説明

車室内トリム

【課題】部品の製造工程を簡略化することができるとともに、車両の組み立て工程への運搬及び車室内に対する組み付けを容易に行うことができる車室内トリムを提供する。
【解決手段】上部材12と、その上部材12に上端部において取り付けられ、上部材12より柔軟性を有する下部材13とを備える。上部材12には突起17を設けるとともに、下部材13にはその突起17に嵌合される孔18A,18Bを設ける。突起17の外周には、孔18A,18Bを突起17に対する嵌合位置に向かって案内するための案内部を設ける。突起17の両側には、孔18A,18Bが突起17に嵌合された状態を保持するための押さえ部20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両におけるデッキサイドトリムやドアトリム等の車室内トリムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車室内トリムとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、トリムアッパーと、そのトリムアッパーに上端部において装着されるトリムロアとにより、車室内トリムとしてのドアトリムが構成されている。トリムアッパーには複数の接合ボスが突設されるとともに、トリムロアには接合ボスに対応する複数の接合孔及び長孔が形成されている。そして、トリムアッパーの各接合ボスをトリムロアの各接合孔及び長孔に挿入した状態で、接合ボスの先端部を超音波によって溶着するにより、トリムアッパーとトリムロアとが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−269415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来構成においては、トリムアッパーとトリムロアとの組み付けのために溶着工程が必要になって、製造工程が煩雑になるという問題があった。
また、溶着工程が必要なために、車体に対するドアトリムの組み付け現場でトリムアッパーとトリムロアとを組み付けることは困難である。このため、通常は車体に対するドアトリムの組み付け工程とは異なる工程でトリムアッパーとトリムロアとが組付けられていた。従って、トリムアッパーとトリムロアとが組み付けられたドアトリムを車両の組み立て工程まで運搬する必要がある。しかし、このようなドアトリムは大きく、しかも、いわゆる荷姿が悪く、取り扱いにくい形状であるため、運搬にも手間がかかるものであった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、部品の製造工程を簡略化することができるとともに、車両の組み立て工程への運搬及び車室内に対する組み付けを容易に行うことができる車室内トリムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、車室内の側壁に固定される上部材と、その上部材に上端部において取り付けられる下部材とを備えた車室内トリムにおいて、前記上部材には突起を設けるとともに、下部材にはその突起に嵌合される孔を設け、前記突起の外周下部には前記孔の部分を突起に対する嵌合位置に向かって案内するための案内部を設け、突起の少なくとも左右一側には孔が突起に嵌合された状態を保持するための保持手段を設けたことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の車室内トリムでは、部品の製造工程において上部材と下部材とを組み付ける工程を省略することができて、製造工程を簡略化することができる。また、上部材及び下部材を組み付け状態ではなく単独の独立状態で、部品の製造工程から車両の組み立て工程に運搬して車室内に組み付けることができるため、その運搬及び組み付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
前記の構成において、前記下部材は上部材より柔軟性を有することが好ましい。
前記の構成において、前記保持手段は、前記上部材に設けられ、下部材を突起の先端側から押さえる押さえ部であることが好ましい。
【0009】
前記の構成において、前記保持手段を突起の前後両側に設けることが好ましい。
前記の構成において、前記突起及び孔をそれぞれ複数設け、少なくとも一つの孔を、下部材の車両前後方向の位置決め可能な形状に形成するとともに、他の孔を突起に遊嵌される形状にするとよい。
【0010】
前記の構成において、前記上部材には、下部材の車幅方向の位置決めをするための位置決め手段を設けるとよい。
前記の構成において、前記位置決め手段は、前記上部材と保持手段とによって形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、部品の製造工程を簡略化することができるとともに、車両の組み立て工程への運搬及び車室内に対する組み付けを容易に行うことができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明をデッキサイドトリムに具体化した一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図1の4−4線における部分拡大断面図。
【図5】図4の5−5線における部分拡大断面図。
【図6】図5の部分とは異なった部分の突起と孔との嵌合構成を示す部分断面図。
【図7】図1の7−7線における部分拡大断面図。
【図8】上部材に対する下部材の組み付け方法を説明する部分断面図。
【図9】デッキサイドトリムを組み付けたラゲージを示す斜視図。
【図10】(a)(b)はそれぞれ変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明の車室内トリムをデッキサイドトリムに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図9に示すように、車室内トリムとしてのデッキサイドトリム(以下、単にトリムという)11は、ラゲージRのデッキの両側に取り付けられている。トリム11は、上部材12と、その上部材12に上端部において取り付けられた下部材13とより構成されている。上部材12は、硬質合成樹脂よりなる剛体により断面ほぼ逆L字状をなすように形成されている。下部材13は、上部材12より柔軟性を有する軟質合成樹脂によって構成され、車体のボディパネル15の内側面に適合する形状となるように形成されている。下部材13の表面には、植毛によりカーペットの表面様の表皮層13aが設けられている。下部材13の下端縁には、ラゲージRのデッキボードBを載置するための段差状載置部13bが形成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、前記上部材12の縦壁12aの両端内面には、取付部14が突出形成されている。そして、上部材12を車両の前後方向に延びるように配置した状態で、両取付部14の挿通孔14aから車体のボディパネル15の挿通孔15aにクリップ16を挿通することにより、上部材12がラゲージRの側壁に固定される。
【0015】
図3及び図4に示すように、前記上部材12の縦壁12aの内面には、複数の円筒状の突起17が前後方向に間隔をおいて形成されている。下部材13の上端部には、突起17に嵌合される複数の孔18A,18Bが形成されている。下部材13の一端側(例えば、後端側)に設けられた孔18Aは、図6に示すように、突起17の外径とほぼ同幅の縦長の長孔状に形成されている。他の孔18Bは、図5に示すように、突起17の外径よりも大径の円形状に形成されている。従って、一端側の孔18Aが突起17に嵌合されることにより、下部材13が前後方向において位置決めされる。この状態において、他の孔18Bは別の突起17に遊嵌される。そして、孔18A,18Bが突起17に嵌合された状態で、孔18A,18Bの上縁部が突起17に当接されることにより、上部材12に対する下部材13の上下方向の取付位置が決められる。
【0016】
図4及び図5に示すように、前記上部材12の縦壁12aの内面において突起17の外周下部には、傾斜案内面19aを有する三角リブ状の案内部19が一体形成されている。そして、図8に示すように、下部材13が上部材12に対して下方から組み付けられるとき、下部材13の上端部が案内部19の傾斜案内面19aに係合することにより弾性変形されて、孔18A,18Bの部分が突起17に対する嵌合位置に向かって案内誘導される。
【0017】
図3及び図7に示すように、前記上部材12の横壁12bの内面において各突起17の前後両側位置には、保持手段を構成する保持部材としての各一対の押さえ部20が垂下形成されている。この押さえ部20は押さえ面20aを有する断面ほぼT字状に形成され、上部材12の縦壁12aの内面から所定の間隔をおいて配置されている。押さえ部20の下端には、下部材13が上部材12に対して下方から組み付けられる際に、下部材13の上端部を押さえ部20の押さえ面20aとの当接位置に向かって案内するための案内傾斜面20bが形成されている。そして、突起17に孔18A,18B嵌合された状態で、下部材13の上端部の側面が押さえ部20の押さえ面20aに当接することにより、下部材13が突起17の先端側から上部材12の縦壁12a側に押さえられて、孔18A,18Bが突起17に対する嵌合状態に保持される。この嵌合状態において、下部材13は上部材12の下端縁12cと前記押さえ部20の押さえ面20aとの間に挟持されて、車幅方向の位置決めがなされる。従って、上部材12と押さえ部20とにより位置決め手段が構成されている。
【0018】
次に、前記のように構成されたデッキサイドトリムの組み付け方法及び作用について説明する。
このデッキサイドトリム11においては、部品の製造工程で上部材12と下部材13とが別々に成形されて、それらが組み付けられることなく車両の組み立て工程に運搬される。このため、両部材12,13の製造工程から車両の組み立て工程への部品の運搬時に、両部材12,13が嵩張ることはなく、従って、運搬作業が煩雑になることはない。
【0019】
また、車両の組み立て工程では、図2に示すように、上部材12が車両のデッキサイドに前後方向へ延長配置され、この状態で車両のボディパネル15の挿通孔15aにクリップ16が挿通されることにより、上部材12が車両のデッキ側方位置に固定される。続いて、図8に示すように、下部材13が上部材12の縦壁12aの内側に下方から組み付けされる。すなわち、下部材13の上端部が上部材12と押さえ部20との間に下方から挿入される。このため、下部材13の上端部が案内部19の傾斜案内面19aに係合して、同図に鎖線で示すように突起17の先端部側の方向に弾性変形され、下部材13の孔18A,18Bの部分が突起17に対する嵌合位置に向かって案内誘導される。そして、孔18A,18Bが突起17と対応したとき、下部材13の上端部が弾性変形状態から復元されて、孔18A,18Bが突起17に嵌合される。
【0020】
この場合、図5及び図6に示すように、孔18A,18Bの上縁部が突起17に当接されることによって、上部材12に対する下部材13の上下方向の取付位置が規制される。また、長孔状の孔18Aが突起17に嵌合されることによって、上部材12に対する下部材13の車両前後方向の取付位置が規制される。さらに、下部材13の上端部が上部材12の下端縁12cと押さえ部20の押さえ面20aとの間に挟持されることにより、車両幅方向における位置決めがなされる。従って、図3及び図7に示すように、突起17に対する孔18A,18Bの嵌合位置の両側において、下部材13の上端部が押さえ部20の押さえ面20aに当接される。この当接により、下部材13が突起17の先端側から上部材12の縦壁12a側に押さえられて、孔18A,18Bが突起17に対する嵌合状態に保持され、下部材13の上部材12からの脱落が防止される。
【0021】
その後、下部材13の下部側が図示しないクリップによりボディパネル15に固定される。
このように、車両の組み立て工程においては、上部材12をボディパネル15に固定した後、下部材13を上部材12に対して下方から挿入組み付けすれば、下部材13の孔18A,18Bが上部材12の突起17に嵌合して、下部材13が上部材12に取り付けられる。よって、ラゲージRの側壁におけるボディパネル15に対するデッキサイドトリム11の組み付けを、溶着工程を経ることなく簡単に行うことができる。
【0022】
この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このデッキサイドトリム11においては、上部材12に突起17が設けられるとともに、下部材13には突起17に嵌合される孔18A,18Bが設けられている。突起17の外周には孔18A,18Bの部分を突起17に対する嵌合位置に向かって案内するための案内部19が設けられている。そして、突起17の両側には孔18A,18Bが突起17に嵌合された状態を保持するための保持部材が設けられている。よって、上部材12と下部材13とを溶着を採用することなく、下部材13を上方へ移動させることによって簡単に組み付けできて、製造工程を簡略化することができる。
【0023】
(2) このデッキサイドトリム11においては、上部材12及び下部材13を組み付け状態でなくそれぞれ独立状態で、上部材12及び下部材13の製造工程から車両の組み立て工程に運搬して車室内に組み付けることができる。このため、その運搬を簡単に行うことができる。
【0024】
(3) このデッキサイドトリム11においては、下部材13を上部材12に保持する構成が、上部材12に設けられ、下部材13を突起17の先端側から押さえる押さえ部20より構成されている。このため、押さえ部20の押さえ作用により、孔18A,18Bが突起17に嵌合された状態を有効に保持することができ、下部材13を脱落することなく所要位置に組み付けることができる。
【0025】
(4) このデッキサイドトリム11においては、下部材13の縦長の孔18Aの形状によって下部材13の前後方向の位置を決めることができる。また、下部材13の孔18A、18Bを突起17に係合させることにより、下部材13の上下方向の位置を決めことができる。さらに、下部材13の上端部を上部材12の下端縁12cと押さえ部20の押さえ面20aとの間に挟持することにより、下部材13の車幅方向の位置を決めることができる。以上のように、突起17、孔18A,18B及び押さえ部20の一部を利用することにより、下部材13の三方向の位置を決めることができるため、位置決めのための専用部品が不要になり、構成が簡単になる。
【0026】
(5) このデッキサイドトリム11においては、下部材13が柔軟性を有する材料によって構成されている。このため、突起17とその両側の押さえ部20との間において下部材13を容易に変形させることができて、上部材12に対する下部材13の組み付けを容易に行なうことができる。
【0027】
(6) このデッキサイドトリム11においては、突起17の両側に押さえ部20が配置されているため、下部材13の孔18A,18Bが突起17の嵌合された状態では、孔18A,18Bが突起17から外れにくい。従って、下部材13の自然脱落を防止することが可能になる。
【0028】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態において、突起17を2つにするとともに、孔18A,18Bをそれぞれ1つにすること。
【0029】
・ 前記実施形態では、突起17の外形と同じ幅の長孔状の孔18Aを上部材12の前端側に設けたが、後端側に設けること。
・ 前記実施形態のデッキサイドトリムとは異なったドアトリム等の他の車室内トリムに本発明を具体化すること。
【0030】
・ 突起17の形状を、例えば図10(a)(b)に示す形状に変更すること。図10(a)は、突起17がほぼ断面三角形状、10(b)は突起17がフック形状に形成されている。
【0031】
・ 前記実施形態では、押さえ部20を突起17の両側に合計一対設けたが、一側のみに一つ設けること。このようにしても、下部材13の上端部を突起17から脱落しないように押さえることができる。
【符号の説明】
【0032】
11…車室内トリムとしてのデッキサイドトリム、12…上部材、13…下部材、14…取付部、15…ボディパネル、16…クリップ、17…突起、18A,18B…孔、19…案内部、20…保持手段を構成する保持部材としての押さえ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の側壁に固定される上部材と、その上部材に上端部において取り付けられる下部材とを備えた車室内トリムにおいて、
前記上部材には突起を設けるとともに、下部材にはその突起に嵌合される孔を設け、前記突起の外周下部には前記孔の部分を突起に対する嵌合位置に向かって案内するための案内部を設け、突起の少なくとも左右一側には孔が突起に嵌合された状態を保持するための保持手段を設けたことを特徴とする車室内トリム。
【請求項2】
前記下部材は上部材より柔軟性を有することを特徴とする請求項1に記載の車室内トリム。
【請求項3】
前記保持手段は、前記上部材に設けられ、下部材を突起の先端側から押さえる押さえ部であることを特徴とする請求項1または2に記載の車室内トリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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