説明

車体前部構造

【課題】ステアリングシャフトを車体の後方に移動することを可能にするとともに、車体の前後長さを短縮することを可能にする。
【解決手段】エンジンルーム13と車室12とに車体11を仕切るダッシュロアパネル21と、車体前後方向に延びる左右の縦フレームと、左右の縦フレームと連結するダッシュクロスメンバ27と、ダッシュロアパネル21及びダッシュクロスメンバ27に貫通するステアリングシャフトと、を備えた車体前部構造10であって、ダッシュロアパネル21の屈曲部とダッシュクロスメンバ27とで側面視で閉断面(第1の閉断面)が構成され、ダッシュロアパネル21の隆起部45と車室側蓋部材35とで側面視で第2の閉断面72が構成され、これらの第1及び第2の閉断面は連続して形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームとの間を仕切るダッシュロアパネルが設けられ、このダッシュロアパネルにステアリングシャフトを貫通するようにした車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、車室の前壁部を構成するダッシュロアパネルと、このダッシュロアパネルに接合され、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバと、ダッシュロアパネルに接合され、ブレーキブースタの取付部分を補強するレインフォースメントと、が設けられている。
【0003】
ダッシュロアパネルの下部には、フロントサイドフレームなどの左右の縦フレームがダッシュロアパネルに沿わせて配置されている。
ダッシュクロスメンバの両端は、左右の縦フレームに接続されている。ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部は、ダッシュロアパネルに形成され車両前後方向に沿って延びるトンネル部に接合される。
【0004】
レインフォースメントは、レインフォースメント本体と、このレインフォースメント本体から車幅方向内側に延出され、ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部に接合される補強アーム部とを有する。
【0005】
この車体前部構造によれば、レインフォースメントに入力される荷重を、レインフォースメント本体及び補強アーム部を介して分散し、車体の他の部分に伝達することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−30627公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の車体前部構造は、ダッシュロアパネルに、且つダッシュクロスメンバの上部位置にて、車体の舵取りをするステアリングシャフトが貫通されている。例えば、車体の下方にステアリングシャフトを移動し、ステアリングギヤボックスを後方へ移動し、車体のエンジンルームを短く設計し、車体の小型化を図ろうとする場合には、ステアリングシャフトがダッシュクロスメンバに干渉し、ステアリングシャフトを車体の下方に移動することができない。
【0008】
また、この車体前部構造では、ダッシュロアパネルにステアリングシャフトを貫通させる場合には、ダッシュロアパネルにステアリング開口が形成される。従って、このステアリング開口廻りの強度及び剛性の向上が望まれる。
さらに、車面衝突(前突)が発生し、例えば、フロントサイドフレームの後端がフロアフレームの前端に結合された左右の縦フレームの屈曲を防止し、円滑に衝突荷重を分散させたいものである。
【0009】
本発明は、ステアリングシャフトを車体の下方に移動でき、ステアリングギヤボックスを後方へ移動でき、車体の前後長さを短縮することができる車体前部構造を提供することを課題とする。また、ステアリングシャフトを貫通したステアリング開口廻りの強度及び剛性の向上を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。さらに、前突が発生した場合に、車体前後方向に延びる左右の縦フレームの屈曲を防止し、円滑に衝突荷重を分散させることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、エンジンルームと車室とに車体を仕切るダッシュロアパネルと、左右のフロントサイドフレームの後端が左右のフロアフレームの前端に結合され、車体前後方向に延びる左右の縦フレームと、ダッシュロアパネルの車幅方向に沿って延ばされ、左右の縦フレームと連結するダッシュクロスメンバと、ダッシュロアパネル及びダッシュクロスメンバに貫通するステアリングのステアリングシャフトと、を備えた車体前部構造であって、ダッシュロアパネルに、車体の高さ方向に延ばされた垂直部と、この垂直部の下端から屈曲部を介して車室側に傾斜させた傾斜部と、屈曲部の左右一方側に且つエンジンルーム側に隆起させた隆起部と、この隆起部に形成されステアリングシャフトを通すステアリング開口と、を備え、ダッシュクロスメンバが、隆起部に対峙して設けられステアリングシャフトを通すメンバ側開口を有する環状部を備え、屈曲部とダッシュクロスメンバとで側面視で閉断面が構成され、隆起部とダッシュクロスメンバの環状部とが重なることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、左右の縦フレームが、それぞれ車体の内側へ湾曲し、その内側凸部にダッシュクロスメンバが配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、閉断面が、側面断面視で平行四辺形、且つ車室側に突出させた形状であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、メンバ側開口を塞ぐステアリングの車室側蓋部材と、エンジンルーム側からステアリング開口側を塞ぐステアリングのエンジンルーム側蓋部材が設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、左右の縦フレームの内側且つ車室の下部に燃料を貯留するセンタタンクが配置され、左右の縦フレームが、エンジンルームとセンタタンクに亘り車体左右方向の内側に湾曲するものであり、該湾曲部内でダッシュクロスメンバの後方に、左右の縦フレームの内側凸部を繋ぐフロントクロスメンバが配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前部構造に、エンジンルームと車室とに車体を仕切るダッシュロアパネルと、左右のフロントサイドフレームの後端が左右のフロアフレームの前端に結合され、車体前後方向に延びる左右の縦フレームと、ダッシュロアパネルの車幅方向に沿って延ばされ、左右の縦フレームと連結するダッシュクロスメンバと、ダッシュロアパネル及びダッシュクロスメンバに貫通するステアリングのステアリングシャフトと、を備える。
ダッシュロアパネルに、車体の高さ方向に延ばされた垂直部と、この垂直部の下端から屈曲部を介して車室側に傾斜させた傾斜部と、屈曲部の左右一方側に且つエンジンルーム側に隆起させた隆起部と、この隆起部に形成されステアリングシャフトを通すステアリング開口と、を備える。
ダッシュクロスメンバに、隆起部に対峙して設けられステアリングシャフトを通すメンバ側開口を有する環状部を備える。
ダッシュクロスメンバに、隆起部に対峙して設けられステアリングシャフトを通すメンバ側開口が設けられたので、ステアリングシャフトが連結されるステアリングギヤボックスを後方へ移動させダッシュロアパネルの傾斜部の下方へ配置できる。これにより、エンジンルームに配置されるエンジンをダッシュロアパネル側へ後退させることができる。この結果、車体前後長さの短縮が可能となり、車体の小型化を図ることができる。
また、屈曲部とダッシュクロスメンバとで側面視で閉断面が構成され、隆起部とダッシュクロスメンバの環状部とが重なるので、ステアリング開口廻りの強度及び剛性の向上を図ることができるとともに、ダッシュクロスメンバの強度及び剛性を確保することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、左右の縦フレームが、それぞれ車体の内側へ湾曲し、その内側凸部にダッシュクロスメンバが配置されたので、前突が発生した場合に、車体前後方向に延びる左右の縦フレームが内側へ屈曲することを防止することができる。これにより、円滑に衝突荷重を分散させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、閉断面が、側面断面視で平行四辺形、且つ車室側に突出させた形状であるので、ダッシュクロスメンバの強度及び剛性の向上を図ることができる。また、環状部が閉断面と連続してダッシュクロスメンバの強度及び剛性を補完することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、メンバ側開口を塞ぐステアリングの車室側蓋部材と、エンジンルーム側からステアリング開口側を塞ぐステアリングのエンジンルーム側蓋部材が設けられたので、ステアリング開口を大きく開けることができる。この結果、ステアリングシャフトの組立を容易におこなうことができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、左右の縦フレームの内側且つ車室の下部に燃料を貯留するセンタタンクが配置され、左右の縦フレームが、エンジンルームとセンタタンクに亘り車体左右方向の内側に湾曲するものであり、該湾曲部内でダッシュクロスメンバの後方に、左右の縦フレームの内側凸部を繋ぐフロントクロスメンバが配置されたので、前突が発生した場合に、車体前後方向に延びる左右の縦フレームが内側へ屈曲することを、ダッシュクロスメンバのみの場合と比べて、湾曲部内で左右の縦フレームを前後に補強してさらに防止することができる。これにより、さらに円滑に衝突荷重を分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】図2に示された車体前部構造の底面図である。
【図3】図1の3−3線断面の模式図である。
【図4】図3にステアリングを図示したときの断面の模式図である。
【図5】図1の5−5線断面の模式図である。
【図6】図1の6−6線断面の模式図である。
【図7】図1の7−7線断面の模式図である。
【図8】図1の8−8線断面の模式図である。
【図9】図1に示された車体前部構造の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0022】
図1〜図4に示されるように、車体前部構造10は、エンジン14が収納されるエンジンルーム13と車室12とに車体11を仕切るダッシュロアパネル(ダッシュボードロア)21と、このダッシュロアパネル21の上部に設けられ、エンジンルーム13と車室12とに車体11を仕切るダッシュアッパパネル(ダッシュボードアッパ)22と、左右のフロントサイドフレーム23,23の後端が左右のフロアフレーム24,24の前端に結合され、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム25,25と、ダッシュロアパネル21の車幅方向に沿って延ばされ、左右の縦フレーム25,25と連結するダッシュクロスメンバ27と、ダッシュクロスメンバ27の後方に設けられ、左右の縦フレーム25,25を繋ぐフロントクロスメンバ28と、ダッシュクロスメンバ27の左側上部とダッシュロアパネル21の左側上部とに渡される左の補強パネル31と、ダッシュクロスメンバ27の右側上部とダッシュロアパネル21の右側上部とに渡される右の補強パネル32と、ダッシュロアパネル21の下部に配置されるステアリングギヤボックス33と、ダッシュロアパネル21及びダッシュクロスメンバ27に貫通され、ステアリングギヤボックス33から車室12側に延ばされるステアリングシャフト34と、車室12側に設けられ、ステアリングシャフト34が貫通する車室側蓋部材35と、エンジンルーム13側に設けられ、ステアリングギヤボックス33とダッシュロアパネル21との間に設けられるエンジンルーム側蓋部材36と、を備える。
なお、図3〜図8に図示された× 印は、溶接箇所を示している。ステアリングギヤボックス33及びステアリングシャフト34は、ステアリング29の構成部品である。ステアリング29は、ステアリングギヤボックス33及びステアリングシャフト34の他に、ステアリングコラム(不図示)やステアリングホイール(不図示)を主要構成とする装置である。
【0023】
ダッシュロアパネル21は、車体11の高さ方向に延ばされた垂直部41と、この垂直部41の下端から屈曲部42(図5参照)を介して車室12側に傾斜させた傾斜部43と、屈曲部42及び傾斜部43の車幅略中央に且つ車室12側に突出させた中央トンネル部44と、屈曲部42の左右一方側(右側)に且つエンジンルーム13側に隆起させた隆起部45と、この隆起部45に形成されステアリングシャフト34を通すステアリング開口46と、を備える。
【0024】
また、ダッシュロアパネル21は、薄板で形成された薄板部38と、厚板で形成された厚板部39とから構成されている。垂直部41、傾斜部43、屈曲部42、隆起部45、ステアリング開口46及び中央トンネル部44の上部は薄板部38に形成された部分である。中央トンネル部44の下部は厚板部39に形成され、強度及び剛性を高めた部分である。
【0025】
さらに、図5に示されるように、ダッシュロアパネル21の上部には、ダッシュアッパパネル22と、フロントガラス(不図示)の下端を支持するフロントガラス下端支持板37が設けられる。
【0026】
左右のフロントサイドフレーム23,23は、エンジンルーム13の下部に車体前後方向に延ばされたフレームである。左右のフロアフレーム24,24は、左右のフロントサイドフレーム23,23の後端から車室12の下部に延ばされたフレームである。
【0027】
左右のフロントサイドフレーム23,23と左右のフロアフレーム24,24とが連結された左右の縦フレーム25,25は、それぞれ中央部分が車体11の内側へ湾曲した内側凸部48,48を備える。この内側凸部48,48の前部にダッシュクロスメンバ27が接続されている。このダッシュクロスメンバ27の後方であって内側凸部48,48の後部にフロントクロスメンバ28が配置されている。
【0028】
車体前部構造10では、左右のフロントサイドフーム23,23の間に横置きにされたエンジン14が配置され、左右のフロアフレーム24,24の間に燃料タンク(センタタンク)16が配置されている。この関係で前述のように、左右の縦フレーム25,25は、それぞれ中央部分が車体11の内側へ湾曲した内側凸部48,48を備える。なお、燃料タンク16は、車体前後方向及び車幅方向に関して車体の中央に配置されていることから、センタタンクとも呼ばれる。
また、左右のフロントサイドフーム23,23及び左右のフロアフレーム24,24で構成される左右の縦フレーム25,25は、エンジンルームとセンタタンクに亘り車体左右方向の内側に湾曲する湾曲部(縦フレーム湾曲部)47,47が形成されている。従って、湾曲部(縦フレーム湾曲部)47,47の中央部分が、先に説明した内側凸部48,48に相当する。
【0029】
従って、前面衝突(前突)が発生した場合には、左右の縦フレーム25,25に内側向きの座屈荷重が作用する。そこで、左右の縦フレーム25,25間に、ダッシュクロスメンバ27とフロントクロスメンバ28を設けて座屈防止を図った。また、ダッシュロアパネル21の中央トンネル部44の後方にトンネル部17が延ばされている
【0030】
ダッシュクロスメンバ27は、車体11の左側に設けられ左の縦フレーム25に連結される左のストレート部51と、車体11の右側に設けられ右の縦フレーム25に連結される右のストレート部52と、右のストレート部52から車体中央側に設けられ、ステアリングシャフト34を通すメンバ側開口53を有する環状部55と、左右のストレート部51,52の中央に設けられ、ダッシュロアパネル21の中央トンネル部44に近接させる湾曲部(クロスメンバ湾曲部)54と、からなる。
なお、メンバ側開口53は、ダッシュロアパネル21の隆起部45に対峙して設けられたものといえる。
【0031】
車室側蓋部材35は、ステアリングシャフト34を貫通する蓋側開口57が設けられる。さらに、ダッシュクロスメンバ27の環状部55にボルト61,62で締結される。蓋側開口57は、ダッシュロアパネル21の隆起部45に形成されるステアリング開口46よりも小さい。
【0032】
ダッシュロアパネル21の隆起部45に形成されるステアリング開口46を大きく形成することで、ステアリングシャフト34の車室12側への組付け作業が容易になる。また、車室側蓋部材35の蓋側開口57を小さく形成することで、環状部55廻りの強度及び剛性が向上する。
【0033】
エンジンルーム側蓋部材36は、ステアリングギヤボックス33とダッシュロアパネル21との廻りを塞ぐ部材である。さらに、ダッシュロアパネル21側とステアリングギヤボックス33側とにボルト63〜65で締結される。
【0034】
図3及び図4に示されたように、ダッシュクロスメンバ27にステアリングシャフト34が貫通するメンバ側開口53を設け、このメンバ側開口53を車室側蓋部材35により閉鎖して、車室側蓋部材(蓋部材)35とダッシュロアパネル21の隆起部45とで第2の閉断面72を形成することにより、ステアリングギヤボックス33をダッシュロアパネル21の屈曲部42の近くへ配置することができる。すなわち、車体小型化が可能となる。
【0035】
図4に示されたように、屈曲部42の右側に且つエンジンルーム13側に隆起させた隆起部45は、垂直部41及び傾斜部43に跨って隆起される部分ともいえる。
【0036】
図5に示されたように、右の補強パネル32は、ダッシュロアパネル21との間で補強側閉断面76が形成され、ダッシュロアパネル21の剛性を向上させる。なお、左の補強パネル31も、右の補強パネル32と同様に、ダッシュロアパネル21との間で補強側閉断面(不図示)が形成される。
【0037】
すなわち、ダッシュロアパネル21の強度及び剛性が向上される。なお、左右の補強パネル31,32は、ダッシュクロスメンバ27とダッシュアッパパネル22との間に架設して一層ダッシュクロスメンバ27の強度及び剛性を向上させる。特に、環状部55を補強する。
【0038】
また、図5に示されたように、ダッシュロアパネル21の屈曲部42とダッシュクロスメンバ27の右のストレート部52とで側面視で閉断面(第1の閉断面)71が構成される。図6に示されたように、第1の閉断面71は、側面断面視で平行四辺形、且つ車室12側に突出させた形状である。第1の閉断面71を平行四辺形として車室12内への突出量を減少できる。
【0039】
先に説明したように、ダッシュロアパネル21の隆起部45と車室側蓋部材35とで側面視で第2の閉断面72が構成されている(図3参照)。
図8に示されたように、第1及び第2の閉断面71,72は連続的に形成される。
【0040】
図6に示されたように、ダッシュロアパネル21の屈曲部42とダッシュクロスメンバ27の湾曲部54とで第3の閉断面73が構成される。第3の閉断面73は、ダッシュロアパネル21の中央トンネル部44の上部(隆起部分)に突出した略台形若しくは半円形の閉断面である。第3の閉断面73を略台形若しくは半円形にしてダッシュクロスメンバ27を容易にプレス成形できるようにした。また、強度及び剛性も高くできる。
【0041】
また、第3の閉断面73は、ダッシュクロスメンバ27の中央部分に形成した湾曲部54を剛性の高い中央トンネル部44に近接させて形成したので、ダッシュクロスメンバ27の車幅方向の剛性の向上を図ることができる。
【0042】
図7に示されたように、ダッシュロアパネル21の屈曲部42とダッシュクロスメンバ27の左のストレート部51とで第4の閉断面74が構成される。側面断面視で平行四辺形、且つ車室12側に突出させた形状である。
なお、第1〜第4の閉断面71〜74も、車幅方向に連通した閉断面として形成されている。
【0043】
図1〜図8に示されたように、車体前部構造10は、エンジンルーム13と車室12とに車体11を仕切るダッシュロアパネル21と、左右のフロントサイドフレーム23,23の後端が左右のフロアフレーム24,24の前端に結合され、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム25,25と、ダッシュロアパネル21の車幅方向に沿って延ばされ、左右の縦フレーム25,25と連結するダッシュクロスメンバ27と、ダッシュロアパネル21及びダッシュクロスメンバ27に貫通するステアリング29のステアリングシャフト34と、を備える。
【0044】
ダッシュロアパネル21に、車体11の高さ方向に延ばされた垂直部41と、この垂直部41の下端から屈曲部42を介して車室12側に傾斜させた傾斜部43と、屈曲部42の左右一方側に且つエンジンルーム13側に隆起させた隆起部45と、この隆起部45に形成されステアリングシャフト34を通すステアリング開口46と、を備える。
【0045】
ダッシュクロスメンバ27に、隆起部45に対峙して設けられステアリングシャフト34を通すメンバ側開口53を有する環状部55を備える。
【0046】
ダッシュクロスメンバ27に、隆起部45に対峙して設けられステアリングシャフト34を通すメンバ側開口53が設けられたので、ステアリングシャフト34が連結されるステアリングギヤボックス33を後方へ移動させダッシュロアパネル21の傾斜部43の下方へ配置できる。
【0047】
これにより、エンジンルーム13に配置されるエンジン14をダッシュロアパネル21側へ後退させることができる。この結果、車体前後長さの短縮が可能となり、車体11の小型化を図ることができる。
【0048】
また、屈曲部42とダッシュクロスメンバ27とで側面視で閉断面(第1の閉断面)71が構成され、隆起部45とダッシュクロスメンバ27の環状部55とが重なるので、ステアリング開口46廻りの強度及び剛性の向上を図ることができるとともに、ダッシュクロスメンバ27の強度及び剛性を確保することができる。
【0049】
左右の縦フレーム25,25は、それぞれ車体11の内側へ湾曲し、その内側凸部48,48にダッシュクロスメンバ27が配置されたので、前突が発生した場合に、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム25,25が内側へ屈曲することを防止することができる。これにより、円滑に衝突荷重を分散させることができる。
【0050】
閉断面(第1の閉断面)71は、側面断面視で平行四辺形、且つ車室12側に突出させた形状であるので、ダッシュクロスメンバ27の強度及び剛性の向上を図ることができる。また、環状部55が第1の閉断面71と連続してダッシュクロスメンバ27の強度及び剛性を補完することができる。
【0051】
車体前部構造10では、メンバ側開口53を塞ぐステアリング29の車室側蓋部材35と、エンジンルーム13側からステアリング開口46側を塞ぐステアリング29のエンジンルーム側蓋部材36が設けられたので、ステアリング開口46を大きく開けることができる。この結果、ステアリングシャフト34の組立を容易におこなうことができる。
【0052】
図9(a)に示されたように、車体11の前方から矢印a1の如く前突荷重が作用する場合に、前突荷重は、矢印a2,a2の如く左右のフロントサイドフレーム23,23に伝達され、左右のフロントサイドフレーム23,23から、矢印a3,a3の如く左右のフロアフレーム24,24へ伝達される。
【0053】
車体前部構造10では、図2に示されたように、左右のフロントサイドルームの間に横置きエンジン14が配置され、左右のフロアフレーム24,24の間に燃料タンク16が配置されている。この関係で前述のように、左右のフロントサイドフレーム23,23及び左右のフロアフレーム24,24で構成される左右の縦フレーム25,25は、それぞれ中央部分が車体11の内側へ湾曲した内側凸部48,48が形成されている。
【0054】
従って、図9(b)に示されたように、左右の縦フレーム25,25の内側へ向きに、矢印a4,a4の如く座屈荷重が発生して、左右の縦フレーム25,25を内側に折り曲げるように作用する。
【0055】
車体前部構造10では、左右の縦フレーム25,25の内側凸部48,48に、前方からダッシュクロスメンバ27とフロントクロスメンバ28とがこの順で配置されているので、左右の縦フレーム25,25の内側向きに作用する座屈荷重に抗することができる。すなわち、左右の縦フレーム25,25の変形を防止し、前突荷重の円滑な伝達を可能にする。
【0056】
車体前部構造10では、左右の縦フレーム25,25の内側且つ車室12(図2参照)の下部に燃料を貯留するセンタタンク16が配置され、左右の縦フレーム25,25が、エンジンルーム13とセンタタンク16に亘り車体左右方向の内側に湾曲するものであり、湾曲部47,47内でダッシュクロスメンバ27の後方に、左右の縦フレーム25,25の内側凸部48,48を繋ぐフロントクロスメンバ28が配置されたので、前突が発生した場合に、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム25,25が内側へ屈曲することを、ダッシュクロスメンバ27のみの場合と比べて、さらに防止することができる。これにより、さらに円滑に衝突荷重を分散させることができる。
【0057】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図3に示すように、隆起部45は車体11の右に設けられたが、これに限るものではなく、ステアリングシャフト34が配置される側に設けられるものであればよい。すなわち、隆起部45は、屈曲部42の左右一方側に且つ前記エンジンルーム13側に隆起させたものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ダッシュロアパネルが設けられ、左右のフロントサイドフレーム及び左右のフロアフレームで構成される左右の縦フレームが設けられ、左右の縦フレームと連結するダッシュクロスメンバが設けられ、ダッシュロアパネル及びダッシュクロスメンバに貫通するステアリングシャフトが設けられる車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…車体前部構造、11…車体、12…車室、13…エンジンルーム、21…ダッシュロアパネル、23…フロントサイドフレーム、24…フロアフレーム、25…縦フレーム、27…ダッシュクロスメンバ、28…フロントクロスメンバ、34…ステアリングシャフト、35…車室側蓋部材、41…垂直部、42…屈曲部、43…傾斜部、45…隆起部、46…ステアリング開口、48…内側凸部、71…閉断面(第1の閉断面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とに車体を仕切るダッシュロアパネルと、左右のフロントサイドフレームの後端が左右のフロアフレームの前端に結合され、車体前後方向に延びる左右の縦フレームと、前記ダッシュロアパネルの車幅方向に沿って延ばされ、前記左右の縦フレームと連結するダッシュクロスメンバと、前記ダッシュロアパネル及び前記ダッシュクロスメンバに貫通するステアリングのステアリングシャフトと、を備えた車体前部構造であって、
前記ダッシュロアパネルは、前記車体の高さ方向に延ばされた垂直部と、この垂直部の下端から屈曲部を介して前記車室側に傾斜させた傾斜部と、前記屈曲部の左右一方側に且つ前記エンジンルーム側に隆起させた隆起部と、この隆起部に形成され前記ステアリングシャフトを通すステアリング開口と、を備え、
前記ダッシュクロスメンバは、前記隆起部に対峙して設けられ前記ステアリングシャフトを通すメンバ側開口を有する環状部を備え、
前記屈曲部と前記ダッシュクロスメンバとで側面視で閉断面が構成され、前記隆起部と前記ダッシュクロスメンバの環状部とが重なることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右の縦フレームは、それぞれ前記車体の内側へ湾曲し、その内側凸部に前記ダッシュクロスメンバが配置されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記閉断面は、側面断面視で平行四辺形、且つ前記車室側に突出させた形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記メンバ側開口を塞ぐ前記ステアリングの車室側蓋部材と、前記エンジンルーム側から前記ステアリング開口側を塞ぐ前記ステアリングのエンジンルーム側蓋部材が設けられることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記左右の縦フレームの内側且つ前記車室の下部に燃料を貯留するセンタタンクが配置され、
前記左右の縦フレームは、前記エンジンルームと前記センタタンクに亘り車体左右方向の内側に湾曲するものであり、該湾曲部内で前記ダッシュクロスメンバの後方に、前記左右の縦フレームの前記内側凸部を繋ぐフロントクロスメンバが配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−195104(P2011−195104A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66762(P2010−66762)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】