説明

車載制御装置

【課題】車載制御装置において、設計変更に柔軟に対応することができ、かつ、電子回路基板の損傷を抑制する。
【解決手段】電子回路基板3を収容する筐体2と、筐体2に対して溶着接合されると共に車両に対して取り付けられるブラケット4とを備え、筐体およびブラケットが樹脂により形成されており、筐体およびブラケットがレーザー溶着により溶着接合されている。さらに筐体およびブラケットの一方がレーザー溶着に用いられるレーザー光を透過する光透過性を有する光透過性樹脂により形成され、他方がレーザー光を吸収する光吸収性樹脂により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載制御装置ブラケット取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に設置されるECU(Electronic Control Unit)等の車載制御装置は、電子回路基板を収容する筐体とブラケットを有しており、ブラケットが車両に取り付けられることによって固定されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インサート成型によって、筐体に対してブラケットが固定された車載制御装置が開示されている。
また、特許文献2には、電子回路基板に対してブラケットが固定された車載制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2939404号公報
【特許文献2】特開2001−257491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された車載制御装置では、インサート成型によって筐体とブラケットとを固定しているため、筐体とブラケットとの固定箇所がインサート成型で用いる型によって制限されてしまう。このため、筐体とブラケットとの固定箇所を変更する場合には、型を新たに作製する必要が生じ、時間と費用とを要することとなる。つまり、特許文献1に開示された車載制御装置では、レイアウトの自由度が低く、設計変更に容易に対応することができない。
【0006】
また、特許文献2に開示された車載制御装置では、ブラケットが電子回路基板に対して固定されているため、車両側からの振動や押圧力が電子回路基板に直接伝達され、電子回路基板を損傷する恐れがある。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、設計変更に柔軟に対応することができ、かつ、電子回路基板の損傷を抑制することができる車載制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、車載制御装置であって、電子回路基板を収容する筐体と、上記筐体に対して溶着接合されると共に車両に対して取り付けられるブラケットとを備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記筐体及び上記ブラケットが樹脂により形成されており、上記筐体と上記ブラケットとがレーザ溶着により溶着接合されているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記筐体及び上記ブラケットの一方が上記レーザ溶着に用いられるレーザ光を透過する光透過性を有する光透過性樹脂により形成され、他方が上記レーザ光を吸収する光吸収性を有する光吸収性樹脂により形成されているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記筐体と上記ブラケットとの接合強度が、上記筐体から上記ブラケットを介して上記電子回路基板に伝達される外力が、予め定められた電子回路基板が損傷する可能性のある荷重を超えるより前に上記筐体と上記ブラケットとが剥離するように設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明おいては、筐体とブラケットとが溶着接合されている。このような溶着接合は、レーザ溶接やスポット溶接によって行うことができるため、筐体とブラケットとの位置関係を任意に変更することができる。
また、ブラケットは筐体に対して固定されているため、車両側からの振動や押圧力が電子回路基板に対して直接伝達されることを抑止し、電子回路基板が損傷することを抑止することができる。
したがって、本発明によれば、設計変更に柔軟に対応することができ、かつ、電子回路基板の損傷を抑制することができる。
【0010】
さらに、本発明においては、筐体とブラケットとが溶着接合されているため、レーザ溶接やスポット溶接によって、溶着面積を容易に変更することができる。つまり、本発明によれば、筐体とブラケットとの接合強度を任意に調節することができる。
このため、例えば、電子回路基板が損傷する可能性がある荷重を予め求めておけば、ブラケット及び筐体を介して伝達する外力が上記荷重を超えるより前に筐体とブラケットとが剥離するように筐体とブラケットとの接合強度を任意に調節することができる。
よって、本発明によれば、より確実に電子回路基板の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における車載制御装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における車載制御装置の組立て方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明の一実施形態における車載制御装置における筐体とブラケットとの当接領域を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態における車載制御装置が備える電子回路基板の損傷荷重の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る車載制御装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
図1は、本実施形態の車載制御装置1の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態の車載制御装置1は、車両等に搭載されてECU(Electronic Control Unit)として機能するものであり、図1に示すように、筐体2と、電子回路基板3と、ブラケット4とを備えている。
【0014】
筐体2は、電子回路基板3を囲って収容するものであり、電子回路基板3が固定されると共に電子回路基板3の装着に用いられる開口を有するケース2aと、ケース2aの開口を閉じるカバー2bとを備えている。
そして、本実施形態の車載制御装置1において、筐体2は、樹脂によって形成されている。より詳細には、筐体2は、当該筐体2とブラケット4とを溶着接合する際に用いるレーザ光を吸収する光吸収性を有する光吸収性樹脂によって形成されている。
【0015】
電子回路基板3は、車両に搭載される各種装置の制御等を行うチップの電子部品と、当該チップ等が実装されるプリント配線基板等によって構成されている。
そして、当該電子回路基板3は、図1に示すように、筐体2の内部に収容されている。この電子回路基板3は、不図示のコネクタケーブル等を介して筐体2の外部の各種装置に電気的に接続されている。
【0016】
ブラケット4は、本実施形態の車載制御装置1を車両に対して固定するためのものであり、筐体2に対して溶着接合されていると共に車両に対して取り付けられている。
そして、本実施形態の車載制御装置1において、ブラケット4は、樹脂によって形成されている。より詳細には、ブラケット4は、当該筐体2とブラケット4とを溶着接合する際に用いるレーザ光を透過する光透過性を有する光透過性樹脂によって形成されている。
なお、図1に示すように、本実施形態の車載制御装置1においてブラケット4は、筐体2のカバー2bに対して固定されている。
【0017】
次に、このように構成された車載制御装置1の組立て方法について図2を参照しながら説明する。
【0018】
まず最初に、図2(a)に示すように、筐体2と別体とされたブラケット4をカバー2bの予め定められた箇所と当接するように配置する。
この際、ブラケット4とカバー2bとがずれることを防止するために、ブラケット4とカバー2bとを不図示の冶具によって位置決めすることが好ましい。
なお、本実施形態の車載制御装置1においては、ブラケット4とカバー2bとがレーザ溶着によって溶着接合される。このため、ブラケット4とカバー2bとを位置決めするための冶具は、レーザ光を遮光しないように、溶着箇所(ブラケット4とカバー2bとの当接箇所)を露出する開口や透明領域を有するように構成される。
【0019】
続いて、図2(b)に示すように、位置決めされたブラケット4とカバー2bとの当接箇所にレーザ光Lを照射する。
ここで、本実施形態の車載制御装置1においては、ブラケット4がレーザ光Lに対して透明な光透過性樹脂によって形成され、カバー2bがレーザ光Lを吸収して遮光する光吸収性樹脂によって形成されている。このため、レーザ光Lは、ブラケット4側から当接箇所に照射される。この結果、レーザ光Lがブラケット4を透過してカバー2bに入射し、カバー2bに対して入熱される。
このように、カバー2bに対して入熱されると、ブラケット4とカバー2bとの界面においてカバー2bが局所的に溶融し、またブラケット4も当該ブラケット4とカバー2bとの界面において加熱されて局所的に溶融する。
【0020】
そして、レーザ光Lの照射を停止すると、図2(c)に示すように、ブラケット4とカバー2bとの溶融箇所が硬化してブラケット4とカバー2bとが溶着接合される。
また、図2(c)では省略したが図2(c)のブラケット4にも図2(a)、図2(b)と同様に車両に取り付けるための穴が備えられている。
なお、図2(c)においては、溶着接合部位の視認性を向上させるために、図2(a),(b)に対して拡大して図示している。
ここで用いるレーザ光Lとしては、高出力のものを用いる必要はなく、出力が50W程度の半導体レーザを用いることができる。
【0021】
このようにしてブラケット4とカバー2bとが溶着接合されると、筐体2のケース2aに電子回路基板3が収容され、さらにケース2aとカバー2bとが組み合わされることによって、本実施形態の車載制御装置1が組み立てられる。
【0022】
以上のような本実施形態の車載制御装置1おいては、筐体2とブラケット4とがレーザ溶接(レーザ溶着)によって溶着接合されている。このため、筐体2とブラケット4との位置関係を任意に変更することができる。
また、ブラケット4は筐体2に対して固定されているため、車両側からの振動や押圧力が電子回路基板3に対して直接伝達されることを抑止し、電子回路基板3が損傷することを抑止することができる。
したがって、本実施形態の車載制御装置1によれば、設計変更に柔軟に対応することができ、かつ、電子回路基板3の損傷を抑制することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の車載制御装置1においては、筐体2とブラケット4とが溶着接合されており、レーザ溶接における溶着面積を容易に変更することができる。つまり、本実施形態の車載制御装置1によれば、筐体とブラケット4との接合強度を任意に調節することができる。
【0024】
例えば、図3(a)に示すように筐体2とブラケット4との当接領域Rの全域を溶着する場合と、図3(b)に示すように、筐体2とブラケット4との当接領域Rの一部領域を溶着する場合とでは、当接領域Rの全域を溶着する場合の方が筐体2とブラケット4との接合強度を高めることができる。
なお、溶着面積の調節は、例えば、レーザ光Lのスポット径や移動範囲の変更により照射範囲を調節することによって行うことができる。
【0025】
このため、例えば、図4に示すように、電子回路基板3が損傷する可能性がある荷重(損傷荷重)を250Gと予め求めておけば、コネクタ付近に接合されたブラケット4´及び筐体2の接合強度を200Gとすることによりコネクタ付近に接合されたブラケット4´及び筐体2を介して伝達する外力が250Gを超えるより前に筐体とブラケット4´のみが剥離する。
したがって、筐体2とブラケット4´との接合強度が、上記筐体2からブラケット4´を介して電子回路基板3に伝達される外力が予め定められた電子回路基板3が損傷する可能性のある荷重を超えるより前に筐体2とブラケット4´とが剥離するように設定されているという構成を採用することにより、より確実に電子回路基板3の損傷を抑制することができる。
【0026】
また、レーザ溶接では、溶着面積の変更だけではなく、溶着パターン(溶着領域の形状や配置パターン)を容易に変更することができる。
このため、例えば、溶着パターンを、筐体2あるいはブラケット4´に対して特定の方向から荷重が作用した場合に筐体2とブラケット4´とが剥離しやすくするように設定することも可能である。
【0027】
また、本実施形態の車載制御装置1においては、ブラケット4が光透過性樹脂によって形成され、筐体2が光吸収性樹脂によって形成されている。
このため、ブラケット4側からレーザ光Lを照射することによって、ブラケット4と筐体2との界面に局所的に入熱を行うことができるため、ブラケット4及び筐体2の溶融領域を最小限に抑えることができると共に、レーザ溶接に必要となるエネルギ量を抑制することも可能となる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態においては、筐体2及びブラケット4が樹脂によって形成されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、筐体2及びブラケット4を金属によって形成することも可能である。
このような場合であっても、筐体2とブラケット4との当接箇所に、筐体2側あるいはブラケット4側からレーザ光を用いて入熱することによって、筐体2とブラケット4とをレーザ溶接することは可能である。
ただし、筐体2及びブラケット4が金属である場合には、レーザ溶接よりもスポット溶接を用いた方が溶着接合が容易である。このため、スポット溶接を用いて筐体2とブラケット4と溶着接合することが好ましい。
スポット溶接もレーザ溶接と同様に、筐体2とブラケット4との位置関係を任意に変更することができ、設計変更に柔軟に対応することができる。また、筐体とブラケット4との接合強度を任意に調節することもできる。
【0030】
また、上記実施形態においては、筐体2が光吸収性樹脂によって形成され、ブラケット4が光透過性樹脂によって形成されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ブラケット4を光吸収性樹脂によって形成し、筐体2を光透過性樹脂によって形成しても良い。
このような場合には、レーザ溶接を行う際に、筐体2側からレーザ光Lを照射してブラケット4に入熱することとなる。
【0031】
また、上記実施形態においては、筐体2のカバー2bに対してブラケット4が溶着接合されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ブラケット4が筐体2のケース2aに対して溶着接合される構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1……車載制御装置、2……筐体、2a……ケース、2b……カバー、3……電子回路基板、4……ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板を収容する筐体と、
前記筐体に対して溶着接合されると共に車両に対して取り付けられるブラケットと
を備えることを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記筐体及び前記ブラケットが樹脂により形成されており、
前記筐体と前記ブラケットとがレーザ溶着により溶着接合されている
ことを特徴とする請求項1記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記筐体及び前記ブラケットの一方が前記レーザ溶着に用いられるレーザ光を透過する光透過性を有する光透過性樹脂により形成され、他方が前記レーザ光を吸収する光吸収性を有する光吸収性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項2記載の車載制御装置。
【請求項4】
前記筐体と前記ブラケットとの接合強度は、
前記筐体から前記ブラケットを介して前記電子回路基板に伝達される外力が、予め定められた電子回路基板が損傷する可能性のある荷重を超えるより前に前記筐体と前記ブラケットとが剥離するように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206631(P2012−206631A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74304(P2011−74304)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】