説明

車体前部構造

【課題】制動荷重による左右の車輪のトー角変化のばらつきを抑制することができ、さらに、部品点数を増やすことなくフロントサブフレームの剛性を確保することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左右のサイドフレーム11,12の下方にフロントサブフレーム16が取り付けられ、フロントサブフレーム16にステアリングギヤボックス18が車体幅方向を向けて取り付けられている。この車体前部構造10は、フロントサブフレーム16に、ステアリングギヤボックス18を取り付ける支え部位44〜46が左右略対称に設けられ、これらの支え部位44〜46にブッシュを介してステアリングギヤボックス18が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のサイドフレームの下方に備えたフロントサブフレームにステアリングギヤボックスが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、左右のサイドフレームの下側にフロントサブフレームが取り付けられ、フロントサブフレームの左右端部にフロントサスペンションが取り付けられたものがある。
この車体前部構造は、フロントサブフレームの前方に動力源(エンジン)が配置され、動力源が支持部材を介してフロントサブフレームの略中央に連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−238656号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、例えば、車両の走行中に、前輪を制動することでフロントサスペンションからフロントサブフレームに車体幅方向の荷重が作用する。
また、フロントサブフレームの略中央に支持部材を介して動力源を連結することで、フロントサブフレームで動力源を支えている。
【0004】
フロントサスペンションから作用する荷重や、動力源を支えるために、フロントサブフレームにクロスメンバーを設けてフロントサブフレームの剛性を確保している。
【0005】
また、車体前部構造のなかには、フロントサブフレームに、締付バンドや固定ブッシュを組み合わせた取付部材でステアリングギヤボックスが取り付けられたものがある。
さらに、車体前部構造のなかには、締付バンドおよび固定ブッシュを組み合わせた取付部材を用いないで、複数の固定ブッシュのみを用いてステアリングギヤボックスがフロントサブフレームに取り付けられたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、前記車体構造によれば、左右の前輪を制動することでフロントサスペンションからステアリングのタイロッドに荷重が作用した際に、固定ブッシュなどの取付部材で荷重を受け止めることは可能である。
しかし、ステアリングギヤボックスは、左右いずれか一方の端部側にステアリングギヤのピニオンや電動アシスト用のモータが設けられている。
【0007】
よって、固定ブッシュなどの取付部材を左右対称に配置することが難しく、フロントサスペンションからステアリングのタイロッドに荷重が作用した際に、左右のタイロッドの移動量が異なることが考えられる。
このため、制動荷重による左右の車輪のトー角変化(ばらつき)を同じにすることは難しいとされていた。
【0008】
また、特許文献1の車体前部構造は、フロントサスペンションから作用する荷重や、動力源を支えるために必要な剛性を確保するために、フロントサブフレームにクロスメンバーを設ける必要がある。
このように、フロントサブフレームにクロスメンバーを設けることで、部品点数が増え、そのことが生産性を高める妨げになっていた。
【0009】
本発明は、制動荷重による左右の車輪のトー角変化のばらつきを抑制することができる車体前部構造を提供することを第1の課題とし、さらに、部品点数を増やすことなくフロントサブフレームの剛性を確保することができる車体前部構造を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、左右のサイドフレームの下方にフロントサブフレームが取り付けられた車体前部構造であって、前記フロントサブフレームにステアリングギヤボックスが車体幅方向を向けて取り付けられ前記フロントサブフレームに、前記ステアリングギヤボックスを取り付ける少なくとも3つの支え部位を左右略対称に設け、前記支え部位は左、右、中央の支え部位からなり、左右の支え部位が中央の支え部位に対して左右対称であり、前記フロントサブフレームに、フロントサスペンション用の左右のロアアームの取付部位と、前記左右のサイドフレームに取り付けられる左右の取付部位とが設けられ、前記左右のロアアームの取付部位が、前記左右のサイドフレームに取り付けられる取付部の前方かつ近傍にそれぞれ設けられ、前記左右の支え部位が、前記左右のロアアームの取付部位の近傍にそれぞれ隆起状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2は、前記左右の支え部位が前記ステアリングギヤボックスの本体の前方に配置され、前記中央の支え部位が前記ステアリングギヤボックスの本体の後方に配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、前記中央の支え部位は車体幅方向で略中央に設けられ、前記フロントサブフレームは、前記中央の支え部位の前方において、動力源を支える支持部材が取り付けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項4は、前記ステアリングギヤボックスが前記少なくとも3つの支え部位にブッシュを介して取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、フロントサブフレームにステアリングギヤボックスを取り付ける少なくとも3つの支え部位を左右略対称に設け、これらの支え部位にブッシュを介してステアリングギヤボックスを取り付けた。
ステアリングギヤボックスを左右略対称の支え部位に設けることで、フロントサスペンション用の左右のロアアームからフロントサブフレームに作用するそれぞれの荷重を、ステアリングギヤボックスで均等に支えることができる。
【0015】
よって、フロントサスペンションからステアリングのタイロッドに荷重が作用した際に、左右のタイロッドの移動量を同じに抑えることができる。
これにより、制動荷重による左右の車輪のトー角変化のばらつきを抑制することができる。
【0016】
さらに、左右のロアアームからフロントサブフレームに作用する荷重をステアリングギヤボックスで均等に支えることで、ステアリングギヤボックスを補強部材として兼用することができる。
これにより、補強部材としてクロスメンバーなどを個別に設ける必要がないので、部品点数を増やすことなくフロントサブフレームの剛性を確保することができる。
【0017】
加えて、フロントサブフレームに、フロントサスペンション用の左右のロアアームの取付部位と、左右のサイドフレームに取り付けられる左右の取付部位とを設けた。
これにより、左右のロアアームの取付部位を左右のサイドフレームで補強して、左右のロアアームの取付部位の剛性を確保することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、左右の支え部位をステアリングギヤボックスの本体の前方に配置し、中央の支え部位をステアリングギヤボックスの本体の後方に配置した。
【0019】
請求項3に係る発明では、ステアリングギヤボックスを取り付ける支え部位のうち、中央の支え部位を略車体中央に設けた。そして、略車体中央に設けた支え部位の前方に、動力源を支える支持部材を取り付けた。
【0020】
よって、支持部材からフロントサブフレームに作用する荷重を、略車体中央に設けた支え部位に効率よく伝えることができる。
この支え部位にステアリングギヤボックスが取り付けられているので、支え部位に伝わった荷重をステアリングギヤボックスで効率よく支えることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、ステアリングギヤボックスを少なくとも3つの支え部位にブッシュを介して取り付けた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0023】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
車体前部構造10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左サイドフレーム11の外側に設けられた左フロントサスペンション13と、右サイドフレーム12の外側に設けられた右フロントサスペンション14と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたフロントサブフレーム16と、フロントサブフレーム16の上部16aに取り付けられたステアリングギヤボックス18とを備える。
【0024】
また、車体前部構造10は、フロントサブフレーム16の左端部に左フロントサスペンション13の左ロアアーム21が取り付けられ、フロントサブフレーム16の右端部に右フロントサスペンション14の右ロアアーム22が取り付けられ、フロントサブフレーム16の前方に動力源23が設けられている。
【0025】
左フロントサスペンション13のナックルにハブ(図示せず)を介して左前輪25が取り付けられている。
右フロントサスペンション14のナックル27(図2参照)にハブを介して右前輪26が取り付けられている。
【0026】
動力源23は、エンジン28とトランスミッション29とが一体に形成され、左右のサイドフレーム11,12間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
この動力源23は、左取付ブラケット31を介して左サイドフレーム11に取り付けられ、右取付ブラケット32を介して右サイドフレーム12に取り付けられ、支持ロッド(支持部材)33を介してフロントサブフレーム16に連結されている。
【0027】
図2は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図3は本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
フロントサブフレーム16は、平面視で略矩形状に形成され、左端部に左前取付部(左サイドフレーム11に取り付けられる部位)36および左後取付部37,47が設けられるとともに、右端部に右前取付部(右サイドフレーム12に取り付けられる部位)38および右後取付部39,49が設けられ、左前取付部36の近傍に左アーム取付部(左ロアアームの取付部位)41が設けられ、右前取付部38の近傍に右アーム取付部(右ロアアームの取付部位)42が設けられ、上部16aに3個の支え部位44〜46が左右略対称に設けられるとともに連結部48が設けられている。
【0028】
左前取付部36は、車体左側に向けて上り勾配で延出され、左後取付部37は車体左側に向けて延出されている。
左前取付部36および左後取付部37がボルト51,51で左サイドフレーム11にそれぞれ取り付けられている。
【0029】
右前取付部38は、車体右側に向けて上り勾配で延出され、右後取付部39は車体左側に向けて延出されている。
右前取付部38および右後取付部39がボルト52,52で右サイドフレーム12にそれぞれ取り付けられている。
これにより、フロントサブフレーム16は、左右のサイドフレーム11,12の下側に取り付けられている。
【0030】
左前取付部36の車体前方側の近傍に左アーム取付部41が設けられている。
左アーム取付部41に、図1に示す左フロントサスペンション13の一部を構成する左ロアアーム21の基部21aがボルト53で上下方向に回動自在に取り付けられている。
左ロアアーム21の先端部に左ナックル(図示せず)が回動自在に設けられている。この左ナックルにハブを介して左前輪25(図1参照)が取り付けられている。
【0031】
右前取付部38の車体前方側の近傍に右アーム取付部42が設けられている。
右アーム取付部42に、図1に示す右フロントサスペンション14の一部を構成する右ロアアーム22の基部22aがボルト54で上下方向に回動自在に取り付けられている。
右ロアアーム22の先端部22bに右ナックル27が回動自在に設けられている。この右ナックル27にハブを介して右前輪26(図1参照)が取り付けられている。
【0032】
このように、フロントサブフレーム16の左アーム取付部41に左ロアアーム21が取り付けられるとともに、右アーム取付部42に右ロアアーム22が取り付けられている。
この構成によれば、例えば、車両の走行中において、左右の前輪25,26を制動させた際に、左右のロアアーム21,22を経てフロントサブフレーム16に車体幅方向への荷重がそれぞれ作用する。
【0033】
ここで、前述したように、左前取付部36の車体前方側の近傍に左アーム取付部41が設けられるとともに、右前取付部38の車体前方側の近傍に右アーム取付部42が設けられている。
よって、左右のアーム取付部41,42を左右のサイドフレーム11,12で補強することができ、左右のアーム取付部41,42の剛性を確保することができる。
【0034】
フロントサブフレーム16の上部16aには、3個の支え部位44〜46として、左右の支え部位44,45よび中央支え部位46が左右略対称となるように設けられている。
左支え部位44は、左前取付部36および左アーム取付部41の近傍に隆起状に設けられ、中央に取付孔44aが形成され、裏面側に取付孔44aと同軸上にナット(図示せず)が溶接されている。
左支え部位44は、ステアリングギヤボックス18のケースを構成するボックス本体19の前方に設けられている。
【0035】
右支え部位45は、左支え部位44と左右対称の位置に配置された部位である。
この右支え部位45は、右前取付部38および右アーム取付部42の近傍に隆起状に設けられ、中央に取付孔45aが形成され、裏面側に取付孔45aと同軸上にナット(図示せず)が溶接されている。
右支え部位45は、左支え部位44と同様に、ステアリングギヤボックス18のケースを構成するボックス本体19の前方に設けられている。
【0036】
中央支え部位46は、略車体中央に設けられ、中央に取付孔46aが形成され、裏面側に取付孔46aと同軸上にナット(図示せず)が溶接されている。
中央支え部位46は、ステアリングギヤボックス18のケースを構成するボックス本体19の後方に設けられている。
【0037】
左右の支え部位44,45および中央支え部位46にステアリングギヤボックス18が取り付けられている。
ステアリングギヤボックス18は、図2に示すステアリングギヤ17などを収容するボックス本体19と、ボックス本体19の左端部19aから車体前方に向けて張り出された左取付片56と、ボックス本体19の右端部19bから車体前方に向けて張り出された右取付片57と、ボックス本体19の中央部19cから車体後方に向けて張り出された中央取付片58とを備えている。
ボックス本体19は円筒状のケースである。
【0038】
左取付片56の取付孔に、筒状のブッシュ56aが嵌入されている。
筒状のブッシュ56aおよび左支え部位44の取付孔44aにボルト61が差し込まれ、差し込まれたボルト61が左支え部位44のナット(図示せず)にねじ結合されている。
【0039】
また、右取付片57の取付孔に、筒状のブッシュ57aが嵌入されている。
筒状のブッシュ57aおよび右支え部位45の取付孔45aにボルト62が差し込まれ、差し込まれたボルト62が右支え部位45のナット(図示せず)にねじ結合されている。
【0040】
さらに、中央取付片58の取付孔に、筒状のブッシュ58aが嵌入されている。
筒状のブッシュ58aおよび中央支え部位46の取付孔46aにボルト63が差し込まれ、差し込まれたボルト63が中央支え部位46のナット(図示せず)にねじ結合されている。
【0041】
これにより、フロントサブフレーム16の上部16aにステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)が、ブッシュ56a,57a,58aを介して車体幅方向を向けて取り付けられている。
【0042】
ステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)から延出されたステアリングシャフト66にステアリングホイール67が取り付けられている。
ステアリングホイール67を回転することにより左右のタイロッド68,69が車幅方向に移動する。左右のタイロッド68,69を車幅方向に移動することで、左右のナックル27(右ナックルのみを図示する)が回動して左右の前輪25,26(図1参照)の向きを変える。
【0043】
以上説明したように、左右の支え部位44,45および中央支え部位46を略左右対称に設け、これらの支え部位44〜46にステアリングギヤボックス18を取り付けた。
よって、例えば、左右の前輪25,26を制動させた際に、左右のロアアーム21,22を経てフロントサブフレーム16に作用するそれぞれの荷重を、ステアリングギヤボックス18で均等に支えることができる。
【0044】
よって、左右のフロントサスペンション13,14から左右のタイロッド68,69に荷重が作用した際に、左右のタイロッド68,69の移動量を同じに抑えることができる。
これにより、制動荷重による左右の車輪のトー角変化のばらつきを抑制することができる。
【0045】
さらに、左右のロアアーム21,22からフロントサブフレーム16に作用する荷重をステアリングギヤボックス18で均等に支えることで、ステアリングギヤボックス18を補強部材として兼用することができる。
したがって、補強部材としてクロスメンバーを個別に設ける必要がないので、部品点数を増やすことなくフロントサブフレーム16の剛性を確保することができる。
【0046】
フロントサブフレーム16の上部16aで、かつ、中央支え部位46の車体前方側に連結部48が設けられている。
連結部48は、中央支え部位46の車体前方側に上取付ブラケット71が設けられ、上取付ブラケット71と上部16aとの間に収容空間72が形成され、上取付ブラケット71および上部16aに取付孔71a,16bがそれぞれ同軸上に形成され、上部16aの裏面側に取付孔16bと同軸上にナット(図示せず)が溶接されている。
すなわち、連結部48は、中央支え部位46の車体前方側に設けられている。
【0047】
この連結部48に、動力源23を支える支持ロッド33の後端部33aが取り付けられている。
すなわち、上取付ブラケット71の取付孔71a、後端部33aの取付孔73および上部16aの取付孔16bにボルト75が差し込まれ、このボルト75がナット(図示せず)にねじ結合されている。
【0048】
これにより、連結部48の収納空間72に支持ロッド33の後端部33aが収容された状態で、後端部33aが連結部48に取り付けられている。
この支持ロッド33は、前端部33bが取付ブラケット77を介して動力源23に取り付けられている。
よって、動力源23を支持ロッド33を介してフロントサブフレーム16の前部16c中央で支えることができる。
【0049】
ここで、前述したように、連結部48は中央支え部位46の車体前方に設けられている。よって、フロントサブフレーム16の前部16c中央に伝わった荷重は、中央支え部位46に伝えられ、ステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)で効率よく支えることができる。
【0050】
つぎに、車体前部構造10のフロントサブフレームに伝わった荷重を支える例を図4に基づいて説明する。
図4(a),(b)は本発明に係るフロントサブフレームに伝わった荷重をステアリングギヤボックスで支える例を説明する図である。
(a)において、左右の前輪25,26(図1参照)を制動させた際に、左ロアアーム21を経てフロントサブフレーム16の左アーム取付部41に荷重F1が作用するとともに、右ロアアーム22を経てフロントサブフレーム16の右アーム取付部42に荷重F1が作用する。
【0051】
左アーム取付部41を左前取付部36の車体前方側の近傍に設けることで、左アーム取付部41が左サイドフレーム11(図2参照)で補強されている。
これにより、左アーム取付部41に作用した荷重(反力)F1を矢印Aの如く伝えることができる。
矢印Aの如く伝わった荷重(反力)の一部が、左支え部位44を経てステアリングギヤボックス18に伝わり、伝わった荷重(反力)をステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)で支える。
【0052】
同様に、右アーム取付部42を右前取付部38の車体前方側の近傍に設けることで、右アーム取付部42が右サイドフレーム12で補強されている。
これにより、右アーム取付部42に作用した荷重(反力)F1を矢印Bの如く伝えることができる。
矢印Bの如く伝わった荷重(反力)の一部が、右支え部位45を経てステアリングギヤボックス18に伝わり、伝わった荷重(反力)をステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)で支える。
【0053】
ここで、ステアリングギヤボックス18は、左右の支え部位44,45および中央支え部位46に取り付けられている。そして、左右の支え部位44,45および中央支え部位46は、略左右対称に設けられている。
よって、左右のロアアーム21,22を経てフロントサブフレーム16に作用する荷重(反力)F1の一部を、ステアリングギヤボックス18の左右の端部19a,19bからそれぞれ均等に伝えることができる。
【0054】
これにより、左右のフロントサスペンション13,14から左右のタイロッド68,69に荷重F1が作用した際に、左右のタイロッド68,69の移動量を同じに抑えることができる。
したがって、制動荷重による左右の車輪25,26(図1参照)のトー角変化のばらつきを抑制することができる。
【0055】
さらに、左右のロアアーム21,22を経てフロントサブフレーム16に作用する荷重(反力)F1の一部を左右の端部19a,19bから均等に伝え、伝わった荷重(反力)をステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)で支えることができる。
【0056】
これにより、ステアリングギヤボックス18(ボックス本体19)を補強部材として兼用することができる。
したがって、補強部材としてクロスメンバーを個別に設ける必要がないので、部品点数を増やすことなくフロントサブフレーム16の剛性を確保することができる。
【0057】
(b)において、車体前方から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、衝撃荷重の一部が動力源23を経て支持ロッド33に荷重F2として伝わる。
支持ロッド33に伝わった荷重F2は、連結部48を経てフロントサブフレーム16の前部16c中央に伝わる。
【0058】
ここで、連結部48は中央支え部位46の車体前方に設けられている。よって、フロントサブフレーム16の前部16c中央に伝わった荷重は、中央支え部位46に伝えられる。
中央支え部位46はステアリングギヤボックス18を取り付ける部位である。よって、連結部48を経てフロントサブフレーム16の前部16c中央に伝わった荷重を、ステアリングギヤボックス18で効率よく支えることができる。
これにより、フロントサブフレーム16の剛性を確保することができる。
【0059】
なお、前記実施の形態で説明したフロントサブフレーム16、ステアリングギヤボックス18、左右のロアアーム21,22、支持ロッド33、左右の支え部位44,45および中央支え部位46などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【0060】
また、前記実施の形態では、少なくとも3個の支え部材として支え部位44〜46を例示したが、支え部材は3個に限らないで、例えば4個用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、左右のサイドフレームの下方に備えたフロントサブフレームにステアリングギヤボックスが設けられた車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係るフロントサブフレームに伝わった荷重をステアリングギヤボックスで支える例を説明する図である。
【符号の説明】
【0063】
10…車体前部構造、11…左サイドフレーム、12…右サイドフレーム、13…左フロントサスペンション、14…右フロントサスペンション、16…フロントサブフレーム、18…ステアリングギヤボックス、17…ステアリングギヤ、19…ボックス本体(ステアリングギヤボックスの本体)、21…左ロアアーム、22…右ロアアーム、23…動力源、33…支持ロッド(支持部材)、36…左前取付部(左サイドフレーム11に取り付けられる部位)、38…右前取付部(右サイドフレーム12に取り付けられる部位)、41…左アーム取付部(左ロアアームの取付部位)、42…右アーム取付部(右ロアアームの取付部位)、44…左支え部位(支え部位)、45…右支え部位(支え部位)、46…中央支え部位(支え部位)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームの下方にフロントサブフレームが取り付けられた車体前部構造であって、
前記フロントサブフレームにステアリングギヤボックスが車体幅方向を向けて取り付けられ
前記フロントサブフレームに、前記ステアリングギヤボックスを取り付ける少なくとも3つの支え部位を左右略対称に設け、
前記支え部位は左、右、中央の支え部位からなり、左右の支え部位が中央の支え部位に対して左右対称であり、
前記フロントサブフレームに、フロントサスペンション用の左右のロアアームの取付部位と、前記左右のサイドフレームに取り付けられる左右の取付部位とが設けられ、
前記左右のロアアームの取付部位が、前記左右のサイドフレームに取り付けられる取付部の前方かつ近傍にそれぞれ設けられ、
前記左右の支え部位が、前記左右のロアアームの取付部位の近傍にそれぞれ隆起状に形成されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右の支え部位が前記ステアリングギヤボックスの本体の前方に配置され、
前記中央の支え部位が前記ステアリングギヤボックスの本体の後方に配置されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記中央の支え部位は車体幅方向で略中央に設けられ、
前記フロントサブフレームは、前記中央の支え部位の前方において、動力源を支える支持部材が取り付けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ステアリングギヤボックスが前記少なくとも3つの支え部位にブッシュを介して取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−62057(P2012−62057A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284914(P2011−284914)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2007−270699(P2007−270699)の分割
【原出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】