説明

車体パネルの補修方法

【課題】 可視光硬化型のサーフェサーを使用した場合でも、硬化時におけるベタ付き感(タック感)が生じることなく、且つ硬化時間を大幅に短縮することのできる車体パネルの補修方法を提供する。
を提供する。
【解決手段】 損傷した車体のパネル面を補修する方法であって、
当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これを可視光線領域の発光スペクトルを有するランプを用いて、50℃以上に加熱することで硬化させることを特長とする、車体パネルの補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車や電車など、各種車両におけるパネル面に生じた損傷を補修する方法に関し、特にサフェーサの硬化時間を大幅に短縮して迅速に補修作業を行い得るようにすると共に、硬化したサフェーサの表面におけるベタ付きを無くすことのできる、車両の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷した車両の外板パネルを補修する際には、通常、損傷箇所の旧塗膜を剥離すると共に叩き出し等により可能な限り凹凸を無くし、その後、該箇所にパテをへら等で厚盛りに付けてこれを乾燥させて研磨し、次いでこの上にプライマーサーフェサー(又はサーフェサー)を塗布して乾燥させてから、最後に上塗り塗装を行うことが行われている。
【0003】
特に、パテ処理や、プライマーサーフェーサー(サーフェサー)を使用する工程は、これらの硬化に時間を要し、更に硬化後、良好な表面状態を得るために塗布ごとに塗布面を平滑に研磨する必要があることから、これら行程において多大な時間と労力を必要としているのが現状である。
【0004】
そして、上記の補修作業で使用されるサフェーサーは、ぺーパーの目や小さい巣穴を消し、塗装の付着性を向上させ、色の吸い込みを抑えて塗装の仕上がりを良くするために使用されるものであり、仮に当該サーフェサーを省いてしまった場合には、塗装した塗料がパテに吸い込まれ、ツヤ退けの原因になるってしまうことから、一連の補修作業においてきわめて重要な役割を担っており、これを省くことは困難である。
【0005】
このようなサーフェサーとしては、従来、ラッカーサフェーサーと言われる1液のものや、硬化剤を使用して硬化させる2液のものが提供されているが、これらは硬化に時間を要することから、従前においては、硬化時間の短縮を目的として、1液型の紫外線硬化型、可視光硬化型のサーフェサーを使用することが提案されている。
【0006】
例えば、紫外線硬化型のサーフェサーを使用する補修方法は、特許文献1(特開2000−70845号公報)に開示されており、この文献には、パテ及びプライマサーフェサとして紫外線重合性組成物を使用し、これを紫外線硬化させることで車輌塗装面の修理作業時間を短縮することが記載されている。
【0007】
また、可視光硬化型のサーフェサーを使用する補修方法は、特許文献2(特開2002−167526号公報)に開示されており、この文献には、可視光領域に感光性を有する光重合開始剤を含有するパテ又はプライマーサーフェーサー組成物を使用し、これに380〜450nm の波長領域の光照度が20mw/cm2以上の光を照射して硬化させることで作業工程時間を短縮することが記載されている。
【特許文献1】特開2000−70845号公報
【特許文献2】特開2002−167526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、従前において可視光硬化型のサーフェサーを使用する補修方法は提案されている。しかしながら、かかる可視光硬化型のサーフェサーを、それに対応した発光スペクトル照射して硬化させたとしても、サーフェサーの表面においてベタ付き(タック感)が生じてしまい、その後の作業を行う上で問題が生じる。
【0009】
即ち、一般にサフェーサーを塗布した後においては、塗料を塗る前に良く乾かしてから320〜1000番程度の耐水ペーパーで研いで荒い研ぎ傷を消し、塗装面を平らにする事が行われているが、上記のように可視光硬化型のサーフェサーを使用した場合には、その表面にベタ付き(タック感)が生じ、これをペーパーで研いでもペーパーが目詰まりしてしまうことから、作業性の点で大きな問題が生じていた。
【0010】
そこで本発明では、かかる従前の問題を解決し、可視光硬化型のサーフェサーを使用した場合でも、硬化時におけるベタ付き感(タック感)が生じない、車体パネルの補修方法を提供するものである。
【0011】
また、可視光硬化型のサーフェサーであれば、可視光域の波長領域の光を照射して硬化することが常識であるが、このような硬化方法における硬化時間は、通常は3分程度要するものとなっている。
【0012】
そこで本発明では、このような従来における常識を覆し、更に可視光硬化型のサーフェサーの硬化時間を早めることのできる、車体パネルの補修方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、可視光硬化型のサーフェサーに対して可視光波長領域の光を照射すると共に、更に紫外線域の光、及び/又は熱を加えることで、硬化時間を大幅に早め、更に硬化時におけるベタ付き感(タック感)が生じない、車体パネルの補修方法を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
即ち本発明にかかる車体パネルの補修方法は、損傷した車体のパネル面を補修する方法であって、当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これを可視光線領域の発光スペクトルを有するランプを用いて、50℃以上に加熱することで硬化させることを特長とする。
【0015】
上記可視光重合型のサーフェサーとは、一般に重合性不飽和基含有樹脂、重合性不飽和化合物、充填剤、及び可視光重合開始剤を含有して製造されたものであり、可視光重合開始剤としては、380〜780nmの領域の光エネルギーで励起するものが使用される。このような可視光領域に感光性を有する可視光重合開始剤としては、例えば山岡ら、「表面」,27(7),548頁(1989)、佐藤ら、「第3回 ポリマー材料フォーラム要旨集」、1B、18頁(1994)に記載のカンファーキノン、ベンジル、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、メチルチオキサントン、ビスペンタジエニルチタニウム−ジ(ペンタフルオロフェニル)等の単独での可視光重合開始剤の他、有機過酸化物触媒/色素系、ジフェニルヨードニウム塩/色素、ビイミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリールビミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素の他、特公昭45−37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤等の公知の複合開始剤系を挙げることができる。
【0016】
更に、400〜700nmの領域の光エネルギーで励起する可視光重合開始剤としては、例えばカンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、4、4´−ジメトキシベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイル、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、3−ケトクマリン、ジフェニルホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、ジメチルアミノベンゾフェノン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、フルオレノン、有機色素増感剤などが挙げられる。これら以外にも公知の開始剤系として、カチオン染料−ボレ−トアニオン化合物などのイオン染料−対イオン化合物の系(例えば、特開平1−60606号、特開平2−11607号公報)、金属アレーン化合物と有機色素の系(例えば、特開平4−363308号、特開平5−17525号公報)などが挙げられる。
【0017】
このような可視光重合開始剤を使用したサーフェサーとしては、従来市販されているものを使用することができ、そのようなものとしては、例えば、ロックペイント株式会社製の商品名:ロックライトキュアーサーフェサー、関西ペイント株式会社製の光硬化OPT(オプト)シリーズ「OPT(オプト)サフェーサー」などが挙げられる。
【0018】
そして本発明に係る補修方法では、可視光領域の波長を有する光を照射すると共に、塗布したサーフェサーを過熱することで、硬化後における表面のベタ付き(タック感)を解消することができる。これにより、その後のサーフェサーの研磨工程の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0019】
上記サーフェサーの硬化に際しては、可視光線領域の発光スペクトルを有するランプで加熱する他、このランプとは別の加熱手段を用いて、可視光線の照射と共に、或いは可視光線を照射した後に加熱することもできる。但し、後述の通り、硬化時間を短縮するためには、可視光線領域の発光スペクトルを有するランプで加熱することが望ましい。
【0020】
特に、上記塗布したサーフェサーを加熱する場合には、50℃以上で加熱することが必要であり、望ましくは60℃以上、特に望ましくは70℃以上に加熱する。この場合において加熱温度が50℃に満たないと、硬化したサーフェサーの表面におけるベタ付き感(タック感)が除去できず、作業効率の向上を図ることができない。
【0021】
また、本発明では、可視光波長領域の光の他に、それ以外の波長域の光を照射することで前記課題を解決した車体パネルの補修方法を提供する。
【0022】
即ち、損傷した車両のパネル面を補修する方法であって、当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これに350〜400nmの波長域に最大の発光スペクトルを有し、更に350nm未満の波長域の発光スペクトルを有する光を照射して硬化させることを特長とする車体パネルの補修方法である。
【0023】
ここで、一般的な可視光重合反応とは、使用される可視光重合開始剤の吸収波長に合致した波長の光を照射することで、可視光重合開始剤が励起してラジカルになり、これがプレポリマー、モノマーの重合性二重結合(不飽和基)に接近して、二重結合部分が活性化されて次々と鎖状に結合されていく反応である。依って、可視光硬化型の重合開始剤を使用した樹脂組成物であれば、当然に可視光の領域に発光スペクトルを有する照射機を使用するのが常識である。この点、本発明では、敢えて、紫外線照射機からの光を照射することで、硬化時間を大幅に短縮し、かつ硬化後における表面のベタ付き(タック感)の問題を解消することに成功した。
【0024】
このような可視光硬化型のサーフェサーを硬化するのに使用できる照射機としては、発光管の中に、水銀に加えて金属をハロゲン化物の形で封入したメタルハライドランプであって、365nmを主軸に200〜400nmの波長の紫外線スペクトルを放射可能なものが望ましく、なかでも当該サーフェサーの硬化速度を速める為には、1.0kw以上、望ましくは1.2kw以上の出力を有するメタルハライドランプを光源に用いた紫外線照射機が望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる車体パネルの補修方法の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明にかかる補修方法の一例を示す工程図であり、図2及び3は、本実施の形態に係る補修方法においてサーフェサー11を硬化するのに好適に使用できる紫外線照射機8のスペクトル分布を示している。
【0027】
図1を参照しながらこの補修方法を具体的に説明すると、図1(A)は、損傷によって窪んだ車体パネル1の窪み部分2の断面図であり、特に旧塗膜3から鋼板4に亘って窪み2が生じている状態を示している。この窪み2を修理するためには、先ず、旧塗膜3の脱脂作業や旧塗膜3の除去作業などの前処理を行い、その後、図1(B)に示す様にフェザーエッジを取る作業を行う。フェザーエッジを取る作業は、#120〜#400程度のペーパーを用いたサンダー5等で行うことができる。その際、フェザーエッジの角度(鋼板4と成す角度)は一般には27〜54度に調整するのが望ましい。フェザーエッジを取り終えたら、旧塗膜3の除去部とその周辺をエアーブロー等により洗浄し、シリコンオフ等を染み込ませたウェス等で脱脂する。
【0028】
次に、上記の前処理が行われた窪み2を可能な浅くするために、図1(C)に示す様にパネル引き出し具6(一般にプーラーと称される器具)を用いて、窪み2部分を引き出す。その上で、図1(D)に示す様にパテ10を埋め込み、これを硬化させる。ここで使用することのできるパテ10としては、従来提供されている各種のパテ材料を使用することができ、例えば硬化剤を使用して樹脂を硬化させる2液型のパテ材料や、紫外線重合開始剤、あるは可視光重合開始剤を配合してなる、光重合型のパテ材料を使用することができる。そして、埋め込んだパテ10の硬化方法に関しては、それぞれのパテ材料ごとに定められた方法に従って行われる。
【0029】
そして硬化したパテ10の旧塗膜3より盛り上がった部分は、図1(E)に示すようにダブルアクションサンダー、オービタルサンダー7等を用いて、さらに手研ぎ等により旧塗膜3面と面一になるまで研磨して、車体パネル1における窪み2を取り除く。
【0030】
次に、必要に応じて周囲をマスキングペーパー等でマスキングした上で、図1(F)に示す様に、パテ10の表出面およびパテ10の表出面と旧塗膜3の境界周辺部分について、可視光硬化型のサーフェサー11をスプレー塗布し、そして図1(G)に示す様に、塗布した可視光重合型のサーフェサー11に対して紫外線照射機8からの光を照射し、当該サーフェサー11を硬化させる。
【0031】
特にかかる照射機8としては、1.2kwの出力を有するメタルハライドランプを使用した紫外線照射機8が望ましく、これは図2に示すような分光エネルギーが相対的に示される。また、その他にも発光管の中に、水銀に加えて金属をハロゲン化物の形で封入したメタルハライドランプであって、図3に示すような365nmを主軸に200〜400nmの波長の紫外線スペクトルを放射可能なものを使用することができる。なお、図3中の実線はスタンダードタイプのものであり、鎖線はハロゲンレスタイプのものを示している。
【0032】
この実施の形態においては、メタルハライドランプを使用した1.2kwの出力の紫外線照射機8が使用されており、これは12.5cm±5cmの距離(サーフェサー11からの距離)で照射を行えば、光の照射と共に、50℃以上に加熱することもできることから、別途、加熱処理を行っていない。併しながら、サーフェサー11の硬化に使用する照射機が、可視光硬化型樹脂を硬化させる為に従来使用されているような他の照射機である場合には、硬化後における表面のタック感をなくす為に、光の照射と同時であるか、或いは光の照射後に、別途、パネルヒーターなどで加熱することが望ましい。
【0033】
そして、上記図1(F)に示したサーフェサー11の塗布工程、および図1(G)に示した塗布したサーフェサー11の硬化工程は、必要な膜厚を得るまで繰り返して行うことができ、一般には50μm〜80μm程度の膜厚が得るまで繰り返して行う。但し、ここで形成されるサーフェサー11膜は、厚くても1mmである。
【0034】
上記図1(F)及び(G)に示すようなサーフェサー11の塗布・硬化工程を行うことにより、サーフェサー11を迅速に硬化させることができ、更に硬化後における表面のタック感をなくすことができる。
【0035】
その後、硬化したサーフェサー11の表面は、図1(H)に示す様に、ダブルアクションサンダー、オービタルサンダー7等を用いて、まず#400のペーパーで研磨し、次いで#600〜800のペーパーで研磨する。この研磨に際して、上記の工程により形成されたサーフェサー11の層は、その表面におけるベタ付きが解消されていることから、ペーパーの目詰まりもなく、効率的に研磨作業を行うことができる。なお、この研磨作業の後においては、歪み取りスプレーを使用して歪みの有無を確認することもでき、歪みが発見された場合には、再度、上記サーフェサー11の塗布・硬化工程を繰り返し、歪みが発見されなかった場合には、歪み取りスプレーを拭き取り、上塗り工程に進む。
【0036】
上塗り工程においては、まず洗浄、脱脂を行った後、図1(I)に示すような一般的な方法で上塗り塗装12を行い、そしてポリッシングを行って仕上げ、車体パネル1に生じた窪み2を補修することができる。
【実施例1】
【0037】
以下では、上記図1に示した修理方法による効果を確認するため、可視光硬化型のサーフェサーの硬化時間と硬化後における表面のタック感(ベタ付き感)を評価した。
【0038】
なお、以下の実験例を行った環境は750〜800luxの明るさで、気温29℃、湿度66%であった。
〔実験例1〕
【0039】
先ず、ロックペイント株式会社製の可視光硬化型サーフェサー(商品名:ロックライトキュアーサーフェサー)を50%(容積比)に希釈して鋼板に塗布し、試験片を作成した。この塗布は口径1.3mmのスプレー口を有するスプレーガンで、吐出量を140ml/min程度に調整し、エアー圧を0.8kgf/cm2〜1.0kgf/cm2とした上で、塗布面との距離を10cm程度に設定してスプレー塗布を行った。試験片は、サーフェサーの塗布面積が1dm2のものと4dm2のものの2種類を作成した。
【0040】
サーフェサーを塗布した後、それぞれの試験片に対して、直ちに紫外線照射機からの光を照射し、塗布したサーフェサーを硬化させた。この実験例で使用した照射機は、メタルハライドランプを光源に使用し、図2に示す分光エネルギーが相対的に示される、1.2kwの紫外線照射機である。
【0041】
そして各試験片における、サーフェサーの硬化時間を測定すると共に、サーフェサーと紫外線照射機との距離を12.5cm±5cmの範囲で調整して、サーフェサーに対する加熱温度を調整し、そして硬化後の状態、特に硬化後における表面のタック感(ベタ付き感)を評価した。その評価結果を表1に示す。
【表1】

〔実験例2〕
【0042】
実施例1と同じく塗布面積の異なる2種類の試験片を作成し、紫外線照射機を可視光硬化型サーフェサー用のもの(セリック株式会社製の人工太陽照明灯:型式「SOLAX-EVO II型」)に変えて、各試験片におけるサーフェサーが硬化するまでの時間を測定した。硬化時間とサーフェサー表面における温度、及び硬化後の状態、特に硬化後における表面のタック感(ベタ付き感)を評価し、その結果を表2に示す。
【表2】

〔実験例3〕
【0043】
サーフェサーの硬化に際して、実験例2で使用した照射機からの光を照射すると同時に、パネルヒーターを用いて加熱を行った。その結果を表3に示す。
【表3】

【0044】
以上の結果からも明らかなように、紫外線照射機を用いることにより、可視光硬化型のサーフェサーを迅速に硬化させることができる。具体的には、実験例1の結果からも明らかなように、サーフェサーの塗布面積が1dm2の試験片では、25秒、30秒、35秒で硬化し、サーフェサーの塗布面積が4dm2の試験片では、60秒、80秒、90秒で硬化した。更に実験例3に示す様に、硬化に際して熱を加えることで、硬化後における表面のタック感を解消することができる。
【0045】
尚、本発明の車体パネルの補修方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態に係る補修方法を示す工程図
【図2】本実施の形態で使用した紫外線照射装置の照射光についての分光エネルギー分布図。
【図3】他の紫外線照射装置の照射光についての分光エネルギー分布図。
【符号の説明】
【0047】
1 車体パネル
2 窪み部分
3 旧塗膜
4 鋼板
5 サンダー等の研磨具
6 パネル引き出し具
7 オービタルサンダー
8 紫外線照射機
10 パテ
11 サーフェサー
12 塗装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷した車体のパネル面を補修する方法であって、
当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、
当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これを可視光線領域の発光スペクトルを有するランプを用いて、50℃以上に加熱することで硬化させることを特長とする、車体パネルの補修方法。
【請求項2】
損傷した車両のパネル面を補修する方法であって、
当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、
当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これを可視光領域の発光スペクトルを有するランプを用いて硬化させると共に、更に50℃以上に加熱することを特長とする、車体パネルの補修方法。
【請求項3】
前記塗布したサーフェサーを70度以上に加熱する、請求項1又は2に記載の、車体パネルの補修方法。
【請求項4】
損傷した車両のパネル面を補修する方法であって、
当該補修方法は、塗料の塗布に先立ち、サーフェサーを塗布してこれを硬化させるサーフェサー塗布・硬化工程を含み、
当該サーフェサー塗布・硬化工程は、塗料を塗布する領域に、可視光線の波長域に吸収スペクトルを有する光重合開始剤を含有するサーフェサーを塗布すると共に、これに350〜400nmの波長域に最大の発光スペクトルを有し、更に350nm未満の波長域の発光スペクトルを有する光を照射して硬化させることを特長とする、車体パネルの補修方法。
【請求項5】
前記サーフェサー塗布・硬化工程は、塗布したサーフェサーに対して、1.0kw以上の出力を有するメタルハライドランプを光源に用いた紫外線照射機で光を照射して硬化させる、請求項1〜4の何れか一項に記載の車体パネルの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−83093(P2007−83093A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271194(P2005−271194)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(594057314)翼システム株式会社 (22)
【Fターム(参考)】