説明

車体の組立方法

【課題】 ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法の実現。
【解決手段】 ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法であって、前記シール材として、主成分中に導電性金属酸化物を含むプラスチゾルシール材組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の組立方法に関し、詳細には、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の組立については、車両に用いる鋼板は、化成処理工程を経ることによって鋼板表面に化成皮膜及び電着塗膜を形成し、錆びによる劣化を防ぐことが一般的に知られており、図2に示すように、プレスにより部品を製造し、サブアッセンブリを行い、その後、サブアッセンブリされた部品によってボディアッセンブリを行って車体を組み立て、次いで、化成処理、電着塗装を行い、その後、シール材を塗布するのが一般である(特許文献1)。
尚、車両用シール材としては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、架橋ポリエーテル樹脂等を主成分として用いるシール材組成物が存在する。
【特許文献1】特開平08−010694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチゾルシール材の殆どは、電着塗装後に塗布されるのが一般的である。これは化成処理前に塗布されるシール材もあるが、この場合、プラスチゾルシール材の表面や、プラスチゾルシール材と鋼板との境界部は化成皮膜又は電着塗膜が形成されないため、錆びによる鋼板の腐食劣化が発生するという問題があったからである。このため、車体の組立後にシール材を塗布せざるえを得ず、シール作業がしづらく、作業効率も悪く、また、その信頼性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法を実現すべく、化成処理前に鋼板に塗布しても、錆びによる鋼板の腐食劣化が発生しないようなプラスチゾルシール材について鋭意検討の結果、シール材の主成分中に導電性金属酸化物を含ませることにより、従来のシール材では不可能とされていたシール材の表面や、このシール材と鋼板との境界部に化成皮膜が形成できることを知見した。
本発明の車体の組立方法は、かかる知見に基づきなされたもので、請求項1記載の通り、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法であって、前記シール材として、主成分中に導電性金属酸化物を含むプラスチゾルシール材組成物を用いることを特徴とする。
また、請求項2記載の車体の組立方法は、請求項1記載の車体の組立方法であって、前記主成分は、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、架橋ポリエーテル樹脂の少なくとも1種以上からなることを特徴とする。
また、請求項3記載の車体の組立方法は、請求項1または2記載の車体の組立方法であって、前記導電性金属酸化物は、導電性酸化亜鉛であることを特徴とする。
また、請求項4記載の車体の組立方法は、請求項1乃至3の何れかに記載の車体の組立方法であって、前記導電性金属酸化物は、プラスチゾルシール材組成物100重量部に対して、3〜20重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の車体の組立方法によれば、従来のシール材では不可能とされていたシール材の表面や、このシール材と鋼板との境界部に化成皮膜が形成できるので、シール材組成物を塗布した後に、化成処理が可能となり、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法を実現することができる。また、シール材組成物に化成皮膜が形成されることによって、電着塗料も載りやすくなる為に、シール材組成物と中塗り、上塗り塗料との密着性の問題も解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の車体の組立方法について詳細な説明を行う。
本発明によれば、図1に示すように、プレスにより部品を製造し、サブアッセンブリを行い、このサブアッセンブリが終わった段階で、各部品にシール材を塗布し、次いで、化成処理、電着塗装を行い、その後、ボディアッセンブリを行って車体を組み立てるようにする。
本発明の車体の組立方法に用いるプラスチゾルシール材組成物は、主成分中に導電性金属酸化物を含むことを特徴とするものであり、前記主成分としては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、架橋ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
【0007】
塩化ビニル樹脂を主成分とする場合、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等の共重合体、塩化ビニリデン系樹脂等の塩化ビニル樹脂にDINP、DOP等のフタル酸エステル類、鉱物油、アルキルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル、塩素化パラフィン、低分子量エポキシ、低分子量ポリエステル、アルキルアルコール等の可塑剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の密着剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0008】
アクリル樹脂を主成分とする場合、アクリル酸アルキルエステル(アルキルは例えばメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、)、メタクリル酸アルキルエステル(アルキルは例えばメチル、エチル、ブチル、ラウリルステアリル)等のアクリル樹脂にDINP、DOP等のフタル酸エステル類、鉱物油、アルキルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル、塩素化パラフィン、低分子量エポキシ、低分子量ポリエステル、アルキルアルコール等の可塑剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の密着剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0009】
アクリレート樹脂を主成分とする場合、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリレート樹脂にパーオキサイド系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等の重合開始剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0010】
ウレタン樹脂を主成分とする場合、ブロックドモノレンジイソシアネート、ブロックドトリレンジイソシアネート、ブロックドヘキサメチレンジイソシアネート等のウレタン樹脂にDINP、DOP等のフタル酸エステル類、鉱物油、アルキルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル、塩素化パラフィン、低分子量エポキシ、低分子量ポリエステル、アルキルアルコール等の可塑剤、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン系、ジシアンジアミド等のアミン系等の硬化剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0011】
ゴムを主成分とする場合、ブタジエンゴム、イソプレンゴム等のジエン系ゴム、それらをマレイン酸、エポキシ等で変性した変性ゴム等のゴムに硫黄、パーオキサイド等の架橋剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0012】
架橋ポリエーテルを主成分とする場合、アルコキシル官能性ポリエーテル、そのアクリル変性タイプ等の架橋ポリエーテルにスズ系触媒等の触媒、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤等の密着剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0013】
エポキシ樹脂を主成分とする場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂や、NBR、CTBN、ATBN等の変性エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂にアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン系、ジシアンジアミド等のアミン系等の硬化剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、雲母、焼成クレー、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の充填剤に、必要に応じて、希釈剤、安定剤、着色剤、水分吸収剤等を添加する。
【0014】
前記希釈剤としては、ソルベントナフサ等の炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。
前記安定剤としては、ビス−2,2,6,6―テトラメチルー4−ピペリジルセバケート系、2,6−ジーt−ブチルー4―メチルフェノール等のフェノール系等が挙げられる。
前記着色剤としては、アゾ顔料等の有機顔料、カーボン、金属塩類等が挙げられる。
前記水分吸収剤としては、酸化カルシウム、モレキュラーシーブ、シリカ等が挙げられる。
【0015】
前記導電性金属酸化物としては、亜鉛、ジルコニウム、チタン、ニッケル、白金、マグネシウム、モリブデン、スズ、アンチモン、インジウム、アルミニウム、ガリウムの酸化物のうち少なくとも1種以上を用いることができるが、価格や環境への負荷を考慮すると酸化亜鉛を主成分としたものが望ましい。
【0016】
導電性金属酸化物を、シール材組成物100重量部に対して3〜20重量部、好ましくは10〜16重量部添加することが好ましい。これは、導電性金属酸化物の配合量が3重量部未満であると、化成皮膜が充分に形成されず、また、20重量部を超えると、ガンからの吐出が容易ではなくなるからである。
【実施例】
【0017】
次に、実施例及び比較例を示し、本発明の車体の組立方法を具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に制限されるものはない。
<組成物の調整>
表1のA液、B液の項に示す各成分を表1に示される各部数で配合し、ミキサーで30分間攪拌混合し、次いで、30分間減圧脱泡攪拌して、A液、B液をそれぞれ得る。得られたA液、B液を2液カートリッジ(MIXPAC社製 CD200−01−PP)にそれぞれ充填し、実施例1乃至3並びに比較例1及び2のシーリング材組成物を得る。
【0018】
【表1】

【0019】
<性能試験>
次に、前記実施例1乃至3並びに比較例1及び2のシーリング材組成物について、性能試験として、塗布性及び化成皮膜形成性について試験した。
【0020】
1)塗布性: 塗布性については、A液とB液を充填した前記2液カートリッジを2液用ハンドガン(MIXPAC社製 DM200)を用いて、23℃雰囲気下でスタティックミキサーで吐出し、その状態を観察した。
その結果を、表中、ハンドガンで容易に塗布可能な場合は○、ハンドガンで塗布困難な場合は×で示した。
【0021】
2)化成皮膜形成性: 化成皮膜形成性については、25mm×30mm×0.8mm厚みのSPCC鋼板上に、A液、B液を充填した2液カートリッジ(MIXPAC社製 CD200−01−PP)を2液用ハンドガン(MIXPAC社製 DM200)を用いてスタティックミキサーで塗布し、ヘラで15mm×20mm×50μm厚みに成形したものを試験片とし、1)脱脂液(強アルカリ液)、2)水、3)表面調整液(水酸化チタンをリン酸ナトリウムに分散させた溶液)、4)化成液(リン酸亜鉛系)、5)水の順に浸漬した後、120℃×10分の乾燥を行い、化成皮膜形成有無の観察を行った。
その結果を、化成皮膜形成有りの場合は○、化成皮膜形成無しの場合を×で示した。
【0022】
表1から明らかなように、実施例1乃至3の場合、塗布性、化成皮膜形成性の何れも優れていることが明らかであり、導電性金属酸化物の配合が少ない比較例1の場合は、塗布性に優れるものの化成皮膜形成性に劣り、導電性金属酸化物の配合が多すぎる比較例2の場合は、化成皮膜形成性は優れるものの、塗布性に劣る結果となっている。
この実施例から明らかなように、前記プラスチゾルシール材組成物を用いることにより、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法を実現することができることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、自動車等の生産ラインにおいて、ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法を実現することができるので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明車体の組立方法の工程説明図
【図2】従来の車体の組立方法の工程説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディアッセンブリ前のサブアッセンブリの段階でシール材を塗布し、その後、化成処理、電着塗装を行い、ボディアッセンブリを行う車体の組立方法であって、前記シール材として、主成分中に導電性金属酸化物を含むプラスチゾルシール材組成物を用いることを特徴とする車体の組立方法。
【請求項2】
前記主成分は、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、架橋ポリエーテル樹脂の少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1記載の車体の組立方法。
【請求項3】
前記導電性金属酸化物は、導電性酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1または2記載の車体の組立方法。
【請求項4】
前記導電性金属酸化物は、プラスチゾルシール材組成物100重量部に対して、3〜20重量部であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車体の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183916(P2009−183916A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29090(P2008−29090)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】