点に移動するのに要する時間を測定することが可能である。次いで、この測定された時間は(この時間はほぼマイクロ秒程度である)、図4に示すエンジンの毎分回転数(rpm)の値に変換されることができる。
【0048】
左上のグラフ(グラフ1)を例として挙げると(気筒2において0%の燃料、1200rpm、840Nm)、気筒2に対するエンジンのrpmは、気筒1に対するより0.0003rpm遅く、すなわちTDC(気筒2)からTDC(気筒3)に移動するのに要する時間は、TDC(気筒1)からTDC(気筒2)に移動するのに要する時間から計算された速度より0.0003rpm小さい。
【0049】
気筒3と気筒2の相対差はほぼ0rpmとして示される(すなわち、TDC(気筒2)からTDC(気筒3)に行くのに要する時間はTDC(気筒3)からTDC(気筒4)への時間にほぼ等しい)。気筒3に対するrpm値が気筒2に対するrpm値に等しい理由は、エンジンが気筒2での失火から回復中であるからである。
【0050】
これに対して、グラフ5は気筒2で100%の燃料の場合を示し、6個の気筒間のエンジン速度の相対差が0であり、各気筒が等しく正確に機能していることを示すことが理解されよう。
【0051】
図4に示す気筒対気筒測定のバージョンは事実上全ての18個の歯にわたる平均気筒速度であるが、平均速度を計算する他の方法が可能であり、例えば18個の歯のサブセットが監視されることができ、または各気筒にわたり特定の歯に対する速度が決定されることができることに留意されたい。
【0052】
上述の気筒対気筒診断方法は、気筒間の相対変化には感度がよいが、ある種の障害状態を区別することが不可能ではないにせよ難しい場合があるという欠点を有する(上述の失火/ニードルが開いたままである問題など)。
【0053】
実際には、図4に示すエンジンの障害モードが気筒2の失火であることに留意されたい。これがグラフ1に示す燃料条件ではかなり明らかであるが、状況は50%または75%の燃料の実施例では極めて明確ではない(それぞれグラフ3、4)。グラフ4を例として挙げると、この気筒対気筒監視方法を用いる場合、気筒2の失火と気筒4のニードルが開いたままである状態を区別することが極めて難しいことになる。
【0054】
本質的には、図5は、上述の気筒対気筒方法の拡張方法であるが、障害タイプの範囲に対して単一の気筒だけに対するものである(すなわち、気筒2に対する)。図5は、気筒2、3に対してTDCの歯に到達するのに要する時間を比較することによって得られた。図5の垂直軸はこの時間差をマイクロ秒で示し、グラフは噴射の数に対してこの時間比較の結果を示す(0から100回の噴射)。
【0055】
さらなる説明の目的では、図5の一番下の線は、噴射圧力が気筒2で75%だけ減少された場合の障害状態に関連する。噴射数が100回では、2つの気筒間の累積時間差はほぼ1750μsである。したがって、1噴射当たり、気筒3のTDCの歯は、気筒2のTDCの歯より検出器を通過するのにほぼ17.5μs遅い。
【0056】
さらに図5に対して以下の要点に留意されたい。
【0057】
・ 一番上の線はニードルが開いたままである障害状態に関連し(図5の中の「NO」)、測定時間差が正の値であることに留意されたい。
【0058】
・ 障害のある気筒(気筒2)については、NO障害は障害のある気筒(気筒2)に対して時間差測定値の増大を示す。しかしながら、気筒3に対しては、ほぼ同じ振幅で測定値の対応する減少がある。
【0059】
・ 一番下の線によって表される失火状態は(ほぼ75%だけ減少された噴射圧力)、負の時間差を示す。上述の注釈と同様に、気筒3がほぼ同じ振幅の時間差の増大を示すことに留意されたい。
【0060】
図4、5に関する上述の監視方法は、知られている測定/診断方法またはそれらの拡張方法のいずれかと同じである。上述の気筒対気筒解析が様々な障害状態間の明らかな変動を示すが障害状態を区別することが非常に難しいことに留意されることが重要である。さらに、例えば1つの気筒における失火が隣接する気筒におけるニードルが開いたままである障害とほとんど同一の挙動でそれ自体が存在することにより隣接する気筒間の障害状態を誤診断することが起こりうる。
【0061】
図6〜9に本発明の実施形態による監視および診断方法を示す。
【0062】
本発明は、燃焼サイクル内の2つの相異なるポイントで所与の気筒に対してエンジン速度を解析することによってエンジンシステム内の障害を検出する。上述のように、各噴射器に関連するクランク歯は、クランクホイールの周りに均等に隔置され、上の図1で与えられた実施例で各歯の上では6°のクランク角に対応する。
【0063】
特定の歯が検出器を通過する時間を測定することによって、クランク歯の数に応じてエンジン速度を決定することが可能である。燃焼サイクル内の2つの相異なるポイントで所与の気筒に関するエンジン速度を測定することによって、被解析気筒に関連付けられた燃料供給システムのこれらの部品の運転状態に関する情報を得ることが可能である。
【0064】
エンジン速度が、燃焼サイクルの終わりに向かって検出され、これに先立った(およびより遅い)クランク歯と比較される場合、所与の気筒に関して燃焼が引き起こすエンジン速度の変化を解析することが可能である。
【0065】
好ましい実施形態では、エンジン速度は、燃焼の終わりで検出され(上の実施例では、これは歯18においてである)、上死点(歯13)でのエンジン速度と比較される。気筒の中のピストンの速度(したがって、エンジン速度)がTDCで最小であるはずなので、上死点が比較ポイントとして選択されることが好都合である。
【0066】
図6は、所与の気筒に関して各歯(1〜18を含む)に対するエンジン速度とTDCの歯(歯13)でのエンジン速度との差を示す。2つの相異なるトレースが示され、一方は正常な燃料状態を表し、他方は失火の気筒を表す。誤差バーは+/−3標準偏差に関する。
【0067】
正常な(障害のない)気筒が燃焼サイクルの終わりに向かってTDCと比較してエンジン速度の相対的な増大を示すことが理解されよう。しかしながら、失火の気筒はTDCに対してエンジン速度の減少を示す。
【0068】
したがって、正常な気筒がクランク歯18の相対エンジン速度(これに先立った、より遅い歯13に対する)を解析することによって失火の気筒から区別されることができることが理解されよう。
【0069】
図7は、障害タイプの範囲に対する1つの気筒の100エンジンサイクルにわたって合計された歯18でのエンジン速度と歯13でのエンジン速度の相対累積差を示す。
【0070】
注:図6、7で示す結果に対するエンジン状態(エンジン速度および燃料噴射量)は同じではない。しかしながら、状態が同じ場合、図6の中の正常なトレースに対する歯18の値(Δrpm=4)が、100サイクルにわたって図7の右側の垂直軸で約400の値と等しいことに留意されたい。
【0071】
再び図7を参照すると、様々な障害条件が全てグラフの上に明確なトレースを形成することが理解されよう。したがって、気筒に影響を及ぼすことができる相異なる障害状態を区別することが可能である。
【0072】
図6、7で測定された測定相対エンジン速度値が気筒の運転状態を決定するために予測値と比較することができることが好都合である。相対エンジン速度の機能マップが(エンジン速度および燃料噴射量の関数として)、この比較を実行するために用いられることができる。本質的には、図7の右側に示す4つの一般的な障害状態が、歯13と歯18とのrpm差に対するマップ(予測)値に等しいことに留意されたい。
【0073】
対照トレース(正常な気筒)に対して、ニードルが開いたままである(NO)状態と機能マップからの値の差は、正の値をもたらし(NOに対するΔrpm値−対照に対するΔrpm=+ve)、一方失火の気筒は、負の値をもたらす(失火に対するΔrpm−対照に対するΔrpm=−ve)。計算された+veまたは−veの値のサイズは、障害のタイプを示す。
【0074】
要約すれば、所与の気筒では、実際の燃料供給および現在のエンジン速度が変化するのと同じように、回転運動の測定値も変化することに留意されたい(すなわち、気筒に関するエンジン速度が変化する)。燃焼の品質および量を低減させる変化は(例えば、タイミングの遅れ、圧力減少、燃料量減少)、マップ値と比較して測定相対エンジン速度値(TDCでの値を引いた歯18での気筒エンジン速度)を減少させる。それに反して、燃焼量を増大させる変化は(ニードルが開いたままであるなど)、マップ値と比較して測定相対エンジン速度値を増大させる。
【0075】
上述のように、従来の気筒対気筒診断方法は、気筒間のエンジン速度の相対変化には感度がよいが、気筒が影響を及ぼされる決定ではより効果的ではない。したがって、気筒対気筒方法が誤診断なしに障害の位置および重大性を検出することができる複合診断技術を提供するために本発明による診断方法と組み合わされることができる。
【0076】
気筒対気筒速度差方法は、重大性の尺度で障害の可能性のある候補の気筒を目立たせるために用いられることができ、(例えば気筒3が、ニードルが開いたままである、または気筒4が失火のいずれか)、本発明による方法は、候補の気筒が実際に失火かどうか、および別の障害のノックオン効果を単に見せるかどうかを決定することができる(例えば、気筒3が高加速され、気筒4が正常であり、したがって、障害は、気筒3にあり、ニードルが開いたままであるタイプである)。
【0077】
エンジンの中のどの気筒にも障害がないとき、気筒対気筒試験は全ての気筒にわたってほぼ0の速度差を返す(図4のグラフ5参照)。この状態の識別が機能マップ内に記憶された所与のエンジン速度/燃料値で2つの測定ポイント間で予測されるマップされた相対エンジン速度を補正するために用いられることができることに留意されたい。マップの再較正は、PID制御を備えるフィードバックループに加えてフィードフォワードターム(機能マップから)を用いて実現することができ、図9を参照して以下でより詳細にこの処理を説明する。
【0078】
図8は本発明の別の実施形態による複合診断方法を示す。
【0079】
試験を始めた後、診断制御ユニットは(この診断制御ユニットは、車両のエンジン制御ユニット(ECU)の中でまたは分離したユニットの中で一体化されることができる)、気筒対気筒エンジン速度差試験が実行され、診断制御ユニットがエンジンの現在の気筒にわたって速度差がほぼ0であるかどうかを試験するステップ40に移動する。
【0080】
気筒対気筒速度差が0でない場合、これは現在の気筒内に潜在的に障害があることを示し、診断制御ユニットはステップ42に移動する。
【0081】
ステップ42では、診断制御ユニットは現在の気筒対気筒速度差が0より大きいかどうか判定する。速度差が0より大きい場合、これは、ノズルが開いたままである状態にある可能性があるかまたは気筒が他の気筒のうち1つでの失火に反応することを示す。
【0082】
速度差(気筒対気筒)が0より大きくない場合、診断制御ユニットは、ステップ44に移動し、本発明の第1の実施形態による診断方法を用いて被試験気筒を評価する。
【0083】
図8、9が「燃焼加速」を参照することに留意されたい。この用語は、本発明の診断試験が被試験気筒での燃焼によって引き起こされるエンジンの回転速度の増大/減少、すなわち燃焼によって引き起こされる気筒の加速、燃焼加速を効果的に評価することを示すために本明細書で用いられる。実際に測定されるものは(または記憶され、機能マップからアクセスされる)、歯13でのエンジン速度を引いた歯18でのエンジン速度から得られる相対エンジン速度である。
【0084】
ステップ44では、被試験気筒に関する燃焼サイクルの2つのポイント間の相対エンジン速度が計算される。この計算が、例えば100サイクルにわたって繰り返され(図7のように)、次いで計算値が現在のエンジン速度および燃料値に対するマップに応じて予測相対エンジン速度と比較されることが好ましい。
【0085】
ステップ44で、測定値が予測値より小さい場合、これは、被試験気筒に、あるタイプの燃焼が減少する障害が存在することを示す。ステップ46で、診断ユニットは障害の重大性を決定するために再び気筒対気筒診断方法を用い、この重大性は気筒対気筒変動振幅に比例している。
【0086】
しかしながら、ステップ44で、測定値が予測値より大きい場合、これは現在の気筒に障害がないことを示す。この気筒に関する気筒対気筒試験で見られるどのような変動も、この場合、障害ではなく燃料システム内の不安定変動に起因する可能性がある。この選択肢は結論48で診断試験の終わりとなる。
【0087】
再びステップ42を参照すると、現在の気筒対気筒変動が0より大きい場合、これはノズルが開いたままである障害である可能性があることを示す。これをさらに試験するためには、診断制御ユニットは、やはり本発明の第1の実施形態による診断方法を用いて被試験気筒を評価し、被試験気筒に関する燃焼サイクルの2つのポイント間の相対エンジン速度を計算するステップ50に移動する。ステップ50では、診断制御ユニットは、測定相対エンジン速度値がマップからの予測相対エンジン速度値より大きいかどうかを決定する。
【0088】
ステップ50で測定値が予測値より大きい場合、これは被試験気筒にあるタイプの燃焼が増大する障害が存在することを示唆する。次いで、診断制御ユニットは、気筒対気筒試験が障害の重大性を決定するために用いられることができ、この重大性がやはり気筒対気筒変動振幅に比例しているステップ52に移動することができる。
【0089】
しかしながら、測定値が予測値より小さい場合、これは本気筒に障害がないことを示し、診断試験は結論54で終わる。
【0090】
再びステップ40を参照すると、診断制御ユニットは、現在の気筒の気筒対気筒速度差がほぼ0であると決定した場合(すなわち、現在の気筒が隣接する気筒と同じrpmを有する場合)、エンジン速度が全ての気筒にわたって同じかどうか決定するステップ56に移動する。回答がいいえの場合、診断試験は結論58で終わる。しかしながら、回答がはいの場合(すなわち、気筒対気筒速度差が図4のグラフ5に似ている場合)、診断ユニットはステップ60に移動することができる。
【0091】
ステップ60では、診断制御ユニットは、相対エンジン速度値のマップに必要である任意の補正を計算するためにエンジン速度が全ての気筒にわたって同じであることを利用することができる。図9に関連してより詳細にこの再計算処理を説明する。
【0092】
図9は本発明に関する制御論理を示し、この制御論理はまた、被試験気筒で2つの測定ポイント間の相対エンジン速度値に対する予測値(すなわち、マップ出力値)を補正するために用いられることができる。
【0093】
ポイント62では、現在の気筒に対する相対エンジン速度値が、図6、7に関して上述のように計算される(すなわち、歯13での速度を引いた歯18でのリアルタイム速度の値が計算される)。ポイント64では、現在のエンジン運転状態に対する予測相対エンジン速度がマップから読まれる。
【0094】
PIDコントローラ66は、マップベースの値に対する補正率(または1組の補正率、例えば、気筒当たり1つ)を含む。補正は、当初のマップが作成されて以来のまたは他の理由による(例えば、全ての気筒に等しく影響を及ぼす燃料品質の変動)エンジンの消耗により必要がある場合がある。気筒対気筒速度差が0に等しくない場合、最後の計算補正値が、PIDから返され、補正予測相対エンジン速度値68を出力するためにポイント70でマップベースの出力を調整するために用いられる。それが図8のステップ44、50で用いられるこの補正相対エンジン速度値68であることに留意されたい。
【0095】
ポイント72では、相対エンジン速度に対する予測値が(P1D出力によって補正される)、測定相対エンジン速度値と比較される。「測定値」から「予想値」を減算したものが正の値を返す場合、ニードルが開いたままである障害が存在する。「測定値」から「予想値」を減算したものが負の値を返す場合、燃焼量減少タイプの障害が存在する。
【0096】
気筒対気筒速度差が全ての気筒にわたってほぼ0の場合、エンジンは障害なしで運転する。これらの状況下では、図9の制御論理は、補正率によって補正予測値が適切に較正されるようにPIDの中に記憶された補正率を更新するために用いられることができる。この較正段階の間には、PIDコントローラ66が、測定相対エンジン速度値74をポイント68での補正値と等しくするよう試みる。この処理はPIDの中に保持される補正率を変更する。
【0097】
上述の実施形態が、実施例の目的でのみ与えられ、本発明を限定するよう意図するものではなく、本発明の範囲が添付の請求項で定義されることが理解されよう。説明した実施形態が個別または組合せで用いられることができることがまた理解されよう。
【0098】
例えば、本発明の実施形態が気筒の燃焼サイクルの2つの相異なるポイントでのエンジン速度に関して上述されたが(図6〜9)、クランク歯時間など別のエンジン回転パラメータに関して気筒の動きを解析することが可能であることに留意されたい。
【0099】
図9が加算および減算関数を示すが補正率が乗算関数を含む場合があることに留意されたい。
【0100】
障害の重大性を決定するために本発明による診断方法を通例の気筒対気筒診断方法と組み合わせることが必要ではないことにさらに留意されたい。代替として、図7の複合相対エンジン速度プロットが、障害の重大性(プロットの右側に詳述された様々な障害のグループを参照)を決定するために用いられることができる。
【0101】
用語「クランク歯」が図1で示すようにクランクホイールから突起、または代替としてクランクホイールの中のドリルで開けられた穴の両方を含有するよう考えられることにまた留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】エンジンのフライホイールの上のピックアップ歯の典型的な配置を示す図である。
【図2】図1のフライホイールの回転を監視する検出器の出力を示し、フライホイールの上の連続するクランク歯間の時間を示す図である。
【図3】図1のフライホイールの上の2つの噴射器に対するクランク歯時間およびクランク速度のプロットを示す図である。
【図4】気筒エンジン速度(点火順序で隣接する気筒に相対的である)対各状態でいくつかの繰返しポイントを有する噴射器の番号との5つの相異なるグラフを示す図である。
【図5】複数の噴射事象にわたって合計された障害のある気筒に対する累積された気筒対気筒速度差(マイクロ秒で表す)を示す図である。
【図6】本発明の実施形態によるクランク歯(2つの相異なる噴射器状態に対する)に応じて所与の気筒に対するエンジン速度差を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による複数の噴射事象にわたって合計された被試験気筒の歯18と歯13との間のエンジン速度の累積された相対差を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態による複合診断方法を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に関する制御論理ダイアグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃料供給システムの運転状態を決定するための診断ユニットであって、前記エンジンが複数の気筒を備え、前記気筒のそれぞれが燃焼室を含み、前記燃焼室の中に、関連する燃料噴射器によって燃料が噴射され、前記燃焼室の中で、使用中に、連続する燃焼事象間で前記気筒の燃焼サイクルを規定するように燃焼事象が繰り返し発生する、前記診断ユニットにおいて、
エンジン回転に関するデータを受けるための入力部と、
(i)前記入力部で受けた前記データから、被試験気筒に関する第1のエンジン回転パラメータを、前記気筒の燃焼サイクル内の第1のポイントで決定し、前記被試験気筒に関する第2のエンジン回転パラメータを、前記気筒の前記燃焼サイクル内の第2の異なるポイントで決定し、(ii)前記被試験気筒に関連付けられた前記燃料供給システムの運転状態を識別するために前記被試験気筒に関する前記2つのエンジン回転パラメータを比較するように構成された処理手段と、
を備える診断ユニット。
【請求項2】
前記処理手段が、前記被試験気筒の前記燃焼サイクルの終わりに向かって2つのポイントで前記2つのエンジン回転パラメータを決定するように構成される、請求項1に記載の診断ユニット。
【請求項3】
前記処理手段が、前記気筒の上死点位置で前記第1のエンジン回転パラメータを決定し、前記上死点位置の後の前記燃焼サイクル内のポイントで前記第2のエンジン回転パラメータを決定するように構成される、請求項2に記載の診断ユニット。
【請求項4】
前記エンジン回転パラメータが、複数の燃焼サイクルにわたって前記被試験気筒に関して同一の燃焼サイクル位置で決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の診断ユニット。
【請求項5】
前記処理手段が、相対エンジン回転パラメータを得るように、および前記被試験気筒の前記運転状態を識別するように前記相対パラメータを用いるように構成され、前記相対エンジン回転パラメータが前記第1のエンジン回転パラメータと前記第2エンジン回転パラメータとの差である、請求項1から4のいずれか一項に記載の診断ユニット。
【請求項6】
前記エンジンの前記運転状態の表示を出力するための出力手段をさらに備える、請求項5に記載の診断ユニット。
【請求項7】
前記処理手段が、前記相対エンジン回転パラメータが負の値であることを決定した場合、前記出力手段が、前記被試験気筒に関して重大な燃焼障害を示す通知信号を出力する、請求項6に記載の診断ユニット。
【請求項8】
前記処理手段によって得られる前記相対エンジン回転パラメータが、前記被試験気筒の前記運転状態を決定するために予測相対エンジン回転パラメータと比較される、請求項5または6に記載の診断ユニット。
【請求項9】
前記予測相対エンジン回転パラメータが、エンジン速度および燃料噴射量の関数として機能マップ内に記憶される、請求項8に記載の診断ユニット。
【請求項10】
前記エンジンの前記運転状態の表示を出力するための出力手段をさらに備える、請求項8または9に記載の診断ユニット。
【請求項11】
前記処理手段が、前記予測相対エンジン回転パラメータが前記決定されたエンジン回転パラメータより小さいことを決定した場合、前記出力手段が前記被試験気筒に関する燃料供給過剰通知信号を出力する、請求項10に記載の診断ユニット。
【請求項12】
前記出力手段が、前記被試験気筒に関してニードルが開いたままである通知信号を出力する、請求項11に記載の診断ユニット。
【請求項13】
前記処理手段が、前記予測相対エンジン回転パラメータが前記決定されたエンジン回転パラメータより大きいことを決定した場合、前記出力手段が前記被試験気筒に関する気筒燃焼量/品質低減通知信号を出力する、請求項10に記載の診断ユニット。
【請求項14】
前記処理手段が、前記予測相対エンジン回転パラメータが前記決定されたエンジン回転パラメータより大きいことを決定した場合、前記出力手段が前記被試験気筒に関する気筒失火通知信号を出力する、請求項13に記載の診断ユニット。
【請求項15】
前記処理手段が、前記入力部で受けた前記データから、障害を潜在的に示す前記エンジンの中の気筒を識別するために気筒間のエンジン速度差を決定するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の診断ユニット。
【請求項16】
前記機能マップ内に記憶されたエンジン回転パラメータを補正するように構成された補正手段をさらに備える、請求項9から14のいずれか一項に記載の診断ユニット。
【請求項17】
前記処理手段が、前記入力部で受けた前記データからいつ全ての前記気筒にわたってエンジン速度差がほぼ0であるかを決定するように構成され、
引き続いて前記補正手段が、前記決定された相対エンジン回転パラメータを前記機能マップ内に記憶された対応する前記相対エンジン回転パラメータと比較し、不一致の場合に補正率を適用するように構成される、
請求項16に記載の診断ユニット。
【請求項18】
前記補正手段が、PIDコントローラを備えたフィードバックループと、前記機能マップからのフィードフォアードタームとを含む、請求項16または17に記載の診断ユニット。
【請求項19】
前記エンジン回転に関連する前記データが、前記エンジンの中のクランクホイールの回転に関連するデータを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の診断ユニット。
【請求項20】
前記処理手段が、前記気筒の前記燃焼サイクル内の2つの相異なるポイントで前記被試験気筒に関する前記クランクホイールの速度を決定するように構成される、請求項19に記載の診断ユニット。
【請求項21】
前記クランクホイールが、前記エンジンの中の各気筒に関連付けられた規則的に隔置されたクランク歯のグループを含み、前記処理手段が所与のクランク歯がクランク歯検出器を通過するのに要する時間を監視し、次に前記クランクホイールの前記速度を決定するように構成される、請求項20に記載の診断ユニット。
【請求項22】
前記クランクホイールが、前記エンジンの中の各気筒に関連付けられた規則的に隔置されたクランク歯のグループを含み、前記処理手段が前記被試験気筒に関して2つの相異なるクランク歯が前記気筒の前記燃焼サイクル内でクランク歯検出器を通過するのに要する時間を決定するように構成される、請求項19に記載の診断ユニット。
【請求項23】
前記処理手段が、前記気筒の前記上死点位置で前記第1のエンジン回転パラメータを決定するように、および前記被試験気筒に関連付けられた最終クランク歯に対応する前記燃焼サイクルのポイントで前記第2エンジン回転パラメータを決定するように構成される、請求項22に記載の診断ユニット。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の診断ユニットと、エンジンの中の各気筒と関連する規則的に隔置されたクランク歯のグループを含むクランクホイールと、前記クランク歯の動きを検出するクランク歯検出器とを備え、前記クランク歯検出器の出力が前記診断ユニットに入力される車両の診断システム。
【請求項25】
請求項1から23のいずれか一項に記載の診断ユニット備える車両用電子制御ユニット。
【請求項26】
エンジンの燃料供給システムの運転状態を決定する方法であって、前記エンジンが複数の気筒を備え、前記気筒のそれぞれが燃焼室を含み、前記燃焼室の中に、関連する燃料噴射器によって燃料が噴射され、前記燃焼室の中で、使用中に、連続する燃焼事象間で前記気筒の燃焼サイクルを規定するように燃焼事象が繰り返し発生する、前記方法において、
エンジン回転に関するデータを受けるステップと、
受けた前記データから、被試験気筒に関する第1のエンジン回転パラメータを、前記気筒の前記燃焼サイクル内の第1のポイントで決定するステップと、
前記被試験気筒に関する第2のエンジン回転パラメータを、前記気筒の前記燃焼サイクル内の第2の異なるポイントで決定するステップと、
前記被試験気筒に関連付けられた前記燃料供給システムの前記運転状態を識別するために前記被試験気筒に関する前記2つのエンジン回転パラメータを比較するステップと、
を含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法を実施するために診断ユニットまたはエンジン制御ユニットを設定するように構成されたコンピュータプログラムを備えるデータ記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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