説明

車体のシール構造

【課題】 必要なシール剤の塗布量が少なく、安価なコストとなる車体のシール構造を提供する。
【解決手段】 ホイールハウスインナ5の屈曲部21に、車両室内側からフロアサイド7の角部31を当接して接合し、この接合部に車両室内側及び車両室外側からシール剤45を塗布する車体のシール構造において、前記フロアサイド7の角部31に凸部33を設け、該凸部33に対向するホイールハウスインナ5の屈曲部21に、前記凸部33の上面35まで延びるホイールハウス側切欠き23を形成することにより、これらのホイールハウス側切欠き23と凸部33の上面35との間に、車両室内側のシール剤45と車両室外側のシール剤47とを連通させる導通路55を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のシール構造に関し、更に詳しくは、車両室内側に塗布されたシール剤と車両室外側に塗布されたシール剤とを連通させる車体のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、複数の車体パネル同士を接合することにより、車体を形成しており、この車体パネル同士の接合部分や車体パネルの隙間部分へシール剤を塗布して、水密性を確保している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−211159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来例において、車両室内側から塗布されるシール剤と車両室外側から塗布されるシール剤とを連続的に連通させることの困難な部位では、室内側のシール剤と室外側のシール剤とのラップ範囲を50mm〜100mm確保しているため、必要なシール剤の塗布量が増大するという問題がある。
【0004】
また、塗装工程でシール剤を塗布することが困難な部位については、車体工程でシール剤の塗布を行っているため、シール剤のコストが上昇するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、必要なシール剤の塗布量が少なく、コスト低減を図ることができる車体のシール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る車体のシール構造は、ホイールハウスインナの屈曲部に、車両室内側からフロアサイドの角部を当接して接合し、この接合部に車両室内側及び車両室外側からシール剤を塗布する車体のシール構造において、前記フロアサイドの角部に凸部を設け、該凸部に対向するホイールハウスインナの屈曲部に、前記凸部の上面まで延びるホイールハウス側切欠きを形成することにより、これらのホイールハウス側切欠きと凸部の上面との間に、車両室内側のシール剤と車両室外側のシール剤とを連通させる導通路を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車体のシール構造によれば、前記導通路を介して、車両室内側から塗布されるシール剤と車両室外側から塗布されるシール剤とが連続的に結合するため、水密性を確実に向上させることができる。また、これらの車両室内側からのシール剤と車両室外側からのシール剤とが重複して塗布されるラップ範囲を縮小させることができ、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態による車体のシール構造を適用したホイールハウスアッセンブリの分解斜視図である。
【0010】
このホイールハウスアッセンブリ1は、車幅方向外側に配置されて車両前後方向に沿って延びるホイールハウスアウタ3と、該ホイールハウスアウタ3の車幅方向内側に対向して接合されるホイールハウスインナ5と、該ホイールハウスインナ5の後端部に配設されたフロアサイド7及びエクステンションホイールハウスインナ9とから構成されている。
【0011】
ホイールハウスアウタ3の上部の外周縁には、ホイールハウス用接合フランジ11が形成されており、ホイールハウスインナ5の外周縁に形成したホイールハウス用接合フランジ13に接合される。また、ホイールハウスインナ5の後端部の下端には、フロアサイド用接合フランジ15が形成されている。該フロアサイド用接合フランジ15は、ホイールハウスインナ5の後端に設けられて車両前後方向に延びる後端フランジ17と、該後端フランジ17の前端から車幅方向内側に屈曲して延びる前側フランジ19とからなり、これらの後端フランジ17と前側フランジ19とから屈曲部21が構成されている。そして、フロアサイド用接合フランジ15の後端フランジ17の下端部には、下側が開口した逆U字状のホイールハウス側切欠き23が形成されている。
【0012】
図2は、図1のフロアサイドを示す斜視図である。
【0013】
フロアサイド7は、略水平状に延びる上面25と、該上面25の車幅方向外側の端部から下方に屈曲して延びる側面27とから一体に形成された、側面視略L字状に形成された板状のパネルである。車両前側には、前記フロアサイド用接合フランジ15の前側フランジ19に当接して接合される前側フランジ29が設けられ、前側でかつ車幅方向外側の端部には、ホイールハウスインナ5の後端部の屈曲部21に当接して接合される角部31が形成されている。この角部31には、斜め前方に向けて突出する凸部33が設けられており、該凸部33の上面35は、斜め下方に延びる傾斜面に形成されている。
【0014】
図3は、図1のエクステンションホイールハウスインナを示す斜視図である。
【0015】
エクステンションホイールハウスインナ9は、車両前後方向に延びる縦面37と、該縦面37の前端から車幅方向内側に屈曲びて延びる前面39とから平面視略L字状に形成されており、前面39の上部には、略V字状のエクステンション側切欠き41が形成されている。また、エクステンションホイールハウスインナ5の上端には、上端フランジ43が形成されている。
【0016】
図4は、本発明の実施形態によるホイールハウスアッセンブリの要部を示す斜視図であり、明瞭にするために、ホイールハウスアウタは省略してある。
【0017】
このホイールハウスアッセンブリ1は、フロアサイド7、エクステンションホイールハウスインナ9、及びホイールハウスインナ5から構成されている。最も車幅方向外側かつ前方側にはホイールハウスインナ5が配設され、最も車幅方向内側かつ後方側にはフロアサイド7が配設され、これらのホイールハウスインナ5及びフロアサイド7の間には、エクステンションホイールハウスインナ9が介設されている。
【0018】
即ち、ホイールハウスインナ5のフロアサイド用接合フランジ15の裏面側には、エクステンションホイールハウスインナ9の上端フランジ43を介して、フロアサイド7の前側フランジ29及び角部31が接合されている。
【0019】
また、ホイールハウスインナ5とフロアサイド7との接合部上端には、車両室内側からシール剤45が塗布されており、エクステンションホイールハウスインナ9の前面39の外周と、ホイールハウスインナ5、エクステンションホイールハウスインナ9及びフロアサイド7の側端とには、上下方向に沿って、車両室外側からシール剤47が塗布されている。
【0020】
図5は、図4のA−A線による拡大断面図である。
【0021】
前述したように、フロアサイド7の凸部33は、上面25が斜め下方に向けて延びる傾斜面に形成され、該傾斜面の先端49から下方に延びて縦壁面51に形成され、該縦壁面51の下端から車幅方向内側に凹んだ逃げ部53が形成されている。
【0022】
また、ホイールハウスインナ5の下端には、ホイールハウス側切欠き23が形成されており、該ホイールハウス側切欠き23の上端23aは、傾斜面の先端49よりも上方に配置されている。そして、エクステンションホイールハウスインナ9の上端フランジ43の上端43aは、傾斜面の先端49よりも下方に配置されている。そして、ホイールハウスインナ5のホイールハウス側切欠き23とフロアサイド7の凸部33の上面35との間には、シール剤45が流出できる導通路55が形成されている。
【0023】
図6は、図4のB−B線による拡大断面図である。
【0024】
図2に示したように、フロアサイド7の凸部33の下側は上側に比較して、後方かつ車幅方向内側に入り込んでいる。よって、図6に示すように、フロアサイド7の凸部33とエクステンションホイールハウスインナ9との間には、シール剤45の導通路55がやや大きく形成されており、該導通路55の内部にはシール剤45が収容されてホイールハウスインナ5のホイールハウス側切欠き41に連通している。
【0025】
図7は、図4のC−C線による拡大断面図である。
【0026】
フロアサイド7の凸部33に形成した縦壁面51と、エクステンションホイールハウスインナ9の前面39との間に、シール剤45の導通路55が形成され、該導通路55の下端は、エクステンション側切欠き41に連通して設けられている。
【0027】
本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0028】
ホイールハウスインナ5の屈曲部21に、車両室内側からフロアサイド7の角部31を当接して接合し、この接合部に車両室内側及び車両室外側からシール剤45を塗布する車体のシール構造において、前記フロアサイド7の角部31に凸部33を設け、該凸部33に対向するホイールハウスインナ5の屈曲部21に、前記凸部33の上面35まで延びるホイールハウス側切欠き23を形成することにより、これらのホイールハウス側切欠き23と凸部33の上面35との間に、車両室内側のシール剤45と車両室外側のシール剤45とを連通させる導通路55を設けている。
【0029】
このため、前記導通路55を介して、車両室内側から塗布されるシール剤45と車両室外側から塗布されるシール剤47とが連続的に結合するため、水密性を確実に向上させることができる。また、これらの車両室内側からのシール剤45と車両室外側からのシール剤47とが重複して塗布されるラップ範囲を縮小させることができ、コスト低減を図ることができる。
【0030】
また、前記フロアサイド7の凸部33の上面35を、車幅方向外側に向けて斜め下方に延びる傾斜面に形成し、該傾斜面の先端49よりも上方に、前記ホイールハウス側切欠き23の上端23aを配置している。
【0031】
このため、前記ホイールハウス側切欠き23から車両室内側の凸部33に、万一、水等が浸入した場合でも、凸部33の上面35から車両室外側に流れるので、凸部33を超えてフロアサイド7の上面25まで浸入する可能性が大幅に少なくなる。
【0032】
さらに、前記ホイールハウスインナ5とフロアサイド7との間にエクステンションホイールハウスインナ5を介設し、このエクステンションホイールハウスインナ5にエクステンション側切欠き41を形成することにより、これらのエクステンション側切欠き41と凸部33の上面35との間に、車両室内側のシール剤45と車両室外側のシール剤47とを連通させる導通路55を設けている。
【0033】
このため、エクステンションホイールハウスインナ5を設けてホイールハウスインナ5とフロアサイド7との連結強度を高める車体構造の場合でも、前記導通路55を介して車両室内側から塗布されるシール剤45と車両室外側から塗布されるシール剤47とが連続的に結合するため、水密性を確実に向上させることができる。また、これらの車両室内側からのシール剤45と車両室外側からのシール剤47とが重複して塗布されるラップ範囲を縮小させることができ、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による車体のシール構造を適用したホイールハウスアッセンブリの分解斜視図である。
【図2】図1のフロアサイドを示す斜視図である。
【図3】図1のエクステンションホイールハウスインナを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるホイールハウスアッセンブリの要部を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線による拡大断面図である。
【図6】図4のB−B線による拡大断面図である。
【図7】図4のC−C線による拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
5…ホイールハウスインナ
7…フロアサイド
9…エクステンションホイールハウスインナ
21…屈曲部
23a…上端
31…角部
33…凸部
35…上面
41…エクステンション側切欠き
45,47…シール剤
55…導通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスインナの屈曲部に、車両室内側からフロアサイドの角部を当接して接合し、この接合部に車両室内側及び車両室外側からシール剤を塗布する車体のシール構造において、
前記フロアサイドの角部に凸部を設け、該凸部に対向するホイールハウスインナの屈曲部に、前記凸部の上面まで延びるホイールハウス側切欠きを形成することにより、これらのホイールハウス側切欠きと凸部の上面との間に、車両室内側のシール剤と車両室外側のシール剤とを連通させる導通路を設けたことを特徴とする車体のシール構造。
【請求項2】
前記フロアサイドの凸部の上面を、車幅方向外側に向けて斜め下方に延びる傾斜面に形成し、該傾斜面の先端よりも上方に、前記ホイールハウス側切欠きの上端を配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体のシール構造。
【請求項3】
前記ホイールハウスインナとフロアサイドとの間にエクステンションホイールハウスインナを介設し、このエクステンションホイールハウスインナにエクステンション側切欠きを形成することにより、これらのエクステンション側切欠きと凸部の上面との間に、車両室内側のシール剤と車両室外側のシール剤とを連通させる導通路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体のシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate