説明

車両

【課題】特定物質検出の対象者が運転席に確実に着席しているようにする。
【解決手段】ECUは、シートベルト22に内装したセンサ23によって運転者の皮膚からアルデヒドを検出することにより運転者の飲酒の有無を検査し、更に、アルデヒド検査時にセンサ23と座席21の座面に設けたシート側電極26を用いて運転者の身体のインピーダンスを測定することにより、検査対象である運転者が確実に座席21に着席していることを確認し、なりすましを防止する。アルデヒド検査の合格と着席の確認の2つの条件が満たされた場合にエンジンの始動を可能とし、少なくとも一方の条件が満たされない場合にはエンジンの始動を禁止する。また、ECUは、継続してシートベルト22を締めていることを監視し、車両の停止中にシートベルト22が外された場合にはエンジンを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、例えば、飲酒運転を防止するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒、及び酒気帯びによる運転が問題視されており、産官学で対策が研究されている。
そして、飲酒の有無の判定は、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を飲酒検出装置で分析することにより行われている。
【0003】
また、飲酒運転は非常に危険な行為であるため、次の特許文献1に記載されている「飲酒運転防止機構」のように、単に酒気帯びを検出するのみならず、運転手が酒気を帯びている場合にはエンジンが起動しないようにするものも提案されている。
【特許文献1】特開2007−106277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、運転者以外の飲酒していない者が、運転者になりすまして検査を行うことでエンジンを始動する可能性があり、これを如何に防ぐかが問題となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、酒気帯び運転を有効に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に記載の発明では、対象者の身体から特定物質を検出する特定物質検出手段と、前記特定物質を検出した対象者が運転席に着席しているか否かを検出する着席検出手段と、前記検出した特定物質が所定の閾値未満であり、かつ、前記対象者の着席が検出された場合に、エンジンの始動を可能にするエンジン始動手段と、を具備したことを特徴とする車両を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記特定物質検出手段は、前記対象者の身体の所定の部位に接触するセンサによって前記特定物質の検出を行い、前記着席検出手段は、前記所定の部位に接触する第1の電極と、前記運転席の運転者に接する部分に設けた第2の電極と、の間のインピーダンスによって前記対象者の着席を検出することを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記センサと、前記第1の電極は、シートベルト、又はハンドルに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記エンジンが始動した後、前記運転席のシートベルトが固定されているか否かを監視する監視手段と、前記監視手段が前記運転席のシートベルトが解除されたことを検出し、かつ、車両が停止している場合には、前記エンジンを停止することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記エンジンが始動した後、前記運転席に着席している者の体重を監視する監視手段と、前記監視手段で、前記体重が所定の閾値よりも軽くなったことを検出し、かつ、車両が停止している場合には、前記エンジンを停止することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、検出した特定物質が所定の閾値未満であること、及び、検出した対象者が運転席に着席していることを条件にエンジンの始動を可能としているので酒気帯び運転を有効に防止することができる。
請求項2の発明によれば、対象者の身体の所定の部位にて、インピーダンスの測定と特定物質の測定を行うことによりなりすましを防止することができる。
請求項3の発明によれば、センサと第1の電極をシートベルト又はハンドルに設けることにより、対象者は、通常の運転姿勢の状態でインピーダンスと特定物質の測定を受けることができる。
請求項4の発明によれば、対象者が運転席に着席し続けていることをシートベルトの装着状態によって監視することができ、測定後の入れ替わりを防止することができる。
請求項5の発明によれば、対象者が運転席に着席し続けていることを体重によって監視することができ、測定後の入れ替わりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)実施の形態の概要
図示しないECUは、シートベルト22(図1(a))に内装したセンサ23によって運転者の皮膚表面からアルデヒドを検出することにより運転者の飲酒の有無を検査する。
更に、ECUは、アルデヒド検査時にセンサ23と座席21の座面に設けたシート側電極26を用いて運転者の身体のインピーダンスを測定することにより、検査対象である運転者が確実に座席21に着席していることを確認し、なりすましを防止する。
そして、ECUは、アルデヒド検査の合格と着席の確認の2つの条件が満たされた場合にエンジンの始動を可能とし、少なくとも何れか一方の条件が満たされない場合にはエンジンの始動を禁止する。
【0009】
また、エンジン始動後の運転者の入れ替わりを防止するために、ECUは、係止機構24によって運転者が継続してシートベルト22を締めていることを監視し、車両の停止中にシートベルト22が外された場合にはエンジンを停止する。
なお、本実施の形態の車両は、シートベルト22を装着しなければエンジンを始動できないシステムとなっており、アルデヒド検査の合格と着席の確認2つの条件の少なくとも一方が満たされない場合、ECUは、係止機構24を制御してシートベルト22の装着をロックすることによりエンジンの始動を禁止する。
【0010】
(2)実施の形態の詳細
まず、本実施の形態で用いるセンサの配置などについて説明する。
図1(a)は、本実施の形態に係る車両の運転席を正面から見たところを示した模式図である。
シートベルト22の一端には、巻き取り機構が設けられており、未使用時は、運転者の右肩近辺に引き上げられている。
【0011】
シートベルト22の他端には、例えば、樹脂で形成された把持部29が設けられており、運転者は座席21に着席した後、把持部29を手で持って、シートベルト22を引き出すようになっている。
そして、把持部29の先端には、例えば、金属で構成され、シートベルト22を固定部25に固定するための係止部27が形成されている。
【0012】
固定部25は、運転者の左腰部近辺に位置し、係止部27に形成された係合部(例えば、貫通孔で形成されている)と係合してこれを係止する係止機構24が設けられている。
そして、固定部25は、係止部27が挿入されると、係止機構24により係止部27を係止して固定する。
なお、係止機構24は、通常は、係止部27を固定できないようにロックされており、アルデヒドの検査合格と運転者の着席の確認の2つの要件が満たされるとロックを解除して係止部27を固定できるようになっている。
【0013】
車両の始動機構は、係止機構24と連動しており、係止機構24が係止部27を固定すると、エンジンが始動可能となるようになっている。
図示しないが、固定部25には、係止部27と固定部25の係止状態を解除する解除ボタンが形成されており、運転者は当該解除ボタンを押下することにより、係止機構24を解除状態にして、シートベルト22を固定部25から取り外すことができる。
【0014】
把持部29の表面(車両の前方の面)には、センサ23が設けられており、運転者が把持部29を持ってシートベルト22を巻き取り機構から引き出して固定部25に固定する際に、指先などがセンサ23に触れるようになっている。
センサ23は、指先などからのアルデヒドの検出と、これに接触する電極を兼ねている。
【0015】
センサ23は、例えば、図1(c)に示したように、人体から発せられるアルデヒドを検出するアルデヒドセンサ32と、これを取り囲むように設けられたベルト側電極31から構成されている。
このように、運転者の指がセンサ23に触れると、ベルト側電極31とアルデヒドセンサ32に同時に接触するようになっている。
【0016】
ここで、ベルト側電極31は、対象者の身体の所定の部位に接触する第1の電極として機能している。
なお、本実施の形態では、センサ23をベルト側電極31とアルデヒドセンサ32の組合せによって構成したが、アルデヒドセンサ32自体が通電性を有する場合には、アルデヒドセンサ32の表面を電極とすることができる。
【0017】
ここで、アルデヒドは、人体がアルコールを分解する際に生成される化学物質であって、人体が発するアルデヒドの量が多いほど、酒気帯びの程度が高くなる。
このため、センサ23で運転者のアルデヒド量を測定することにより、運転者の酒気帯びの程度を測定することができる。
アルデヒドは、対象者の身体から検知される特定物質として機能しており、アルデヒドセンサ32は、特定物質検出手段として機能している。
【0018】
また、センサ23は、図1(d)に示したように、アルデヒドセンサ32の上面に金属などの導電体メッシュで形成したベルト側電極31を設置することによっても構成することができる。
この場合、運転者の指先は導電体メッシュと接するため、運転者の指先と電気的に接続することができると共に、指先から発せられるアルデヒドはメッシュを透過してアルデヒドセンサ32に到達するため、これを検出することができる。
【0019】
運転者の飲酒の有無は、呼気中のアルコール濃度、血液中のアルコール濃度によっても測定することができるが、呼気中のアルコール濃度を用いる場合は、飲酒した同乗者のアルコールを検知して誤って飲酒運転と判断する場合が考えられ、また、運転者からの血液採取は困難であると考えられるため、本実施の形態では、運転者の触れる特定の場所にセンサを設置し、皮膚から出るアルデヒドによって飲酒の有無を判断することにした。
なお、アルデヒドに限らず、他の物質を検知して飲酒の有無を判定するように構成してもよい。
【0020】
図1(a)に示したように、座席21の座面にはシート側電極26が設けられている。
運転者が座席21に着席すると、運転者の臀部がシート側電極26に電気的に接続するようになっている。なお、衣類やシートの表皮など、運転者の身体とシート側電極26の間には絶縁体が存在するが、交流により導通を図ることができる。
シート側電極26は、運転席の運転者に接する部分に設けた第2の電極として機能している。
【0021】
図1(b)に示したように、運転者が座席21に着席してシートベルト22を装着しようとすると、運転者の指先28がセンサ23に触れると共に、運転者の臀部がシート側電極26と電気的に接続するため、運転者の身体のインピーダンスを計測することができる。
そのため、センサ23で指先28のアルデヒドを測定し、かつ、センサ23とシート側電極26で運転者のインピーダンスを測定することにより、アルデヒドの測定対象者が座席21に着席していることを確認することができる。
【0022】
そして、固定部25の係止機構24は、センサ23で検出されるアルデヒド量が所定の閾値未満であり、かつ、センサ23とシート側電極26の間のインピーダンスが所定の範囲内(検査対象者のインピーダンスは体格や衣類などによって個人差が存在するが、これら個人差は通常所定の範囲に納まる)にある場合に、シートベルト22の係止部27と係合して固定するようになっており、何れかの条件が満たされない場合には、係止部27をロックして固定できないようにする。
【0023】
また、先に述べたように、車両のエンジンは、シートベルト22が固定部25に固定しないと始動できないようになっており、このため、アルデヒドによる酒気帯び確認と、インピーダンスによる本人確認の両方を合格しないと、エンジンを始動することができない。
このように、本実施の形態は、人体の所定の部位にてアルデヒドの検出とインピーダンスの検出を同時に行うため検査対象者のなりすましを防止することができる。
【0024】
また、エンジン始動後に運転者が入れ替わることも考えられる。そのため、車両は係止機構24の係止状態(即ち、シートベルト22と固定部25の結合状態)を監視し、停車中に、解除ボタンが押下されるなどして係止機構24の係止状態が解除されるとエンジンを停止するようになっている。
走行中は、エンジンを停止するのは望ましくないと共に、走行中に入れ替わるのは困難なため、走行中に係止状態が解除されてもエンジンの停止は行わない。
【0025】
また、図1(a)に示したように、座席21には、着座センサ30が設けられており、運転者の体重を検知するようになっている。
このため、着座センサ30で運転者の着席状態を監視することにより、入れ替わりを防止することも可能である。
この場合、エンジン始動後で停車中に、着座センサ30で運転者の離席を検出した場合にエンジンを停止するように構成することができる。
【0026】
以上の手順をまとめると図2の各図のようになる。
まず、図2(a)のように、運転者がシートベルト22を装着しようとしてセンサ23に触れると、アルデヒドの測定信号41が得られる。
また、これと共に、図2(b)に示したように、センサ23とシート側電極26が人体を導通路42として導通し、運転者のインピーダンスを測定することができる。
なお、測定信号41は、シートベルト22に埋め込まれた信号ケーブルを介して送信してもよいし、あるいは、運転者の身体を経由してシート側電極26で受信するように構成してもよい。
【0027】
アルデヒドの測定値が所定の閾値未満であり、インピーダンスが所定の範囲内にある場合、図2(c)に示したように、係止機構24のロック状態が解除され、係止部27を係止機構24で固定できるようなる。
シートベルト22の固定により、エンジン始動が可能となり、運転者は、シートベルト22を装着した後、エンジンを始動することができる。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る飲酒運転防止装置1の構成を示した図である。
飲酒運転防止装置1は、ECU(Electric Control Unit)2、シートベルト確認部3、アルデヒドセンサ32、着座センサ30、バッテリ6、通電検出用回路7、シートベルト装着ロック部8、エンジンキーロック部9、判定表示部10などから構成されている。
【0029】
シートベルト確認部3は、係止機構24(図1(a))の係止状態を監視し、これによって、シートベルト22が固定部25に固定されているか否かを監視する。
シートベルト確認部3は、エンジンが始動した後、運転席のシートベルト22が固定されているか否かを監視する監視手段として機能する。
アルデヒドセンサ32は、センサ23(図1(c)、(d))においてベルト側電極31と共に形成されており、運転者の指先等の皮膚から発せられるアルデヒドの量を検知する。
【0030】
着座センサ30は、座席21に着席した者の体重を検知する。これによって、ECU2は、座席21に運転者が着席しているか否かを確認することができる。このように、着座センサ30は運転者の体重を監視する着席検出手段として機能することができる。
バッテリ6は、例えば、鉛蓄電池などの2次電池から構成されており、飲酒運転防止装置1が駆動するための電力を供給する。
【0031】
通電検出用回路7は、ベルト側電極31と、シート側電極26を備えており、これら電極間の通電により運転者の身体のインピーダンスを測定する。
通電検出用回路7は、特定物質を検出した対象者が運転席に着席しているか否かを検出する着席検出手段として機能する。
【0032】
シートベルト装着ロック部8は、係止機構24を制御する機能部であり、ECU2からの指令により、これをロック状態(シートベルト22の係止部27の係合を行えない状態)にしたり、ロック状態を解除したりする。
エンジンキーロック部9は、ECU2からの指令により、エンジンキーの操作をロック状態(操作を受け付けない状態)にしたり、ロック状態を解除したりする。
判定表示部10は、例えば、液晶表示装置などで構成されており、ECU2が出力したメッセージを表示する。
【0033】
ECU2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶媒体などを備えたコンピュータであって、所定のプログラムに従って飲酒運転防止装置1全体を制御したり、車両全体を制御したりする。
【0034】
ECU2は、対象者から検出した特定物質(アルデヒド)が所定の閾値未満であり、かつ、当該対象者の着席が検出された場合に、エンジンの始動を可能にするエンジン始動手段として機能する。
また、ECU2は、エンジンが始動した後、運転者の着席を監視し、例えば、シートベルト22が解除されたり、体重が所定の閾値よりも軽くなったことを検出した場合、車両が停止している場合にはエンジンを停止する。
【0035】
次に、飲酒運転防止装置1の動作について説明する。
図4は、車両でエンジンを始動する際に飲酒運転防止装置1が行う手順を示したフローチャートである。
以下の処理は、ECU2が所定のプログラムに従って行うものである。
なお、エンジン始動前は、シートベルト装着ロック部8が係止機構24(図1(a))をロック状態に維持しており、これによって、エンジンキーもエンジンキーロック部9によってロック状態になっている。
【0036】
まず、ECU2は、運転席のドアロックが解除されているか確認する(ステップ5)。これは、運転者が車両に乗り込んできたか否かを判断するためのものである。
ドアロックが閉じたままの場合(ステップ5;N)、運転者が車両をロックしたまま外出しているため、処理を終了する。
【0037】
ドアロックが解除されると(ステップ5;Y)、運転者が乗り込んでくると予測されるため、ECU2は着座センサ30を起動し(ステップ10)、その出力を監視する(ステップ15)。
そして、ECU2は、着座センサ30の出力から、運転者が着席していると判断した場合(ステップ15;Y)、ECU2は、更にアルデヒドセンサ32(図1(c))を起動し(ステップ20)、その検出値を確認することにより、運転者の身体がアルデヒドセンサ32に接触したか監視する(ステップ25)。
【0038】
運転者がアルデヒドセンサ32に接触していない場合(ステップ25;N)、ECU2は、ステップ15の処理に戻る。
運転者がアルデヒドセンサ32に接触している場合(ステップ25;Y)、ECU2は、検出されたアルデヒドの量が所定の閾値以上であるか確認し(ステップ30)、閾値以上である場合には(ステップ30;Y)、判定表示部10(図3)に「飲酒」なる表示を行う(ステップ65)。
【0039】
そして、ECU2は、係止機構24とエンジンキーをロック状態のまま、アルデヒドセンサ32をオフし(ステップ70)、着座センサ30もオフにする(ステップ75)。
これによって、運転者の飲酒が確認された場合、飲酒運転防止装置1は、エンジンの始動を禁止するように図示しないエンジンのECUに指令する。
【0040】
一方、アルデヒドの量が所定の閾値未満であった場合(ステップ30;N)、ECU2は、通電検出用回路7を駆動して、運転者のインピーダンスを測定する。
そして、インピーダンスの値が所定の範囲内であることが確認できなかった場合(ステップ35;N)、飲酒運転防止装置1は、係止機構24のロック状態を維持したまま処理をステップ70に移行し、エンジンの始動を禁止するように図示しないエンジンのECUに指令する。
【0041】
インピーダンスの値が所定の範囲内であることが確認できた場合(ステップ35;Y)、ECU2は、シートベルト装着ロック部8を駆動して係止機構24のロック状態を解除し、これによってシートベルト装着ロックを解除する(ステップ40)。
次に、ECU2は、シートベルト確認部3からの出力を監視し、運転者がシートベルト22を固定部25に固定してシートベルト22を装着したか否かを監視する(ステップ45)。
【0042】
シートベルト22を装着していない場合(ステップ45;N)、ECU2は、ステップ30の処理に戻る。
一方、シートベルト22を装着している場合(ステップ45;Y)、ECU2は、エンジンキーロック部9を駆動してエンジンキーロックを解除し(ステップ50)、運転者のキー操作を受け付けてエンジンを起動するように図示しないエンジンのECUに指令する(ステップ55)。
【0043】
なお、ステップ15で運転者の着席が確認できなかった場合(ステップ15;N)、ECU2は、ドアロックが解除されているか確認し(ステップ60)、解除されている場合には(ステップ60;Y)ステップ10の処理に戻り、解除されていない場合には(ステップ60;N)、ステップ70の処理に移行する。
【0044】
以上のようにして、ECU2は、アルデヒドによって運転者が酒気帯びであるか否かを検査して、インピーダンスによって当該検査を行った者が座席21に着席しており、シートベルト22で自身を固定していることを確認した上でエンジンを始動する。
なお、本実施の形態では、シートベルト22の装着をエンジン始動の条件の1つとしたが、アルデヒドの測定とインピーダンスの測定に合格した場合にエンジンを始動できるように構成することもできる。
【0045】
即ち、本実施の形態では、シートベルト22の装着によってエンジンの始動が可能となるようにシートベルト22とエンジンの始動がリンクしているが、シートベルト22の装着の有無に関係なくエンジンを始動可能とし、アルデヒドの検査合格、及び運転者の着席を条件として、エンジンの始動が可能なように構成することもできる。この場合のフローチャートは、図4からステップ40、45を省いたものとなる。
【0046】
図5は、エンジンを始動した後に飲酒運転防止装置1が行う手順を示したフローチャートである。
まず、ECU2は、車両の速度計の値から車両が停止中であるか否かを判断する(ステップ105)。
車両が走行中であった場合(ステップ105;N)、ECU2は、更に車両が停止中か否かを判断する。
【0047】
車両が停止中であった場合(ステップ105;Y)、ECU2は、シフトレバーの位置がP(パーキング)であるか判断する(ステップ110)。シフトレバーの位置がPであった場合(ステップ110;Y)、ECU2は、更にサイドブレーキがオンであるか判断する(ステップ115)。
シフトレバー位置がPでなかった場合(ステップ110;N)、ECU2は、サイドブレーキがオンか判断し(ステップ140)、オフであった場合は(ステップ140;N)ステップ110の処理に戻る。
【0048】
一方、サイドブレーキがオンであった場合(ステップ140;Y)、ECU2は、シフトレバー位置がPであるか確認し(ステップ145)、Pでなかった場合は(ステップ145;N)、ステップ140の処理に戻り、Pであった場合は(ステップ145;Y)、ステップ120に移行する。
【0049】
即ち、以上のステップ110〜145は、シフトレバー位置がPであり、かつ、サイドブレーキがオンであるか否かを判断するものであり、何れかが満たされない場合は、両者が満たされるまで判断を繰り返すものである。
【0050】
ステップ115でサイドブレーキがオンであった場合(ステップ115;Y)、又はステップ145でシフトレバー位置がPであった場合(ステップ145;Y)、シフトレバー位置がPであり、かつ、サイドブレーキがオンとなっている。
そこで、ECU2は、係止機構24が係止部27を係合しているかどうかを確認することにより、運転者がシートベルト22を装着しているか否かを判断する(ステップ120)。
【0051】
運転者がシートベルト22を装着している場合(ステップ120;Y)、運転者の入れ替わりは行われていないため、ECU2は、ステップ105の処理に戻り、引き続きシートベルト22の監視を行う。
一方、運転者がシートベルト22を装着していない場合(ステップ120;N)、ECU2は、エンジンキーがオフであるか否かを判断する(ステップ125)。
エンジンキーがオフであった場合(ステップ125;Y)、ECU2は、エンジン停止を維持し(ステップ135)、始動を禁止するように図示しないエンジンのECUに指令する。
【0052】
エンジンキーがオンであった場合(ステップ125;N)、ECU2は、更に、着座センサ30で運転者が着席しているか否かを判断し(ステップ130)、着席している場合は(ステップ130;Y)、運転者はシートベルト22を外したものの着席を持続しているため、ECU2は、ステップ125に戻り、更にエンジンキーを確認する。
着席していない場合(ステップ130;N)、車両が停止中であり、入れ替わりの可能性もあるため、ECU2は、エンジンを停止するように図示しないエンジンのECUに指令する(ステップ135)。
【0053】
なお、ステップ130で着席を確認したのは、運転者がシートベルト22を外して後方を確認しながら車両を後退させる場合が考えられ、シートベルト22を外したことを検知してエンジンを停止すると、シートベルト22を外して後退操作を行うことができないからである。
【0054】
以上のようにして、ECU2は、エンジン始動後に運転者が入れ替わった可能性がある場合、車両が停止していることを条件として、エンジンを停止することができる。
なお、本実施の形態では、シートベルト22の装着が解除された後、更に、着座センサ30で運転者の着席を確認しているが、シートベルト22が解除された時点でエンジンを停止するように構成することも可能である。
この場合の手順は、図5のフローチャートからステップ130を省略したものとなる。
【0055】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
図6(a)は、センサ23をハンドルに設けた例を示した図である。
ハンドル50には、時計の2時と10時に該当する位置、即ち、運転者が通常ハンドル50を握る位置にセンサ23a、23bが設けられている。
ECU2は、センサ23a、23bによって運転者のアルデヒドを測定すると共に、当該運転者が座席21に着席していることを着座センサ30によって検出する。
【0056】
これによって、ECU2は、アルデヒドの検査対象者が座席21に着席していることを確認することができる。
運転者がアルデヒドの検査に合格した場合、ECU2は、着座センサ30によって、運転者が継続的に座席21に着席していることを監視する。
以上によって、酒気帯び検査のなりすましを防止し、検査後の入れ替わりも防止することができる。
【0057】
図6(b)は、シート側電極26の代わりにエンジンキー52を電極として運転者のインピーダンスを測定する場合を示した図である。
運転者は、ハンドル50に設けられたセンサ23に触れながらエンジンキー52をキー穴に差し込む。
すると、運転者の身体を経路としてセンサ23とエンジンキー52を結ぶ閉回路が構成されるため、ECU2は、この閉回路によって運転者のインピーダンスを測定する。
センサ23とエンジンキー52に素手で触れるため、直流電流で運転者の抵抗を測定することも可能であり、より精密な測定を行うことができる。
【0058】
また、運転者が手袋をしてアルデヒドの検査を受ける可能性もある。例えば、布製の手袋などでは、アルデヒドが手袋を透過するため、検出可能であるが、ゴム製や革製の手袋を装着した場合、アルデヒドの検出が困難となる。
この場合、ECU2は、センサ23で素手であるか否かを検出し、素手でない場合には、手袋を外すよう運転者に指示を出すように構成することもできる。
【0059】
素手であるか否かの検出は、例えば、指先の近接する2点間の皮膚抵抗を計測して、当該皮膚抵抗が所定の範囲内である場合に素手であると判断したり、あるいは、塩分やアンモニアなどの、素手から分泌される物質を測定し、当該物質の測定値が所定の閾値以上である場合に素手であると判断することにより行うことができる。
また、センサ23は、サイドブレーキの取っ手部分やその他の箇所に設けることも可能であり、シート側電極26は、座席21の背もたれ部分に設けることも可能である。
【0060】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)運転者の皮膚から発せられるアルデヒドによって、運転者の酒気帯びを検査することができる。
(2)アルデヒドセンサ32と同一箇所にベルト側電極31を設け、一方、座席21の座面にシート側電極26が設けられており、アルデヒドの測定と共に、運転者のインピーダンスを測定することにより、アルデヒドの検査対象者が運転席に着席していることを確実に確認することができる。
(3)アルデヒド検査の合格、及び運転席への着席の2つの条件が満たされた場合にエンジンの始動を許可し、少なくとも何れか一方の条件が満たされない場合には、エンジンの始動を禁止することができる。
(4)エンジン始動後も、運転者が着席していることを監視し、着席状態が中断した場合には入れ替わりの可能性もあるため、車両の停止を条件にエンジンをオフにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】運転席付近におけるセンサの配置などを説明するための図である。
【図2】アルデヒド検査と着席の確認を行う手順を説明するための図である。
【図3】飲酒運転防止装置の構成を示した図である。
【図4】エンジンを始動する際に飲酒運転防止装置が行う手順を示したフローチャートである。
【図5】エンジンを始動した後に飲酒運転防止装置が行う手順を示したフローチャートである。
【図6】変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1 飲酒運転防止装置
2 ECU
3 シートベルト確認部
6 バッテリ
7 通電検出用回路
8 シートベルト装着ロック部
9 エンジンキーロック部
10 判定表示部
21 座席
22 シートベルト
23 センサ
24 係止機構
25 固定部
26 シート側電極
30 着座センサ
31 ベルト側電極
32 アルデヒドセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の身体から特定物質を検出する特定物質検出手段と、
前記特定物質を検出した対象者が運転席に着席しているか否かを検出する着席検出手段と、
前記検出した特定物質が所定の閾値未満であり、かつ、前記対象者の着席が検出された場合に、エンジンの始動を可能にするエンジン始動手段と、
を具備したことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記特定物質検出手段は、前記対象者の身体の所定の部位に接触するセンサによって前記特定物質の検出を行い、
前記着席検出手段は、前記所定の部位に接触する第1の電極と、前記運転席の運転者に接する部分に設けた第2の電極と、の間のインピーダンスによって前記対象者の着席を検出することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記センサと、前記第1の電極は、シートベルト、又はハンドルに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記エンジンが始動した後、前記運転席のシートベルトが固定されているか否かを監視する監視手段と、
前記監視手段が前記運転席のシートベルトが解除されたことを検出し、かつ、車両が停止している場合には、前記エンジンを停止することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記エンジンが始動した後、前記運転席に着席している者の体重を監視する監視手段と、
前記監視手段で、前記体重が所定の閾値よりも軽くなったことを検出し、かつ、車両が停止している場合には、前記エンジンを停止することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−107586(P2009−107586A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284452(P2007−284452)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】