説明

車両通風系統用エアフィルタ付きファン装置

【課題】車両のヒーティング、ベンチレーション及びエアコンディショニング(HVAC)に入る全空気流を濾過すると同時に圧力損失を減少させてフィルタ寿命を延ばす。
【解決手段】本発明は、車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置であって、空気流の方向(5)に、エアフィルタ(1)、インペラ(2)、及びフローオフチャネル(7)を有するエアフィルタ付きファン装置において、インペラ(2)及びフローオフチャネル(7)を包囲状態で収容するケーシングとして構成された流れ案内装置(8)が設けられ、インペラ(2)が、エアフィルタ(1)からの空気をインペラの上側(4)とインペラの下側(3)の両方から受け入れる二重吸込み方式で構成されるようになっている、エアフィルタ付きファン装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通風のための空気容積流を正常にすると共に提供するのに役立つ車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるエアフィルタ及びファンから成るユニットは、車両通風系統において、車両ヒーティング、ベンチレーション及びエアコンディショニングシステム(ヒーター、ベンチレーター及びエアコンディショナー呼ばれることもある)(HVAC)で調和されるべき空気を熱的に調和する前に、この空気を機械的にできるだけあらかじめ清浄にするようにするために用いられている。
【0003】
種々のタイプのユニットが、先行技術において知られている。従来の用途では、エアフィルタは、エンジン室内のカウル領域内に配置されることが多かった。したがって、循環モードでは、乗員室から引き込まれた空気は、濾過にはかけられなかった。この技術の特に不利な点は、蒸発器のファウリングが漸増的に起こり、それ故、蒸発器及び暖房用熱交換器に生じる付着物により、悪臭が益々気になっていくということにある。また、空気流により同伴される粒子が、熱交換器に研磨による機械的な悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
現在の車両通風系統では、エアフィルタは、典型的には、ファンの前に配置されている。インペラの前へのエアフィルタの配置のこの形態は、技術の現状を表わす図5に示されている。上述の形態とは異なり、この場合、循環空気も濾過されるが、この実施形態には、通風系統の全体的寸法が大き過ぎるという欠点がある。
【0005】
エアフィルタをインペラのすぐ前に位置決めした結果として、全フィルタ表面積の利用が制限されると共に圧力損失が増大する。というのは、引き込まれた空気の大部分が、エアフィルタ中に開口したインペラの上方の領域に吸引され、これに対し、境界領域上をこれらに沿って流れる空気がほんの僅かになるからである。さらに、フィルタの高さは一定なので、設置空間を最適利用することが妨げられる。
【0006】
しかしながら、フィルタをファンの後ろに位置決めすると、大きな汚れ粒子からのインペラの保護がなされなくなり、従って、インペラが損傷を受ける場合がある。これらの欠点を回避するため、保護グリッドがインペラの前に配置されるのが通例であり、その結果追加の費用が生じる。
【0007】
本発明の目的は、HVACに流入する全空気流を濾過し、それと同時に、圧力損失を減少させると共にフィルタ寿命を延ばすことにある。特に、本発明の解決策は、保護グリッドの追加使用を必要としないようにすべきである。
【発明の開示】
【0008】
本発明によれば、上記課題は、車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置であって、空気流の方向に、エアフィルタ、インペラ、及びフローオフチャネルを有するエアフィルタ付きファン装置によって解決される。エアフィルタ付きファン装置は、インペラ及びフローオフチャネルを包囲状態で収容するケーシングとして構成された流れ案内装置が設けられ、インペラが、エアフィルタからの空気をインペラの上側とインペラの下側の両方から受け入れる二重吸込み設計に応じて構成されていることを特徴とする。
【0009】
それ故、フィルタをインペラの前に配置するという技術的思想が、実現される。フィルタをインペラのすぐ前に配置すると同時に流入空気が流れ案内システム中のフローオフチャネルをバイパスすることができるようにした状態でこの別の流路を通って空気をフィルタの境界領域にも効果的に流通させることが達成される。ファン及びフローオフチャネルを完全に収容するケーシングの形態で構成される流れ案内システムを用いることにより、インペラの上側とインペラの下側の両方から空気流を取り入れ、フローオフチャネルを通って空気流を吹き出すようにする二重吸引ファンの実現が可能になる。
【0010】
本発明によれば、空気の流路は、ケーシングの形態をした流れ案内装置により制限される。空気は、先ず最初に、フィルタ上をこれに沿ってケーシングに流入する。インペラの上側の上方の空気流は、インペラの上側から直接フローオフチャネル内に流れる。残りの空気流は、フローオフチャネル周りにこれに沿って流れ、インペラの下側のインペラの作用範囲に達し、次に、フローオフチャネル内に流入する。かくして、上側に至る直接的な流路が存在すると共に最初に同じ方向に向き、後で方向転換されてインペラの下側に至る間接的な流路が存在する。空気をインペラの両側に導入することは、二重吸引作用と呼ばれる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、ファン軸線は、流れ方向から外れた状態で位置合わせされている。特に有利なやり方では、本発明の車両通風系統用エアフィルタ付きファン装置は、ファン軸線が8°〜12°の角度αをなして流れ方向の軸線から外れる場合に実現される。研究結果によれば、ファン軸線は、空気の流れ方向としての軸線に対し10°の角度αをなして傾けられると特に有利である。
【0012】
フィルタの有利な設計が用いられた場合、フィルタ表面積を増大させ、それ故フィルタの寿命を追加的に延ばすことができ、他方、この構成中の設置空間が最適利用される。これは、特に、フィルタが漸変する折り畳み高さを有することにより達成される。
【0013】
本発明の別の有利な実施形態は、エアフィルタが連続した楔形であり、ファン軸線の傾斜に合わされている。この関係で、変形実施形態では、エアフィルタは、不連続に段付けされていて、ファン軸線の傾斜に合わされている。この実施形態は、エアフィルタが3段に不連続に段付けされ、ファン軸線の傾斜に合わされる場合に特に有利である。
【0014】
別の実施形態では、エアフィルタ付きファン装置は、エアフィルタがインペラの上側の領域に、インペラの下側の通路の領域と比較して、大きな高さを有するエアフィルタを備える。
【0015】
さらに、エアフィルタが折り畳まれた紙で作られた状態で構成されると有利であり、それにより、エアフィルタを特に費用効果の良い仕方で製造することができる。
【0016】
ファン軸線の傾斜により、二通りの仕方で著しい改良を達成することができる。第1に、全体的寸法が減少する。というのは、提供されるエアフィルタをファンの入口の近くに設置構成できるからである。それにより、インペラの上側からの流れに直接的に作用する力に起因してフィルタの進入表面領域が実現されるだけでなく、これが同様な仕方でインペラの下側からの流れによっても実現される。
【0017】
この構成中の設置空間を最適利用するために、フィルタの或る特定の設計を利用してフィルタ表面積、それ故フィルタ寿命を増大させることができる。特に、様々な折り畳み高さを用いることが可能である。折り畳み高さは、例えば、長さにつれて線形的に減少する場合があり、その結果、楔形のフィルタが得られ又は折り畳み高さは、凸状又は凹状のコースを有する場合がある。例えば、ファンの傾斜と関連して、フィルタの楔形が、特に有利である。簡単に言えば、フィルタは又、有利には段付け状態で又は階段状に設計されるのが良い。
【0018】
以下において、ユニットの機能について説明する。最初に、空気は、ドアシステムを通って通常の仕方でフィルタまで案内される。次に、空気は、エアフィルタをそのフィルタ表面領域全体にわたって通り、流れ案内装置に流入する。ラジアルファンとして設計された上側及び下側からの二重吸引ファンの開口部を通って、空気は次に、インペラ上側で吸引されなかった部分空気流がフローオフチャネル周りにこれに沿って流れてインペラに下から流入するので上からだけでなく下からもインペラ及びフローオフチャネルに送られるが、これは、先行技術とは対照的である。
【0019】
全フィルタ表面積の有効利用が可能になると同時にフィルタ前後の圧力損失が減少することは、上述の実施形態の特定の利点である。さらに、特に強調されるべきこととして、フィルタ配置に必要な設置空間が僅かに過ぎず、又、空気が両方のインペラ側、即ち、上側と下側の両方から引き込まれるのでファン効率が高くなる。最後に、又、有効フィルタ表面積の増大の結果として、フィルタ寿命が延びると共に濾過能力が向上する。これは、蒸発器に対するファンモータの設置場所を変えることにより蒸発器進入の促進を可能にするファンモータの傾斜に基づいている。フィルタとファン入口との間の距離は、好ましくは、3〜15ミリメートルであるよう選択され、フィルタ高さは、10〜40ミリメートルである。
【0020】
本発明のそれ以上の細部、特徴及び利点は、添付の図面と関連して行われる実施形態の幾つかの例についての以下の説明を考慮すると、明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1では、車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置が、示されており、このエアフィルタ付きファン装置は、エアフィルタ1及びファンモータ9を備えたインペラ2を有している。インペラ2は、空気をフローオフチャネル(flow-off channel)7中に直接送り込み、空気は、このフローオフチャネルを通って最終的にエアコンディショニングユニットの別のエレメントに送られる。フローオフチャネル7は、インペラ2の周囲に沿ってインペラ2を包囲しており、インペラ2に軸方向に流れ、これから半径方向に流れる空気を包囲している。
【0022】
フィルタユニットに流入した空気は、流れ方向5に従って折り畳みエアフィルタ1を通ってファン装置内に流入する。流れ案内装置8が、エアフィルタ1を直接収容した状態で、ケーシングの形態で構成されており、この場合、インペラ2とファンモータ9の組合せとしてのファンが、サブコンポーネントとしてこのケーシング内に収容されており、図示のようにファン軸線6が傾斜している。インペラ2を回転させると、空気は、エアフィルタ1中に引き込まれ、そして二重吸引方式で直接上から下へ運搬されると共に下からインペラ2内に軸方向に運搬される。エアフィルタ1を通り、インペラ2及びフローオフチャネル7の側方を通過した量の空気は、最終的に、インペラ2の下側3上をこれに沿ってフローオフチャネル7内に流入し、これに対し、部分流が、上からインペラ2内に直接流れ込む。
【0023】
図2では、車両通風系統用の別のエアフィルタ付きファン装置が示されており、この装置は、図1に示す装置とは異なり、楔形に構成されたフィルタ1を備えている。エアフィルタ1を楔形に構成することにより、個々の板状フィルタ紙が長くなるのでフィルタ表面積が増大する。インペラ2により生じる吸引圧力は、先ず最初に、インペラ2の上側4に直接流入する空気容積流によって補償される。この領域において、フィルタ高さが変わらなければ、空気は、主として、直接的にフィルタ1を通ってインペラ2及びフローオフチャネル7内に流入することになる。しかしながら、フィルタ流れ抵抗がインペラ2の上側4に直接向いた側で増大している場合、これに対応して、空気は又、インペラ2の下側3に直接割り当てられていないフィルタ1の領域を流通することになる。これにより、フィルタの通過具合が向上し、均一性が高くなる。
【0024】
さらに、ファン軸線6の傾斜により、ファンをフィルタ1の近くに配置することができる。図3では、本発明の解決策の別の変形実施形態が示されている。ここでは、フィルタ1は、段付き状態に構成され、従って、フィルタを段付きにより傾斜ファン軸線に適合させることができるようになっている。
【0025】
図4は、車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置の斜視図である。この斜視図では、流れ案内装置8は、ファン及びフローオフチャネル7のためのケーシングとして構成されている。この図は又、インペラ2の上側4を示している。さらに、空気の流路に関する領域が示されており、空気は、フローオフチャネル7を越えてケーシング8の下側に流れ、そしてここからインペラ2の下側3に流れる。この構成によれば、これら流路は、好ましくは、ケーシング8のコーナー領域に沿って流れることになる。ファンモータ9は、インペラ2の下に位置決めされている。段付きフィルタ1としてのこの実施形態におけるフィルタ1の支持表面が、ケーシング8の長手方向縁部のところに示されている。
【0026】
最後に、図5では、先行技術が示されている。インペラ2及びファンモータ9を備えたファンは、一方向吸引方式であり、上側からのみ進入可能に構成されている。この結果、本質的にフィルタ1内の流れ分布度がファン軸線の中心に向かって段階的であるという特定の欠点が生じる。加うるに、これら従来構成の全体的寸法は、非常に大きい。というのは、コンポーネントの協働的使用に関する或る特定の相乗効果をもはや利用することができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ファン軸線が傾斜し、フィルタ高さが一定のエアフィルタ付きファン装置の断面図である。
【図2】ファン軸線が傾斜し、フィルタが楔形に構成されたエアフィルタ付きファン装置の断面図である。
【図3】ファン軸線が傾斜し、フィルタが段付き状態に構成されたエアフィルタ付きファン装置の断面図である。
【図4】エアフィルタ付きファン装置の斜視図である。
【図5】先行技術のエアフィルタ付きファン装置を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 エアフィルタ
2 インペラ
3 インペラの下側
4 インペラの上側
5 空気流の方向
6 ファン軸線
7 フローオフチャネル
8 流れ案内装置
9 ファンモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両通風系統用のエアフィルタ付きファン装置であって、空気流の方向(5)に、エアフィルタ(1)、インペラ(2)、及びフローオフチャネル(7)を有するエアフィルタ付きファン装置において、前記インペラ(2)及び前記フローオフチャネル(7)を包囲状態で収容するケーシングとして構成された流れ案内装置(8)が設けられ、前記インペラ(2)が、エアフィルタ(1)からの空気をインペラの上側(4)とインペラの下側(3)の両方から受け入れる二重吸込み方式で構成されている、エアフィルタ付きファン装置。
【請求項2】
ファン軸線(6)は、前記流れ方向(5)から外れた状態で位置合わせされている、請求項1記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項3】
前記ファン軸線(6)は、前記流れ方向(5)に対して8°〜12°の角度αをなして位置合わせされている、請求項2記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項4】
前記ファン軸線(6)は、前記流れ方向(5)に対して10°の角度αをなして位置合わせされている、請求項2又は3記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項5】
前記エアフィルタ(1)は、連続した楔形であり、前記ファン軸線(6)の傾斜に合わされている、請求項2〜4のうちいずれか一に記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項6】
前記エアフィルタ(1)は、不連続に段付けされていて、前記ファン軸線(6)の傾斜に合わされている、請求項2〜4のうちいずれか一に記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項7】
前記エアフィルタ(1)は、3段に不連続に段付けされており、前記ファン軸線(6)の傾斜に合わされている、請求項6記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項8】
前記エアフィルタ(1)は、前記インペラの前記上側(4)の領域に、前記インペラの前記下側(3)の通路の領域と比較して、大きな高さを有する、請求項2〜7のうちいずれか一に記載のエアフィルタ付きファン装置。
【請求項9】
前記エアフィルタ(1)は、折り畳みフィルタ紙で作られて構成されている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のエアフィルタ付きファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−230597(P2008−230597A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59320(P2008−59320)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】