説明

車両電源装置

【課題】低電圧系と高電圧系との2つの電圧範囲に対応した出力を行いつつも、車両電源装置の小型化・軽量化を図る。
【解決手段】車両電源装置1は、高電圧バッテリセル2と、高電圧リレー3と、メインDC/DCコンバータ4とが1ユニット化されている。ここで、高電圧回路上には、車両システムの状況に応じて、高電圧バッテリセル2と高電圧補機との間の電気的な接続を遮断する高電圧リレー3が設けられている。メインDC/DCコンバータ4は、遮断手段よりも蓄電手段側の高電圧回路と、低電圧回路との間に接続されており、高電圧バッテリセル2から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電源装置に係り、特に、電気自動車、ハイブリット自動車、燃料電池自動車に搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリット自動車、燃料電池自動車の登場に伴い、車両に用いられる電源電圧の高電圧化が進んでいる。例えば、特許文献1には、14V系(低電圧系)用のバッテリと、42V系(高電圧系)用バッテリとを単一のパッケージケース内に組み込み、低電圧系と高電圧系との2つの電圧範囲に対応した出力を行う車両電源装置が開示されている。低電圧系の電源部品と、高電圧系の電源部品とを別箇所に分離して配置した場合、2つの電源部品を接続するハーネスの長尺化に伴い、コストと電気的損失とが増加するという問題があるが、かかる手法によれば、この問題を解決することができる。
【特許文献1】特開2004−114775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、電源装置内に、低電圧系のバッテリと高電圧系のバッテリとをそれぞれ組み込む必要があり、それぞれのバッテリによって全体の重量が増加してしまうという不都合がある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに異なる2つの電圧範囲に対応した出力を行いつつも、車両電源装置の小型化・軽量化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明は、蓄電手段と、遮断手段と、第1の変換手段とを有する車両電源装置を提供する。ここで、蓄電手段は、第1の電圧範囲の電圧で給電を行う。遮断手段は、第1の電圧範囲の給電を受けて動作する高電圧補機と、蓄電手段とを電気的に接続する高電圧回路上に設けられており、車両システムの状況に応じて、蓄電手段と高電圧補機との電気的な接続を遮断させる。第1の変換手段は、遮断手段よりも蓄電手段側の高電圧回路と、第1の電圧範囲よりも低い第2の電圧範囲の給電を受けて動作する低電圧補機が接続する低電圧回路との間に接続されており、高電圧回路を介して蓄電手段から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1の変換手段は、遮断手段よりも蓄電手段側に接続されている。そのため、車両システムの停止時も含めて常時降圧動作を行って低電圧回路へ電力を供給することができる。これにより、車両システムの停止時に、低電圧補機に対して待機電力等を供給するために設置されている低電圧バッテリを省略することができるので、車両電源装置の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両の全体構成図である。本実施形態における車両は、車両電源装置1を駆動用電源として走行する電気自動車である。なお、同図に示す車両の全体構成図は、説明の便宜上、実際の車両構成よりも簡略化して描かれている。この車両は、14Vよりも高い高電圧系と、14Vの低電圧系とを含む2つの電圧系統からなる配電システムを有している。
【0008】
車両に搭載された車両電源装置1は、高電圧系に対応した第1の電圧範囲(例えば、300〜500V)で給電を行うとともに、低電圧系に対応した第2の電圧範囲(例えば、8〜16V)で給電を行う。車両電源装置1は、高電圧回路Lhighを介して、第1の電圧範囲内の給電を受けて動作する高電圧補機に接続されているとともに、低電圧回路Llowを介して、第2の電圧範囲内の給電を受けて動作する低電圧補機に接続されている。高電圧補機としては、例えば、走行用電動機10、エアコンファンや冷却水循環用ポンプの電動機(図示せず)が挙げられる。また、低電圧補機としては、例えば、コントローラ5、高電圧リレー3を含む各種リレー等が挙げられる。ここで、第1の電圧範囲と第2の電圧範囲とは、例示した範囲に限定されるものではなく、互いに異なる電圧範囲となっていればよく、この場合、第1の電圧範囲の下限値は、第2の電圧範囲の上限値よりも大きくなっている。
【0009】
車両電源装置1は、高電圧バッテリセル2と、高電圧リレー3と、メインDC/DCコンバータ4とを主体に構成されており、これらの構成要素がユニット化されている。
【0010】
高電圧バッテリセル2は、複数の電池セル(例えば、リチウムイオン電池)が電気的に直列接続されて、第1の電圧範囲内の電圧(例えば、400V)で充放電を行うバッテリ(蓄電手段)である。この高電圧バッテリセル2から放電される電力は、高電圧回路Lhighを介して高電圧補機に供給され、また、後述するメインDC/DCコンバータ4によって降圧された後に、低電圧回路Llowを介して低電圧補機に供給される。
【0011】
高電圧リレー3は、高電圧バッテリセル2と、高電圧補機との間の高電圧回路Lhigh上に設けられており、自己の開閉状態に応じて、高電圧バッテリセル2と高電圧補機との電気的な接続を遮断することができる。高電圧リレー3の開閉状態は、車両システムの状況に応じて、後述するコントローラ5によって制御される。高電圧リレー3は、例えば、車両システムの停止時に開となり、高電圧バッテリセル2と高電圧補機との電気的な接続を遮断する。
【0012】
メインDC/DCコンバータ4は、高電圧バッテリセル2からの400Vの直流電圧を、第2の電圧範囲内の電圧(例えば、12V)の直流電圧に降圧する。このメインDC/DCコンバータ4は、一方(入力側)が、高電圧リレー3よりも高電圧バッテリセル2側の高電圧回路Lhighに接続され、他方(出力側)が、低電圧回路Llowに接続されている。
【0013】
コントローラ5は、車両電源装置1を含む車両の各部を制御する制御手段である。コントローラ5としては、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースを主体に構成されるマイクロコンピュータを用いることができる。コントローラ5は、ROMに格納された制御プログラムに従い、車両制御に関する各種の演算を行う。本実施形態との関係において、コントローラ5は、高電圧リレー3の開閉状態を切り替えたり、後述するサブDC/DCコンバータ6の起動・停止を制御したりする。
【0014】
このような車両電源装置1を含む車両の配電システムには、サブDC/DCコンバータ6が設けられている。具体的には、サブDC/DCコンバータ6は、車両電源装置1の高電圧リレー3が閉状態であることを前提に、メインDC/DCコンバータ4と同様、高電圧バッテリセル2からの400Vの直流電圧を、第2の電圧範囲内の電圧値(例えば、12V)の直流電圧に降圧する。このサブDC/DCコンバータ6は、メインDC/DCコンバータ4と異なり、車両電源装置1の外に設けられている。すなわち、サブDC/DCコンバータ6は、その入力側が、高電圧リレー3よりも下流側(高電圧バッテリセル2と対向する側)の高電圧回路Lhighに接続され、その出力側が、低電圧回路Llowに接続されている。サブDC/DCコンバータ6の起動・停止に関する制御は、上述したコントローラ5によって実行される。なお、サブDC/DCコンバータ6も、広義において、車両電源装置1の構成要素として機能する。
【0015】
このような車両電源装置1を備える車両において、コントローラ5は、運転者のキー操作(キーオン)を検知すると、車両システムの起動を開始するとともに、高電圧リレー3を閉じて、高電圧回路Lhighに高電圧電力を供給する。高電圧回路Lhighに接続するメインDC/DCコンバータ4と、サブDC/DCコンバータ6とはそれぞれ降圧動作を行い、低電圧回路Llowを介して、システムの起動に必要な低電圧補機に対して低電圧電力を供給し、車両システムの起動を実施する。車両システムの起動が完了すると、アクセルペダル11を踏んだ度合い、すなわち、アクセルペダル11の操作量(アクセル開度)に応じたアクセル開度信号がコントローラ5に出力される。コントローラ5は、アクセル開度信号と、電子制御装置12から走行用電動機10の回転数などの通信信号とを取得すると、これらの情報に基づいて、必要な走行用電動機10の出力を演算する。そして、コントローラ5は、演算された出力に応じた信号を電子制御装置12に出力する。電子制御装置12は、高電圧回路Lhighから高電圧電力を受けると、走行用電動機10が所望の出力になるように、交流高電圧回路を介して走行用電動機10に交流電力を供給する。走行用電動機10の出力は、ギヤ13、駆動軸14、ホイール15を通じてタイヤ16へと伝達され、これにより、車輪に駆動力が発生する。
【0016】
また、運転者がステアリングホイール17を操作すると、連動してステアリングシャフト18が回転し、これに伴い、ラックバー19が駆動して、ホイール15およびタイヤ16の向きを変えて操舵を行う。この場合、電動パワーステアリングユニット20は、ステアリングホイール17の操作に対応するステアリングシャフト18の回転量に応じて、回転トルクを補助し、運転者の操舵に必要な力を軽減する。運転者による操舵の度合い、すなわち、ステアリングシャフト18の回転量は、電動パワーステアリングユニット20によって検出され、ステアリング位置信号としてコントローラ5へ出力される。なお、低電圧回路Llowは、高電圧リレー3、アクセルペダル11、電動パワーステアリングユニット20、電子制御装置12などにも接続されているが、図1では、省略して描かれている。
【0017】
このように本実施形態において、車両電源装置1は、高電圧バッテリセル2と、高電圧リレー3と、メインDC/DCコンバータ4とで構成されている。ここで、高電圧バッテリセル2は、第1の電圧範囲の電圧で給電を行う蓄電手段である。高電圧リレー3は、高電圧補機と、高電圧バッテリセル2とを電気的に接続する高電圧回路Lhigh上に設けられており、車両システムの状況に応じて、高電圧バッテリセル2と高電圧補機との間の電気的な接続を遮断する遮断手段である。メインDC/DCコンバータ4は、高電圧リレー3よりも高電圧バッテリセル2側の高電圧回路Lhighと、低電圧補機が接続される低電圧回路Llowとの間に接続されており、高電圧回路Lhighを介して高電圧バッテリセル2から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する第1の変換手段である。
【0018】
かかる構成によれば、メインDC/DCコンバータ4は、高電圧リレー3より高電圧バッテリセル2側に接続されている。そのため、車両システムの停止時といった、高電圧リレー3による高電圧回路Lhighの遮断時も含めて常時降圧動作を行って低電圧回路Llowへ電力を供給することができる。これにより、車両システム停止時に、低電圧補機に対して待機電力等を供給するために設置されている低電圧バッテリを省略することができるので、車両電源装置1の小型化および軽量化、ひいては、車両の小型化および軽量化を図ることができる。
【0019】
なお、上述した実施形態では、電気自動車を例示して説明を行ったが、本発明はこれに限定されず、バッテリを電源装置の一つして備える種々の車両に適用することができる。例えば、エンジンと走行用電動モータを併用するハイブリット自動車、燃料電池を発電手段として備える燃料電池自動車といった種々の車両の電源装置として適用することができる。かかるケースにおいても、車両システム停止時に、低電圧補機に対して待機電力等を供給するために設置されている低電圧バッテリを省略することができるので、車両電源装置1の小型化および軽量化、ひいては、車両の小型化および軽量化を図ることができる。
【0020】
図2は、第1の実施形態の変形例である車両電源装置1が適用された車両の全体構成図である。同図に示すように、車両電源装置1には、外部から絶縁物の棒などを介して、乗員が高電圧系に直接触ることなく高電圧回路Lhighの接続状態を遮断可能なスイッチ7が設けられている。このスイッチ7は、例えば、高電圧回路LhighのメインDC/DCコンバータ4の接続部位と、高電圧バッテリセル2との間に設けられており、自己の開閉状態に応じて、高電圧回路Lhighを遮断することができる。換言すれば、車両電源装置1は、乗員による操作に応じて、高電圧バッテリセル2からメインDC/DCコンバータ4への給電を停止するスイッチ(操作手段)7をさらに有していてもよい。
【0021】
かかる構成によれば、スイッチ7を操作することにより、高電圧バッテリセル2からメインDC/DCコンバータ4への高電圧電力の供給を停止することができる。ところで、車両システムを停止した状態で長期間放置する場合、メインDC/DCコンバータ4から低電圧回路Llowへ給電していると、高電圧バッテリセル2のエネルギーがなくなる可能性がある。しかしながら、スイッチ7などでメインDC/DCコンバータ4への給電を停止させることにより、高電圧バッテリセル2のエネルギー消費を抑制することができる。(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第2の実施形態における特徴の一つは、メインDC/DCコンバータ4から低電圧回路Llowを介して低電圧補機に供給される電力(以下「メイン側電力」という)と、サブDC/DCコンバータ6から低電圧回路Llowを介して低電圧補機に供給される電力(以下「サブ側電力」という)との電力供給割合が設定されている点である。なお、システム構成については、第1の実施形態と同様であるため、本実施形態における詳細な説明は省略する。
【0022】
図3は、第2の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図である。同図において、期間Aは、車両システムが起動を開始してから、高電圧リレー3によって高電圧補機と高電圧バッテリセル2との電気的な接続が行われるまで、すなわち、高電圧リレー3が閉じるまでの期間に相当する。この期間A内では、低電圧回路Llowに対して、高電圧リレー3を閉じるまでに低電圧補機において消費される電力を供給する必要がある。このような電力としては、高電圧リレー3を動作させるための電力Pm1と、その他の低電圧補機を動作させるための電力Pm2とが該当する。ここで、電力Pm2としては、代表的に、コントローラ5の消費電力、インパネ等のランプの消費電力や、車内の時計の消費電力などが挙げられる。また、車両が、燃料電池自動車の場合には、燃料電池を制御するコントローラの消費電力もこれに含まれる。
【0023】
期間Bは、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態の期間に相当し、この期間B内では、車両停止中に低電圧補機において消費される電力を低電圧回路Llow側に供給する必要がある。車両停止中に必要な電力としては、上述した低電圧補機の消費電力Pm2の他に、代表的には、車両の状態を検出する各種センサの消費電力や、電子制御装置12の消費電力、電動パワーステアリングユニット20の消費電力などが挙げられる。
【0024】
一方、期間Cは、車両走行中の期間に相当し、この期間C内では、車両走行中に低電圧補機において消費される電力を低電圧回路Llow側に供給する必要がある。車両走行中に必要な電力としては、上述した低電圧補機の消費電力Pm2、各種センサの消費電力や、電子制御装置12の消費電力、電動パワーステアリングユニット20の消費電力の他に、車両の走行に伴い電力が増減するような低電圧補機(電動パワーステアリングユニット20等)の消費電力などが挙げられる。このような各期間A〜Cにおける電力の最大値は、車両に搭載される個々の低電圧補機の最大消費電力と、各低電圧補機の使用されるシチュエーション(期間)とに基づいて、実験やシミュレーションを通じて予め取得することができ。
【0025】
メイン側電力とサブ側電力との電力供給割合は、「0」から低電圧補機で消費される最大電力の範囲内において、任意に決定することができる。本実施形態において、メイン側電力は、車両システムが起動を開始してから、高電圧リレー3を閉じるまでの間に必要な電力(期間Aに相当する電力)が上限として決定されている。換言すれば、メインDC/DCコンバータ4は、車両システムが起動を開始してから、高電圧リレー3を閉じるまでの間に低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備えている。したがって、図3に示す期間Aでは、低電圧補機に供給される電力は、メイン側電力、すなわち、メインDC/DCコンバータ4からの供給される電力によって賄われる。一方、図3に示す期間Bまたは期間Cでは、低電圧補機に供給される電力は、メインDC/DCコンバータ4からの電力によって賄われるとともに、その不足分(トータルの電力−メイン側電力)がサブ側電力、すなわち、サブDC/DCコンバータ6からの電力によって賄われる。
【0026】
図4は、第2の実施形態における、車両システムの起動開始から起動完了までの車両システムの起動処理の手順を示すフローチャートである。まず、ステップ10(S10)において、コントローラ5は、キーオンされたか否か、すなわち、運転者によって車両のイグニッションスイッチがオンされたか否かを判断する。第1の実施形態で詳述したように、メインDC/DCコンバータ4は、高電圧リレー3よりも高電圧バッテリセル2側に接続されているため、車両システム停止時も含めて常時降圧動作を行って低電圧回路Llow側へ電力を供給している。そのため、低電圧補機を駆動するためのバッテリを備えずとも、起動処理を行うことができる。このステップ10において肯定判定された場合、すなわち、キーオンされた場合には、ステップ11(S11)に進む。ステップ10において否定判定された場合、すなわち、キーオンされていない場合には、所定時間後に再度ステップ10に戻る。
【0027】
ステップ11において、コントローラ5は、高電圧リレー3を閉じる。これにより、高電圧リレー3によって遮断されていた、車両電源装置1(具体的には、高電圧バッテリセル2)と高電圧補機とが電気的に接続される。また、高電圧リレー3を閉じることにより、サブDC/DCコンバータ6に供給される電力系統も確保されることとなる。
【0028】
ステップ12(S12)において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を起動させる。ステップ13(S13)において、コントローラ5は、起動に必要な補機を駆動した上で、本処理を終了する。
【0029】
図5は、第2の実施形態における車両システムの停止処理の手順を示すフローチャートである。まず、ステップ30(S30)において、コントローラ5は、キーオフされたか否か、すなわち、運転者によって車両のイグニッションスイッチがオフされたか否かを判断する。ステップ30において肯定判定された場合、すなわち、キーオフされた場合には、ステップ31(S31)に進む。ステップ30において否定判定された場合、すなわち、キーオフされていない場合には、所定時間後に再度ステップ30に戻る。
【0030】
ステップ31において、コントローラ5は、駆動している補機を停止させ、ステップ32(S32)において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させる。そして、ステップ33(S33)において、コントローラ5は、高電圧リレー3を開けた上で、本処理を終了する。これにより、高電圧リレー3によって接続されていた、車両電源装置1(具体的には、高電圧バッテリセル2)と高電圧補機とが電気的に遮断される。また、高電圧リレー3を開けることにより、サブDC/DCコンバータ6側への電力供給も停止されることとなる。
【0031】
このように本実施形態において、車両電源装置1は、サブDC/DCコンバータ6をさらに有している。このサブDC/DCコンバータ6は、高電圧リレー3を介して高電圧バッテリセル2と対向する側の高電圧回路Lhighと、低電圧回路Llowとの間に接続されており、高電圧回路Lhighを介して高電圧バッテリセル2から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する。また、このサブDC/DCコンバータ6は、低電圧補機において消費される電力に対する、メインDC/DCコンバータ4から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する。ここで、メインDC/DCコンバータ4は、は、車両システムが起動を開始してから、高電圧リレー3によって高電圧補機と高電圧バッテリセル2との電気的な接続が行われるまでの期間に低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備えている。
【0032】
かかる構成によれば、車両電源装置1に内蔵されたメインDC/DCコンバータ4が、高電圧リレー3を投入するまでに低電圧補機において消費される電力を供給する能力を有している。そのため、車両システム停止状態では高電圧リレー3が開けられていたとしても、起動時にこれ閉じることが可能となる。これにより高電圧回路Lhighには常時高電圧が印加されず、消費エネルギーの抑制を図ることができるとともに、より安全な車両システムを構成することができる。
【0033】
また車両システムの停止状態では、必要な低電圧補機の消費電力は車両走行中と比較する極めて小さい。そのため、車両システムが停止した状態において、車両走行中の低電圧補機の消費電力を供給し得る程度の出力を備えるDC/DCコンバータを用いて、低電圧補機に対して電力を供給した場合、車両全体のエネルギー効率が悪くなるという可能性がある。これに対して、メインDC/DCコンバータ4を、高電圧リレー3を閉じるまでの必要最低限の出力仕様とすることで、車両全体のエネルギー効率の悪化を抑制することができる。また、車両システムの起動時に高電圧リレー3を閉じることで、起動中にサブDC/DCコンバータ6の運転を開始することができので、起動以後に必要な低電圧補機の消費電力を供給することも可能となる。また、かかる構成によれば、メインDC/DCコンバータ4の大容量化を抑制することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第3の実施形態における特徴の一つは、メインDC/DCコンバータ4からのメイン側電力と、サブDC/DCコンバータ6からのサブ側電力との電力供給割合が設定されている点である。なお、システム構成については、第1の実施形態と同様であるため、本実施形態における詳細な説明は省略する。
【0035】
図6は、第3の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図であり、第2の実施形態において説明した図3に対応する図である。本実施形態において、メイン側電力は、図6に示すように、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態において低電圧補機において消費される電力(期間Bに相当する電力)が上限として決定されている。換言すれば、メインDC/DCコンバータ4は、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態において低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備える。したがって、図6に示す期間Aまたは期間Bでは、低電圧補機に供給される電力は、メイン側電力、すなわち、メインDC/DCコンバータ4からの供給される電力によって賄われる。一方、図6に示す期間Cでは、低電圧補機に供給される電力は、メインDC/DCコンバータ4からの電力によって賄われるとともに、その不足分(トータルの電力−メイン側電力)をサブ側電力、すなわち、サブDC/DCコンバータ6からの電力によって賄われる。
【0036】
図7は、第3の実施形態における車両システムの起動開始から起動完了までの車両システムの起動処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第2の実施形態にかかる起動処理の手順を概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、その詳細な説明は省力する。ここで、第3の実施形態の起動処理が、第2の実施形態のそれと相違する点は、ステップ11の処理に続きステップ13へと進み、ステップ12、すなわち、サブDC/DCコンバータ6を起動させるステップを行わないことである。
【0037】
図8は、第3の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。まず、ステップ50において、コントローラ5は、アクセル開度信号に基づいて、アクセルペダル11が踏まれているか否かを判定する。ステップ50において肯定判定された場合、すなわち、アクセルペダル11が踏み込まれている場合には、ステップ51(S51)に進む。一方、ステップ50において否定判定された場合、すなわち、アクセルペダル11が踏み込まれていない場合には、所定時間後に再度ステップ50に戻る。
【0038】
ステップ51において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を起動させる。ステップ52(S52)において、コントローラ5は、アクセル開度信号に基づいて、アクセルペダル11の踏込量、すなわち、アクセル開度を検出する。ステップ53(S53)において、コントローラ5は、アクセル開度と電子制御装置12から走行用電動機10の回転数などの通信信号を取得すると、これらの情報に基づいて、必要な走行用電動機10の出力を演算する。ステップ54において、コントローラ5は、演算された出力に応じた通信信号を、電子制御装置12に対して出力する。ステップ55(S55)において、電子制御装置12は、走行用電動機10が、コントローラ5において演算された出力になるように、交流高電圧回路Lhighを介して交流電力を供給し、これにより、走行用電動機10の出力を制御する。
【0039】
ステップ56(S56)において、コントローラ5は、運転者によって車両のイグニッションスイッチがオフされたか否か、すなわち、キーオフされたか否かを判断する。ステップ56において肯定判定された場合、すなわち、キーオフされた場合には、ステップ57(S57)に進む。ステップ56において否定判定された場合、すなわち、キーオフされていない場合には、ステップ52に戻る。ステップ57において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させる。
【0040】
図9は、第3の実施形態における、車両システムの停止処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第2の実施形態にかかる停止処理の手順を概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、その詳細な説明は省力する。ここで、第3の実施形態の停止処理が、第2の実施形態のそれと相違する点は、ステップ31において、コントローラ5が、駆動している補機を停止させ、ステップ33において、コントローラ5が、高電圧リレー3が開けた上で、本処理を終了する点にある。換言すれば、第3の実施形態の停止処理では、図5に示すステップ30,32の処理は行われない。
【0041】
このように本実施形態によれば、車両電源装置1は、サブDC/DCコンバータ6をさらに有している。このサブDC/DCコンバータ6は、高電圧リレー3を介して高電圧バッテリセル2と対向する側の高電圧回路Lhighと、低電圧回路Llowとの間に接続されており、高電圧回路Lhighを介して高電圧バッテリセル2から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する。また、このサブDC/DCコンバータ6は、低電圧補機において消費される電力に対する、メインDC/DCコンバータ4から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する。ここで、メインDC/DCコンバータ4は、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態において低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備えている。
【0042】
かかる構成によれば、メインDC/DCコンバータ4が、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態において低電圧補機において消費される電力を供給する能力を有している。これにより、DC/DCコンバータの効率が低下する、低負荷の状態でサブDC/DCコンバータ6を動作させるといったシチュエーションの発生が抑制されるので、車両全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0043】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第4の実施形態における特徴の一つは、メインDC/DCコンバータ4からのメイン側電力と、サブDC/DCコンバータ6からのサブ側電力との電力供給割合が設定されている点である。なお、システム構成については、第1の実施形態と同様であるため、本実施形態における詳細な説明は省略する。
【0044】
図10は、第4の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図であり、第2の実施形態において説明した図3に対応する図である。本実施形態において、メイン側電力は、図10に示すように、サブ側電力と同等に設定されている。換言すれば、メインDC/DCコンバータ4の出力は、サブDC/DCコンバータ6の出力と同等となっている。したがって、図10に示す期間A、期間B、または、期間Cの一部(低電圧補機の消費電力≦メイン側電力)では、低電圧補機に供給される電力は、メイン側電力、すなわち、メインDC/DCコンバータ4からの供給される電力によって賄われる。
【0045】
一方、期間Cの一部(低電圧補機の消費電力>メイン側電力)では、低電圧補機に供給される電力は、メインDC/DCコンバータ4からの電力によって賄われるとともに、その不足分(トータルの電力−メイン側電力)をサブ側電力、すなわち、サブDC/DCコンバータ6からの電力によって賄われる。
【0046】
図11は、第4の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第3の実施形態にかかる処理手順を概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、詳細な説明は省力する。また、車両システムの起動処理の手順、および、車両システムの停止処理の手順については、第3の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
まず、コントローラ5は、ステップ52において、アクセル開度を検出し、ステップ53において、走行用電動機10の出力を演算する。ステップ53に続くステップ58において、コントローラ5は、低電圧補機において消費される電力の総量に基づいて、この総量がメイン側電力よりも大きいか否か、すなわち、サブ側電力も必要か否かを判断する。ステップ58において肯定判定された場合、すなわち、サブ側電力も必要な場合には、ステップ51に進む。そして、ステップ51において、サブDC/DCコンバータ6を起動する。一方、ステップ58において否定判定された場合、すなわち、サブ側電力が必要ではない場合には、ステップ51の処理をスキップして、ステップ54に進む。
【0048】
ステップ54において、コントローラ5は、演算された出力に応じた通信信号を、電子制御装置12に対して出力する。ステップ55において、電子制御装置12は、走行用電動機10の出力を制御する。ステップ56において、コントローラ5は、キーオフされたか否かを判断する。ステップ56において肯定判定された場合、すなわち、キーオフされた場合には、ステップ57に進む。ステップ56において否定判定された場合、すなわち、キーオフされていない場合には、所定時間後にステップ52に戻り、上述した処理を再度実行する。ステップ57において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させる。
【0049】
このように本実施形態によれば、車両電源装置1は、サブDC/DCコンバータ6をさらに有している。このサブDC/DCコンバータ6は、高電圧リレー3を介して高電圧バッテリセル2と対向する側の高電圧回路Lhighと、低電圧回路Llowとの間に接続されており、高電圧回路Lhighを介して高電圧バッテリセル2から給電される第1の電圧範囲の電圧を、第2の電圧範囲の電圧に降圧する。また、このサブDC/DCコンバータ6は、低電圧補機において消費される電力に対する、メインDC/DCコンバータ4から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する。ここで、メインDC/DCコンバータ4は、サブDC/DCコンバータ6と同等の出力を備えている。
【0050】
かかる構成によれば、メインDC/DCコンバータ4、或いは、サブDC/DCコンバータ6が故障した場合でも、少なくとも半分の低電圧補機の消費電力を供給することができるので、車両退避のための走行が可能となる。また、一つのDC/DCコンバータの出力が大きいため、車両運転中などでも一部のDC/DCコンバータを停止させることも可能となる。
【0051】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第5の実施形態は、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理において第4の実施形態のそれと相違している。
【0052】
図12は、第5の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第4の実施形態にかかる処理手順と概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、その詳細な説明は省力する。
【0053】
まず、ステップ59において、コントローラ5は、車両がアイドルストップ状態であるか否かを判断する。ステップ59において肯定判定された場合、すなわち、車両がアイドルステップ状態である場合には、ステップ60に進む。このステップ60において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させた後に、所定時間後にステップ59に戻り、上述した処理を再度実行する。一方、ステップ59において否定判定された場合、すなわち、車両がアイドルストップ状態でない場合には、ステップ52に進む。そして、第4の実施形態と同様に、ステップ52以降の処理が行われる。なお、この第5の実施形態では、ステップ56において否定判定された場合、すなわち、キーオフされていない場合には、所定時間後にステップ59に戻り、上述した処理を再度実行する。
【0054】
このように本実施形態によれば、アイドルストップ状態である場合に、サブDC/DCコンバータ6の動作を停止させるコントローラ(制御手段)5をさらに有している。かかる構成によれば、アイドルストップを条件に、サブDC/DCコンバータ6を停止することにより、アイドルストップ時の車両全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0055】
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第6の実施形態は、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理において第4の実施形態のそれと相違している。
【0056】
図13は、第6の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第5の実施形態にかかる処理手順を概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、その詳細な説明は省力する。
【0057】
まず、ステップ59において、コントローラ5は、車両がアイドルストップ状態であるか否かを判断する。ステップ59において肯定判定された場合、すなわち、車両がアイドルステップ状態である場合には、ステップ61に進む。ステップ61において、コントローラ5は、図示しないシフトレバーのポジションを検出するセンサからの検出信号に基づいて、シフトレバーがNレンジまたはPレンジであるか否かを判断する。このステップ60において否定判定された場合、すなわち、シフトレバーがNレンジおよびPレンジでない場合には、ステップ59に戻る。一方、ステップ61において肯定判定された場合、すなわち、シフトレバーがNレンジまたはPレンジである場合には、ステップ60に進む。そして、ステップ60において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させた後に、所定時間後にステップ59に戻り、上述した処理を再度実行する。
【0058】
一方、ステップ59において否定判定された場合、すなわち、車両がアイドルストップ状態でない場合には、ステップ52に進む。そして、第4の実施形態に示すように、ステップ52以降の処理が行われる。なお、この第6の実施形態では、ステップ56において否定判定された場合、すなわち、キーオフされていない場合には、所定時間後にステップ59に戻り、上述した処理を再度実行する。
【0059】
このように本実施形態によれば、アイドルストップ状態であり、かつ、車両のシフト位置がN(ニュートラル)レンジまたはP(パーキング)レンジである場合に、サブDC/DCコンバータ6の動作を停止させるコントローラ(制御手段)5をさらに有している。例えば、急加速時に消費電力が急激に増加するような低電圧補機を考えた場合、アイドルストップ中に運転しているDC/DCコンバータのみでは供給電力が不足するような場合を想定する。この点、本実施形態によれば、運転者がNレンジまたはPレンジ以外、例えば、D(ドライブ)レンジに操作することにより、アイドルストップ状態であっても、サブDC/DCコンバータ6が起動される。そのため、運転者の発進要求への応答性の向上を図ることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、アイドルストップ状態であっても、シフトレバーのポジションがNレンジまたはPレンジでない場合には、サブDC/DCコンバータ6は起動したままとなっている。これにより応答性の向上を図っているが、このような判断は、シフトレバーのポジションがNレンジまたはPレンジでない場合以外にも、ステアリング操作に基づいて、行ってもよい。
【0061】
図14は、第6の実施形態の変形例である、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。同図のステップ62に示すように、コントローラ5は、ステアリング位置信号に基づいて、ステアリング操作がないか否かを判断する。このステップ62において否定判定された場合、すなわち、ステアリング操作がある場合には、ステップ59に戻る。一方、ステップ62において肯定判定された場合、すなわち、ステアリング操作がない場合には、ステップ60に進む。そして、ステップ60において、コントローラ5は、サブDC/DCコンバータ6を停止させた後に、所定時間後にステップ59に戻り、上述した処理を再度実行する。
【0062】
このように、本実施形態は、アイドルストップ状態であっても、車両の乗員がステアリングを操作していない場合に、サブDC/DCコンバータ6の動作を停止させてもよい。かかる構成によれば、アイドルストップ状態であっても、ステアリグ操作が行われた場合には、サブDC/DCコンバータ6が起動されることとなる。すなわち、ステアリング操作に伴い低電圧補機(具体的には、電動パワーステアリングユニット20)の消費電力が増えるようなケースでは、サブDC/DCコンバータ6が予め起動されることとなる。そのため、低電圧補機の消費電力が不足してからサブDC/DCコンバータ6を起動する場合と比較して、車両の応答性の向上を図ることができる。
【0063】
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両について説明する。この第7の実施形態は、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理において第4の実施形態のそれと相違している。
【0064】
図15は、第7の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、上述した第4の実施形態にかかる処理手順を概ね同じであり、同一の処理については同一のステップ番号を付すこととして、その詳細な説明は省力する。この第7の実施形態にかかる処理手順が、第4の実施形態にかかるそれと相違する点は、ステップ58において肯定判定された後に、ステップ60に進み、その後に、ステップ54の処理を実行することである。ここで、ステップ60では、コントローラ5がサブDC/DCコンバータ6を停止させる処理が行われる。
【0065】
このように本実施形態によれば、走行中でもサブDC/DCコンバータ6からの電力供給が不要な場合には、サブDC/DCコンバータ6を停止している。換言すれば、低電圧補機の消費電力と、メインDC/DCコンバータ4の出力可能な電力とに基づいて、サブDC/DCコンバータ6の動作を停止させている。これにより、不必要にサブDC/DCコンバータ6を動作させる必要がなくなるため、車両全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0066】
図16は、第7の実施形態の変形例としての、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、ステップ58において否定判定された場合には、ステップ62に示す処理をおこなってもよい。このステップ62において、コントローラ5は、現在の低電圧補機の消費電力と、メインDC/DCコンバータ4の出力上限値とに基づいて、アクセルが全開された場合に、メイン側電力のみでは電力の供給不足となるか否かを判断する。このステップ62において肯定判定された場合、すなわち、電力の供給不足である場合には、ステップ51に進み、サブDC/DCコンバータ6を起動する。一方、ステップ62において否定判定された場合、すなわち、電力の供給不足でない場合には、ステップ60に進み、サブDC/DCコンバータ6を停止した上で、ステップ54に進む。
【0067】
かかる手法によれば、車両の乗員によるアクセル操作量(アクセル開度)に基づいて、サブDC/DCコンバータ6の動作を停止させるコントローラ(制御手段)5をさらに有している。かかる構成によれば、低電圧補機の消費電力が急激に増加しないような場合、すなわち、アクセル開度が十分に大きい場合にサブDC/DCコンバータ6を停止するといった措置を講ずることができる。これにより、アクセル開度を反映しない制御手法と比較して、車両応答性の向上を図ることができる。
【0068】
なお、上述した各実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載したものであり、かかる記載のみに本発明を限定するものではない。したがって、上記の各実施形態に開示された手法は、本発明の技術的範囲に包含される範囲においてその変更等が可能である。例えば、各実施形態では、車両電源装置1としてDC/DCコンバータを2つ使用した構成であるが、それ以上の個数のDC/DCコンバータを使用してもよい。また、各実施形態に個別に記載した内容を、複合的に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態にかかる車両電源装置1が適用された車両の全体構成図
【図2】第1の実施形態の変形例である車両電源装置1が適用された車両の全体構成図
【図3】第2の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図
【図4】第2の実施形態における、車両システムの起動開始から起動完了までの車両システムの起動処理の手順を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態における車両システムの停止処理の手順を示すフローチャート
【図6】第3の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図
【図7】第3の実施形態における車両システムの起動開始から起動完了までの車両システムの起動処理の手順を示すフローチャート
【図8】第3の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図9】第3の実施形態における、車両システムの停止処理の手順を示すフローチャート
【図10】第4の実施形態におけるメイン側電力とサブ側電力との電力供給割合を示す説明図
【図11】第4の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図12】第5の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図13】第6の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図14】第6の実施形態の変形例である、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図15】第7の実施形態における、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【図16】第7の実施形態の変形例としての、車両システムの起動完了後から車両走行中の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0070】
1 車両電源装置
2 高電圧バッテリセル
3 高電圧リレー
4 コンバータ
5 コントローラ
6 コンバータ
7 スイッチ
10 走行用電動機
11 アクセルペダル
12 電子制御装置
13 ギヤ
14 駆動軸
15 ホイール
16 タイヤ
17 ステアリングホイール
18 ステアリングシャフト
19 ラックバー
20 電動パワーステアリングユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両電源装置において、
第1の電圧範囲の電圧で給電を行う蓄電手段と、
前記第1の電圧範囲の給電を受けて動作する高電圧補機と、前記蓄電手段とを電気的に接続する高電圧回路上に設けられており、車両システムの状況に応じて、前記蓄電手段と前記高電圧補機との電気的な接続を遮断させる遮断手段と、
前記遮断手段よりも前記蓄電手段側の前記高電圧回路と、前記第1の電圧範囲よりも低い第2の電圧範囲の給電を受けて動作する低電圧補機が接続する低電圧回路との間に接続されており、前記高電圧回路を介して前記蓄電手段から給電される前記第1の電圧範囲の電圧を、前記第2の電圧範囲の電圧に降圧する第1の変換手段と
を有することを特徴とする車両電源装置。
【請求項2】
前記低電圧補機および前記高電圧補機は、電気自動車に搭載された補機であることを特徴とする請求項1に記載された車両電源装置。
【請求項3】
前記低電圧補機および前記高電圧補機は、ハイブリッド自動車に搭載された補機であることを特徴とする請求項1に記載された車両電源装置。
【請求項4】
前記低電圧補機および前記高電圧補機は、燃料電池自動車に搭載された補機であることを特徴とする請求項1に記載された車両電源装置。
【請求項5】
乗員による操作に応じて、前記蓄電手段から前記第1の変換手段への給電を停止する操作手段をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項6】
前記遮断手段を介して前記蓄電手段と対向する側の前記高電圧回路と、前記低電圧回路との間に接続されており、前記高電圧回路を介して前記蓄電手段から給電される前記第1の電圧範囲の電圧を、前記第2の電圧範囲の電圧に降圧するとともに、前記低電圧補機において消費される電力に対する、前記第1の変換手段から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する第2の変換手段をさらに有し、
前記第1の変換手段は、車両システムが起動を開始してから、前記遮断手段によって前記高電圧補機と前記蓄電手段との電気的な接続が行われるまでの期間に前記低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項7】
前記遮断手段を介して前記蓄電手段と対向する側の前記高電圧回路と、前記低電圧回路との間に接続されており、前記高電圧回路を介して前記蓄電手段から給電される前記第1の電圧範囲の電圧を、前記第2の電圧範囲の電圧に降圧するとともに、前記低電圧補機において消費される電力に対する、前記第1の変換手段から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する第2の変換手段をさらに有し、
前記第1の変換手段は、車両システムの起動が完了した後の車両停止状態において前記低電圧補機において消費される電力を供給し得る出力を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項8】
前記遮断手段を介して前記蓄電手段と対向する側の前記高電圧回路と、前記低電圧回路との間に接続されており、前記高電圧回路を介して前記蓄電手段から給電される前記第1の電圧範囲の電圧を、前記第2の電圧範囲の電圧に降圧するとともに、前記低電圧補機において消費される電力に対する、前記第1の変換手段から出力される電力の不足に応じて、電力を出力する第2の変換手段をさらに有し、
前記第1の変換手段は、前記第2の変換手段と同等の出力を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項9】
アイドルストップ状態である場合に、前記第2の変換手段の動作を停止させる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項10】
アイドルストップ状態であり、かつ、車両のシフト位置がニュートラルレンジまたはパーキングレンジである場合に、前記第2の変換手段の動作を停止させる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項11】
アイドルストップ状態であり、かつ、車両の乗員がステアリングを操作していない場合に、前記第2の変換手段の動作を停止させる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項12】
前記低電圧補機の消費電力と、前記第1の変換手段から出力可能な電力とに基づいて、前記第2の変換手段の動作を停止させる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載された車両電源装置。
【請求項13】
車両の乗員によるアクセル操作量に基づいて、前記第2の変換手段の動作を停止させる制御手段をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載された車両電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−5622(P2008−5622A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172360(P2006−172360)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】