説明

車載バッテリーの充電装置

【課題】比較的簡単な構成により、小型化、低コスト化を可能にした車載バッテリーの充電装置を提供する。
【解決手段】車両駆動用のモータ104の電源である車載バッテリー102を充電する充電装置において、充電用外部駆動部120による回転力を、外部駆動軸121及びクラッチ105bを介してモータ104に伝達して発電機動作させ、モータ104から発生する回生電力をインバータ103により直流電力に変換してバッテリー102を充電する。または、充電用外部駆動部120による回転力を、遊星歯車機構122を介してモータ104の駆動軸110aに伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の車両に搭載されたバッテリーを充電する充電装置に関し、詳しくは、電力回生機能を有する車両に搭載されたバッテリーの充電装置に関するものである。なお、以下において、電気自動車とはバッテリーを電源とするモータのみを駆動源とする電気自動車だけでなく、駆動源としてモータ及び内燃機関を備えたハイブリッド自動車も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの電力回生機能を利用したバッテリーの充電装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
この従来技術では、地上に設置された駆動ローラ及び従動ローラの相互間に車両の駆動輪をセットし、外部に設けた駆動輪回転装置のモータにより駆動ローラを回転させて摩擦力により車両の駆動輪を強制的に回転させる。これにより、駆動輪に回転子が連結された車両駆動用モータを発電機動作させ、このモータの固定子巻線から交流電力を出力させてインバータの回生動作により直流電力に変換して車載のバッテリーを充電するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57286号公報(段落[0014]〜[0026]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術によると、駆動輪回転装置のモータにより回転させた駆動ローラの回転力を、駆動輪を介して車両駆動用モータに伝達する原理であるため、駆動輪回転装置のモータには比較的大きな出力トルクが要求される。従って、このモータを内蔵する駆動輪回転装置が大型化すると共に、駆動ローラ及び従動ローラを含む装置全体の構成が複雑化し、コストの上昇や設置スペースの増大を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の解決課題は、比較的簡単な構成により小型化、低コスト化を可能にした車載バッテリーの充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車両駆動用のモータの電源である車載バッテリーを充電する充電装置において、
充電用外部駆動部による回転力を、第1のクラッチを介して前記モータの駆動軸に伝達して前記モータを発電機動作させ、前記モータから発生する回生電力を用いて前記バッテリーを充電するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した車載バッテリーの充電装置において、前記モータの駆動軸と車両の駆動輪とを連結する第2のクラッチを備え、前記第1のクラッチをつないで前記バッテリーを充電する際に前記第2のクラッチを切り離すものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、車両駆動用のモータの電源である車載バッテリーを充電する充電装置において、
充電用外部駆動部による回転力を、遊星歯車機構を介して前記モータの駆動軸に伝達して前記モータを発電機動作させ、前記モータから発生する回生電力を用いて前記バッテリーを充電するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載した車載バッテリーの充電装置において、前記遊星歯車機構を構成する各要素を、前記モータ側の駆動軸と、車両の駆動輪側の駆動軸と、前記充電用外部駆動部側の駆動軸とにそれぞれ連結し、前記遊星歯車機構を構成する各要素のうち何れかを固定することにより、前記遊星歯車機構を介して、前記モータ側の駆動軸と前記駆動輪側の駆動軸とを切り離した状態で前記充電用外部駆動部による回転力を前記モータの駆動軸に伝達するものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載した車載バッテリーの充電装置において、前記モータの発電機動作により発生させた交流電力を、インバータの回生動作により直流電力に変換して前記バッテリーを充電するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充電用外部駆動部によりクラッチまたは遊星歯車機構を介して車両駆動用モータの回転子を駆動することにより回生電力を発生させるため、ギアボックスでの損失や駆動輪での損失、及び外部駆動部における機械的損失が少なくて済み、従来技術のように車両の駆動輪を駆動する場合に比べて充電用外部駆動部の出力も小さくてよい。従って、充電用外部駆動部を含む充電装置の簡略化、小型化が可能であり、低コストにて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両駆動制御装置の構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る車両駆動制御装置の構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態における遊星歯車機構の概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両駆動制御装置の構成図である。図1において、100Aは電気自動車の車両であり、その車台101には、車軸107に取り付けられた一対の駆動輪108と一対の従動輪109とが設けられている。
【0014】
また、102は充電対象である車載のバッテリーである。バッテリー102には、その直流電力を交流電力に変換するインバータ103が接続され、インバータ103の交流出力側には、永久磁石同期モータ等のモータ104が接続されている。
ここで、インバータ103は、モータ104の固定子巻線から出力される交流電力を直流電力に変換してバッテリー102を充電する回生機能を備えている。
【0015】
モータ104の駆動軸110は、クラッチ105aを介してギアボックス106に連結されている。ギアボックス106は、駆動軸110の回転数を所定の回転数に変換して車軸107に伝達するものである。
一方、120は、車台101の外部に配置される充電用外部駆動部である。この充電用外部駆動部120は、バッテリー102を充電する際に、その外部駆動軸121をクラッチ105bを介してモータ104の駆動軸110に連結し、回転子を外部から強制的に回転させるためのものである。
ここで、便宜的にクラッチ105bを第1のクラッチ、クラッチ105aを第2のクラッチという。
【0016】
充電用外部駆動部120としては、モータ104の回転子を回転させるために必要かつ十分なトルクを発生可能な小型モータを用いることができる。なお、充電用外部駆動部120は、例えば車庫や車両のトランク内に備えておき、バッテリー102の充電時に所定位置に配置してクラッチ105bの一端に連結すればよい。充電用外部駆動部120の電源には、例えば商用電源を用いればよい。
【0017】
次に、この実施形態の動作を説明する。
バッテリー102の直流電力により車両100Aの走行が可能な通常時には、クラッチ105aをつないで、モータ104の駆動力を駆動軸110からギアボックス106を介して車軸107及び駆動輪108に伝達する。勿論、このとき、充電用外部駆動部120は使用しない。
【0018】
バッテリー102を充電する際には、充電用外部駆動部120を車両100Aの外部に設置し、駆動軸110とギアボックス106との間のクラッチ105aを切り離すと共に、充電用外部駆動部120の外部駆動軸121とモータ104との間のクラッチ105bをつなぐ。
この状態で、車両100A内の制御回路(図示せず)からインバータ103に電力回生指令を送ると共に、充電用外部駆動部120を駆動することによりモータ104の回転子を外部から強制的に回転させてモータ104を発電機動作させ、その固定子巻線から発生させた交流電力をインバータ103により直流電力に変換してバッテリー102を充電すればよい。
【0019】
この実施形態によれば、モータ104の回転子を外部から回転させるトルクを発生可能な充電用外部駆動部120を用意するだけで、バッテリー102を充電することができる。従って、特許文献1等の従来技術に比べて充電設備の構成の簡略化、小型化、低コスト化が可能になる。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態を図2に沿って説明する。なお、図1と同一の構成要素には同一の番号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
図2に示す車両100Bにおいて、モータ104の駆動軸110aには、遊星歯車機構122を介して駆動軸110bが連結され、更に差動ギア111を介して車軸107が連結されている。
【0021】
ここで、図3は遊星歯車機構122の概略的な説明図である。
周知のように、遊星歯車機構122は、太陽歯車A、遊星歯車B、内歯車C、キャリアDからなる要素のうち、どの要素を固定するかによって回転力の伝達方向を任意に選択可能である。
【0022】
従って、例えば、内歯車Cにモータ104側の駆動軸110aを連結し、キャリアDに差動ギア111側の駆動軸110bを連結すると共に、太陽歯車Aに充電用外部駆動部120側の外部駆動軸121を連結しておく。
この状態で、太陽歯車Aを固定すれば、モータ104側の駆動軸110aの回転力を内歯車Cから遊星歯車B、キャリアDを介して差動ギア111側の駆動軸110bに伝達することができ、これによって車両100Bを走行させることができる。また、キャリアDを固定すれば、充電用外部駆動部120側の外部駆動軸121の回転力を太陽歯車Aから遊星歯車B、内歯車Cを介してモータ104側の駆動軸110aに伝達することができ(このとき、遊星歯車Bは自転のみで公転しない)、これによってモータ104を発電機動作させてインバータ103の回生運転によりバッテリー102を充電することが可能である。
【0023】
なお、遊星歯車機構122の各要素(太陽歯車A、遊星歯車B、内歯車C、キャリアD)の使用方法は、上記の例に何ら限定されるものではなく、バッテリー102の充電時には、充電用外部駆動部120側の外部駆動軸121の回転力をモータ104側の駆動軸110aに伝達すると共に差動ギア111側の駆動軸110bを切り離し、車両100Bの走行時には、モータ104側の駆動軸110aを外部駆動軸121から切り離して駆動軸110aの回転力を駆動軸110bに伝達すればよい。
【0024】
この実施形態においては、モータ104の回転子を外部から回転させるトルクを発生可能な充電用外部駆動部120と、前記クラッチ105a,105bに代わる遊星歯車機構122とを用意するだけで、バッテリー102を充電することができる。よって、第1実施形態と同様に充電設備の構成の簡略化、小型化、低コスト化が可能である。
【符号の説明】
【0025】
100A,100B:車両
101:車台
102:バッテリー
103:インバータ
104:モータ
105a,105b:クラッチ
106:ギアボックス
107:車軸
108:駆動輪
109:従動輪
110,110a,110b:駆動軸
111:差動ギア
120:充電用外部駆動部
121:外部駆動軸
122:遊星歯車機構
A:太陽歯車
B:遊星歯車
C:内歯車
D:キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用のモータの電源である車載バッテリーを充電する充電装置において、
充電用外部駆動部による回転力を、第1のクラッチを介して前記モータの駆動軸に伝達して前記モータを発電機動作させ、前記モータから発生する回生電力を用いて前記バッテリーを充電することを特徴とする車載バッテリーの充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車載バッテリーの充電装置において、
前記モータの駆動軸と車両の駆動輪とを連結する第2のクラッチを備え、前記第1のクラッチをつないで前記バッテリーを充電する際に前記第2のクラッチを切り離すことを特徴とする車載バッテリーの充電装置。
【請求項3】
車両駆動用のモータの電源である車載バッテリーを充電する充電装置において、
充電用外部駆動部による回転力を、遊星歯車機構を介して前記モータの駆動軸に伝達して前記モータを発電機動作させ、前記モータから発生する回生電力を用いて前記バッテリーを充電することを特徴とする車載バッテリーの充電装置。
【請求項4】
請求項3に記載した車載バッテリーの充電装置において、
前記遊星歯車機構を構成する各要素を、前記モータ側の駆動軸と、車両の駆動輪側の駆動軸と、前記充電用外部駆動部側の駆動軸とにそれぞれ連結し、前記遊星歯車機構を構成する各要素のうち何れかを固定することにより、前記遊星歯車機構を介して、前記モータ側の駆動軸と前記駆動輪側の駆動軸とを切り離した状態で前記充電用外部駆動部による回転力を前記モータの駆動軸に伝達することを特徴とする車載バッテリーの充電装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した車載バッテリーの充電装置において、
前記モータの発電機動作により発生させた交流電力を、インバータの回生動作により直流電力に変換して前記バッテリーを充電することを特徴とする車載バッテリーの充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249465(P2012−249465A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120513(P2011−120513)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】