車体側部構造
【課題】ドアの閉鎖動作に支障をきすことなく、車両側面衝突時においてドアの屈曲変形をできるだけ抑えると共に、ドアが屈曲変形した場合であってもドアを車体に対して確実に保持することができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】サイドドア1の下部に袋状部8を形成し、サイドシル6に上下方向に延出する縦壁部18を設け、ドアインナ3にサイドシル6に面する側壁部7と車室内に面する内壁部5とを形成し、ドアインナ3の側壁部7に開口部23を設け、袋状部8内に、回動駆動することにより開口部23から突出格納可能な部分円筒状のフック本体32を設け、ドア閉時にフック本体32を開口部23から突出させて縦壁部7に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする。
【解決手段】サイドドア1の下部に袋状部8を形成し、サイドシル6に上下方向に延出する縦壁部18を設け、ドアインナ3にサイドシル6に面する側壁部7と車室内に面する内壁部5とを形成し、ドアインナ3の側壁部7に開口部23を設け、袋状部8内に、回動駆動することにより開口部23から突出格納可能な部分円筒状のフック本体32を設け、ドア閉時にフック本体32を開口部23から突出させて縦壁部7に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、側面衝突から乗員を保護する車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の中には、車両側面衝突時に車両側部のドアに衝撃荷重が作用してこのドアが変形したとしても、ドアが車体から分離しないで車体に保持されるような対策を施した車体側部構造が知られている。例えば、サイドシルに車体外側に向かって引っ掛け部材を設ける一方、ドアにこの引っ掛け部材の下側に係止する係合部を設け、この係合部により車両側面衝突時に内側に変形するドアの車体からの脱落を防止している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−41333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、サイドシルに設けた車体外側に向かう引っ掛け部材に対して、ドア側の係合部を下側に引っ掛ける構造であるので、車両側面衝突時にドアが車室内側に向かって大きく屈曲変形した場合には、ドア側の係合部が引っ掛け部に対して後退する方向に変位しこの部分での係合が外れドアを車体に対して保持できないという問題がある。
これに対し、ドア側の係合部が簡単に外れないように、引っ掛け部に回り込んで係合するようにすることも考えられるが、このようにするとドアを閉じることができない。
【0004】
そこで、この発明は、ドアの閉鎖動作に支障をきすことなく、車両側面衝突時においてドアの屈曲変形をできるだけ抑えると共に、ドアが屈曲変形した場合であってもドアを車体に対して確実に保持することができる車体側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、車両用ドア(例えば、実施形態におけるサイドドア1)の車体外側のドアスキン(例えば、実施形態におけるドアスキン2)と車体内側のドアインナ(例えば、実施形態におけるドアインナ3)とによりドア下部に袋状部(例えば、実施形態における袋状部8)を形成し、サイドシル(例えば、実施形態におけるサイドシル6)に上下方向に延出する縦壁部(例えば、実施形態における縦壁部18)を設け、前記ドアインナにサイドシルに面する側壁部(例えば、実施形態における側壁部7)と車室内に面する内壁部(例えば、実施形態における内壁部5)とを形成し、前記ドアインナの前記側壁部に開口部(例えば、実施形態における開口部23)を設け、前記袋状部内に、回動駆動することにより前記開口部から突出格納可能な部分円筒状のフック(例えば、実施形態におけるフック本体32)を設け、前記ドア閉時に前記フックを前記開口部から突出させて前記縦壁部に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする。
このように構成することで、車両側面衝突時にドアに衝撃荷重が作用すると、ドアは内側に折れ曲がる方向に力を受けるが、ドア閉時にドア下部に設けたフックがサイドシルの縦壁部に対して車室内側から係止しているため、ドアの折れ曲がり変形に伴う、ドア下部の車室外側への後退を阻止することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記フックの回動中心を囲むように前記ドアインナに補強用のスティフナ(例えば、実施形態におけるスティフナ38)を装着したことを特徴とする。
このように構成することで、側面衝突時に作用する入力荷重によってフックが車室内側に侵入するのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、車両側面衝突時にドアに衝撃荷重が作用すると、ドアは内側に折れ曲がる方向に力を受けるが、ドア閉時にドア下部に設けたフックがサイドシルの縦壁部に対して車室内側から係止しているため、ドアの折れ曲がり変形に伴う、ドア下部の車室外側への後退を阻止することができ、よって、ドアの車室内側への折れ曲がりによる車室内への侵入を抑えることができると共に、ドアを車体に対して確実に保持することができる効果がある。
請求項2に記載した発明によれば、側面衝突時に作用する入力荷重によってフックが車室内側に移動してもこの移動を阻止することができ、その結果、フックが車室内側に侵入するのを確実に防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すのは、フロント側のサイドドア1の下部を前側から見た一部切欠斜視図である。尚、リヤ側のサイドドアについても同様に適用してもよい。
【0009】
図1、図2に示すように、フロント側のサイドドア1は車体外側のドアスキン2と車体内側のドアインナ3とを周縁部のヘミング部4で接合したものである。ドアインナ3は車室内側に面する内壁部5と、この内壁部5の下側で斜め外側下方に向かって形成されサイドシル6に向いた側壁部7を備えている。
サイドドア1の下部にはドアスキン2とドアインナ3とで囲まれた部分に袋状部8が形成されている。
【0010】
図2に示すように、サイドシル6は車体のサイドドア取付開口部の下辺を構成するものであって、フロアパネルP(図10,図11参照)の両側縁に車体前後方向に沿って設けられた車体骨格部材である。
サイドシル6はシルインナパネル10とシルアウタパネル11とで閉断面構造に形成されている。シルアウタパネル11は下縁から下側に延びる下縁フランジ12と上縁から上側に延びる上縁フランジ13を備え、下縁フランジ12と上縁フランジ13との間が車室外側に向かって膨出形成された部材である。シルアウタパネル11の下縁フランジ12と上縁フランジ13には、シルインナパネル10の下縁から下側に延びる下縁フランジ14とシルインナパネル10の上縁から上側に延びる上縁フランジ15とが各々接合されている。
【0011】
シルアウタパネル11の上縁フランジ13はシルインナパネル10の上縁フランジ15の接合部分から更に上方に延びる上部延出部16を備えていて、この上部延出部16の上縁部には車室外側に向かって水平に延出するサイドシルフランジ17がドアインナ3の近傍に至る部位まで設けられている。サイドシルフランジ17の端末部には下方に向かって折れ曲がる縦壁部18が形成されている。この縦壁部18はシルアウタパネル11の上縁フランジ13の高さ方向を半分程度まで下がる位置まで形成されている。
【0012】
サイドドア1の内部にはドアガラス19が昇降可能に支持されていて、ドアガラス19の格納位置でドアガラス19の下端の下方に、ドアスキン2とドアインナ3とで形成された袋状部8が形成されている。
【0013】
ドアインナ3にはヘミング部4の上部に開口部23が形成されている。この開口部23はサイドドア1の車体前後方向に沿って形成されている。ここで、この開口部23はサイドドア1の車体前後方向のほぼ全域に渡って設けてもよいし、全域よりは短い長さの範囲に部分的に設けてもよい。
サイドドア1の下部の袋状部8には、回動駆動することにより開口部23から突出格納可能な部分円筒状のフックFが設けられている。
【0014】
図3に示すように、フックFは袋状部8の内部に前後方向に渡って配設された連結プレート31の内側縁を回転中心24としたもので、回転中心24となる連結プレート31の内側縁の一端はベアリング25にピンNを介して支持され、回転中心24の他端となる連結プレート31の内側縁の他端はモータ26のシャフト27にピンNを介して連結されている。このベアリング25とモータ26はドアインナ3に固定されている。ここで、モータ26のシャフト27と連結プレート31の内側縁の他端とはコイルスプリング30を介して連結されている。連結プレート31の外側縁にはフック本体32が取り付けられている。
フック本体32は部分円筒状に形成された部材である。具体的には円筒状の部材を180度程度切除した弧状の外周壁を備えたもので、回転中心24が外周壁の中心に位置するように連結プレート31の外側縁に固定されている。フック本体32と連結プレート31とでフックFを構成している。
【0015】
ここで、フックFは、回転中心24回りに回動した場合に、開口部23から大部分の部位が突出する係止位置と、サイドドア1の袋状部8内の格納位置、厳密にはフック本体32の先端縁が開口部23と一致する位置を含みそれよりもサイドドア1の内側に格納される格納位置とに姿勢変化可能となっている。尚、この実施形態ではフックFの格納位置への姿勢変化はモータ26の回動動作により行われ、フックFの係止位置への姿勢変化は、モータ26のシャフト27と連結プレート31の内側縁の他端との間に設けたコイルスプリング30がモータ26の回動によりトーション方向に変形して蓄えられる弾性力を利用して行われるようになっている。ここで、モータ26のオン、オフ切り替えは、図2に示すように、ドア開閉操作によるルームランプのオン、オフのスイッチ33と連動した回路34により行われる。尚、35はバッテリを示す。
したがって、サイドドア1を閉じるとルームランプがオフとなり、これに連動してコイルスプリング30によりフック本体32は係止位置となり(図5、図2破線参照)、サイドドア1を開くとルームランプがオンとなり、これに連動してモータ26がオンとなって、回転中心24回りにフック本体32を回動駆動してフック本体32を格納位置にする(図4、図2実線参照)。
【0016】
ここで、フック本体32の係止位置においては、フック本体32の外側縁近傍はサイドシル6のシルアウタパネル11の肩部36の近傍を経て上縁フランジ13とサイドシルフランジ17と縦壁部18とで囲まれる部位に至るようになっていて、フック本体32の外側縁は、縦壁部18とサイドシルフランジ17とのコーナー部37に向かって縦壁部18の車室内側から当接して係止するようになっている。
そして、フックFの回転中心24を囲むように、ドアインナ3の開口部23の上の側壁部7から内壁部5に跨る位置には、ドアインナ3の内面に補強用のスティフナ38が装着されている。ここでスティフナ38はサイドシル6の縦壁部18に重なるような位置に取り付けられている。
【0017】
上記実施形態によれば、図2〜図4に示すように、ドア開操作をはじめると、ルームランプのスイッチ33がオンとなり回路34が閉回路となってモータ26が駆動する。これにより、フックFは格納位置へ姿勢変化する(図4参照)のでサイドドア1を開くことができる。このときコイルスプリング30はトーション方向に変形して弾性力が蓄えられた状態となっている。ここで、このようにフックFを格納した状態では開口部23はフック本体32の先端で閉塞されているため、開口部23が目に付かず商品性を維持できる。
また、サイドドア1の閉操作をおこなうと、ルームランプのスイッチ33がオフとなり、今度はコイルスプリング30の弾性力により、フックFはサイドドア1の開口部23から突出して係止位置へと姿勢変化する(図5参照)。尚、この際にはモータ26は、コイルスプリング30の戻り変形には影響されないようになっている。
したがって、サイドドア1を開いた場合にだけモータ26が駆動し、フックFの係止位置への姿勢変化はコイルスプリング30の弾性力を用いるので、バッテリ35に余分な負担をかけることはない。
【0018】
ここで、図10に示すように車両Cのサイドドア1の側方から他の車両C’が側面衝突すると、他の車両C’のバンパが潰れ変形を始める。次に、図6に示す位置にある他の車両C’のフロントサイドフレームMが、図7、図11に示すように車両Cのサイドドア1のドアスキン2を内側に変形させてゆく。この間、サイドドア1のドアスキン2はくの字状に車室内側に向かって屈曲変形しようとして、サイドドア1の下端部には後退しながら上方に跳ね上がる力が作用する。
【0019】
ところが、サイドドア1側にあるフックF、具体的にはフック本体32がサイドシル6のシルアウタパネル11のサイドシルフランジ17と縦壁部18とで形成されたコーナー部37に向かい、縦壁部18の車室内側から外側に押圧するように係止しているため、フック本体32はサイドシル6の縦壁部18により外側方向に変位できず係合力が維持される。したがって、サイドドア1の下端部の跳ね上がりが防止されサイドドア1がくの字に変形するのを防止できる。これにより、サイドドア1の上下方向中央部付近はそれ以上車室内側に侵入することはなく、車両Cの車室空間を確保できる。また、サイドドア1は車両Cから外れることは無く確実に車両Cに保持できる。
【0020】
そして、図8に示すように、車両C’の衝突が進行し、図9に示すように、車両C’のフロントサイドフレームMが更にサイドドア1を押圧して、フックFの連結プレート31とベアリング25あるいはモータ26とを接続しているピンNを破断させたとしても、スティフナ38によりフックFの車室内側への変位を阻止できるので、車室内へのフックFの侵入を防止できる。つまり、スティフナ38は上部でサイドシル6のコーナー部37に引っかかり、スティフナ38の下部ではドアスキン2の下部がフックFの連結プレート31を押してスティフナ38の下部に引っかかるので、スティフナ38の車室内側への変位を確実に防止できるのである。勿論、フックFがサイドシル6の縦壁部18に係止している限りサイドドア1が車両Cから外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態のフロントサイドドアの一部切欠斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の要部断面図である。
【図3】この発明の実施形態のフックの斜視図である。
【図4】この発明の実施形態のサイドドア開時の断面図である。
【図5】この発明の実施形態のサイドドア閉時の断面図である。
【図6】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図7】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図8】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図9】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図10】この発明の実施形態の側面衝突初期の説明図である。
【図11】この発明の実施形態の側面衝突終期の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 サイドドア(車両用ドア)
2 ドアスキン
3 ドアインナ
5 内壁部
6 サイドシル
7 側壁部
8 袋状部
18 縦壁部
23 開口部
23 フック本体(フック)
38 スティフナ
【技術分野】
【0001】
この発明は、側面衝突から乗員を保護する車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の中には、車両側面衝突時に車両側部のドアに衝撃荷重が作用してこのドアが変形したとしても、ドアが車体から分離しないで車体に保持されるような対策を施した車体側部構造が知られている。例えば、サイドシルに車体外側に向かって引っ掛け部材を設ける一方、ドアにこの引っ掛け部材の下側に係止する係合部を設け、この係合部により車両側面衝突時に内側に変形するドアの車体からの脱落を防止している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−41333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、サイドシルに設けた車体外側に向かう引っ掛け部材に対して、ドア側の係合部を下側に引っ掛ける構造であるので、車両側面衝突時にドアが車室内側に向かって大きく屈曲変形した場合には、ドア側の係合部が引っ掛け部に対して後退する方向に変位しこの部分での係合が外れドアを車体に対して保持できないという問題がある。
これに対し、ドア側の係合部が簡単に外れないように、引っ掛け部に回り込んで係合するようにすることも考えられるが、このようにするとドアを閉じることができない。
【0004】
そこで、この発明は、ドアの閉鎖動作に支障をきすことなく、車両側面衝突時においてドアの屈曲変形をできるだけ抑えると共に、ドアが屈曲変形した場合であってもドアを車体に対して確実に保持することができる車体側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、車両用ドア(例えば、実施形態におけるサイドドア1)の車体外側のドアスキン(例えば、実施形態におけるドアスキン2)と車体内側のドアインナ(例えば、実施形態におけるドアインナ3)とによりドア下部に袋状部(例えば、実施形態における袋状部8)を形成し、サイドシル(例えば、実施形態におけるサイドシル6)に上下方向に延出する縦壁部(例えば、実施形態における縦壁部18)を設け、前記ドアインナにサイドシルに面する側壁部(例えば、実施形態における側壁部7)と車室内に面する内壁部(例えば、実施形態における内壁部5)とを形成し、前記ドアインナの前記側壁部に開口部(例えば、実施形態における開口部23)を設け、前記袋状部内に、回動駆動することにより前記開口部から突出格納可能な部分円筒状のフック(例えば、実施形態におけるフック本体32)を設け、前記ドア閉時に前記フックを前記開口部から突出させて前記縦壁部に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする。
このように構成することで、車両側面衝突時にドアに衝撃荷重が作用すると、ドアは内側に折れ曲がる方向に力を受けるが、ドア閉時にドア下部に設けたフックがサイドシルの縦壁部に対して車室内側から係止しているため、ドアの折れ曲がり変形に伴う、ドア下部の車室外側への後退を阻止することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記フックの回動中心を囲むように前記ドアインナに補強用のスティフナ(例えば、実施形態におけるスティフナ38)を装着したことを特徴とする。
このように構成することで、側面衝突時に作用する入力荷重によってフックが車室内側に侵入するのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、車両側面衝突時にドアに衝撃荷重が作用すると、ドアは内側に折れ曲がる方向に力を受けるが、ドア閉時にドア下部に設けたフックがサイドシルの縦壁部に対して車室内側から係止しているため、ドアの折れ曲がり変形に伴う、ドア下部の車室外側への後退を阻止することができ、よって、ドアの車室内側への折れ曲がりによる車室内への侵入を抑えることができると共に、ドアを車体に対して確実に保持することができる効果がある。
請求項2に記載した発明によれば、側面衝突時に作用する入力荷重によってフックが車室内側に移動してもこの移動を阻止することができ、その結果、フックが車室内側に侵入するのを確実に防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すのは、フロント側のサイドドア1の下部を前側から見た一部切欠斜視図である。尚、リヤ側のサイドドアについても同様に適用してもよい。
【0009】
図1、図2に示すように、フロント側のサイドドア1は車体外側のドアスキン2と車体内側のドアインナ3とを周縁部のヘミング部4で接合したものである。ドアインナ3は車室内側に面する内壁部5と、この内壁部5の下側で斜め外側下方に向かって形成されサイドシル6に向いた側壁部7を備えている。
サイドドア1の下部にはドアスキン2とドアインナ3とで囲まれた部分に袋状部8が形成されている。
【0010】
図2に示すように、サイドシル6は車体のサイドドア取付開口部の下辺を構成するものであって、フロアパネルP(図10,図11参照)の両側縁に車体前後方向に沿って設けられた車体骨格部材である。
サイドシル6はシルインナパネル10とシルアウタパネル11とで閉断面構造に形成されている。シルアウタパネル11は下縁から下側に延びる下縁フランジ12と上縁から上側に延びる上縁フランジ13を備え、下縁フランジ12と上縁フランジ13との間が車室外側に向かって膨出形成された部材である。シルアウタパネル11の下縁フランジ12と上縁フランジ13には、シルインナパネル10の下縁から下側に延びる下縁フランジ14とシルインナパネル10の上縁から上側に延びる上縁フランジ15とが各々接合されている。
【0011】
シルアウタパネル11の上縁フランジ13はシルインナパネル10の上縁フランジ15の接合部分から更に上方に延びる上部延出部16を備えていて、この上部延出部16の上縁部には車室外側に向かって水平に延出するサイドシルフランジ17がドアインナ3の近傍に至る部位まで設けられている。サイドシルフランジ17の端末部には下方に向かって折れ曲がる縦壁部18が形成されている。この縦壁部18はシルアウタパネル11の上縁フランジ13の高さ方向を半分程度まで下がる位置まで形成されている。
【0012】
サイドドア1の内部にはドアガラス19が昇降可能に支持されていて、ドアガラス19の格納位置でドアガラス19の下端の下方に、ドアスキン2とドアインナ3とで形成された袋状部8が形成されている。
【0013】
ドアインナ3にはヘミング部4の上部に開口部23が形成されている。この開口部23はサイドドア1の車体前後方向に沿って形成されている。ここで、この開口部23はサイドドア1の車体前後方向のほぼ全域に渡って設けてもよいし、全域よりは短い長さの範囲に部分的に設けてもよい。
サイドドア1の下部の袋状部8には、回動駆動することにより開口部23から突出格納可能な部分円筒状のフックFが設けられている。
【0014】
図3に示すように、フックFは袋状部8の内部に前後方向に渡って配設された連結プレート31の内側縁を回転中心24としたもので、回転中心24となる連結プレート31の内側縁の一端はベアリング25にピンNを介して支持され、回転中心24の他端となる連結プレート31の内側縁の他端はモータ26のシャフト27にピンNを介して連結されている。このベアリング25とモータ26はドアインナ3に固定されている。ここで、モータ26のシャフト27と連結プレート31の内側縁の他端とはコイルスプリング30を介して連結されている。連結プレート31の外側縁にはフック本体32が取り付けられている。
フック本体32は部分円筒状に形成された部材である。具体的には円筒状の部材を180度程度切除した弧状の外周壁を備えたもので、回転中心24が外周壁の中心に位置するように連結プレート31の外側縁に固定されている。フック本体32と連結プレート31とでフックFを構成している。
【0015】
ここで、フックFは、回転中心24回りに回動した場合に、開口部23から大部分の部位が突出する係止位置と、サイドドア1の袋状部8内の格納位置、厳密にはフック本体32の先端縁が開口部23と一致する位置を含みそれよりもサイドドア1の内側に格納される格納位置とに姿勢変化可能となっている。尚、この実施形態ではフックFの格納位置への姿勢変化はモータ26の回動動作により行われ、フックFの係止位置への姿勢変化は、モータ26のシャフト27と連結プレート31の内側縁の他端との間に設けたコイルスプリング30がモータ26の回動によりトーション方向に変形して蓄えられる弾性力を利用して行われるようになっている。ここで、モータ26のオン、オフ切り替えは、図2に示すように、ドア開閉操作によるルームランプのオン、オフのスイッチ33と連動した回路34により行われる。尚、35はバッテリを示す。
したがって、サイドドア1を閉じるとルームランプがオフとなり、これに連動してコイルスプリング30によりフック本体32は係止位置となり(図5、図2破線参照)、サイドドア1を開くとルームランプがオンとなり、これに連動してモータ26がオンとなって、回転中心24回りにフック本体32を回動駆動してフック本体32を格納位置にする(図4、図2実線参照)。
【0016】
ここで、フック本体32の係止位置においては、フック本体32の外側縁近傍はサイドシル6のシルアウタパネル11の肩部36の近傍を経て上縁フランジ13とサイドシルフランジ17と縦壁部18とで囲まれる部位に至るようになっていて、フック本体32の外側縁は、縦壁部18とサイドシルフランジ17とのコーナー部37に向かって縦壁部18の車室内側から当接して係止するようになっている。
そして、フックFの回転中心24を囲むように、ドアインナ3の開口部23の上の側壁部7から内壁部5に跨る位置には、ドアインナ3の内面に補強用のスティフナ38が装着されている。ここでスティフナ38はサイドシル6の縦壁部18に重なるような位置に取り付けられている。
【0017】
上記実施形態によれば、図2〜図4に示すように、ドア開操作をはじめると、ルームランプのスイッチ33がオンとなり回路34が閉回路となってモータ26が駆動する。これにより、フックFは格納位置へ姿勢変化する(図4参照)のでサイドドア1を開くことができる。このときコイルスプリング30はトーション方向に変形して弾性力が蓄えられた状態となっている。ここで、このようにフックFを格納した状態では開口部23はフック本体32の先端で閉塞されているため、開口部23が目に付かず商品性を維持できる。
また、サイドドア1の閉操作をおこなうと、ルームランプのスイッチ33がオフとなり、今度はコイルスプリング30の弾性力により、フックFはサイドドア1の開口部23から突出して係止位置へと姿勢変化する(図5参照)。尚、この際にはモータ26は、コイルスプリング30の戻り変形には影響されないようになっている。
したがって、サイドドア1を開いた場合にだけモータ26が駆動し、フックFの係止位置への姿勢変化はコイルスプリング30の弾性力を用いるので、バッテリ35に余分な負担をかけることはない。
【0018】
ここで、図10に示すように車両Cのサイドドア1の側方から他の車両C’が側面衝突すると、他の車両C’のバンパが潰れ変形を始める。次に、図6に示す位置にある他の車両C’のフロントサイドフレームMが、図7、図11に示すように車両Cのサイドドア1のドアスキン2を内側に変形させてゆく。この間、サイドドア1のドアスキン2はくの字状に車室内側に向かって屈曲変形しようとして、サイドドア1の下端部には後退しながら上方に跳ね上がる力が作用する。
【0019】
ところが、サイドドア1側にあるフックF、具体的にはフック本体32がサイドシル6のシルアウタパネル11のサイドシルフランジ17と縦壁部18とで形成されたコーナー部37に向かい、縦壁部18の車室内側から外側に押圧するように係止しているため、フック本体32はサイドシル6の縦壁部18により外側方向に変位できず係合力が維持される。したがって、サイドドア1の下端部の跳ね上がりが防止されサイドドア1がくの字に変形するのを防止できる。これにより、サイドドア1の上下方向中央部付近はそれ以上車室内側に侵入することはなく、車両Cの車室空間を確保できる。また、サイドドア1は車両Cから外れることは無く確実に車両Cに保持できる。
【0020】
そして、図8に示すように、車両C’の衝突が進行し、図9に示すように、車両C’のフロントサイドフレームMが更にサイドドア1を押圧して、フックFの連結プレート31とベアリング25あるいはモータ26とを接続しているピンNを破断させたとしても、スティフナ38によりフックFの車室内側への変位を阻止できるので、車室内へのフックFの侵入を防止できる。つまり、スティフナ38は上部でサイドシル6のコーナー部37に引っかかり、スティフナ38の下部ではドアスキン2の下部がフックFの連結プレート31を押してスティフナ38の下部に引っかかるので、スティフナ38の車室内側への変位を確実に防止できるのである。勿論、フックFがサイドシル6の縦壁部18に係止している限りサイドドア1が車両Cから外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態のフロントサイドドアの一部切欠斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の要部断面図である。
【図3】この発明の実施形態のフックの斜視図である。
【図4】この発明の実施形態のサイドドア開時の断面図である。
【図5】この発明の実施形態のサイドドア閉時の断面図である。
【図6】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図7】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図8】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図9】この発明の実施形態の側面衝突時の断面図である。
【図10】この発明の実施形態の側面衝突初期の説明図である。
【図11】この発明の実施形態の側面衝突終期の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 サイドドア(車両用ドア)
2 ドアスキン
3 ドアインナ
5 内壁部
6 サイドシル
7 側壁部
8 袋状部
18 縦壁部
23 開口部
23 フック本体(フック)
38 スティフナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの車体外側のドアスキンと車体内側のドアインナとによりドア下部に袋状部を形成し、サイドシルに上下方向に延出する縦壁部を設け、前記ドアインナにサイドシルに面する側壁部と車室内に面する内壁部とを形成し、前記ドアインナの前記側壁部に開口部を設け、前記袋状部内に、回動駆動することにより前記開口部から突出格納可能な部分円筒状のフックを設け、前記ドア閉時に前記フックを前記開口部から突出させて前記縦壁部に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記フックの回動中心を囲むように前記ドアインナに補強用のスティフナを装着したことを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項1】
車両用ドアの車体外側のドアスキンと車体内側のドアインナとによりドア下部に袋状部を形成し、サイドシルに上下方向に延出する縦壁部を設け、前記ドアインナにサイドシルに面する側壁部と車室内に面する内壁部とを形成し、前記ドアインナの前記側壁部に開口部を設け、前記袋状部内に、回動駆動することにより前記開口部から突出格納可能な部分円筒状のフックを設け、前記ドア閉時に前記フックを前記開口部から突出させて前記縦壁部に車室内側から係止可能に構成したことを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記フックの回動中心を囲むように前記ドアインナに補強用のスティフナを装着したことを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−213540(P2008−213540A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50178(P2007−50178)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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