説明

車載型燃料電池の車両搭載構造

【課題】 本発明は車載型燃料電池の車両搭載構造に関し、部品点数を増加させることなく燃料電池ケースの剛性を高めることを可能にする。
【解決手段】 燃料電池ケース10を車両のフロアパネル2の下に配置する。フロアパネル2を補強するフロア補強部材8を燃料電池ケース10を補強する補強部材として兼用する。より好ましくは、シート28をフロアパネル2に固定するシート用レール4も燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載される車載型燃料電池の車両搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の駆動用電源として、水素を燃料として発電する車載型燃料電池が知られている。燃料電池を車両に搭載するに際しては、内部保温性、高電圧安定性、電磁シールド性等の確保が求められ、また、飛び石や、水や泥のはねから燃料電池を保護する必要もある。このため、通常、車載型の燃料電池は、燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載されている。燃料電池ケースの車両への搭載方法に関しては、従来、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載された従来技術では、車両のフロアパネルの下に燃料電池ケースを配置し、ボルトを用いてフロアフレームの底壁に燃料電池ケースを固定している。
【特許文献1】特開2004−34808号公報
【特許文献2】特開2003−237635号公報
【特許文献3】特開2000−149974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、燃料電池ケースは、薄い金属板を加工して形成されている。このため、燃料電池ケース自体の剛性はあまり高くなく、車両から強い振動や捩りが入力された場合には変形してしまう可能性がある。燃料電池ケースの変形を防止して内部に収納されている燃料電池を保護するためには、燃料電池ケースを何等かの補強部材で補強することで燃料電池ケースの剛性を高めることが望ましい。
【0004】
しかしながら、新たに補強部材を設けるとなると、部品点数の増加によりコストの増大や重量の増大を招いてしまう。さらに、新たに設ける補強部材の分、燃料電池ケースを搭載するための必要スペースが大きくなるため、スペースに制約があるフロアパネル下への搭載が困難になってしまう可能性もある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、部品点数を増加させることなく燃料電池ケースの剛性を高めることを可能にした車載型燃料電池の車両搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載される車載型燃料電池の車両搭載構造であって、
前記燃料電池ケースは車両のフロアパネル下に配置され、
前記フロアパネルを補強するフロア補強部材が前記燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されていることを特徴としている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記燃料電池ケースの上方に、シートを前記フロアパネルに固定するシート用レールが配置され、
前記シート用レールは前記燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されていることを特徴としている。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、前記シート用レールと前記フロア補強部材とは前記フロアパネルを挟んで結合されていることを特徴としている。
【0009】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記フロアパネルが前記燃料電池ケースの一部を構成していることを特徴としている。
【0010】
また、第5の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載される車載型燃料電池の車両搭載構造であって、
車両のフロアパネルが前記燃料電池ケースの一部を構成していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、フロアパネルを補強するフロア補強部材が燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されるので、部品点数を増加させることなく燃料電池ケースの剛性を高めることができる。
【0012】
第2の発明によれば、シート用レールも燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されるので、燃料電池ケースの剛性をより高めることができる。
【0013】
第3の発明によれば、シート用レールとフロア補強部材とがフロアパネルを挟んで結合されることで、燃料電池ケースの剛性はさらに高められる。
【0014】
第4の発明によれば、フロアパネルが燃料電池ケースの一部として利用されるので、全体の部品点数をより削減することができる。
【0015】
また、第5の発明によれば、燃料電池ケースの一部が車両のフロアパネルで構成されるので、フロアパネルの剛性を利用して燃料電池ケースの剛性を高めることができるとともに、全体の部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態としての車載型燃料電池の車両搭載構造を示す側面図、図2は、図1において各構成部品を分解して示した分解側面図である。図3は、図1に示す車載型燃料電池の車両搭載構造を車両の前方から見た正面図である。これらの図に示すように、燃料電池ケース10は車両のフロアパネル2の下に配置されている。燃料電池ケース10は、風呂桶型のロアケース10bと、ロアケース10bの蓋であるアッパケース10aとから構成されている。ロアケース10bとアッパケース10aとの間には、燃料電池ケース10の内部の気密性を確保するためにガスケット16が挟まれている。燃料電池ケース10内に収納された燃料電池(燃料電池スタック)14は、ロアケース10bの底にインシュレータを介して固定されている。
【0017】
フロアパネル2の下面には、フロアパネル2を補強するためのフロア補強部材6f,6rが車両の前後方向に向けて取り付けられている。本実施形態では、フロア補強部材6f,6rは途中で二つに分断されており、車両前側のフロア補強部材6fと車両後側のフロア補強部材6rとの間に燃料電池ケース10が収められている。
【0018】
燃料電池ケース10には、ロアケース10bを車両の前後方向に取り巻くように補強部材8が取り付けられている。ロアケース10bの底面、及び車両前後方向の両側面は、補強部材8に接合されている。ロアケース10bと補強部材8との接合方法は、溶接でもよく、ボルトとナットによる締結でもよい。
【0019】
また、フロアパネル2の上であって燃料電池ケース10の真上に当たる位置には、シート28をフロアパネル2に固定するためのシート用レール4が配置されている。本実施形態では、左右のシート28の下にそれぞれ1個の燃料電池ケース10が配置されている。シート用レール4は、1つのシート28に2本ずつ備えられ、その長手方向を車両の前後方向に向けて配置されている。前記のフロア補強部材6f,6rは各シート用レール4の真下に配置され、フロア補強部材6f,6rの車両横方向位置に合わせてロアケース10bに対する補強部材8の接合位置が調整されている。
【0020】
ロアケース10bに結合された補強部材8とフロア補強部材6f,6rとは、燃料電池ケース10を所定の搭載位置に配置したときに、上下に重なり合うようになっている。補強部材8とフロア補強部材6f,6rの各重なり部分には、ボルト穴が形成されている。このボルト穴はフロアパネル2にも通じており、シート用レール4にもボルト穴が設けられている。燃料電池ケース10を固定する場合には、図2に示すように、補強部材8,フロア補強部材6f,フロアパネル2,シート用レール4の順に各ボルト穴にボルト20を通してナット24と締結し、また、補強部材8,フロア補強部材6r,フロアパネル2,シート用レール4の順に各ボルト穴にボルト22を通してナット26と締結する。補強部材8とフロア補強部材6f,6rとが結合され、フロアパネル2を介してフロア補強部材6f,6rとシート用レール4とが結合されることにより、燃料電池ケース10は、その周囲を補強部材8とシート用レール4により囲まれることになる。
【0021】
上記の構造によれば、燃料電池ケース10を剛性の高い補強部材8とシート用レール4により囲むことができるので、車両からの振動等の入力によって燃料電池ケース10が変形することを防止することができる。つまり、燃料電池ケース10の剛性を高めることができる。
【0022】
また、上記の構造では、補強部材8は前後のフロア補強部材6f,6rを接続しており、フロアパネル2を補強する補強部材も兼ねている。言い換えれば、フロアパネル2を補強するフロア補強部材の一部が、燃料電池ケース10を補強する補強部材8として兼用されている。この補強部材8は、第1の発明における「燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されるフロア補強部材」に相当している。このように、フロア補強部材の一部を補強部材8として兼用し、また、既存のシート用レール4を補強部材として兼用することにより、燃料電池ケース10を補強するための専用の補強部材を新たに追加する必要がない。つまり、上記の構造によれば、部品点数を増加させることなく燃料電池ケース10の剛性を高めることができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
【0024】
上記実施の形態では、左右のシート28の下にそれぞれ燃料電池ケース10を配置しているが(計2個)、燃料電池ケース10が大型の場合には、図4の正面図に示すように、左右のシート28の下に1個の燃料電池ケース10を配置することもできる。また、図4では、計4つのシート用レール4の全てを補強部材として用いているが、左右両端のシート用レール4のみを補強部材として用いるようにしてもよい。
【0025】
また、図5の分解側面図に示すように、専用のアッパケースを省略し、フロアパネル2の下面2aをロアケース10bの蓋として兼用してもよい。フロアパネル2の下面2aとロアケース10bとの間には気密性を確保するためのガスケット16を介装する。このように、フロアパネル2を燃料電池ケース10の一部として利用することで、全体の部品点数をより削減することが可能になる。
【0026】
また、上記実施の形態では、ロアケース10bの底に燃料電池スタック10を取り付けているが、アッパケース10aの裏面に燃料電池14を取り付けるようにしてもよい。図5に示す変形例の場合であれば、フロアパネル2の下面2aに燃料電池14を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態としての車載型燃料電池の車両搭載構造を示す側面図である。
【図2】図1において各構成部品を分解して示した分解側面図である。
【図3】図1に示す車載型燃料電池の車両搭載構造を車両の前方から見た正面図である。
【図4】上記実施の形態の変形例を示す正面図である。
【図5】上記実施の形態の変形例を示す分解側面図である。
【符号の説明】
【0028】
2 フロアパネル
4 シート用レール
6f,6r フロア補強部材
8 補強部材(フロア補強部材)
10 燃料電池ケース
10a アッパケース
10b ロアケース
14 燃料電池
16 ガスケット
20,22 ボルト
24,26 ナット
28 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載される車載型燃料電池の車両搭載構造であって、
前記燃料電池ケースは車両のフロアパネル下に配置され、
前記フロアパネルを補強するフロア補強部材が前記燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されていることを特徴とする車載型燃料電池の車両搭載構造。
【請求項2】
前記燃料電池ケースの上方に、シートを前記フロアパネルに固定するシート用レールが配置され、
前記シート用レールは前記燃料電池ケースを補強する補強部材として兼用されていることを特徴とする請求項1記載の車載型燃料電池の車両搭載構造。
【請求項3】
前記シート用レールと前記フロア補強部材とは前記フロアパネルを挟んで結合されていることを特徴とする請求項2記載の車載型燃料電池の車両搭載構造。
【請求項4】
前記フロアパネルが前記燃料電池ケースの一部を構成していることを特徴とする請求項1又は2記載の車載型燃料電池の車両搭載構造。
【請求項5】
燃料電池ケースに収納された状態で車両に搭載される車載型燃料電池の車両搭載構造であって、
車両のフロアパネルが前記燃料電池ケースの一部を構成していることを特徴とする車載型燃料電池の車両搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−218894(P2006−218894A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31831(P2005−31831)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】