説明

車止め

【課題】所定以上のスピードで車両が衝突した場合であっても車両の進入を防止できる車止めを提供する。
【解決手段】円板状に形成された台座部2と、台座部2の中心部から立設する柱状になされた金属製のポール部3とを備えた車止めであって、台座部2が地中に埋め込まれ、ポール部3が地面から地上に突出して設置され、ポール部3に車両Vが衝突してポール部3が所定以上の荷重を受けると、台座部2の外周縁部Oを支点に回転して、台座部2が車両の底面部51に当接して車両Vを押し上げるようになされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車止めに関し、例えば、駐車場、公園、街路などに設置されて車両の進入を防止する車止めに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から公園等の施設の入口や店舗(コンビニエンスストア、ファミリレストラン等)に隣接した駐車場等に、車止めを設置して、施設や店舗への車両の進入を防止することが行われている。例えば、特許文献1には、図7に示す車止めの構造が開示されている。
【0003】
図示するように、車止め100は、地面GLの上に載置された台座101と、台座101の上面に立設した中空円筒状の支柱外皮102と、支柱外皮102の筒内に充填発泡された発泡体103と、支柱外皮102の上端を塞ぐキャップ104と、地面GLに台座101を固定する鍔付ボルト105とを備えている。
また、上記の車止め100は、支柱外皮102が弾性樹脂材(ポリウレタン)及び強度樹脂材(ABS)を混合させた複合材により形成されており、車両の衝突などの外力を受けると屈曲してその衝撃を吸収緩和するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−70464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術の車止めは、車両が衝突するとポール(図7に示す、発砲体103が充填された支柱外皮102)が屈曲するようになされているため、所定以上のスピードで車両が衝突した場合に、その屈曲したポールを車両が乗り越えてしまうことがあった。また、従来技術の車止めは、樹脂の混合材で形成されているため、所定以上のスピードで車両が衝突した場合に破損して、車両を進入させてしまうことがあった。
即ち、従来技術の車止めは、車両の進入を防止できないことがあるという技術的課題を有している。尚、車止めを乗り越えて車両が施設や店舗に突入すると、人的被害等の二次災害が発生することがあるため、より確実に車両の進入を防止する車止めが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、所定以上のスピードで車両が衝突した場合であっても車両の進入を防止できる車止めを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる車止めは、円板状に形成された台座部と、前記台座部の中心部から立設する柱状になされた金属製のポール部とを備えた車止めであって、前記台座部が地中に埋め込まれ、前記ポール部が地面から地上に突出して設置され、前記ポール部に車両が衝突して前記ポール部が所定以上の荷重を受けると、前記台座部の外周縁部を支点に回転して、前記台座部が車両の底部に当接して前記車両を押し上げるようになされることを特徴としている。
【0008】
このように、本発明にかかる車止めによれば、車止めに車両が所定以上のスピードで突入して、ポール部に衝突した場合(ポール部に所定以上の荷重が与えられた場合)であっても、前記台座部が外周縁部を支点に回転して、前記台座部が車両の底部に当接して前記車両を押し上げるため、車両の進入を防止することができる。
したがって、本発明にかかる車止めによれば、ブレーキとアクセルの踏み間違えなどの誤操作等により、車止めに、車両が突進した場合であっても、車両の進入を防止することができる。
【0009】
特に、台座部が円板状に形成され、この台座部の中心部に金属製のポール部が設けられているため、車両がポール部に対してあらゆる方向から衝突した場合(ポール部にあらゆる方向から所定以上の荷重が与えられた場合)であっても、前記台座部は外周縁部を支点に回転し、前記台座部が車両を押し上げるため、あらゆる方向からの車両の進入を防止することができる。
【0010】
ここで、前記ポール部が、前記台座部の直径と同じ長さ寸法に形成され、前記ポール部の下端側から半分の部位が地中に埋め込まれ、前記ポール部の上端から半分の部位が地面から地上に突出していることが望ましい。
このようにポール部の半分の部位が地中に埋め込まれて設置されるため、所定以上のスピードで車両がポール部に衝突した場合であっても、車止めが横方向に移動することなく、台座部は外周縁部を支点に回転することができる。
【0011】
また、前記台座部は、断面円状あるいは断面矩形状の枠体内に収容され、前記台座部は前記枠体内の収容された砂中に埋め込まれていることが望ましい。
このように台座部が枠体内に収容されているため、所定以上のスピードで車両がポール部に衝突した場合であっても、車止めが横方向に移動することなく、台座部は外周縁部を支点に回転することができる。
また、前記台座部は、断面円状あるいは断面矩形状の枠体内に収容され、前記台座部は前記枠体内の収容された砂中に埋め込まれているため、ポール部に対する衝突力(ポール部に対する荷重)が比較的小さな場合であっても、台座部は外周縁部を支点に回転し、台座部が前記車両を押し上げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定以上のスピードで車両が衝突した場合であっても車両の進入を防止できる車止めを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す側面図及び一部拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態の車両進入防止の動作を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態の設置例を説明するための模式図である。
【図5】本発明の一実施形態の他の設置例を説明するための断面図である。
【図6】図5に示した設置例の平面図である。
【図7】従来技術の車止めの構造を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態にかかる車止めについて、図1乃至図3を用いて説明する。
ここで、図1は本発明の一実施形態を示す分解斜視図、図2は本発明の一実施形態を示す側面図及び一部拡大図、図3は本発明の一実施形態の車両進入防止の動作を説明するための模式図である。
【0015】
図示するように、車止め1は、円板状に形成された金属製の台座部2と、台座部2の中心部に着脱自在に支持され該中心部から立設する柱状になされた金属製のポール部3とを備えている。また、前記台座部2の直径2Lは、ポール部3の長さ寸法2Lと略同寸法に形成されている。
【0016】
更に詳しく説明すると、前記台座部2は、中心部に貫通孔2bが形成された円板状の本体部2aと、前記貫通孔2bに固定された、金属製のポール部3を保持、固定する保持部2cとを備えている。また、前記保持部2cは、両端が貫通した円筒状に形成され、その内筒面にネジ部(ネジ溝及びネジ山)2c1が形成されている。
尚、図示する例は、本体部2a及び保持部2cが別体の部品で形成されている(例えば、本体部2aに保持部2cが溶接により取り付けられている)が、特にこれに限定されるものではない。本体部2a及び保持部2cが一体成形されていてもよい。
【0017】
また、ポール部3は、その下端側に、保持部2cに形成されたネジ(ネジ溝及びネジ山)2c1に螺合するネジ(ネジ溝及びネジ山)3aが形成されている。そして、図2に示すように、台座部2の保持部2cの筒内に、ポール部3の下端を挿通し、且つ保持部2cの筒内のネジ2c1と、ポール部3のネジ3aとを螺合させることにより、車止め1が組み立てられる。
【0018】
前記車止め1は、台座部2とポール部3とが別部品で構成され、設置現場において簡単に組み立てることができるようになされているため、搬送作業の労力が軽減される。
また、前記車止め1は、台座部2とポール部3とが別部品で構成されているため、倉庫等の収納スペースに効率よく保管しておくことができる。
【0019】
そして、車止め1を設置する場合、図2に示すように、台座部2を地中に埋め込み、ポール部3の上端が地面GLから地上に突出させるようにする。
好ましくは、図2に示すように、「台座部2」及び「ポール部3の下端から略半分の部位」を地中に埋め込み、「ポール部21の上端から略半分の部位」が地面GLから地上に突出させるようにする。
尚、ポール部3の長さ寸法及び台座部2の直径寸法について具体的に限定されるものではないが、例えば、ポール部3の長さ寸法及び台座部2の直径寸法が「2m(L=1m)」程度であることが望ましい。
【0020】
上記の構成によれば、直径寸法の大きい台座部2(例えば、2mの直径の台座部2)が地中に埋められて固定されるため、所定以上のスピードで車両がポール部3に衝突した場合であっても、車止めが横方向に移動することなく、台座部は外周縁部を支点に回転することができ、またポール部3の破損も防止できる。
【0021】
また、図3(a)に示すように、前記台座部2が地中に埋め込まれ、前記ポール部3が地面から地上に突出して設置され、ポール部3の上端が車両Vのバンパ50の下端より上方に配置されるような長さ寸法に形成され、車両Vのバンパ50がポール部3に当接するようになっている。
なお、台座部2は、車両Wの底部を上方に押し上げる機能に耐える強度を備えている(台座部2は、所定の厚さ寸法に形成され、前記強度を確保している)。また、ポール部3は車両衝突時に変形、破損しない強度を備えている。
【0022】
次に、車止め1の動作を図3(b)(c)に基づいて説明する。尚、図3(b)(c)では、車両Vが所定以上のスピードで車止め1に向かって進入してきて、車両Vが車止め1のポール部3に衝突して当該ポール部3に所定の荷重が加えられる場合の動作例を示している。
【0023】
具体的には、図3(b)に示すように、地面GLに設置された車止め1に向かって車両Vが移動してくると(停止せずに進入してくると)、車止め1のポール部3に車両Vのバンパ50が衝突する。上記衝突により、ポール部3は、X方向に所定の荷重を受ける。
【0024】
そして、ポール部3がX方向に所定の荷重を受けると、図3(c)に示すように、台座部の外周縁部Oを支点に回転して、台座部2の他縁側A(支点と相対抗する外周縁側)が車両Vの底面部を構成するフロアパネル51に当接して車両Vを上方に押し上げる。
【0025】
これにより、車両Vの前輪が浮き上がり、車両VのX方向への進行が防止される。
尚、車両Vがバックで進入してきた場合においても、車両Vのバンパ(リアバンパ)がポール部3に衝突して、当該ポール部3に所定の荷重がかかると、車止め1は上記と同様の動作をして、車両Vの進入を防止する(この場合、車両Vの後輪が浮き上がった状態になる)。また、車両Vがカーブ等で横滑りを起こした場合においても、車両Vの側面がポール部3に衝突して、当該ポール部3に所定の荷重がかかると、車止め1は上記と同様の動作をして、車両Vの進入を防止する(この場合、車両Vの側面が浮き上がった状態になる)。
【0026】
次に、前記車止め1の設置例について、図4を用いて説明する。
図4に示すように、複数の車止め1を並列に設置する場合、隣接して配置する2つの車止め1の地中に埋め込む深さ(地面GLからの深さ寸法)を変えることにより、台座部2の半径の間隔で、2本のポール部3を配置することができる。例えば、上記のように、台座部2の直径が「2(m)」であれば、隣接するポール部3の間隔を「1(m)」になすことができる。
【0027】
これにより、車両Wが、隣接する車止め1のポール部3の間を通り抜けることができなくなるめ、車両Wの進入を防止することができる。尚、ポール部3の高さ寸法は、本体部2aの保持部2cと、ポール部3のネジ部3aとの螺合位置により調節できるようになっている。そのため、隣接するポール部3の上端の高さ寸法を合わせることができる(同じ高さ寸法になるように設置することができる)。
【0028】
また、前記車止め1の他の設置例について、図5,6を用いて説明する。
図5に示すように、台座部2は断面円状あるいは断面矩形状の枠体4内に収容されている。この枠体4はコンクリートあるいは鉄板等で構成され、台座部2に大きな衝撃力が作用してとしても、台座部の横方向の移動を阻止することができるため、台座部2は外周縁部を支点に回転する。
また、前記台座部2は前記枠体内の収容された砂5の中に埋設されている。このように、台座部2が枠体内の収容された砂5の中に埋設されてため、ポール部3がX方向に比較的小さな荷重を受けた際にも、台座部の外周縁部Oを支点に回転して、台座部2の他縁側A(支点と相対抗する外周縁側)が車両Vの底面部を構成するフロアパネル51に当接して車両Vを上方に押し上げることができる。
【0029】
このように、本発明にあっては、ブレーキとアクセルの踏み間違えなどの誤操作等により、車両Vが車止め1に向かって進入してくるようなケースが発生しても、車止め1が車両Vから受ける衝突荷重を利用して回転し、車両Vの底部を上方に押し上げ、車両Vを浮き上がらせて車両の進入を防止するようにしている。
したがって、例えば、店舗(コンビニエンスストアや居酒屋等)の駐車場に、本発明にかかる車止め1を設置することで、当該店舗に、車両Vが突入する事故の発生を防止することができる。
特に、台座部2が円板状に形成され、この台座部の中心部にポール部3が設けられているため、車両Vがポール部3に対して、あらゆる方向(例えば、図6に示すY1、Y2,Y3,Y4方向)から衝突した場合(ポール部にあらゆる方向から所定以上の荷重が与えられた場合)であっても、前記台座部2は外周縁部を支点に回転し、前記台座部2が車両Vを押し上げるため、あらゆる方向(例えば、図6に示すY1、Y2,Y3,Y4方向)からの車両の進入を防止することができる。
【0030】
上記実施形態にあっては、駐車場、公園、街路などに設置されて車両の進入を防止する車止めを例にとって説明したが、これに限らず、例えばガードレールの支柱に本発明の車止めを適用することができる。即ち、ガードレールの支柱を本発明の車止めとすることにより、崖からの転落事故等を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 車止め
2 台座部
2a 本体部
2b 貫通孔
2c 保持部
2c1 ネジ部
3 ポール部
3a ネジ部
V 車両
50 バンパ(車両)
51 車両の底面部(フロアパネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状に形成された台座部と、
前記台座部の中心部から立設する柱状になされた金属製のポール部とを備えた車止めであって、
前記台座部が地中に埋め込まれ、前記ポール部が地面から地上に突出して設置され、
前記ポール部に車両が衝突して前記ポール部が所定以上の荷重を受けると、前記台座部の外周縁部を支点に回転して、前記台座部が車両の底面部に当接して前記車両を押し上げるようになされることを特徴とする車止め。
【請求項2】
前記ポール部が、前記台座部の直径と同じ長さ寸法に形成され、
前記ポール部の下端側から半分の部位が地中に埋め込まれ、前記ポール部の上端から半分の部位が地面から地上に突出していることを特徴とする請求項1記載の車止め。
【請求項3】
前記台座部は、断面円状あるいは断面矩形状の枠体内に収容され、前記台座部は前記枠体内の収容された砂中に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車止め。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−202040(P2012−202040A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65163(P2011−65163)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【特許番号】特許第4866487号(P4866487)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(509102890)
【Fターム(参考)】