説明

車載アンテナ

【課題】アンテナ素子を搭載する基板の基板用地板と共通地板とを好適に接続することにより、高い垂直利得と高いアイソレーションが得られる車載アンテナを提供する。
【解決手段】車載アンテナ100は、同じ周波数帯で動作する2つのアンテナ素子110、120と無給電素子130とを基板140上に搭載し、基板140の底面に配置された基板用地板150を共通地板10から離して接続部160だけで接続している。接続部160は、2つのアンテナ素子110、120の給電点111、121及び接地点112、122の近傍の2つの設置点162、164に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電話アンテナ等に用いられる車載アンテナに関し、特に他のアンテナと共有する共通地板を用いて良好な特性が得られる車載アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は携帯電話などに用いる電話用アンテナを車両に搭載するために、GPS(Global Positioning System)用アンテナ等と一体化した統合アンテナの開発が進められている(特許文献1)。電話用アンテナでは、良好な受信特性が得られるようにするために、これをダイバーシティ構成としたものが提案されている。ダイバーシティ構成とした車載アンテナの一例を、図19に示す。同図に示す車載アンテナ900では、同じ周波数帯で動作する2つのアンテナ素子901、902が共通地板904の対向する両端辺の近傍に配置されており、これにより高い受信特性が得られる構成としている。2つのアンテナ素子901、902に挟まれた共通地板904の略中央には、GPS用アンテナ905を配置することができる。
【0003】
車載用途の電話用アンテナに用いられるアンテナ素子901、902は、共通地板904上に構成された逆Fアンテナあるいは逆Lアンテナとして構成される。一般に、このようなアンテナは非平衡アンテナと呼ばれ、給電されるアンテナ素子だけでなく、アンテナに搭載されている地板にも電流が流れる。車載アンテナのような小型アンテナでは、アンテナエレメントと地板に流れる電流が一体となってアンテナ動作する。そのため、アンテナエレメントに流れる電流と同様に、地板に流れる電流についても適切に制御する必要がある。
【0004】
携帯電話等の通信には一般に垂直偏波が利用されることから、車載用電話アンテナでも垂直利得を高くすることが望まれる。ダイバーシティ構成の車載アンテナでは、それぞれのアンテナ素子の垂直利得を向上させるとともに、両アンテナ間のアイソレーションを向上させることが要求される。図19に示す車載アンテナ900では、アンテナ特性を向上させるためにアンテナ素子901に略平行に無給電素子903を配設している。車載アンテナ900では、アンテナ素子901が送受信用のアンテナ素子(以下ではTRx用アンテナ素子と称する。)として動作し、アンテナ素子902が受信専用のアンテナ素子(Rx用アンテナ素子と称する。)として動作する。
【0005】
同じ周波数帯で動作するアンテナ素子を少なくとも2つ有するダイバーシティ構成の車載アンテナでは、アンテナ素子間の間隔等を一定に保持するために、製品化段階では予め所定の基板(搭載基板)の上面に搭載して一体化しておくことがある。基板は、その底面に導体板からなる基板用地板を有している。事前に基板上に載置された車載アンテナは、基板と一体に共通地板上に載置されて動作する。基板用地板が共通地板と同じ大きさを有するか、あるいは基板用地板が高周波的に共通地板と一体であるとみなせるときは、車載アンテナの各アンテナ素子は共通地板上に搭載されているときと同じ良好な特性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−066713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板用地板は通常共通地板に比べて小さく、また基板用地板と共通地板との接続の仕方によってそれぞれの電流経路が変化してしまう。そのため、基板用地板と共通地板とが一体であるとみなせるようにするのが難しく、接続の仕方によってアンテナ性能が変化してしまうといった問題がある。基板用地板の全面を隙間なく共通地板に接触させて一体化するのが困難であり、また、たとえ基板用地板の全面を隙間なく共通地板に接触させたとしても、温度等の環境の変化や何らかの原因で応力が加わったりすると、その接触の状態が変わってしまい、アンテナ特性が変化してしまうといった問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、アンテナ素子を搭載する基板の基板用地板と共通地板とを好適に接続することにより、高い垂直利得と高いアイソレーションが得られる車載アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車載アンテナの第1の態様は、所定の周波数帯で動作するアンテナ素子と、前記アンテナ素子を上面に搭載した基板と、前記基板の底面に配置され、少なくとも前記アンテナ素子の給電点および該給電点に接続された給電線路に対応した領域に形成された導体からなる基板用地板と、前記基板用地板より大きな面積を有する導体からなる共通地板と、前記共通地板上に立設されて前記基板を前記共通地板から離して載置するとともに前記共通地板と前記基板用地板とを電気的に接続する接続部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の車載アンテナの他の態様は、前記基板用地板は、前記アンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、前記接続部は、前記アンテナ素子の給電点の近傍と、前記アンテナ素子の開放端の近傍に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の車載アンテナの他の態様は、前記接続部の抵抗値は、1Ω以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の車載アンテナの他の態様は、同じ周波数帯で動作する前記アンテナ素子を2つ備えたダイバーシティアンテナであることを特徴とする。
【0013】
本発明の車載アンテナの他の態様は、前記基板用地板は、前記2つのアンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、前記接続部は、前記2つのアンテナ素子の給電点のいずれか一方の近傍と、前記2つのアンテナ素子のそれぞれの開放端の近傍に1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車載アンテナの他の態様は、前記基板用地板は、前記2つのアンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、前記接続部は、前記2つのアンテナ素子のそれぞれの前記給電点の近傍とそれぞれの前記開放端の近傍に1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車載アンテナの他の態様は、前記基板上面の前記2つのアンテナ素子のいずれか一方の近傍に無給電素子が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンテナ素子を搭載する基板の基板用地板と共通地板とを好適に接続することにより、高い垂直利得と高いアイソレーションが得られる車載アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車載アンテナの平面図、側面図、及び底面図である。
【図2】第1実施形態に係る車載アンテナの斜視図である。
【図3】接続部の好適な設置点を示す車載アンテナの平面図である。
【図4】接続部の設置条件と各条件におけるシミュレーション結果を示す表である。
【図5】第1実施形態の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図6】接続部を有さない車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図7】接続部を1つ有する車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図8】接続部を1つ有する別の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図9】接続部を1つ有するさらに別の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る車載アンテナの平面図及び底面図である。
【図11】第2実施形態の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図12】設置点の移動量を示す表である。
【図13】設置点を移動させたときの車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図14】接続部の抵抗値を変化させたときの車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図15】本発明の第3実施形態に係る車載アンテナの平面図及び底面図である。
【図16】第3実施形態の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図17】本発明の第4実施形態に係る車載アンテナの平面図及び底面図である。
【図18】第4実施形態の車載アンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図19】従来の車載アンテナの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態における車載アンテナについて、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。以下では、車載アンテナとして、アンテナ素子を2つ有するダイバーシティアンテナを例に説明するが、当然ながらアンテナ素子を1つ有する車載アンテナであってもよい。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車載アンテナを図1、2を用いて説明する。図1において、(a)は本実施形態の車載アンテナ100の構成を示す平面図であり、(b)は車載アンテナ100の側面図であり、(c)は車載アンテナ100の底面図である。また、図2は車載アンテナ100の斜視図である。車載アンテナ100は、同じ周波数帯で動作する2つのアンテナ素子110、120と無給電素子130とが基板140の上面に搭載され、基板140の底面には導体からなる基板用地板150が配置されている。ここでは、アンテナ素子110、120を逆Fアンテナとしており、それぞれの給電点111、121及び接地点112、122が基板140上に形成されている。アンテナ素子110、120は、逆Fアンテナに限定されず、例えば逆Lアンテナとしてもよい。
【0020】
図1に示す車載アンテナ100では、アンテナ素子110を送受信用アンテナ素子(以下ではTRx用アンテナ素子と称する。)とし、アンテナ素子120を受信専用のアンテナ素子(Rx用アンテナ素子と称する。)としている。また、TRx用アンテナ素子110の近傍に無給電素子130を配置することで、車載アンテナ100の広帯域化等を図っている。
【0021】
基板140は、TRx用アンテナ素子110と無給電素子130とを搭載する第1台座部141と、Rx用アンテナ素子120を搭載する第2台座部142と、各アンテナ素子の給電点111、121及び接地点112、122を配置する線路部143とを有している。線路部143上には、アンテナ素子110、120のそれぞれの給電点111、121と外部回路に接続されたケーブル21、22とを接続する給電線路113、123が形成されている。また、基板用地板150は、基板140の線路部143の底面のみに形成されており、少なくとも給電点111、121及び給電線路113、123に対応した領域に形成されている。接地点112、122は、それぞれスルーホール112a、122aを介して基板用地板150に接続されている。同様に、無給電素子130の接地点132もスルーホール132aを介して基板用地板150に接続されている。
【0022】
アンテナ素子110、120及び無給電素子130を搭載した基板140は、図1(a)に示すように、導体からなる共通地板10上に配置されて使用される。共通地板10は、基板用地板150に比べて大きな面積を有しており、車載アンテナ100は、大きな面積の共通地板10を利用することで高い垂直利得が得られるようになっている。しかし、基板140の底面には基板用地板150が設けられていることから、基板用地板150をできるだけ共通地板10と一体化させることで、車載アンテナ100は高い垂直利得が得られるようになる。
【0023】
基板140を共通地板10上に載置するとき、基板用地板150が共通地板10と電気的に一体化するように隙間なく直接接触させるのは難しく、また、たとえ基板用地板の全面を隙間なく共通地板に接触させたとしても、温度等の環境の変化や何らかの原因で応力が加わったりすると、アンテナ特性が変化してしまうといった問題が生じる。そこで、本実施形態では共通地板10の上に複数の突起状の接続部160を設け、その上に基板140を載置することで基板用地板150と共通地板10とを電気的に接続する。基板用地板150を共通地板10から離して(浮上させて)両者を接続部160だけで接続するようにすることで、基板用地板150と共通地板10との電気的な接続点が明確に決定されてアンテナ特性を安定させることができる。接続部160は、導電性を有するものであればよく、共通地板10とは別の部材を用いて形成することができ、あるいは共通地板10を変形加工することで形成してもよい。
【0024】
基板用地板150が高周波的に共通地板10と一体であるとみなせるようにするには、接続部160を多数設けて多数の箇所で両者を電気的に接続するのが望ましい。しかし、実際には基板用地板150が共通地板10に比べて小さいために接続部160の個数が制限されたり、GPS等の他の機器の設置のために接続部160の設置点が制限されたりする。これにより接続部160が好ましくない接地点に設置されてしまうと、アンテナ素子110、120の垂直利得及び両者間のアイソレーションが低下してしまうといった問題が生じる。また、接続部160の設置数を増やすと作業コストがかかることから、設置数をできるだけ減らすのが好ましい。
【0025】
そこで、発明者らは接続部160の好適な設置点とその個数の検討を鋭意進めた。その結果、車載アンテナ100を共通地板10上で動作させたときの共通地板10上の電流分布は、接地点112、122の周辺でこれから流出入する電流が分布し、アンテナ素子110、120の先端(開放端)近傍でも電流が分布していることを明らかにした。これより、少なくとも接地点112、122及び給電点111、121の近傍に接続部160を設けるのがよいことがわかった。接地点112、122及び給電点111、121の近傍として、それぞれから略6mmの位置とするのがよい。
【0026】
上記のような知見を基に、発明者らは図3に示すような接続部160の好適な設置点の候補161〜165を選択した。図3は、車載アンテナ100の平面図に接続部160の好適な設置点の候補161〜165を表示したものである。また、接続部160の設置点を候補161〜165から選択し、その時のアンテナ特性をシミュレーション計算により求めた結果を表形式で図4に示す。図4では、候補161〜165から接続部160の設置点を選択する設置条件1〜9を表の上段に示し、各設置条件においてアンテナ特性をシミュレーション計算により求めた結果を表の下段に示す。図4の表では、アンテナ特性として、TRxアンテナ素子110(表中TRxで示す)及びRxアンテナ素子120(表中Rxで示す)のVSWRと利得、及び両アンテナ素子間のアイソレーションのシミュレーション結果を示している。
【0027】
図4に示す表のシミュレーション結果は、基板用地板150が共通地板10に完全に一体化された理想的な条件(以下では最適設置条件とする)でのアンテナ特性の結果を基準に、それからのずれの大きさを算出したものである。すなわち、VSWR及び利得の欄には、そのシミュレーション結果として最適設置条件における値と設置条件1〜9のそれぞれにおける値との偏差を求め、その最大値を表示している。また、アイソレーションの欄には、そのシミュレーション結果として理想的な状態における最悪値とそれぞれの設置条件における最悪値との偏差を示している。但し、いずれも使用帯域内のシミュレーション結果を用いて算出したものである。
【0028】
本実施形態の車載アンテナ100は、図4の表に示す設置条件の中で最適設置条件でのアンテナ特性からの偏差が最も小さい設置条件4を選択したものであり、図1に示すように2つの接続部160を設置点162、164に設けている。2つの設置点162、164は、2つのアンテナ素子110、120の給電点111、121及び接地点112、122の近傍である。
【0029】
本実施形態の車載アンテナ100のアンテナ特性を、最適設置条件でのアンテナ特性と比較したものを図5に示す。図5(a)、(b)は、それぞれTRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120の周波数に対するVSWRの変化、図5(c)、(d)はそれぞれTRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120の周波数に対する利得の変化、図5(e)は周波数に対するTRxアンテナ素子110とRxアンテナ素子120との間のアイソレーションの変化、を示す。また、実線が最適設置条件でのアンテナ特性を示し、破線が車載アンテナ100のアンテナ特性を示している(以下同様)。
【0030】
図5(c)、(d)に示す利得では、垂直成分及び水平成分のシミュレーション結果をそれぞれ符号V及びHで示すとともに、最適設置条件での利得についてはさらに黒塗りの四角及び三角の記号で示している。本実施形態のTRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120はともに、VSWR、利得、及びアイソレーションのいずれもが、最適設置条件におけるシミュレーション結果と非常に近い値を示すことがわかる。
【0031】
本実施形態の車載アンテナ100との比較例として、基板用地板150と共通地板10とを電気的に接続する接続部160を全く設けずに両者を電気的に分離した場合と、接続部160を1つだけ設けて基板用地板150と共通地板10とを電気的に接続した場合について、それぞれのアンテナ特性を以下に説明する。
【0032】
図6は、接続部160を全く設けなかったときのTRxアンテナ素子110の周波数に対する利得の変化(同図(a))、及び周波数に対するTRxアンテナ素子110とRxアンテナ素子120との間のアイソレーションの変化(同図(b))を示している。また、図7〜9は、接続部160を1つだけ設けたときのアンテナ特性を示しており、図5と同様のアンテナ特性を示している。図7〜9はそれぞれ、接続部160を1つ設けた設置条件7〜9おけるアンテナ特性を示している。
【0033】
図6より、接続部160を設けずに基板用地板150と共通地板10とを電気的に分離した場合には、最適設置条件の場合に比べて特にアイソレーションが著しく低下することがわかる。また、利得の垂直成分も、最適設置条件の場合に比べて低周波側で大きく低下している。同様に、接続部160を1つだけ設けた設置条件7〜9のいずれの場合も、利得の垂直成分及びアイソレーションともに最適設置条件の場合に比べて低下することが図7〜9からわかる。
【0034】
上記説明のように、接続部160を全く設けない場合、あるいは接続部160を1つだけ設けた場合、のいずれの場合も好適なアンテナ特性が得られない。本実施形態の車載アンテナ100では、必要最小限の2つの接続部160をそれぞれ設置点162及び164に設置することで、最適設置条件の場合とほぼ同等の高い垂直利得と高いアイソレーションを得ることができる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車載アンテナを、図10及び図3、4を用いて説明する。図10は、本実施形態の車載アンテナ200の構成を示す平面図(同図(a))及び底面図(同図(b))を示す。本実施形態の車載アンテナ200は、図4の表に示す設置条件の中で最適設置条件でのアンテナ特性からの偏差が小さい設置条件1を選択したものであり、第1実施形態で設置点162、164に設置した2つの接続部160に加えて、さらに図3に示す2つの設置点161、165にそれぞれ接続部160を設置している。
【0036】
追加された2つの接続部160を設置する設置点161、165は、2つのアンテナ110、120のそれぞれの先端(開放端)の近傍である。車載アンテナを共通地板10上で動作させたとき、共通地板10上の電流は接地点112、122の周辺に加えてアンテナ素子110、120の先端近傍にも分布している。そこで、本実施形態では2つのアンテナ110、120の先端にも接続部160を設置するようにしたものである。基板用地板250を基板140の第1台座部141及び第2台座部142の底面にも配置している場合には,2つの接続部160を設置点161、165にも設置するのが望ましい。本実施形態の車載アンテナ200では、基板用地板250が基板140の底面のほぼ全面に配置されている。
【0037】
本実施形態の車載アンテナ200のアンテナ特性を図11に示す。図11では、図5と同様のアンテナ特性を示している。図11に示すように、本実施形態の車載アンテナ200でも、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120のVSWR、利得、及びアイソレーションのいずれもが、最適設置条件におけるシミュレーション結果に近い値を示すことがわかる。これより、本実施形態の車載アンテナ200は、4つの接続部160をそれぞれ設置点161、162、164及び165に設置することで、最適設置条件の場合とほぼ同等の高い垂直利得と高いアイソレーションを得ることができる。
【0038】
つぎに、4つの接続部160の設置点161、162、164、165と給電点との距離を変化させたときの影響を以下に検討する。設置点161、162、164、165は、接地点あるいはアンテナ素子の先端にできるだけ近接させて設置するのが好ましいが、ここでは設置点161、162、164、165を好適な位置から所定の距離だけ変化させたときのアンテナ特性への影響を、シミュレーション結果を用いて以下に説明する。ここでは、設置点161、162、164、165の好適な位置からの距離を図12に示す表のようにする。また、各設置点の好適な位置からの距離によるアンテナ特性への影響を図13に示す。
【0039】
図13では、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120の周波数に対するVSWRを同図(a)、(b)にそれぞれ示し、TRxアンテナ素子110とRxアンテナ素子120との間のアイソレーションを同図(c)に示している。VSWRについては、各設置点を変化させないときと5mmまたは10mmだけ変化させたときのシミュレーション結果を重ねて表示している。同図より、設置点161、162、164、165を好適な位置から5mmないしは10mmだけ変化させてもVSWRにほとんど影響しないことがわかる。
【0040】
また、TRxアンテナ素子110とRxアンテナ素子120との間のアイソレーションについては、各設置点を変化させないときと5mmまたは10mmだけ変化させたときのシミュレーション結果を横に並べて表示している。同図より、アイソレーションの変化量はー0.3〜0.1dB程度となっており、設置点161、162、164、165を好適な位置から5mmないしは10mmだけ変化させてもアイソレーションが大きく低下することはない。なお、設置点162、164の好適な位置をアンテナ給電点から略6mmとしている。
【0041】
さらに、接続部160における抵抗が変化したときの影響を以下に説明する。ここでは、接続部160の抵抗値を0.02〜1000Ωの範囲で変化させたときのアンテナ特性への影響を、シミュレーション結果を用いて説明する。接続部160の抵抗値を上記の範囲で変化させたときのアンテナ特性を図14に示す。同図では、横軸を接続部160の抵抗値とし、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120の帯域内最小利得を縦軸に表示したものをそれぞれ(a)、(b)に示し、TRxアンテナ素子110とRxアンテナ素子120との間のアイソレーション(帯域内最悪値S21)を縦軸に表示したものを同図(c)に示している。
【0042】
図14(a)、(b)より、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120とも抵抗値が1Ω以上になると利得が変化する、といった傾向がみられる。また、図14(c)より、抵抗値が10Ω以上になるとアイソレーションが大きく劣化する、といった傾向がみられる。上記の結果から、接続部160の抵抗値は、1Ω以下とするのがよいことがわかる。
【0043】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車載アンテナを、図15及び図3、4を用いて説明する。図15は、本実施形態の車載アンテナ300の構成を示す平面図(同図(a))及び底面図(同図(b))である。本実施形態の車載アンテナ300は、図4の表に示す設置条件の中で最適設置条件でのアンテナ特性からの偏差が小さい設置条件2を選択したものである。車載アンテナ300は、図3に示す3つの設置点161、162、及び165にそれぞれ接続部160を設置している。また、設置点161、165に接続部160を設置するために、本実施形態でも基板用地板250を基板140の第1台座部141及び第2台座部142の底面に配置している。
【0044】
本実施形態では、第1実施形態の車載アンテナ100で接続部160を設置した設置点164に代えて、設置点161と165に接続部160を設置している。仮に他の機器等と干渉して設置点164に接続部160を設置できないときは、本実施形態の車載アンテナ300を用いることができる。
【0045】
本実施形態の車載アンテナ300のアンテナ特性を図16に示す。図16では、図5と同様のアンテナ特性を示している。図16より、本実施形態の車載アンテナ300でも、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120のVSWR、利得、及びアイソレーションのいずれもが、最適設置条件におけるシミュレーション結果に近い値を示すことがわかる。これより、本実施形態の車載アンテナ300は、3つの接続部160をそれぞれ設置点161、162、及び165に設置することで、最適設置条件の場合とほぼ同等の高い垂直利得と高いアイソレーションを得ることができる。
【0046】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車載アンテナを、図17及び図3、4を用いて説明する。図17は、本実施形態の車載アンテナ400の構成を示す平面図(同図(a))及び底面図(同図(b))である。本実施形態の車載アンテナ400は、図4の表に示す設置条件の中で最適設置条件でのアンテナ特性からの偏差が小さい設置条件3を選択したものである。車載アンテナ400は、図3に示す3つの設置点161、164、及び165にそれぞれ接続部160を設置している。また、設置点161、165に接続部160を設置するために、本実施形態でも基板用地板250を基板140の第1台座部141及び第2台座部142の底面に配置している。
【0047】
本実施形態では、第1実施形態の車載アンテナ100で接続部160を設置した設置点162に代えて、設置点161と165に接続部160を設置している。仮に他の機器等と干渉して設置点162に接続部160を設置できないときは、本実施形態の車載アンテナ400を用いることができる。
【0048】
本実施形態の車載アンテナ300のアンテナ特性を図18に示す。図18では、図5と同様のアンテナ特性を示している。図18より、本実施形態の車載アンテナ400でも、TRxアンテナ素子110及びRxアンテナ素子120のVSWR、利得、及びアイソレーションのいずれもが、少なくとも使用周波数帯域では最適設置条件におけるシミュレーション結果に近い値を示すことがわかる。これより、本実施形態の車載アンテナ400は、3つの接続部160をそれぞれ設置点161、164、及び165に設置することで、最適設置条件の場合とほぼ同等の高い垂直利得と高いアイソレーションを得ることができる。
【0049】
上記説明のように、本発明の車載アンテナによれば、基板用地板150と共通地板10とを電気的に接続する接続部160を、アンテナ素子110の給電点111と接地点112の近傍及びアンテナ素子120の給電点121と接地点122の近傍に設けることで、最適設置条件の場合と比較してVSWRの偏差を1以内とし、利得の偏差を1dB以内に抑えることができる。また、アンテナ素子110の給電点111と接地点112の近傍、またはアンテナ素子120の給電点121と接地点122の近傍に接続部160を設け、アンテナ110、120のそれぞれの先端(開放端)の近傍にも接続部160を設けることで、最適設置条件の場合と比較してVSWRの偏差を1以内とし、利得の偏差を1dB以内に抑えることができる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、いずれもダイバーシティアンテナを例に説明したが、これに限定されずアンテナ素子を1つだけ有する車載アンテナであってもよい。本実施の形態における記述は、本発明に係る車載アンテナの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における車載アンテナの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 共通地板
21、22 ケーブル
100、200、300.400 車載アンテナ
110、120 アンテナ素子
111、121 給電点
112、122、132 接地点
113、123 給電線路
130 無給電素子
140 基板
141 第1台座部
142 第2台座部
143 線路部
150、250 基板用地板
160 接続部
161〜165 設置点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯で動作するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子を上面に搭載した基板と、
前記基板の底面に配置され、少なくとも前記アンテナ素子の給電点および該給電点に接続された給電線路に対応した領域に形成された導体からなる基板用地板と、
前記基板用地板より大きな面積を有する導体からなる共通地板と、
前記共通地板上に立設されて前記基板を前記共通地板から離して載置するとともに前記共通地板と前記基板用地板とを電気的に接続する接続部と、を備える
ことを特徴とする車載アンテナ。
【請求項2】
前記基板用地板は、前記アンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、
前記接続部は、前記アンテナ素子の給電点の近傍と、前記アンテナ素子の開放端の近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載アンテナ。
【請求項3】
前記接続部の抵抗値は、1Ω以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載アンテナ。
【請求項4】
同じ周波数帯で動作する前記アンテナ素子を2つ備えたダイバーシティアンテナである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載アンテナ。
【請求項5】
前記基板用地板は、前記2つのアンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、
前記接続部は、前記2つのアンテナ素子の給電点のいずれか一方の近傍と、前記2つのアンテナ素子のそれぞれの開放端の近傍に1つずつ設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の車載アンテナ。
【請求項6】
前記基板用地板は、前記2つのアンテナ素子の開放端と対向する前記基板底面の位置を含む領域まで配置され、
前記接続部は、前記2つのアンテナ素子のそれぞれの前記給電点の近傍とそれぞれの前記開放端の近傍に1つずつ設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の車載アンテナ。
【請求項7】
前記基板上面の前記2つのアンテナ素子のいずれか一方の近傍に無給電素子が搭載されている
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の車載アンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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